(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167465
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】コラーゲン産生促進用組成物、コラーゲン産生促進用組成物の製造方法および皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20221027BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073261
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅廣
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼石 佳樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】オリーブから得られる物質を使用した人の細胞に対してコラーゲンの産生性を促進させる機能を発揮させることができるコラーゲン産生促進用組成物、当該コラーゲン産生促進用組成物の製造方法および当該コラーゲン産生促進用組成物を含有する皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、人細胞のコラーゲン産生機能を向上させるための組成物であり、オリーブの葉から得られた蒸留物を含有しているので、人の皮膚に塗布すれば皮膚細胞が有するコラーゲン産生機能を促進させることができるので、皮膚細胞に対して抗老化機能を発揮させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人細胞のコラーゲン産生機能を向上させるための組成物であり、
オリーブの葉から得られた蒸留物を含有する
ことを特徴とするコラーゲン産生促進用組成物。
【請求項2】
前記蒸留物が、
オリーブの葉に対してマイクロ波を照射しながら得られたものである
ことを特徴とする請求項1記載のコラーゲン産生促進用組成物。
【請求項3】
前記蒸留物が、
オリーブの葉に対してマイクロ波を照射しながら減圧蒸留して得られたものである
ことを特徴とする請求項2記載のコラーゲン産生促進用組成物。
【請求項4】
人細胞のコラーゲン産生機能を向上させるための組成物を製造する方法であり、
オリーブの葉を減圧蒸留しながら蒸留物を得る工程を含む
ことを特徴とするコラーゲン産生促進用組成物の製造方法。
【請求項5】
オリーブの葉に対してマイクロ波を照射しながら減圧蒸留を行う
ことを特徴とする請求項4記載のコラーゲン産生促進用組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2または3のいずかに記載のコラーゲン産生促進用組成物を含有する
ことを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン産生促進用組成物、コラーゲン産生促進用組成物の製造方法および皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、オリーブの葉から得られるコラーゲン産生促進用組成物、コラーゲン産生促進用組成物の製造方法および皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品に対する安全・安心の高まりや、環境を意識したライフスタイルの志向により、植物由来成分を含むボタニカル化粧品の需要が高まっている。とくに、近年の高齢化社会を迎えるにおいて、抗老化機能を持つ化粧品が求められており、その機能の一つとして皮膚のコラーゲンの産生を促進させるコラーゲン産生促進機能の開発が求められている。
【0003】
ここで、古くから様々な機能性食品等に利用されてきた植物としてオリーブがある。オリーブには、多くのポリフェノール類が含有していることが知られており、オリーブのポリフェノール類の機能が明らかになってきている。
例えば、特許文献1には、オリーブの果実抽出物を配合した化粧料が開示されており、オレウロペイン、ヒドロキシチロソールを含有することによりコラーゲン分解抑制作用を発揮させることができることが記載されている。特許文献2には、オリーブの果実に含まれるポリフェノール類の一種であるアクテオシドがα-グルコシダーゼ阻害活性を有することが記載されている。特許文献3には、オリーブの葉の抽出物に含まれるポリフェノール類の一種であるルテオリンがアミラーゼ阻害活性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-026216号公報
【特許文献2】特開2005-082546号公報
【特許文献3】特開2002-010753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、オリーブから得られる物質が人の細胞に対してコラーゲンの産生性を促進させる機能を有するか否かは解明されていない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、オリーブから得られる物質を使用した人の細胞に対してコラーゲンの産生性を促進させる機能を発揮させることができるコラーゲン産生促進用組成物、当該コラーゲン産生促進用組成物の製造方法および当該コラーゲン産生促進用組成物を含有する皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、オリーブから得られる物質が人の細胞に対してコラーゲンの産生性を促進させる作用を見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、人細胞のコラーゲン産生機能を向上させるための組成物であり、オリーブの葉から得られた蒸留物を含有することを特徴とする。
本発明のコラーゲン産生促進用組成物の製造方法は、人細胞のコラーゲン産生機能を向上させるための組成物を製造する方法であり、オリーブの葉を減圧蒸留しながら蒸留物を得る工程を含むことを特徴とする。
本発明の皮膚外用剤は、本発明のコラーゲン産生促進用組成物を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、人の皮膚に塗布すれば皮膚細胞が有するコラーゲン産生機能を促進させることができるので、皮膚細胞に対して抗老化機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】マイクロ波減圧蒸留装置1の概略説明図である。
【
図2】コラーゲン産生促進機能の評価結果を示した図である。
【
図3】コラーゲン産生促進用組成物のGC/MSの結果の一例を示した図であり、クロマトグラムの一例である。
【
図4】コラーゲン産生促進用組成物中の総ポリフェノール量の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態のコラーゲン産生促進用組成物は、オリーブの葉の蒸留物を含有している。このコラーゲン産生促進用組成物を人の皮膚に付与すれば、人の皮膚細胞の老化を抑制することが期待できる。
【0012】
明細書において、オリーブとは、モクセイ科のオリーブ属に属する植物であり、その種類はとくに限定されない。対象となるオリーブの部位は、葉であり、これらを単独または混合して使用することができる。なお、以下、とくに限定しない限りオリーブと称する場合は、上記対象部位を意味する。
【0013】
対象となるオリーブの栽培状態は、とくに限定されない。例えば、オリーブの果実の収穫過程で剪定し廃棄される予定のオリーブの枝についた葉などを用いれば、未利用のバイオマス資源を有効に活用することができるという利点が得られる。
【0014】
(本実施形態のコラーゲン産生促進用組成物)
本実施形態のコラーゲン産生促進用組成物(以下、コラーゲン産生促進用組成物という)に含有される蒸留物は、オリーブの葉を加熱蒸留することにより得られたものである。具体的には、この蒸留物は、オリーブの葉を加熱し、発生した気体などを冷却することにより得られる液体である。この蒸留物には、例えば、分子量が比較的小さい油状の物質(いわゆる精油)や水溶性の物質が含有している。
【0015】
コラーゲン産生促進用組成物は、人の細胞に供給すれば、細胞が有するコラーゲンを産生する機能(コラーゲン産生機能)を促進させることができる。言い換えれば、コラーゲン産生促進用組成物は、人の細胞が有するコラーゲン産生機能を促進させるための有効成分として上記蒸留物を含有している。なお、この有効成分とは、コラーゲン産生機能を促進させることができる成分のことを意味する。また、この成分には、1種または2種以上の物質を含む。
したがって、以上のごとき蒸留物を含有したコラーゲン産生促進用組成物を人の皮膚に対して塗布等により付与すれば、皮膚の老化を抑制することが可能となる。つまり、コラーゲン産生促進用組成物は、人の皮膚細胞の老化現象に対する抗老化機能を有している。言い換えればコラーゲン産生促進用組成物は、スキンケア用品などの化粧品に利用することが可能である。
【0016】
コラーゲン産生促進用組成物の形態は、とくに限定されない。例えば、液状やゲル状、クリーム状などの形態を挙げることができる。また、噴霧器などに充填して微粒子として塗布する形態であってもよい。
【0017】
ここで、人の細胞(人細胞)が有するコラーゲン産生機能を促進させる物質として、ビタミンC(アスコルビン酸)が知られている。一方、これまでオリーブ(葉以外の部位も含む)から得られたポリフェノール類がコラーゲン分解酵素を抑制したり、α-グルコシダーゼ阻害活性やアミラーゼ阻害活性などの機能を有することが報告されている。
しかし、オリーブ(葉以外の部位を含む)から得られる物質が、人の細胞が有するコラーゲン産生機能を促進させる機能を有することは報告されていない。つまり、本発明者らは、オリーブ(葉以外の部位も含む)から初めて人の細胞に作用してコラーゲン産生機能を促進させる成分を見出したのである。しかも、このような有効成分がポリフェノール類と比べて分子量が小さいものであることも初めて見出した。
【0018】
コラーゲン産生促進用組成物の蒸留物は、上述したようにオリーブの葉を加熱蒸留処理することにより得られるものであり、オリーブの葉に含まれる揮発し易い物質群を主成分とするものである。
【0019】
なお、コラーゲン産生促進用組成物は、人の細胞が有するコラーゲン産生機能を促進させる効果を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。
例えば、防腐剤、安定化剤、pH調整剤などを適宜配合してもよい。また、コラーゲン産生促進用組成物を用途に応じて、適宜添加剤として使用してもよい。例えば、保湿剤などにコラーゲン産生促進用組成物を添加すれば、肌を保湿する効果に加えて肌のハリを向上させる効果を得ることができる。なお、保湿剤はグリセリンやブチレングリコールなどの多価アルコールを主成分とするものを挙げることができる。
【0020】
(本実施形態の皮膚外用剤)
本実施形態の皮膚外用剤は、上記オリーブの葉から得られた上記蒸留物を含有するコラーゲン産生促進用組成物を含有するものである。
このため、人の皮膚に塗布等をして本実施形態の皮膚外用剤に含まれるコラーゲン生産促進用組成物を付与することにより、皮膚の細胞が有するコラーゲン産生機能を促進させることができるから、皮膚を若々しい状態に維持することができる。つまり、本実施形態の皮膚外用剤を皮膚に塗布等すれば、皮膚細胞に対して抗老化機能を発揮または向上させることができる。
したがって、本実施形態の皮膚外用剤をスキンケア用品などの化粧品として利用することが可能となる。
【0021】
なお、本実施形態の皮膚外用剤は、コラーゲン産生促進用組成物以外に他の成分(例えば、保湿成分など)を含有してもよく、用途に応じて適宜調整することができる。
【0022】
(本実施形態のコラーゲン産生促進用組成物の製造方法)
つぎに、本実施形態のコラーゲン産生促進用組成物の製造方法(以下、コラーゲン産生促進用組成物の製造方法という)について、説明する。
【0023】
コラーゲン産生促進用組成物の製造方法は、人の細胞(人細胞)のコラーゲン産生機能を向上させるための組成物を製造する方法であり、オリーブの葉を減圧蒸留しながら蒸留物を得る工程(以下、蒸留物回収工程という)を含む。
【0024】
この蒸留物回収工程は、オリーブの葉から揮発し易い物質群を主成分として回収することができれば、その方法はとくに限定されない。具体的には、この蒸留物回収工程は、オリーブの葉の固形分やポリフェノール類などの不揮発性成分、リグニンなどの難不揮発性成分などができるだけ分離される方法を採用するのが好ましい。
例えば、蒸留物回収工程において、例えば、一般的に用いられている蒸留装置やマイクロ波蒸留装置等を採用することができる。このような装置は、収容部にオリーブの葉を収容し、所定の操作を行うことにより、オリーブの葉から固形分と蒸留物を分離し、蒸留物を回収することができる。得られた蒸留物が、コラーゲン産生促進用組成物に含有される蒸留物に相当する。この蒸留物はそのままコラーゲン産生促進用組成物として使用してもよいし、希釈して調整したり、他の物質を配合して調製したりしてもよい。
【0025】
上記蒸留物回収工程における装置に供給するオリーブの葉は、枝から分離したそのままの状態でもよいし、小さくした状態でもよい。オリーブの葉を小さくする方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、裁断や粉砕等の処理を行えば、チップ状や粉状などの粉砕物として用いることができるので、取り扱い性を向上させることが可能となる。
【0026】
なお、使用するオリーブの葉は、上記装置に供給する前に乾燥工程に供給し乾燥した状態のものを蒸留物回収工程に供給してもよい。この場合、装置へ供給する際の操作性を向上させることが可能となる。ただし、この乾燥工程における乾燥条件は、上記蒸留物の回収率を大きく損なわない範囲となるように調整するのが好ましい。例えば、凍結乾燥や低温乾燥で乾燥することもできる。
【0027】
また、蒸留物回収工程の前に、オリーブの葉を圧搾機を用いて搾汁液を得る工程を設けてもよい。そして、得られた圧搾されたオリーブの葉および/または搾汁液を蒸留物回収工程に供給する。この場合、蒸留物の回収率の向上が期待できる。
さらに、搾汁液を得る工程の前にオリーブの葉に対してマイクロ波を照射する工程を設けてもよい。この場合、オリーブの葉を構成する細胞壁がマイクロ波により破壊されやすい状態になっているので、揮発し易い成分が得やすくなるとう利点が得られる。
【0028】
蒸留物回収工程における蒸留装置を用いた処理は、常圧蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留等により行うことができる。そして、蒸留装置を用いた際の加熱方法は、とくに限定されず、例えば、ヒーターや熱水、水蒸気のほかマイクロ波を照射する方法を採用することができる。このマイクロ波を照射しながら減圧蒸留する方法が、特許請求の範囲の方法に「マイクロ波を照射しながら減圧蒸留」する方法に相当する。
【0029】
マイクロ波を照射する方法を採用した場合、オリーブの葉に含まれる揮発し易い成分を得やすくなるという利点が得られる。
具体的には、マイクロ波をオリーブの葉に対して照射すれば、オリーブの葉に含まれる水分が加熱されて水蒸気として放出される。このときオリーブの葉に含まれる揮発または揮発し易い成分(例えば、精油や水溶性の化合物など)が蒸留物として得られる。
このため、一般的な蒸留法では抽出しにくい細胞壁内部に存在する揮発し易い成分等を効率よく回収することができる。つまり、マイクロ波を照射する方法を採用することにより、オリーブの葉に含まれる揮発し易い成分等を効率よく得ることができる。
【0030】
マイクロ波を照射する蒸留装置としては、上述したように公知のものを採用することができる。
【0031】
例えば、
図1に示すようなマイクロ波減圧蒸留装置1を用いることができる。
このマイクロ波減圧蒸留装置1は、原料となる蒸留対象物11(オリーブの葉)を収容するための収容部に相当する蒸留槽2と、マイクロ波を照射するためのマイクロ波加熱装置3と、蒸留槽2に空気あるいは窒素ガス等の不活性ガスなどを供給するための気流流入管4と、蒸留された蒸留物を誘導する蒸留物流出管5と、蒸留物流出管5を冷却する冷却装置6と、蒸留槽2の温度を制御するための加熱制御装置7と、蒸留槽2の内部の圧力を制御するための圧力制御装置10とを備えている。圧力制御装置10は、減圧ポンプ8と、圧力制御弁9とを備えている。そして、マイクロ波減圧蒸留装置1は、蒸留槽2の内部の圧力等が加熱制御装置7および圧力制御装置10を介してそれぞれ調整できるようになっている。
【0032】
したがって、マイクロ波減圧蒸留装置1の蒸留槽2にオリーブの葉を収容し、マイクロ波減圧蒸留装置1を作動すれば、オリーブの葉に含まれる揮発し易い成分等を含む気体状ガスが蒸留物流出管5を介して冷却装置6により液体に変えられて、蒸留物12として得られる。この蒸留物12が、上述したコラーゲン産生促進用組成物の蒸留物に相当する。
【0033】
なお、蒸留装置を用いた場合の蒸留条件は、公知の条件を採用することができる。条件は内容量やその含水率、マイクロ波の強度などにより変わってくるが、例えば、装置の収容部内の圧力が、10~90kPaの減圧下、処理時間が0.2~8時間となるように調整することができる。
【0034】
なお、蒸留物は、精油部と水溶性部に分離して使用してもよいし、混合した状態で使用してもよい。つまり、精油部と水溶性部が混合した状態のものをコラーゲン産生促進用組成物の蒸留物として採用してもよいし、分離した状態のものをそれぞれ別々にコラーゲン産生促進用組成物の蒸留物として採用してもよい。
精油部と水溶性部を分離する方法は、とくに限定されない。例えば混合した状態のものを、静置したり、再蒸留処理したり、液液分離等の処理を行うことにより、油性の画分と水溶性の画分とに分離することができる。
【実施例0035】
つぎに、実施例によりさらに詳細に本発明を説明する。
なお、これらの実施例は、本実施形態の一例を示すものであり、本発明は、以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。
【0036】
オリーブの葉を粉砕機で粉砕した粉砕物を、
図1に示したマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽内へ投入し、蒸留槽内を下記条件に設定し、残渣と蒸留物を得た。
蒸留槽内の圧力:0.25kPa(マイナス75kPa)の減圧条件
蒸留時間:30分
【0037】
得られた蒸留物のコラーゲン産生促進機能の評価は、以下のとおり行った。
【0038】
希釈液:無血清培地のEMEM培地
使用細胞:KMST-6(ヒト胎児由来線維芽細胞、Riken Cell Bank RCB1955)
使用容器:マイクロプレート12well
コントロール(Ct):無血清培地のEMEM培地
【0039】
<コラーゲン産生促進機能の評価方法>
(1:細胞培養)
組織培養フラスコ(25cm2)に継代したKMST-6を、10%FBS(ウシ胎児血清、Gibco Life technology社製)を含むEMEM培地(富士フィルム和光純薬社製)で培養した。数日培養後、コンフルエントに達した細胞を12wellのマイクロプレートに、1wellにつき1mlずつ播種した。播種後、3日間前培養した。
【0040】
(2:線維芽細胞への蒸留物の添加)
蒸留物を無血清培地のEMEM培地を用いて所定の倍率(2倍、4倍)に希釈して蒸留物2倍希釈液、蒸留物4倍希釈液を調製した。各希釈液には、アスコルビン酸が75μM(μmol/l)となるように添加した。
調製した各希釈液を前培養後の各wellに1mlずつ添加した。
Ctとして、無血清培地のEMEM培地を用いた。
添加後、3日間培養した。
【0041】
(3:コラーゲンの回収)
培養後、培養上清を除去した。上清を除去したプレートにトリプシン溶液を加えて、コラーゲン線維を一部分解してプレートに残った細胞をプレート内壁面からはがし回収した。この回収液には、トリプシン処理により一部分解されたコラーゲン線維が可溶化した状態で回収される。この回収液を遠心用チューブに移し、遠心分離(10000rpm、4℃、5min)したのち上清を回収した。この上清には、コラーゲン線維が含有されているので、この上清をコラーゲン線維量測定用サンプルとした。
一方、上清を除去した遠心用チューブ内にEMEM培地1mlを加えて、細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液100μlに対して0.5%トリパンブルー染色液(ナカライ社製)が100μlとなるようにトリパンブルーを加えトリパンブルー染色処理を行った。生細胞数の測定には、カウンティングチェンバーを用いた。
【0042】
(4:コラーゲンの定量)
1mg/ml Direct Red 80水溶液(Sigma-Aldrich社製)とピクリン酸飽和水溶液(ナカライテスク社製)を1:1で混合して染色液を作製した。
1.5ml容マイクロチューブにコラーゲン線維量測定用サンプル100μlを分注し、染色液1.0mlを加えた。このマイクロチューブを30分間ゆるやかに転倒混和した。混和後、遠心分離(12000rpm、4℃、10min)を行い上清を除去した。
上清を除去したマイクロチューブチューブ内に0.5MのNaOH(0.5mol/L)水溶液1.0mlを添加して、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。
撹拌が完了した後の溶液を96wellマイクロプレートに200μlずつ分注し、550nmで吸光度測定を行った。
検量線は、ブタ皮由来酸可溶性I型コラーゲンを0.05~1.0μg/μlになるように0.5M酢酸溶液に溶解したものを用いて作成した。
コラーゲンの定量は、下記式を用いて算出した。
まず、コラーゲン線維量測定用サンプルの吸光度を検量線にあてはめ、体積あたりのコラーゲン量を算出した。ついで、算出した値を上記(3:コラーゲンの回収)で測定した生細胞数で除して、細胞数当たりのコラーゲン量を算出した。
細胞数あたりのコラーゲン量(μg/cell)=(体積あたりのコラーゲン量(μg/ml))/(生細胞数(ml/cells))
【0043】
コラーゲン産生促進機能の評価結果を
図2に示す。
オリーブの葉から得られた抽出物は、Ct(コントロール)と比較して、人の細胞に対してコラーゲン線維量を約4倍に増加させることができることを確認した。
【0044】
<蒸留物中の成分分析>
蒸留物を一定量バイアル瓶に分取し、蒸留物中の成分を分析した。使用した装置条件等は以下の通りである。
装置 :ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計(HS-GC/MS;日本電子社製、6890N/JMS-Q1000GC)
カラム :HP-5MS(25m×カラム内径250μm、膜厚0.25μm)
カラム用オーブン:40℃(2min)→5℃/min→90℃(0min)→10℃/min→200℃(5min)
注入口 :200℃、インターフェイス:230℃
イオン源 :230℃
サンプル注入 :ヘッドスペース法
HS用オーブン:80℃
脱着 :2min
ドライパージ :8min
サンプル量 :10ml(NaCl:30%)
内標準物質として、シクロヘキサノールを添加した。
【0045】
表1に分析結果を示す。
図3にクロマトグラムの一例を示す。
蒸留物中の各検出物質の濃度は、クロマトグラムの各ピークと内標準物質として添加したシクロヘキサノールのピークに基づいて、シクロヘキサノール換算値(mg/l)で表した。
表1から、蒸留物には、揮発性の多種多様な成分が含有されていることが確認できる。
【0046】
【0047】
<蒸留物中のポリフェノール類の分析>
蒸留物中のポリフェノール類を総ポリフェノール量で評価した。
総フェノール量(mg-GAE/蒸留物100g)は、フォーリン-チオカルト法により、蒸留物100gあたりの没食子酸相当量(mg-没食子酸)で評価した。
【0048】
測定条件は、以下のとおりとした。
検出器 :マイクロプレートリーダー(コロナ電子工業社製、型番:SH-1200 Lab)
測定波長 :750nm
検量線用標準試薬:没食子酸(和光純薬工業株式会社製)
フォーリンチオカルト試薬:和光純薬工業株式会社製
【0049】
比較例として、マイクロ波減圧蒸留装置で処理した際に得られた残渣の抽出液(残渣抽出液)、オリーブの葉を熱風乾燥処理したものの抽出液(熱風乾燥処理抽出液)を使用した以外は実施例と同様に総ポリフェノール量を測定した。
残渣抽出液は、残渣をミル(大阪ケミカル株式会社製、ワンダーブレンダー WB-1)により粉砕し、得られた粉体5gを100mlの70%エタノール水溶液に加えて60分間振とうし、静置した後に上澄み液を回収し調製した。
熱風乾燥処理抽出液は、オリーブの葉をオーブンを用いて60℃、1日間熱風乾燥したものを、残渣抽出液と同様に処理した。
【0050】
図4に総ポリフェノール類の分析結果を示す。
図4に示すように、蒸留物中には、ポリフェノール類はほとんど含まれていないことが確認された。一方、比較例の残渣抽出液及び熱風乾燥処理抽出液には、蒸留物と比べて600倍~1000倍のポリフェノール類が含有されていることが確認できた。
【0051】
以上の実験の結果から、本発明のコラーゲン産生促進用組成物の蒸留物中には、ポリフェノール類がほとんど含まれていないにもかかわらず、人の細胞に対してコラーゲン産生機能を促進させることが初めて確認された。これは、蒸留物に含有されるオリーブのポリフェノール類以外の多種多様な成分の相互作用により発揮された効果と推測される。
したがって、本発明のコラーゲン産生促進用組成物が有するコラーゲン産生促進機能は、スキンケア用品などの化粧品に応用することが可能である。また、本発明は初めて見出された技術であり、減圧マイクロ波水蒸気蒸留法より得た蒸留物の新たなを利用方法を提案することができるものであり、オリーブの葉をより有効的に利用することが可能である。
本発明のコラーゲン産生促進用組成物および皮膚外用剤は、皮膚の老化予防に適している。また、本発明のコラーゲン産生促進用組成物の製造方法は、本発明のコラーゲン産生促進用組成物の製造に適している。