(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167532
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】車両の電源制御方法、及び車両のコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20221027BHJP
B60R 25/102 20130101ALI20221027BHJP
B60R 25/40 20130101ALI20221027BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B60R16/02 645A
B60R25/102
B60R25/40
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073379
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石原 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】生島 佳祐
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】車両のメインスイッチがOFFされた場合にバッテリ残電力量に応じて待ち受け期間を適切に設定する。
【解決手段】電力量取得部3aは電力量計測部8が計測した消費電力量を取得し、電力量監視部3bはIGスイッチのOFFに応じて消費電力量の変動に基づいてバッテリ残電力量の減少を監視し、待受期間算出部3cはバッテリ残電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を算出し、電源制御部3dはIGスイッチがOFFした場合は電源部4から無線通信部6及びGNSS受信部7への給電状態を継続し、待ち受け期間が終了した場合は当該給電状態を終了する。これにより、消費電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を適切に設定することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と通信する無線通信部(6)と、車両バッテリ(10)の電力を安定化した状態で前記無線通信部に給電する電源部(4)と、前記車両バッテリの残電力量であるバッテリ残電力量の減少に応じて変動する所定電力量を計測する電力量計測部(8)と、を備えた車両の電源制御方法であって、
前記電力量計測部が計測した前記所定電力量を取得する電力量取得処理と、
メインスイッチのOFFに応じて前記所定電力量に基づいて前記バッテリ残電力量の減少を監視する電力量監視処理と、
前記バッテリ残電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を算出する待受期間算出処理と、
前記メインスイッチがOFFした場合は前記電源部から前記無線通信部への給電状態を継続し、前記待ち受け期間が終了した場合は当該給電状態を終了する電源制御処理と、
からなる処理群を備えた車両の電源制御方法。
【請求項2】
前記処理群の内の一部又は全部の処理を実行する車載通信装置(1)を備えた請求項1に記載の車両の電源制御方法。
【請求項3】
前記無線通信部を介して通信可能に設けられ、前記処理群の内の一部又は全部の処理を実行するクラウドサーバ(2)を備えた請求項1に記載の車両の電源制御方法。
【請求項4】
前記処理群の内の一部の処理を実行する車載通信装置(1)と、
前記無線通信部を介して通信可能に設けられ、残りの処理を実行するクラウドサーバ(2)と、
を備えた請求項1に記載の車両の電源制御方法。
【請求項5】
前記所定電力量は、前記車両バッテリの消費電力量である請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の電源制御方法。
【請求項6】
前記所定電力量は、前記車両バッテリの電圧を示すバッテリ電圧である請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の電源制御方法。
【請求項7】
前記待受期間算出処理は、前記バッテリ残電力量の減少傾向を示す直線と所定閾値とが交差するまでの期間である推定限界到達期間に基づいて前記待ち受け期間を算出する請求項1から6のいずれか一項に記載の車両の電源制御方法。
【請求項8】
前記バッテリ残電力量に影響を及ぼす情報を示す影響情報を取得する影響情報取得部(17,18,19)を備え、
前記所定閾値は、前記影響情報に基づいて設定されている請求項7に記載の車両の電源制御方法。
【請求項9】
前記電力量計測部は、前記車両バッテリの電源端子(10a)または電源供給ライン(11)における当該電源端子に近い位置で前記バッテリ残電力量を計測する請求項1から8のいずれか一項に記載の車両の電源制御方法。
【請求項10】
外部と通信する無線通信部(6)と、車両バッテリ(10)の電力を安定化した状態で前記無線通信部に給電する電源部(4)と、前記車両バッテリの残電力量であるバッテリ残電力量の減少に応じて変動する所定電力量を計測する電力量計測部(8)と、制御部(3)と、を備えた車両において前記制御部により実行される車両のコンピュータプログラムであって、
電力量取得部(3a)により、前記電力量計測部が計測した前記所定電力量を取得する手順と、
電力量監視部(3b)により、メインスイッチのOFFに応じて前記所定電力量の変動に基づいて前記バッテリ残電力量の減少を監視する手順と、
待受期間算出部(3c)により、前記バッテリ残電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を算出する手順と、
電源制御部(3d)により、前記メインスイッチがOFFした場合は前記電源部から前記無線通信部への給電状態を継続し、前記待ち受け期間が終了した場合は当該給電状態を終了する手順と、
を備えた車両のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電源制御方法、及び車両のコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コネクテッドカーの発展、MaaS(Mobility as a Service)等の車両の高度化に伴い、車載通信装置だけでなく先進安全制御を実施するECU等の多数のECUが車外のセンターと通信し様々なサービスを実現するようになってきており、それに伴って各種要望の実現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-89021号公報
【特許文献2】特開2014-69592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば自宅などで、駐車中でもデータ通信を使った通信サービスを実施したいという要望、スマホから車両に対して、車両からのオドメータ等各種状態やドラレコ等の録画データ等の情報を取得したいという要望、充電、空調等の制御に係るデータ通信したいという要望、駐車中に車両の通信アプリが起動して、クラウドサーバからデータをダウンロードしてソフト更新をしたいという要望、クラウドサーバへ走行データ等の送信データをアップロードしたいという要望を例示できる。
【0005】
一方、通信サービスを実施するには、車載通信装置と、アプリが実装された車載機が動作することが必要であり、それに係る電力消費を伴うため、エンジン車であればエンジン始動用のバッテリ、電気自動車であれば走行用バッテリの走行用電力を駐車時に消費し、次回走行時に電力が不足し、最悪走行できなくなる懸念がある。
【0006】
そこで、例えばユーザが車両のイグニッションスイッチをOFFして駐車すると、イグニッションスイッチのOFFに応じて車両バッテリから車載通信装置への給電状態を所定の待ち受け期間継続する構成のものが供されている。この待ち受け期間では、ユーザが遠隔から車両の状態を確認したり、遠隔から車載装置を操作したり、車両盗難時の追跡のための位置情報をユーザに通知したりする通信サービスを提供することができる。
【0007】
このように待ち受け期間を設定する構成の場合、待ち受けが長期間となるとバッテリが過度に消耗してしまうことから、イグニッションスイッチのOFFから一定期間の待ち受け期間となり、車両盗難等の特定イベントをトリガに待ち受け期間を延長することが提案されている(特許文献1参照)。
また、タイムスケジュールに応じて待機状態と非待機状態を切り替える構成も提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術は、基本的にはイグニッションスイッチのOFFから一定期間の待ち受けであり、バッテリ残電力量が少ない状態で予め定めた一定期間の待ち受けによってバッテリが過度に消耗することは防止できない。また、バッテリ残電力量に十分な余力がある場合においても、予め定めた一定期間を超えての待ち受けは不可能である。つまり、バッテリ残電力量に応じて適切な待ち受け期間を算出することは困難である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、車両のメインスイッチがOFFされた場合にバッテリ残電力量に応じて待ち受け期間を適切に設定することができる車両の電源制御方法、及び車両のコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、電力量計測部(8)が計測した所定電力量を取得する電力量取得処理を実行し、メインスイッチのOFFに応じて所定電力量の変動に基づいてバッテリ残電力量の減少を監視する電力量監視処理を実行し、バッテリ残電力量の減少傾向に基づいて無線通信部(6)への給電状態を継続する待ち受け期間を算出する待受期間算出処理を実行し、メインスイッチがOFFした場合は電源部(4)から無線通信部への給電状態を継続し、待ち受け期間が終了した場合は当該給電状態を終了する電源制御処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】経過時間に伴うバッテリ残電力量の変化を示す図
【
図5】経過時間に伴うバッテリ残電力量の変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。複数の実施形態において、機能的または構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。
車両に搭載されている車載通信装置1と、外部のセンターに設けられたクラウドサーバ2とから車両用通信システムが構成されている。車載通信装置1は、制御部3、電源部4、車内通信部5、無線通信部6、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部7、電力量計測部8を備えている。
【0014】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(Input/Output)を有するマイクロコンピュータにより構成されている。制御部3は、非遷移的実体的記録媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、車載通信装置1の動作全般を制御する。
【0015】
無線通信部6は、無線基地局9及び図示しない広域通信網を介して接続されたクラウドサーバ2との間で広域無線通信を実行する。
GNSS受信部7は、通信衛星から受信したGNSS信号から各種パラメータを抽出し、抽出した各種パラメータを用いて現在位置を演算し、その演算した現在位置を示す位置情報を制御部3に出力する。
【0016】
電力量計測部8は、車両バッテリ10の電源端子10aに設けられており、車両バッテリ10の消費電力量を計測し、車内LAN12を介して車載通信装置1に計測した消費電力量を送信する。消費電力量が所定電力量に相当する。
【0017】
車両バッテリ10には電力量計測部8を介して電源供給ライン11が接続されており、電源供給ライン11を介して車両バッテリ10から電源部4へ常に給電されている。電源部4は、車両バッテリ10から給電される電力を安定化した状態で車載通信装置1を構成する各部へ給電する。電源部4は、制御部3からの指示に応じて消費電流を抑制したパワーセーブモードを実行可能となっている。パワーセーブモードでは、消費電流が他の給電対象よりも比較的大きい無線通信部6及びGNSS受信部7への給電を停止する一方、他の給電対象への給電は継続するようになっている。
【0018】
車両には、複数のECU(Electronic Control Unit)_A14、ECU_B15が搭載されている。各ECU14,15は、車内LAN12を介して車載通信装置1とデータ通信を実行する。本実施形態では、車両に2台のECU14,15が搭載されているものと説明するが、実際には車両には多数のECUが搭載されている。
【0019】
ECU14には通信アプリ_A1、電源部14aが搭載され、ECU15には通信アプリ_A2、電源部15aが搭載されている。電源部14a,15aは電源供給ライン11を介して車両バッテリ10から給電される。後述するように通信アプリ_A1、通信アプリ_A2は、無線通信部6を介してクラウドサーバ2に搭載された通信アプリ_A1、通信アプリ_A2とそれぞれ通信するためのアプリである。
【0020】
制御部3は、コンピュータプログラムにより実現される電力量取得部3a、電力量監視部3b、待受期間算出部3c、電源制御部3dを構成している。電力量取得部3aは、電力量計測部8から車両バッテリ10の消費電力量を取得する。電力量監視部3bは、消費電力量の減少を監視する。待受期間算出部3cは、電力量監視部3bによる消費電力量の減少傾向に基づいて後述するように待ち受け期間を算出する。電力量取得部3aが電力量取得部に相当する。
【0021】
電源制御部3dは、メインスイッチからのOFF信号の入力に応じて電源部4に対してパワーセーブモードを指示する。電源部4は、パワーセーブモードが指示された場合は無線通信部6及びGNSS受信部7への給電を停止する。メインスイッチとはエンジン車両ではイグニッションスイッチ、電気自動車やハイブリッド車の場合は起動スイッチである。本実施形態ではイグニッションスイッチとして説明する。イグニッションスイッチからのOFF信号はACC信号又はIG信号のOFFレベルにより示される。以下、イグニッションスイッチのONをIG-ON、OFFをIG-OFFと称する。
【0022】
制御部3及び無線通信部6は、IG-ON状態では乗車時の通信サービスを実行する。乗車時の通信サービスとして、例えば緊急通報、データ通信による目的地設定、音声通話等の通信サービスを例示できる。IG-OFF状態では、駐車中の通信サービスを実行する。駐車中の通信サービスとして、例えば盗難追跡、リモートエンジンスタート、リモートドアロック・アンロック等の通信サービスを例示できる。
【0023】
また、駐車中の通信サービスとして、IG-OFFタイミングで行われる駐車直後の通信サービスと、予め設定されている特定の日時への到達タイミングで行われる駐車中の定期的な通信サービスとがある。
【0024】
駐車直後の通信サービスとして、ドアロックECUから例えばドアロック忘れを示すドアロック忘れ通知信号を無線通信部6からクラウドサーバ2に送信する通信サービスを例示できる。クラウドサーバ2は、車載通信装置1からドアロック忘れ通知信号を受信すると、ドアロック忘れ通知信号を予め送信先として設定されているユーザの携帯情報端末13に送信する。携帯情報端末13は、クラウドサーバ2からドアロック忘れ通知信号を受信すると、ドアロック忘れをユーザに通知する。携帯情報端末13は、携帯電話機、スマートフォン、タブレットなどである。
【0025】
携帯情報端末13からの通知に気付いたユーザがドアロックの操作を行うと、ドアロックの操作を受け付け、ドアロック指示信号をクラウドサーバ2に送信する。クラウドサーバ2は、携帯情報端末13からドアロック指示信号を受信すると、ドアロック指示信号を車載通信装置1に送信する。制御部3は、クラウドサーバ2からドアロック指示信号を無線通信部6を介して受信すると、ドアロック指示信号を車内通信部5からドアロックECUに出力してドアロック制御を行う。
【0026】
駐車中の定期的な通信サービスとして、例えばGNSS受信部7により演算された現在位置である駐車位置を示す現在位置通知信号を無線通信部6からクラウドサーバ2に送信する通信サービスを例示できる。クラウドサーバ2は、車載通信装置1から現在位置通知信号を受信すると、現在位置通知信号を予め送信先として設定されている携帯情報端末13に送信する。
【0027】
クラウドサーバ2は、現在位置の履歴を用いて車両盗難の可能性を判定し、車両盗難の可能性があると判定した場合は、盗難通知信号を携帯情報端末13に送信する。携帯情報端末13は、クラウドサーバ2から現在位置通知信号を受信した場合は車両の現在位置をユーザに通知し、盗難通知信号を受信した場合は車両盗難の可能性をユーザに通知する。
以上のような動作は、例えばECU_A14に搭載された通信アプリ_A1と、クラウドサーバ2に搭載された通信アプリ_A2とが協調して動作することで実行される。
【0028】
ところで、上述したような駐車中の定期的な通信サービスを実現するには、IG-OFF後においても車両バッテリ10から車載通信装置1に加えて各ECU14,15など車両全体への給電を継続する必要がある。この場合、車両バッテリ10からの給電状態を長期間にわたって継続した場合、バッテリ残電力量が低下してエンジン車両やハイブリッド車ではエンジンの始動が困難となり、電気自動車では十分な走行余力を残した走行が困難となる。
【0029】
そこで、制御部3は、エンジン車両やハイブリッド車の場合は始動が可能となり、電気自動車の場合は十分な走行余力を残した走行が可能となる待ち受け期間を算出し、当該待ち受け期間が終了したところで電源部4に対してパワーセーブモードを指示する。これにより、車両バッテリ10の消費電力量が過度に低下してしまことを抑制可能となる。
【0030】
ここで、待ち受け期間を一定期間に設定した場合、待ち受け期間の終了時におけるバッテリ残電力量が次の走行時に不足したり過剰であったりして、待ち受け期間を適切に設定できないことが想定される。
このような事情から、本実施形態では、バッテリ残電力量に基づいて待ち受け期間を適切に設定できるようにした。
【0031】
図2に示す走行限界閾値は、エンジン車両やハイブリッド車の場合はセルモータを駆動するのに必要となる限界電力量、電気自動車の場合は十分な走行余力を残した限界電力量である。バッテリ残電力量が走行限界閾値まで低下すると、始動や十分な走行余力を残した走行が困難となる。したがって、バッテリ残電力量の減少傾向を精度よく検出することで、始動や十分な走行余力を残した走行が可能となる待ち受け期間を適切に算出するようにした。
そこで、車両バッテリ10の電源端子10aに電力量計測部8を設け、電力量計測部8によりバッテリ消費電力量を取得し、当該バッテリ消費電力量に基づいて待ち受け期間を算出するようにした。
【0032】
ここで、IG-OFFに応じて車両全体での時間当たりの消費電力量は一定とみなすことができるので、バッテリ残電力量は時間経過に伴って直線的に減少するとみなすことができる。
ユーザがIG-OFFした場合はIG-OFFからバッテリ残電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を算出する待受期間算出処理を実行し、減少傾向を示す直線と走行限界閾値とが交差するまでの期間、つまりバッテリ残電力量が走行限界閾値まで低下するまでの走行限界到達期間を推定する。そして、推定した始動限界到達期間に対して十分に余裕を見込んだ待ち受け期間を算出する。
【0033】
尚、
図2に示すように待ち受け期間中は消費電流が比較的大きな無線通信部6及びGNSS受信部7に給電されているので、単位時間当たりのバッテリ残電力量の減少量は大きい。一方、待ち受け期間が終了すると、無線通信部6及びGNSS受信部7への給電が停止して他の給電対象への給電状態は継続するので、単位時間当たりのバッテリ残電力量の減少量は小さくなる。
【0034】
次に制御部3の動作について説明する。尚、車載通信装置1は前回のIG-OFFに応じてパワーセーブモードとなっており、電源部4から無線通信部6及びGNSS受信部7への給電が停止され、他の給電対象への給電状態は継続されているものとする。
図3に示すように制御部3は、IG-ONを検出するかを判定している(S101)。
ユーザが車両に乗車してイグニッションスイッチをONすると、IG-ONを検出するので(S101:YES)、電源制御部3dにより電源部4に対してパワーセーブモードの終了を指示する(S102)。これにより、電源部4は、パワーセーブモードを終了して無線通信部6及びGNSS受信部7への給電を開始するので、無線通信部6及びGNSS受信部7を介した乗車時の通信サービスが実行可能となる。
【0035】
次に、IG-OFFを検出したかを判定する(S103)。ユーザがイグニッションスイッチをOFFすると、IG-OFFを検出し(S103:YES)、消費電力量を取得する電力量取得処理を実行し(S104)、上述したようにバッテリ残電力量の減少を監視する電力量監視処理を実行してから(S105)、待ち受け期間を算出する待受期間算出処理を実行する(S106)。IG-OFFに応じて乗車時の通信サービスが終了し、駐車中の通信サービスが実行開始される。
次に、算出した待ち受け期間をユーザに通知する(S107)。これにより、ユーザは待ち受け期間を確認することができる。
【0036】
次に、待ち受け期間を超過したかを判定し(S108)、超過していない場合は(S108:NO)、待ち受けを継続する(S109)。待ち受け期間を超過した場合は(S108:YES)、待ち受けを終了し(S110)、電源部4に対してパワーセーブモードの開始を指示する(S111)。このような動作により、電源制御処理が行われる。
【0037】
このような実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
電力量取得部3aは電力量計測部8が計測した消費電力量を取得し、電力量監視部3bはIGスイッチのOFFに応じて消費電力量の変動に基づいてバッテリ残電力量の減少を監視し、待受期間算出部3cはバッテリ残電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を算出し、電源制御部3dはIGスイッチがOFFした場合は電源部4から無線通信部6及びGNSS受信部7への給電状態を継続し、待ち受け期間が終了した場合は当該給電状態を終了する。これにより、消費電力量の減少傾向に基づいて待ち受け期間を適切に設定することができる。
【0038】
待受期間算出部3cは、バッテリ残電力量の減少傾向を示す直線と所定閾値とが交差するまでの期間である推定走行限界到達期間に基づいて待ち受け期間を算出し、電力量計測部8は、バッテリ電圧の減少傾向を示す直線と始動限界閾値とが交差するまでの期間である始動限界到達期間に基づいて待ち受け期間を算出するので、始動限界到達期間に十分な余裕を見込んで待ち受け期間を設定することができる。
電力量計測部8は、車両バッテリ10の電源端子10aに設けられて消費電力量を計測するので、消費電力の検出精度を高めることができる。
【0039】
尚、車載通信装置1が実行する各処理からなる処理群の一部または全部をクラウドサーバ2で実行するようにしてもよいし、車載通信装置1とクラウドサーバ2とが処理群の内の一部と残りをそれぞれ協調して実行するようにしてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図4から
図6を参照して説明する。第2実施形態は、バッテリ残電力量としてバッテリ電圧の減少傾向に基づいて待ち受け期間を算出することを特徴とする。
電力量計測部8として車両バッテリ10の電源端子10aに電流センサを設けた場合、車両バッテリ10の消費電流を電流センサにより取得することができるので、電流センサによる消費電流に基づいてバッテリ残電力量を算出することが考えられる。
【0041】
しかしながら、電流計測部により消費電流量を計測する構成ではコスト高となるので、コストが安い電圧計測部によりバッテリ電圧を計測し、バッテリ電圧の減少傾向からバッテリ残電力量を推定するようにした。この場合、電圧計測部を車両バッテリ10の電源端子10aに設ける構成もコスト高の要因となるので、電圧計測部を車載通信装置1内部に設けるようにした。
【0042】
図4に示すように車載通信装置1には電圧計測部16が設けられており、この電圧計測部16により車載通信装置1内に配置された電源供給ライン11のバッテリ電圧を計測するようになっている。また、制御部3は、バッテリ電圧取得部3e、バッテリ電圧監視部3f、待受期間算出部3c、電源制御部3dを備えている。バッテリ電圧が所定電力量に相当し、バッテリ電圧取得部3eが電力量取得部に相当し、バッテリ電圧監視部3fが電力量監視部に相当する。
【0043】
図5に示す始動限界閾値はセルモータを駆動するのに必要な電力を給電可能なバッテリ電力量で、バッテリ電圧が始動限界閾値まで低下すると、エンジンを始動することが困難となる。したがって、バッテリ電圧の減少傾向を精度よく検出することで、エンジンを始動可能となる待ち受け期間を精度よく設定することができる。
【0044】
ここで、パワーセーブモードでは車載通信装置1全体における時間当たりの消費電流量は一定とみなすことができるので、バッテリ電圧は時間経過に伴って直線的に減少するとみなすことができる。この場合、バッテリ電圧が一時的に変動することも想定できることから、バッテリ電圧の減少傾向を検出するには十分となる所定期間検出することで一時的な電圧変動による影響を排除することができる。
【0045】
ユーザがIG-OFFした場合はIG-OFFからバッテリ電圧の減少傾向を所定期間検出し、バッテリ電圧の減少傾向を示す直線と始動限界閾値とが交差するまでの期間、つまりバッテリ電圧が始動限界閾値まで低下するまでの始動限界到達期間を推定する。そして、推定した始動限界到達期間に対して十分に余裕を見込んだ待ち受け期間を算出する。
【0046】
制御部3の動作について第1実施形態と異なる動作のみを説明する。
図6に示すように制御部3は、IG-OFFを検出すると(S103:YES)、電圧計測部16からバッテリ電圧を取得するバッテリ電圧取得処理を実行し(S204)、バッテリ電圧を監視するバッテリ電圧監視処理を実行してから(S205)、上述したようにして待ち受け期間を算出する待受期間算出処理を実行する(S106)。バッテリ電圧取得処理が電力量取得処理に相当し、バッテリ電圧監視処理が電力量監視処理に相当する。
【0047】
このような実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
電圧計測部16は、車両バッテリ10の電源端子10aに接続された電源供給ライン11のバッテリ電圧を計測するので、バッテリ残電力量を消費電流から検出することが困難な場合であっても、待ち受け期間を適切に設定することができる。
車載通信装置1内に電圧計測部16が設けられているので、電圧計測部16を特別に設置する必要がないので、コストの低減を図ることができる。
【0048】
尚、電圧計測部16を電源供給ライン11において車両バッテリ10の電源端子10aに近い位置に設けるようにしてもよい。
また、車載通信装置1が実行する処理群の一部または全部をクラウドサーバ2で実行するようにしてもよいし、車載通信装置1とクラウドサーバ2とが処理群を協調して実行するようにしてもよい。
【0049】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図7及び
図8を参照して説明する。第3実施形態は、バッテリ残電力量に影響を及ぼす情報を示す影響情報に応じて始動限界閾値を変更することを特徴とする。影響情報とは、車両グレードによるバッテリ容量の違い、地域の気候や温度による必要電力量の違い、車両の使われ方により消費電力量の違い、車両バッテリの劣化度による違いなどである。
【0050】
例えば車両バッテリ10は温度が低下すると内部抵抗が増大するので、バッテリ電圧が低下する。このため、温度が通常よりも低い状態で常温時の始動限界閾値に基づいて待ち受け期間を算出した場合は、バッテリ電圧に対して待ち受け期間が通常よりも長くなり、始動が困難となることが予測される。そこで、車両バッテリ10の残電力量に影響を及ぼす情報を示す影響情報に基づいて始動限界値を算出するようにした。
【0051】
図7に示すように車載通信装置1には、温度取得部17、経年管理部18、バッテリ情報設定部19が設けられている。温度取得部17は、図示しない温度センサから周囲温度を取得する。経年管理部18は、長期使用によるバッテリ劣化を管理する。バッテリ情報設定部19は、バッテリ情報としてバッテリ種別や取得日時などを設定する。温度取得部17、経年管理部18、バッテリ情報設定部19が影響情報取得部に相当する。
バッテリ情報として経年情報を反映するようにしてもよいし、車両バッテリ10が交換された情報を経年情報に反映するようにしてもよい。また、バッテリ電圧の測定結果からバッテリ交換を検出して経年情報に自動的に反映するようにしてもよい。
【0052】
以下、温度取得部17により取得された周囲温度に基づいて待ち受け期間を算出する場合について説明する。
温度取得部17は、制御部3からの指示に応じて温度センサにより周囲温度を取得し、常温用の始動限界閾値に加えて低温用の始動限界閾値を設定する。この場合、低温用の始動限界閾値>常温用の始動限界閾値となるように設定されている。
【0053】
制御部3は、IG-OFF時に周囲温度が常温時よりも低い場合は、低温時用の始動限界閾値を用いる。つまり、バッテリ電圧の減少傾向が示す直線と低温時用の始動限界閾値とが交差するまでの低温時の始動限界到達期間を推定し、当該始動限界到達期間に十分な余裕を見込んだ低温時の待ち受け期間を算出する。
また、経年管理部18による車両バッテリの長期使用による性能劣化やバッテリ情報設定部19による車両バッテリの交換時期を待ち受け期間に反映する。
【0054】
このような実施形態によれば、バッテリ残電力量に影響を及ぼす情報を示す影響情報に応じて始動限界閾値を変更するようにしたので、影響情報に基づいて待ち受け期間を適切に設定することができる。
【0055】
尚、始動限界閾値は温度に応じた2つに限定されることなく、温度に応じて3以上設定したり、設定後の温度変動に応じて閾値を設定し直したりしてもよい。
また、車載通信装置1が実行する処理群の一部または全部をクラウドサーバ2で実行するようにしてもよいし、車載通信装置1とクラウドサーバ2とが処理群を協調して実行するようにしてもよい。
【0056】
(第4実施形態)
第4実施形態について
図9を参照して説明する。第2実施形態は、クラウドサーバ2により上述した影響情報を収集して待ち受け期間を算出することを特徴とする。
図9に示すように車載通信装置1にはサーバ連携部20が設けられている。一方、クラウドサーバ2には、コンピュータプログラムにより実現される車載機情報収集部21、外部情報取得部22、ユーザ設定情報取得部23、計測情報記憶部24、閾値算出部25が設けられている。
【0057】
車載機情報収集部21は、車載通信装置1のサーバ連携部20と連携することで車載通信装置1が収集した各種計測情報を計測情報記憶部24に蓄積記憶する。外部情報取得部22は、気象サーバ26から車載通信装置1が位置している気象情報を取得する。ユーザ設定情報取得部23は、携帯情報端末13などのユーザ端末からユーザの行動予定を取得する。
制御部3は、IG-OFFを検出すると、バッテリ電圧取得部3eにより電力量計測部8からバッテリ電圧を取得し、さらに温度取得部17などの影響情報取得部から所定の影響情報を取得し、取得した影響情報を無線通信部6によりクラウドサーバ2に送信する。
【0058】
クラウドサーバ2の車載機情報収集部21は、上述のようにして全国の車両に搭載されている多数の車載通信装置1から取得した各種計測情報を計測情報記憶部24に蓄積記憶する。
閾値算出部25は、計測情報記憶部24に蓄積記憶されているビッグデータに基づいて上述した走行限界閾値や始動限界閾値を算出する。つまり、車載通信装置1から取得したバッテリ残電力量の減少傾向は、周囲温度やその他の影響情報の影響を受けるので、待ち受け期間は他の車載通信装置1から計測したバッテリ残電力量の減少傾向を含めて考慮するのが望ましい。
【0059】
このような事情から、クラウドサーバ2にて他車両含めたビッグデータからバッテリ残電力量の算出を行う。即ち、クラウドサーバ2で影響情報に基づいて再始動や再走行に必要なバッテリ残電力量の算出を行い、クラウドサーバ2にて気温の予報値やユーザの行動予定により待ち受け期間の算出を行う。この場合、待ち受け期間が長期間の場合は、温度変化やユーザの行動予定による影響を受けることが想定されることから、気温の予報値は車両の現在位置に応じた温度データを反映し、気温の予報値やユーザの行動予定を考慮して待ち受け期間を算出して車載通信装置1に返信する。
【0060】
このような実施形態によれば、クラウドサーバ2は、全国の多数の車載通信装置1から受信したビッグデータに基づいて待ち受け期間を算出して車載通信装置1に返信するので、クラウドサーバ2にて多数の車両のビッグデータを活用することで、学習期間の省略および、普段車両を利用している場所とは異なる場所や、季節による変化に対応した制御を提供することが可能となる。
【0061】
尚、車載通信装置1が実行する処理群の一部または全部をクラウドサーバ2で実行するようにしてもよいし、車載通信装置1とクラウドサーバ2とが処理群を協調して実行するようにしてもよい。
【0062】
(その他の実施形態)
第2実施形態から第4実施形態において、電圧計測部16を車両バッテリ10の電源端子10aに設けるようにしてもよい。
第4実施形態において、クラウドサーバ2が取得しているビッグデータから算出したバッテリ残電力量の減少傾向を車載通信装置1に送信し、車載通信装置1にて待ち受け期間を算出するようにしてもよい。
駐車時に電源制御部3dにより各ECU14,15の電源部14a、15aへの給電を制御するようにしてもよい。つまり、IG-OFFからの各車載器の必要な動作継続期間が異なる場合は、動作継続期間に合わせて各車載器に対する給電を制御する。
【0063】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0064】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
図面中、1は車載通信装置、2はクラウドサーバ、3は制御部、3aは電力量取得部、3bは電力量監視部、3cは待受期間算出部、3dは電源制御部、3eはバッテリ電圧取得部(電力量取得部)、3fはバッテリ電圧監視部(電力量監視部)、4は電源部、6は無線通信部、8は電力量計測部、10は車両バッテリ、10aは電源端子、11は電源供給ライン、16は電圧計測部(電力量計測部)、17は温度取得部(影響情報取得部)、18は経年管理部(影響情報取得部)、19はバッテリ情報設定部(影響情報取得部)である。