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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167552
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】表示パネル
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G09F9/00 350Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073415
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】芹川 正寛
(72)【発明者】
【氏名】桑村 健介
(72)【発明者】
【氏名】武田 忠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈太郎
【テーマコード(参考)】
5G435
【Fターム(参考)】
5G435AA01
5G435BB12
5G435EE03
5G435EE05
5G435FF13
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】隠蔽性及び視認性を両立させ、映像二重映りを防止した表示パネルを提供する。
【解決手段】表示媒体110から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示することができる加飾シート10と、表示媒体110と加飾シートとの間に位置し、加飾シートを支持する支持体130とを有する表示パネル100である。加飾シートは、透明シート基材20と、透明シート基材の一面に形成された絵柄層30及び隠蔽層40とを有し、支持体は、表示媒体の前方に位置し、加飾シートを固定し、表面が平坦な前壁と、前壁を貫通し、表示媒体の表示領域に開口する窓部131と、窓部にはめ込まれる透明板132と、透明板の表示媒体側の面に形成された受像層133と、を有する。透明板は、表示媒体の表示領域以下の大きさであり、前壁の表面と同一面となるように窓部に固定されている。そして、隠蔽層より受像層の濃度を高くしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示媒体から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示することができる加飾シートと、
前記表示媒体と前記加飾シートとの間に位置し、前記加飾シートを支持する支持体とを有する表示パネルであって、
前記加飾シートは、透明シート基材と、前記透明シート基材の両面又は一面に形成された絵柄層及び隠蔽層とを有し、
前記支持体は、前記表示媒体の前方に位置するとともに、前記加飾シートを固定し、表面が平坦な前壁と、前記前壁を貫通し、前記表示媒体の表示領域に開口する窓部と、前記窓部にはめ込まれる透明板と、前記透明板の表示媒体側の面に形成された受像層と、を有し、
前記透明板は、前記表示媒体の表示領域以下の大きさであるとともに、前記前壁の表面と同一面となるように前記窓部に固定されており、
前記隠蔽層より前記受像層の濃度を高くしたことを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記支持体には、
前記前壁の左右両側端の一方又は両方から前記表示媒体側に向かって延びる側壁を有することを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記表示媒体は、低輝度モニターであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記表示媒体は、液晶モニターであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記前壁の表面は、非表示時の前記表示媒体の表示面と近似色であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記支持体は、板金製であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項7】
前記絵柄層は、前記隠蔽層に接するとともに、前記隠蔽層よりも観察側に位置することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示媒体の前方に位置し、非表示時は壁面の一部のように違和感なく設置され、かつ表示媒体を隠蔽できる表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置と、加飾シートとの間に、パネル部材を位置させ、パネル部材には、開口部を有する「加飾シート及び表示装置」が知られている(特許文献1の段落[0022]並びに図2及び図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-34886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の「表示装置」では、パネル部材に開口部を形成すると、加飾シートを固定するパネル部材の表面に凹凸ができ、加飾シートを固定した際に、凹凸により距離が離れることにより、映像光の拡散でぼやけが大きくなり、視認性が悪化する。このとき、視認性の悪化を補うために輝度を上げると、温度上昇による低温やけどの可能性がでる。
【0005】
また、上記した従来の「表示装置」には、パネル部材において、表示装置の表示面と対向する部分を透明に形成することや、全体を透明に形成することも記載されている(特許文献1の段落[0031])。
しかし、表示部領域に対しパネル領域が大きい場合、表示部以外の隠蔽を考慮すると、透明材は表示部のみに使用するのが望ましい。これを実現するために、表示部以外を非透明化することはコスト的に不利である。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するために、隠蔽性及び視認性を両立させることができるとともに、映像二重映りを防止することができる表示パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決のために、本発明の一態様に係る表示パネルは、表示媒体から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示することができる加飾シートと、表示媒体と加飾シートとの間に位置し、加飾シートを支持する支持体とを有する表示パネルであって、加飾シートは、透明シート基材と、透明シート基材の両面又は一面に形成された絵柄層及び隠蔽層とを有し、支持体は、表示媒体の前方に位置するとともに、加飾シートを固定し、表面が平坦な前壁と、前壁を貫通し、表示媒体の表示領域に開口する窓部と、窓部にはめ込まれる透明板と、透明板の表示媒体側の面に形成された受像層と、を有し、透明板は、前記表示媒体の表示領域以下の大きさであるとともに、前記前壁の表面と同一面となるように前記窓部に固定されており、隠蔽層より受像層の濃度を高くした。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る一態様の表示パネルによれば、加飾シートは隠蔽層を有し、支持体の透明板の表示媒体側に受像層を設けているので、隠蔽性及び視認性を両立させることができるとともに、隠蔽層より受像層の濃度を高くしているので、映像二重映りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係わる加飾シートの断面図である。
図2】実施形態1に係わる表示パネルの取り付け状態を示す一部分解斜視図である。
図3】実施形態1に係わる表示パネルの取り付け状態を示す一部断面図である。
図4】実施形態1に係わる支持体の取り付け状態を示す一部正面である。
図5】実施形態1に係わる加飾シートの取り付け状態を示す一部正面である。
図6】実施形態2に係わる加飾シートの断面図である。
図7】実施形態3に係わる加飾シートの断面図である。
図8】実施形態4に係わる加飾シートの断面図である。
図9】実施形態5に係わる加飾シートの断面図である。
図10】実施形態6に係わる加飾シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明に掛かる実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、以下に図面を参照して説明する。
(加飾シート10)
図1は加飾シート10を示す図である。この加飾シート10は、図2図5に示すように、表示パネル100に用いられ、表示媒体110の前方に位置し、非表示時は壁面の一部のように違和感なく設置され、かつ表示媒体110を隠蔽できる。
加飾シート10の可視光線透過率は、2~40%であることが望ましい。
2%未満の場合には、表示視認性に劣り、40%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
【0013】
(可視光線透過率)
加飾シート10の可視光線透過率は、以下の測定値を参照して定めている。
積分球ユニットを取り付けた分光光度計で、透過率の測定を実施している。
このときの値は、実施例において後述するサンプルを直進して観察される透過光と、拡散透過光との両方を合わせた光の透過率とを意味する。
波長550nm,600nm,650mnの3点の透過率の平均値を可視光線透過率として採用している。
【0014】
(加飾シート10の各層)
加飾シート10は、図1に示すように、次の3層が順次積層されている。
なお、次の各層については、後述する。
(1)透明シート基材20
(2)絵柄層30
(3)隠蔽層40
なお、加飾シート10の各層は、上記した(1)~(3)に限定されず、例えば図6及び図8に示すように、加飾シート10の最表層に保護層50を設けても良い。
【0015】
(加飾シート10の各層の積層の順番)
加飾シート10を構成する上記3層の積層の順番は、次の3通りがある。
(1)第1積層順
第1積層順は、図1に示すように、透明シート基材20/隠蔽層40/絵柄層30の順に積層している。このとき、隠蔽層40は、絵柄層30に対し、表示媒体110側(矢印Aの方向)に必ず位置させる。
(2)第2積層順
第2積層順は、図7を用いて後述する実施形態3に示すように、隠蔽層40/絵柄層30/透明シート基材20の順に積層する。このとき、第1積層順と同様に、隠蔽層40は、絵柄層30に対し、表示媒体110側(矢印Aの方向)に必ず位置させる。
【0016】
(3)第3積層順
第3積層順は、図9を用いて後述する実施形態5に示すように、隠蔽層40/透明シート基材20/絵柄層30の順に積層する。すなわち、透明シート基材20を挟んで、その観察側(矢印Bの方向)に絵柄層30を位置させ、表示媒体110側(矢印Aの方向)に隠蔽層40を位置させる。
【0017】
なお、加飾シート10の積層順は、上記した(1)~(3)に限定されず、第1積層順の3層に加え、保護層50を追加し、図6を用いて後述する実施形態2に示すように、透明シート基材20/隠蔽層40/絵柄層30/保護層50の順に積層しても良い。
また、第2積層順の3層に加え、保護層50を追加し、図8を用いて後述する実施形態4に示すように、隠蔽層40/絵柄層30/透明シート基材20/保護層50の順に積層してもよい。
【0018】
(第1積層順)
第1積層順は、加飾シート10のいずれか一方の面、本実施形態では、図1に示すように、観察側(矢印Bの方向)に位置する表面側に、残る絵柄層30及び隠蔽層40を積層する。すなわち、透明シート基材20/隠蔽層40/絵柄層30の順に積層する。
本第1積層順によれば、表示媒体110の色を隠蔽しつつ、明瞭な映像を透過表示させることができる。
これに加え、隠蔽層40を設けることで、図2及び図3に示すように、表示媒体110を支持体130に取り付けた際に、表示媒体110と支持体130の境目を隠蔽することができる。
【0019】
(第2積層順)
第2積層順は、加飾シート10の他方の面、図7を用いて後述する実施形態3に示すように、表示媒体110側(矢印Aの方向)に位置する裏面側に、残る絵柄層30及び隠蔽層40を積層した場合である。すなわち、隠蔽層40/絵柄層30/透明シート基材20の順に積層する。
【0020】
本第2積層順によれば、上記第1積層順と同様の効果を得つつ、傷等により絵柄層30・隠蔽層40が劣化することを抑制できる。
これに加え、隠蔽層40を設けることで、図2及び図3に示すように、表示媒体110を支持体130に取り付けた際に、表示媒体110と支持体130の境目を隠蔽することができる。
【0021】
(表示パネル100)
表示パネル100は、図2図5に示すように、次のパーツを備える。
なお、次のパーツについては、後述する。
(1)表示媒体110
(2)施工壁120
(3)支持体130
なお、表示パネル100のパーツは、上記した(1)~(3)に限定されず、図示しないが、加飾シート10を表示媒体110の前面に直接、配置し、施工壁120と支持体130とのいずれか一方、或いは両方を省略しても良い。
【0022】
(透明シート基材20)
透明シート基材20は、加飾シート10の支持体となるものであって、透明性を有する樹脂であれば広く適用できるが、表示媒体110からの熱が影響するためPETなどある程度耐熱性があるものが望ましい。具体的には、透明シート基材20とし、例えば厚みが200μmのPETを使用している。
【0023】
加飾シート10に、透明シート基材20を使用することで、加飾シート10の透過性を上げ、視認性を向上できる。このため、表示媒体110において、低輝度で使用でき、表示媒体110による温度上昇を抑え、且つ視認性を向上できる。すなわち、表示媒体110を、通常の液晶モニターとし、低輝度表示をすることで、表面温度の上昇を抑制できる。表示媒体110を低輝度表示とすることで、低温やけどを生じる45℃以下の表面温度にできた。
【0024】
また、透明シート基材20を用いることで、低輝度表示においても、視認性が向上できる。
さらに、表示媒体110においても、低輝度表示で足りるので、高輝度モニターの使用が不要となり、部材コストの削減が可能である。
【0025】
(隠蔽層40)
隠蔽層40は、透明シート基材20のいずれか一方の面、本実施形態1では、図1に示すように、表示媒体110側の表面に、印刷方法を用いて形成され、表示媒体110の色を隠蔽しつつ、明瞭な映像を透過表示させる目的で設けられるものである。
隠蔽層40は、ある程度の光透過性と、顔料が塗布されていない開口部41とを有することが望ましい。
隠蔽層40の可視光線透過率は、10~70であることが望ましい。
10%未満の場合には、表示視認性に劣り、70%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
【0026】
(隠蔽層40の配置)
隠蔽層40は、絵柄層30に対し、表示媒体110側(矢印Aの方向)に必ず位置させる。
これに対し、隠蔽層40を、絵柄層30よりも観察側(矢印Bの方向)に位置させると、絵柄層30が見えなくなる、或いは見えにくくなるおそれがある。
【0027】
(隠蔽層40の印刷方法)
隠蔽層40は、インクジェット装置を用いて印刷し、例えば酸化チタンを有する白色インキで印刷した。具体的には、隠蔽層40は、絵柄層30の背面に、例えば白ベタ印刷を施している。
印刷方法としては、インクジェット装置を例示したが、これに限定されない。
印刷方法としては、インクジェット印刷法のほか、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用により形成される。
なお、印刷方法は、上記例示した印刷方法に限定されず、例えば手描き法、墨流し法や、転写法、写真法、電子写真法、感光性樹脂法、真空蒸着法、化学腐蝕法、感熱発色法、放電破壊法等、従来公知の任意の画像形成手段を適用することができる。
【0028】
(開口部41)
開口部41は、顔料が塗布されていない部分である。
すなわち、隠蔽層40は、次の部分を合わせた層となっている。
(1)有色層
有色層は、顔料と樹脂とを塗布した部分である。
有色層は、様々な色が適用できるが、明るい色が良く、白色が最も望ましい。
(2)開口部41
開口部41は、有色層の間に複数点在し、顔料も樹脂も無く、未塗装の部分である。つまり、開口部41は、印刷されていない、何もない空間、或いは隙間である。
【0029】
すなわち、透明シート基材20と隠蔽層40との2層で面を観察したとき、開口部41を通して、向こう側を直接、見渡せる部分といったイメージである。
開口部41の開口率は、2~40%であることが望ましい。
3%未満の場合には、表示視認性に劣り、40%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
隠蔽層40に、開口部41を設けることで、表示媒体110を隠蔽しつつ、非表示時の色変化を抑えることができる。
【0030】
また、隠蔽層40に、開口部41を設けることで、加飾シート10の透過性を上げ、視認性を向上できる。このため、表示媒体110において、低輝度で使用でき、表示媒体110による温度上昇を抑え、且つ視認性を向上できる。
隠蔽層40は、有色層と開口部41とを含む全体の可視光線透過率が10~70%である。
10%未満の場合には、表示視認性に劣り、70%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
【0031】
(絵柄層30)
絵柄層30は、隠蔽層40の表面に印刷方法を用いて形成され、目的の加飾シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
絵柄層30は、ある程度の光透過性を有していれば、全面に塗布されていても良い。
【0032】
絵柄層30は、隠蔽層40のように「開口部41」を設けなくて良いことから、高精細な意匠を設けることができる。
具体的には、絵柄層30は、インクジェット装置を用いて印刷し、印刷インキとしては、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色で「木目柄」を印刷した。
なお、絵柄層30の印刷方法として、インクジェット装置を例示したが、これに限定されず、隠蔽層40と同様に、各種の印刷方法の適用できる。
【0033】
(絵柄層30の模様)
絵柄層30の模様の種類として、「木目柄」を例示したが、これに限定されず、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、木目柄のほか、例えば石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
【0034】
(隠蔽層40と絵柄層30との関係)
図1に示すように、隠蔽層40の上に、絵柄層30を印刷する場合に、絵柄層30のインキが、隠蔽層40の開口部41に入り込むことが考えられる。
このとき、隠蔽層40が有色部と絵柄層30が入り混じった構成となることが想定される。
【0035】
しかし、製造上、隠蔽層40の開口部41の開口率や、隠蔽層40の有色層と開口部とを含む全体の可視光線透過率、或いは加飾シート10の可視光線透過率において、問題となるような影響が無く、絵柄層30と隠蔽層40とはそれぞれ独立として機能し、問題はなかった。
【0036】
(表示媒体110)
表示媒体110は、図2及び図3に示すように、加飾シート10の裏面側に配置され、例えば300~1200cd/m2の汎用の液晶ディスプレイ(700cd)を使用した。
なお、本件のように化粧シートによる隠蔽を行う場合、環境省度300lx時において1200cd/m2以上のモニターが必要であったので、実績と比較すると、本実施の形態で使用する汎用の液晶モニターは、相対的には低輝度である。
表示媒体110は、図示しないが、例えば取り付け金具にて、施工壁120に固定する。
【0037】
なお、表示媒体110として、液晶ディスプレイ(LCD)を例示したが、これに限定されず、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)を用いても良い。
【0038】
(施工壁120)
施工壁120は、表示媒体110に加え、支持体130を支持するためのものである。
施工壁120には、図示しないが、例えば取り付け金具にて、表示媒体110を固定する。
【0039】
(支持体130)
支持体130は、強度が確保できる材質、例えば板金製であり、図示しないが、施工壁120に設けた治具等により固定される。
また、支持体130には、表示媒体110を固定していないが、固定しても良い。
支持体130は、図2及び図3に示すように、表示媒体110の前方と、左右の側方との三方を囲むものであり、前壁と、左右の側壁とを有する。
なお、前壁と、左右の側壁とにより、表示媒体110の前方及び左右の側方の三方を囲むように支持体130を形成したが、これに限定されず、図示しないが、廃熱の観点からすると三方が望ましいが、上方と下方の一方、或いは両方を囲むように形成しても良い。
【0040】
支持体130の前壁は、表示媒体110の前方に位置し、その前面は、凹凸が無く、平坦性が高いものとする。
また、前壁の裏面も、表示媒体110の表面と対向するため平坦に形成されている。
前壁の高さは、表示媒体110の高さ以上であり、又、横幅も表示媒体110の横幅以上に設定されている。
【0041】
左右の側壁は、前壁の左右の端部から、平面がチャンネル(コの字)形に折れ曲がり、表示媒体110の側に向かって延びている。
なお、左右の側壁を形成したが、これに限定されず、図示しないが、一方のみ形成しても良い。
支持体130は、隠蔽性向上のため、黒色、すなわち表示媒体110の非表示時の表示面と近似色で塗装している。
【0042】
なお、塗装は、支持体130の表面であるが、これに限定されず、前壁の前面だけでも良いし、支持体130の表面に加え、裏面を含む全面に塗装しても良いし、
ここで、「近似色」の目安としては、例えば中間有色層と表面有色層の色差ΔEが0.5以内、好ましくは0.3以内であると良い。
【0043】
(支持体130の各部)
支持体130には、図2及び図3に示すように、次の各部を備える。
(1)窓部131
(2)透明板132
(3)受像層133
なお、支持体130の各部は、上記した(1)、(2)及び(3)に限定されない。
【0044】
(窓部131)
窓部131は、図2及び図3に示すように、施工壁120に固定された表示媒体110の表示面が臨み、貫通状に形成されている。
窓部131は、表示媒体110の表示面の周囲を隠蔽するために、表示領域よりも小さい開口とする。
なお、窓部131を、支持体130の前壁の比較的、上方に形成したが、これに限らず、図示しないが中央に形成しても良い。
【0045】
(透明板132)
透明板132は、支持体130の窓部131にはめ込まれて固定され、透明性の高い材質、例えばアクリル、ガラス、PETなどを選定した。また、透明板132は、強度と透過性とを維持できるように、厚さを2~5mm程度としている。
透明板132のサイズは、支持体130の表面と面を合わせるため、支持体130の窓部131よりも小さくし、窓部131にはめ込まれ、支持体130の前壁の前面と同一面とする。
また、透明板132の厚さは、支持体130より厚く、その後面が表示媒体110に向かって一部突出し、表示媒体110の表示面と対向する。
【0046】
透明板132の窓部131に透明板132を配置したのは、支持体130の表面の凹凸を無くし、平坦性を向上するためのである。
さらに、透明板132を、支持体130の表面と同一面としたのも同様である。
一方、支持体130には、窓部131を設けているので、表示媒体110の表示面が開口となり、又、透明板132を使用しているので、表示媒体110、支持体130といった部分的な材料の違いによる凹凸、色味の差異を隠蔽できる。
【0047】
また、加飾シート10と表示媒体110との間に、透明板132を位置させることで、表示媒体110に荷重がかかった場合に荷重を分散し、集中荷重とならない。
透明板132を、表示媒体110の表示面の前面だけに位置させているので、表示媒体110の前方を全面ガラスで覆った場合、例えば全面ガラスを採用した場合と比較し、安全性が高く、又、表示パネル100全体或いは支持体130の軽量化が可能であり、施工性を向上できる。
【0048】
(受像層133)
受像層133は、図3に示すように、透明板132の表示媒体110側の表面に、印刷方法を用いて形成され、明瞭な映像を透過表示させる目的で設けられるものである。
受像層133は、加飾シート10の隠蔽層40より濃度を高くしている。
受像層133は、インクジェット装置を用いて印刷し、例えば酸化チタンを有する白色インキで印刷した。
【0049】
透明板132への受像層133の印刷方法としては、インクジェット装置を例示したが、これに限定されず、加飾シート10の隠蔽層40と同様に、インクジェット印刷法のほか、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用により形成される。
【0050】
(加飾シート10の製造方法)
上記した構成を有する加飾シート10の製造方法は、次の通りである。
例えば、200μm厚みのPET製の透明シート基材20のいずれか一方の面、例えば表面に、開口部41の開口率が2~40%となるように隠蔽層40を印刷して形成する。
隠蔽層40上に絵柄層30を印刷して積層し、絵柄層30を形成し、加飾シート10を作製する。
【0051】
(実施形態1の作用・効果)
実施形態1の作用・効果は、次の通りである。
実施形態1に係る表示パネル100によれば、表示媒体110から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示することができる加飾シート10と、表示媒体110と加飾シート10との間に位置し、加飾シート10を支持する支持体130とを有する表示パネル100であって、加飾シート10は、透明シート基材20と、透明シート基材20の両面又は一面に形成された絵柄層30及び隠蔽層40とを有し、支持体130は、表示媒体110の前方に位置するとともに、加飾シート10を固定し、表面が平坦な表面に前壁と、前壁を貫通し、表示媒体110の表示領域に開口する窓部131と、窓部131にはめ込まれる透明板132とを有し、透明板132は、表示媒体110の表示領域以下の大きさであるとともに、前壁の表面と同一面となるように窓部131に固定されていることで、加飾シートを固定する支持体の表面の凹凸を減少できる。
【0052】
その結果、透明シート基材20を用いた加飾シートを使用し、かつ表面の凹凸を減少させることで、視認性が向上し、表示媒体110の輝度を下げることができる。その結果、表示面の温度上昇が抑えられる。
実施形態1によれば、加飾シート10に透明シート基材20を使用することで、透過性を上げ、視認性を向上させることができる。
【0053】
したがって、実施形態1は、加飾シート10に透明シート基材20を使用し、且つ隠蔽層40を有することで、透過性と隠蔽性を両立させることができる。
また、支持体130の透明板132の表示媒体110側の表面には受像層133が設けられており、受像層133が表示媒体110に近い位置に設けられることで、鮮明な像を得ることができ、さらに視認性を向上させることができる。
【0054】
また、透明板132の表面に設けた受像層133は、加飾シート10の隠蔽層40より濃度を高くしているので、映像が受像層133に結像し、隠蔽層40でも結像することが無く、映像二重映りを防止することができる。
また、実施形態1によれば、支持体130の窓部131に透明板132をはめ込み、支持体の表面と同一面となるようにすることで、支持体130の表面をフラット化できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、透明板132を、表示媒体110の表示領域以下の大きさとすることで、支持体130の強度を向上できる。すなわち、表示媒体110に荷重が掛かった場合に加重を分散し、集中荷重とならない。
また、実施形態1によれば、透明板132の面積を減少できるので、例えば全面ガラスを採用した場合と比較し、コストを低減でき、又、安全性が向上できる。
【0056】
実施形態1によれば、例えば全面ガラスを採用した場合と比較し、支持体130の軽量化が可能であり、施工性を向上できる。
また、実施形態1に係る表示パネル100によれば、支持体130に、前壁の左右両側端の一方又は両方から表示媒体110側に向かって延びる側壁を有するので、側方からの外光の侵入を防止し、視認性を向上できる。
【0057】
また、実施形態1に係る表示パネル100によれば、表示媒体110が、低輝度モニターであることで、表示媒体110の表示面の温度上昇を抑制できる。
また、実施形態1に係る表示パネル100によれば、表示媒体110は、液晶モニターであることで、汎用性が高く、コストを低減できるばかりで無く、低輝度表示させることで、表示媒体110の表示面の温度上昇を抑制できる。
【0058】
また、実施形態1に係る表示パネル100によれば、前壁の表面が、非表示時の表示媒体110の表示面と近似色であることで、支持体130ばかりで無く、表示媒体110と支持体130との境目を隠蔽できる。
さらに、実施形態1に係る表示パネル100によれば、支持体130が、板金製であることで、加工が容易であり、剛性が高く、軽量化が可能である。
【0059】
さらにまた、実施形態1に係る表示パネル100によれば、絵柄層30が、隠蔽層40に接するように観察側に位置することで、表示媒体110の表示時の表示視認性と、非表示時の表示媒体110の隠蔽性とを確保できる。
【0060】
(実施形態2)
図6を用いて、実施形態2について説明する。
実施形態2の特徴は、観察側(矢印Bの方向)の最表層、すなわち絵柄層30の表面に
保護層50を有する点である。
すなわち、加飾シート10は、透明シート基材20/隠蔽層40/絵柄層30/保護層50の順に積層する。
実施形態2によれば、絵柄層30が劣化することを抑制できる。
【0061】
(実施形態3)
図7を用いて、実施形態3について説明する。
実施形態3の特徴は、加飾シート10の他方の面、表示媒体110の側(矢印Aの方向)に位置する裏面側に、残る絵柄層30及び隠蔽層40を積層した点である。
すなわち、加飾シート10は、隠蔽層40/絵柄層30/透明シート基材20の順に積層する。
【0062】
実施形態3によれば、表示媒体110を隠蔽しつつ、非表示時の色変化を抑えることができるばかりでなく、傷等により絵柄層30・隠蔽層40が劣化することを抑制できる。
これに加え、実施形態3によれば、隠蔽層40を設けることで、図2及び図3に示すように、表示媒体110を支持体130に取り付けた際に、表示媒体110と支持体130の境目を隠蔽することができる。
【0063】
(実施形態4)
図8を用いて、実施形態4について説明する。
実施形態4の特徴は、観察側(矢印Bの方向)の最表層、すなわち透明シート基材20の表面に保護層50を有する点である。
すなわち、加飾シート10は、透明シート基材20/隠蔽層40/絵柄層30/保護層50の順に積層する。
実施形態4によれば、透明シート基材20が劣化することを抑制できる。
【0064】
(実施形態5)
図9を用いて、実施形態5について説明する。
実施形態5の特徴は、透明シート基材20を挟んで、その観察側(矢印Bの方向)に絵柄層30を位置させ、表示媒体110の側(矢印Aの方向)に隠蔽層40を位置させた点である。
すなわち、加飾シート10は、隠蔽層40/透明シート基材20/絵柄層30の順に積層する。
【0065】
実施形態5によれば、表示媒体110を隠蔽しつつ、非表示時の色変化を抑えることができるばかりでなく、傷等により隠蔽層40が劣化することを抑制できる。
これに加え、実施形態5によれば、隠蔽層40を設けることで、図2及び図3に示すように、表示媒体110を支持体130に取り付けた際に、表示媒体110と支持体130の境目を隠蔽することができる。
【0066】
(実施形態6)
図10を用いて、実施形態6について説明する。
実施形態6の特徴は、観察側(矢印Bの方向)の最表層、すなわち絵柄層30の表面に保護層50を有する点である。
すなわち、加飾シート10は、隠蔽層40/透明シート基材20/絵柄層30/保護層50の順に積層する。
実施形態6によれば、絵柄層30が劣化することを抑制できる。
【実施例0067】
以下、実施例1及び比較例1~4を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例1に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の表示パネル100の加飾シート10は、透明シート基材20が0.25mmt(ミリ厚)のPET製で、隠蔽層40が白ベタである。また、加飾シート10は、図8に示すように、隠蔽層40/絵柄層30/加飾シート10/保護層50の順に積層し、可視光線透過率が10%である。また、実施例1の表示パネル100の支持体130は、透明板132はアクリル3mmであり、透明板132の表示媒体110側に受像層133を設けている。この受像層133は、加飾シート10の隠蔽層40より濃度を高くしている。そして、実施例1の表示媒体110は液晶ディスプレイであり、輝度が700cd/m2である。そして、表示媒体110と透明板132との間に、1mmクリアランスを形成した。
【0068】
(比較例1)
比較例1の表示パネルは、加飾シート10に隠蔽層、支持体130の透明板132に受像層133を設けているが、実施例1とは異なり、受像層より隠蔽層の濃度を高くしている。
(比較例2)
比較例2の表示パネルは、加飾シート10に隠蔽層、支持体130の透明板132に受像層133を設けているが、実施例1とは異なり、受像層及び隠蔽層の濃度を一致させている。
【0069】
(比較例3)
比較例3の表示パネルは、加飾シート10に隠蔽層40を設けているが、支持体130の透明板132に受像層を設けていない。
(比較例4)
比較例4の表示パネルは、支持体130の透明板132に受像層133を設けているが、加飾シート10に隠蔽層を設けていない。
【0070】
(評価方法)
作成した実施例1及び比較例1の表示パネルに対して、映像の視認性、映像二重映り、隠蔽性を比較した。
(比較結果)
比較結果を表1に示す。映像の視認性が良好なものは「○」、視認性が良好なものは「△」、映像の視認性が悪いものは「×」と示した。映像二重映りがないものは「なし」とし、映像二重映りがあるものは「ある」と示した。さらに、隠蔽性が良好なものは「○」、隠蔽性が悪いものは「×」と示した。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1は、映像の視認性及び隠蔽性が「〇」であり、映像二重映りが「なし」の結果を得た。
しかし、受像層より隠蔽層の濃度を高くした比較例1、受像層と隠蔽層の濃度を一致させた比較例2は、映像の視認性が悪い。また、支持体130の透明板132に受像層を設けていない比較例3は、実施例1と比較して映像の視認性が劣る。さらに、支持体130の透明板132に受像層を設けているが、加飾シート10に隠蔽層を設けていない比較例4は、隠蔽性が悪い結果となった。
【符号の説明】
【0073】
10 加飾シート
20 透明シート基材
30 絵柄層
40 隠蔽層
41 開口部
50 保護層
100 表示パネル
110 表示媒体
120 施工壁
130 支持体
131 窓部
132 透明板
133 受像層
A 表示媒体側
B 観察側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10