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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016751
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】モバイルパーティション
(51)【国際特許分類】
   A47G 5/00 20060101AFI20220118BHJP
   A47B 13/00 20060101ALI20220118BHJP
   A47B 96/04 20060101ALI20220118BHJP
   A47B 17/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A47G5/00 A
A47B13/00 Z
A47B96/04 Z
A47B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119661
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】591145335
【氏名又は名称】パナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正樹
【テーマコード(参考)】
3B053
【Fターム(参考)】
3B053NQ02
3B053NQ09
3B053SE10
(57)【要約】
【課題】自立保持性が良好で、切込み部が折り曲げやすく、良好な繰り返し屈曲強度を有する実用的なモバイルパーティションを提供する。
【解決手段】矩形板状体が縦方向に伸びる1以上の切込み部を有し、該切込み部を折り曲げることで少なくとも2つの壁部が形成され、当該壁部によって自立するモバイルパーティションであって、矩形板状体の厚さ(T)が2~8mmであり、前記切込み部の切込み深さ(D)と前記矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)が0.5~0.7であるモバイルパーティションである。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状体が縦方向に伸びる1以上の切込み部を有し、該切込み部を折り曲げることで少なくとも2つの壁部が形成され、当該壁部によって自立するモバイルパーティションであって、
矩形板状体の厚さ(T)が2~8mmであり、
前記切込み部の切込み深さ(D)と前記矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)が0.5~0.7であるモバイルパーティション。
【請求項2】
矩形板状体が縦方向に伸びる1以上の切込み部を有し、該切込み部を折り曲げることで少なくとも2つの壁部が形成され、当該壁部によって自立するモバイルパーティションであって、
矩形板状体の厚さ(T)が8~12mmであり、
前記切込み部の切込み深さ(D)と前記矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)が0.7~0.9であるモバイルパーティション。
【請求項3】
矩形板状体の少なくとも一部がプラスチック段ボールで構成されてなる請求項1又は2に記載のモバイルパーティション。
【請求項4】
少なくとも1つの前記壁部が透明シート部を備える請求項1~3のいずれか1項に記載のモバイルパーティション。
【請求項5】
前記壁部の数が3つである請求項1~4のいずれか1項に記載のモバイルパーティション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイルパーティションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内空間あるいは机上の空間を仕切って外部と隔絶するパーティション(衝立)が用いられている。なかでも、机上に置かれて自立する折り畳み可能なパーティションとして、2つ以上の壁部が折り畳み可能に連結されており、例えば机上において壁部を互いに広げて自立させることによって、外部から隔絶させた作業空間を形成することができる。このような外部から隔絶した空間は、集中して効率良く作業を行うために有用である。
【0003】
例えば、特許文献1では、段ボール製の板状体に、縦目方向に屈折部を設けて複数の遮蔽板部に区画し、使用時には、屈折部から遮蔽板部を所望の角度に設定して自立できるようにし、不使用時には、屈折部から遮蔽板部を折り畳みできるようにした机上用衝立が提案されている。
また、特許文献2では、机上での勉強や読書等に用いる机上用衝立において、略横長短形の基板に、縦方向に屈折部を設けて複数の遮蔽板部に区画し、基板の一端側に複数の脚部を突設した机上用衝立が提案されている。
さらに、特許文献3では、机上での勉強や読書等に用いる机上用衝立において、略横長短形の基板を、縦方向に屈折部を設けて複数の遮蔽板部に区画して成り、遮蔽板部をそれぞれ略同じ大きさに形成すると共に、遮蔽板部の角部を全て略円弧状に形成した机上用衝立が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-27145号公報
【特許文献2】実開昭63-33860号公報
【特許文献3】実開昭63-33863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3は、自立保持性は良好ではあるが、屈折部が折り曲げにくかったり、繰り返し屈曲強度が低かったりして、実用性や耐久性に劣ってしまうことがあった。
【0006】
以上から、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、自立保持性が良好で、切込み部が折り曲げやすく、良好な繰り返し屈曲強度を有する実用的なモバイルパーティションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下記本発明により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1] 矩形板状体が縦方向に伸びる1以上の切込み部を有し、該切込み部を折り曲げることで少なくとも2つの壁部が形成され、当該壁部によって自立するモバイルパーティションであって、矩形板状体の厚さ(T)が2~8mmであり、前記切込み部の切込み深さ(D)と前記矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)が0.5~0.7であるモバイルパーティション。
[2] 矩形板状体が縦方向に伸びる1以上の切込み部を有し、該切込み部を折り曲げることで少なくとも2つの壁部が形成され、当該壁部によって自立するモバイルパーティションであって、矩形板状体の厚さ(T)が8~12mmであり、前記切込み部の切込み深さ(D)と前記矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)が0.7~0.9であるモバイルパーティション。
[3] 矩形板状体の少なくとも一部がプラスチック段ボールで構成されてなる[1]又は[2]に記載のモバイルパーティション。
[4] 少なくとも1つの前記壁部が透明シート部を備える[1]~[3]のいずれかに記載のモバイルパーティション。
[5] 前記壁部の数が3つである[1]~[4]のいずれかに記載のモバイルパーティション。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自立保持性が良好で、切込み部が折り曲げやすく、良好な繰り返し屈曲強度を有する実用的なモバイルパーティションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】矩形板状体の一例を示す平面図である。
図2】矩形板状体をモバイルパーティションとした一例を示す斜視図である。
図3】矩形板状体の他の一例を示す平面図である。
図4】矩形板状体をモバイルパーティションとした他の一例を示す斜視図である。
図5】屈曲部の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のモバイルパーティションの一態様(本実施形態)について説明する。
本実施形態は、矩形板状体が縦方向に伸びる1以上の切込み部を有し、該切込み部を折り曲げることで少なくとも2つの壁部が形成され、当該壁部によって自立するモバイルパーティションである。
なお、本実施形態でいう「モバイルパーティション」とは、人が携帯して持ち運ぶことが可能で、例えば移動先で簡単に利用できるパーティションをいう。
以下、図面等も適宜参照して説明する。
【0012】
図1に例示する矩形板状体10には、その長手方向(横方向)に垂直な縦方向に3つの切込み部12A、12Bを有している。これらの切込み部が開くように折り曲げることで、図2に示すように3つの壁部14A、14B、14Cが形成されこれらの壁部によって自立する。なお、切込みにより残った個所が、折り曲げられる屈曲部となる
【0013】
良好な自立保持性の観点から、矩形板状体の厚み(壁部の厚み)は、2~12mmであることが好ましく、2~8mmあるいは8~10mmであることがより好ましい。
【0014】
矩形板状体に設けられる切込み深さはその厚みに応じて設定される。矩形板状体の厚みが2~8mmの場合、切込み深さ(D)と厚さ(T)との比(D/T)は0.5~0.7とする。D/Tが0.5未満では、折り曲げにくくなったり、いったん折り曲げた状態から開いてしまうことがある。0.7を超えると屈曲部の厚さが小さくなって折り曲げを繰り返していくうちに屈曲部に亀裂が入ったりして繰り返し屈曲強度が低下してしまうことがある。D/Tは、0.5~0.7であることが好ましく、0.6~0.7であることがより好ましい。
【0015】
また、矩形板状体の厚さ(T)が8~12mmである場合、切込み深さ(D)と矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)は0.7~0.9とする。D/Tが0.7未満では、折り曲げにくくなったり、いったん折り曲げた状態から開いてしまうことがある。0.9を超えると屈曲部の厚さが小さくなって折り曲げを繰り返していくうちに屈曲部に亀裂が入ったりして繰り返し屈曲強度が低下してしまうことがある。D/Tは、0.7~0.9であることが好ましく、0.8~0.9であることがより好ましい。
【0016】
このように本実施形態では、矩形板状体の厚さに応じてこの切込み部の切込み深さを調整し、切込み部が折り曲げやすく、良好な繰り返し屈曲強度を有する実用的なモバイルパーティションを実現している。また、かかる切込み部を起点にして折りたたむことでコンパクト化し、収納性を向上させることができる。
【0017】
切込み深さの調整しやすさや良好な繰り返し屈曲強度を得る観点から、矩形板状体の少なくとも一部はプラスチック段ボールで構成されてなることが好ましい。
【0018】
プラスチック段ボール(以下、「プラダン」ということがある)はポリプロピレンを原料として一体押出成形により製造される、目方向断面がハーモニカ状の中空構造を有する板状体である。プラダンは目のつまった状態のプラスチックシートに比べ軽量で、適度に強度を保つことができ、またヒンジ特性があって繰り返しの折り曲げに強い。また加工性がよいので、カッターナイフで容易に切断したり、切込み部を設けたりといった加工をすることができる。
【0019】
ここで、目方向とは中空構造が流れている方向のことをいい、この目方向に対しては折れやすく、目方向に垂直な方向(ハーモニカの断面方向)には折れにくくなる。したがって、プラダンに切込み部を設ける場合は目方向に垂直な方向に設けることが好ましい。
【0020】
本実施形態では、少なくとも1つの壁部に透明シート部を備える構成としてもよい。透明シート部を設けることで、光が入りやすくなりモバイルパーティションの内側が明るくなる。
【0021】
一般的なパーティションは特許文献1~3のように壁部が不透明となっている。これは、不透明であることでパーティションにより形成される作業空間が閉鎖的となり、集中して作業を行うには都合がいいためである。
【0022】
しかし、学習現場、営業活動、社内外の会議等では対面でのコミュニケーションが必要となる。壁部が不透明では良好なコミュニケーションを阻害してしまう。このような場合、既述のような透明部があると、対面者の様子や対面者から提示された資料を確認できるため、対面者とのコミュニケーションが図りやすくなる。昨今では飛沫飛散防止が求められているが、透明部を有する壁部があれば飛沫飛散の懸念を気にしないで良好なコミュニケーションを図ることができる。
このような点から、少なくとも1つの壁部に透明シート部を備えることが好ましい。この場合、プラダンがモバイルパーテーションの枠を構成していることが好ましい。
【0023】
透明シート部は、光の取り入れ性や良好なコミュニケーションの観点から、壁部の中央部に設けられていることが好ましい。1つの壁部に設けられる透明シート部の面積(S)と当該壁部の面積(S)との面積比率(S/S)は、0.5~0.9であることが好ましく、0.7~0.85であることが好ましい。
【0024】
透明シート部の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、JIS K7375 2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定することができる。
【0025】
透明シート部を構成する透明シートは、透明なプラスチックシートを使用することができるが、透明性、及び飛沫や汚れをアルコール等で拭き取る拭き取り性の観点から例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)シート等のポリエステルシートが好ましい。透明シートの厚さは、例えば、0.100~0.188mmとすることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態においては、壁部の数は特に限定されず2以上であればよいが、安定性やスペースの有効利用を考慮すると壁部の数が3つであることが好ましい。この場合も少なくとも1つの壁部に透明シート部を設けてもよく、3つすべてに設けてもよい。さらに、それぞれの壁部が同じ色に着色されていたり、異なる色で着色されていたりしていてもよい。
【0027】
以下に、本実施形態のより好ましい形態について説明する。
図3に示すように、矩形板状体30は、縦方向に伸びる2つの切込み部32A、32Bを有し、これらの切込み部を折り曲げることで、図4に示すように3つの壁部42A、42B、42Cが形成され、これらの壁部によって自立する。
【0028】
矩形板状体30は、中央部が切り抜かれ、その切り抜かれた部分を覆うようにして透明シートが貼り合わされて透明部34A、34B、34Cが形成されている。
【0029】
机上での使用性と持ち運びやすさといった実用性を考慮すると、壁部42Aの幅となる36Aの長さは300~550mmであることが好ましく、壁部42Bの幅となる36Bの長さは500~900mmであることが好ましく、壁部42Cの幅となる36Cの長さは300~550mmであることが好ましい。また、壁部42A、42B、42Cの高さとなる39の長さはそれぞれ独立に300~700mmであることが好ましい。
【0030】
本実施形態のモバイルパーテーションにおいて、中央にある壁部42Bの幅をその両側にある壁部42A及び壁部42Cのそれぞれよりも大きくすることが好ましい。これにより、中央の壁部に向かって両側の壁部を容易に折りたたむことが可能となり、収納性をより向上させることができる。このような観点から、壁部42Bの幅と壁部42Aの幅との差は200~350mmであることが好ましく、壁部42Bの幅と壁部42Cの幅との差は200~350mmであることが好ましい。
【0031】
矩形板状体30に設けられた透明部により、良好な光の取り入れ性や良好なコミュニケーションが得られるが、当該効果をより良好に得る観点から、図3における透明部34Aの幅Wは240~490mmであることが好ましく、34Bの幅Wは440~840mmであることが好ましく、34Cの幅Wは240~490mmであることが好ましい。透明部34A、34B、34Cの長さ(自立した際は高さに相当)Hはそれぞれ独立に240~640mmであることが好ましい。
【0032】
なお、透明部34A、34B、34Cはそれぞれ独立に、種々の形状としてもよい。また同一種類の形状でもその位置やその寸法は異なるものとしてもよい。
【0033】
矩形板状体の角部39の形状は特に限定されず、丸みを帯びた形状、直角形状等の種々形状とすることができるが、矩形板状体30のように丸みを帯びた形状とすることが好ましい。かかる形状とするととで、使用上の安全性を確保することが可能で、かつモバイルパーティションの全体をソフトなイメージにすることができる。当該丸みを帯びた形状の曲率半径は、例えば、5~40mmであることが好ましい。角部39は上部の2つあるいは下部の2つが丸みを帯びた形状としてもよく、4つの角部39がすべて丸みを帯びた形状としてもよい。
【0034】
矩形板状体30は既述のようなプラダンで構成され、透明部はPETシートで構成されていること好ましい。生産性を考慮すると、プラダンとPETシートとは、PETシートの周囲がプラダンの内周部と粘着剤で固定されていることが好ましい。当該粘着剤しては、プラダンとPETシートとの接着性を考慮して、アクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0035】
またプラダンで構成された場合であっても、切込み部の切込み深さ(D)と矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)は既述のとおりである。
【0036】
すなわち、図4の矢印X方向から見た場合の切込み部を拡大した図5に示すように、矩形板状体の厚さ(T)が2~8mmの場合、切込み部の切込み深さ(D)と矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)は0.5~0.7である。
また、矩形板状体の厚さ(T)が8~12mmの場合、切込み部の切込み深さ(D)と矩形板状体の厚さ(T)との比(D/T)は0.7~0.9である。
各比(D/T)の好ましい範囲は既述のとおりである。
【0037】
図3図4に示すモバイルパーテーションは、下記のようにして作製することができる。まず、所望の寸法にしたプラダン(例えば、株式会社ヨシザワ社製の商品名プラフルート)にカッターナイフで切込み部を設ける。また、各壁部の中央部をカッターナイフで抜き取る。抜き取り部よりも大きなPETシートの外周部を粘着剤(両面テープ等)を介して抜き取り部を覆うようにして貼り合わせることで容易に作製することができる。
【0038】
以上のようは本発明のモバイルパーテーションは、携帯が容易で、机上に設置した際に自立保持性が良好となる。また、切込み部が折り曲げやすく、良好な繰り返し屈曲強度を有する実用的なモバイルパーティションとなる。
特に透明部を有することで、良好な光の取り入れ性や良好なコミュニケーションが得られ、対面者とのコミュニケーションの際に飛沫飛散防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
10、30 矩形板状体
12A、12B 切込み部
14A、14B、14C、42A、42B、42C 壁部
34A、34B、34C 透明部
39 角部


図1
図2
図3
図4
図5