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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167471
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】駐車支援方法及び駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073272
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】土持 直城
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BA21
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD07
3D241CD09
3D241CD11
3D241CD12
3D241CE02
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DB13Z
3D241DB32Z
3D241DD11Z
(57)【要約】
【課題】車両の外にいる利用者からの指示に基づいて車両を目標停車位置まで移動させる駐車制御を行う場合に、利用者の注意が車両から外れた場合の安全性を向上する。
【解決手段】駐車支援方法では、携帯端末2の所定の端部2aが車両1に向けられているか否かを判定する処理(S5)と、所定の端部2aが車両1に向けられていない場合は、車両1に向けられている場合よりも、車両1を目標駐車位置まで自動で走行させる車速を低くする処理(S9)と、をコントローラ16に実行させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外の携帯端末からの信号に応じて前記車両の駐車を目標駐車位置まで走行させる駐車支援方法であって、
前記携帯端末の所定の端部が前記車両に向けられているか否かを判定する処理と、
前記所定の端部が前記車両に向けられていない場合は、前記車両に向けられている場合よりも、前記車両を前記目標駐車位置まで自動で走行させる車速を低くする処理と、
をコントローラに実行させることを特徴とする駐車支援方法。
【請求項2】
前記コントローラは、前記所定の端部が向けられている方向と前記端部から前記車両へ向かう方向との間の角度が所定角度以上である場合に、前記車両を前記目標駐車位置まで自動で走行させる駐車制御を停止することを特徴とする請求項1に記載の駐車支援方法。
【請求項3】
前記コントローラは、前記所定の端部が向けられている方向と前記端部から前記車両へ向かう方向との間の角度が大きい場合に、当該角度が小さい場合よりも前記車速を低くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の駐車支援方法。
【請求項4】
前記コントローラは、前記所定の端部が向けられている方向と前記端部から前記車両へ向かう方向との間の角度が大きいほど、前記車速を低くすることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項5】
前記携帯端末の異なる位置に配置された3つ以上のアンテナと、前記車両に設けられたアンテナと、との間の電波の到達時間に基づいて、前記車両と前記3つ以上のアンテナとの距離を各々測定し、
前記車両と前記3つ以上のアンテナとの各々の距離に応じて、前記所定の端部が向けられている向きを検出する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項6】
前記車両の周囲の障害物に対するリスクを車両に備えたセンサで検出し、
前記コントローラは、前記リスクが高い場合に、前記リスクが低い場合よりも前記車速を低くすることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項7】
前記車両の周囲の障害物に対するリスクを車両に備えたセンサで検出し、
前記コントローラは、前記リスクが高いほど前記車速を低くすることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項8】
前記コントローラは、前記リスクが所定値以上であるか否かを判定し、前記リスクが所定値以上である場合には、前記所定の端部が向けられている方向と前記端部から前記車両へ向かう方向との間の角度の大きさに関わらず、前記リスクに基づいて前記車速を設定することを特徴とする請求項6又は7に記載の駐車支援方法。
【請求項9】
前記コントローラは、前記携帯端末の操作面が上向きであるか否かを判定し、前記所定の端部が前記車両に向けられていない場合又は前記操作面が上向きでない場合は、前記所定の端部が前記車両に向けられており且つ前記操作面が上向きである場合よりも、前記車速を低くすることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項10】
車両の外の携帯端末からの信号に応じて前記車両の駐車を目標駐車位置まで走行させる駐車支援装置であって、
前記携帯端末の所定の端部が前記車両に向けられているか否かを判定する処理と、
前記所定の端部が前記車両に向けられていない場合は、前記車両に向けられている場合よりも、前記車両を前記目標駐車位置まで自動で走行させる車速を低くする処理と、
を実行するコントローラを備えることを特徴とする駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援方法及び駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の外で端末装置を操作することにより、駐車スペースに車両を駐車させる動作を制御する駐車制御方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/066069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の外にいる利用者からの指示に基づいて車両を目標停車位置まで移動させる駐車制御を行う場合には、利用者が移動中の車両に注意していることが安全性の観点から好ましい。しかしながら、利用者が必ずしも駐車制御中に車両に注意し続けるとは限らない。
本発明は、車両の外にいる利用者からの指示に基づいて車両を目標停車位置まで移動させる駐車制御を行う場合に、利用者の注意が車両から外れた場合の安全性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の駐車支援方法では、車両の外の携帯端末からの信号に応じて前記車両の駐車を目標駐車位置まで走行させる。携帯端末の所定の端部が車両に向けられているか否かを判定する処理と、所定の端部が車両に向けられていない場合は、車両に向けられている場合よりも、車両を目標駐車位置まで自動で走行させる車速を低くする処理と、をコントローラに実行させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の外にいる利用者からの指示に基づいて車両を目標停車位置まで移動させる駐車制御を行う場合に、利用者の注意が車両から外れた場合の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の駐車支援システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】車両と携帯端末の測距用アンテナとの間の距離の測定方法の一例の説明図である。
図3】携帯端末の向きの説明図である。
図4】携帯端末の向きの説明図である。
図5】携帯端末から車両に向かう方向と携帯端末の向きとの角度の説明図である。
図6】実施形態の駐車支援方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(構成)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
図1は、実施形態の駐車支援システム100の概略構成の一例を示す図である。駐車支援システム100は、車両1に搭載された測位装置11、外界センサ12、車両センサ13、測距用アンテナ14、データ通信アンテナ15、コントローラ16及びアクチュエータ17を備える。なお、添付図面においてアンテナを「ANT」と表記する。
また、駐車支援システム100は、駐車支援システム100の利用者が使用する携帯端末2を備える。携帯端末2の識別子(ID)は、予め駐車支援制御対象の車両1のコントローラ16に登録しておく。
【0010】
携帯端末2は、例えば車両1の施錠及び解錠や、自動駐車の実行及び停止を操作するリモートコントロール端末(例えば、KEYFOB等)であってよい。また携帯端末2は、車両1のコントローラ16と情報の授受が可能な可搬の端末装置(スマートフォン、PDA:Personal Digital Assistantなどの機器)であってもよい。携帯端末2は、測距用アンテナ20a、20b及び20cと、データ通信アンテナ21と、ジャイロセンサ22と、制御ユニット23を備える。なお、測距用アンテナ20a~20cの1つとデータ通信アンテナ21とを1つのアンテナで兼用してもよい。
【0011】
測位装置11は、車両1の現在位置を測定する。測位装置11は、例えば全地球型測位システム(GNSS)受信機を備えてよい。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であり、複数の航法衛星から電波を受信して車両1の現在位置を測定する。
外界センサ12は、車両1から所定距離範囲(例えば外界センサ12の検出領域)の物体を検出する。外界センサ12は、車両1の周囲に存在する物体と車両1との相対位置、車両1と物体との距離、物体が存在する方向などの車両1の周囲環境を検出する。外界センサ12は、例えば車両1の周囲環境を撮影するカメラを含んでよい。
外界センサ12は、レーザレンジファインダ(LRF)やレーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)のレーザレーダなどの測距装置を含んでもよい。
また、外界センサ12は、ソナーなどの車両1の周囲の障害物を検出する障害物センサを含んでいてもよい。
【0012】
車両センサ13は、車両1から得られる様々な情報(車両情報)を検出する。車両センサ13は、例えば、車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、車両1が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサを含んでよい。
【0013】
測距用アンテナ14は、車両1と、携帯端末2の測距用アンテナ20a~20cとの間の各々の距離を測定するために使用されるアンテナである。車両1と、携帯端末2の測距用アンテナ20a~20cとの距離測定については後述する。
データ通信アンテナ15は、携帯端末2の制御ユニット23とコントローラ16との間のデータ通信に使用されるアンテナである。なお、測距用アンテナ14とデータ通信アンテナ15とを1つのアンテナで兼用してもよい。
【0014】
コントローラ16は、車両1の駐車支援制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ16は、プロセッサ18と、記憶装置19等の周辺部品とを含む。プロセッサ18は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。記憶装置19は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。
以下に説明するコントローラ16の機能は、例えばプロセッサ18が、記憶装置19に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、コントローラ16を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
【0015】
アクチュエータ17は、コントローラ16からの制御信号に応じて車両1の転舵装置、駆動装置及び制動装置を作動させることにより車両1の車両挙動を発生させる。アクチュエータ17は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。
ステアリングアクチュエータは、転舵装置を作動させて車両の操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータは、エンジンや駆動モータである駆動装置を作動させて車両1の加速度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、制動装置を作動させて車両1の減速度を制御する。
【0016】
以下、コントローラ16による駐車支援制御について説明する。コントローラ16は、車両1の外にいる利用者からの指示に基づいて、車両1を目標駐車位置(駐車スペース)へ自動的に駐車させる駐車支援制御を実行する。利用者は、携帯端末2を操作することにより、目標駐車位置への車両1の移動と停止とをコントローラ16に指示する。
なお、駐車支援制御を指示する操作子(例えば駐車支援ボタン)を車両1の車室内に設けてもよい。コントローラ16は、利用者は、車室内の操作子を操作することによって、目標駐車位置への車両1の移動と停止とをコントローラ16に指示してもよい。
【0017】
駐車支援制御においてコントローラ16は、例えば外界センサ12のカメラの撮像画像や測距装置から出力される点群データに基づいて、車両1の周囲の物標の位置を検出する。物標は、車両1の現在位置を特定するための目印となる地物であり、路面に描かれた路面標示(道路標識、区画線及び道路標示)や道路境界、縁石、ガードレール、電柱などの障害物であってよい。
コントローラ16は、所定の記憶媒体(例えば記憶装置19)に記憶された既知の物標の位置情報と、外界センサ12により検出した車両1の周囲の物標の位置情報とを照合することにより、車両1の現在位置を検出する。
【0018】
また、コントローラ16は、車両1を駐車させる目標駐車位置を設定する。例えば、所定の記憶媒体に予め記憶された目標駐車位置のうち、車両1の現在位置に最も近い目標駐車位置を選択してよい。または、外界センサ12のカメラで車両1の周囲画像を撮影し、携帯端末2の表示画面(図示せず)や車室内の表示画面(図示せず)に周囲画像を表示し、利用者が周囲画像上で目標駐車位置を指定することにより目標駐車位置を設定してもよい。
【0019】
コントローラ16は、車両1の現在位置から目標駐車位置まで車両1を移動させる目標走行軌道と、車両1が目標走行軌道を走行する車速のプロファイルである目標車速プロファイルを生成する。
コントローラ16は、車両1が目標走行軌道に沿い、目標車速プロファイルにしたがって走行するようにアクチュエータ17を制御する。
【0020】
このときコントローラ16は、利用者が携帯端末2や車室内の操作子を継続的に操作して車両1の移動を指示している間だけ車両1を走行させ、利用者による操作が止まったら車両1を停止させる。
例えば、携帯端末2のボタンやタッチパネル、車室内の駐車支援ボタンを押し続けている場合に車両1を走行させてよい。また、携帯端末2のタッチパネル上で所定のジェスチャ(例えば、円や8の字を描く)を続けている場合に車両1を走行させてよい。
利用者が携帯端末2を操作している間、携帯端末2の制御ユニット23は、車両1の走行を指令する指令信号をデータ通信アンテナ21から車両1に送信する。コントローラ16は、データ通信アンテナ15により指令信号を受信しているか否かにより、利用者が携帯端末2を操作しているか否かを判断する。
【0021】
このように、車両の外にいる利用者から指示に基づいて車両1を目標停車位置まで移動させる駐車支援制御を行う場合には、利用者が移動中の車両1に注意していることが安全性の観点から好ましい。
しかしながら、利用者が必ずしも駐車支援制御中に車両1に注意し続けるとは限らず、車両1から目を離した状態で携帯端末2を操作することも考えられる。
【0022】
そこで、コントローラ16は、携帯端末2の所定の端部2aが車両1に向けられているか否かを判定し、端部2aが車両1に向けられていない場合は、端部2aが車両1に向けられている場合よりも、車両1を目標駐車位置まで自動で走行させる車速を低くする。例えば、端部2aが車両1に向けられていない場合は、端部2aが車両1に向けられている場合よりも、目標車速プロファイルの最高速度を低くする。
これにより、利用者が携帯端末2の端部2aを車両1に向け続けていないときに、利用者の注意が車両1から外れていると判断することができ、車両1の車速を低くすることにより、利用者の注意が車両から外れた場合の安全性を向上できる。なお「車速を低くする」には、車両1を停止させる(すなわち車速を0km/hとする)ことも含まれる。
【0023】
駐車支援制御中に車両1の方へ向けるべき端部2aとしては、直交3軸方向における携帯端末2の端部(例えば、前端、後端、左端、右端、上端及び下端)のうちの少なくとも1つを予め指定しておく。
例えば、利用者が携帯端末2を保持して操作する通常の使用状態において、利用者に対向する端部2bと反対側の端部を、駐車支援制御中に車両1の方へ向けるべき端部2aとして予め指定してよい。
【0024】
コントローラ16は、端部2aが車両1に向けられているか否かを様々な方法で判定できる。例えば、コントローラ16は、携帯端末2の3箇所以上の異なる位置の部位と、車両1との間の各々の距離に基づいて、端部2aが車両1に向けられているか否かを判定してもよい。
このために、携帯端末2の制御ユニット23は、携帯端末2の異なる位置に配置された測距用アンテナ20a~20cと車両1との間の各々距離を測定する。なお、携帯端末2に設ける測距用アンテナの数は3個に限定されず、4個以上であってもよい。
【0025】
例えば、制御ユニット23は、携帯端末2の測距用アンテナ20a~20cと、車両1の測距用アンテナ14との間の電波の到達時間に基づいて、測距用アンテナ20a~20cと測距用アンテナ14との間の各々の距離(すなわち、測距用アンテナ20a~20cと車両1との間の各々の距離)を測定してよい。制御ユニット23は、既知の距離測定技術、例えばTOF(Time of Flight)技術に基づいて、測距用アンテナ20a~20cと測距用アンテナ14との間の各々の距離を測定してよい。
【0026】
図2は、測距用アンテナ20aと測距用アンテナ14との間の距離の測定方法の一例の説明図である。車両1のコントローラ16は、測距用アンテナ14からタグ信号を送信し、その時のタイムスタンプTspを記憶する。
携帯端末2の制御ユニット23は、測距用アンテナ20aでタグ信号を受信した時のタイムスタンプTrpを記憶する。また、タグ信号に対する応答としてアンカー信号を測距用アンテナ20aから送信し、その時のタイムスタンプTsrを記憶する。
【0027】
コントローラ16は、測距用アンテナ14でアンカー信号を受信した時のタイムスタンプTrrを記憶し、測距用アンテナ14からタイムスタンプ信号を送信する。タイムスタンプ信号は、タイムスタンプ信号の送信時のタイムスタンプTsfと、記憶していたタイムスタンプTsp及びTrrを含む。制御ユニット23は、測距用アンテナ20aでタイムスタンプ信号を受信した時のタイムスタンプTrfを取得する。
制御ユニット23は、次式に基づいて飛行時間TOFを算出する。
TOF={(Trr-Tsp)-(Tsr-Trp)+(Trf-Tsr)-(Tsf-Trr)}/4
【0028】
制御ユニット23は、飛行時間TOFに基づいて測距用アンテナ20aと測距用アンテナ14との間の距離Daを測定する。
測距用アンテナ20bと測距用アンテナ14との間の距離Db、及び測距用アンテナ20cと測距用アンテナ14との間の距離Dcについても同様に測定する。
なお、携帯端末2から車両1へタグ信号とタイムスタンプ信号を送信し、車両1から携帯端末2へアンカー信号を送信するようにして、車両1のコントローラ16で距離Da~Dcを測定してもよい。
【0029】
図1を参照する。携帯端末2の制御ユニット23は、測距用アンテナ20a~20cと測距用アンテナ14との間の各々の距離Da~Dcの距離情報を、データ通信アンテナ21から送信する。
車両1のコントローラ16は、携帯端末2から送信された距離Da~Dcの距離情報を、データ通信アンテナ15で受信する。コントローラ16は、距離Da~Dcに基づいて端部2aが車両1に向けられているか否かを判定する。
【0030】
図3を参照する。いま、携帯端末2の端部2aとは反対側の端部2bと、端部2aとの間を結ぶ軸線を軸線ax1と定め、軸線ax1に垂直な軸線を軸線ax2と定める。
そして、例えば測距用アンテナ20b、20cを軸線ax2上に配置し、測距用アンテナ20aを、軸線ax2から外れた位置に配置する。例えば図3に示すように、測距用アンテナ20aを測距用アンテナ20b、20cよりも端部2aに近い位置に配置する。
すると、矢視30及び31で示すような携帯端末2の姿勢の場合には、測距用アンテナ20a~20cと測距用アンテナ14との間の各々の距離Da~Dcは互いに異なり、端部2aが車両1に向けられていないと判定できる。
【0031】
また、矢視32で示すような携帯端末2の姿勢の場合には、測距用アンテナ20b、20cの距離Db、Dcが互いに等しく、測距用アンテナ20aの距離Daが距離Db、Dcよりも短くなり、端部2aが車両1に向けられていると判定できる。
なお、距離Db、Dcが互いに等しく距離Daが距離Db、Dcよりも長い場合には、端部2aが車両1と反対側に向けられているため、コントローラ16は端部2aが車両1に向けられていないと判定できる。
また、測距用アンテナ20aを測距用アンテナ20b、20cよりも端部2aから遠い位置に配置してもよい。このときコントローラ16は、距離Db、Dcが互いに等しく、測距用アンテナ20aの距離Daが距離Db、Dcよりも長い場合に端部2aが車両1に向けられていると判定する。
【0032】
なお、測距用アンテナ14、20a~20cを用いた上記の判定方法は1つの例示であり、コントローラ16は、端部2aが車両1に向けられているか否かを他の様々な方法で判定してもよい。例えば、携帯端末2に測位装置と磁気センサを設けて現在位置と姿勢を検出し、測位装置11で測定した車両1の現在位置と、携帯端末2の現在位置と姿勢から、端部2aが車両1に向けられているか否かを判定してもよい。
【0033】
図4を参照する。参照符号24は、利用者が駐車支援中に車両1の走行を指示する操作を受け付けるユーザインタフェースが設けられた携帯端末2の操作面を表す。操作面24には、例えばタッチパネルやボタンなどのユーザインタフェースを設けてよい。
図4に示す状態では、端部2aが車両1に向けられており、且つ携帯端末2の操作面24が上向きになっている。利用者が携帯端末2を使用している際には、図4に示すように操作面24が上向きになっていると考えられる。
反対に操作面24が上向きになっていない場合には、操作面24に何かが接触して携帯端末2が操作されているように見えても、実際には、携帯端末2は利用者の衣服やバッグの中などに入っており利用者は携帯端末2を操作していないことが考えられる。
【0034】
そこで、ジャイロセンサ22は携帯端末2の姿勢を検出する。制御ユニット23は、携帯端末2の姿勢を示す姿勢情報を、データ通信アンテナ21から送信する。
車両1のコントローラ16は、携帯端末2から送信された姿勢情報を、データ通信アンテナ15で受信する。
コントローラ16は、姿勢情報に基づいて操作面24が上向きになっているか否かを判定する。コントローラ16は、端部2aが車両1に向けられていない場合又は操作面24が上向きでない場合は、端部2aが車両1に向けられており且つ操作面24が上向きである場合よりも、車速を低くする。
【0035】
図5を参照する。コントローラ16は、端部2aが向けられている方向d1と端部2aから車両1へ向かう方向d2との間の角度θを算出してもよい。
例えばコントローラ16は、測距用アンテナ20a~20cと測距用アンテナ14との間の各々の距離Da~Dcと、測距用アンテナ20a~20cを携帯端末2に配置した既知の配置位置と、に基づいて、携帯端末2の位置Prを基準とする座標系上の車両1の位置Pを算出してよい。
コントローラ16は、端部2aの位置と車両1の位置Pから端部2aから車両1へ向かう方向d2を算出し、端部2aが向けられている方向d1と方向d2との間の角度θを算出してもよい。
【0036】
角度θが所定の閾値Ta以上の場合に、コントローラ16は、車両1を停車させてもよい。すなわち、車両1を目標駐車位置まで自動で走行させる駐車制御を停止してよい。
一方で、角度θが所定の閾値Ta未満の場合には、コントローラ16は、駐車支援制御中の車両1の車速を角度θに応じて設定してよい。例えば、角度θが大きい場合に角度θが小さい場合よりも車速を低く設定してよい。例えば、角度θが大きいほど車速を低く設定してよい。例えば、角度θが大きいほど目標車速プロファイルの最高速度を低く設定してよい。
【0037】
また、端部2aが車両1へ向けられた状態で操作されていても、車両の周囲の障害物に対するリスクが存在する場合には、駐車支援制御中の車両1の車速を制限した方が好ましい。
このため、コントローラ16は、外界センサ12で検出された車両1の周囲の障害物に対するリスクRを算出する。例えば、コントローラ16は、リスクRとして車両1から障害物までの距離の逆数や、衝突余裕時間TTCの逆数を算出してよい。
【0038】
コントローラ16は、駐車支援制御中の車両1の車速をリスクRに応じて設定してよい。例えば、リスクRが高い場合にリスクRが低い場合よりも車速を低く設定してよい。例えば、リスクRが高いほど車速を低く設定してよい。例えばリスクRが高いほど目標車速プロファイルの最高速度を低く設定してよい。
また、例えばコントローラ16は、リスクRが所定の閾値Tr以上であるか否かを判定してもよい。リスクRが所定の閾値Tr以上である場合にコントローラ16は、端部2aが向けられている方向d1と端部2aから車両1へ向かう方向d2との間の角度θの大きさに関わらず、リスクRに応じて車速を設定してよい。リスクRが所定の閾値Tr未満の場合に角度θに応じて車速を設定してよい。
【0039】
(動作)
図6は、実施形態の駐車支援方法の一例のフローチャートである。
ステップS1においてコントローラ16は、車両1の現在位置を検出する。
ステップS2においてコントローラ16は、車両1を駐車させる目標駐車位置を設定する。
ステップS3においてコントローラ16は、車両1の現在位置から目標駐車位置まで車両1を移動させる目標走行軌道を生成する。
【0040】
その後、利用者が携帯端末2を操作して車両1の移動を指示することにより、コントローラ16は、目標走行軌道に沿って車両1を走行させて目標駐車位置に駐車させる。
ステップS4においてコントローラ16は、利用者が携帯端末2を操作しているか否かを判定する。携帯端末2が操作されている場合(S4:Y)に処理はステップS5に進む。携帯端末2が操作されていない場合(S4:N)に処理はステップS6に進む。
【0041】
ステップS5においてコントローラ16は、端部2aが向けられている方向d1と端部2aから車両1へ向かう方向d2との間の角度θが、所定の閾値Ta以上であるか否かを判定する。角度θが所定の閾値Ta以上である場合(S5:Y)に処理はステップS6に進む。角度θが閾値Ta以上でない場合(S5:N)に処理はステップS7に進む。
ステップS6においてコントローラ16は車両1を停車させる。その後に処理はステップS10へ進む。
【0042】
ステップS7においてコントローラ16は、車両の周囲の障害物に対するリスクRが所定の閾値Tr以上であるか否かを判定する。リスクRが所定の閾値Tr以上である場合(S7:Y)に処理はステップS8に進む。リスクRが所定の閾値Tr以上でない場合(S7:N)に処理はステップS9に進む。
ステップS8においてコントローラ16は、リスクRに応じた目標車速プロファイルに従って、車両1が目標走行軌道を走行する車速を制御する。例えばリスクRが高いほど車速を低く設定してよい。その後に処理はステップS10へ進む。
【0043】
ステップS9においてコントローラ16は、端部2aが向けられている方向d1と端部2aから車両1へ向かう方向d2との間の角度θに応じた目標車速プロファイルに従って、車両1が目標走行軌道を走行する車速を制御する。例えば角度θが大きいほど車速を低く設定してよい。その後に処理はステップS10へ進む。
ステップS10においてコントローラ16は、車両1が目標駐車位置に到達したか否かを判定する。車両1が目標駐車位置に到達していない場合(S10:N)に処理はステップS4へ戻る。車両1が目標駐車位置に到達した場合(S10:Y)に処理は終了する。
【0044】
(実施形態の効果)
(1)コントローラ16は、携帯端末2の所定の端部2aが車両1に向けられているか否かを判定し、所定の端部2aが車両1に向けられていない場合は、車両1に向けられている場合よりも、車両1を目標駐車位置まで自動で走行させる車速を低くする。
車両の外にいる利用者からの指示に基づいて車両を目標停車位置まで移動させる駐車制御を行う場合に、利用者の注意が車両から外れた場合には車速を制限できるので、安全性を向上できる。
【0045】
(2)コントローラ16は、所定の端部2aが向けられている方向と端部2aから車両1へ向かう方向との間の角度が所定角度以上である場合に、車両1を目標駐車位置まで自動で走行させる駐車制御を停止してよい。これにより利用者の注意が車両から外れた可能性が高い場合には,車両1を停止することによって安全性を向上できる。
(3)コントローラ16は、所定の端部2aが向けられている方向と端部2aから車両1へ向かう方向との間の角度が大きい場合に、この角度が小さい場合よりも車速を低くしてもよい。例えば、この角度が大きいほど車速を低くしてもよい。これにより利用者の注意が車両から外れた程度に応じて車速を制限できるので、安全性を向上できる。
【0046】
(4)携帯端末2の異なる位置に配置された3つ以上のアンテナ20a~20cと、車両1に設けられたアンテナ14と、との間の電波の到達時間に基づいて、車両1と3つ以上のアンテナ20a~20cとの距離Da~Dcを各々測定し、車両1と3つ以上のアンテナ20a~20cとの各々の距離Da~Dcに応じて、所定の端部2aが向けられている向きを検出してよい。
これにより、携帯端末2の所定の端部2aが車両1に向けられているか否かを判定できる。また、所定の端部2aが向けられている方向を検出できる。
【0047】
(5)車両1の周囲の障害物に対するリスクをセンサで検出し、コントローラ16は、リスクが高い場合にリスクが低い場合よりも車速を低くしてよい。例えばリスクが高いほど車速を低くしてよい。
これにより、車両1の周囲の障害物に対するリスクが高い場合には車速を制限できるので、安全性を向上できる。
(6)コントローラ16は、リスクが所定値以上であるか否かを判定し、リスクが所定値以上である場合には、所定の端部2aが向けられている方向と端部2aから車両1へ向かう方向との間の角度の大きさに関わらず、リスクに基づいて車速を設定してよい。
これにより、所定の端部2aが車両1に向けられていても、車両1の周囲の障害物に対するリスクに応じて車速を制限できるので、安全性を向上できる。
【0048】
(7)コントローラ16は、携帯端末2の操作面24が上向きであるか否かを判定し、所定の端部2aが車両1に向けられていない場合又は操作面24が上向きでない場合は、所定の端部2aが車両1に向けられており且つ操作面24が上向きである場合よりも、車速を低くしてよい。
これにより、利用者が携帯端末2の操作面24が操作していない場合における、操作面24の操作の誤検出を防止できる。
【符号の説明】
【0049】
100…駐車支援システム、1…車両、2…携帯端末、2a、2b…端部、11…測位装置、12…外界センサ、13…車両センサ、14、20a、20a、20b…測距用アンテナ、15、21…データ通信アンテナ、16…コントローラ、17…アクチュエータ、18…プロセッサ、19…記憶装置、22…ジャイロセンサ、23…制御ユニット、24…操作面
図1
図2
図3
図4
図5
図6