(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167495
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】堤補強構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20221027BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
E02B3/12
E02D17/20 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073316
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】鶴ケ崎 和博
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
【Fターム(参考)】
2D044DC00
2D118AA02
2D118AA20
2D118BA01
2D118BA02
2D118BA14
2D118CA07
2D118DA01
(57)【要約】
【課題】、既設堤体において、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等などによる破堤を抑制するための堤補強構造を提供する。
【解決手段】堤体1の外側の法面を、土砂、スラグ、短繊維材、ベントナイト及び水を混合してなる第1改良土3にて造成して、堤体1の内側の法面を、土砂、スラグ、短繊維材及び水を混合してなる第2改良土4にて造成している。これにより、既設堤体1において、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等などによる破堤を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設堤体を補強するための堤補強構造であって、
前記既設堤体の表面を、土砂、スラグ及び水を混合してなる改良土にて造成して構成されることを特徴とする堤補強構造。
【請求項2】
前記改良土には、繊維材が混合されることを特徴とする請求項1に記載の堤補強構造。
【請求項3】
前記改良土には、遮水材が混合されることを特徴とする請求項1または2に記載の堤補強構造。
【請求項4】
前記改良土には、吸水性材料が混合されることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の堤補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設堤体を補強するための堤補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、巨大台風や集中豪雨等により、各地の河川堤体が決壊し、甚大な被害が発生している。河川堤体の多くは、古くから様々な土質材料を用いた土堤で築造されており、洪水時の越流や土堤内の浸透、または侵食により破堤する事例が多く報告されている。これまでの河川堤体の補強改修工事は、圧密地盤の地盤改良による耐震化、河川側(堤体の外側)の表法面の被覆による侵食対策、天端部のアスファルト舗装による降雨浸透対策、陸側(堤体の内側)の裏法面の法尻部の補強によるパイピング対策(特許文献1参照)が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の堤補強構造として、様々な対策が施されているが、近年発生する巨大台風や集中豪雨等に対して、耐え得る強度を備えていない。その結果、従来の堤補強構造では、これら巨大台風や集中豪雨等により、堤体の河川側の法面が侵食されて、しかも、近年の被災傾向では、洪水時等による堤体の越流によって、堤体の陸側の法面も崩れることから、早期に破堤に至る虞があり、改善する必要がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、既設堤体において、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等などによる破堤を抑制するための堤補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、既設堤体を補強するための堤補強構造であって、前記既設堤体の表面を、土砂、スラグ及び水を混合してなる改良土にて造成して構成されることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、改良土にスラグが混合され、当該改良土により既設堤体の表面を造成するので、堤体表面の強度を向上させることができる。そして、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等の有事の際、堤体表面の侵食を抑制することができ、破堤を抑制することができる。また、他の作用効果として、鉄鋼の生産過程において副産物として発生するスラグを有効活用することができる。さらに、スラグは、ミネラル成分を含有しているため植生に対して好影響を期待することができる。さらにまた、スラグの粒度は、礫相当から細粒分までの分布が広いために、施工に適した粒度を調整・選定することが可能になる。さらにまた、スラグは、高比重であり、安定性が高く、破堤の抑制に繋がる。なお、スラグは、混合時に固化する性質のものであればいかなるスラグでもよいが、スラグとして、成分管理と粒度調整したものを採用して、強度発現、濁り抑制、アルカリ抑制等に配慮することができる。また、スラグによる固化性能が不足する場合には、別途、固化材(セメント系、または非セメント系)を加えてもよい。さらに、既設堤体の表土を改良土により改良してもよいし、改良土を堤体の表面上に被覆してもよい。
【0007】
請求項2の堤補強構造に係る発明は、請求項1の発明において、前記改良土には、繊維材が混合されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、改良土には、スラグに加えて、繊維材が混合されているので、堤体表面の強度、靭性を向上させることができる。なお、繊維材は、ビニロンやポリプロピレン等の化学繊維材を採用してもよいが、麻やワラ等の天然繊維材を採用したほうがよい。そこで、化学繊維材は高分子材料であり、万が一にも改良土が欠損して、一部の改良土が周辺の河川、湖沼や海等に流出した場合においては、マイクロプラスチック問題が生じる虞がある。この問題に鑑みて、繊維材が麻やワラ等の天然繊維材にて構成されることで、万が一、繊維材が流出時においても水環境を汚染する問題を引き起こす虞がない。
【0008】
請求項3の堤補強構造に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記改良土には、遮水材が混合されることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、改良土には、遮水材が混合されており、既設堤体の表面が当該改良土により造成されるので、堤体内への浸水(大量の水の浸透)を抑制することができ、土堤からなる堤体の安定化に繋がる。なお、堤体の外側の法面を、遮水材を含む改良土により造成して、堤体の内側の法面を、遮水材を除く改良土により造成したほうがよい。その結果、堤体の外側の法面からの浸水を抑制する一方、堤体内の水を堤体の内側の法面から容易に排出させることができ、堤体内に大量の水が貯溜することによる堤体内の水位上昇を抑制することができる。その結果、堤体を構成する土粒子が水で飽和されることが抑制され、土粒子間のせん断摩擦抵抗力が維持され、法面崩壊を抑制することができる。
【0009】
また、堤体の内側の法面に造成された改良土には、スラグや繊維材等が含まれるので、堤体の内側の法面の強度、靭性を向上させることができ、その結果、堤体からの越流による、内側の法面の侵食を抑制することができる。なお、遮水材としては、粒径が細かく透水係数が小さい方が好ましいため、港湾や河川の浚渫粘性土やフライアッシュ(石炭灰)を採用してもよく、これらにベントナイトを含んだものでもよく、ベントナイト単体でもよい。また、遮水材として、ベントナイトを含むものを採用することで、ベントナイトが水を吸収して膨張し、遮水材としての透水係数を小さくでき、法面からの浸水量をさらに低減させることが可能になる。なお、既設堤体の外側の法面は、河川、湖沼や海側の法面であり、一方、既設堤体の内側の法面は、河川、湖沼や海側とは反対側で、陸側の法面である。
【0010】
請求項4の堤補強構造に係る発明は、請求項1~3いずれかの発明において、前記改良土には、吸水性材料が混合されることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、特に、土砂として浚渫土(高含水比の泥土)が採用された場合、改良土に吸水性材料を混合する構成を採用している。これにより、改良土の流動性を低下させ、当該改良土を用いて堤体の法面を造成すると、所定の勾配角度を確保でき、かつ、混合直後から所定時間以内に打設を開始できるので、施工効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既設堤体において、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等などによる破堤を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る堤補強構造を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る堤補強構造を施工する際、区画バケツ内にて、堤体の外側の法面を第1改良土により造成する様子を示す図である。
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を
図1及び
図2に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る堤補強構造を
図1及び
図2に基づいて説明する。なお、堤体1は既設のものであって、断面略台形状、または法面上に小段がある形状の土堤にて構成される。堤体1の外側の法面は、河川、湖沼や海側の法面であり、一方、堤体1の内側の法面は、河川、湖沼や海側とは反対側で、陸側の法面である。堤体1は、河川堤体に限らず、海岸堤体等を含むものであり、要するに、本発明の実施形態は、河川、湖沼や海等の水の陸側への浸水を防止するために造成された既設堤体1の全てに適用することができる。
【0014】
本実施形態に係る堤補強構造では、
図1に示すように、堤体1の外側の法面を後述する第1改良土3により造成し、また、堤体1の内側の法面を後述する第2改良土4により造成して構成される。第1改良土3は、土砂に、短繊維材、遮水材としてのベントナイト、スラグ及び水を混合して構成される。短繊維材は、本実施形態では、麻やワラ等の天然繊維材が採用される。短繊維材は、長さ10~30mm、繊維径10~400μmのものが採用される。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土である。スラグは、混合時に固化する性質のものであればいかなるものでもよいが、成分管理と粒度調整したものを採用したほうがよい。混合される水は、水道水、上水、河川水、海水などいかなる水であってもよい。
【0015】
スラグの混合量は、一般的に、20~30vol%であるのに対し、その混合量を40~50vol%に増やすことにより強度不足を補う方法がある。しかしながら、スラグの容積混合率を増やした場合、スラグは高アルカリであるため、水の量が多い場合、pH緩衝作用のある土粒子の量が減少するため、pHが上昇しやすくなる。そのために、水の量は、土砂の量やスラグの量に応じて設定されるものであり、pHの上昇を抑え、適切な粘性をもって施工できる程度の量として設定される。
【0016】
また、第1改良土3は、強度試験、すなわち、一軸圧縮強度試験(JIS A 1216)において、強度quが100kN/m2以上であり、ひずみ10%においても強度が降伏せず、靱性を有するべく、土砂、短繊維材、ベントナイト、スラグ及び水の容積混合率が適宜設定される。また、第1改良土3においては、ベントナイトを有しており、透水試験(JIS A 1218より試験精度の高い三軸透水試験)を実施して、例えば、透水係数k=1×10-7m/s程度を有するものである。一方、第2改良土4は、上述した第1改良土3からベントナイトを除き、土砂に、短繊維材、スラグ及び水を混合して構成される。なお、第1及び第2改良土3、4に採用される土砂は、堤体1の法面を構成する現地土砂(表土)でも良いし、河川浚渫土(水含む)や港湾浚渫土(水含む)でもよく、現地外から搬入した建設発生土や購入土等でもよい。
【0017】
なお、特に、土砂として浚渫土(高含水比の泥土)が採用された場合には、第1改良土3にスラグを混合すると、混合直後は流動性が大きく、混合直後に堤体1の法面に打設するとその勾配がなだらかになり、多量の第1改良土3が必要になる。そのために、所定の勾配角度を確保するためには、改質後、長時間~数日間静置した後に打設する必要がある。しかしながら、この施工方法であると、長い静置時間が必要なために、施工効率が悪くなる、という課題が生じる。
【0018】
この課題に鑑みて、特に、土砂として浚渫土(高含水比の泥土)を採用する場合には、第1改良土3に、吸水性材料としてPS灰系改質材を混合してもよい。遮水材として採用したベントナイトも吸水性を有するが、第1改良土3に、吸水性材料としてPS灰系改質材を混合してもよい。PS灰系改質材とは、製紙スラッジ焼却灰系改質材であって、製紙スラッジ焼却灰からなる改質材、または、製紙スラッジ焼却灰を主成分とする改質材であり、製紙スラッジ焼却灰に他成分が混合されていてもよいが、他成分の混合は必ずしも必要ではない。製紙スラッジ焼却灰とは、製紙産業において発生するペーパースラッジ(PS)を減容化のため焼却した際に生じる焼却灰をいい、PS灰などとも呼ばれる。PS灰は多孔質材料であるため、PS灰系改質材は優れた吸水性を有する。
【0019】
このPS灰系改質材の吸水性が優れた特性を生かし、浚渫土を含む第1改良土3にPS灰系改質材を混合することでその流動性が低下できるので、第1改良土3を用いて堤体1の法面を造成する際に、所定の勾配角度を確保でき、かつ、混合直後から所定時間以内に打設を開始できるので、施工効率を向上させることができる。なお、PS灰系改質材に限らず、吸水性材料として、石炭灰や石膏等を採用してもよい。石炭灰は、火力発電所等で石炭を燃焼させたときに生じるフライアッシュやクリンカアッシュ等である。
【0020】
そして、既設堤体1の多くは土堤であり、その内部に大量の水が浸透、貯溜すること(浸透流の発生)は避けるべきである。すなわち、堤体1内に大量の水が浸透、貯溜することで、土粒子間の摩擦力(せん断摩擦抵抗力)やサクション効果が小さくなるために、堤体1の外側の法面が侵食されやすく、結果的に堤体1の安定化が失われて、破堤するものと推測できる。このような課題に鑑みて、上述した実施形態では、既設堤体1の外側の法面が第1改良土3(ベントナイトを含む)により造成されている。その結果、堤体1の外側の法面から堤体1内への水の浸入を抑制して、堤体1内への大量の水の浸透を抑制すると共に外側の法面の強度、靭性を向上させることができる。
【0021】
また、第1及び第2改良土3、4には、スラグが混合されているので、強度発現、濁り抑制、アルカリ抑制等の特徴を有し、鉄鋼の生産過程において副産物として発生するスラグを有効活用することができる。また、スラグは、ミネラル成分を含有しているため植生に対して好影響を期待することができる。さらに、スラグの粒度は、礫相当から細粒分までの分布が広いために、施工に適した粒度を調整することが可能になる。さらにまた、スラグは、高比重であり、安定性が高く、破堤の抑制に繋がる。そして、堤体1への、水の流れによる侵食を抑制することができ、ひいては、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等の有事の際の破堤を抑制することができる。
【0022】
一方、上述した実施形態によれば、堤体1の内側の法面は、ベントナイトを除く、土砂、短繊維材、スラグ及び水を混合して構成される第2改良土4により造成されているので、堤体1内の水をその内側の法面から容易に排出させることができ、堤体1内に大量の水が貯溜することによる堤体1内の水位上昇を抑制することができる。その結果、堤体1を構成する土粒子が水で飽和されることが抑制され、土粒子間のせん断摩擦抵抗力が維持され、法面崩壊を抑制することができる。
【0023】
また、堤体1の内側の法面に造成された第2改良土4には、スラグ及び短繊維材が含まれるので、内側の法面の強度、靭性を向上させることができ、その結果、堤体1からの越流による、内側の法面の侵食を抑制することができる。これにより、堤体1を十分に補強でき、その安定化に繋がり、ひいては、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等の有事の際の破堤を抑制するための対策として十分なものになる。
【0024】
そこで、堤体1の、例えば外側の法面を第1改良土3により造成する施工方法として、当該外側の法面を構成する現地土砂(表土)を使用する場合においては、堤体1の近傍に配置された攪拌混合装置(図示略)内に、適宜混合比にて、ベントナイト、スラグ、短繊維材及び水を供給、攪拌して混合スラリーを生成する。そして、当該混合スラリーを堤体1の外側の法面に圧送、打設して、例えば、バックホウ等により、この混合スラリーを堤体1の法面を構成する現地土砂と混合させて、堤体1の外側の法面における所定深さが第1改良土により造成する。この実施形態では、堤体1の改良後の断面形状(面積)を、改良前の断面形状(面積)に維持させた状態で補強することができる。
【0025】
他の施工方法として、
図2に示すように、堤体1の外側の法面の一部を区画バケツ10等にて覆うように配置する。当該区画バケツ10内にて、各掘削攪拌装置11の各掘削攪拌羽12を回転させることで、区画バケツ10内の法面を若干掘り起こす。一方、堤体1の近傍に配置された攪拌混合装置内に、適宜混合比にて、ベントナイト、スラグ、短繊維材及び水を供給、攪拌して混合スラリーを生成する。
【0026】
そして、攪拌混合装置内の混合スラリーを、区画バケツ10内で、法面を各掘削攪拌装置11の各掘削攪拌羽12にて掘り起こしている状況下に圧送して、混合スラリーと、掘り起こされた土砂とを攪拌することで、当該法面の所定深さが第1改良土3により造成される。詳しくは、混合スラリーと法面の現地土砂とが攪拌される際、区画バケツ10が各掘削攪拌装置11と共に法面に向かって徐々に押し込まれることで、各掘削攪拌装置11の各掘削攪拌羽12の回転によって、法面の土砂がさらに掘り起こされつつ、圧送された混合スラリーと攪拌されながら押し込まれて、区画バケツ10により区画された部位が所定深さで第1改良土3により造成される。その後、区画バケツ10による法面の一部の造成作業が完了すると、区画バケツ10を次の位置に移動させた後、上述した工程が繰り返されて、法面全域が第1改良土3により造成される。
【0027】
さらに他の施工方法として、まず、堤体1の外側の法面であって、その傾斜に沿ってその所定の厚み相当分掘削する。そして、堤体1の近傍に配置された攪拌混合装置内に、適宜混合比にて、掘削した現地土砂(表土)、ベントナイト、スラグ、短繊維材及び水を供給、攪拌して混合体を生成する。そして、当該混合体を堤体1の外側の法面であって、掘削した部分に運搬、打設して、当該外側の法面を第1改良土により造成する。この実施形態においても、堤体1の改良後の断面形状(面積)を、改良前の断面形状(面積)に維持させた状態で補強することができる。
【0028】
さらに他の施工方法として、堤体1の近傍に配置された攪拌混合装置(図示略)内に、適宜混合比にて、例えば河川浚渫土(港湾浚渫土でもよい)、ベントナイト、スラグ、短繊維材及び水を供給、攪拌して混合体を生成する。そして、当該混合体を堤体1の外側の法面に打設して、当該外側の法面を第1改良土により被覆、造成する。この実施形態においては、堤体1は、改良後の断面形状(面積)が、打設された混合体相当分、改良前の断面形状(面積)よりも大きくなる。
【0029】
なお、上述したように、堤体1の、例えば外側の法面を第1改良土3に造成する施工方法を説明したが、これらの施工方法に限定されることなく、様々な施工方法を採用してもよい。
【0030】
ところで、上述した実施形態では、堤体1の外側の法面を第1改良土3にて造成して、堤体1の内側の法面を第2改良土4にて造成しているが、堤体1の外側の法面を第1改良土3により造成し、その内側の法面も第1改良土3により造成してもよい。この実施形態の場合には、外側の法面に造成された第1改良土3におけるベントナイトの単位体積当たりの重量が、内側の法面に造成された第1改良土3におけるベントナイトの単位体積当たりの重量よりも大きくなるように設定する。その結果、遮水性が堤体1の内側の法面よりも外側の法面のほうが高くなる。言い換えれば、堤体1の外側の法面から堤体1内への浸水は許容せず、堤体1の内側の法面から外部への排水が多少許容されることになる。
【0031】
このように、堤体1の外側の法面から堤体1内への水の浸入を抑制すると共に内側の法面から堤体1内への排水を多少許容することで、堤体1内に大量の水が貯溜することによる堤体1内の水位上昇を最大限抑制することができる。その結果、堤体1を構成する土粒子が水で飽和されることが抑制され、土粒子間のせん断摩擦抵抗力が維持され、法面崩壊を抑制することができる。しかも、第1改良土3には、スラグ及び短繊維材を含むので、堤体1全体の強度、靭性を向上させることができる。その結果、堤体1を十分に補強でき、その安定化に繋がり、ひいては、台風・集中豪雨による洪水や地震時の津波等の有事の際の破堤を抑制することができる。
【0032】
上述した実施形態では、第1及び第2改良土3、4として混合される短繊維材は、麻やワラ等の天然材が採用されているので、堤体1の法面が第1改良土3または第2改良土4にて造成されても、周辺の河川、湖沼や海等にマイクロプラスチック問題を生じさせる虞がない。
【0033】
なお、本実施形態では、第1改良土3には、遮水材としてベントナイトが採用されているが、遮水材としては、粒径が細かく透水係数が小さい方が好ましいため、港湾や河川の浚渫粘性土やフライアッシュ(石炭灰)を採用しても良いし、これら浚渫粘性土やフライアッシュ(石炭灰)にベントナイトを含んだものを採用してもよい。
【0034】
また、本実施形態では、堤体1の法面が第1改良土3や第2改良土4により造成されているが、堤体1の天端面も、第1改良土3(ベントナイトを含む)により造成してもよい。要するに、堤体1の表面全域を第1改良土3や第2改良土4により造成してもよい。
【0035】
さらに、本実施形態では、特に、第1改良土3を、土砂、短繊維材、遮水材としてベントナイト、スラグ及び水を混合して構成し、一方、第2改良土4を、土砂、短繊維材、スラグ及び水を混合して構成しているが、第1及び第2改良土3、4を、土砂、スラグ及び水だけを混合して構成してもよい。また、第1及び第2改良土3、4を、土砂、スラグ、ベントナイト及び水を混合して構成してもよく、土砂、スラグ、短繊維材及び水を混合して構成してもよい。さらに、第1及び第2改良土3、4を、高含水比の浚渫土にスラグ、短繊維材を混合して、さらに、遮水材及び吸水性材料として、ベントナイトやPS灰系改質材、石炭灰等を混合して構成してもよい。スラグによる固化性能が不足する場合には、別途、固化材(セメント系、または非セメント系)を混合してもよい。なお、第2改良土4は、堤体1内の水が内側の法面から容易に排出できるように遮水材を除き、または遮水材の混合比を小さくした構成を採用すればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 堤体(既設堤体),3 第1改良土,4 第2改良土