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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167461
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
B23K20/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073257
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】土井 康平
(72)【発明者】
【氏名】森 優智
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167BG07
4E167BG08
4E167BG22
4E167DA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上部回転体及び下部回転体を用いた摩擦攪拌接合装置に対して、回転工具と別体である表側プレートを用いることなく、回転工具に傾斜角を付与することのできる摩擦攪拌接合装置を提供する。
【解決手段】上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体12と、上部回転体12を貫いた回転主軸10と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体18と、回転主軸10に形成された撹拌部とを備えた回転工具14を有し、回転工具14は、上部回転体12及び下部回転体18の一方又は双方の向かい合う端部にスラスト軸受17を介してスライド板16が取り付けられたものである摩擦撹拌接合装置において、スライド板16の被接合部材19と当接する面に、スライド板傾斜面16aが形成されていること、を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体と、前記上部回転体を貫いた回転主軸と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体と、前記回転主軸に形成された撹拌部とを備えた回転工具を有し、接合端面同士を突き合わせた被接合部材の接合部を前記上部回転体と前記下部回転体とで挟み込み、前記接合部に沿って前記攪拌部が進行することにより、加熱しながら撹拌させて前記接合部を順次接合する装置であって、前記回転工具は、前記上部回転体及び前記下部回転体の一方又は双方の向かい合う端部にスラスト軸受を介してスライド板が取り付けられたものである摩擦撹拌接合装置において、
前記スライド板の前記被接合部材と当接する面に、スライド板傾斜面が形成されていること、
を特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載する摩擦攪拌接合装置において、
前記回転主軸が鉛直線に対して、主軸傾斜角度だけ傾斜していること、
前記スライド板傾斜面のスライド板傾斜角度が、前記主軸傾斜角度より大きい角度であること、
を特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項3】
請求項2に記載する摩擦攪拌接合装置において、
前記スライド板が、前記下部回転体に前記スラスト軸受を介して取り付けられていること、
前記主軸傾斜角度が、前記回転主軸の進行方向と反対方向に傾斜するように形成されていること、
を特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項4】
請求項2に記載する摩擦攪拌接合装置において、
前記スライド板が、前記上部回転体に前記スラスト軸受を介して取り付けられていること、
前記主軸傾斜角度が、前記回転主軸の進行方向に傾斜するように形成されていること、
を特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項5】
請求項1に記載する摩擦攪拌接合装置において、
前記スライド板が、前記上部回転体及び前記下部回転体の双方の向かい合う面に取り付けられていること、
を特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載するいずれか1つの摩擦攪拌接合装置において、
前記スライド板が、前記上部回転体又は前記下部回転体と伴廻りすることを防止するための回転防止手段を有すること、
前記回転防止手段により、前記スライド板の最大厚みを有する部位が、前記回転主軸の前記進行方向の先端に対して、反対の位置にあること、
を特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体と、上部回転体を貫いた回転主軸と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体と、前記回転主軸に形成された撹拌部とを備えた回転工具を有し、接合端面同士を突き合わせた被接合部材の接合部を上部回転体と下部回転体とで挟み込み、接合部に沿って進行することにより、加熱しながら撹拌させて接合部を順次接合する摩擦攪拌接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の側構体を製造する装置として、押出成形によりアルミ合金製の長尺部材同士の接合端を突き合わせて、突き合わせ部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置が広く利用されている。
本出願人は、特許文献1に示すように、上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体と、上部回転体を貫いた回転主軸と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体と、前記回転主軸に形成された撹拌部とを備えた回転工具を有し、接合端面同士を突き合わせた被接合部材の接合部を上部回転体と下部回転体とで挟み込み、接合部に沿って進行することにより、加熱しながら撹拌させて接合部を順次接合する摩擦攪拌接合装置を実用化している。
摩擦攪拌接合装置により接合された接合部は、アーク溶接と比較して平面度が高いため、グラインダで表面を軽く切削するだけで綺麗な表面が得られる利点がある。
【0003】
通常の摩擦攪拌接合装置について説明する。図11に示すように、一対のアルミ板102を接合するときに、平面度を必要とする面が回転ツールの裏側の面にある場合には、当て板104によりアルミ板102の接合部の裏側をしっかりと支持しておく必要がある。上部回転体100、及びのその先端に付設された回転工具101が高速回転することにより、アルミ板102の接合部の温度を550℃程度まで加熱する。鉄道車両構体に用いるアルミ合金の融点は600~650℃であるが、アルミは550℃程度の温度に加熱されると流動性を有する状態の流動アルミ103となり、強い力で攪拌されると流動する。
【0004】
上部回転体100と回転工具101は、一対のアルミ板102の突き合わせられている接合部を加熱しながら攪拌させて一対のアルミ板102の双方のアルミを攪拌する。加熱され攪拌されている流動アルミ103は、矢印Xで示す進行方向に発生している。上部回転体100と回転工具101が通過したアルミ材105は攪拌されることはなく、順次冷却されることにより、一対のアルミ板102は、接合される。
加熱され攪拌された流動アルミ103は、アルミ板102の裏面では、当て板104により当接されているため、上部回転体100から受ける荷重を確実に受けることができる。
【0005】
次に、特許文献1の技術の利点について説明する。図11では、鉄道車両構体を構成するアルミ板材として広く使用されている2枚の平板がリブで接続されているダブルスキンの表板を摩擦攪拌接合しようとする場合に、当て板104を表板の裏に装着するのが困難であり、リブの構造等に大きな制約を受け、実用化するときに余分なコストを必要とする問題があった。
図12に示すように、回転工具101をアルミ板102の裏側を貫通する位置まで延設して、下部回転体106を固設する。下部回転体106には、スラスト軸受108を介して、アルミ板102の裏面に当接するスライド板107が取り付けられている。
スライド板107は、回転工具101により加熱され攪拌された流動アルミ103が、アルミ板102の裏側に漏れ出るのを防止し、アルミ板102の裏面の平面度の高い接合面を形成する。
特許文献1の技術によれば、当て板104を必要としないため、摩擦攪拌接合装置の全体のコストを低減することができる。
【0006】
一方、摩擦攪拌接合において、攪拌軸を進行方向に対して所定角度傾けた状態で移動させる方法が特許文献2に開示されている。すなわち、特許文献2の段落(0007)には、
「金属材の表面側のみから回転ツールのプローブを接合部に挿入する摩擦攪拌接合では、回転ツールの移動方向の側に回転ツールのプローブの先端が傾くように回転ツールを金属材の表面の法線に対して傾斜させることにより、良好な接合を得ることが行われる。」と記載されている。
特許文献2では、一方、特許文献1(特許文献2の記載では、特開2003-181654号公報を指すが、ここでは、特許第5204928号公報を指す。)に記載されているような「ボビンツールを用いる技術では、プローブで連結された上下一対のショルダー部を回転させる。この状態では上下片方のショルダー部を回転ツールの移動方向の側に傾けると、もう片方のショルダー部は回転ツールの移動方向とは反対方向の側に傾いてしまう。このため、ボビンツールを金属材に対していずれかの方向に傾斜させることができず、ボビンツールを金属材の表面の法線に対して垂直にすることが必要となる。そのため、ボビンツールを用いる摩擦攪拌接合では、良好な接合部を得るための接合条件の範囲が狭い欠点がある。」と指摘している。
【0007】
上記欠点を解決するために、特許文献2の図3(この段落では、部品番号は、特許文献2のものを使用している。)に示されているように、攪拌軸(16)の下端に回転する裏側ツール(14)を設けて、裏側ツール(14)のある面と反対側の面に、攪拌軸(16)とは別体で構成される回転しない表側プレート(12)を、攪拌軸(16)と同期させながら移動することが開示されている。この表側プレート(12)により、平面度の高い接合面を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5204928号公報
【特許文献2】特開2014-61542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術に、回転工具を被接合板の鉛直面に対して傾斜角を設けようとした場合には、特許文献2で指摘されている問題が発生する。特許文献2の技術によれば、一応その欠点を克服することは可能である。
しかしながら、特許文献2の摩擦攪拌接合装置には、次のような問題があった。
(1)特許文献2の図3に示されるような回転ツールと別体で構成される表側プレートを攪拌軸と同期させながら移動するためには、表側プレートを駆動するための駆動手段を別に設けなければならず、装置が複雑化すると共に、装置のコストが高くなる問題があった。
(2)また、裏側ツール(下部回転体)の一部が被接合部内に侵入し、回転工具により550℃程度に加熱され軟化しているアルミと接触するため、接合部の表面を荒らすため平面度が悪化し、後処理に余分の加工を必要とする問題があった。
(3)表面プレートが軟化前の部材表面と擦れるため、部材表面を擦ることで、接合部欠陥を生じ、回転工具破損の恐れの問題があった。
【0010】
本発明は、上部回転体及び下部回転体を用いた摩擦攪拌接合装置に対して、回転工具と別体である表側プレートを用いることなく、回転工具に傾斜角を付与することのできる摩擦攪拌接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の摩擦攪拌接合装置は、次の構成を有している。
(1) 上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体と、前記上部回転体を貫いた回転主軸と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体と、前記回転主軸に形成された撹拌部とを備えた回転工具を有し、接合端面同士を突き合わせた被接合部材の接合部を前記上部回転体と前記下部回転体とで挟み込み、前記接合部に沿って前記攪拌部が進行することにより、加熱しながら撹拌させて前記接合部を順次接合する装置であって、前記回転工具は、前記上部回転体及び前記下部回転体の一方又は双方の向かい合う端部にスラスト軸受を介してスライド板が取り付けられたものである摩擦撹拌接合装置において、前記スライド板の前記被接合部材と当接する面に、スライド板傾斜面が形成されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記回転主軸が鉛直線に対して、主軸傾斜角度だけ傾斜していること、前記スライド板傾斜面のスライド板傾斜角度が、前記主軸傾斜角度より大きい角度であること、を特徴とする。
ここで、前記主軸傾斜角度が1.5度以上3度以下であること、が好ましい。
【0012】
(3)(2)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記下部回転体に前記スラスト軸受を介して取り付けられていること、前記主軸傾斜角度が、前記回転主軸の進行方向と反対方向に傾斜するように形成されていること、を特徴とする。
(4)(2)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記上部回転体に前記スラスト軸受を介して取り付けられていること、前記主軸傾斜角度が、前記回転主軸の進行方向に傾斜するように形成されていること、を特徴とする。
【0013】
(5)(1)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記上部回転体及び前記下部回転体の双方の向かい合う面に取り付けられていること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記上部回転体又は前記下部回転体と伴廻りすることを防止するための回転防止手段を有すること、前記回転防止手段により、前記スライド板の最大厚みを有する部位が、前記回転主軸の前記進行方向の先端に対して、反対の位置にあること、を特徴とする。
【0014】
上記構成を有する摩擦攪拌接合装置は、次のような作用・効果を奏する。
(1) 上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体と、前記上部回転体を貫いた回転主軸と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体と、前記回転主軸に形成された撹拌部とを備えた回転工具を有し、接合端面同士を突き合わせた被接合部材の接合部を前記上部回転体と前記下部回転体とで挟み込み、前記接合部に沿って前記攪拌部が進行することにより、加熱しながら撹拌させて前記接合部を順次接合する装置であって、前記回転工具は、前記上部回転体及び前記下部回転体の一方又は双方の向かい合う端部にスラスト軸受を介してスライド板が取り付けられたものである摩擦撹拌接合装置において、前記スライド板の前記被接合部材と当接する面に、スライド板傾斜面が形成されていること、を特徴とするので、例えば、スライド傾斜面の傾斜角度を回転工具の傾斜角度と同じにすれば、スライド傾斜面が被接合部材の表面とほぼ平行な状態となるため、スライド板の一部が被接合部に侵入することが少なく、接合後の接合面を、バリ等の無い平滑な状態にすることができる。
【0015】
(2)(1)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記回転主軸が鉛直線に対して、主軸傾斜角度だけ傾斜していること、前記スライド板傾斜面のスライド板傾斜角度が、前記主軸傾斜角度のより大きい角度であること、より好ましくは、前記主軸傾斜角度が1.5度以上3度以下であること、を特徴とするので、
前記スライド板傾斜面のスライド板傾斜角度が、前記主軸傾斜角度と同じ角度の場合には、スライド板傾斜面が被接合部材の表面とほぼ平行な状態となる。しかし、スライド板の進行方向の先端部が加熱される前の被接合部材と接触する恐れがあり、これにより、回転工具に大きな負荷が掛かり、回転工具が破損する恐れがある。
【0016】
前記スライド板傾斜面のスライド板傾斜角度が、前記主軸傾斜角度のより大きい角度としておけば、スライド板傾斜面の進行方向後端部であるスライド板の厚くなっている部分が被接合部材に接した状態のときに、スライド板傾斜面の先端部と被接合部材との間には常に隙間が形成されているため、スライド板傾斜面の先端部が被接合部材と接触する恐れがない。
また、スライド板傾斜面の進行方向後端部であるスライド板の厚くなっている部分が、最終仕上げとして、被接合部材に常に接しているため、平面度の高い接合面を得ることができる。
【0017】
(3)(2)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記下部回転体に前記スラスト軸受を介して取り付けられていること、前記主軸傾斜角度が、前記回転主軸の進行方向と反対方向に傾斜するように形成されていること、を特徴とするので、スライド板傾斜面の進行方向後端部が被接合部材に接した状態のときに、スライド板傾斜面の先端部と被接合部材との間には常に隙間が形成されているため、スライド板傾斜面の先端部が被接合部材と接触する恐れがない。
また、スライド板傾斜面の進行方向後端部であるスライド板の厚くなっている部分が、最終仕上げとして、被接合部材に常に接しているため、平面度の高い接合面を得ることができる。
【0018】
(4)(2)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記上部回転体に前記スラスト軸受を介して取り付けられていること、前記主軸傾斜角度が、前記回転主軸の進行方向に傾斜するように形成されていること、を特徴とするので、スライド板傾斜面の進行方向後端部が被接合部材に接した状態のときに、スライド板傾斜面の先端部と被接合部材との間には常に隙間が形成されているため、スライド板傾斜面の先端部が被接合部材と接触する恐れがない。
また、スライド板傾斜面の進行方向後端部が、最終仕上げとして、被接合部材に常に接しているため、平面度の高い接合面を得ることができる。
【0019】
(5)(1)に記載する摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記上部回転体及び前記下部回転体の双方の向かい合う面に取り付けられていること、を特徴とするので、接合部に対する加熱しての攪拌は回転工具のみにより行われるが、被接合部材の両面を、双方の向かい合う面に取り付けられている一対のスライド板傾斜面の進行方向後端部により、仕上げ加工できるため、接合面の両面において平面度の高い接合面を得ることができる。
【0020】
(6)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの摩擦攪拌接合装置において、前記スライド板が、前記上部回転体又は前記下部回転体と伴廻りすることを防止するための回転防止手段であるガイド部とガイド溝を有すること、ガイド部とガイド溝により、スライド板の進行方向後端部である厚くなっている部分が、回転主軸の進行方向Xの先端に対して、反対の位置にあること、を特徴とするので、
スライド板傾斜面が被接合部材の表面とほぼ平行な状態となるため、スライド板が被接合部材に侵入することが少なく、接合後の接合面を、バリ等の無い平滑な状態にすることができる。
特に、スライド板はフリーな状態にあるため、回転工具により550℃程度に加熱され軟化しているアルミが攪拌されたときに、流動アルミと接触しているスライド板が供廻りする恐れがある。本発明では、回転防止部材が供廻りを防止しているため、常に、前記スライド板の厚くなっている部分が、前記回転主軸の前記進行方向に向かった位置と反対の位置にある状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施の形態の摩擦攪拌接合装置11の主要部の断面図である。
図2】本発明の第2実施の形態の摩擦攪拌接合装置11の主要部の断面図である。
図3】本発明の第3実施の形態の摩擦攪拌接合装置11の主要部の断面図である。
図4】本発明の第4実施の形態の摩擦攪拌接合装置11の主要部の断面図である。
図5】本発明の第5実施の形態の摩擦攪拌接合装置11の主要部の断面図である。
図6図1の進行方向と反対側から見た摩擦攪拌接合装置11の中央断面図である。
図7図6のAA断面図である。
図8】本発明の第6実施の形態の摩擦攪拌接合装置11の主要部の断面図である。
図9図8のBB断面図である。
図10図8の被接合部材19の断面図である。
図11】従来の摩擦攪拌接合装置100の主要部の断面図である。
図12】従来の別の摩擦攪拌接合装置100の主要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の摩擦攪拌接合装置11の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、摩擦攪拌接合装置の主要部を断面図で示す。
図1に示すように、略円筒形状の上部回転体12の中心孔に、上部回転軸13が固定されている。上部回転軸13は、上部回転体12と同じ速度で回転している。上部回転軸13の上部回転体12から突出して被接合部材19を貫通し、被接合部材19と当接して攪拌する部位が回転工具14であり、被接合部材19から下側の部位が下部回転軸15である。上部回転軸13、回転工具14、及び下部回転軸15は、一体の回転主軸10を構成している。
【0023】
下部回転軸15の先端部には、下部回転体18が固定されている。また、下部回転体18の上面には、スラスト軸受17を介して、スライド板16が下部回転軸15に対して、回転可能に保持されている。スライド板16の中心には中心孔が形成され、下部回転軸15がスライド板16の中心孔を貫通しているが、下部回転軸15の外周面と、スライド板16の中心孔の内周面と間には、隙間が形成されている。
回転主軸10の中心軸Y2は、被接合部材19の上面19aの鉛直軸Y1に対して、回転主軸10の進行方向(矢印Xで示す。)と反対側に向かって主軸傾斜角度θだけ傾斜している。
上部回転体12の下面12aは、被接合部材19の上面19aに対して角度θだけ傾斜している。ここで、下面12aが平面でない場合、例えば、凹状の円弧を形成している場合は、円弧の両端部を結ぶ仮想線が角度θだけ傾斜している。
【0024】
次に、被接合部材19の下面19b側に位置する部材について説明する。
下部回転体18の上面及び下面は、上部回転体12の下面12aと平行に形成されている。ここで、下面12aが平面でない場合、例えば、凹状の円弧を形成している場合は、円弧の両端部を結ぶ仮想線と平行に形成されている。また、スライド板16の下面も、上部回転体12の下面12aと平行に形成されている。
スライド板16の上面は、スライド板16の下面に対して、スライド板傾斜角度αだけ傾斜して、スライド板傾斜面16aを形成している。本実施の形態では、α=θ=3度としているので、スライド板傾斜面16aは、被接合部材19の下面19bと全面で当接した状態となっている。主軸傾斜角度θは、1.5度以上3度以下であれば良い。この場合に、α=θとする。
【0025】
本発明では、スライド板16の厚くなっている部分16bが、回転工具14の進行方向Xと反対方向の位置に保持されている。この点を詳細に説明する。
スライド板16には、被接合部材19に当接するスライド板傾斜面16aが被接合部材19から受ける回転力により、回転する力が付加されている。
すなわち、スライド板傾斜面16aが当接している被接合部材19のアルミ材は、回転工具14及び上部回転体12の下面12aの回転による摩擦熱により550度程度まで加熱され、流動しやすい状態の流動アルミ20となっており、回転工具14の外周面により攪拌され回転方向に流動している。
回転流動する流動アルミ20により、スライド板傾斜面16aは、回転力を受け、その回転力はスライド板16に直接伝わっている。
【0026】
しかし、スライド板16は、回転工具14が進行する接合直線と平行に設置されたガイド部材に、常に当接されているため、スライド板16は、常に図1に示すように、スライド板16の厚くなっている部分16bが、回転工具14の進行方向Xと反対の位置に保持されている。その詳細を説明する。
図6に、図1の進行方向と反対側から見た摩擦攪拌接合装置11の中央断面図を示し、図7図6のAA断面図を示す。摩擦攪拌接合装置11は、図6においては、紙面の表面側から裏面側に進行としており、図7においては、矢印Xで示す方向に進行している。
図6では、図1で記載を省略していたガイド本体30に形成されたガイド溝31が形成されている。また、図7に示すように、スライド板16は円筒状の両側面に平面状のガイド部16dが形成されている。一対のガイド部16dの幅長さは、ガイド溝31の溝の幅長さより少し短く設定されている。
また、スライド板16の上面には、図6に示すように、両側に切欠き部16cが形成されている。これは、スライド板16の上面左右端部が、被接合部材19の下面19bと接触するのを防止するためである。
また、図6図7に示すように、回転主軸10(上部回転軸13)の中心軸線L2の下部回転体18の下面での位置は、ガイド溝31の中心線L1と少しずれて設定されている。
【0027】
図7に示すように、スライド板16のガイド部16dは、接触位置16eの1点でガイド溝31の内側面に接触している。回転主軸10は、図7に矢印Yで示す方向に回転されており、スライド板16は、流動アルミ20と供廻りするため、Y方向に回転力を受けている。これをガイド溝31の内側面が受けることにより、スライド板16は、回転せずに進行方向Xへ進行する。
回転主軸10(上部回転軸13)の中心軸線L2の下部回転体18の下面での位置は、ガイド溝31の中心線L1と少しずらすことにより、スライド板16のガイド部16dの接触位置16eが安定して接触するため、進行方向X側のガイド部16dがガイド溝31の内側面に接触する場合と比較して、下部回転体18に与える反力を低減することができる。
【0028】
次に、上記構成を有する摩擦攪拌接合装置11の作用について説明する。スライド板16は、回転主軸10を介して、被接合部材19に当接する方向に、図示しない下部アクチュエータにより引き上げられており、スライド板傾斜面16aは、被接合部材19の下面19bに対して強い押圧力で当接されている。
回転工具14が、主軸傾斜角度θを有することにより、上部回転体12の下面の進行方向での被接合部材19との当接面、及び回転工具14の外周面がアルミ材と摩擦することにより発生する熱でアルミ材が550℃程度まで加熱され、流動可能な流動アルミ20の状態となっている。図1に示すように、流動アルミ20は、回転工具14の周囲、及び上部回転体12の下面12aが当接する部位に流動アルミ20aが形成されている。回転しないスライド板16が当接している被接合部材19は、摩擦熱による加熱がないため、回転工具14の周囲のみに流動アルミ20bが形成されている。
【0029】
鉄道車両構体に用いるアルミ合金の溶融温度は600~650℃程度なので、アルミ材は溶融状態にはならないが、流動性は高くなり、上部回転体12の下面12a、及び回転工具14の外周が流動アルミ20に与える摩擦力により流動アルミ20は回転流動する。このとき主軸傾斜角度θがない場合には、流動アルミ20の回転流動は、被接合部材19の板厚方向では発生し難い。
しかし、前進角度θ(図1では時計回り方向にθが形成されている。)がある場合には、上部回転体12の下面12a、及び回転工具14の外周が流動アルミ20に対して被接合部材19の板厚方向に力を与えるため、流動アルミ20は、回転方向に流動すると同時に被接合部材19の板厚方向にも流動する。これにより、一対の被接合部材19の両接合部内でのアルミ材の攪拌が促進されるため、強固な接合部を形成することができる。
【0030】
次に、仕上げ面である被接合部材19の下面19bでの表面仕上げについて説明する。
回転工具14は前進角度θを有しているため、回転工具14に垂直に付設された下部回転体18の上面・下面は、被接合部材19の下面19bに対してスライド板傾斜角度αを有している。
しかし、本発明では、スライド板傾斜面16aが、スライド板16の下面にて対してα(図1では、反時計回り方向にαが形成されている。)だけスライド板傾斜角度αが形成されているため、スライド板傾斜面16aが、被接合部材19の下面19bに全面で当接した状態となっている。
【0031】
このため、流動アルミ20aが、回転方向に流動すると同時に被接合部材19の板厚方向にも流動され、一対の被接合部材19の両接合部内でのアルミ材の攪拌が激しく行われても、スライド板傾斜面16aが外に出ようとする流動アルミ20aを確実に押さえつけるため、スライド板16が通過した後における被接合部材19の下面19bを高い平面度に仕上げることができる。
ここで、θとして1.5度、2度、2.5度を採用した場合であっても、α=θとしていれば、スライド板傾斜面16aは、常に被接合部材19の下面19bに当接している。これにより、スライド板16が通過した後における接合面を高い平面度に維持することができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施の形態について図2に基づいて説明する。第2実施の形態は、一部を除いて第1実施の形態と同じ構成及び作用なので、同じ部材には同一の符号を付し、相違する点のみを詳細に説明し、重複内容は説明を割愛する。
スライド板傾斜角度αが、θを超える角度となっている点である。すなわち、α>θとしている点である。
図2に示すように、α>θとすることにより、スライド板傾斜面16aの進行方向先端において、隙間Zが形成される。
実際の被接合部材19は、うねり等を有しており高い平面度が維持されていない場合が多い。そのような場合に、α=θとしていると、スライド板傾斜面16aが被接合部材19の下面19bに密着している状態で、スライド板傾斜面16aが被接合部材19の下面19bを擦ることがある。
【0033】
被接合部材19の上面19aでは、上部回転体12の下面12aにより、流動アルミ20が形成されている。しかし、被接合部材19の下面19bは、回転工具14に近い部分のみに流動アルミ20が形成されていて、スライド板傾斜面16aの進行方向の先端部が当接する被接合部材19の下面19bは、未だ加熱が弱く流動アルミ20が形成されていない。流動アルミ20が形成されていない部分を、スライド板傾斜面16aの先端部が擦ると傷の発生、バリが発生し、これらを原因として接合部表面に欠陥の発生が懸念される。
第2実施の形態では、α>θとして、スライド板傾斜面16aと被接合部材19の下面19bとの間に隙間Zを形成しているので、被接合部材19の平面度が悪くても、スライド板傾斜面16aの先端部が被接合部材19の下面19bを擦ることがなく、傷の発生、バリの発生を防止することができる。
また、スライド板傾斜面16aの先端部が被接合部材19を擦ると、スライド板16の厚くなっている部分16bの接触圧力が下がり、接合面の平面度が悪化したり、欠陥が発生する恐れがあるが、これらも防止できる。
【0034】
次に、本発明の第3実施の形態について図3に基づいて説明する。第3実施の形態は、一部を除いて第1実施の形態と同じ構成及び作用なので、同じ部材には同一の符号を付し、相違する点のみを詳細に説明し、重複内容は説明を割愛する。
図3に示すように、スライド板22が、上部回転体12の下面にスラスト軸受17を介して保持されている。本実施の形態では、仕上げ面が、被接合部材19の上面19aとなる。
下部回転体21は、下部回転軸15に固定され、下部回転体21の上面21aは、被接合部材19の下面19cに当接している。
【0035】
回転主軸10の中心軸Y2は、被接合部材19の上面19aの鉛直線Y1に対して、回転主軸10の進行方向(矢印Xで示す。)に向かって主軸傾斜角度θだけ傾斜している。図3では、Y2は、Y1に対して反時計回りに傾斜している。
下部回転体21の上面21aは、被接合部材19の下面19cに対して角度θだけ傾斜している。
スライド板22は、回転工具14が進行する接合直線と平行に設置されたガイド部材に、常に当接されているため、スライド板22は、常に図3に示すように、スライド板22の厚くなっている部分22bが、回転工具14の進行方向Xと反対の位置に保持されている。
【0036】
本実施の形態では、スライド板傾斜面22aが、スライド板22の上面に対してα(図3では、反時計回り方向にαが形成されている。)だけスライド板傾斜角度αが形成されているため、スライド板傾斜面22aが、被接合部材19の上面19aに全面で当接した状態となっている。
このため、流動アルミ20aが、回転方向に流動すると同時に被接合部材19の板厚方向にも流動され、一対の被接合部材19の両接合部内でのアルミ材の攪拌が激しく行われても、スライド板傾斜面22aが外に出ようとする流動アルミ20aを確実に押さえつけるため、スライド板22が通過した後における被接合部材19の上面19aを高い平面度に仕上げることができる。
【0037】
次に、本発明の第4実施の形態について図4に基づいて説明する。第4実施の形態は、一部を除いて第1及び第2実施の形態と同じ構成及び作用なので、同じ部材には同一の符号を付し、相違する点のみを詳細に説明し、重複内容は説明を割愛する。
スライド板傾斜角度αが、θを超える角度となっている点である。すなわち、α>θとしている点である。
図4に示すように、α>θとすることにより、スライド板傾斜面22aの進行方向先端において、隙間Zが形成される。
以下、作用及び効果は、第2実施の形態と同じなので詳細な説明を割愛する。
【0038】
次に、本発明の第5実施の形態について図5に基づいて説明する。第5実施の形態は、一部を除いて第2及び第4実施の形態の組み合わせとなる構成及び作用なので、同じ部材には同一の符号を付し、相違する点のみを詳細に説明し、重複内容は説明を割愛する。
回転主軸10の中心軸Y3は、被接合部材19の上面19aの鉛直線Y1と一致している。すなわち、主軸傾斜角度θ=0度である。
スライド板22の下面には、スライド板傾斜面22aが形成され、スライド板16の上面には、スライド板傾斜面16aが形成されている。各々の傾斜面の角度は、αであるが、α>θ=0であるので、αの角度は、0度より大きければ良い。
【0039】
そして、被接合部材19の上面側にスライド板22の厚みの大きな部分が接触し、下面側にスライド板16の厚みの大きな部分が接触している。上面側では、被接合部材19の上面19aとスライド板22の先端部との間に隙間Zが形成され、被接合部材19の下面とスライド板16の先端部との間に隙間Zが形成されている。
第5実施の形態では、回転工具14のみが、摩擦熱を発生し、流動アルミ20の攪拌を行う。
以下、作用及び効果は、第2及び第4実施の形態と同じなので詳細な説明を割愛する。
【0040】
次に、本発明の第6実施の形態について図8図9図10に基づいて説明する。図9は、図8のBB断面図である。第6実施の形態は、一部を除いて第1実施の形態と同様の構成及び作用なので、同じ部材には同一の符号を付し、相違する点のみを詳細に説明し、重複内容は説明を割愛する。
図1のスライド板傾斜面16aの回転主軸10の進行方向側に凹み16fを設けるとともに、被接合部材19の接合部に凹み16fに嵌合する凸状突起19dを設け、凹み16fと突起19dを嵌合した状態で接合を行っている。
この場合、スライド板傾斜面16aに設ける凹み16fの幅は回転工具14の径よりも狭くする。このようにすればガイド部16dを設けることなく供廻りを防止できるためスライド板16全体を小型にすることができる。さらに凸状突起19dを構成する材料が回転工具14を通過した後はスライド板16の後縁部であるスライド板16の厚くなっている部分16bが接しているので平面となるが、被接合板19の端面の突き合せ部に隙間が生じた場合には、凸状突起19dを構成する材料が充填(フィラー)材となり隙間を補充する効果が得られ接合欠陥を防止することができる。(隙間がない場合は被接合部材19の上面19aよりバリとして排出される)
【0041】
以上詳細に説明したように、本発明に係る摩擦攪拌接合装置11によれば、(1)上部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な上部回転体12と、上部回転体12を貫いた回転主軸10と一体に形成され、下部用アクチュエータによって軸方向の位置調整が可能な下部回転体18と、回転主軸10に形成された撹拌部とを備えた回転工具14を有し、接合端面同士を突き合わせた被接合部材19の接合部を上部回転体12と下部回転体18とで挟み込み、接合部に沿って攪拌部が進行することにより、加熱しながら撹拌させて接合部を順次接合する装置であって、回転工具14は、上部回転体12及び下部回転体18の一方又は双方の向かい合う端部にスラスト軸受17を介してスライド板16(22)が取り付けられたものである摩擦撹拌接合装置において、スライド板16(22)の被接合部材19と当接する面に、スライド板傾斜面16a(22a)が形成されていること、を特徴とするので、例えば、スライド板傾斜面16a(22a)の傾斜角度αを回転工具14の傾斜角度θと同じにすれば、スライド板傾斜面16a(22a)が被接合部材19の表面とほぼ平行な状態となるため、スライド板16(22)の一部が被接合部に侵入することが少なく、接合後の接合面を、バリ等の無い平滑な状態にすることができる。
【0042】
(2)(1)に記載する摩擦攪拌接合装置11において、回転主軸10の中心線Y2が鉛直線Y1に対して、主軸傾斜角度θだけ傾斜していること、スライド板傾斜面16a(22a)のスライド板傾斜角度αが、主軸傾斜角度θより大きい角度であること、を特徴とする。さらに、好ましくは、主軸傾斜角度θが1.5度以上3度以下であること、特徴とする。
スライド板傾斜面16a(22a)のスライド板傾斜角度αが、主軸傾斜角度θと同じ角度の場合には、スライド板傾斜面16a(22a)が被接合部材19の上面19aとほぼ平行な状態となる。しかし、スライド板16(22)の進行方向の先端部が加熱される前の被接合部材19と接触する恐れがあり、これにより、回転工具14に大きな負荷が掛かり、回転工具14が破損する恐れがある。
【0043】
スライド板傾斜面16a(22a)のスライド板傾斜角度αが、主軸傾斜角度θより大きい角度としておけば、スライド板傾斜面16a(22a)の進行方向後端部であるスライド板16の厚くなっている部分16b(22b)が被接合部材19に接した状態のときに、スライド板傾斜面16a(22a)の先端部と被接合部材19との間には常に隙間Zが形成されているため、スライド板傾斜面16a(22a)の先端部が被接合部材19の接触する恐れがない。
また、スライド板傾斜面16a(22a)の進行方向後端部であるスライド板16の厚くなっている部分16b(22b)が、最終仕上げとして、被接合部材19に常に接しているため、平面度の高い接合面を得ることができる。
【0044】
(3)(2)に記載する摩擦攪拌接合装置11において、スライド板16が、下部回転体18にスラスト軸受17を介して取り付けられていること、主軸傾斜角度θが、回転主軸10の進行方向と反対方向に傾斜するように形成されていること、を特徴とするので、スライド板傾斜面16aの進行方向後端部16bが被接合部材19に接した状態のときに、スライド板傾斜面16aの先端部と被接合部材19との間には常に隙間Zが形成されているため、スライド板傾斜面16aの先端部が被接合部板19と接触する恐れがない。
また、スライド板傾斜面16aの進行方向後端部であるスライド板16の厚くなっている部分16bが、最終仕上げとして、被接合部材19に常に接しているため、平面度の高い接合面を得ることができる。
【0045】
(4)(2)に記載する摩擦攪拌接合装置11において、スライド板22が、上部回転体12にスラスト軸受17を介して取り付けられていること、主軸傾斜角度θが、回転主軸10の進行方向に傾斜するように形成されていること、を特徴とするので、スライド板傾斜面22aの進行方向後端部22bが被接合部材19に接した状態のときに、スライド板傾斜面22aの先端部と被接合部材19との間には常に隙間Zが形成されているため、スライド板傾斜面22aの先端部が被接合部材19と接触する恐れがない。
また、スライド板傾斜面22aの進行方向後端部22bが、最終仕上げとして、被接合部材19に常に接しているため、平面度の高い接合面を得ることができる。
【0046】
(5)(1)に記載する摩擦攪拌接合装置11において、スライド板16、22が、上部回転体12及び下部回転体18の双方の向かい合う面に取り付けられていること、を特徴とするので、接合部に対する加熱しての攪拌は回転工具14のみにより行われるが、被接合部材19の両面を、双方の向かい合う面に取り付けられている一対のスライド板傾斜面16a、22aの進行方向後端部により、仕上げ加工できるため、被接合面の両面において平面度の高い接合面を得ることができる。
【0047】
(6)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの摩擦攪拌接合装置11において、スライド板16、22が、上部回転体12又は下部回転体18と伴廻りすることを防止するための回転防止手段であるガイド部16dとガイド溝31を有すること、ガイド部16dとガイド溝31により、スライド板16、22の進行方向後端部である厚くなっている部分16b、22bが、回転主軸10の進行方向Xの先端に対して、反対の位置にあること、を特徴とする。スライド傾斜面16a(22a)が被接合部材19の上面19aとほぼ平行な状態となるため、スライド板19、22が被接合部に侵入することが少なく、接合後の接合面を、バリ等の無い平滑な状態にすることができる。
特に、スライド板16、22はフリーな状態にあるため、回転工具14により550度程度に加熱され軟化しているアルミが攪拌されたときに、流動アルミ20と接触しているスライド板16、22が供廻りする恐れがある。本発明では、ガイド部16dとガイド溝31が供廻りを防止しているため、常に、スライド板16、22の厚くなっている部分16b、22bが、回転主軸10の進行方向Xに向かった位置と反対の位置にある状態を保持することができる。
【0048】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施の形態例では、スライド板16の接触位置16eをガイド溝31に直接当接させているが、ガイド溝31の幅を広くして、スライド板16の当接部に転がり軸受を取り付けても良い。それにより、ガイド溝31が摩耗することなく、摺動抵抗が大きくなることを防止できる。
また、ガイド本体30及びガイド溝31は、被接合部材19と一体で構成しても良い。
【符号の説明】
【0049】
10 回転主軸
11 摩擦攪拌接合装置
12 上部回転体
13 上部回転軸
14 回転工具
15 下部回転軸
16、22 スライド板
16a、22a スライド板傾斜面
17 スラスト軸受
18、21 下部回転体
19 被接合部材
20 流動アルミ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12