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特開2022-167502分散電源の制御装置、制御プログラム、及び分散電源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167502
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】分散電源の制御装置、制御プログラム、及び分散電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20221027BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20221027BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/16
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073327
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】神通川 亨
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA04
5G066DA06
5G066FA01
5G066FB15
5G066HA15
5G066HA19
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】連系点電圧に応じて力率指令値が連続的に変化する電圧-力率指令値特性カーブに基づいて分散電源を制御することにより、電力系統との連系点の電圧を迅速に適正範囲に維持可能とした分散電源の制御装置、制御プログラム、及び分散電源システムを提供する。
【解決手段】電力系統21に連系された分散電源30から電力系統21に無効電力を供給する制御装置50であって、分散電源30の力率を調整して無効電力を制御するようにした制御装置において、分散電源30の出力電圧相当値(連系点電圧)に応じて力率指令値を連続的に変化させた電圧-力率指令値特性カーブ52を備え、出力電圧相当値に応じて電圧-力率指令値特性カーブ52から求めた力率指令値に従って分散電源30の発電部32を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に連系された分散電源により前記電力系統に無効電力を供給するための制御装置であって、前記分散電源の力率を調整して前記無効電力を制御する制御装置において、
前記分散電源の出力電圧相当値に応じて力率指令値を連続的に変化させた電圧-力率指令値特性カーブを備え、前記出力電圧相当値に応じて前記電圧-力率指令値特性カーブから求めた力率指令値に従って前記分散電源を制御することを特徴とした分散電源の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した分散電源の制御装置において、
前記電圧-力率指令値特性カーブは、
前記出力電圧相当値の所定範囲内において、前記出力電圧相当値が高くなるほど力率指令値が遅れ側に連続的に変化する特性を有することを特徴とした分散電源の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した分散電源の制御装置において、
前記電圧-力率指令値特性カーブから求めた力率指令値と前記分散電源の有効電力計測値とを用いて無効電力指令値を演算する手段と、
前記無効電力指令値と前記分散電源の無効電力計測値とを用いて前記分散電源を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする分散電源の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した分散電源の制御装置において、
前記力率指令値と前記分散電源の皮相電力最大値とを乗算して第1の有効電力制限値を求め、前記分散電源の有効電力計測値及び前記第1の有効電力制限値のうち低い値を有効電力指令値として選択する手段と、
前記分散電源の無効電力指令値、前記有効電力指令値、前記有効電力計測値及び無効電力計測値を用いて前記分散電源を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする分散電源の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載した分散電源の制御装置において、
前記第1の有効電力制限値と、前記分散電源が出力可能な有効電力最大値により制限される第2の有効電力制限値及び/または前記有効電力計測値と、のうち最も低い値を前記有効電力指令値として選択する手段を備えたことを特徴とする分散電源の制御装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載した分散電源の制御装置において、
前記出力電圧相当値に平均化処理を行った結果を前記電圧-力率指令値特性カーブに与えて力率指令値を求めることを特徴とする分散電源の制御装置。
【請求項7】
電力系統に連系された分散電源の力率を調整して前記分散電源が前記電力系統に供給する無効電力を制御するための制御プログラムであって、
前記分散電源の出力電圧相当値に応じて連続的に変化する力率指令値を生成する機能と、
前記力率指令値と前記分散電源の有効電力計測値または有効電力指令値とを用いて前記分散電源の無効電力指令値を生成する機能と、
前記無効電力指令値と前記分散電源の無効電力計測値とを用いて前記分散電源が前記電力系統に供給する無効電力を制御する機能と、
を演算処理装置に実現させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
電力系統に複数台の分散電源が接続された分散電源システムにおいて、
請求項3~5の何れか1項に記載された分散電源の制御装置を用いて、前記複数台の分散電源を一括して制御するように構成され、
前記制御装置は、前記無効電力指令値を前記複数台の分散電源に分配する手段を備えたことを特徴とする分散電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散電源から電力系統に供給する無効電力を制御して系統電圧を適正範囲に維持するための制御装置、制御プログラム、及び分散電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システム等の分散電源の導入に伴い、有効電力出力の変動に起因する系統電圧の変動や適正範囲からの逸脱(電圧上限逸脱、電圧下限逸脱)等が発生している。
これらの問題を解決する対策の一つとして、従来より、SVC(静止型無効電力補償装置)を導入して電力系統に無効電力を供給することにより、系統電圧を適正範囲に制御する方法が知られている。
【0003】
SVCの制御方式には電圧制御、電圧変動抑制制御等があり、何れもSVCの連系点電圧を計測し、その電圧に応じて無効電力を出力する。
例えば、電圧制御では、連系点電圧が電圧指令値またはその近傍値と一致するようにSVCが無効電力を出力する。電圧制御の応用としては、電圧上下限逸脱防止のために、電圧がある閾値を超過した場合に無効電力を出力する方式もある。また、電圧変動抑制制御では、連系点電圧から抽出した電圧変動成分に応じてこれを抑制するようにSVCが無効電力を出力する。
このように、SVCの設置は系統電圧の変動や適正範囲逸脱の対策として効果的であるが、送配電事業者や再生エネルギー発電事業者にとって、SVCを新たに導入することは設備費用が嵩むという問題がある。
【0004】
SVCを設置する以外の電圧変動対策としては、分散電源が力率一定制御を行うことが考えられる。力率一定制御では、力率指令値に基づき、分散電源の有効電力出力に対して一定割合の無効電力を出力する。これにより、分散電源の有効電力出力の変動に起因する電圧変動を抑制する効果を期待できるが、電圧に応じた制御ではないため、連系点電圧を適正範囲に維持できるとは限らない。
【0005】
力率一定制御に関連したその他の方式として、Watt-power factor mode(IEC/TR 61850-90-7)というものがある。この方式は力率指令値を固定するのではなく、分散電源の有効電力出力に応じた力率指令値特性カーブを定義し、この特性カーブに基づいて、有効電力出力に応じた無効電力を分散電源に出力させるものである。
この方式は、連系系統の特性に応じた力率指令値特性カーブを予め設定しておくことにより、連系点電圧を、力率一定制御よりも適正範囲に維持する効果を期待できる。しかし、電圧に応じた制御ではない点で力率一定制御と変わらないため、必ずしも連系点電圧を適正範囲に維持できるとは限らない。
【0006】
また、SVCの電圧制御に近い方式として、Volt-var mode(IEC/TR 61850-90-7)というものがある。これは分散電源の連系点電圧に応じた無効電力出力特性カーブを定義し、連系点電圧に応じて前記特性カーブに基づき無効電力を出力するものである。この方式は、連系点電圧に応じた制御であるため、連系点電圧を適正範囲に維持する効果が期待できる。
【0007】
しかし、例えば連系点電圧が下がっている場合、分散電源の有効電力出力がほぼゼロであっても無効電力を出力する等、分散電源自身に起因しない電圧変動要因に対しても補償を行うことから、本方式を実装している分散電源と実装していない分散電源との間で負担の軽重による不公平が生じる。更に、有効電力出力よりも無効電力出力を優先するように設定した場合、他の分散電源に起因する電圧変動に対して自ら無効電力を出力した結果、本来売電できるはずの有効電力が制限され、売電機会の損失が生じる可能性もある。
【0008】
なお、連系点電圧を適正範囲に維持する他の方法として、分散電源を構成するパワーコンディショナーの力率を連系点電圧に応じて制御する従来技術が、特許文献1に記載されている。
この従来技術は、前記パワーコンディショナーに対して、通信回線を経由して力率制御指令を出力する遠隔力率指令部を備え、系統電圧(連系点電圧)の測定値が不感帯の範囲内にある場合にも力率100%を目標値とし、最適化制御を行って連系点電圧を適正範囲に維持することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-171189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された従来技術では、連系点電圧に応じてパワーコンディショナーの力率を徐々に変えていくため、例えばSVR(自動電圧調整器)のタップ切換等により連系点電圧が大きく急変した場合には、同文献の段落[0050],[0051]に指摘されているように適正な力率に収束するまでに時間がかかり、その結果、連系点電圧が適正範囲を逸脱するおそれがある。
【0011】
そこで、本発明の解決課題は、連系点電圧に応じた電圧-力率指令値特性カーブを定義し、連系点電圧が急変した場合でも上記特性カーブに従って分散電源の力率を所定値に調整することにより、連系点電圧を適正範囲に維持可能とした分散電源の制御装置、制御プログラム、及び分散電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る分散電源の制御装置は、
電力系統に連系された分散電源により前記電力系統に無効電力を供給するための制御装置であって、前記分散電源の力率を調整して前記無効電力を制御する制御装置において、
前記分散電源の出力電圧相当値に応じて力率指令値を連続的に変化させた電圧-力率指令値特性カーブを備え、前記出力電圧相当値に応じて前記電圧-力率指令値特性カーブから求めた力率指令値に従って前記分散電源を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る分散電源の制御装置は、請求項1に記載した分散電源の制御装置において、
前記電圧-力率指令値特性カーブは、前記出力電圧相当値の所定範囲内において、前記出力電圧相当値が高くなるほど力率指令値が遅れ側に連続的に変化する特性を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る分散電源の制御装置は、請求項1または2に記載した分散電源の制御装置において、
前記電圧-力率指令値特性カーブから求めた力率指令値と前記分散電源の有効電力計測値とを用いて無効電力指令値を演算する手段と、
前記無効電力指令値と前記分散電源の無効電力計測値とを用いて前記分散電源を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る分散電源の制御装置は、請求項3に記載した分散電源の制御装置において、
前記力率指令値と前記分散電源の皮相電力最大値とを乗算して第1の有効電力制限値を求め、前記分散電源の有効電力計測値及び前記第1の有効電力制限値のうち低い値を有効電力指令値として選択する手段と、
前記分散電源の無効電力指令値、前記有効電力指令値、前記有効電力計測値及び無効電力計測値を用いて前記分散電源を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る分散電源の制御装置は、請求項4に記載した分散電源の制御装置において、
前記第1の有効電力制限値と、前記分散電源が出力可能な有効電力最大値により制限される第2の有効電力制限値及び/または前記有効電力計測値と、のうち最も低い値を前記有効電力指令値として選択する手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る分散電源の制御装置は、請求項1~5の何れか1項に記載した分散電源の制御装置において、
前記出力電圧相当値に平均化処理を行った結果を前記電圧-力率指令値特性カーブに与えて力率指令値を求めることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る制御プログラムは、電力系統に連系された分散電源の力率を調整して前記分散電源が前記電力系統に供給する無効電力を制御するための制御プログラムであって、
前記分散電源の出力電圧相当値に応じて連続的に変化する力率指令値を生成する機能と、
前記力率指令値と前記分散電源の有効電力計測値または有効電力指令値とを用いて前記分散電源の無効電力指令値を生成する機能と、
前記無効電力指令値と前記分散電源の無効電力計測値とを用いて前記分散電源が前記電力系統に供給する無効電力を制御する機能と、
を演算処理装置に実現させることを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る分散電源システムは、電力系統に複数台の分散電源が接続された分散電源システムにおいて、
請求項3~5の何れか1項に記載された分散電源の制御装置を用いて、前記複数台の分散電源を一括して制御するように構成され、
前記制御装置は、前記無効電力指令値を前記複数台の分散電源に分配する手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電圧-力率指令値特性カーブに基づき、分散電源の出力電圧相当値、例えば連系点電圧に応じた力率指令値に従って分散電源の力率を調整することにより、電力系統に供給する無効電力を連続的に制御して連系点電圧を速やかに変化させ、適正範囲に維持することができる。
また、分散電源自身に起因しない電圧変動要因に対してまで過度に補償を行う恐れがないので、他の分散電源等に起因する電圧変動発生時に無効電力を出力することで本来売電できるはずの有効電力が制限されて売電機会を逸失する、という心配もない。このため、経済的な利益を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態を含む電力系統の全体構成図である。
図2】本発明の第1実施例に係る制御装置の主要部を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態における電圧-力率指令値特性カーブの設定例を示す図である。
図4図2における分散電源制御系及び発電部等の主要部の構成図である。
図5】本発明の第2実施例及び第3実施例に係る制御装置の主要部を示すブロック図である。
図6】本発明の第4実施例に係る制御装置により、無効電力指令値を複数台の分散電源に分配する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態を含む電力系統の全体構成図である。図1において、例えば三相の交流電源20に接続された電力系統21には、変圧器40を介して分散電源30が接続されている。また、22は抵抗及びインダクタンスからなる系統インピーダンス、41は電力系統21との連系点、33は分散電源接続点を示す。
【0023】
分散電源30は、太陽電池パネル等の直流電力源31と、電力変換器の動作により直流/交流変換を行うパワーコンディショナシステム(PCS)等の発電部32と、発電部32を制御する制御装置50と、を備えている。
制御装置50は、連系点41の電圧V及び電流I等に基づいて発電部32内の電力変換器を制御する。ここで、連系点41の電圧V及び電流Iに代えて分散電源接続点33の電圧及び電流を制御装置50に入力して制御に用いても良い。すなわち、請求項における「分散電源の出力電圧相当値」は、上述した連系点41の電圧や分散電源接続点33の電圧を含む概念である。
【0024】
図示されていないが、分散電源としては、直流電力または機械的動力を交流電力(有効電力及び無効電力)に変換して出力する機能を備えていれば良い。このため、太陽光以外に風力等の再生可能エネルギーを利用して発生させた直流電力、または蓄電池や燃料電池等の直流電力を交流電力に変換する装置でも良いし、火力や水力を利用して発生させた機械的動力を交流電力に変換する同期発電機や誘導発電機等であっても良い。
【0025】
次に、制御装置50の構成及び機能について説明する。
本実施形態における制御装置50の構成及び機能は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む演算処理装置のハードウェア及びソフトフェア(プログラム)によって実現される。
【0026】
図2は、制御装置50の第1実施例の主要部を示すブロック図である。ここでは、第1実施例による無効電力の制御を、電圧-可変力率制御と呼ぶことにする。
図2において、連系点電圧(計測値)Vは平均化処理手段としての一次遅れフィルタ(ローパスフィルタ)51に入力されて急峻な変動成分が除去された後、電圧・力率指令値特性カーブ52に与えられる。なお、一次遅れフィルタ51の構成は特に限定されない。また、平均化処理手段としては、一次遅れフィルタ51だけでなく移動平均処理を行う手段であっても良い。このことは、後述する他の実施例についても同様である。
【0027】
電圧-力率指令値特性カーブ52は、例えば図3(a),(b)に示すように、連系点電圧Vに応じて変化する分散電源30の力率指令値PFrefを設定したものであり、連系点電圧Vと力率指令値PFrefとの関係は、数式またはテーブルとしてメモリに格納されている。
【0028】
図3(a)は、連系点電圧Vが系統電圧の基準値V(例えば、実効値100[V]の低圧配電系統では、101[V]等)以下の範囲では力率指令値PFrefを1.0(100%)とし、連系点電圧Vが基準値Vより高い範囲では力率指令値PFrefを一定の傾きで「遅れ」側へ連続的に変化させる特性である。
また、図3(b)は、基準値Vを中心として連系点電圧Vが高いほど力率指令値PFrefを「遅れ」側へ、連系点電圧Vが低いほど「進み」側へ、連続的に変化させる特性である。
何れにしても、電圧-力率指令値特性カーブ52は、連系点電圧Vの所定範囲内において、連系点電圧Vが高くなるほど力率指令値が「遅れ」側へ連続的に変化する特性を有していれば良い。
図3(a),(b)から分かるように、連系点電圧がVm1である時の力率指令値PFref1は連系点電圧がVm2(Vm1<Vm2)である時の力率指令値PFref2よりも高くなり、1.0(100%)に近付いていく。
【0029】
ここで、図3(a),(b)における力率指令値PFrefの「遅れ」とは、分散電源30を遅れ力率により運転して電力系統21に遅れ無効電力(誘導性の無効電力)を供給することであり、力率指令値PFrefの「進み」とは、分散電源30を進み力率により運転して電力系統21に進み無効電力(容量性の無効電力)を供給することである。
一般的に、電力系統の電圧を適正範囲に維持するためには、分散電源を原則的に0.85(85%)以上の遅れ力率で運転することが求められている。
【0030】
図2に戻って、電圧-力率指令値特性カーブ52から求めた力率指令値PFrefは、無効電力指令値演算部53に入力されている。また、図1に示した連系点41の電圧V及び電流Iから求めた有効電力計測値Pも、無効電力指令値演算部53に入力されている。
【0031】
無効電力指令値演算部53では、力率指令値PFrefに基づき、有効電力計測値Pに対して一定割合の無効電力を出力するように、数式1に基づいて無効電力指令値Qrefを算出する。
[数式1]
ref=P√{(1-PFref )/PFref }
【0032】
上記の無効電力指令値Qrefは、無効電力計測値Qと共に分散電源制御系54に入力される。なお、無効電力計測値Qは、有効電力計測値Pと同様に連系点41の電圧V及び電流Iから算出可能である。
分散電源制御系54は、無効電力計測値Qが無効電力指令値Qrefに一致するように、図1における発電部32内の電力変換器を運転して電力系統21に出力する無効電力(無効電流)を調整し、これによって連系点41の電圧を制御する。
【0033】
図2において、有効電力計測値、無効電力計測値、無効電力指令値の代わりに、有効電流計測値、無効電流計測値、無効電流指令値を用いても良い。
更に、平均化処理手段としての一次遅れフィルタ51は必須の構成ではないが、入力電圧から瞬時の変動成分を除去することにより、分散電源が過敏に反応して不安定になるのを回避することができる。
【0034】
次に、図4は、分散電源制御系54及び発電部32の主要部の構成を示している。
図4において、発電部32は、PWM(パルス幅変調)制御により直流電力源31の直流電力を交流電力に変換するインバータ部32aを備えている。
【0035】
分散電源制御系54内の制御指令演算部54aは、前述した無効電力指令値Qref及び無効電力計測値Qと、センサ34,35により検出した入出力電圧V,V及び電流I,I等に基づいて、インバータ部32aに対する制御指令(電圧指令)を生成する。
PWM回路54bは、制御指令演算部54aからの制御指令とキャリアとを比較してPWMパルスを生成し、このPWMパルスに基づく駆動信号によりインバータ部32aの半導体スイッチング素子をオン・オフ制御して無効電力指令値Qref通りの無効電力をPCS接続端33から電力系統21に出力する。また、必要に応じて有効電力の制御も行う。
【0036】
以上のように、本発明の第1実施例によれば、連系点電圧Vが高い場合には、分散電源30の有効電力に応じて、より誘導性の無効電力を出力し、連系点電圧Vが低い場合には、分散電源30の有効電力に応じて(連系点電圧Vが高い時よりも)誘導性の無効電力を減らすか、あるいは容量性の無効電力を出力することにより、連系点電圧Vを適正範囲に維持することが可能になる。
【0037】
更に、分散電源30の有効電力に応じて無効電力を出力するので、分散電源自身の有効電力出力の変動に起因する電圧変動を抑制することができる。また、連系点電圧Vが低下していても分散電源30の有効電力出力がほぼゼロであれば無効電力を出力しないため、分散電源自身に起因しない連系点電圧の変動要因に対してまで過度に補償を行うことはなく、同様に、電力系統21に連系している他の分散電源等に起因する電圧変動に対して無効電力を出力した結果、本来売電できるはずの有効電力が制限されて売電機会を逸失する恐れもない。
【0038】
次いで、制御装置50の第2実施例、第3実施例による無効電力の制御を、図5を参照しつつ説明する。
まず、第2実施例は、第1実施例による電圧-可変力率制御と、発電部32のVA制限制御とを組み合わせたものであり、VA制限制御とは、発電部32から出力される皮相電力最大値VAmax(VA制約)を超えないように発電部32の有効電力及び無効電力を制御する方法である。
【0039】
具体的には、図5に示す有効電力VA制限値演算部55により、電圧-力率指令値特性カーブ52から求めた力率指令値PFrefとVA最大値VAmaxとを乗算し、VA制約と力率指令値PFrefとから採り得る最大の有効電力値としての有効電力VA制限値を求める。この有効電力VA制限値は、請求項における第1の有効電力制限値に相当する。
この第1の有効電力制限値としての有効電力VA制限値と有効電力計測値Pとを低値優先部57により比較して低い方の値を選択し(図1の直流電力源31として蓄電池を用いる場合のように、正負両方向の有効電力が得られる時は、絶対値で低い方の値を選択し)、これを有効電力指令値Prefとして出力する。
【0040】
無効電力指令演算部53Aでは、力率指令値PFrefと有効電力指令値Prefとを用いて、数式2により無効電力指令値Qrefを演算する。
[数式2]
ref=Pref√{(1-PFref )/PFref }
この無効電力指令値Qref、無効電力計測値Q、有効電力指令値Pref、及び有効電力計測値Pを分散電源制御系54Aに入力し、発電部32の有効電力制御、無効電力・電流制御、PWM制御等を行えば、発電部32のVAmaxを超えない範囲で所望の力率により連系点41の有効電力及び無効電力を制御することができる。
【0041】
次に、第3実施例は、前述した第1,第2実施例に加えて、発電部32の有効電力制限制御を組み合わせたものであり、この有効電力制限制御は、発電部32から出力される有効電力を必要に応じて制限する制御方法である。本実施例における有効電力制限値は、請求項における第2の有効電力制限値に相当する。
【0042】
すなわち、図5における有効電力制限制御部56は、後述するように必要に応じて設定した有効電力制限値(第2の有効電力制限値)を出力する。低値優先部57では、この第2の有効電力制限値と、前述した第1の有効電力制限値である有効電力VA制限値及び/または有効電力計測値Pのうち最も小さい値(第2の有効電力制限値と有効電力VA制限値、第2の有効電力制限値と有効電力計測値P、第2の有効電力制限値と有効電力VA制限値と有効電力計測値P、の三つの組み合わせについて、それぞれ最も小さい値)を選択し、選択した値を有効電力指令値Prefとして出力する。前記同様に、直流電力源31として蓄電池を用いる場合のように、正負両方向の有効電力が得られる時は、絶対値で低い方の値を選択し、有効電力指令値Prefとして出力する。
【0043】
ここで、有効電力制限制御部56は、必要に応じて様々な構成・機能を有する。
例えば、分散電源30が無効電力を出力してもなお連系点電圧Vが高い時に有効電力出力を低下させたい場合は、連系点電圧Vを有効電力制限制御部56に入力して連系点電圧Vが所定の連系点電圧閾値を超過した場合に有効電力制限値を所望の値に低下させるように構成しても良い。
また、余剰電力や送電線容量等が問題になって分散電源30の有効電力出力を低下させたい場合には、外部から有効電力制限制御部56に入力された出力制限指令に基づいて有効電力制限値を所望の値に低下させるように構成しても良い。
【0044】
次いで、電力系統21に連系された複数台の分散電源からなる分散電源システムに関する本発明の第4実施例を説明する。
図示されていないが、電力系統21に複数台の分散電源が連系されている場合には、各分散電源に前述した第1~第3実施例に係る制御装置50を実装しても良い。
或いは、複数台の分散電源を一括して制御する構成とし、無効電力指令値Qrefを各分散電源に分配しても良い。その場合の分配方法としては、例えば以下のような方法が考えられる。
【0045】
(1)無効電力指令値Qrefを分散電源の台数Nにより除算した値Qref n(n=1~N)を、各分散電源に対する無効電力指令値として分配する。この時の各分散電源に対する無効電力指令値を数式3に示す。
[数式3]
ref n=Qref/N
【0046】
(2)無効電力指令値Qrefを、各分散電源の有効電力出力Pに応じて分配する。この時の各分散電源に対する無効電力指令値を数式4に示す。
[数式4]
ref n=Qref×(P/ΣP
【0047】
(3)無効電力指令値Qrefを、各分散電源の無効電力出力余力Qmargin nに応じて分配する。この時の各分散電源に対する無効電力指令値を数式5に示す。
ここで、無効電力出力余力Qmargin nとは、無効電力指令値Qrefに対して、n番目の分散電源が出力可能な無効電力Qref nが大きいか(余力があるか)小さいか(余力がない)を判断する指標である。
[数式5]
ref n=Qref×(Qmargin n/ΣQmargin n
例えば、無効電力指令値Qrefが“100”であり、3台(N=3)の分散電源の無効電力出力余力Qmargin 1,Qmargin 2,Qmargin 3がそれぞれ“85”,“45”,“70”である場合には、Qref 1に85×(100/200)=42.5を、Qref 2に22.5を、Qref 3に35.0をそれぞれ分配する。
【0048】
更に他の分配方法として、次の方法がある。
(4)無効電力指令値Qrefを、各分散電源の無効電力出力の優先順位と前述した無効電力出力余力Qmargin nとに応じて分配する。この分配方法による手順を図6に示す。
図6において、まず、N台の分散電源のうちの1台を無効電力出力の優先順位1番として(n=1)、無効電力指令値演算部により算出された無効電力指令値Qrefを初期値としてセットする(ステップS1)。
【0049】
次に、その優先順位1番目の分散電源について、無効電力出力余力Qmargi1が無効電力指令値(初期値)のQref以下であるか否かを判断し、かつ、n<Nであることを確認する(ステップS2)。なお、無効電力出力余力Qmargi1が初期値のQrefを超えている場合(ステップS2 No)には、Qref n=Qref、つまり1番目の分散電源のみによって無効電力指令値Qrefに相当する無効電力を出力可能であるため、処理を終了する(ステップS6)。
【0050】
優先順位1番目の分散電源の無効電力出力余力Qmargi1が初期値Qref以下であり、かつ、n<Nである場合(ステップS2 Yes)には、1番目の分散電源に対する無効電力指令値Qref 1=Qmargi1として当該分散電源の余力を最大限使用することとし(ステップS3)、次に、初期値QrefからQref 1を差し引いた値を新たな無効電力指令値Qrefとしてセットする(ステップS4)。
次いで、優先順位をインクリメントし(ステップS5)、以後は、ステップS2以降の処理をn=Nとなるまで繰り返し実行する。
【0051】
上記のように、第4実施例によれば、無効電力指令値Qrefを種々の方法によって各分散電源に分配することにより、複数台の分散電源を一括して制御することが可能である。
【0052】
なお、本発明において、制御装置50による電圧-可変力率制御や分散電源制御機能の一部または全部を遠隔のサーバー等に実装し、分散電源30内の発電部32との間で通信を介して計測や制御を行っても良い。
また、電圧-力率指令値特性カーブを、直接または通信を介した遠隔制御により手動または自動的に変更しても良く、予め決定したスケジュールに基づき、あるいは特定のトリガー入力によって変更しても良い。
【符号の説明】
【0053】
20:交流電源
21:電力系統
22:系統インピーダンス
30:分散電源
31:直流電力源
32:発電部(PCS)
32a:インバータ部
33:PCS接続端
34,35:センサ
40:変圧器
41:連系点
50:制御装置
51:一次遅れフィルタ
52:電圧-力率指令値特性カーブ
53,53A:無効電力指令値演算部
54,54A:分散電源制御系
54a:制御指令演算部
54b:PWM回路
55:有効電力VA制限値演算部
56:有効電力制限制御部
57:低値優先部
図1
図2
図3
図4
図5
図6