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特開2022-167523油塗布装置,曲げ加工機,及び油塗布方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167523
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】油塗布装置,曲げ加工機,及び油塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/18 20060101AFI20221027BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20221027BHJP
   B21D 5/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B21D37/18
B30B15/00 F
B21D5/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073366
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 典久
(72)【発明者】
【氏名】二見 富士彦
【テーマコード(参考)】
4E050
4E063
4E088
【Fターム(参考)】
4E050HA06
4E063AA01
4E063BA01
4E063BA07
4E063CA01
4E063FA07
4E063FA08
4E088EA10
4E088FA01
(57)【要約】
【課題】ダイとパンチとの間に配置できる小型の油塗布装置を提供する。
【解決手段】油塗布装置(2)は、ダイホルダ(811)に取り付けられるベース(21)と、ベース(21)によって第1の高さ位置と第1の高さ位置よりも高い第2の高さ位置との間で昇降可能に支持された本体部(22)と、本体部(22)を第1の高さ位置と第2の高さ位置との間で昇降させる昇降部(25)と、本体部(22)の内部に備えられ潤滑油(LQ)を収容する収容部(23)と、ダイホルダ(811)の延在方向に直交する回転軸線(CL2)まわりに回転し、下部が収容部(23)に収容された潤滑油(LQ)に浸り上部が本体部(22)の上方に突出するローラ(261)と、を備えている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイホルダに取り付けられるベースと、
前記ベースによって第1の高さ位置と前記第1の高さ位置よりも高い第2の高さ位置との間で昇降可能に支持された本体部と、
前記本体部を前記第1の高さ位置と前記第2の高さ位置との間で昇降させる昇降部と、
前記本体部の内部に備えられ潤滑油を収容する収容部と、
前記ダイホルダの延在方向に直交する回転軸線まわりに回転し、下部が前記収容部に収容された前記潤滑油に浸り上部が前記本体部の上方に突出するローラと、
を備えた油塗布装置。
【請求項2】
下部テーブル,前記下部テーブルの上端部に取り付けられたダイホルダ,及び前記ダイホルダに装着されたダイと、
前記ダイホルダに取り付けられた請求項1記載の油塗布装置と、
を備え、
前記第1の高さ位置において、少なくとも前記ローラの上端部が前記ダイの上面よりも下方に位置し、前記第2の高さ位置において、前記ローラの上端部が前記ダイの上面よりも上方に位置する、曲げ加工機。
【請求項3】
前記ダイホルダに沿って移動し前記ダイのV溝部の底部を掃くチャンネルブラシを有する金型清掃装置を備え、
前記油塗布装置は、前記第1の高さ位置において、前記ローラの上端部が前記V溝部の前記底部の高さ位置よりも下方に位置する、又は、前記本体部が前記底部の高さ位置よりも下方にあり、かつ前記ローラが前記ダイの幅方向に前記チャンネルブラシと干渉しないようずれて配置されている、
請求項2記載の曲げ加工機。
【請求項4】
板金のワークを所望の姿勢で保持するロボットハンド装置と請求項2記載の曲げ加工機とを用いて前記ワークに前記潤滑油を塗布する油塗布方法であって、
前記油塗布装置の前記本体部を第2の高さ位置にし、
前記ロボットハンド装置によって、前記ワークを、下面に前記ローラが転動するよう平行移動させて、前記下面において、次の曲げ加工の折り曲げ線に対し平行に前記ダイのV溝部の半幅だけ離隔した第1塗布領域に前記潤滑油を転着させる第1油塗布工程と、
前記第1油塗布工程の後に、再び前記ワークを、前記下面に前記ローラが転動するよう平行移動させて、前記下面において、前記折り曲げ線を挟んで前記第1塗布領域と対称となる第2塗布領域に前記潤滑油を転着させる第2油塗布工程と、
を含む油塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油塗布装置,曲げ加工機,及び油塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、プレス被加工材に潤滑油を塗布する油塗布装置が記載されている。
【0003】
プレス加工のうちの板金の曲げ加工においては、V溝部を有するダイとダイのV溝部に対応した凸部を有するパンチとの間に、例えばロボットハンド装置によって板金のワークを挿入した状態でダイとパンチとを接近させ、ワークを両金型の間に挟んで所望の曲げ形状に加工する。
この加工において、ダイのV溝部の前後両脇のいわゆる肩部は、V溝部に進入するパンチに押されてV溝内に引き込まれるワークの下面が滑る部位であり、肩部とワークとの間の滑り性が曲げ加工の精度などに影響する。
そのため、ワークのダイ側となる下面に、必要に応じて曲げ加工前に予め潤滑油を塗布しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-280098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
曲げ加工におけるワークへの潤滑油の塗布は、加工時間の短縮及び潤滑油の使用量低減などの観点で、ロボットハンド装置で保持したワークをダイとパンチとの間に挿入した状態で、ダイの肩部に対応した直状の限定的範囲に的確に自動で塗布できるとよい。しかしながら、このような塗布は、特許文献1に記載されたような大型の油塗布装置では困難である。すなわち、油塗布装置は、少なくともダイとパンチとの間に配置できるほどの小型であることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は次の1)~3)である。
1)本発明の油塗布装置の一態様は、ダイホルダに取り付けられるベースと、前記ベースによって第1の高さ位置と前記第1の高さ位置よりも高い第2の高さ位置との間で昇降可能に支持された本体部と、前記本体部を前記第1の高さ位置と前記第2の高さ位置との間で昇降させる昇降部と、前記本体部の内部に備えられ潤滑油を収容する収容部と、前記ダイホルダの延在方向に直交する回転軸線まわりに回転し、下部が前記収容部に収容された前記潤滑油に浸り上部が前記本体部の上方に突出するローラと、を備えている。
これにより、油塗布装置をダイとパンチとの間に配置可能な小型にでき、ロボットハンド装置を用い、ワークをダイとパンチとの間に挿入した状態のままダイの第1肩部及び第2肩部に接触する部位への潤滑油の塗布を自動で行うことができる。
2)本発明の曲げ加工機の一態様は、下部テーブル,前記下部テーブルの上端部に取り付けられたダイホルダ,及び前記ダイホルダに装着されたダイと、前記ダイホルダに取り付けられた1)に記載の油塗布装置と、を備え、前記第1の高さ位置において、少なくとも前記ローラの上端部が前記ダイの上面よりも下方に位置し、前記第2の高さ位置において、前記ローラの上端部が前記ダイの上面よりも上方に位置している。
これにより、油塗布装置をダイとパンチとの間に配置可能な小型にでき、ロボットハンド装置を用い、ワークをダイとパンチとの間に挿入した状態のままダイの第1肩部及び第2肩部に接触する部位への潤滑油の塗布を自動で行うことができる。
3)本発明の曲げ加工方法の一態様は、板金のワークを所望の姿勢で保持するロボットハンド装置と請求項2記載の曲げ加工機とを用いて前記ワークに前記潤滑油を塗布する油塗布方法であって、前記油塗布装置の前記本体部を第2の高さ位置にし、前記ロボットハンド装置によって、前記ワークを、下面に前記ローラが転動するよう平行移動させて、前記下面において、次の曲げ加工の折り曲げ線に対し平行に前記ダイのV溝部の半幅だけ離隔した第1塗布領域に前記潤滑油を転着させる第1油塗布工程と、前記第1油塗布工程の後に、再び前記ワークを、前記下面に前記ローラが転動するよう平行移動させて、前記下面において、前記折り曲げ線を挟んで前記第1塗布領域と対称となる第2塗布領域に前記潤滑油を転着させる第2油塗布工程と、を含んでいる。
これにより、油塗布装置をダイとパンチとの間に配置可能な小型にでき、ロボットハンド装置を用い、ワークをダイとパンチとの間に挿入した状態のままダイの第1肩部及び第2肩部に接触する部位への潤滑油の塗布を自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様は、小型であってダイとパンチとの間に配置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る油塗布装置及び曲げ加工機の実施例である油塗布装置2とそれを備えた曲げ加工機92とを示す斜視図である。
図2図2は、油塗布装置2の前面図である。
図3図3は、油塗布装置2の上面図である。
図4図4は、油塗布装置2の上昇状態での図3におけるS4-S4位置での断面図である。
図5図5は、油塗布装置2の下降状態での図3におけるS4-S4位置での断面図である。
図6図6は、曲げ加工機92が装備可能な金型清掃装置1を示す図であり、図6(a)は前面図、図6(b)は側面図である。
図7図7は、曲げ加工機92に設置された油塗布装置2及びダイ87の上面図である。
図8図8は、油塗布装置2が下降状態にあるときのダイ87及び金型清掃装置1との高さ関係を示す前面図である。
図9図9は、油塗布装置2が上昇状態にあるときのダイ87及びワークWの高さ関係を示す前面図である。
図10図10は、ダイ87に対する油塗布装置2と金型清掃装置1のチャンネルブラシ部14との前後方向の位置関係を示す側面図である。
図11図11は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第1の図である。
図12図12は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第2の図である。
図13図13は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第3の図である。
図14図14は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る油塗布装置及び曲げ加工機の実施例である油塗布装置2とそれを備えた曲げ加工機92とを示す斜視図である。
上下左右前後の各方向を、説明の便宜上、図1に矢印で示す方向に規定する。
【0010】
図1に示されるように、曲げ加工機92は、下部テーブル81と、下部テーブル81の上方に配置された上部テーブル82と、制御部83とを有する。
制御部83は、中央処理装置(CPU)831及び記憶部832と、入力部84とを有する。
【0011】
上部テーブル82及び下部テーブル81の一方は、昇降駆動部(不図示)によって他方に対し上下方向に離隔及び接近するように昇降する(図1の矢印DR1参照)。昇降駆動部の動作は、制御部83によって制御される。
【0012】
下部テーブル81の上端部には、ダイホルダ811が取り付けられている。ダイホルダ811には、下部曲げ金型であるダイ87が着脱自由に取り付けられている。ダイ87の左右両端部の外側には、それぞれ上部が開口した箱状のダストボックス814及びダストボックス813が設置されている。
上部テーブル82の下端部には、パンチホルダ821が取り付けられている。パンチホルダ821には、ダイ87と組になる上部曲げ金型であるパンチ822が着脱自由に取り付けられている。
【0013】
ダイ87は、左右方向に延びるV溝部87Vを有する。V溝部87Vの延在方向はダイ87の長手方向である。
ダイ87の上面における、V溝部87Vの前側の脇の部分が第1肩部87aであり後側の脇の部分が第2肩部87bである。V溝部87Vの底は溝底部87eである。
【0014】
曲げ加工機92の前方には、ロボットハンド装置7が配置されている。ロボットハンド装置7は、制御部83の制御により、板金のワークWを吸着などによって任意の姿勢で保持する。例えば、曲げ加工において、ロボットハンド装置7は、ワークWを所定の向きの水平姿勢で保持し、パンチ822とダイ87の間に挿入する(矢印DR12参照)。
【0015】
曲げ加工機92は、ロボットハンド装置7によってダイ87とパンチ822との間に挿入されたワークWに対し、上部テーブル82と下部テーブル81とを相対的に接近させてダイ87とパンチ822との組み合わせに応じた曲げ形状となるよう曲げ加工を行う。
【0016】
図1に示されるように、下部テーブル81の前面の上部には、ガイド部材85が取り付けられている。ガイド部材85は、左右に延びるレール状の部材である。曲げ加工機92によっては金型清掃装置1を搭載している。金型清掃装置1はガイド部材85に支持されると共に、アクチュエータ86の動作により、ベルトなどの動力伝達部材を介してガイド部材85上を左右に移動可能である(矢印DR2参照)。
【0017】
ダイホルダ811におけるダイ87の左方又は右方には、油塗布装置2が取り付けられている。図1において油塗布装置2はダイ87の左方に取り付けられている。油塗布装置2の上面からは円盤状のローラ261の上端部が上方に突出して露出している。
【0018】
図2図5を参照して油塗布装置2の構成を詳述する。
図2は、油塗布装置2の前面図である。図3は、油塗布装置2の上面図である。図4は、油塗布装置2の上昇状態での図3におけるS4-S4位置での断面図である。図5は、油塗布装置2の下降状態での図3におけるS4-S4位置での断面図である。
【0019】
油塗布装置2は、ベース21と本体部22とを有する。
ベース21は、左右方向に長い矩形の板状であって、ダイホルダ811に取り付けられる部材である。ベース21の上面における右端部近傍及び左端部近傍には、それぞれガイド支柱241及びガイド支柱242が真上に延びるように立設されている。
ベース21の左右方向の中央部における前方に寄った位置に、エアシリンダ251が取り付けられている。エアシリンダ251は起立姿勢とされ、ロッド252は上方に向け突出するように出入りする。
【0020】
エアシリンダ251には、第1エアホース254及び第2エアホース255が接続され、それぞれに供給される高圧空気の供給状態に応じて、ロッド252は図4に示される突出位置と、図5に示される没入位置との間で上下動する。
エアシリンダ251の動作は、制御部83によって制御される。
ロッド252の上端は、本体部22の上壁部22aに連結部253によって連結されている。
【0021】
本体部22は、左右に長い箱状を呈する。
底壁部22bは、ベース21に立てられた一対のガイド支柱241,242それぞれに対応した位置にリニアガイド243,244を有する。
ガイド支柱241,242はリニアガイド243,244に円滑に挿通され、これにより、本体部22はベース21に対して上下移動可能となっている。
リニアガイド243とガイド支柱241とにより昇降ガイド部24Aが構成され、リニアガイド244とガイド支柱242とにより昇降ガイド部24Bが構成される。
【0022】
本体部22の底壁部22bの中央には開口部22b1が形成され、ロッド252及びエアシリンダ251からなる昇降部25が通過可能となっている。
本体部22の内部には、リニアガイド243,244に挿通されたガイド支柱241,242及び昇降部25と干渉しない位置及び形状の、上面視でコ字状となる収容部23が配置されている。収容部23は、内部に液体LQを収容可能な容器である。
収容部23における右部の上部には、上壁部22aと共に外部に開口する開口部23aが形成されている。開口部23aの開口形状は、左右に長い長方形である。収容部23は、開口部23a以外、密閉されている。
【0023】
収容部23における右部には、ダイホルダ811の延在方向に直交する前後方向に延びる回転軸線CL2を軸とする軸部262及び軸部262と一体化された円盤状のローラ261が配置されている。
開口部23aとローラ261とを含んで塗布部26が構成される。
ローラ261の上端部は、開口部23aから上方に突出し外部に露出している。
ローラ261の下端部は、収容部23の底部23bに近接した位置にある。
収容部23に収容される液体LQは、例えば曲げ加工用の潤滑油であり、ローラ261の少なくとも周面は、親油性が高い材料で形成されているか、或いは親油性が高くなるよう改質処理されている。以下、液体LQは潤滑油LQとして説明する。
【0024】
ローラ261は外部の力によって自由に回転する。ローラ261の潤滑油LQに浸った周面部位が回転により潤滑油LQから脱し、上方の露出位置まで回転移動した場合、その露出した周面には潤滑油LQが付着している。
【0025】
本体部22の前面の左側及び上面の左側には、それぞれ窓部27A及び窓部27Bが設けられている。窓部27A及び窓部27Bは、それぞれ透明の窓271及び窓273と、窓枠272及び窓枠274とを有している。窓枠272,274は、それぞれ窓271,273を本体部に封止装着している。
窓271,273を通して、収容部23の内部の状態及び潤滑油LQが収容されている場合はその量を、作業者は目視で把握できる。
【0026】
本体部22は、収容部23と共にエアシリンダ251の動作によって図5に示される第1の高さ位置である下降位置と図4に示される第2の高さ位置である上昇位置との間を昇降しそれぞれの位置で維持される。すなわち、油塗布装置2は、本体部22が上昇位置にある上昇状態と、本体部22が下降位置にある下降状態との間で状態遷移する。
【0027】
次に、曲げ加工機92において油塗布装置2と共に用いられる場合がある金型清掃装置1の概略構成を、図1及び図6を参照して説明する。図6は、曲げ加工機92が備える金型清掃装置1を示す図であり、図6(a)は前面図、図6(b)は側面図である。
【0028】
金型清掃装置1は、図1に示されるように、制御部83の制御により、ダイホルダ811に沿ってガイド部材85上を左右方向に移動する。
図6(a)に示されるように、この左右方向の移動により、清掃本体部11は、ダイ87の上方を左右方向に移動する(矢印DR3参照)。
清掃本体部11は、前後方向に延びる駆動軸線を有して左右方向に平行に離隔し、前後方向にずれて配置された第1ブラシ部12及び第2ブラシ部13と、右端部に配置されたチャンネルブラシ部14とを有する。
【0029】
第1ブラシ部12は、第1モータ121と第1モータ121によって回転する第1ブラシ123とを有する。第2ブラシ部13は、第2モータ131と第2モータ131によって回転する第2ブラシ133とを有する。
第1ブラシ123と第2ブラシ133とは同径に形成されている。
第1ブラシ123及び第2ブラシ133は、それぞれダイ87の第1肩部87a及び第2肩部87bと接触し、時計回り又は反時計回り方向に回転しながら左方又は右方に移動して第1肩部87a及び第2肩部87bに付着した黒皮片或いはめっき片などを除去する。
【0030】
チャンネルブラシ部14は、ブラシホルダ142とブラシホルダ142の下端から下方に向け延出したチャンネルブラシ141とを有し、ダイ87のV溝部87Vの幅方向(前後方向)の中央位置に配置されている。
チャンネルブラシ141は、先端部がダイ87の溝底部87eに接触し清掃本体部11の左右方向の移動に伴って溝底部87eを掃き、溝底部87eに溜まった黒皮片或いはめっき片などを掃き出して除去する。
【0031】
金型清掃装置1及び油塗布装置2とダイ87とが取り付けられた曲げ加工機92におけるそれぞれの高さの違いについて、図7図10を参照して説明する。
図7は、曲げ加工機92に設置された油塗布装置2及びダイ87の上面図である。図8は、油塗布装置2が下降状態にあるときのダイ87及び金型清掃装置1との高さ関係を示す前面図である。図9は、油塗布装置2が上昇状態にあるときのダイ87及びワークWの高さ関係を示す前面図である。図10は、ダイ87に対する油塗布装置2と金型清掃装置1のチャンネルブラシ部14との前後方向の位置関係を示す側面図である。
【0032】
図7に示されるように、油塗布装置2は、ダイホルダ811においてダイ87の左側に取り付けられている。油塗布装置2において回転軸線CL2まわりに回転するローラ261は、幅方向の中心位置がダイ87の幅方向(前後方向)の中心線CL1に対し、前方に距離D2だけずれた位置にある。
また、ダイ87の第1肩部87a及び第2肩部87bの幅方向の中心位置それぞれの中心線CL1からの距離は、等しく距離D1とする。
【0033】
図8に示されるように、油塗布装置2は、下降位置にあるときに、油塗布装置における最も高い位置にあるローラ261の最上部の高さ位置LNRが、ダイ87の溝底部87eの高さ位置LNLよりも低い位置にある。
そのため、油塗布装置2を下降状態にしておけば、金型清掃装置1の本体部は、油塗布装置2と干渉することなくその上方を通過してダイ87の清掃を実行できる。
【0034】
図9に示されるように、油塗布装置2は、上昇位置にあるときに、ローラ261の最上部の高さ位置LNRは、ダイ87の最も高い位置にある第1肩部87a及び第2肩部87bの高さ位置LNHよりも高い位置にある。
そのため、油塗布装置2を上昇位置にし、ロボットハンド装置7によりワークWを水平姿勢にしてその下面Waをローラ261に接触させても、ワークWはダイ87と高さ方向に干渉することはない。従って、ロボットハンド装置7により、ワークWを、下面Waにローラ261が接触した状態で左右方向に移動してダイ87の上方に掛かる位置に移動させたりダイ87の上方を通過させることができる。
【0035】
図10に示されるように、ローラ261は、中心線CL1よりも前方にずれた位置にある。そのため、ローラ261の最上部の高さ位置LNRは、必ずしもダイ87の溝底部87eの高さ位置LNLよりも低くなくてもよい。少なくとも油塗布装置2の本体部22の上面の高さ位置LNSが、高さ位置LNLよりも低くなっていればよい。
【0036】
上述の油塗布装置2によれば、本体部22は、潤滑油LQを収容する収容部23と、収容部23に収容された潤滑油LQに下部が浸り、上部が本体部22から上方に突出した状態で回転することで、ワークWの下面Waに潤滑油LQを転着できるローラ261を有している。
これにより、本体部22の高さ方向の長さを小さくでき、ダイ87とパンチ822との間に設置可能となっている。
【0037】
また、油塗布装置2において、本体部22は、ダイホルダ811に取り付けるベース21によって昇降可能に支持されている。そのため、本体部22を、油を塗布する動作時にのみ、ローラ261の上端の高さ位置LNRがダイ87の上端の高さ位置LNLよりも上方に位置するよう上昇させることができる。
これにより、油塗布動作でワークWがダイ87と干渉することはなく、油塗布動作以外では、曲げ加工機92が金型清掃装置1を有していても金型清掃装置1の清掃動作と干渉することはなく、小型であると共に高い利便性を有する。
【0038】
次に、ワークWに潤滑油LQを塗布する方法の具体例について、図11図14を参照して説明する。図11は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第1の図である。図12は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第2の図である。図13は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第3の図である。図14は、油塗布装置2を用いたワークWへの油塗布方法を説明するための第4の図である。
【0039】
図11に示されるように、ロボットハンド装置7は、スライドベース71,基部72,アーム73,保持部74,及びレール75を有する。
レール75は、曲げ加工機92が設置された設置面に左右方向の延びるように敷設されている。
スライドベース71は、レール75に支持されレール75上を左右方向に移動可能である。基部72は、スライドベース71に支持され、前後方向に移動可能である。アーム73は、複数の自由度を持つハンドであり、先端に保持部74が取り付けられている。
保持部74は、磁気或いは空気による吸引、又は挟持によって板金のワークWを所望の姿勢で保持する。
【0040】
図11に示されるように、ダイ87を用いた曲げ加工のワークWにおける折り曲げ位置を折り曲げ線Wbで示す。
制御部83は、エアシリンダ251を動作させて油塗布装置2を上昇状態とする。
次いで、制御部83は、ロボットハンド装置7を動作させ、保持部74によってワークWを吸着保持する。次いで、ワークWを油塗布装置2に掛からない位置で、折り曲げ線Wbがダイ87の中心線CL1から後方に距離D4だけずれて平行となるように位置決めする。この位置を待機位置と称する。距離D4は、距離D1から距離D2を減じた値である。また、高さ方向には、ワークWの下面Waが上昇状態にあるローラ261の高さ位置LNRと同じかわずかに下方となるようにしてローラ261と下面Waが必ず接触するようにする。
【0041】
図12に示されるように、制御部83は、第1油塗布工程としてロボットハンド装置7の基部72をレール75に沿って右方に移動する。
これに伴い、保持部74に吸着保持されたワークWは、下面がローラ261の周面と接触しローラ261を転動させながら右方に平行移動する(矢印DR4参照)。
回転するローラ261の周面には、潤滑油LQが付着している。そのため、この潤滑油LQがワークWの下面Waに転着して潤滑油LQが塗布された第1塗布領域AR1が形成される。第1塗布領域AR1は、折り曲げ加工において、ダイ87の第1肩部87aと接触する部位を含む領域であり、折り曲げ線WbからV溝部87Vの半幅だけ平行に離隔した細幅で直状の領域である。
ローラ261を通りすぎたワークWは、ダイ87の上方に位置するが、前述のようにダイ87と干渉することはない。
【0042】
次に、図13に示されるように、制御部83は、ロボットハンド装置7によってワークWを前方の所定の位置に水平移動する(矢印DR5参照)。
所定の位置は、ワークWの折り曲げ線Wbが、ダイ87の中心線CL1から距離D3となる位置である。距離D3は距離D2と距離D1との和である。
これにより、折り曲げ線Wbを挟んで第1塗布領域AR1と対称となる領域に潤滑油LQが塗布可能な状態となる。
【0043】
次に、図14に示されるように、制御部83は、第2油塗布工程としてロボットハンド装置7によってワークWを左方に平行移動し図11で説明した待機位置に戻す(矢印DR6参照)。
これにより、ワークWの下面Waに、潤滑油LQが転着塗布された第2塗布領域AR2が形成される。第2塗布領域AR2は、下面Waにおいて折り曲げ線Wbに対し第1塗布領域AR1と対称となる位置になる。第2塗布領域AR2は、折り曲げ加工において、ダイ87の第2肩部87bと接触する部位を含む領域である。
上述において、距離D3及び距離D4は、中央処理装置931が、記憶部832に記憶されている油塗布装置2の情報から取得した距離D2及び次の曲げ加工に用いるダイの情報から得た距離D1に基づいて油塗布動作の都度確認し、必要に応じて再設定する。
【0044】
上述の潤滑油の塗布方法によれば、ダイ87とパンチ822との間に配置可能な小型の油塗布装置2を用いることにより、ワークWにおける、ダイ87の第1肩部87a及び第2肩部87bに接触する部位への潤滑油LQの塗布を、ロボットハンド装置7の動作によって自動で行うことができる。また、ワークWは、ダイ87とパンチ822との間に挿入した状態のまま、ダイ87の第1肩部87a及び第2肩部87bに対応した細幅で直状の限定的範囲に的確に塗布できる。
【0045】
潤滑油LQのワークWへの塗布は、噴霧ではなく、ローラ261との接触で潤滑油LQをローラ261の周面からワークWの下面Waに移行させる転着で行われる。これにより、潤滑油LQは、必要最小限の量を確実に下面Waに塗布でき、霧散する潤滑油LQは実質的にないので、潤滑油LQの消費を最小限に抑制することができる。
【0046】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0047】
第1塗布領域AR1及び第2塗布領域AR2の形成順は限定されない。
上述の油塗布方法における各部材の動作は、制御部83が、予め記憶部832に記憶した油塗布プログラムに基づいて実行するようにしてもよいし、入力部84から作業者が動作を入力して実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 金型清掃装置
11 清掃本体部
12 第1ブラシ部
121 第1モータ
123 第1ブラシ
13 第2ブラシ部
131 第2モータ
133 第2ブラシ
14 チャンネルブラシ部
141 チャンネルブラシ
142 ブラシホルダ
2 油塗布装置
21 ベース
22 本体部
22a 上壁部
22b1 開口部
23 収容部
23a 開口部
24A,24B 昇降ガイド部
241,242 ガイド支柱
243,244 リニアガイド
25 昇降部
251 エアシリンダ
252 ロッド
253 連結部
254 第1エアホース
255 第2エアホース
26 塗布部
261 ローラ
262 軸部
27A,27B 窓部
271,273 窓
272,274 窓枠
7 ロボットハンド装置
71 スライドベース
72 基部
73 アーム
74 保持部
75 レール
81 下部テーブル
811 ダイホルダ
813,814 ダストボックス
82 上部テーブル
821 パンチホルダ
822 パンチ(上部曲げ金型)
83 制御部
831 中央処理装置(CPU)
832 記憶部
84 入力部
85 ガイド部材
86 アクチュエータ
87 ダイ(下部曲げ金型)
87a 第1肩部
87b 第2肩部
87e 溝底部
87V V溝部
92 曲げ加工機
AR1 第1塗布領域
AR2 第2塗布領域
CL1 中心線
CL2 回転軸線
D1,D2,D3,D4 距離
LNL,LNH,LNR,LNS 高さ位置
LQ 潤滑油(液体)
W ワーク
Wa 下面
Wb 折り曲げ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14