(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167467
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】窓枠用防水部材
(51)【国際特許分類】
E06B 1/62 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
E06B1/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073264
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】397025107
【氏名又は名称】日本住環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】石井 創
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 しのぶ
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011LB02
2E011LB10
2E011LC03
2E011LD03
2E011LE12
2E011LF06
(57)【要約】
【課題】窓台への水返し下地材打ち付け作業を行うことなく、簡単且つ確実に水返しを形成することができ、以て、窓用開口周面とサッシ枠との間の防水処理作業の効率化を図ることができる窓枠用防水部材を提供することを課題とする。
【解決手段】窓台11から下方に延びる幅を有する長尺の樹脂製シート1により構成され、シート1には、その表面上部に帯状パッキン4が定着され、帯状パッキン4の上側に山折り線2と谷折り線3が平行に形成され、また、シート1の裏面上部に長さ方向に延びる粘着層8が配置されていて、シートの長尺側側縁を押し込んで山折り線2を山折りすると共に谷折り線3を谷折りすることで、山形シールド10の形成が可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓台から下方に延びる幅を有する長尺の樹脂製シートにより構成され、前記シートには、その表面上部に帯状パッキンが定着され、前記帯状パッキンの上側に山折り線と谷折り線が平行に形成され、また、前記シートの裏面上部に長さ方向に延びる粘着層が配置されていて、前記シートの長尺側側縁を押し込んで前記山折り線を山折りすると共に前記谷折り線を谷折りすることで、山形シールドの形成が可能であることを特徴とする窓枠用防水部材。
【請求項2】
前記シートは、幅が230~270mmで、厚さが0.3~0.7mmのポリエチレンシートである、請求項1に記載の窓枠用防水部材。
【請求項3】
前記粘着層は両面テープで形成される、請求項1又は2に記載の窓枠用防水部材。
【請求項4】
前記帯状パッキンの下側に、窓台のかかり代寸法に対応する複数の折曲線が形成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の窓枠用防水部材。
【請求項5】
更に、平板の一隅を直角に立ち上げて直角定着片を形成し、前記直角定着片の裏面に両面テープが貼られた樹脂製のコーナー防水部材を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の窓枠用防水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓枠用防水部材に関するものであり、より詳細には、窓用開口部にサッシ枠を嵌め付ける際に防水のために用いる窓枠用防水部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁面に設けた窓用開口部にサッシ枠を嵌め付けるに際しては、その開口周面とサッシ枠との間に防水処理を施す必要がある。この防水処理は一般に、開口部の下辺に沿って先張り防水シートを張り、サッシ枠を取り付けた後、その両側辺及び上辺に防水テープを貼り付けるという方法で行われている(非特許文献1)。この方法の場合、雨水の浸入防止のために、先張り防水シートの張着前に、窓台11に水返し下地材20(高さ15mm程の角材)が打ち付けられるが(
図15)、この作業は手間のかかるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】2017年2月1日技報堂出版株式会社発行の「防水施工マニュアル」の「第4章 木造住宅 外壁」の「4.1 通気構法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の先張り防水シートの張着方法においては、雨水の浸入防止のために先張り防水シートの張着前に、手間のかかる、窓台への水返し下地材打ち付け作業が必要という問題があった。
【0006】
本発明は、従来方法におけるこの問題を解決するためになされたもので、窓台への水返し下地材打ち付け作業を行うことなく、簡単且つ確実に水返しを形成することができ、以て、窓用開口周面とサッシ枠との間の防水処理作業の効率化を図ることができる窓枠用防水部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、窓台から下方に延びる幅を有する長尺の樹脂製シートにより構成され、前記シートには、その表面上部に帯状パッキンが定着され、前記帯状パッキンの上側に山折り線と谷折り線が平行に形成され、また、前記樹脂シートの裏面上部に長さ方向に延びる粘着層が配置されていて、前記シートの長尺側側縁を押し込んで前記山折り線を山折りすると共に前記谷折り線を谷折りすることで、山形シールドの形成が可能であることを特徴とする窓枠用防水部材である。
【0008】
一実施形態においては、前記シートは、幅が230~270mmで、厚さが0.3~0.7mmのポリエチレンシートである。
【0009】
一実施形態においては、前記粘着層は両面テープで形成されている。また、一実施形態においては、前記帯状パッキンの下側に、窓台のかかり代寸法に対応する複数の折曲線が形成されている。更に一実施形態においては、平板の一隅を直角に立ち上げて直角定着片を形成し、前記直角定着片の裏面に両面テープが貼られた樹脂製のコーナー防水部材を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る窓枠用防水部材は上記のとおりであり、サッシ枠取り付け前の窓台部分の防水処理作業を簡単且つ確実に行うことを可能にし、サッシ枠取り付け後にはその部分に対し優れた防水機能を発揮し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る窓枠用防水部材の構成を示す正面図ある。
【
図3】(A)は
図2におけるB-B部拡大図であり、(B)は同C-C部拡大図である。
【
図4】本発明に係る窓枠用防水部材のかかり代寸法の異なる窓台への設置状態を示す側面図である。
【
図5】本発明に係る窓枠用防水部材の使用状態図である。
【
図6】本発明に係る窓枠用防水部材の設置に用いるコーナー防水部材の形状例を示す斜視図である。
【
図7】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第1工程(シート裁断工程1)を示す図である。
【
図8】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第1工程(シート裁断工程2)を示す図である。
【
図9】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第2工程(シート折曲工程)を示す図である。
【
図10】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第3工程(シート接着工程2)を示す図である。
【
図11】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第4工程(端部切り込み工程1)を示す図である。
【
図12】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第5工程(山形シールド形成工程)を示す図である。
【
図13】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第6工程(シールドコーナー取付け工程)を示す図である。
【
図14】本発明に係る窓枠用防水部材の施工方法の第7工程(防水処理工程)を示す図である。
【
図15】従来の窓枠用防水部材の施工方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る窓枠用防水部材は、窓台11から下方に垂下するサイズの幅を有する長尺の樹脂製シート1により構成される。シート1は、例えば、幅が230~270mmで、厚さが0.3~0.7mmのポリエチレンシートである。
【0013】
シート1には、その表面上部に帯状パッキン4が定着され、その帯状パッキン4の上側に、山折り線2と谷折り線3が平行に形成され(山折り線2が上側となる)、また、シート1の裏面上部に、長さ方向に延びる粘着層8が配置される。山折り線2と谷折り線3は、後述するように、山形シールド10を形成するためのものである(
図4,5参照)。通例、粘着層8は両面テープで形成される。
【0014】
一実施形態においては、帯状パッキン4の下側に、窓台11のかかり代寸法に対応する複数の折曲線5~7が形成される。折曲線5~7としては、例えば、43mmまでのかかり代寸法に対応する折曲線5と、53mmまでのかかり代寸法に対応する折曲線6と、75mmまでのかかり代寸法に対応する折曲線7の3本が形成される。折曲線5~7は、窓台11から垂下させる部分の折曲を容易にするためのものである。帯状パッキン4は、例えば、接着ベース4a上にV字型翼片4bを設けた断面形状を呈するものとされるが、これに限られるものではない。
【0015】
更に本発明に係る窓枠用防水部材は、平板の一隅を直角に立ち上げて直角定着片9aを形成した樹脂製のコーナー防水部材9を含む(
図6参照)。直角定着片9aの裏面には両面テープが貼られる。
【0016】
本発明に係る窓枠用防水部材は、通常、ロール巻きされて供給され、施工時に適宜長さにカットされて使用される。以下に、その使用方法について、工程順に説明する。
【0017】
第1工程(シート裁断工程)
ロール状の本発明に係る窓枠用防水部材を、室内側から窓台11に沿わせて伸ばし、窓台11の寸法に、例えば、左右150mmずつプラスした寸法にカットする(
図7,8)。
【0018】
第2工程(シート折曲工程)
使用するサッシ枠13のかかり代寸法を確認し(
図9)、折曲線5~7のうちの最適な折曲線5~7を選択してその線に沿ってシート1を折り曲げる(図示した例では、折曲線6が選択されている。)。
【0019】
第3工程(シート接着工程)
シート1を、その折曲位置を窓台11の室外側角線に合わせて窓台11上に載置し、シート1の裏面の粘着層8の剥離紙を剥がし、左右いずれかの方向から窓台11上に貼り付けていく(
図10)。その際、特に窓枠入隅部分及び窓台11面をしっかり転圧する。
【0020】
第4工程(端部切込み工程)
左右コーナー部において窓枠内側面12に沿って立ち上がっている、150mmほどの長さのシート1の端部に、折曲線6に沿って切込みを入れ、窓枠内側面12に接していない部分を切り分ける(
図11)。
【0021】
第5工程(山形シールド形成工程)
次いで、室内側からシート1の長尺側側縁を指先で押し込み、山折り線2を山折りすると共に、谷折り線3を谷折りすることにより、断面三角形状の山形シールド10を形成する(
図12)。本発明に係る窓枠用防水部材の場合は、この山形シールド10が従来の水返し下地材の代わりになるが、その形成は、シート1に山折り線2と谷折り線3があるために、単にシート1の長尺側側縁を指先で押し込むだけで足りるので、作業全体の施工性が大幅に向上する。
【0022】
第6工程(コーナー防水部材取付け工程)
続いて左右のコーナーに、室外側から直角型のコーナー防水部材9をあてがって粘着し、その部分の防水性を確保する(
図13)。即ち、左右のコーナーの水平部から垂直部にかけて、コーナー防水部材9の直角定着片9aを粘着することで、窓枠に結露が生じた際、シート1とコーナー防水部材9の直角定着片9aとの間に結露水が流れ込み、それが木材部分に達することを防止するのである。
【0023】
第7工程(防水処理工程)
その後サッシ枠13を取り付け、シート1を、透湿防水シート15の上に重ねた状態で垂下させ、サッシ枠13の周囲を防水処理して作業完了となる(
図14)。なお、
図5における符号14は、胴縁を示す。
【0024】
本発明に係る窓枠用防水部材はこのようにして使用するが、単にシート1の長尺側側縁を押し込むだけで、帯状パッキン4の内側に、水返しとなる山形シールド10を簡単に形成することができ、施工後万一帯状パッキン4を越えて雨雪が浸入したとしても、山形シールド10によってそれ以上の浸水を確実に遮止できる。
【0025】
また、窓台11のかかり代寸法に対応する折曲線5~7が形成されている場合は、窓台11のかかり代寸法に合わせていずれかの折曲線5~7を選択し、窓台11の室外側角部に沿って簡単且つきれいに折曲することができるので、隙間なく且つ収まりよく窓台11に粘着固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る窓枠用防水部材は上記のとおりのものであり、サッシ枠取り付け前の窓台部分の防水処理作業を簡単且つ確実に行うことを可能にし、サッシ枠取り付け後にはその部分に対し優れた防水機能を発揮し得る効果のあるものであって、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0027】
1 シート
2 山折り線
3 谷折り線
4 帯状パッキン
4a 接着ベース
4b V字形翼片
5~7 折曲線
8 粘着層
9 コーナー防水部材
9a 直角定着片
10 山形シールド
11 窓台
12 開口部内側面
13 サッシ枠
14 胴縁
15 透湿防水シート