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  • 特開-接合体、および、接合体の製造方法 図1
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  • 特開-接合体、および、接合体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167472
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】接合体、および、接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/08 20060101AFI20221027BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20221027BHJP
   H05K 3/34 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
B22F7/08 C
B22F3/10 D
H05K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073273
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和之
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 琢磨
【テーマコード(参考)】
4K018
5E319
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018BA01
4K018CA33
4K018DA11
4K018DA21
4K018JA36
4K018KA32
5E319BB20
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】焼結体からなる接合層の有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、および、この接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第一部材11と第二部材12とが銀の焼結体からなる接合層13を介して接合された接合体10であって、接合体10を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量が、接合面積当たり2.5μg/cm以下とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体であって、
前記接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量が、接合面積当たり2.5μg/cm以下とされていることを特徴とする接合体。
【請求項2】
第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、
前記第一部材と前記第二部材とを、銀粉末と有機溶媒とを含有する銀ペーストを介して積層する積層工程と、
前記第一部材と前記第二部材との間に配置した前記銀ペーストを焼成して銀の焼結体からなる前記接合層を形成する焼結工程と、
前記接合層を、洗浄溶媒を用いて洗浄する洗浄工程と、
を有し、
前記接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量を、接合面積当たり2.5μg/cm以下とすることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程において用いられる洗浄溶媒が、20%~80%(v/v)の2-プロパノール/純水であることを特徴とする請求項2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記銀ペーストに含有される前記有機溶媒の熱分解温度が300℃以下であり、前記焼結工程での焼結温度が250℃以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体、および、接合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった各種デバイスにおいては、金属部材からなる回路層の上に半導体素子等の電子部品が接合された構造とされている。
ここで、半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、例えば特許文献1,2に示すように、はんだ材を用いた方法が広く使用されている。最近では、環境保護の観点から、例えばSn-Ag系、Sn-In系、若しくはSn-Ag-Cu系等の鉛フリーはんだが主流となっている。
【0003】
ところで、特許文献1,2に記載されたように、はんだ材を介して半導体素子等の電子部品と回路層とを接合した場合には、高温環境下で使用した際にはんだの一部が溶融し、半導体素子等の電子部品と回路層と接合信頼性が低下するおそれがあった。
特に、最近では、半導体素子自体の耐熱性が向上しており、半導体装置が自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用されることがある。また、半導体素子に対して大電流が負荷され、半導体素子自体の発熱量が大きくなっている。このため、従来のようにはんだ材で接合した構造では対応が困難であった。
【0004】
そこで、はんだ材の代替として、例えば、特許文献3,4には、銀粉と有機溶媒を含む銀ペーストが提案されている。回路層と半導体素子との間に銀ペーストを塗布し、これを加熱して焼結することで、銀の焼結体からなる接合層を形成し、回路層と半導体素子とが接合される。
この銀の焼結体からなる接合層は、耐熱性に優れており、高温環境下や大電流用途においても安定して使用することが可能となる。
【0005】
ところで、銀の焼結体からなる接合層を形成した場合には、接合層中に、銀ペーストに含まれる有機成分の残渣(有機残渣)が存在し、接合強度の低下等の不具合を生じるおそれがあった。また、有機残渣がLEDやパワーモジュールなどの各種デバイスに悪影響を及ぼすことが懸念される。
そこで、特許文献5においては、平均粒径1~1000nmのAgナノ粒子と分散溶媒とだけからなる銀ペーストが提案されている。この特許文献5に記載された銀ペーストにおいては、銀粉の分散性を向上させて、有機残渣の原因となるロジンやチクソ剤などの添加剤を含有しないものとし、接合層における有機残渣の発生の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-083809号公報
【特許文献2】特許第6566095号公報
【特許文献3】国際公開第2006/126614号
【特許文献4】国際公開第2007/034833号
【特許文献5】特開2016-093830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献5に記載された銀ペーストにおいては、溶媒として有機成分を含んでいるため、接合面の形状や接合面積等によっては、焼結体からなる接合層において有機残渣を十分に低減できないおそれがあった。
このため、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合を確実に低減することができないおそれがあった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、焼結体からなる接合層の有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、および、この接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の接合体は、第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体であって、前記接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量が、接合面積当たり2.5μg/cm以下とされていることを特徴としている。
【0010】
本発明の接合体によれば、接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することでイオン残留物量を求めているので、接合層の内部や周辺に存在する有機残渣の量を精度良く評価することが可能となる。
そして、前記イオン残留物量が、接合面積当たり2.5μg/cm以下に制限されているので、接合層の内部や周辺に存在する有機残渣の量が十分に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することができる。
【0011】
本発明の接合体の製造方法は、第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、前記第一部材と前記第二部材とを、銀粉末と有機溶媒とを含有する銀ペーストを介して積層する積層工程と、前記第一部材と前記第二部材との間に配置した前記銀ペーストを焼成して銀の焼結体からなる前記接合層を形成する焼結工程と、前記接合層を、洗浄溶媒を用いて洗浄する洗浄工程と、を有し、前記接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量を、接合面積当たり2.5μg/cm以下とすることを特徴としている。
【0012】
本発明の接合体の製造方法によれば、焼結工程の後に、前記接合層を、洗浄溶媒を用いて洗浄する洗浄工程を備えており、接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量を、接合面積当たり2.5μg/cm以下としているので、洗浄工程によって、接合層の内部や周辺の有機残渣が確実に除去されている。よって、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制した接合体を製造することができる。
【0013】
ここで、本発明の接合体の製造方法においては、前記洗浄工程において用いられる洗浄溶媒が、20%~80%(v/v)の2-プロパノール/純水の混合液であることが好ましい。
この場合、上述の洗浄工程において、接合層の内部や周辺の有機残渣をさらに確実に除去することができ、接合層の内部や周辺に存在する有機残渣の量をさらに低減することができる。
【0014】
さらに、本発明の接合体の製造方法においては、前記銀ペーストに含有される前記有機溶媒の熱分解温度が300℃以下であり、前記焼結工程での焼結温度が250℃以上であることが好ましい。
この場合、銀ペーストに含有される有機溶媒を、焼結工程において十分に熱分解することができ、接合層の内部や周辺に存在する有機残渣の量を低減でき、洗浄工程において、この有機残渣をさらに確実に除去することができ、イオン残留物量をさらに低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼結体からなる接合層の有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、および、この接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法のフロー図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態である接合体、および、接合体の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る接合体10は、図1に示すように、第一部材11と第二部材12とが、銀の焼結体からなる接合層13を介して接合されたものである。本実施形態では、接合体10は、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)と半導体素子(第二部材12)とが接合層13を介して接合された半導体装置とされている。
【0019】
そして、本実施形態である接合体10においては、接合体10を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量が、接合面積当たり2.5μg/cm以下とされている。
【0020】
接合体10を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬することによって、接合層13の内部や周辺の有機残渣が、イオン残留物として2-プロパノール/純水へと抽出される。
この抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定し、イオンクロマトグラフィーの電気伝導度検出器の応答値をイオン残留物量とする。本実施形態では、イオン残留物量の算出には、NaCl標準液による標準値を用いて、面積換算でイオン残留物量(μg)を求めている。
【0021】
上述のように、イオン残留物量を測定することにより、接合層13の内部や周辺の有機残渣の量を精度良く評価することが可能となる。
そして、接合体10における前記イオン残留物量を接合面積当たり2.5μg/cm以下に低減することにより、接合層13の内部や周辺の有機残渣が十分に低減されていることになり、第一部材11と第二部材12との接合強度の向上を図ることが可能となる。
なお、接合体10における前記イオン残留物量は、接合面積当たり1.6μg/cm以下とすることが好ましく、1.0μg/cm以下とすることがさらに好ましく、0.6μg/cm以下とすることがより好ましい。
【0022】
次に、本実施形態である接合体10の製造方法について、図2および図3を参照して説明する。
【0023】
(ペースト塗布工程S01)
図3に示すように、第一部材11の接合面および第二部材12の接合面の一方又は両方に、銀粉と有機溶媒を含む銀ペースト23を塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば、メタルマスク法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。
ここで、銀ペースト23に含まれる有機溶媒は、その熱分解温度が300℃以下であることが好ましい。有機溶媒の熱分解温度は、TG-DTAのピークにおけるベースラインと発熱の立ち上がりの接線との交点の温度(外挿開始温度)とする。なお、有機溶媒が複数の溶媒からなる場合、最も熱分解温度の高い溶媒の熱分解温度が300℃以下であることが好ましい。また、銀ペースト23に用いられるAg粉末については制限がなく、市販されているAg粉末を使用することができる。
【0024】
(積層工程S02)
次に、図3に示すように、上述の銀ペースト23を介して、第1部材11と第2部材12とを積層する。
【0025】
(焼結工程S03)
次に、図3に示すように、銀ペースト23を介して積層された第1部材11および第2部材12を加熱処理し、銀ペースト23を焼成し、銀の焼結体からなる接合層13を形成し、第1部材11と第2部材12とを接合する。
ここで、加熱処理時には、銀ペースト23に含まれる溶媒等の有機成分が分解してガスが発生することになる。
【0026】
なお、焼結工程S03における加熱温度は、特に限定されないが、150℃以上400℃以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、加熱処理時には、積層体に対して0.1MPa以上20MPa以下の圧力で積層方向に加圧してもよい。
【0027】
(洗浄工程S04)
次に、図3に示すように、接合層13を介して接合された第1部材11および第2部材12を洗浄溶媒25に浸漬し、この洗浄溶媒25を用いて接合層13を洗浄する。
この洗浄工程S04によって、接合層13の内部や周辺に存在する有機残渣を除去し、本実施形態である接合体10を得る。
なお、洗浄工程S04では、接合体10を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量を、接合面積当たり2.5μg/cm以下となるまで、洗浄を行うことになる。なお、導電率が1.0μS/cm以下の純水を用いることが好ましい。
【0028】
ここで、洗浄溶媒25として、20%~80%(v/v)の2-プロパノール/純水を用いることが好ましい。
また、洗浄方法としては、特に制限はなく、浸漬洗浄、振とう洗浄、超音波洗浄等を適用することができる。本実施形態では、超音波洗浄を採用しており、洗浄時間を1分以上としている。洗浄時に超音波を付与することで、洗浄溶媒の接合層13の内部や周辺に十分に浸透させ、有機残渣を効率良く除去することが可能となる。
【0029】
以上のような構成とされた本実施形態である接合体10によれば、接合体を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することでイオン残留物量を求めているので、接合層13の内部および周辺に存在する有機残渣の量を精度良く評価することが可能となる。
そして、イオン残留物量が、接合面積当たり2.5μg/cm以下に制限されているので、接合層13の内部および周辺に存在する有機残渣の量が十分に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することができる。
【0030】
本実施形態である接合体10の製造方法によれば、焼結工程S03の後に、接合層13を、洗浄溶媒25を用いて洗浄する洗浄工程S04を備えており、この洗浄工程S04によって、接合体10を50%(v/v)の2-プロパノール/純水に浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィーにて測定することで求められるイオン残留物量を、接合面積当たり2.5μg/cm以下としているので、洗浄工程S04によって、接合層13の内部や周辺の有機残渣が確実に除去されている。よって、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体10を製造することができる。
【0031】
本実施形態において、洗浄工程S04で用いられる洗浄溶媒25が、20%~80%(v/v)の2-プロパノール/純水である場合には、上述の洗浄工程S04において、接合層13の内部や周辺の有機残渣をさらに確実に除去することができ、イオン残留物量をさらに低減し、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生をさらに抑制することができる。
【0032】
本実施形態において、銀ペースト23に含有される有機溶媒の熱分解温度が300℃以下とされ、焼結工程S03での焼結温度が250℃以上とされている場合には、銀ペースト23に含有される有機溶媒を、焼結工程S03において十分に熱分解することができ、接合層13の内部や周辺に残存する有機残渣の量を低減でき、洗浄工程S04において、この有機残渣をさらに確実に除去することができ、イオン残留物量をさらに低減することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0034】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
【0035】
第一部材として最表面に金めっきを施した銅板からなる回路基板(厚さ2mm)と、第二部材として最表面に金めっきを施したSiC製の半導体素子(厚さ400μm)とを準備した。なお、半導体素子の大きさにより、半導体素子と回路基板との接合面積を表1に示すものとなるように調整した。
また、銀粉末と有機溶媒とを含む銀ペーストを準備した。銀ペーストに含まれる有機溶媒の熱分解温度を表1に示す。
【0036】
第一部材に銀ペーストを塗布厚さ100μmで塗布し、この銀ペーストを介して第二部材を積層した。
この積層体を、窒素雰囲気で、表1に示す条件で加熱処理し、銀ペーストを焼成して、銀の焼結体からなる接合層を形成し、第一部材と第二部材とを接合した。
【0037】
そして、焼結後に、本発明例1~4においては、表1に示す洗浄方法によって洗浄工程を行った。なお、比較例1,2においては、洗浄工程を実施しなかった。
上述のようにして得られた接合体について、イオン残留物量、接合強度を、以下のように評価した。
【0038】
(イオン残留物量)
得られた接合体を、50%(v/v)の2-プロパノール/純水に1分間浸漬し、イオン残留物を抽出した後、その抽出液をイオンクロマトグラフィー装置(Dionex社製ICS-5000+)により測定し、電気伝導度検出器の応答量をイオン残留物量とした。
なお、本実施例では、NaCl標準液による標準値を用いて、接合面積当たりのイオン残留物量を求めた。評価結果を表1に示す。
【0039】
(シェア強度)
接合体の接合強度は、せん断強度評価試験機(株式会社レスカ製ボンディングテスタPTR-1101)を用いて接合強度を測定した。測定は、接合体の第一部材を水平に固定し、接合層の表面から50μm上方の位置にてシェアツールを用いて、第二部材を横から水平方向に押して、第二部材が破断されたときの強度を測定した。シェアツールの移動速度は0.1mm/secとした。評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
比較例においては、イオン残留物量が接合面積当たり6.7μg/cmとされており、シェア強度が8MPaと低くなった。
【0042】
これに対して、本発明例1~6においては、イオン残留物量が接合面積当たり2.5μg/cm以下とされており、シェア強度が10MPa以上となっており、接合強度に優れていた。
また、本発明例1~4においては、洗浄工程において用いられる洗浄溶媒が20%~80%(v/v)の2-プロパノール/純水とされ、銀ペーストに含有される有機溶媒の熱分解温度が300℃以下、焼結工程での焼結温度が250℃以上とされており、イオン残留物量が接合面積当たり0.6μg/cm未満であり、シェア強度が31MPa以上となっており、接合強度に特に優れていた。
【0043】
以上の確認実験の結果から、本発明例によれば、焼結体からなる接合層の有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、および、この接合体の製造方法を提供可能であることが確認された。
図1
図2
図3