(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167416
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】バイポーラ型の電池の状態を判定する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20221027BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20221027BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M10/48 301
G01K1/14 L
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073190
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
【テーマコード(参考)】
2F056
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2F056CL07
5G503BA02
5G503BB01
5G503CB11
5G503EA08
5H030AA09
5H030AS20
5H030FF22
(57)【要約】
【課題】より簡易な方法により、一つの電池を構成する複数の単電池の温度分布を取得し、取得した温度分布を用いて当該一つの電池の状態を判定する方法を提供する。
【解決手段】本開示の方法は、複数の単電池に備えられた複数の温度測定素子において測定された単電池の温度を示す温度データを取得することを含む。複数の温度測定素子の各々は複数の単電池の各々にそれぞれ対応している。また、本開示の方法は、温度データから複数の単電池における温度の分布を示す情報を取得することを含む。さらに、本開示の方法は、温度の分布を示す情報に基づいて電池の状態を判定することを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定する方法であって、
前記複数の単電池に備えられた複数の温度測定素子において測定された前記単電池の温度を示す温度データを取得することであって、前記複数の温度測定素子の各々は前記複数の単電池の各々にそれぞれ対応している、ことと、
前記温度データから前記複数の単電池における温度の分布を示す情報を取得することと、
前記温度の分布を示す情報に基づいて前記電池の状態を判定することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記電池の稼働環境を示す情報および稼働状態を示す情報を取得することと、
前記稼働環境および前記稼働状態において前記複数の温度測定素子から、前記単電池の温度を示す温度データを取得することと、
前記稼働環境および前記稼働状態において取得された前記温度データから前記複数の単電池における基準とされる温度の分布を示す情報を取得することと、
をさらに備え、
前記温度の分布を示す情報に基づいて前記電池の状態を判定することは、前記温度の分布を示す情報を前記基準とされる温度の分布を示す情報と比較することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度の分布を示す情報および前記基準とされる温度の分布を示す情報は、温度の分布を示す関数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記関数は確率密度関数であり、温度の分布を示す情報は前記確率密度関数のパラメータである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記温度の分布を示す情報に基づいて前記電池の状態を判定することは、
前記温度の分布を示す情報である前記確率密度関数のパラメータが、前記基準とされる温度の分布を示す情報である確率密度関数のパラメータの範囲外であるかどうかを判定すること
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するためのデバイスであって、前記デバイスは、プロセッサと、前記プロセッサと動作可能に接続された記録媒体とを備え、前記記録媒体は、前記プロセッサに請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータプロブラムを記録している、デバイス。
【請求項7】
複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するためのコンピュータプロブラムを記録した記録媒体であって、前記コンピュータプロブラムは、コンピュータに請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実行させる、記録媒体。
【請求項8】
複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するためのコンピュータプロブラムであって、コンピュータに請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータプロブラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の状態を判定する方法に関し、より詳細には、バイポーラ型の電池の状態を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池で構成される組電池の温度異常の有無を判定する方法として、単電池の積層方向に配列された複数の単電池の各々に対応する複数の温度センサによる検出温度を用いて各単電池の温度を演算し、演算結果から複数の単電池の温度分布を求めることにより組電池の温度異常の有無を判定することが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1では、各温度センサは、対応する単電池から離間した位置に設置され、単電池から放出されて、熱伝導を高める目的で設置された熱伝導部材を介して伝達した後の熱の温度から演算により組電池の異常の有無は推定される。この結果、追加で設置した熱伝導部材の体積分だけ組電池のエネルギー密度が低下するという問題、および熱伝導部材を設置するコストが発生するという問題がある。また、温度センサと単電池との複数の組み合わせについて、温度センサと単電池との間の相対的な位置関係が均等ではないことがあり得る。また、温度センサにおいて演算により推定された単電池の温度は、熱が熱伝導部材を伝達する時間分だけ過去の単電池の温度になってしまう。さらに、単電池から温度センサまで熱が伝達する時間は、介在する熱伝導部材の長さおよび種類、並びに環境により異なり得るので、演算に用いる式が複雑となる。その結果、単電池の温度を推定するための演算に用いる様々なパラメータを設定する必要がある。また、制御装置で組電池の異常検出のために行う演算処理が煩雑になる。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、より簡易な方法により、一つの電池を構成する複数の単電池の温度分布を取得し、取得した温度分布を用いて当該一つの電池の状態を判定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本開示は、複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定する方法を提供する。この方法は、複数の単電池に備えられた複数の温度測定素子において測定された単電池の温度を示す温度データを取得することを含む。複数の温度測定素子の各々は複数の単電池の各々にそれぞれ対応している。また、この方法は、温度データから複数の単電池における温度の分布を示す情報を取得することを含む。さらに、この方法は、温度の分布を示す情報に基づいて電池の状態を判定することを含む。
また、本開示は、複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するためのデバイスを提供する。このデバイスは、プロセッサと、上記方法の方法を当該プロセッサに実行させるコンピュータプロブラムを記録した、当該プロセッサに動作可能に接続された記録媒体とを備える。
さらに、本開示は、複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するためのコンピュータプロブラムを提供する、または当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本開示の複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定する方法、デバイス、もしくは、コンピュータプログラム、または当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体によれば、より簡易な方法により、一つの電池を構成する複数の単電池の温度分布を取得し、取得した温度分布を用いて当該一つの電池の状態を判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる方法により状態が判定されるバイポーラ型の電池を構成する単電池の断面を示す図であり、
図1(b)は、
図1(a)の単電池を積層して構成したバイポーラ型の電池の断面の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するデバイスの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、バイポーラ型の電池の温度分布を表現する関数のグラフを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法において用いられるパラメータの範囲を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法において記録媒体に記憶されたパラメータの範囲を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明における数値および材料名は例示であり、本発明の要旨を逸脱しない限り、本発明は、他の数値および材料を用いて実施することができる。
【0010】
本実施形態にかかる複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定する方法は、複数の単電池に備えられた複数の温度測定素子において測定された単電池の温度を示す温度データを取得することであって、複数の温度測定素子の各々は複数の単電池の各々にそれぞれ対応している、ことと、温度データから複数の単電池における温度の分布を示す情報を取得することと、温度の分布を示す情報に基づいて電池の状態を判定することと、を含む。この方法は、例えば、プロセッサと、当該方法を当該プロセッサに実行させるコンピュータプログラムを記録したメモリとを備えたデバイスによって実行され得る。
【0011】
(バイポーラ型の電池)
発明の一実施形態にかかる方法により状態が判定されるバイポーラ型の電池は、複数の平板状の単電池を積層して構成された電池である。
図1(a)は、バイポーラ型の電池50を構成する単電池の断面を示す図である。単電池30は、下から順に積層された正極集電体17と、正極活物質層15と、セパレータ14と、負極活物質層16と、負極集電体19とを有する。また、単電池30は、略矩形平板状の正極集電体17の表面に正極活物質層15が形成された正極12と、同様に略矩形平板状の負極集電体19の表面に負極活物質層16が形成された負極13とが、同様に略平板状のセパレータ14を介して積層されて形成されている。さらに、単電池30は、配線基板21上に形成された温度センサ23および発光部22の一部が、枠部材18の外部と接する面から露出するように枠部材18内に埋め込まれている。枠部材18の外部と接する面は、単電池30の積層方向に略平行な側面であってもよく、または当該側面に開口部を有し当該側面から単電池30へ向かう凹部の面(単電池30の積層方向に略垂直な面または略平行な面)であってもよい。発光部22の発光面の少なくとも一部または発光面を含む発光部22の少なくとも一部が枠部材18の外部と接する面から露出するように発光部22を配置することで、光信号が枠部材18に遮られずに外部へ送出される。また、後述するように発光部22を送信機とする場合も、送信機の一部または全部を枠部材18の外部と接する面から露出するように送信機を配置することで、送信機からの無線信号が枠部材18に遮られずに外部へ送出されるようになる。温度センサ23の一部または全部は、枠部材18の外部と接する面から露出していてもよく、または枠部材18内に埋め込まれていてもよい。
【0012】
枠部材18は、正極集電体17と負極集電体19との間に環状に配置されている。枠部材18は、正極集電体17及び負極集電体19の間にセパレータ14の周縁部を固定し、かつ正極活物質層15、セパレータ14および負極活物質層16を封止している。
【0013】
正極集電体17および負極集電体19は、枠部材18により所定間隔をもって対向するように配置されている。また、セパレータ14と正極活物質層15および負極活物質層16は、枠部材18により所定間隔をもって対向するように配置されている。
【0014】
正極集電体17とセパレータ14との間の間隔は、活物質層の厚みに応じて調整されている。負極集電体19とセパレータ14との間隔もまた、活物質層の厚みに応じて調整されている。これら正極集電体17、負極集電体19およびセパレータ14の位置関係は、必要な間隔が得られるように定められている。
【0015】
配線基板21、発光部22、および温度センサ23は、単電池30の端部に露出するように、正極集電体17と負極集電体19との間に配置されている。正極集電体17と負極集電体19との間の空間には温度センサ23を覆うように絶縁樹脂26が充填されている。
【0016】
温度センサ23は、単電池30から電力を供給されるように、正極集電体17と負極集電体19と結合され、単電池の所定の位置の温度を検出するように構成されている。単電池の所定の位置は1つであっても複数であってもよい。また、発光部22は、単電池30から電力を供給されるように、正極集電体17と負極集電体19と結合され、温度センサ23により検出された温度を光信号に変換して送出するように構成されている。発光部22は、温度センサ23により検出された温度を電気信号または無線信号に変換して送出する送信機であってもよい。このように、温度センサ23と単電池30との間に引用文献1のような熱伝導部材が介在せず、温度センサ23は、熱伝導による遅延を有することなく、単電池の所定の位置の温度を検出することができる。
【0017】
正極活物質層15には、正極活物質が含まれている。例えば、本実施形態の正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0018】
正極活物質は、導電助剤および被覆用樹脂で被覆された被覆正極活物質であることが好ましい。これにより、正極活物質の周囲が、被覆用樹脂で被覆されているため、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
【0019】
導電助剤は、例えば、金属系導電助剤[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、炭素系導電助剤[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0020】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助剤及びこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及び炭素系導電助剤であり、特に好ましくは炭素系導電助剤である。また、これらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0021】
導電助剤の形状は、粒子状に限られず、粒子状以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助剤などの形態であってもよい。
【0022】
被覆用樹脂と導電助剤の比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆用樹脂(樹脂固形分重量):導電助剤が1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0023】
また、正極活物質層は、被覆正極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを用いることができる。
【0024】
正極活物質層は、正極活物質を含み、正極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質が結着剤(バインダともいう)により位置を固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質と集電体が不可逆的に固定されていないことを意味する。
【0025】
正極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0026】
負極活物質層には負極活物質が含まれる。負極活物質は、例えば、公知のリチウムイオン電池の負極活物質が使用でき、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0027】
また、負極活物質は、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。導電助剤及び被覆用樹脂としては、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤及び被覆用樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
また、負極活物質層は、被覆負極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0029】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、負極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。また、正極活物質層と同様に、粘着性樹脂が含まれていてもよい。負極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0030】
正極集電体及び負極集電体(本明細書においてまとめて単に集電体ともいう)を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。これらの材料のうち、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、正極集電体としてはアルミニウムであることが好ましく、負極集電体としては銅であることが好ましい。
【0031】
また、集電体は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体であることが好ましい。集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0032】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、導電性高分子や、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したものを用いることができる。導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0033】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。また、本実施形態の導電性高分材料を構成する樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0034】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【0035】
正極活物質層及び負極活物質層には電解液が含まれる。電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0036】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiN(FSO2)2、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはイミド系電解質[LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2及びLiN(C2F5SO2)2等]及びLiPF6である。
【0037】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0038】
電解液の電解質濃度は、1~5mol/Lであることが好ましく、1.5~4mol/Lであることがより好ましく、2~3mol/Lであることがさらに好ましい。なお、電解液の電解質濃度は、リチウムイオン電池用電極又はリチウムイオン電池を構成する電解液を、溶媒などを用いずに抽出して、その濃度を測定することで確認することができる。
【0039】
図1(b)は、
図1(a)の単電池を積層して構成したバイポーラ型の電池50の断面の概略を示す図である。隣り合う単電池30の負極集電体19の上面と正極集電体17の下面とが隣接して、n個の単電池が積層されている。例えば、nは100以上とすることができる。バイポーラ型の電池50の最上部の単電池30
nの負極集電体19の上に導電性シート52が設けられ、導電性シートの一部から引き出されて引出配線(不図示)となる。また、バイポーラ型の電池50の最下部の正極集電体17の上には導電性シート51が設けられ、導電性シートの一部が引き出されて引出配線(不図示)となる。導電性シートとしては導電性を有する材料であれば特に限定されず、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、樹脂集電体として記載した材料を適宜選択して用いることができる。
【0040】
温度センサ231~23nは、積層方向に一列に並び、対応する単電池301~単電池30nの所定の位置の温度を検出する。温度が検出される所定の位置も積層方向に一列に並んでいる。温度センサ231~23nにより検出された温度は、発光部22で光信号に変換されて送出される。このように、温度センサ23と単電池30との複数の組み合わせについて、温度センサ23と単電池30(温度が検出される所定の位置)との間の相対的な位置関係が均等となるように構成されている。また、上述したように、温度センサ23と単電池30との間に引用文献1のような熱伝導部材が介在しないため、熱伝導部材を設置することによる追加コストおよび組電池のエネルギー密度の低下が発生しない。さらに、単電池30における温度が検出される所定の位置の分布が均一であることから、積層方向において隣接する温度センサが検出する温度の相関が高い。したがって、積層された単電池の温度を、隣接または近接する温度センサの値を用いて、容易に補完または推定することができる。例えば、単電池30に対応する温度センサ23に故障が生じた場合に、当該単電池30の温度を、隣接または近接する単電池に備えられた温度センサ23の一部または全部により検出された温度を用いて補完または推定することができる。
【0041】
(バイポーラ型の電池の状態を判定するデバイスの構成)
図2は、複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の状態を判定するデバイス62の構成を示す図である。
図2には、複数のバイポーラ型の電池(50
1、50
2・・・)、および複数のバイポーラ型の電池に対応する複数のデバイス(60
1、60
2・・・)も記載されている。バイポーラ型の電池50とデバイス60は1組であっても複数組であってもよい。バイポーラ型の電池50は、
図1を参照して説明したバイポーラ型の電池である。デバイス60は、対応するバイポーラ型の電池50と動作可能に結合されるとともに、通信ネットワーク61を介して、バイポーラ型の電池50の状態を判定するデバイス62と動作可能に結合されている。
【0042】
デバイス60は、対応するバイポーラ型の電池50を制御するデバイスである。デバイス60は、バイポーラ型の電池50を構成する複数の単電池30の発光部22から送出された光信号を受光するための受光部(不図示)を備える。受光部は、フォトダイオードや発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等を用いて構成されている。また、デバイス60は、受光した光信号によって示される温度データを、バイポーラ型の電池の状態を判定するデバイス62へ送信するように構成されている。さらに、デバイス60は、バイポーラ型の電池50の稼働環境および稼働状態をモニターする機能を有し、バイポーラ型の電池50の稼働環境を示す情報および稼働状態を示す情報をバイポーラ型の電池50の状態を判定するデバイス62へ送信するように構成されている。稼働環境を示す情報は、バイポーラ型の電池50が稼働している環境の温度であってよい。稼働状態を示す情報は、バイポーラ型の電池50の出力電力、出力電圧、または出力電流であってよい。
【0043】
バイポーラ型の電池の状態を判定するデバイス62は、通信デバイス63と、プロセッサ64と、メインメモリ65と、ストレージデバイス66と、入力装置67と、出力装置68とを備える。通信デバイス63は、イーサネット(登録商標)やWi-Fi等の通信装置であり、通信ネットワーク61を介してデバイス60から、温度データ、ならびに、バイポーラ型の電池50の稼働環境を示す情報、および稼働状態を示す情報を受信するように構成されている。ストレージデバイス66は、HDD等の記憶装置であり、コンピュータプログラムやデータベースを記憶するように構成されている。プロセッサ64は、MPU、CPU、DSP、GPU、RISCプロセッサ、CISCプロセッサ等であり、ストレージデバイス66に記憶されたコンピュータプログラムをメインメモリ65にロードして実行するように構成されている。メインメモリ65は、例えば、RAMやROM等の半導体メモリデバイスである。入力装置67は、例えば、キーボード、マウスポインタ、タッチパネル、またはマイクロフォンである。出力装置68は、例えば、ディスプレイ、または音源である。
【0044】
(複数の単電池を積層して構成されたバイポーラ型の電池の温度分布)
図1を参照して説明したようにバイポーラ型の電池50は、同一の構造の単電池を集電体同士が隣接するように積層した構造であり、バイポーラ型の電池50内の構造は対称性が高い。そのため、バイポーラ型の電池50内の温度分布は、対称性が高い。また、バイポーラ型の電池50は、同一の構造の単電池を集電体同士が隣接するように積層した構造であるため、複数の単電池30に搭載された複数の温度センサ23の位置分布の対称性も高い。したがって、各単電池に搭載された温度センサが検出する温度分布は、パラメータ数が少ない関数で表現できる。パラメータ数は2以下または3以下とすることができる。これに対して、特許文献1のように、温度センサ23と単電池30との間に熱伝導部材が介在する場合には、単電池の温度を推定するための演算に用いる様々なパラメータを設定する必要があり、また、制御装置で組電池の異常検出のために行う演算処理が煩雑になる。熱伝導部材を有する組電池における温度分布をパラメータ数が少ない関数で表現した場合には、誤差が大きく、異常検出の精度が低下する。
【0045】
図3は、バイポーラ型の電池50の温度分布を表現する関数のグラフを示す図である。
図3に示すグラフは、パラメータの数が2の関数であるベータ分布の確率密度関数のグラフである。
図3に示すグラフの横軸は確率変数であり、縦軸は確率密度である。(a,b)は、確率密度関数に含まれるベータ関数のパラメータである。確率変数は、バイポーラ型の電池50を構成する複数の単電池の積層位置に関連付けられる。温度分布を表現する関数としてのパラメータの数が2以下または3以下の関数は、ベータ分布、コーシー分布、ガンマ分布、もしくは二項分布などの確率密度関数、または、その他の線形もしくは非線形関数から選ばれてよい。
【0046】
パラメータ(a,b)=(1,1)は、低負荷運転の場合のバイポーラ型の電池50の温度分布を示す。温度の分布は、バイポーラ型の電池50を構成する複数の単電池の積層位置によらない、一様分布を表している。
【0047】
パラメータ(a,b)=(2,2)は、熱伝達が均一で放熱が少ない場合のバイポーラ型の電池50の温度分布を示す。温度の分布は、積層位置が中心に近い単電池の温度が導電性シート51および導電性シート52に近い単電池の温度よりも高くなる、緩やかな凸状の分布を表している。上面または下面が外界と接する導電性シート51または導電性シート52に近い位置にある単電池ほど外界温度の影響を受けやすいことが表されている。
【0048】
パラメータ(a,b)=(5,5)は、熱伝達が均一で放熱が多い場合のバイポーラ型の電池50の温度分布を示す。温度の分布は、積層位置が中心に近い単電池の温度が導電性シート51および導電性シート52に近い単電池の温度よりも高くなる、急峻な凸状の分布を表している。
【0049】
パラメータ(a,b)=(9,3)は、バイポーラ型の電池50の各面(導電性シート51または52)の熱伝達係数が、隣接する単電池間の熱伝達計数に比べ、不均衡で放熱が多い場合のバイポーラ型の電池50の温度分布を示す。温度の分布は、バイポーラ型の電池50の各面に近い(導電性シートに近い)単電池の温度が、バイポーラ型の電池50の各面から遠い単電池の温度よりも高くなる、急峻な凸状の分布を表している。
【0050】
(バイポーラ型の電池の状態を判定する方法)
次に、
図4および
図5を参照して、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法を説明する。この方法は、例えば、バイポーラ型の電池の状態を判定するデバイス62が備えるプロセッサ64によって実行される。
【0051】
図4は、バイポーラ型の電池の状態を判定する方法の初期段階を示すフローチャートである。初期段階は、正常状態にあるバイポーラ型の電池を対象として実行されることを想定している。
【0052】
ステップS41において、プロセッサ64は、デバイス60から、バイポーラ型の電池50の稼働環境を示す情報および稼働状態を示す情報を取得する。
【0053】
ステップS42において、プロセッサ64は、デバイス60から、温度データを取得する。温度データは、バイポーラ型の電池50を構成する複数の単電池30に備えられた複数の温度センサ23によって測定された単電池の温度を示す。
【0054】
ステップS43において、プロセッサ64は、取得した温度データから、稼働環境および稼働状態における基準とされる温度の分布を示す情報を取得する。基準とされる温度の分布を示す情報は、温度の分布を示す関数であってよく、関数はベータ分布の確率密度関数であってもよい。
【0055】
この場合、ステップS43は、プロセッサ64が、温度の分布を示す情報として、関数(ベータ分布の確率密度関数)のパラメータの範囲を取得すること(ステップS431)を含んでもよい。例えば、ステップS431において、プロセッサ64は、取得した温度データを用いて、稼働環境および稼働状態における温度分布を表現する関数(確率密度関数に含まれるベータ関数)のパラメータ(a、b)を決定する。パラメータ(a、b)は、例えば最小二乗法等の既知の手法の何れを用いて決定してもよい。プロセッサ64は、温度データを取得するたびにパラメータ(a、b)を決定して、決定された複数のパラメータ(a、b)からパラメータの範囲を取得してもよい。パラメータの範囲は、基準とされる温度の分布を示す情報とされる。
【0056】
ステップS44において、プロセッサ64は、取得された基準とされる温度の分布を示す情報を、デバイス62が備えるストレージデバイス66に格納する。関数をベータ分布の確率密度関数とする場合、ステップS44は、プロセッサ64が、基準とされる温度の分布を示す情報として、関数(ベータ分布の確率密度関数)のパラメータの範囲をストレージデバイス66に格納すること(ステップ441)を含む。
【0057】
図2を参照して説明したように複数のバイポーラ型の電池50がある場合には、各バイポーラ型の電池50について基準とされる温度の分布を示す情報が格納されてもよい。複数のバイポーラ型の電池50の内の同一の構成の1つ以上のバイポーラ型の電池50から取得した温度データから、当該同一構成のバイポーラ型の電池50についての基準とされる温度の分布を示す情報が格納されてもよい。
【0058】
図7は、ストレージデバイス66に格納された基準とされる温度の分布を示す情報の例を示す。
図7は、テーブル形式で、ステップS441において決定されたパラメータの範囲と、バイポーラ型の電池50の稼働環境を示す情報(温度)および稼働状況を示す情報(出力電力および出力電圧)とを関連付けて格納した例を示す。
【0059】
図5は、バイポーラ型の電池の状態を判定する方法の定常運転段階を示すフローチャートである。定常運転段階において、
図4を参照して説明した初期段階のフローで取得した基準とされる温度の分布を示す情報を用いて、バイポーラ型の電池の状態を判定する。
【0060】
ステップS41およびS42は、
図4を参照して説明したので、説明を省略する。
【0061】
ステップS53において、プロセッサ64は、ステップS42で取得した温度データから、現在の稼働環境および稼働状態における現在の温度分布を示す情報を取得する。ステップS43で説明したのと同様に現在の温度分布を示す情報は、温度分布を示す関数であってよく、関数はベータ分布の確率密度関数であってもよい。
【0062】
この場合、ステップS53は、ステップS531において、プロセッサ64が、現在の温度分布を示す情報として、関数(ベータ分布の確率密度関数)のパラメータを取得することを含んでもよい。例えば、ステップS531において、プロセッサ64は、取得した温度データを用いて、稼働環境および稼働状態における現在の温度分布を表現する関数(確率密度関数に含まれるベータ関数)のパラメータ(a、b)を決定する。パラメータ(a、b)は、例えば最小二乗法等の既知の手法の何れを用いて決定してもよい。決定されたパラメータ(a、b)は、現在の温度分布を示す情報とされる。
【0063】
ステップS54において、プロセッサ64は、現在の温度分布を示す情報に基づいて、バイポーラ型の電池50の状態を判定する。例えば、プロセッサ64は、ステップS53で取得した情報により示される現在の温度分布が、ステップS41において取得した情報によって示された稼働環境および稼働状態における温度分布に相応しいかどうかを判定することができる。
【0064】
例えば、
図2を参照して説明したように複数のバイポーラ型の電池50がある場合には、ステップS54において、プロセッサ64は、同一の稼働環境および稼働状態にある同一構成の他のバイポーラ型の電池50の現在の温度分布をストレージデバイス66から取得して、現在の温度の分布を示す情報と比較することによりバイポーラ型の電池50の状態を判定してもよい。
【0065】
例えば、ステップS54は、プロセッサ64が、現在の温度の分布を示す情報を基準とされる温度分布を示す情報と比較すること(ステップS541)を含んでもよい。プロセッサ64は、ステップS41で取得した情報によって示される稼働環境および稼働状態と関連付けられた基準とされる温度分布を示す情報を、ストレージデバイス66から取得して、現在の温度の分布を示す情報と比較することができる。
【0066】
温度の分布を示す情報が温度の分布を示す関数であり、関数がベータ分布の確率密度関数である場合、ステップS54は、プロセッサ64が、現在の温度分布を示す情報のパラメータが基準とされる温度分布のパラメータの範囲外であるかどうかを判定すること(ステップS5411)を含んでもよい。
【0067】
図6は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法において用いられる基準とされる温度分布のパラメータの範囲を説明するための図である。初期段階では、ステップS431において正常状態のバイポーラ型の電池50から取得した複数の温度分布のパラメータ(a、b)からパラメータの分布と確率の関係を取得し、所定の確率以上となるパラメータの分布の範囲を正常な範囲と決定する。正常な範囲と決定されたパラメータの分布のパラメータの範囲が、基準とされる温度の分布を示す情報とされる。一方、定常運転段階では、追加的および/または周期的に、温度データが取得され、温度分布を示す情報が取得される。したがって、初期段階および定常運転段階において取得される正常状態のバイポーラ型の電池50の複数の温度分布のパラメータ(a、b)の分布と確率の関係を取得し、所定の確率以上となるパラメータの分布の範囲を更新してもよい。この場合、
図7に示したパラメータの範囲が更新の対象となる。
【0068】
図8は、本発明の一実施形態にかかるバイポーラ型の電池の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
図8のフローは、特に、ステップS5411(
図5)の電池の状態を判定すること、および
図7を参照して説明したパラメータの分布の範囲を更新することに関する。
【0069】
ステップS5411において、プロセッサ64により、現在の温度分布を示す情報のパラメータが基準とされる温度分布のパラメータの範囲外であると判定されると、ステップS82において、プロセッサ64は、ステップS41で取得した現在の稼働状態(現在出力の電圧)、ステップS42で取得した温度データが示す各単電池の現在の温度、およびその他の情報等が、単電池または積層電池(バイポーラ型の電池50)の異常を示すかどうかを判定する。一方、ステップS5411において、プロセッサ64により、現在の温度分布を示す情報のパラメータが基準とされる温度分布のパラメータの範囲内であると判定されると、ステップS84において、プロセッサ64は、
図7を参照して説明したように、基準とされる温度の分布を示す情報(パラメータの範囲)を更新して格納する。
【0070】
ステップS82において、プロセッサ64により、情報が単電池または積層電池の異常を示すと判定されると、ステップS83において、プロセッサ64は、異常を示すアラートを発する。例えば、プロセッサ64は、ディスプレイや音源等の出力装置68にアラートを出力する。一方、ステップS82において、プロセッサ64により、情報が単電池または積層電池の正常を示すと判定されると、ステップS84において、プロセッサ64は、
図7を参照して説明したように、基準とされる温度の分布を示す情報(パラメータの範囲)を更新して格納する。
【0071】
以上説明したように、より簡易な方法により、バイポーラ型の電池を構成する複数の単電池の温度分布を取得し、取得した温度分布を用いて当該バイポーラ型の電池の状態を判定することが可能になる。
【符号の説明】
【0072】
12 正極
15 正極活物質層
17 正極集電体
13 負極
16 負極活物質層
19 負極集電体
14 セパレータ
18 枠部材
21 配線基板
22 発光部
23 温度センサ
26 絶縁樹脂
30 単電池
50 バイポーラ型の電池
51、52 導電性シート
60 バイポーラ型の電池の制御するデバイス
61 通信ネットワーク
62 バイポーラ型の電池の状態を判定するデバイス
63 通信デバイス
64 プロセッサ
65 メインメモリ
66 ストレージデバイス
67 入力装置
68 出力装置