(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167476
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】プラグインレンジエクステンダーEV車両検討のための統合PCシミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/12 20160101AFI20221027BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20221027BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20221027BHJP
B60L 50/62 20190101ALI20221027BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20221027BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221027BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20221027BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20221027BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20221027BHJP
【FI】
B60W20/12
G01C21/36 ZHV
G08G1/00 A
B60L50/62
B60L58/12
B60L15/20 J
B60K6/46
B60W10/00 900
B60K6/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073281
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】301068767
【氏名又は名称】エーシーテクノロジーズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516268840
【氏名又は名称】株式会社サニックス
(72)【発明者】
【氏名】森秀雄
(72)【発明者】
【氏名】尾谷昌康
(72)【発明者】
【氏名】斉藤仁
(72)【発明者】
【氏名】麻上衛
(72)【発明者】
【氏名】清水庄一
(72)【発明者】
【氏名】吉用茂
【テーマコード(参考)】
2F129
3D202
5H125
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD39
2F129DD48
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE81
2F129HH12
3D202AA07
3D202AA10
3D202BB00
3D202DD45
3D202DD50
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC08
5H125BC18
5H125CA18
5H125CD02
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE55
5H181AA01
5H181BB08
5H181BB18
5H181EE02
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】計画発電蓄電制御技術を用いたPRE-EV車両のエンジン、モーター発電機、二次電池等の主要搭載機器の特性の合理的な組み合わせを設定する。
【解決手段】車両の開発に当たり、車両の試作に当って検討する必要のある各搭載機器の特性の最適化を事前に行える計算機上に計画発電蓄電制御処理ブロックを構成し、実車両の代わりにすでに走行し収集した走行データと地図データ、若しくは通常の車両にGPS受信機を搭載して走行して収集した位置データと走行データを用いる事により、実車がなくともPRE-EV車両の主要搭載機器の特性を確認する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路の状態と車両条件を元に発電区間と発電時期を設定する計画発電蓄電制御技術を搭載した計算機システムに、PRE-EV車両の動作をエミュレートする機能を設定する事により、車両の制作前でもエンジンとモーター及び電池の各特性を事前に検討する事が可能な、PRE-EV車両検討のための統合PCシミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1に関わり、計画発電蓄電制御技術を搭載した計算機システムは、走行路の情報と電池の蓄電量を表すSOC値をドライバーに表示するルート情報処理及びGUI設定ブロックと、走行前にSOCチャートを作成すると共に走行状態から得られるSOC値を比較して、設定値以上のSOC値間の乖離がある場合はSOCチャートを再作成する機能を有する計画発電蓄電制御処理ブロックから構成されるPRE-EV車両検討のための統合PCシミュレーション装置。
【請求項3】
請求項1と請求項2に関わり、事前に車両を走行して単位時間毎にGPSから収集したデータと地図情報のデータから、走行路の各地点のSOC値情報を得る手段を有するGPS/EVシミュレータブロックを含む、PRE-EV車両検討のための統合PCシミュレーション装置。
【請求項4】
請求項1と請求項2に関わり、請求項2の2つのブロック機能を実行する計算機を搭載した車両を走行させて、GPS受信機から位置情報を得る事によりリアルタイムに走行地点での車両の消費電力量を計算する事によってSOC値を得る手段を有するGPS/EVシミュレーションブロックを含む、PRE-EV車両検討のための統合PCシミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン発電機で二次電池を充電し、その二次電池によってモーターを駆動して走行するプラグインレンジエクステンダーEV(Range Extended-Electrical Vehicle)車両を制作する前に、その車両が走行時に電力消費量や石油燃料を削減する事でCO2の排出量を最少に抑える事が可能となるように、搭載するエンジンの容量、モーターの出力、電池の蓄電電力量等の特性の最適な組み合わせを可能とする統合PCシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の蓄電電力をモーターに供給して走行する大型商用車両は、高価な二次電池を大量に搭載する必要があるために、バスでは同席数のディーゼルエンジンのバスと比較して初期投資が数倍と高価となる上に、大量の二次電池の搭載スペースが座席数を減らす問題がある。また、EVトラックも大量の二次電池の搭載スペースが搭載積載量を減少させるため使い勝手が悪い等の理由により普及が遅れている。
【0003】
この解決策として、電池の蓄電電力を駆動モーターに供給する事で走行し、電池の蓄電量が少なくなればエンジンで発電モーターを回して電池に充電を行う所謂シリーズハイブリッド方式又はレンジエクステンダー方式がある。しかしこの方式を大型商用車に適用しようとすると、例えば急な長い登坂を走行するために大きな瞬時電力を供給する必要があるので大型発電機と大量の二次電池が必要となる。その結果、バスでは座席数の削減、トラックでは貨物積載量が制限されるため、商用車のシリーズハイブリッド化はなかなか進まない。
【0004】
それに対して、計画発電蓄電制御技術を用いたPRE-EV(以後はPRE-EV車両と呼ぶ)車両は、地理情報システム(GIS)とGNSS(Global Navigation Satellite System/全地球測位衛星システム)を活用する事で走行ルート上の位置情報や高度差等の路面情報を収集し、走行前に目的地までの発電計画(走行計画)の作成を行う。このように必要な発電量を事前に算出して、走行中の適切な発電開始時期と発電期間を設定出来る事から発電機とモーター及び二次電池の小型化が可能となる。走行開始後は、走行途中で逐次得られるGPSデータと走行データに基づいて当初の走行計画を修正しながら走行を行う。さらにこれまでの走行時に蓄積した走行データを用いる事で、走行前に作成する走行計画の精度を高めることが可能になる。なお、計画発電蓄電制御技術を用いたPRE-EV車両に関する特許提案はすでに実施済である。
このようにPRE-EV車両はエンジンと発電機及び二次電池の小型化が可能であるが、車種毎にそれら搭載機器の特性の最適化が必要である。しかし、車種毎の各装置の最適化を行う手段が従来は存在していない。そのため、最適とは言えない装置の特性の組み合わせが考えられる等の問題があり、またその最適化を求めるために何度も試作を繰り返す等の製作時間とコストが多大にかかる課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献2】特開2019-77257
【特許文献2】特開2020-62906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によって解決しようとする課題は、小型のエンジンとモーターと中容量の二次電池を搭載した計画発電蓄電制御技術を組み込んだPRE-EV車両を制作するに当たって、車両の性能である消費燃料や環境への影響を与えるCO2の排出を出来るだけ減らすように、各搭載機器の特性を事前に求める事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本提案では、計画発電蓄電制御技術を組み込んだPRE-EV車両の制作する前に、走行前の本車両の主要構成であるSOCチャートを作成する手段と、それを表示する手段と、車両が走行する時の電力量等を予測できる手段を計算機上に構成し、さらに走行条件である季節要因や車両条件である貨物積載量やタイヤの特性(ノーマルタイヤやスタッドレスタイヤ等)を検討出来るコンピュータシステムを提案するものである。なおPRE-RV車両だけでなく一般的なレンジエクステンダーEV車両にも適用可能な事は自明である。
【0008】
図1は本提案である統合PCシミュレーション装置の構成を示している。図の右側は計画発電蓄電制御処理コンピュータであり、ルート情報処理と地図データ作成及びGUI設定ブロックと、計画発電蓄電制御処理ブロックから構成される。図の左下は実際のPRE-EV車両であり、EV車両駆動ユニットと発電装置(発電ユニット)が搭載される。GPS受信機はルート情報処理及びGUI設定ブロックに接続されている。
【0009】
ルート情報処理及びGUI設定ブロックは、GUI処理部と、ルート機能と位置情報等データ処理部から構成される。地図データ作成部で作成したルート情報を、ルート情報処理及びGUI設定ブロックに送り、ルート上の緯度経度及び高度情報のデータ処理を行うと共に、静音区間となるトンネルや市内区域の設定を行う。さらに走行中はGPS受信機から位置情報を取得する。
計画発電蓄電制御処理ブロックは、ルート情報処理及びGUI設定ブロックから走行ルート情報を受け取り、それらの情報を基に出発地点から目的地点までのSOCチャートを作成してGUI処理部に受け渡し、GUI処理部はその情報をドライバーが確認出来るディスプレー等に表示する。
【0010】
走行中はGPS受信機から走行地点での位置情報を取得してルート機能及び位置情報等データ処理ユニットに伝送すると共に、EV車両駆動ユニットからSOC等の車両情報を計画発電蓄電制御処理ブロックのEVトラック監視処理ユニットに送る。PRE-EV車両の発電装置(発電ユニット)は発電監視及び制御装置から発電機の発電開始及び停止の信号を受ける。さらに計画発電蓄電制御処理ブロックは、走行中のSOC値が走行前に計画したSOCチャートから設定した値以上に乖離した事を検知して、必要な発電機の開始及び停止情報をPRE-EV車両に伝達する。なお、PRE-EV車両と計画発電蓄電制御処理コンピュータ間の情報伝達は信頼性の高いCAN通信を使用する。
【0011】
図2はルート情報処理及びGUI処理ユニットがドライバーに与える情報を簡略に示した図である。該ブロックから供給される情報としては、走行しているルートの地図情報(走行ルート設計)に現在地を表す共にSOCチャート画面が表示され、チャート画面には発電機の発電稼働区間と発電開始及び停止時期が示される。さらに、SOCチャートの再作成が行われた場合は、その情報もSOCチャート再作成情報として表示される。これ以外の情報としては、発電機を強制的に駆動/停止する発電開始/停止ボタン等も表示される。
【0012】
図1では実車で実際に走行する場合の各ブロックの処理関係を示したが、
図3は実車が制作される前に、
図1のシミュレーションを実行する計算機上のシステム構成から成る統合PCシミュレーション装置を示している。GPS/EVシミュレータブロックは実車の代わりの機能を担い、走行データを計画発電蓄電制御処理ブロックに伝達すると共に、計画発電蓄電制御処理ブロックからは発電開始及び停止の情報を受け取る。GPS受信機からの位置情報は地図データと共にルート情報処理及びGUI設定ブロックに送られる。本図の統合PCシミュレーション装置には以下の2つのモードが装備されている。
【0013】
図4はその中の1つのモードを示しGPSオフラインモードと呼ぶ卓上で全ての必要なシミュレーションを行えるシステムである。本モードではGPS/EVシミュレータブロックは、各走行路を事前に走行して単位時間毎(例えば1秒毎)に記録された時間と位置情報を、ルート情報処理及びGUI設定ブロックに送る。同時に車速とSOC値もGUI設定ブロックに伝達する。車速とSOC値は走行ログデータの時間、位置高度情報、及び車重、電費、回生率等から計算する。計算した結果は計画発電蓄電制御処理ブロックに伝達しSOCチャートが作成される。SOCの再作成が実施されれば結果はGPS/EVシミュレータブロックにフィードバックされる。
本方式によって机上で各走行路を走行した場合の走行シミュレーションが行えるので、例えば平均電費をある範囲に変化させた場合、或いは積載量を増減させた場合など、自由に車両条件及び走行条件を変えたシミュレーションが可能となり、実車製作に関する有益な情報を得る事が可能となる。さらに本モードはいくつかの区間をN秒毎に間引くことによって、シミュレーション時間をN分の1に短縮が行える特徴を有する。
【0014】
他の利点としては、一般の走行路以外で使用される特殊車両についても応用が出来る。例えば湾岸区域だけで走行する特殊車両等の走行及び車両条件を用いて、それらの車両に最適なエンジンの容量、発電機の能力、電池の積載量等の組み合わせを最適となるようにシミュレーションを行う事が可能となる。
【0015】
図5はGPSオンラインモードと呼ぶもう1つモードであり実際に車両に本コンピュータを載せて走行する。コンピュータにはGPS/EVシミュレータブロック機能を搭載してシミュレーションを行う。車両は想定するPRE-EV車両の大きさや性能に似た車を用いて、GPSで位置情報を得ながら走行する。走行中は車両速度の変化等から電費の変動を計算から求める方法を用いる事も可能であり、実際のPRE-EV車両に近い動作環境を実現する事により、さらに精度の高いシミュレーションが行える。
【0016】
図6はここまで記した(1)GPS/EVシミュレータブロック、(2)計画発電蓄電制御処理ブロック、(3)ルート情報処理及びGUI設定ブロックの各関係を示している。各ブロックの機能を細い実線で示したユニットに分解して縦の破線の枠内に配置し、同時に各機能を横破線の枠内に配置して走行前処理、走行中処理、走行終了処理に分類した。
【0017】
走行前処理では、(3)ルート情報処理及びGUI設定ブロックの(3-1)ユニットで、これから走行するルートを決定し、システム設定値/走行設定値を決めたのち、(2) 計画発電蓄電制御処理ブロックの(2-1)ユニットでSOCチャートを作成する。この機能は、基本的にルート情報処理及びGUI設定ブロックと、計画発電蓄電制御処理ブロックが担う本来の計画発電蓄電制御システムの処理である。一方、GPSオフラインモードに限り(1)GPS/EVシミュレータブロックでは事前準備として、(1-1)ユニットで単位時間間隔の走行ログデータを作成しておく。作成した走行ログデータは走行中のシミュレーションで使われる。この走行前処理は車両が走行する準備段階の状態である。この時、GPS/EVシミュレータブロックからは走行ログデータの最初の行の位置情報を、ルート情報処理及びGUI設定ブロックに送ると共に、出発地のSOC値を計画発電蓄電制御処理ブロックに送る。
【0018】
走行中処理では、(1) GPS/EVシミュレータブロックから走行開始の指示が出されると、(3)ルート情報処理及びGUI設定ブロックと(2)計画発電蓄電制御処理ブロックへデータを順次送る。走行を開始すると、GPS/EVシミュレータブロックは、単位時間毎に走行ログデータから順次に位置情報を計画発電蓄電制御処理ブロックへ送る。また、走行中の各区間でのSOCを計算し、その値を計画発電蓄電制御処理ブロックへ送る。位置情報の取得が困難なトンネル区間は、計算により車速を計画発電蓄電制御処理ブロックへ送り位置情報を得る。GPS/EVシミュレータブロックからは、発電情報およびEVトラック(VCU)の各種ログデータを計画発電蓄電制御処理ブロックに送る。ただし、SOCおよび車速以外はシミュレーションできないので、何らかの定数が計画発電蓄電制御処理ブロックに送られる。
走行中に“一時停止”指示が出されると、GPS/EVシミュレータブロックは直前の位置情報をルート情報処理及びGUI設定ブロックへ送り続ける。また、現在のSOC値を計画発電蓄電制御処理ブロックへ送り続ける。GPS/EVシミュレータブロックに表示されている時間も停止する。もう一度“一時停止”指示が出されると処理を再開する。
【0019】
走行終了処理では計画発電蓄電制御処理ブロックから走行終了ログデータがルート情報処理及びGUI設定ブロックへ送られる。一方、GPS/EVシミュレータブロックは、ゴール地点(走行ログデータの最後の行)に達したら、その位置情報をルート情報処理及びGUI設定ブロックへ送り続ける。また、現在のSOC値を計画発電蓄電制御処理ブロックへ送り続ける。車が停止している状態になると、GPS/EVシミュレータブロックから“走行終了”指示が出されて、ルート情報処理及びGUI設定ブロックおよび計画発電蓄電制御処理ブロックへデータを送るのを停止する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の統合PCシミュレーション装置は、計画発電蓄電制御システムを搭載したPRE-EV車両を開発するに当って、そのシステムを構築する主要搭載機器である、エンジン、発電機及び二次電池の各特性の最適な組み合わせを求める事で電費の最大化を図り、CO2排出量の最小化を実現するための検討を机上で行う事により開発を助ける技術である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】PRE-EV車両を統合PCシミュレーションシステムの一部として組み入れた図である
【
図2】ルート情報処理及びGUI設定ブロックに表示される設定画面の模擬図である
【
図3】PRE-EV車両の機能をGPS/EVシミュレータブロックに組み入れた統合PCシミュレーションシステムの図である
【
図4】GPSオフラインモードの各ブロック関係を示す図である
【
図5】GPSオンラインモードの各ブロック関係を示す図である
【
図6】統合PCシミュレーションの各ブロックの動作関係を示す図である