(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167426
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 27/08 20060101AFI20221027BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B43K27/08
B43K8/02 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073205
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】柏木 則子
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350HC01
2C350HC08
2C350NA17
2C350NA21
2C353KA02
2C353KA05
2C353KA12
(57)【要約】
【課題】目標筆跡で線を引くことが容易な複数のペン先部分を有する塗布具を提供する。
【解決手段】本体部2と、本体部2の前端側に取り付けられる第一塗布体部3と第二塗布体部4を有し、第一塗布体部3と第二塗布体部4のそれぞれの前端部分を本体部2の外部に位置させたまま、第一塗布体部3と第二塗布体部4の少なくとも一方を塗布対象物に接触させて塗布液を塗布する塗布具1において、第一塗布体部3及び/又は第二塗布体部4は、前後方向に移動可能であり、前端側に筆圧が印加されることで後方へ移動するものとする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、第一塗布体部と、第二塗布体部を有し、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部のそれぞれの前端部分を前記本体部の外部に位置させたまま、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部の少なくとも一方を塗布対象物に接触させて塗布液を塗布する塗布具であり、
前記第一塗布体部及び/又は前記第二塗布体部は、前後方向に移動可能であり、前端側に筆圧が印加されることで後方へ移動することを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方が前後方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部の一方の前端部が他方の前端部よりも前方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方が前後方向に移動可能であり、
移動可能な一方の前端部が他方の前端部よりも前方に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部の一方の側部には、前後方向に延びる収容溝部が形成され、
前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部の他方は、少なくとも一部が前記収容溝部の内側に配されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
前記本体部には、塗布液を含浸させた塗布液吸蔵体が収容されており、
前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方は、後側部分が前記塗布液吸蔵体と接触した状態を維持しつつ前記塗布液吸蔵体と共に前後方向に移動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記塗布液吸蔵体は、外郭部材の内部に繊維収束体を収容して形成されたものであり、前記外郭部材の前側部分に固定用部材が取り付けられ、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方が前記固定用部材を介して前記塗布液吸蔵体に一体に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された塗布液をペン先等の塗布体に供給する塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂マーキングペンのように、フェルトや合成樹脂等で作られたペン先チップを有する塗布具が広く知られている。このような塗布具として、一度の筆運びで二重線を引くことが可能な塗布具がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、別途成形された二つのペン先部を有するマーキングペンが開示されている。このマーキングペンは、幅広線を描画するペン先部(以下、幅広ペン先部とする)と、幅狭線を描画するペン先部(以下、幅狭ペン先部とする)を有する。そして、これら二つのペン先部の先端位置が面一となるように、二つのペン先部が並べて配置されている。
【0004】
このマーキングペンは、幅広ペン先部の先端部分と幅狭ペン先部の先端部分の間に隙間が形成されている(特許文献1の第1図等参照)。このことから、紙面等に描線を引くと、引かれた描線は、間隔を開けて平行に延びた二つの線となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した特許文献1のマーキングペンでは、目標となる二つの線を引くために紙面等に接触するペン先の角度を調整したり、筆圧を調整したりする必要があり、描線が難しいという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、複数のペン先部分を有する塗布具において、目標筆跡で線を引くことが容易な塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、本体部と、第一塗布体部と、第二塗布体部を有し、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部のそれぞれの前端部分を前記本体部の外部に位置させたまま、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部の少なくとも一方を塗布対象物に接触させて塗布液を塗布する塗布具であり、前記第一塗布体部及び/又は前記第二塗布体部は、前後方向に移動可能であり、前端側に筆圧が印加されることで後方へ移動することを特徴とする塗布具である。
【0009】
本様相によると、塗布液を紙面等の塗布対象物に塗布する際に、筆圧によって第一塗布体部や第二塗布体部が適切な位置に移動する。このことにより、使用者がペン先の角度を細かく調整しなくても目標となる二つの線を引くことができるので、目標筆跡での描線を容易化できる。
【0010】
上記した様相は、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方が前後方向に移動可能であることが好ましい。
【0011】
この様相によると、第一塗布体部と第二塗布体部の一方が他方に対して適切な位置に移動するので、使用者がペン先の角度を細かく調整しなくても目標となる二つの線で線を引くことができる。また、第一塗布体部と第二塗布体部の双方を移動可能とする構造に比べて、製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
上記した様相は、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部の一方の前端部が他方の前端部よりも前方に位置していることが好ましい。
【0013】
この様相によると、第一塗布体部と第二塗布体部の一方のみで塗布液を塗布対象物に塗布する際に、容易に線を引くことができる。
【0014】
上記した様相は、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方が前後方向に移動可能であり、移動可能な一方の前端部が他方の前端部よりも前方に位置することが好ましい。
【0015】
この様相によると、筆圧の強さを変更することで、第一塗布体部と第二塗布体部のうちの一方によって塗布液を塗布対象物に塗布する状態と、第一塗布体部と第二塗布体部の双方によって塗布液を塗布対象物に塗布する状態との切り替えが可能となる。すなわち、目標筆跡の切り替えが容易である。
【0016】
上記した様相は、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部の一方の側部には、前後方向に延びる収容溝部が形成され、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部の他方は、少なくとも一部が前記収容溝部の内側に配されることが好ましい。
【0017】
この様相によると、第一塗布体部又は第二塗布体部が移動するとき、収容溝部がガイドとして機能する。すなわち、第一塗布体部又は第二塗布体部が移動する際に位置規制されるので、これらを正確に移動させることができる。
【0018】
上記した様相は、前記本体部には、塗布液を含浸させた塗布液吸蔵体が収容されており、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方は、後側部分が前記塗布液吸蔵体と接触した状態を維持しつつ前記塗布液吸蔵体と共に前後方向に移動することが好ましい。
【0019】
この様相によると、第一塗布体部や第二塗布体部の移動に伴い、これらと接触する塗布液吸蔵体も共に移動する。すなわち、塗布体部が塗布液吸蔵体に対して相対移動することで塗布液吸蔵体を押し固めてしまうことを防止し、長期間に亘って使用しても塗布液の安定供給が可能となる。
【0020】
上記した好ましい様相は、前記塗布液吸蔵体は、外郭部材の内部に繊維収束体を収容して形成されたものであり、前記外郭部材の前側部分に固定用部材が取り付けられ、前記第一塗布体部又は前記第二塗布体部のいずれか一方が前記固定用部材を介して前記塗布液吸蔵体に一体に固定されていることがより好ましい。
【0021】
この様相によると、塗布液吸蔵体等に複雑な加工をすることなく、第一塗布体部又は第二塗布体部と塗布液吸蔵体とを一体に固定可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、目標筆跡で線を引くことが容易な複数のペン先部分を有する塗布具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る塗布具を示す斜視図であり、ペン先部分を拡大して示す。
【
図3】(a)は、
図1の第一ペン先部材を示す図であり、左図は斜視図、右図は断面図であって、(b)は、
図1の第二ペン先部材を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、
図2の第一ペン先部材と第一インキ吸蔵体を示す分解斜視図であり、(b)は、
図2の第一ペン先部材と第一インキ吸蔵体を示す部分断面図である。
【
図5】
図2の塗布具において第一ペン先部材が後方に移動する様子を示す説明図であり、(a)、(b)の順に移動する。
【
図6】(a)、(b)は、第一ペン先部材が後方に移動する際のペン先周辺を示す説明図であり、(a)、(b)の順に移動する。(c)、(d)は、第一ペン先部材が後方に移動する際のペン軸の後側周辺を示す説明図であって、(c)、(d)の順に移動する。
【
図7】
図2の塗布具を使用している様子を示す説明図であり、(a)は筆圧を比較的弱くして使用している様子を示し、(b)は筆圧を比較的強くして使用している様子を示す。
【
図8】(a)は、
図2の塗布具で二重線を描いている様子を示す説明図であり、(b)は、
図2の塗布具で二重線を描く際、第一ペン先部材及び第二ペン先部材のうちでインキを塗布対象物に塗布する部分と、描かれる二重線の対応関係を示す説明図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る塗布具を示す斜視図であり、ペン先部分を拡大して示す。
【
図11】
図10の塗布具において第二ペン先部材が後方に移動する様子を示す説明図であり、(a)、(b)の順に移動する。
【
図12】
図10の塗布具において第二ペン先部材が後方に移動する際のペン先周辺を示す説明図であり、(a)、(b)の順に移動する。
【
図13】
図10の塗布具を使用している様子を示す説明図であり、(a)は筆圧を比較的弱くして使用している様子を示し、(b)は筆圧を比較的強くして使用している様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において「前後」の関係はペン先側を前側とし、ペン先とは逆側の端部となる尾端側を後側として説明する。
なお、本明細書における塗布具は、フェルトペン、ラインマーカー、白板マーカー等の筆記具や、液状のものを紙面や白板等の任意の対象物に塗り付ける用具を含む。
【0025】
本発明の第1実施形態に係る塗布具1は、
図1で示されるように、本体筒2(本体部)と、第一ペン先部材3(第一塗布体部)と、第二ペン先部材4(第二塗布体部)を有する。すなわち、塗布具1は、第一ペン先部材3と第二ペン先部材4からなる複数(2つ)の塗布体を有する塗布具である。また、本体筒2の内部には、
図2で示されるように、中子5と、第一インキ吸蔵体6(塗布液吸蔵体)と、第二インキ吸蔵体7(塗布液吸蔵体)と、吸蔵体保持部材8と、付勢部材9が収容されている。
【0026】
本体筒2は、概形が略円筒状となる中空の部材であり、ペン軸を形成する軸筒となる部材である。すなわち、長手方向の全体に亘って内部空間(収容空間)が形成されている。
【0027】
第一ペン先部材3は、プラスチック粉末等の粉末に熱をかけて形成した焼結芯(ポーラス体)であり、連続気孔を有する多孔質体である。すなわち、毛細管現象によりインキ(塗布液)を吸い込み、移動させることが可能である。
【0028】
この第一ペン先部材3は、
図3(a)で示されるように、前側のペン先部3aと、後側の後軸部3bが一体となって形成されている。
【0029】
ペン先部3aの後側部分(
図3(a)では下側部分)は、後方に向かうにつれて太くなるように、後向きに広がる形状となっている。対して、後軸部3bは、前側部分が後側部分よりも太くなるように形成されている。つまり、ペン先部3aと後軸部3bのそれぞれは、いずれも他方との境界部分に隣接する部分が最も太くなるように形成されている。
【0030】
ペン先部3aは、前端部分に位置する塗布面部20と、外周面(側面)を形成する側面形成部21を有する。そして、側面形成部21の一部に収容溝部25が形成されている。
【0031】
塗布面部20は、ペン先部3aの最も前端側に形成される傾斜面部分であり、正面視した形状が略長方形状となる部分である。すなわち、2つの長辺部と、2つの長辺部を繋ぐ一つの短辺部を有する。そして、短辺部の逆側となるもう一つの短辺に相当する部分に、収容溝部25の前端部分が位置する。このことから、もう一つの短辺に相当する部分は、略U字状に延びる曲線部分となっている。
この塗布面部20は、ペン先部3aの最も前端側となる部分を斜めに切り落としたような形状であり、短辺部が最も前端に位置し、収容溝部25の前端部分が最も後端側に位置するように傾斜している。
【0032】
側面形成部21は、前端側(ペン先側)に形成された2つの側面傾斜部21aを有する。そして、他の大部分が、周方向に延びた曲面を形成している。側面傾斜部21aは、側面形成部21の一部を斜めに切り落とした切断面のような形状であり、略半円形の面を形成している。また、この2つの側面傾斜部21aは、前端側に向かうにつれて互いに近づく方向に傾斜する。
【0033】
収容溝部25は、横断面の形状が円弧状(略半円状)となる溝であり、溝壁部分と溝底部分が湾曲面を形成している。この収容溝部25は、側面形成部21の一部において、ペン先部3aの前端から後端までの間で延びている。
【0034】
後軸部3bは、後方側部分に吸蔵体連結部28を有する。吸蔵体連結部28は、後方側に向かうにつれて細くなる(先細りする)テーパ状部分である。
なお、本実施形態では、後軸部3bの後方側部分にテーパ状部分を設けているが、例えば、後軸部3bのうち、前側の一部分(
図3(a)において最も太く形成されている部分)を除く他の全域に亘ってテーパ状部分を形成してもよい。言い換えると、後軸部3bのうち、後側の棒状に延びる部分の全域に亘ってテーパ状部分を形成してもよい。さらに、後軸部3bの全域に亘ってテーパ状部分を形成することも考えられる。
【0035】
第二ペン先部材4は、
図3(b)で示されるように、棒状のペン先チップであって、ペン先形成部4aと、後方部4bが一体となって形成されている。
ペン先形成部4aは、先端部分(前端部分)の外形が略半球状となる丸みを帯びた形状であり、後側部分の外形が略丸棒状(略円柱状)となっている。
後方部4bは、外形が略丸棒状の部分であり、前側に隣接するペン先形成部4aの後側部分よりも細い(横断面の面積が小さい)部分である。つまり、第二ペン先部材4は、長手方向の中途部分であり、且つ、ペン先形成部4aと後方部4bの境界となる位置に段差部30を有する。
【0036】
なお、本実施形態の第二ペン先部材4は、内部に微細な孔を有する合成樹脂を押出成形して引き伸ばし、これらの孔を残して形成したものである。そして、本実施形態では、合成樹脂として、エンジニアリングプラスチック(ポリアセタール樹脂)を採用している。つまり、本実施形態の第二ペン先部材4は、プラスチックチップである。
以上のことから、第二ペン先部材4は、弾性を有し、第一ペン先部材3に比べて耐摩耗性が高い部材なっている。そして、第二ペン先部材4は、図示を省略するが、ペン先形成部4aの前端に位置する半球状の部分のうち、突端周辺にインキの流出口となる開口を有しており、後方部4bの後端にインキの導入口となる開口を有する。そして、これら前後の開口を繋ぐ微細な孔であり、毛細管現象によってインキを運ぶインキ流通路が内部に形成されている。
【0037】
また、第二ペン先部材4は、
図1、
図2で示されるように、収容溝部25の内側に配された状態で、前後方向に沿って直線状に延びている。すなわち、長手方向が前後方向と同方向となっている。そして、第二ペン先部材4(ペン先形成部4a)の一部が収容溝部25に略丁度嵌まり込んだ状態となっている。すなわち、ペン先形成部4aの外周面と、収容溝部25の内側面とが接触又は微細な間隔を開けて近接する状態としている。
詳細には、第二ペン先部材4は、外周面の一部が収容溝部25の溝壁によって外側から覆われている。言い換えると、収容溝部25の形状が第二ペン先部材4(ペン先形成部4a)の外周面に沿う形状であり、第二ペン先部材4の周方向における一部と収容溝部25とが接触又は近接する状態となっている。
【0038】
中子5は、
図2で示されるように、中子本体部5aと、仕切壁部5bとを有する。
中子本体部5aは、厚板状の部分であり、第一ペン先部材3を挿通可能な第一挿通孔31と、第二ペン先部材4を挿通可能な第二挿通孔32を有する。第一挿通孔31、第二挿通孔32は、いずれも中子本体部5aを厚さ方向(前後方向)に貫通する貫通孔である。
本実施形態では、第一挿通孔31の内側に第一ペン先部材3の一部(後軸部3b)の一部が略丁度嵌まり込んだ状態となっており、第二挿通孔32の内側に第二ペン先部材4の一部(後方部4b)の一部が略丁度嵌まり込んだ状態となっている。より詳細には、第一ペン先部材3が前後方向に円滑に移動可能な程度に、第一ペン先部材3と第一挿通孔31の内周面の間に僅かな隙間が形成されている。同様に、第二ペン先部材4と第二挿通孔32の内周面の間にもまた、僅かな隙間が形成されている。
【0039】
仕切壁部5bは、中子本体部5aの後端面から後方に突出する縦板状の部分である。この仕切壁部5bは、第一ペン先部材3と第二ペン先部材4の間に位置すると共に、第一インキ吸蔵体6の前端側部分と第二インキ吸蔵体7の前端側部分の間に位置する。つまり、仕切壁部5bを挟んだ一方側に、第一ペン先部材3の後端側部分と、第一インキ吸蔵体6の前端側部分が位置する。すなわち、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6の連結部分が位置する。さらに、仕切壁部5bを挟んだ他方側に、第二ペン先部材4の後端側部分と、第二インキ吸蔵体7の前端側部分が位置する。すなわち、第二ペン先部材4と第二インキ吸蔵体7の連結部分が位置する。なお、ここでいう連結部分とは、塗布体(第一ペン先部材3、第二ペン先部材4)をインキ吸蔵体に差し込んだ際、塗布体の差し込み部分のうちの前端(後述する中綿36の前端)が位置する部分とする。
【0040】
第一インキ吸蔵体6は、
図4で示されるように、外郭部材35と、中綿36(繊維収束体)を有する。そして、外郭部材35の内部に中綿36を詰め込み、詰め込まれた中綿36にインキを含侵させて形成されている。また、外郭部材35の長手方向の片側端部(前端部)側に、蓋部37(固定用部材)が取り付けられている。
【0041】
外郭部材35は、PP(ポリプロピレン)等の適宜な材料によって形成される筒体であり、本実施形態では、樹脂製で外形が略円筒状の部材である。
【0042】
中綿36は、インキを含浸可能な連続気孔を有する繊維収束体である。この中綿36は、適宜の繊維で構成されており、ポリエステル繊維等の合成繊維であってもよく、綿、パルプ等の植物繊維であってもよく、羊毛、生糸等の動物繊維であってもよい。
なお、特に限定されるものではないが、中綿36は、外郭部材35と熱融着させてもよい。すなわち、外郭部材35の内周面と、この内周面と接触する中綿36の一部(中綿36のうちで外郭部材35の径方向外側に位置する部分)とが熱融着された状態としてもよい。
【0043】
蓋部37は、外形が略有底円筒状となるキャップ状の部材であり、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6(外郭部材35及び中綿36)の間に介在し、これらを一体に固定する固定用部材(連結部材)である。
この蓋部37は、本体部37aと周壁部37bを有する。
本体部37aは、円板状の部分であり、第一ペン先部材3を取り付ける取付用孔40が設けられている。周壁部37bは、本体部37aの周縁部分から後方に延びる部分であり、円環状に連続する壁状部分である。
取付用孔40は、本体部37aを厚さ方向(前後方向)に貫通する孔であり、本体部37aの後方に位置する空間(周壁部37bに囲まれた空間)と外部とを連通する。
【0044】
この蓋部37は、外郭部材35の前側部分に取り付けられる部材である。具体的には、
図4(b)で示されるように、外郭部材35(第一インキ吸蔵体6)の前側部分を周壁部37bに囲まれた空間に配した状態とする。そして、外郭部材35の前端部分を本体部37aの後端面に後方から接触させた状態とする。
【0045】
そして、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6とを固定する際には、
図4(b)で示されるように、取付用孔40の前方側から第一ペン先部材3を挿通していく。このとき、取付用孔40は、吸蔵体連結部28の後方側部分が通過可能な大きさであり、吸蔵体連結部28の前方側部分が通過不可能な大きさとなっている。このことから、第一ペン先部材3を押し込んでいくと、吸蔵体連結部28の一部が取付用孔40の前側開口縁の周辺と接触する。この状態でさらに第一ペン先部材3を押し込むと、吸蔵体連結部28が取付用孔40の内側から蓋部37と密着した状態となり、第一ペン先部材3が第一インキ吸蔵体6に固定される。なお、特に限定されるものではないが、第一ペン先部材3を押し込む際、第一ペン先部材3によって押圧された蓋部37の一部を塑性変形させ、第一ペン先部材3と蓋部37を密着させる構造としてもよい。
【0046】
第一ペン先部材3が第一インキ吸蔵体6に取り付けられた状態では、
図4(b)で示されるように、第一ペン先部材3の後端部分の周囲に中綿36が位置し、且つ、第一ペン先部材3の後端部分と中綿36が接触した状態となる。
【0047】
ここで、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6が固定される構造によると、第一ペン先部材3が前後に移動するとき(詳しくは後述する)、第一ペン先部材3と共に第一インキ吸蔵体6も移動する。このように、第一ペン先部材3が第一インキ吸蔵体6に対して相対移動しない構造では、第一ペン先部材3が前後方向に移動しても、第一ペン先部材3が中綿36を押し固めてしまうことがない。
具体的に説明すると、仮に第一ペン先部材3が第一インキ吸蔵体6に対して相対移動する状態で、第一ペン先部材3が前後方向に移動すると、第一ペン先部材3が後方に移動する毎に、第一ペン先部材3の後端側部分によって中綿36が後方に押圧されてしまう。すると中綿36の後側の部分が押し固められてしまい、後側の部分が空隙率の低下した部分となってしまう場合がある。この場合、インキが意図通り流れず、ペン先へのインキの供給が不安定となってしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態では、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6が共に前後方向に移動する構造としており(詳しくは後述する)、長期使用した際においても第一ペン先部材3へのインキの供給を安定させることができる。
【0048】
第二インキ吸蔵体7は、第一インキ吸蔵体6と同様に、外郭部材に中綿を詰め込んで形成される部材である(詳細な図示を省略する)。第二インキ吸蔵体7は、第一インキ吸蔵体6と略同一の部材であるが、蓋部37が設けられていない点が第一インキ吸蔵体6とは異なる。なお、第一インキ吸蔵体6と第二インキ吸蔵体7には、それぞれ別のインキが含侵されている。
また、
図2等で示されるように、第二インキ吸蔵体7には、第二ペン先部材4の後端側部分が前方から差し込まれている。すなわち、第二ペン先部材4の後端側部分の周囲に中綿が位置した状態で、第二ペン先部材4の後端側部分と中綿が接触している。
【0049】
吸蔵体保持部材8は、
図2等で示されるように、第一吸蔵体配置部45と、第二吸蔵体配置部46と、付勢部材接触部47を有する。
【0050】
第一吸蔵体配置部45は、第一インキ吸蔵体6の後側部分と接触する部分であり、本実施形態では、後方側に窪んだ有底孔としている。すなわち、第一インキ吸蔵体6の後側部分を収容可能となっている。ここで、本実施形態では、第一インキ吸蔵体6の後側部分を第一吸蔵体配置部45に収容した状態で、第一インキ吸蔵体6と吸蔵体保持部材8を一体に固定している。つまり、第一インキ吸蔵体6は、吸蔵体保持部材8に対して相対移動しない状態で、後側部分が吸蔵体保持部材8に取り付けられている。
【0051】
第二吸蔵体配置部46は、第二インキ吸蔵体7の後側部分と接触する部分であり、本実施形態では、後方側に窪んだ有底孔となっている。すなわち、第二インキ吸蔵体7の後側部分を収容可能となっている。ここで、第二インキ吸蔵体7は、吸蔵体保持部材8に対して相対移動が可能な状態で、後側部分が第二吸蔵体配置部46に収容されている。
つまり、吸蔵体保持部材8は、第一インキ吸蔵体6と一体に固定されている一方で、第二インキ吸蔵体7とは互いに相対移動可能な状態となっている。本実施形態では、第二インキ吸蔵体7の後側部分は、第二吸蔵体配置部46の内周面との間に一定以上の大きさの隙間が形成された状態で、第二吸蔵体配置部46に収容されている。つまり、第二インキ吸蔵体7の後側部分が第二吸蔵体配置部46に遊嵌された状態となっている。
【0052】
付勢部材接触部47は、付勢部材9の前側部分と接触する部分である。本実施形態の付勢部材接触部47は、前方側に窪んだ有底孔としており、付勢部材9の前側部分の一部が収容されている。
【0053】
付勢部材9は、コイルバネであり、圧縮方向が前後方向(本体筒2の軸線方向)と同方向となるように配されている。そして、長手方向(圧縮方向)の一端側(後端側)が本体筒2と接触しており、他端側(前端側)が吸蔵体保持部材8と接触している。このことから、付勢部材9は、吸蔵体保持部材8を前方へ向かって常時押圧している。
ここで、上記したように、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6が一体に固定されており、第一インキ吸蔵体6と吸蔵体保持部材8が一体に固定されている。すなわち、付勢部材9は、第一ペン先部材3、第一インキ吸蔵体6、吸蔵体保持部材8が一体となった構造体を常時前方に押圧している。
【0054】
続いて、本実施形態の塗布具1において、第一ペン先部材3が移動する際の各部の動きについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0055】
本実施形態では、第一ペン先部材3、第一インキ吸蔵体6、吸蔵体保持部材8が一体となった構造体が前後方向に移動可能であり、且つ、本体筒2に対して相対移動可能となっている。また、上記したように、この構造体が付勢部材9によって常時前方に付勢されている。このため、
図5(a)、
図5(b)で示すように、第一ペン先部材3に後方へ向かう力を加えると、第一ペン先部材3、第一インキ吸蔵体6、吸蔵体保持部材8が付勢部材9の付勢力に抗して後方へ移動する。
【0056】
このとき、ペン先側では、
図6(a)、
図6(b)で示すように、第一ペン先部材3の収容溝部25の内側に第二ペン先部材4が位置し、第一ペン先部材3の一部(後軸部3bの一部)が第一挿通孔31の内側に位置した状態のまま、第一ペン先部材3が移動する。このことから、第二ペン先部材4と第一挿通孔31がガイドとして機能し、第一ペン先部材3が移動する際の位置ずれを防止できる。
なお、第一ペン先部材3の移動前、移動中、移動後のそれぞれにおいて、第一ペン先部材3の一部が第一挿通孔31の内側に略丁度嵌った状態が維持される。同様に、第一ペン先部材3の移動前、移動中、移動後のそれぞれにおいて、第二ペン先部材4の一部が収容溝部25の内側に略丁度嵌った状態が維持される。
【0057】
また、塗布面部20の後端部分が第二ペン先部材4の前端部分よりも前方に配された状態から(
図6(a)参照)、同後端部分が第二ペン先部材4の前端部分よりも後方に配された状態となるまで(
図6(b)参照)、第一ペン先部材3が移動可能となっている。
すなわち、第一ペン先部材3を移動させることで、第二ペン先部材4の前端部分が、塗布面部20の前端よりも後方であり、塗布面部20の後端よりも前方に位置した状態とすることができる。
【0058】
また、ペン軸の後側(尾端側)では、
図6(c)、
図6(d)で示されるように、吸蔵体保持部材8が後方へ移動する共に、付勢部材9が圧縮された状態となる。このとき、吸蔵体保持部材8と共に第一インキ吸蔵体6が移動する一方で、第二インキ吸蔵体7は移動しない。言い換えると、吸蔵体保持部材8は、2つのインキ吸蔵体のうちの一方と共に移動し、他方に対して相対移動する。
したがって、吸蔵体保持部材8が移動すると、第二吸蔵体配置部46の後端部分(底部分)が後方へ移動し、第二インキ吸蔵体7の後端部分から離れていく。そして、第二吸蔵体配置部46の後端部分と第二インキ吸蔵体7の後端部分の間に隙間が形成される。
【0059】
以上のことから、本実施形態の塗布具1は、
図7(a)で示されるように、筆圧を強め過ぎずに使用することで、第一ペン先部材3のみを塗布対象物Aに接触させて線を描くことが可能となる。すなわち、第一ペン先部材3を塗布対象物Aに接触させる一方で、第二ペン先部材4を塗布対象物Aに接触させない状態で線を描くことが可能となる。
そして、第一ペン先部材3のみを塗布対象物Aに接触した状態から、筆圧を強めることで、
図7(b)で示されるように、第一ペン先部材3と第二ペン先部材4の双方が塗布対象物Aに接触した状態とすることができる。
【0060】
この状態で、
図8(a)で示されるように、塗布具1(本体筒2)を水平移動させることで、塗布具1の塗布対象物Aに対する傾斜角度を細かく調整させることなく、目標とする二重線を描くことが可能となる。
なお、この目標とする二重線は、第一ペン先部材3からインキを塗布することで形成される第一の線50と、第二ペン先部材4からインキを塗布することで形成される第二の線51からなる二重線である。具体的には、この二重線は、第一の線50と第二の線51とが隙間なく並んだ線であり、第一の線50と第二の線51とが僅かに重なる線である。また、第一の線50が第二の線51よりも太い幅広線であり、第二の線51は第一の線50の線よりも細い幅狭線である。
【0061】
続いて、本発明の第二実施形態に係る塗布具101について説明するが、上記した実施形態と同様の部分については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態の塗布具101もまた、
図9で示されるように、本体筒2と、第一ペン先部材3と、第二ペン先部材4を有する。そして、本体筒2の内部には、
図10で示されるように、中子5と、第一インキ吸蔵体6と、第二インキ吸蔵体7と、吸蔵体保持部材108と、付勢部材109が収容されている。
この塗布具101は、
図11、
図12で示されるように、第二ペン先部材4が前後方向に移動可能であり、本体筒2に対して相対移動可能なものである(詳しくは後述する)。そして、第一ペン先部材3、第一インキ吸蔵体6が本体筒2に対して相対移動しないものとなっている。つまり、上記した実施形態の塗布具1とは移動可能な塗布体が異なる。
なお、本実施形態の第一インキ吸蔵体6では、蓋部37(
図4参照)を設けない構造としてもよい。
【0063】
吸蔵体保持部材108は、本体筒2に一体に固定される部材であり、第一吸蔵体配置部145と、第二吸蔵体配置部146を有している。すなわち、上記した実施形態の吸蔵体保持部材8は、本体筒2に対して相対移動するものであって前後方向に移動する部材であるのに対し、本実施形態の吸蔵体保持部材108は、本体筒2に対して相対移動しない構造としている。
【0064】
第一吸蔵体配置部145は、第一インキ吸蔵体6の後側部分と接触する部分であり、本実施形態では、後方側に窪んだ有底孔としている。すなわち、第一インキ吸蔵体6の後側部分を収容し、保持することが可能となっている。
第二吸蔵体配置部146は、第二インキ吸蔵体7の後側部分と接触する部分であり、本実施形態では、後方側に窪んだ有底孔となっている。すなわち、第二インキ吸蔵体7の後側部分を収容し、保持することが可能となっている。
【0065】
付勢部材109は、コイルバネであり、圧縮方向が前後方向(本体筒2の軸線方向)と同方向となるように配されている。
ここで、本実施形態では、付勢部材109の内孔(螺旋状に巻回された線材の内側)に、第二ペン先部材4の後方部4bが挿通されている。そして、長手方向(圧縮方向)の一端側(後端側)が中子5(中子本体部5a)と接触しており、他端側(前端側)が第二ペン先部材4の段差部30と接触している。言い換えると、付勢部材109の前端側部分がペン先形成部4aに後方から接触している。このことから、付勢部材109は、第二ペン先部材4を常時前方に押圧(付勢)している。
つまり、上記した実施形態の付勢部材9は、他部材(複数の他部材であり吸蔵体保持部材8、第一インキ吸蔵体6)を介して間接的に第一ペン先部材3を押圧(付勢)する部材(第一塗布体付勢部材)である。これに対し、この付勢部材109は、第二ペン先部材4を直接押圧(付勢)する部材(第二塗布体付勢部材)である。すなわち、付勢部材9,109は、対象となる塗布体を直接押圧してもよく間接的に押圧してもよい。
【0066】
続いて、本実施形態の塗布具101において、第二ペン先部材4が移動する際の各部の動きについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0067】
本実施形態では、第二ペン先部材4が前後方向に移動可能であり、且つ、本体筒2に対して相対移動可能である。また、上記したように、第二ペン先部材4が付勢部材109によって常時前方に付勢されている。このため、
図11(a)、
図11(b)で示すように、第二ペン先部材4に後方へ向かう力を加えると、第二ペン先部材4が付勢部材109の付勢力に抗して後方へ移動する。
【0068】
このとき、
図12(a)、
図12(b)で示すように、第二ペン先部材4は、収容溝部25の内側で移動する。すなわち、ペン先形成部4aが収容溝部25に嵌った状態のまま移動する。このとき、移動前、移動中、移動後のそれぞれにおいて、第二ペン先部材4の一部が第二挿通孔32の内側に略丁度嵌った状態が維持される。なお、ここでいう「略丁度嵌った状態」は、第二ペン先部材4が移動可能な程度に僅かな隙間が形成されている状態を含む。
以上のことから、第一ペン先部材3(収容溝部25)と、第二挿通孔32がガイドとして機能し、第二ペン先部材4が移動する際の位置ずれを防止できる。
【0069】
このとき、第二ペン先部材4は、
図12(a)で示されるように、前端部分が塗布面部20の前端部分よりも後方であり、塗布面部20の後端部分よりも前方となる位置から移動を開始する。そして、第二ペン先部材4の前端部分が塗布面部20と同一平面状に位置するまで移動可能となっている。
【0070】
ところで、本実施形態の第二ペン先部材4は、第二インキ吸蔵体7に対して相対移動可能となっている。第二ペン先部材4は、上記したように、幅狭線である第二の線51(
図8参照)を形成するインキを塗布する塗布体であり、比較的細い形状となっている。このため、第二インキ吸蔵体7に対して相対移動する構造としても、第二インキ吸蔵体7の中綿が押し固められてしまう可能性が低い。
【0071】
以上のことから、本実施形態の塗布具101は、
図13(a)で示されるように、筆圧を強め過ぎずに使用することで、第二ペン先部材4のみを塗布対象物Aに接触させて線を描くことが可能となる。すなわち、第二ペン先部材4を塗布対象物Aに接触させる一方で、第一ペン先部材3を塗布対象物Aに接触させない状態で線を描くことが可能となる。
そして、第二ペン先部材4のみを塗布対象物Aに接触した状態から、筆圧を強めることで、
図13(b)で示されるように、第一ペン先部材3と第二ペン先部材4の双方が塗布対象物Aに接触した状態とすることができる。このことにより、上記した実施形態と同様に、目標とする二重線を描くことが可能となる。
【0072】
上記した実施形態では、第一ペン先部材3又は第二ペン先部材4が前後方向に移動可能(本体筒2に対して相対移動可能)な塗布具1,101の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、第一ペン先部材3、第二ペン先部材4の双方が移動可能な塗布具であってもよい。
【0073】
上記した実施形態では、幅広線を描くための塗布体である第一ペン先部材3が移動する構造では、第一ペン先部材3と第一インキ吸蔵体6が共に動く構造とした。しかしながら、第一ペン先部材3を第一インキ吸蔵体6に対して相対移動する構造としてもよい。しかしながら、長期使用時においてインキを安定供給するという観点から、第一インキ吸蔵体6と共に移動する構造とすることが好ましい。また、第二ペン先部材4が移動する構造において、第二ペン先部材4が第二インキ吸蔵体7と共に移動する構造としてもよい。
【0074】
上記した実施形態では、第二ペン先部材4の移動前の状態において、第二ペン先部材4の前端部分が第一ペン先部材3の前端(塗布面部20の前端)よりも後方に位置する塗布具101の例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。第二ペン先部材4が移動する塗布具は、第二ペン先部材4の移動前の状態において、第二ペン先部材4の前端部分が第一ペン先部材3の前端よりも前方に位置するものとしてもよい。
【0075】
上記した実施形態では、蓋部37をキャップ状の部材としたが、本発明の固定用部材はこれに限るものではない。例えば、固定用部材を厚板状(厚みのある略円板状)の部材とし、板状の部材を厚さ方向に貫通する取付用孔を設けてもよい。なお、この場合、外郭部材35の内孔に固定用部材を内嵌させて取り付けるが、固定用部材の外郭部材35に対する相対移動を防止すべく、固定用部材の外周部分と外郭部材35の内孔の内周面とを接着剤や熱融着等で一体に固定する(接着する)ことが好ましい。すなわち、固定用部材の外周部分と内孔の内周面とが密着した状態となる。
【符号の説明】
【0076】
1 塗布具
2 本体筒(本体部)
3 第一ペン先部材(第一塗布体部)
4 第二ペン先部材(第二塗布体部)
6 第一インキ吸蔵体(塗布液吸蔵体)
7 第二インキ吸蔵体(塗布液吸蔵体)
25 収容溝部
35 外郭部材
36 中綿(繊維収束体)
37 蓋部(固定用部材)
A 塗布対象物