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特開2022-167419抗ウィルス層付きシュリンクフィルム及びその製造方法、並びに、包装材料
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  • 特開-抗ウィルス層付きシュリンクフィルム及びその製造方法、並びに、包装材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167419
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】抗ウィルス層付きシュリンクフィルム及びその製造方法、並びに、包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/14 20060101AFI20221027BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20221027BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221027BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B32B37/14 Z
B32B27/26
B32B27/18 F
B05D7/00 A
B05D7/04
B05D7/00 K
B05D7/24 303A
B05D7/24 301R
B05D3/04 Z
B05D5/00 Z
B05D3/00 D
B65D65/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073193
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】村田 芳綱
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
【テーマコード(参考)】
3E086
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD16
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA40
3E086BB67
3E086BB90
3E086DA08
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075BB60Z
4D075BB92Y
4D075BB93Z
4D075CA13
4D075CA45
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB31
4D075DB48
4D075DC36
4D075EA05
4D075EA19
4D075EB38
4D075EB45
4D075EC01
4D075EC10
4D075EC30
4D075EC51
4D075EC54
4F100AB02B
4F100AB12B
4F100AB18B
4F100AB21B
4F100AB22B
4F100AB24
4F100AB24B
4F100AB25B
4F100AK01B
4F100AK42
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CA12
4F100CA12B
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ42
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4F100EJ86B
4F100GB15
4F100GB66
4F100JA03
4F100JA03A
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4F100JB13
4F100JB13B
4F100JC00
4F100JC00B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】抗ウィルス剤の脱離耐性に優れる抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを提供すること。
【解決手段】シュリンクフィルム基材上に、抗ウィルス剤及び熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成する工程aと、熱硬化性樹脂組成物からなる層を加熱して硬化させることにより抗ウィルス層を形成する工程bと、を備える、抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュリンクフィルム基材上に、抗ウィルス剤及び熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成する工程aと、
前記熱硬化性樹脂組成物からなる層を加熱して硬化させることにより抗ウィルス層を形成する工程bと、を備える、抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記工程aでは、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分と沸点が85℃以下の溶媒とを含む塗液を前記シュリンクフィルム基材上に塗布し、得られた塗膜を65℃以下の温度で乾燥させることにより、前記熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成する、請求項1に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記工程bでは、前記熱硬化性樹脂組成物からなる層を65℃以下の温度で加熱して硬化させることにより、前記抗ウィルス層を形成する、請求項1又は2に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物が、熱硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記工程aでは、前記抗ウィルス層の厚さが0.5μm以上となるように、前記熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記抗ウィルス剤の含有量が、前記熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、0.5~40質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記抗ウィルス剤が、Ag、Cu、Sb、Ir、Ti、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn及びIn、並びに、これらの金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法。
【請求項8】
シュリンクフィルム基材と、該シュリンクフィルム基材上に設けられた抗ウィルス層とを有し、
前記抗ウィルス層が、抗ウィルス剤及び熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項9】
70℃の温水に10秒間浸漬したとき、積層方向に垂直な一方向における熱収縮率が1.5%以上である、請求項8に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物が、熱硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を更に含む、請求項8又は9に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項11】
前記抗ウィルス層の厚さが0.5μm以上である、請求項8~10のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記抗ウィルス剤の含有量が、前記熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、0.5~40質量%である、請求項8~11のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項13】
前記抗ウィルス層を前記シュリンクフィルム基材側とは反対側から見たとき、前記抗ウィルス剤が前記抗ウィルス層全体に占める面積率が10.0%以上である、請求項8~12のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項14】
前記抗ウィルス剤が、Ag、Cu、Sb、Ir、Ti、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn及びIn、並びに、これらの金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか一項に記載の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを備える、包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウィルス層付きシュリンクフィルム及びその製造方法、並びに、包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の生活は、紙、プラスチック、金属フィルム、これらの複合体等により構成された包装材料によってますます豊かなものになっている。例えば、食品包材においては、上記包装材料を用いることで、金属缶よりも安価で且つ軽く、生産効率性の良い容器を提供することが可能となっている。中でもシュリンクフィルムを包装材料に用いる場合は、密封性が高く防塵防水に優れる、2つ以上の商品を同梱できる、箱等の梱包材を削減することができ、コストダウンが可能である、といった利点がある。
【0003】
一方、これらの包装材料は、例えば店頭等に陳列された際、不特定多数の人が接触する機会があるためウィルスを媒介しうる。例えば、接触者がウィルスに感染していた場合、そのウィルスが包装材料に付着し、その後の接触者にウィルスを付着させてしまう。本課題に対して、特許文献1は、粉末状の抗ウィルス剤をスプレー噴霧して表面に抗ウィルス剤を付着させたフィルムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-134753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、粉末状の抗ウィルス剤がシュリンクフィルム基材の表面に付着しているだけであるため、基材表面から抗ウィルス剤が脱離し易く、脱離によって抗ウィルス性そのものが失われるという問題を有している。
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決するため、抗ウィルス剤を樹脂バインダーと混合した上でシュリンクフィルム基材に付着させることを検討した。しかしながら、シュリンクフィルム用インキとして従来用いられているUV硬化性樹脂インキを樹脂バインダーとして用いた場合、接触等の外力により抗ウィルス剤が脱離し易く、抗ウィルス効果が持続し難いことが明らかとなった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、抗ウィルス剤の脱離耐性に優れる抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、シュリンクフィルム基材上に、抗ウィルス剤及び熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成する工程aと、熱硬化性樹脂組成物からなる層を加熱して硬化させることにより抗ウィルス層を形成する工程bと、を備える、抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法を提供する。
【0009】
上記側面の製造方法によれば、抗ウィルス剤の脱離耐性に優れる抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを提供可能である。この理由は次のように推察される。まず、従来用いられているUV硬化性樹脂インキを用いた場合に抗ウィルス剤が脱離し易い理由は、抗ウィルス剤が一般的に光透過性を有さず、層内へのUVの透過を阻害するため、樹脂の硬化が不十分となるためと推察される。一方、上記側面の製造方法では、加熱硬化により抗ウィルス層を形成するため、UV硬化性樹脂インキを用いる場合のような抗ウィルス剤に起因する硬化阻害を起こすことなく、凝集力の高い抗ウィルス層が形成される。また、抗ウィルス層が硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化層であるため、抗ウィルス層自体の基材に対する密着力にも優れる。そのため、上記側面の製造方法によれば、抗ウィルス剤の脱離耐性に優れる抗ウィルス層付きシュリンクフィルムが得られると推察される。
【0010】
また、上記方法で製造される抗ウィルス層付きシュリンクフィルムでは抗ウィルス剤がシュリンクフィルムの一方面側に偏在しているため、該シュリンクフィルムを包装材料に使用する場合、フィルム全体に抗ウィルス剤が存在する抗ウィルス性シュリンクフィルムを包装材料に使用する場合と比較して、低コストで高い抗ウィルス性を発現できる、内容物に対する抗ウィルス剤起因の不具合発生を回避できるといった利点がある。
【0011】
上記工程aでは、熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分と沸点が85℃以下の溶媒とを含む塗液をシュリンクフィルム基材上に塗布し、得られた塗膜を65℃以下の温度で乾燥させることにより、熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成してよい。この方法によれば、シュリンクフィルム基材のシュリンク性(熱収縮性)が維持されやすくなるため、充分なシュリンク性を有する抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを容易に得ることができる。
【0012】
上記工程bでは、熱硬化性樹脂組成物からなる層を65℃以下の温度で加熱して硬化させることにより、抗ウィルス層を形成してよい。この方法によれば、シュリンクフィルム基材のシュリンク性(熱収縮性)が維持されやすくなるため、充分なシュリンク性を有する抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを容易に得ることができる。
【0013】
上記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を更に含んでいてよい。イソシアネート系硬化剤を用いることで、熱硬化性樹脂組成物の低温硬化性が向上するため、より低温での硬化が可能となり、充分なシュリンク性を有する抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを容易に得ることができる。
【0014】
上記工程aでは、抗ウィルス層の厚さが0.5μm以上となるように、熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成してよい。抗ウィルス層の厚さが0.5μm以上であると、抗ウィルス層内の凝集力に優れるとともに、抗ウィルス層のシュリンクフィルム基材に対する密着性に優れる傾向がある。
【0015】
上記熱硬化性樹脂組成物における抗ウィルス剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、0.5~40質量%であってよい。この場合、抗ウィルス層の表面に存在する抗ウィルス剤の量と樹脂硬化物の量とのバランスがよく、高い抗ウィルス性と高い抗ウィルス剤の脱離耐性とを両立することができる。
【0016】
上記抗ウィルス剤は、Ag、Cu、Sb、Ir、Ti、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn及びIn、並びに、これらの金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むものであってよい。これらの抗ウィルス剤によれば、高い抗ウィルス性が得られる傾向がある。
【0017】
本発明の他の一側面は、シュリンクフィルム基材と、該シュリンクフィルム基材上に設けられた抗ウィルス層とを有し、抗ウィルス層が、抗ウィルス剤及び熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを提供する。
【0018】
上記抗ウィルス層付きシュリンクフィルムは、70℃の温水に10秒間浸漬したとき、積層方向に垂直な一方向における熱収縮率が1.5%以上であってよい。このような抗ウィルス層付きシュリンクフィルムは、高いシュリンク性を有するといえる。
【0019】
上記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を更に含んでいてよい。
【0020】
上記抗ウィルス層の厚さは0.5μm以上であってよい。
【0021】
上記熱硬化性樹脂組成物における抗ウィルス剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、0.5~40質量%であってよい。
【0022】
上記抗ウィルス層をシュリンクフィルム基材側とは反対側から見たとき、抗ウィルス剤が抗ウィルス層全体に占める面積率は10.0%以上であってよい。この場合、抗ウィルス剤とウィルスとの接触確率が高まり、結果として高い抗ウィルス性を発現できる。
【0023】
上記抗ウィルス剤は、Ag、Cu、Sb、Ir、Ti、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn及びIn、並びに、これらの金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むものであってよい。
【0024】
本発明の他の一側面は、上記側面の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを備える、包装材料を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、抗ウィルス剤の脱離耐性に優れる抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを示す模式断面図である。
図2図1に示す抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの製造方法を説明するための模式断面図である。
図3】本発明の他の一実施形態に係る抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0028】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は、一実施形態の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを示す模式断面図である。図1に示す抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10は、シュリンクフィルム基材1と、シュリンクフィルム基材1上に設けられた抗ウィルス層2とを有する。
【0030】
シュリンクフィルム基材1は、シュリンク性(熱収縮性)を有するフィルム状の基材であり、熱により面内方向(厚さ方向に垂直な方向)の少なくとも一方向に収縮する。ここで、フィルム状とは、薄い膜状を意味する。シュリンクフィルム基材1の厚さは、例えば、100μm以下である。シュリンクフィルム基材1の厚さは、搬送性及び製造時の塗工性の観点から、好ましくは4.5μm以上(例えば4.5~100μm)であり、より好ましくは12μm以上(例えば12~100μm)である。
【0031】
シュリンクフィルム基材1は、例えば、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム等の延伸フィルムであり、延伸方向に熱収縮する。シュリンクフィルム基材1は、例えば、JIS Z1709における1種2号に分類されるフィルムと同等のシュリンク性を有する。
【0032】
シュリンクフィルム基材1は、単層構成であっても多層構成であってもよいが、少なくとも1層にシュリンク性を有する層を含む。シュリンクフィルム基材1の各層を構成する材料としては、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、又は、これらの混合物が挙げられる。
【0033】
抗ウィルス層2は、抗ウィルス剤3及び熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。硬化物は、抗ウィルス剤3と、熱硬化性樹脂等の樹脂成分(熱硬化性樹脂組成物中の抗ウィルス剤3以外の成分)が硬化してなる樹脂硬化物4とで構成されている。
【0034】
抗ウィルス剤3は、抗ウィルス層2において樹脂硬化物4によって固定されている。抗ウィルス剤3としては、抗ウィルス性を有する材料を広く使用可能である。高い抗ウィルス性が得られる観点では、抗ウィルス剤3が、Ag、Cu、Sb、Ir、Ti、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn及びIn、並びに、これらの金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を抗ウィルス成分として含むことが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記金属又は金属化合物からなる抗ウィルス成分に含まれる金属原子は正の電荷を有している。ウィルスが有するエンベロープは負に帯電しているため、金属原子がエンベロープを引き付けて不活性化することにより、その感染力を奪うことができる。また、上記金属又は金属化合物は、活性酸素を発生し、この活性酸素の作用により、ウィルスを不活性化してその感染力を奪うこともある。
【0036】
抗ウィルス成分の含有量は、例えば、抗ウィルス剤3の全質量を基準として、0.5質量%以上(例えば0.5~100質量%)であり、2.5質量%以上又は5質量%以上であってもよい。抗ウィルス成分の含有量は、例えば、抗ウィルス剤3の全質量を基準として、100質量%以下であってよい。
【0037】
抗ウィルス剤3は、例えば、粒子状である。抗ウィルス剤3は、上記抗ウィルス成分からなる粒子であってよく、上記抗ウィルス成分が、担持粒子(例えば多孔質粒子)に担持(例えば分散)されたものであってもよい。
【0038】
抗ウィルス剤3の平均粒子径は、例えば、0.1~15μmであり、1~12μm又は2~7μmであってもよい。ここで、平均粒子径とは、レーザ回折式乾式粒度分布測定装置により得られる体積基準の粒度分布のD50値を意味する。
【0039】
抗ウィルス剤3としては、市販されているものを用いることもできる。例えば、銀(Ag)系の抗ウィルス剤としては、株式会社タイショーテクノス製のビオサイドTB-B100(「ビオサイド」は登録商標(以下同じ))、東亜合成株式会社製のノバロンIV1000(「ノバロン」は登録商標(以下同じ))、DIC株式会社製のW260、東洋インキ株式会社製のZ253コウキンAP10、大日精化工業株式会社製のPCT-NT ANV添加剤等が挙げられる。また、銅(Cu)系の抗ウィルス剤としては、株式会社NBCメッシュテック製のCufitec(「Cufitec」は登録商標(以下同じ))等が挙げられる。また、亜鉛(Zn)系の抗ウィルス剤としては、株式会社タイショーテクノス製の3000D等が挙げられる。
【0040】
抗ウィルス層2をシュリンクフィルム基材1側とは反対側から見たとき、抗ウィルス剤3が抗ウィルス層2全体に占める面積率(面積占有率)は10.0%以上であることが好ましい。この場合、ウィルスと抗ウィルス剤3との接触確率が高まり、結果として高い抗ウィルス性を発現できる。上記面積占有率は、より高い抗ウィルス性が得られる観点から、より好ましくは12.5%以上であり、更に好ましくは15.0%以上である。上記面積占有率は、樹脂硬化物に対する抗ウィルス剤3の量が多くなり過ぎず、抗ウィルス剤3の脱離耐性により優れる観点から、好ましくは50.0%以下であり、より好ましくは40.0%以下であり、更に好ましくは35.0%以下である。これらの観点から、上記面積占有率は、10.0~50.0%、12.5~40.0%又は15.0~35.0%であってよい。上記面積占有率は、例えば、抗ウィルス剤の含有量、抗ウィルス層製造時における抗ウィルス剤の分散手法、抗ウィルス層形成用の塗液の塗布量、抗ウィルス剤の平均粒子径等により調整できる。
【0041】
抗ウィルス剤3の含有量は、抗ウィルス層2の表面に存在する抗ウィルス剤3の量が多くなることで抗ウィルス剤3とウィルスとの接触確率が高まり、高い抗ウィルス性が発現されやすくなる観点から、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは5.0質量%以上である。抗ウィルス剤3の含有量は、樹脂硬化物に対する抗ウィルス剤3の量が多くなり過ぎず、抗ウィルス剤3の脱離耐性により優れる観点から、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、抗ウィルス剤3の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、0.5~40質量%、1.0~30質量%又は5.0~20質量%であってよい。なお、本明細書において、「熱硬化性樹脂組成物の全質量」は、「抗ウィルス層の全質量」(或いは「熱硬化性樹脂組成物の硬化物の全質量」)といいかえてよい。
【0042】
熱硬化性樹脂としては、熱により単独で又は硬化剤と反応して架橋構造を形成する化合物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0043】
後述するイソシアネート系硬化剤を熱硬化剤として用いる場合、熱硬化性樹脂として、アルコール性水酸基を有する化合物(例えばポリオール)を用いることもできる。アルコール性水酸基を有する化合物としては、適切な膜硬度が求められる観点から、(メタ)アクリルポリオールが好ましく用いられる。
【0044】
熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂硬化物に対する抗ウィルス剤3の量が多くなり過ぎず、抗ウィルス剤3の脱離耐性により優れる観点から、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。熱硬化性樹脂の含有量は、抗ウィルス層2の表面に存在する抗ウィルス剤3の量が多くなることで抗ウィルス剤3とウィルスとの接触確率が高まり、高い抗ウィルス性が発現されやすくなる観点から、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは93質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。これらの観点から、熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、60~95質量%、70~93質量%又は80~90質量%であってよい。
【0045】
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化剤(上記熱硬化性樹脂の硬化剤)を更に含んでいてもよい。熱硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系硬化剤が好ましく用いられる。イソシアネート系硬化剤を用いる場合、熱硬化性樹脂組成物の低温硬化性が向上するため、充分なシュリンク性を有する抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを容易に得ることができる。イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
熱硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂の種類及び熱硬化剤の種類に応じて適宜設定してよい。熱硬化性樹脂が(メタ)アクルポリオールであり、熱硬化剤がイソシアネート系硬化剤である場合、(メタ)アクリルポリオールのOH基に対するイソシアネート系硬化剤のNCO基の当量比(NCO/OH)が0.3以上2.5以下であることが好ましく、0.5以上2.0以下であることがより好ましい。NCO/OHが0.3以上であると耐摩擦性が向上し、2.5以下であるとエージング時のブロッキングを防止できる。
【0047】
抗ウィルス層2の厚さは、抗ウィルス層2内の凝集力、及び、抗ウィルス層2のシュリンクフィルム基材1に対する密着性により優れる観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上である。抗ウィルス層2の厚さは、乾燥不良を防止する観点から、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。これらの観点から、抗ウィルス層2の厚さは、0.5~15μm又は1.0~10μmであってよい。
【0048】
上記実施形態の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10は、包装材料として好適に用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10を備える包装材料を提供する。抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10は、単独で包装材料に用いてよく、他の材料と組み合わせて(例えば、シュリンクフィルム付き台紙等の包装材料として)用いることもできる。なお、包装材料は、食品等の包装に用いられる食品包材などに限られず、ドアノブ等を被覆する被覆材料も包含する。
【0049】
図2は、上記実施形態の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10の製造方法を説明するための模式断面図である。上記実施形態の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10の製造方法は、シュリンクフィルム基材5上に、抗ウィルス剤3を含む熱硬化性樹脂組成物からなる層7を形成する工程aと、熱硬化性樹脂組成物からなる層7を加熱して硬化させることにより抗ウィルス層2を形成する工程bと、を備える。
【0050】
工程aでは、例えば、まず、上記熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分(抗ウィルス剤3、熱硬化性樹脂、熱硬化剤等)と溶媒とを混合し、抗ウィルス剤3を分散させることにより、熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分と溶媒とを含む塗液(分散液)を形成する。
【0051】
溶媒は、熱硬化性樹脂、硬化剤等の樹脂成分を溶解可能な溶媒であればよいが、沸点が85℃以下(例えば50~85℃)の溶媒が好適に用いられる。上記沸点を有する溶媒を用いることでシュリンクフィルム基材5の熱収縮開始温度よりも低い温度(例えば65℃以下)であっても短時間で乾燥を完了させることが可能となり、充分なシュリンク性を有する抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを容易に得ることができる。なお、沸点は、1気圧における沸点である。
【0052】
85℃以下の沸点を有する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル等が挙げられる。溶媒の配合量は、例えば、塗液の全質量を基準として、10~90質量%とすることができる。
【0053】
塗液形成時における抗ウィルス剤3の分散方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、プロペラ攪拌、ホモジナイザー、ビーズミル等を用いる方法が挙げられる。これらの中でも、抗ウィルス剤3をより良好に分散させることができ、抗ウィルス層2の表面に存在する抗ウィルス剤3の量を多くする(抗ウィルス剤3の面積占有率を高める)観点から、プロペラ撹拌を用いる方法が好ましく用いられる。
【0054】
次に、シュリンクフィルム基材5上に上記塗液を塗布し、乾燥することにより、図2の(a)に示す熱硬化性樹脂組成物からなる層7を形成する。熱硬化性樹脂組成物からなる層7において、抗ウィルス剤3は、樹脂成分6(抗ウィルス剤以外の成分)中に分散している。
【0055】
シュリンクフィルム基材5の詳細は、上述したシュリンクフィルム基材1と同じである。シュリンクフィルム基材5がそのまま、又は、抗ウィルス層2の形成過程における加熱により僅かに熱収縮し、シュリンクフィルム基材1となる。
【0056】
塗液を塗布する際の塗工方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、グラビア塗工、ロール塗工、ダイ塗工、バー塗工、エアナイフ塗工、スクリーン塗工、カーテン塗工等の塗工方式が挙げられる。塗液の塗布量は、抗ウィルス層2の厚さが上述した範囲となるように調整することが好ましい。具体的には、例えば、乾燥後に得られる熱硬化性樹脂組成物からなる層7の厚さが0.5~15μmとなるように調整することが好ましい。
【0057】
乾燥方法は、溶媒の種類等に応じて適宜選択してよい。乾燥方法は、加熱乾燥であっても減圧乾燥であってもよく、これらを併用してもよい。乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いることができる。乾燥温度は、シュリンクフィルム基材5のシュリンク性(熱収縮性)が維持されやすくする観点から、好ましくは65℃以下(例えば30~65℃)であり、より好ましくは60℃以下(例えば40~60℃)である。乾燥時間は、好ましくは3分間以下(例えば0.05~3分間)である。
【0058】
上記工程aでは、溶媒が完全に除去されず、熱硬化性樹脂組成物からなる層7中に溶媒が僅かに残留していてもよい。例えば、熱硬化性樹脂組成物からなる層7における溶媒(例えば沸点が85℃以下の溶媒)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物からなる層7の全質量を基準として、1~1000ppmであってよい。
【0059】
また、上記工程aでは、熱硬化性樹脂組成物自体が塗工可能な粘度を有する場合には、溶媒を使用しなくてもよい。
【0060】
工程bでは、熱硬化性樹脂組成物からなる層7を加熱して硬化させることにより、図2の(b)に示す抗ウィルス層2を形成する。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物からなる層7の加熱には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いることができる。加熱温度は、シュリンクフィルム基材5のシュリンク性(熱収縮性)が維持されやすくする観点から、好ましくは65℃以下(例えば30~65℃)であり、より好ましくは60℃以下(例えば40~60℃)である。
【0062】
以上の方法により製造される抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10は、全体としてシュリンク性(熱収縮性)を有するものである。具体的には、例えば、抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10を70℃の温水に10秒間浸漬したときの積層方向に垂直な一方向における熱収縮率が、1.5%以上(例えば1.5%~20%)であり、10%以上又は20%以上とすることもできる。また、例えば、抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10を80℃の温水に10秒間浸漬したときの積層方向に垂直な一方向における熱収縮率が、30%以上(例えば30~45%)であり、35%以上又は40%以上とすることもできる。また、例えば、抗ウィルス層付きシュリンクフィルム10を90℃の温水に10秒間浸漬したときの積層方向に垂直な一方向における熱収縮率が、40%以上(例えば40~60%)であり、50%以上又は60%以上とすることもできる。なお、上記積層方向に垂直な一方向は、シュリンクフィルム基材1の収縮方向と同じ方向であり、例えば、シュリンクフィルム基材1の延伸方向である。
【0063】
以上、一実施形態の抗ウィルス層付きシュリンクフィルム及びその製造方法、並びに、該抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを備える包装材料について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0064】
例えば、抗ウィルス層付きシュリンクフィルムは、シュリンクフィルム基材及び抗ウィルス層以外の層を更に有していてもよい。例えば、図3に示すように、シュリンクフィルム基材1の抗ウィルス層2側とは反対側に印刷層8が設けられて抗ウィルス層付きシュリンクフィルム20が構成されていてもよい。印刷層8は、例えば、意匠性の観点から設けられる層である。印刷層8の印刷方法としては、公知の方法を用いることができ、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などで顔料インキ又は染料インキを印刷することにより形成するができる。印刷層8を形成する場合、加工の順番に制約はなく、抗ウィルス層2を形成してから印刷層8を形成してよく、印刷層8を形成してから抗ウィルス層2を形成してもよい。図示しないが、印刷層8は、シュリンクフィルム基材1と抗ウィルス層2との間に設けられてもよい。
【実施例0065】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
(抗ウィルス層付きシュリンクフィルムの作製)
基材(シュリンクフィルム基材)としてシュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用意した。抗ウィルス剤であるビオサイドTB-B100(株式会社タイショーテクノス製、商品名、主成分:Ag)と、イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)と、溶媒(希釈溶剤)であるMEK(メチルエチルケトン、沸点:80℃)とをスターラーを用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を乾燥させることで、抗ウィルス剤を含む未硬化の樹脂層(熱硬化性樹脂組成物からなる層)を形成した。この際、溶媒の配合量は、塗液の全質量を基準として、35質量%とし、乾燥は、乾燥後に得られる樹脂層中の抗ウィルス剤量が7質量%となるように、60℃で1分間行った。次いで、得られた樹脂層を、50℃で3日間加熱することにより硬化させ、厚さ3μmの抗ウィルス層を形成した。以上の操作により、実施例1のシュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を得た。
【0067】
(抗ウィルス剤の面積占有率の測定)
抗ウィルス層付きシュリンクフィルムにおける抗ウィルス層を、基材側とは反対側から光学顕微鏡で観察し、抗ウィルス剤が抗ウィルス層全体に占める面積率(面積占有率)を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(抗ウィルス性評価)
ISO 21702に準じて抗ウィルス試験を実施した。具体的には、まず、シュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を50mm×50mmに切り出し、供試試料とした。次いで、供試試料を抗ウィルス層側が上方となるように滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウィルス液を試料上に接種した。このとき、ウィルス液は、エンペローブウィルス(インフルエンザウィルス)を含むウィルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃、湿度90%以上の条件で、試料にウィルスを接種させた。所定時間後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウィルスを洗い出し、洗い出し液を回収した。回収した洗い出し液を用いて、以下の方法(プラーク法)でウィルス感染価を測定した。
【0069】
[ウィルス感染価の測定(プラーク法)]
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO・37℃の条件で1時間培養し、細胞にウィルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2~3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
【0070】
[ウィルス感染価の算出]
以下の式にしたがって、試料1cm当たりのウィルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm当たりのウィルス感染価(PFU/cm
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウィルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0071】
[抗ウィルス活性値の算出]
以下の式にしたがって、抗ウィルス活性値を算出した。
抗ウィルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm当たりのウィルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウィルス加工試料1cm当たりのウィルス感染価の常用対数値
【0072】
算出した抗ウィルス活性値を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○(良好):抗ウィルス活性値2log10以上である場合
×(不良):抗ウィルス活性値2log10未満である場合
【0073】
(脱離耐性評価)
JIS-K5600付着性試験に準拠し、シュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を抗ウィルス層側から1mm間隔でクロスカットした後、抗ウィルス層上にニチバンのセロテープ(「セロテープ」は登録商標)を貼り付け、抗ウィルス層が透けて見えるようにしっかり指でテープをこすりつけた。次いで、60°に近い角度で、0.5~1.0秒間でセロテープを引き剥がした後、抗ウィルス層の状態を観察し、脱離耐性を評価した。JIS K5600-5-6付着性試験(クロスカット法)では、この試験結果を分類0~分類5の6段階に分類している。その分類0~分類5は次のとおりである。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが、15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は目のいろいろな部分が,部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に15%を超えるが、35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に65%を上回ることはない。
分類5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
本評価では、0~2に分類される場合に〇(良好)とし、3~5に分類される場合に×(不良)とした。結果を表1に示す。
【0074】
(製造時の熱収縮評価)
抗ウィルス層を形成する前後での熱収縮を評価した。具体的には、基材(シュリンクフィルム)の延伸方向が短手方向となるように基材をA4サイズにカットした。次いで、上記と同様にして、A4サイズの基材上に抗ウィルス層を形成した後、短手方向(基材の延伸方向に対応する方向)の長さを測定し、下記式から製造時の熱収縮率(延伸方向における熱収縮率)を算出した。
製造時の熱収縮率[%]=(抗ウィルス層形成前の短手方向の長さ[mm]-抗ウィルス層形成後の短手方向の長さ[mm])÷抗ウィルス層形成前の短手方向の長さ[mm]×100
【0075】
製造時の熱収縮を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇(良好):製造時の熱収縮率が1%未満
×(不良):製造時の熱収縮率が1%以上
【0076】
(シュリンク性評価)
シュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)の延伸方向が長手方向となるように、10mm×100mmの評価サンプルを切り出した。次いで、評価サンプルを70℃、80℃又は90℃の温水に10秒浸漬させた。浸漬前後での長手方向(シュリンクフィルムの延伸方向に対応する方向)の長さを測定し、下記式からシュリンク率(延伸方向におけるシュリンク率)を算出した。
シュリンク率[%]=(加熱前の長手方向の長さ[mm]-加熱後の長手方向の長さ[mm])÷加熱前の長手方向の長さ[mm])×100
【0077】
シュリンク性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇(良好):70℃で加熱した時の熱収縮率が1.5%以上
×(不良):70℃で加熱した時の熱収縮率が1.5%未満
【0078】
<実施例2>
基材(シュリンクフィルム基材)としてシュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用意した。抗ウィルス剤であるCufitec(株式会社NBCメッシュテック製、商品名、主成分:Cu)と、イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)と、溶媒(希釈溶剤)であるMEK(メチルエチルケトン、沸点:80℃)とをプロペラ撹拌機を用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を乾燥させることで、抗ウィルス剤を含む未硬化の樹脂層(熱硬化性樹脂組成物からなる層)を形成した。この際、溶媒の配合量は、塗液の全質量を基準として、35質量%とし、乾燥は、乾燥後に得られる樹脂層中の抗ウィルス剤量が0.6質量%となるように、60℃で1分間行った。次いで、得られた樹脂層を、50℃で3日間加熱することにより硬化させ、厚さ1μmの抗ウィルス層を形成した。以上の操作により、実施例2のシュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス剤の面積占有率の測定、抗ウィルス性評価、脱離耐性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例3>
実施例1と同様にして、基材(シュリンクフィルム基材)上に抗ウィルス層を形成した後、基材の抗ウィルス層側とは反対側の面に、東洋インキ株式会社製のリオアルファをグラビア印刷により塗布し、乾燥することにより印刷層を形成した。以上の操作により、実施例3の抗ウィルス層付きシュリンクフィルムを得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス剤の面積占有率の測定、抗ウィルス性評価、脱離耐性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<比較例1>
比較例1のシュリンクフィルムとしては、シュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用い、実施例1と同様にして、抗ウィルス性評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
<比較例2>
基材(シュリンクフィルム基材)としてシュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用意した。イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)と、溶媒(希釈溶剤)であるMEK(メチルエチルケトン、沸点:80℃)とをスターラーを用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を乾燥させることで、抗ウィルス剤を含まない未硬化の樹脂層(熱硬化性樹脂組成物からなる層)を形成した。この際、溶媒の配合量は、塗液の全質量を基準として、35質量%とし、乾燥は、60℃で1分間行った。次いで、得られた樹脂層を、50℃で3日間加熱することにより硬化させ、厚さ1μmの樹脂硬化層を形成した。以上の操作により、比較例2のシュリンクフィルム(樹脂硬化層付きシュリンクフィルム)を得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
<比較例3>
基材(シュリンクフィルム基材)としてシュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用意した。抗ウィルス剤であるビオサイドTB-B100(株式会社タイショーテクノス製、商品名、主成分:Ag)と、溶媒(希釈溶剤)であるMEK(メチルエチルケトン、沸点:80℃)とをビーズミルを用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を乾燥させることで、実質的に抗ウィルス剤からなる厚さ1μmの抗ウィルス層を形成した。この際、乾燥は、60℃で1分間行った。以上の操作により、比較例3のシュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス性評価、脱離耐性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
<比較例4>
基材(シュリンクフィルム基材)としてシュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用意した。抗ウィルス剤であるビオサイドTB-B100(株式会社タイショーテクノス製、商品名、主成分:Ag)と、UV硬化性インキであるFDカルトンOPニスG(東洋インキ株式会社製、商品名)とをビーズミルを用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。これにより、抗ウィルス剤を含む未硬化の樹脂層(UV硬化性樹脂組成物からなる層)を形成した。次いで、得られた樹脂層に対し、高圧水銀ランプ(120w/cm×2本)で1秒間UV照射を行うことで樹脂層を硬化させ、厚さ3μmの抗ウィルス層を形成した。以上の操作により、比較例4のシュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス剤の面積占有率の測定、抗ウィルス性評価、脱離耐性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
<比較例5>
基材(シュリンクフィルム基材)としてシュリンクPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製のLS-10S、厚さ:40μm)を用意した。抗ウィルス剤であるビオサイドTB-B100(株式会社タイショーテクノス製、商品名、主成分:Ag)と、イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)と、溶媒(希釈溶剤)であるトルエン(沸点:116℃)とをスターラーを用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を乾燥させることで、抗ウィルス剤を含む未硬化の樹脂層(熱硬化性樹脂組成物からなる層)を形成した。この際、溶媒の配合量は、塗液の全質量を基準として、35質量%とし、乾燥は、乾燥後に得られる樹脂層中の抗ウィルス剤量が7質量%となるように、100℃で1分間行った。次いで、得られた樹脂層を、50℃で3日間加熱することにより硬化させ、厚さ3μmの抗ウィルス層を形成した。以上の操作により、比較例5のシュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス剤の面積占有率の測定、抗ウィルス性評価、脱離耐性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
<比較例6>
基材としてPETフィルム(東レ株式会社製のS10、厚さ:38μm)を用意した。抗ウィルス剤であるビオサイドTB-B100(株式会社タイショーテクノス製、商品名、主成分:Ag)と、イソシアネート硬化型の「UCクリヤー」(DICグラフィック株式会社製)と、溶媒(希釈溶剤)であるMEK(メチルエチルケトン、沸点:80℃)とをスターラーを用いて混ぜ合わせて塗液を得た後、得られた塗液を上記基材上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を乾燥させることで、抗ウィルス剤を含む未硬化の樹脂層(熱硬化性樹脂組成物からなる層)を形成した。この際、溶媒の配合量は、塗液の全質量を基準として、35質量%とし、乾燥は、乾燥後に得られる樹脂層中の抗ウィルス剤量が7質量%となるように、60℃で1分間行った。次いで、得られた樹脂層を、50℃で3日間加熱することにより硬化させ、厚さ3μmの抗ウィルス層を形成した。以上の操作により、比較例6のシュリンクフィルム(抗ウィルス層付きシュリンクフィルム)を得た。また、実施例1と同様にして、抗ウィルス剤の面積占有率の測定、抗ウィルス性評価、脱離耐性評価、製造時の熱収縮評価及びシュリンク性評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【符号の説明】
【0087】
1,5…シュリンクフィルム基材、2…抗ウィルス層、3…抗ウィルス剤、4…樹脂硬化物、6…樹脂成分、7…熱硬化性樹脂組成物からなる層、8…印刷層、10,20…抗ウィルス層付きシュリンクフィルム。
図1
図2
図3