(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167458
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】スプレーおよびスプレーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05B 9/04 20060101AFI20221027BHJP
C01B 11/02 20060101ALI20221027BHJP
B65D 83/62 20060101ALI20221027BHJP
A61L 2/18 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
B05B9/04
C01B11/02 F
C01B11/02 A
B65D83/62
A61L2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073252
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000230630
【氏名又は名称】株式会社ルミカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 士郎
【テーマコード(参考)】
3E014
4C058
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC02
3E014PC04
3E014PC07
3E014PD01
3E014PF06
4C058AA01
4C058BB07
4C058JJ07
4C058JJ24
4F033RA02
4F033RC01
(57)【要約】
【課題】必要とする物質(不純物を含まない物質)を得ることができるとともに、得られた物質の使い勝手を良くすることができるスプレーを提供することを目的とする。
【解決手段】内部に閉空間107が形成されている筐体103と、所定の物質15が溶存しており筐体103の閉空間107に入っている水2と、圧縮されて筐体103の閉空間107に入っている気体109と、筐体103に設けられており所定の操作がされることで筐体103内の所定の物質15が溶存している水2を筐体103の外部に噴霧するアクチュエータ105とを有するスプレー101である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に閉空間が形成されている筐体と、
所定の物質が溶存しており、前記筐体の閉空間に入っている水と、
圧縮されて前記筐体の閉空間に入っている気体と、
前記筐体に設けられており、所定の操作がされることで、前記筐体内の、前記所定の物質が溶存している水を前記筐体の外部に噴霧するアクチュエータと、
を有するスプレー。
【請求項2】
前記筐体の内部にはバッグが設けられており、
前記バッグによって、前記筐体の閉空間が、前記バッグの内側の空間であるバッグ内空間と、前記バッグの外側の空間であるバッグ外空間とに仕切られており、
前記所定の物質が溶存している水は前記バッグ内空間に入っており、前記圧縮された気体は前記バッグ外空間に入っている請求項1に記載のスプレー。
【請求項3】
所定の物質が透過する材料で構成されており前記所定の物質と前記所定の物質以外の物質とが内部に入っている第1の器物と、水が、第2の器物内に入っている状態で、前記第1の器物を透過して前記第1の器物の外部に出てきた前記所定の物質を前記水に溶解させる物質溶解工程と、
内部に閉空間が形成されている筐体とこの筐体に設けられているアクチュエータとを備えたスプレー筐体内に、圧縮されている気体と、前記物質溶解工程で生成された前記所定の物質が溶存している水とを入れる注入工程と、
を有するスプレーの製造方法。
【請求項4】
前記筐体内にはバッグが設けられており、
前記バッグによって、前記筐体の内部の閉空間が、前記バッグの内側の空間であるバッグ内空間と、前記バッグの外側の空間であるバッグ外空間とに仕切られており、
前記注入工程は、前記所定の物質が溶存している水を前記バッグ内空間に入れ、前記圧縮された気体を前記バッグ外空間に入れる工程である請求項3に記載のスプレーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーおよびスプレーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜塩素酸ナトリウムと酸化剤としてのクエン酸とを化学反応させることで、二酸化塩素を発生する気体発生装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記化学反応においては、殺菌等のために必要である二酸化塩素の他に不要物質であるクエン酸ナトリム等の反応物質が生成されてしまう。ここで、不要物質の発生による予期せぬ影響を除外すべく、亜塩素酸ナトリウムとクエン酸とを化学反応させることで、必要である二酸化塩素のみを得たいとの要望が発生する。また、生成された二酸化塩素は気体であるので、空気中ですばやく分散してしまい殺菌等に使用するときの使い勝手がよくないことがある。
【0005】
なお、上記要望は、クエン酸やクエン酸以外の物質を用いて二酸化塩素を発生させる場合や、二酸化塩素以外の物質の場合においても同様に発生する。
【0006】
本発明は、必要とする物質(不純物を含まない物質)を得ることができるとともに、得られた物質の使い勝手を良くすることができるスプレーおよびスプレーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、内部に閉空間が形成されている筐体と、所定の物質が溶存しており、前記筐体の閉空間に入っている水と、圧縮されて前記筐体の閉空間に入っている気体と、前記筐体に設けられており、所定の操作がされることで、前記筐体内の、前記所定の物質が溶存している水を前記筐体の外部に噴霧するアクチュエータとを有するスプレーである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記筐体の内部にはバッグが設けられており、前記バッグによって、前記筐体の閉空間が、前記バッグの内側の空間であるバッグ内空間と、前記バッグの外側の空間であるバッグ外空間とに仕切られており、前記所定の物質が溶存している水は前記バッグ内空間に入っており、前記圧縮された気体は前記バッグ外空間に入っている請求項1に記載のスプレーである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、所定の物質が透過する材料で構成されており前記所定の物質と前記所定の物質以外の物質とが内部に入っている第1の器物と、水が、第2の器物内に入っている状態で、前記第1の器物を透過して前記第1の器物の外部に出てきた前記所定の物質を前記水に溶解させる物質溶解工程と、内部に閉空間が形成されている筐体とこの筐体に設けられているアクチュエータとを備えたスプレー筐体内に、圧縮されている気体と、前記物質溶解工程で生成された前記所定の物質が溶存している水とを入れる注入工程とを有するスプレーの製造方法である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記筐体内にはバッグが設けられており、前記バッグによって、前記筐体の内部の閉空間が、前記バッグの内側の空間であるバッグ内空間と、前記バッグの外側の空間であるバッグ外空間とに仕切られており、前記注入工程は、前記所定の物質が溶存している水を前記バッグ内空間に入れ、前記圧縮された気体を前記バッグ外空間に入れる工程である請求項3に記載のスプレーの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、必要とする物質(不純物を含まない物質)を得ることができるとともに、得られた物質の使い勝手を良くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るスプレーの概略構成を示す図である。
【
図3】二酸化塩素が溶存している水の製造装置の概要を示す図である。
【
図4】二酸化塩素が溶存している水の製造装置の要部の概要を示す図である。
【
図5】
図4における第1のチューブと第2のチューブが使用されている箇所を具体的に示す図であり、(b)は(a)におけるVB部の拡大図であり、(c)は(a)における5C部の拡大図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るスプレーの製造方法を示す図である。
【
図7】変形例に係るスプレーの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るスプレー(たとえば缶スプレー)101は、
図1で示すように、筐体(たとえば缶)103とアクチュエータ105とを備えて構成されている。筐体103の内部には、閉空間107が形成されている。
【0014】
筐体103の内部の閉空間107には、所定の物質(たとえば二酸化塩素)が溶存(溶解)している水2と圧縮された気体(たとえば圧縮された窒素;圧縮窒素)109とが入っている。すなわち、筐体103の内部の閉空間107には、二酸化塩素の水溶液2と圧縮窒素109とで充填されている。なお、圧縮窒素の代わりに圧縮空気を用いてもよい。
【0015】
圧縮窒素109が内部に入っていることで、筐体103内の二酸化塩素が溶存して水2の圧力は、大気圧よりも高くなっている。
【0016】
アクチュエータ105には細孔113が設けられている。アクチュエータ105は筐体103に設けられている。そして、アクチュエータ105に対して押し下げ等の所定の操作がされると、圧縮窒素109に押されて、筐体103内の二酸化塩素が溶存している水2が、細孔113を通り霧状や泡状やゲル状になって筐体103の外部に噴霧されるようになっている。
【0017】
また、筐体103の内部には可撓性を備えたバッグ115が設けられている。このバッグ115によって、筐体103の内部の閉空間107が、バッグ115の内側の空間であるバッグ内空間117と、バッグ115の外側の空間であるバッグ外空間119とに仕切られている。二酸化塩素が溶存している水2がバッグ内空間117に入っており、圧縮窒素109バッグ外空間119に入っている。
【0018】
ここでバッグオンバルブについて説明する。バッグオンバルブは、バッグ115とこのバッグ115の開口部に設けられているバルブとを備えて構成されている。アクチュエータ105はバルブの機能を備えておりバルブとみなすことができる。これにより、バッグ115が設けられているスプレー101を、バッグオンバルブ付きのスプレーということができる。なお、バッグオンバルブとして、たとえば、特表2009―522173号公報に記載されているものを掲げることができる。
【0019】
バッグオンバルブ付きのスプレーでは、アクチュエータ105への所定の操作がされることで、二酸化塩素が溶存している水2が細孔113を通して霧状や泡状になって噴霧されるようになっている。
【0020】
スプレー101についてさらに詳しく説明する。
【0021】
筐体103は、たとえば、薄い金属の板を適宜加工することで形成されており、缶本体部121と蓋部123とを備えて構成されている。缶本体部121は有底円筒状に形成されており、蓋部123は、缶本体部121の上端の開口部を塞いでいる。アクチュエータ105は、蓋部123に設けられている。
【0022】
アクチュエータ105の上側の部位は、筐体103の上端から突出しており、アクチュエータ105の下側の部位は、筐体103内に入り込んでいるとともに筐体103内の上端部に位置している。
【0023】
アクチュエータ105の下側の部位からは、細長い円筒状のチューブ125が下方に向かって延びている。バッグ115は袋状に形成されて筐体103内に設けられている。
【0024】
バッグ115の上端がアクチュエータ105の下側の部位に設置されていることで、アクチュエータ105の下側の部位とバッグ115とで、バッグ内空間117が形成されている。チューブ125は、バッグ内空間117内で延伸している。筐体103の内部であってバッグ115の外側の空間がバッグ外空間119になっている。
【0025】
ここで、バッグ115の構成について
図2(a)を参照しつつ説明する。バッグ115は、バリア性を向上させるために、シート状の材料115A、115B、115C、115Dを、重ね合わせ接着剤DLを用いて接合することで形成されている。
【0026】
材料115A~115Dが115の内側から外側に向かってこの順に積層されており、各材料115A~115Dの間に層状の接着剤DLが設けられている。
【0027】
なお、材料115Aとして、たとえば、L-LDPE80(熱可塑性リニアポリエチレン)を掲げることができ、材料115B、115Dとして、たとえば、PET12(ポリエチレンテレフタレート)を掲げることができる。
【0028】
材料115Cとして、たとえば、EVOH12(エチレンビニルアルコール共重合体)を掲げることができ、接着剤DLとして、たとえば、ドライラミネート用接着剤を掲げることができる。
【0029】
なお、バッグ115の構成を
図2(b)で示すように変更してもよい。
【0030】
図2(b)で示す態様では、材料115Eとして、たとえば、L-LDPE80(熱可塑性リニアポリエチレン)が採用されており、材料115F、115Gとして、たとえば、PET12(ポリエチレンテレフタレート)が採用されている。なお、接着剤DLとして、たとえば、ドライラミネート用接着剤が採用されている。
【0031】
なお、
図2(b)で示す態様では、材料115Gの接着剤DL側の面(接着剤DLと接する面)には、透明蒸着がされている。透明蒸着とは、バリア性を向上させる目的で、無機物を空気中で蒸発させて、基材フィルム(材料115G)に上記無機物の被膜を形成することである。
【0032】
なお、
図2(b)で示す態様において、材料115Gの接着剤DL側の面(接着剤DLと接する面)に加えて、材料115Fの材料115G側の接着剤DL側の面(材料115G側の接着剤DLと接する面)に、透明蒸着がされていてもよい。
【0033】
また、
図2(b)で示す態様において、材料115Eとして、PE60(ポリエチレン)を採用し、材料115F、115Gとして、PET12(ポリエチレンテレフタレート)を採用してもよい。この場合、材料115Gの接着剤DL側の面(接着剤DLと接する面)には、透明蒸着がされている。
【0034】
ここで、スプレー101の動作について説明する。
【0035】
初期状態では、バッグ内空間117に二酸化塩素が溶存している水2が入っており、バッグ外空間119には、圧縮窒素109が入っており、アクチュエータ105の押し下げがされていないものとする。
【0036】
上記初期状態において、アクチュエータ105の押し下げがされる。すると、バッグ内空間117内の二酸化塩素が溶存している水2が、バッグ外空間119内の圧縮窒素109によって押され、チューブ125とアクチュエータ105の細孔113とを通って、スプレー101の外に噴霧される。
【0037】
次に、スプレー101の製造方法について説明する。
【0038】
まず、物質溶解工程によって所定の物質(たとえば二酸化塩素)が溶存(溶解)している水(二酸化塩素の水溶液)2を製造する。物質溶解工程では、二酸化塩素が透過する材料で構成されており二酸化塩素と二酸化塩素以外の物質とを第1の器物に内部に入れる。この後、水と第1の器物とを、第2の器物内に入れる。この状態で、第1の器物を透過して第1の器物の外部に出てきた二酸化塩素を第2の器物の入っている水に溶解させる。
【0039】
続いて、注入工程(充填工程)で、内部に閉空間107が形成されている筐体103とこの筐体103に設けられているアクチュエータ105とを備えたスプレー筐体内に、圧縮窒素109と、物質溶解工程で生成された二酸化塩素が溶存している水2とを入れる。
【0040】
なお、筐体103内にバッグ115が設けられている構成では、二酸化塩素が溶存している水2をバッグ内空間117内に入れ、圧縮窒素109をバッグ外空間119内に入れる。
【0041】
スプレー101の製造方法について
図6を参照しつつさらに詳しく説明する。
【0042】
蓋部123に設置されているバッグオンバルブ(BOV)を、缶本体部121内に入れる(S1)。この状態では、アクチュエータ105の上側の部位が缶本体部121の外に出ている。
【0043】
続いて、蓋部123をカシメて缶本体部121に設置するとともに、バッグ外空間119内に圧縮窒素109を入れる(S3)。
【0044】
続いて、バッグ外空間119内の圧縮窒素109の圧力を必要に応じてチェックし(S5)、アクチュエータ105からバッグ内空間117内に二酸化塩素が溶存(溶解)している水2を入れる(S7)。この後、バルブの口部分(アクチュエータ105およびこの近辺)のクリーングをする(S9)。
【0045】
スプレー101では、缶103内に二酸化塩素が溶存している水2と圧縮窒素109とが入っており、アクチュエータ105が押し下げられることで、二酸化塩素が溶存している水2を缶103の外部に噴霧するようになっている。これにより、必要とする二酸化塩素を噴霧という態様で得ることができるとともに、得られた二酸化塩素の使い勝手を良くすることができる。
【0046】
たとえば、二酸化塩素が水に溶存していることで、二酸化塩素の分散速度が遅くなり、二酸化塩素の使い勝手が良くなる。また、二酸化塩素のみが溶存している水2を殺菌対象であるテーブル上に霧状にして均一な状態で散布しやすくなり、二酸化塩素が水から徐々に放出され、殺菌作用を持続させることができる。
【0047】
また、スプレー101では、バッグ115によって筐体103内部の閉空間がバッグ内空間117とバッグ外空間119とに仕切られている。そして、二酸化塩素が溶存している水2がバッグ内空間117に入っており、圧縮された窒素109がバッグ外空間119に入っている。
【0048】
これにより、スプレー101の姿勢にかかわらず、アクチュエータ105から二酸化塩素が入っている水2を噴霧することができる。これに対して、
図7で示すようなバッグが設けられていない態様では、次のようになる。アクチュエータ105が下に位置するようにしてアクチュエータ105を押しても、アクチュエータ105から二酸化塩素が入っている水2が噴霧されることがなく、缶103内の窒素が出てきてしまうことがある。また、バッグ115が設けられていることで、圧縮窒素109と二酸化塩素が入っている水2とが非接触の状態になっているので、長期間の保管しておいても、二酸化塩素等が劣化することが防止される。
【0049】
ところで、
図7で示すように、
図1で示すスプレー101からバッグ115を削除してもよい。
【0050】
図7で示すスプレー101にあっては、筐体103内にはバッグが設けられていないので、1つの閉空間107しか存在しておらず、二酸化塩素が溶存している水2と圧縮窒素109とがお互いに直接接する態様で筐体103内に入っている。これにより、二酸化塩素が溶存している水2と圧縮窒素109との収容量を増やすことができる。
【0051】
図7で示すスプレー101において、アクチュエータ105を上にし筐体103を下にすると、下側に二酸化塩素が溶存している水2が存在し、上側に圧縮窒素109が存在する。
【0052】
アクチュエータ105を上にし、筐体103を下にしている状態で、アクチュエータ105を押し下げることで、圧縮窒素109の圧力で、筐体103内の二酸化塩素が溶存している水2が筐体103の外部に噴霧されるように構成されている。
【0053】
ここで、上述した物質溶解工程(二酸化塩素溶解工程)を実行するための装置である水溶液の製造装置(二酸化塩素水溶液の製造装置)1について、
図3~
図5を参照しつつ例示する。
【0054】
水溶液の製造装置(たとえば、二酸化塩素水溶液2の製造装置)1は、第1の器物3と第2の器物5とを備えて構成されている。
【0055】
第1の器物3は、所定の物質(たとえば二酸化塩素15)が透過する材料で構成されており、二酸化塩素15と二酸化塩素以外の物質17とが内部に入っている。第2の器物5には、水7と、第1の器物3とが内部に入っている。そして、第1の器物3を透過して第1の器物3の外部に出てきた二酸化塩素15が、第2の器物5内の水7に溶解するようになっている。なお、水7としてたとえば、日本薬局方に定められている「精製水」等の純水を掲げることができる。
【0056】
また、水溶液の製造装置1には、物質合わせ部9が設けられている。物質合わせ部9では、第1の反応前物質(たとえば、亜塩素酸)11と第2の反応前物質(たとえば、クエン酸)13とが合わせられるようになっている。
【0057】
物質合わせ部9によって合わせされた亜塩素酸11とクエン酸13とが化学反応を起こすことによって、二酸化塩素15が生成されるようになっている。亜塩素酸11とクエン酸13とはたとえば水溶液の形態で存在している。
【0058】
亜塩素酸11とクエン酸13との化学反応を反応式で示すと、「15NaClO2+4C(OH)(CH2COOH)2COOH→12ClO2+4C6H5Na3O7+3NaCl+2H2O」となる。ここで、上記反応式で生成された「C6H5Na3O7」、「NaCl」、「H2O」は、二酸化塩素以外の物質17を構成している副生成物(不要物質)ということになる。
【0059】
また、第1の器物3は、耐薬品性があり気体のみを透過させるポリプロピエン、ポリエチレン、シリコン等の合成樹脂等で構成されている。これにより、上記化学反応で生成された二酸化塩素15のみが、第1の器物3を透過し、第2の器物5内の水に溶けるようになっている。一方、第2の器物5は、ガラスや所定のコーティングがされている合成樹脂等の、水7や二酸化塩素15や副生成物17は透過しない材料で構成されている。
【0060】
第1の器物3は第1のチューブで構成されている。第2の器物5は第2のチューブで構成されている。また、第2のチューブ5は、上述したようにコーティング等が適宜されている合成樹脂等で構成されている。これにより、上記反応式に記載されている物質は、第2のチューブ5を透過しないようになっている。第1の器物3および第2のチューブ5はたとえば可撓性を備えている。
【0061】
第1のチューブ3は第2のチューブ5内に入っている。そして、第1のチューブ3内を二酸化塩素15と二酸化塩素以外の物質17とが流れるように構成されている。また、第2のチューブ5内であって第1のチューブ3の外側の空間19を水が流れるように構成されている。
【0062】
第1のチューブ3は、円筒状等の細長い筒状に形成されており、第2のチューブ5も、円筒状等の細長い筒状に形成されている。第1のチューブ3の外径は、第2のチューブ5の内径よりも小さくなっている。
【0063】
第1のチューブ3の長手方向と第2のチューブ5の長手方向とはお互いが一致しており、第1のチューブ3が第2のチューブ5内で延びている。第1のチューブ3を除く第2のチューブ5内の部位には、筒状の空間19が形成されており、この筒状の空間19に水7が流れるようになっている。
【0064】
二酸化塩素15と二酸化塩素以外の物質17とが流れる方向は、第1のチューブ3の長手方向と一致しており、水7が流れる方向は、第2のチューブ5の長手方向と一致している。
【0065】
第1のチューブ3内での、二酸化塩素15と二酸化塩素以外の物質17とが流れる方向に対して、第2のチューブ5内であって第1のチューブの外側での、水7が流れる方向は、逆方向になっている(
図4の矢印参照)。
【0066】
二酸化塩素水溶液の製造装置1についてさらに詳しく説明する。
【0067】
二酸化塩素水溶液の製造装置1は、
図3で示すように、架台21と、第1の反応前物質用タンク(たとえば亜塩素酸用タンク)23と、第2の反応前物質用タンク(たとえばクエン酸用タンク)25と、とを備えて構成されている。また、二酸化塩素水溶液の製造装置1は、
図3で示すように、水用タンク27と、二酸化塩素15の水溶液用タンク29と、副生成物用タンク31とを備えて構成されている。
【0068】
また、二酸化塩素水溶液の製造装置1には、
図3で示すように、第1の反応前物質用ポンプ(たとえば亜塩素酸用チューブポンプ)33と、第2の反応前物質用ポンプ(たとえばクエン酸用チューブポンプ)35と、水用ポンプ37とが設けられている。
【0069】
さらに、二酸化塩素水溶液の製造装置1には、所定の物質透過部(たとえば二酸化塩素透過部)39と温度調整部41と制御部(図示しないCPUとメモリとを備えている制御部)43とが設けられている。
【0070】
各タンク23、25、27、29、31や各ポンプ33、35、37等は、架台21に載置されている。なお、各ポンプ33、35、37として、たとえば、可変吐出量チューブポンプが採用されている。
【0071】
亜塩素酸用タンク23には、亜塩素酸11の水溶液が蓄えられており、クエン酸用タンク25には、クエン酸13の水溶液が蓄えられており、水用タンク27には、水7が蓄えられている。二酸化塩素15の水溶液用タンク29には、二酸化塩素15の水溶液2が蓄えられるようになっており、副生成物用タンク31には、副生成物17が蓄えられるようになっている。
【0072】
亜塩素酸用チューブポンプ33の吸入口からは、吸入用チューブ45が延びている。吸入用チューブ45の先端部は亜塩素酸用タンク23内に入っている。亜塩素酸用チューブポンプ33の吐出口からは、吐出用チューブ47が延びている。
【0073】
クエン酸用チューブポンプ35の吸入口からは、吸入用チューブ49が延びている。吸入用チューブ49の先端部はクエン酸用タンク25内に入っている。クエン酸用チューブポンプ35の吐出口からは、吐出用チューブ51が延びている。
【0074】
吐出用チューブ47の先端と吐出用チューブ51の先端とがお互いが接続されており、この接続されている箇所等で物質合わせ部9が形成されている。物質合わせ部9から第1のチューブ3が副生成物用タンク31に向かって延びている。
【0075】
物質合わせ部9によって、亜塩素酸11の水溶液とクエン酸13の水溶液とがお互いに混じり合って化学反応が起こり、二酸化塩素15と副生成物17とが生成されるようになっている。この二酸化塩素15と副生成物17とは、第1のチューブ3内を副生成物用タンク31に向かって流れるようになっている。
【0076】
水用ポンプ37の吸入口からは吸入用チューブ53が延びている。吸入用チューブ53の先端部は水用タンク27内に入っている。水用ポンプ37の吐出口からは、吐出用チューブ55が延びている。
【0077】
吐出用チューブ55の先端は第2のチューブ5に接続されており、この接続がされている箇所から第2のチューブ5が二酸化塩素15の水溶液用タンク29に向かって延びている。なお、第2のチューブ5の先端からは排出用チューブ30が延びている。
【0078】
そして、排出用チューブ30の先端が二酸化塩素15の水溶液用タンク29内に入っている。これにより水7や二酸化塩素15の水溶液2が、水用タンク27から二酸化塩素15の水溶液用タンク29に向かって流れるようになっている。
【0079】
第1のチューブ3の長手方向の一部(たとえば、中間部の大部分)は、
図4や
図5で示すように、第2のチューブ5の内部で長く延びている。第1のチューブ3の、第2のチューブ5の内部で長く延びている部位が、二酸化塩素透過部39になっている。二酸化塩素透過部39では、二酸化塩素15が第1のチューブ3から出てきて、第2のチューブ5内の水7に溶け込むようになっている。
【0080】
図3で示す温度調整部41は、二酸化塩素透過部39の長手方向の一部(たとえば、中間部の大部分)で、第1のチューブ3と第2のチューブ5との温度を調整するようになっている。すなわち、温度調整部41は、亜塩素酸11の水溶液、クエン酸13の水溶液、二酸化塩素15、副生成物17、水7の温度を調整するようになっている。第1のチューブ3と第2のチューブ5との温度は、たとえば、―9℃~60℃の範囲で適宜調整されるようになっている。また、温度調整部41のところでは、
図3で示すように、二酸化塩素透過部39を形成している第1のチューブ3と第2のチューブ5とがコイル状(螺旋状)になって延びている。なお、温度調整部41で、二酸化塩素透過部39が、蛇行等の他の形態で曲がって延びていてもよい。
【0081】
図3を参照しつつ温度調整部41についてさらに説明する。温度調整部41は容器42とこの容器42内入っている不凍液等の所定の液体44と、この所定の液体の温度を調節する温度調節器46とを備えて構成されている。そして、コイル状の二酸化塩素透過部39が、所定の液体44内に収まっている。
【0082】
第2のチューブ5の長手方向の一端(水用ポンプ37側の端)は、
図5(b)で示すように、ティー57の1つ目の接続部59に接続されている。ティー57の2つ目の接続部61は、吐出用チューブ55に接続されている。
【0083】
第2のチューブ5の長手方向の他端(二酸化塩素15の水溶液用タンク29側の端)は、
図5(c)で示すように、ティー63の1つ目の接続部65に接続されている。ティー63の2つ目の接続部67は、排出用チューブ30に接続されている。
【0084】
ティー57の3つ目の接続部69には、
図5(b)で示すように、ブッシュ71が設置されている。ティー63の3つ目の接続部73には、
図5(c)で示すように、ブッシュ75が設置されている。
【0085】
そして、各ブッシュ71、75を貫通して、第2のチューブ5内を第1のチューブ3が貫通している。なお、
図5(b)(c)に参照符号77で示すものは、第1のチューブ3の変形を防止するための変形防止部材である。変形防止部材77は円筒状に形成されているとともに、剛性が高くなっている。
【0086】
図5(b)で示す状態では、ティー57の3つ目の接続部69と変形防止部材77とによって、ブッシュ71と第1のチューブ3とが所定の圧力をもって挟み込まれている。
図5(c)で示す状態でも、ティー63の3つ目の接続部73と変形防止部材77とによって、ブッシュ75と第1のチューブ3とが所定の圧力をもって挟み込まれている。
【0087】
そして、各ポンプ33、35、37を駆動すると、
図3~
図5に矢印で示すように、二酸化塩素15、副生成物17、水7等が、第1のチューブ3や第2のチューブ5から漏れ出すことなく、流れるようになっている。なお、第1のチューブ3のうちの第2のチューブ5の外に出ている部位については、第2のチューブ5と同様に、コーティングがされていることで水7や二酸化塩素15や副生成物17が透過しないようになっていることが望ましい。
【0088】
次に、二酸化塩素水溶液の製造装置1の動作について説明する。
【0089】
初期状態では、亜塩素酸用タンク23内に亜塩素酸11の水溶液が入っており、クエン酸用タンク25内にはクエン酸13の水溶液が入っており、水用タンク27内には水7が入っており、水溶液用タンク29、副生成物用タンク31は空になっている。また、各ポンプ33、35、37は停止している。
【0090】
上記初期状態で制御部43の制御の下、まず温度調整部41で温度を調整する。続いて、各ポンプ33、35、37を稼働させる。ポンプ33、35の稼働は、たとえば、間欠的にされる。所定時間あたりの二酸化塩素15の生成量は、微量でよいからである。これに対して水用ポンプ37は、たとえば、連続的に稼働する。
【0091】
これにより、二酸化塩素15の水溶液用タンク29内に二酸化塩素15の水溶液2がたくわえられ、副生成物用タンク31内に副生成物17が蓄えられる。
【0092】
なお、上記説明では、水溶液として二酸化塩素が溶存している水2を例示しているが、二酸化塩素に変えて他の物質(たとえば香料)が溶存している水を採用してもよい。
【符号の説明】
【0093】
2 所定の物質が溶存している水(二酸化塩素の水溶液)
3 第1の器物
5 第2の器物
7 水
15 所定の物質(二酸化塩素)
17 所定の物質以外の物質(副生成物;不物質)
101 スプレー
103 筐体(缶)
105 アクチュエータ
115 バッグ
107 閉空間
109 圧縮されている気体(圧縮窒素)
117 バッグ内空間
119 バッグ外空間