(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167557
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ケーソンの注水制御装置
(51)【国際特許分類】
E02D 23/08 20060101AFI20221027BHJP
E02D 23/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
E02D23/08 F
E02D23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073420
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000155034
【氏名又は名称】株式会社本間組
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 義信
(72)【発明者】
【氏名】安藤 恭平
(57)【要約】
【課題】注水ポンプの停止に伴う注水時間のロスを削減できるケーソンの注水制御装置を提供する。
【解決手段】複数のエリアE1,E2を備えたケーソン1の注水制御装置において、複数のエリアE1,E2に対応してそれぞれ配置され、対応するエリアE1,E2に注水する注水ポンプ12,12,12,12と、複数のエリアE1,E2に選択的に接続され、接続されたエリアE1,E2に注水する補助注水ポンプ16と、補助注水ポンプ16を水位の低いエリアE1,E2に注水するように制御する制御手段13と、を備える。これにより、エリアE1,E2間に水位差が生じたら、制御手段13の制御により、注水ポンプ12,12,12,12を止めることなく、水位の低いエリアE1,E2に補助注水ポンプ16による注水を行うから、注水時間のロスを抑えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアを備えたケーソンの注水制御装置において、
前記複数のエリアに対応してそれぞれ配置され、対応する前記エリアに注水する注水ポンプと、
前記複数のエリアに選択的に接続され、接続されたエリアに注水する補助注水ポンプと、前記補助注水ポンプを水位の低い前記エリアに注水するように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするケーソンの注水制御装置。
【請求項2】
前記複数のエリア及び前記ケーソン外部に前記補助注水ポンプを選択的に接続する接続切換手段を備えることを特徴とする請求項1記載のケーソンの注水制御装置。
【請求項3】
前記複数のエリアは、連通する複数の区画を備え、前記区画の水位を検出する水位計を設け、前記制御手段は、前記水位計で検出した前記複数のエリアの前記複数の区画のエリア毎の平均水位が最低水位のエリアに前記補助注水ポンプにより注水するように制御することを特徴とする請求項1又は2記載のケーソンの注水制御装置。
【請求項4】
傾斜計を備え、前記制御手段は、前記傾斜計により計測したケーソンの傾斜角度が設定許容角度以上になると、水位計で検出した複数のエリアの複数の区画のエリア毎の平均水位が最低水位のエリアに前記補助注水ポンプにより注水するように制御することを特徴とする請求項1又は2記載のケーソンの注水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンの注水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸工事や水中構造物築造工事などにおいて、ケーソンに注水して沈設する工法が知られている。
【0003】
このようなケーソンの注水制御装置において、それぞれのブロック毎に個別に設けられた注水ポンプによりそれぞれの前記ブロックに対して注水を行う全注水制御と、いずれかの前記ブロックの平均水位どうしの相対的な水位差が基準水位差から予め設定された許容値を超えて乖離した場合に、前記基準水位差に対して前記平均水位が相対的に高い前記ブロックに対する前記注水ポンプによる注水を停止してそれぞれの前記ブロックの前記平均水位どうしの相対的な水位差を前記基準水位差に近づけて前記許容値以下にする補正制御とを行う注水制御方法(例えば特許文献1)や、ブロック内の各室へ注水する複数の注水ポンプを備え、ケーソンの水平面に対する全方位への傾斜を測定する傾斜計を備え、該傾斜計の測定結果に基づいて、ブロック単位で当該ブロック内の複数の注水ポンプの作動及び停止を制御する制御装置を備え、前記各室内に水位センサをそれぞれ備え、前記制御装置は、前記各水位センサからの測定結果に基づき、各ブロック内の隣接する各室の水位差が1.0m以上に到達した時点で、当該ブロックの各注水ポンプを停止し、また、隣接するブロックを跨るように配置される隣接する各室の水位差が1.0m以上に到達した時点で、水位の高い側の室が属するブロックの各注水ポンプを停止するように制御するケーソン注水制御装置(例えば特許文献2)がある。
【0004】
上記注水制御方法及びケーソン注水制御装置は、いずれもブロックの水位差が所定以上になると、水位の高い側に注水していた注水ポンプを停止するように制御するから、停止時間分だけ注水が止まり、その分、沈設に要する時間が長くなり、時間的なロスが発生する。
【0005】
これに対して、ケーソンの各々の区画は、隔壁によって互いに区切られた隔室群を有し、前記隔壁は、各々の前記区画内の互いに隣り合う隔室間で水が流動する開口部を有し、決定手段は、目標水位がそれぞれ定められた各ステップにおいて、同一の区画内の隔室間の水位差が第1閾値以上になった場合には、当該水位差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になるまでは、当該区画に対する注水を停止せずに間欠的な注水又は単位時間当たりの注水量を少なくした注水を行うように制御する注水制御装置(例えば特許文献3)がある。
【0006】
上記注水制御装置では、注水を停止せずに間欠的な注水又は単位時間当たりの注水量を少なくするように制御するため、注水ポンプを全停する場合に比べて時間的なロスが減るが、連続して注水する場合に比べて、時間的なロスが生じる。
【0007】
ところで、上記注水制御方法では、注水ポンプはそれぞれのブロック(区画に相当)毎に個別に設けられており、それぞれの隔室には、隔室の水位を計測する水位計が設けられているが、投げ込み式の水位計を使用するため、水位計をブロック内の底部まで降ろし、水位計に接続したケーブルを位置固定し、駆動した後、較正作業が必要となり、設置に時間を要するという問題もある。
【0008】
また、上記特許文献1~3では、ケーソンの傾斜を測定するための傾斜計を備えているが、いずれも1台の傾斜計により測定を行うから、沈設作業中に傾斜計に異常が発生すると、傾斜に基く制御ができなくなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6718011号公報
【特許文献2】特開2015-34373号公報
【特許文献3】特開2013-253469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記した問題点に鑑み、注水ポンプの停止に伴う注水時間のロスを削減できるケーソンの注水制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、前記複数のエリア及び前記ケーソン外部に前記補助注水ポンプを選択的に接続する接続切換手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記複数のエリア及び前記ケーソン外部に前記補助注水ポンプを選択的に接続する接続切換手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記複数のエリアは、連通する複数の区画を備え、前記区画の水位を検出する水位計を設け、前記制御手段は、前記水位計で検出した前記複数のエリアの前記複数の区画のエリア毎の平均水位が最低水位のエリアに前記補助注水ポンプにより注水するように制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2記載の発明において、傾斜計を備え、前記制御手段は、前記傾斜計により計測したケーソンの傾斜角度が設定許容角度以上になると、水位計で検出した複数のエリアの複数の区画のエリア毎の平均水位が最低水位のエリアに前記補助注水ポンプにより注水するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の構成によれば、エリア間に水位差が生じたら、制御手段の制御により、注水ポンプを止めることなく、水位の低いエリアに補助注水ポンプによる注水を行うから、停止による注水時間のロスを抑えることができる。
【0016】
請求項2の構成によれば、予め補助注水ポンプを駆動してケーソン外部への排水状態とすることにより、水位の低いエリアを選択接続して速やかに注水を開始することができる。
【0017】
請求項3の構成によれば、区画毎に水位を計測し、補助注水ポンプにより複数の区画のエリア毎の平均水位が最低のエリアに注水して、エリア間の水位差を低減することができる。
【0018】
請求項4の構成によれば、区画毎に水位を計測し、ケーソンの傾斜角度が設定許容角度以上になると、複数の区画のエリア毎の平均水位が最低のエリアに補助注水ポンプにより注水してエリア間の水位差を低減し、水平状態に近付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】本発明の実施例2を示す注水ポンプと補助注水ポンプに係るケーソンの平面説明図である。
【
図6】同上、注水ポンプと水位計に係るケーソンの平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例0021】
図1~
図4は、本発明の実施例1を示し、同図に示すように、コンクリート製などの水中構造物である据付ケーソン1は、例えば既設水中構造物である既設防波堤に沿って海底のマウンド上に据え付けられ、平面方形の底板2の四方に壁体たる外壁3,3,3,3を設け、これら周囲の外壁3,3,3,3間に平面で前後方向,左右方向の壁体たる隔壁4,4を設けて複数の区画K1,K2,K3,K4を升目状に配置している。
【0022】
この例では、
図1に示すように、左側には、2つの区画K1,K2が前後に並んで配置されると共に、右側には、2つの区画K3,K4が前後に並んで配置されている。また、前後に並んだ2つの区画K1,K2間の隔壁4の下部側に通水孔5を穿設して、連通する区画K1,K2により第1の注水エリアE1を形成し、前後に並んだ2つの区画K3,K4間の隔壁4の下部側に通水孔5を穿設して、連通する区画K3,K4により第2の注水エリアE2を形成している。
【0023】
また、前記エリアE1,E2に注水する注水制御装置11は、複数の注水ポンプ12,12・・・を備え、この例では各区画K1,K2,K3,K4毎に注水ポンプ12を配置し、エリアE1,E2毎に2台の注水ポンプ12,12が配置されている。尚、注水ポンプ12は、上部に吐出し口を有すると共に、下部に吸込み口を有し、海面下に配置される。また、前記吐出し口に縦管路(図示せず)の下端を接続し、前記縦管路を前記ケーソン1の外壁3の外面に添わせて縦設し、その縦管路の上端に略逆U字状の折返し管路の一端を連結しており、前記外壁3の上面側を挟むようにして前記折返し管路を配置すると共に、その折返し管路を前記外壁3に固定し、前記折返し管路の他端をエリア上に配置している。そして、前記水中ポンプ12は前記縦管路に吊設されている。従って、水中ポンプ12を駆動すると、前記吸込み口から海水が吸い込まれ、この海水が前記縦管路と折返し管路を通って該折返し管路の他端からエリア内に落下する。また、水中たる海に沈設する場合、注水ポンプ12はケーソン1の外部の水たる海水を吸引してケーソン1に注水するものである。
【0024】
また、注水制御装置11は、パーソナルコンピュータなどの制御手段13を備え、この制御手段13により駆動制御される。尚、
図1中14は注水制御装置11の電源たる発電機であり、この発電機14は図示しない船舶たる起重機船に搭載されている。
【0025】
前記注水制御装置11は、補助注水手段15を備える。この補助注水手段15は、海水を吸引する補助注水ポンプ16と、この補助注水ポンプ16の吐出し側を、エリアE1,E2とケーソン外部のいずれか1つに選択的に接続して放出する接続切換手段17を備える。尚、補助注水ポンプ16は、注水ポンプ12に比べて吐出し量の小さいものが用いられる。
【0026】
前記接続切換手段17は、前記補助注水ポンプ16の吐出し側に接続した吐出し管20を備え、この吐出し管20の管端に第1の開閉手段たる第1の電磁弁21Bを設け、この第1の電磁弁21Bに第1の注水管21を接続している。また、前記吐出し管20に第2及び第3の注水管22,23を分岐して接続し、これら第2及び第3の注水管22,23の途中に、第2及び第3の開閉手段たる第2及び第3の電磁弁22B,23Bを設けている。尚、電磁弁21B,22B,23Bは、ダイヤフラム式であって、図示しない弁体内の通水部の弁座にダイヤフラムが当接して前記通水部を全開・全閉するものである。
【0027】
このように補助注水ポンプ16と、第1~3の注水管21,22,23の注水口たる管端21T,22T,23Tとの間には、それぞれ1台の第1~3の電磁弁21B,22B,23Bが配置されている。尚、第3の注水管23は、第2の注水管22の第2の電磁弁22Bの手前で分岐するように設けてもよく、全ての電磁弁21B,22B,23Bを閉めた状態で、第1~3の電磁弁21B,22B,23Bのいずれか1つを開くと対応する注水管21,22,23の1つが注水可能なように構成すれば、注水管21,22,23及び電磁弁21B,22B,23Bの配置は適宜選定できる。
【0028】
そして、前記第1~第3の管端21T,22T,23Tの3つを、第1及び第2のエリアE1,E2とケーソン1の外部の3つのいずれかに配置する。この例では、
図1に示すように、第1の管端21Tをケーソン1の外部の海面上に配置して外部に接続し、第2の管端22Tを第1のエリアE1の区画K2の上方に配置して接続し、第3の管端23Tを第2のエリアE2の区画K3の上方に配置して接続している。
【0029】
従って、制御手段13の後述する制御により補助注水ポンプ16を駆動し、第1の電磁弁21Bのみを開くと、管端21Tからケーソン1の外部に放出され、第2の電磁弁22Bのみを開くと、第1のエリアE1に注水され、第3の電磁弁23Bのみを開くと、第2のエリアE2に注水される。
【0030】
前記注水制御装置11は、ケーソン1内への注水状態を検出するため、ケーソン1内の水位を検出する水位検出手段たる超音波水位計31を、各区画K1,K2,K3,K4毎に設け、4台の超音波水位計31,31,31,31を備える。また、ケーソン1には、該ケーソン1の外側の水位(海面水位)を検出する複数(4台)の超音波水位計31A,31A,31A,31Aが設けられている。
【0031】
それら超音波水位計31,31Aは水面に対して超音波パルスを送波し、水面に反射した超音波パルスを超音波水位計31,31Aが受波し、送波時刻と受波時刻との差分(遅延)時間に基づいて、超音波水位計31,31Aと水面との間の距離を測定するように構成されている。
【0032】
前記超音波水位計31,31Aは、棒状のサポート材30などによりケーソン1の上面位置近傍に配置され、超音波水位計31,31,31,31により各区画K1,K2,K3,K4内の水位を検出する。また、超音波水位計31A,31A,31A,31Aによりケーソン1の水面からの高さを検出することができ、この水面からの高さによりケーソン1の底板2の底面の水面からの深さを算出することができる。さらに、外部データである潮位のデータと超音波水位計31A,31A,31A,31Aの測定データにより、ケーソン1の底面とケーソン1の下方の海底との離隔を算出することができる。尚、超音波水位計31A,31A,31A,31Aはケーソン1に対する平面位置が前後対称で左右対称に配置されている。
【0033】
このように超音波水位計31,31Aを用いることにより、従来の投げ込み式の水位計に比べて、水位計の設置・撤去時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
また、前記注水制御装置11は、ケーソン1の傾斜を検出する2台の二軸式傾斜計32,32が前記ケーソン1に設けられており、
図1に示すように、ケーソン1の一側方向(
図1中で上下方向)の中央で、一側方向と交差する交差方向(
図1中で左右方向)の両側でケーソン1の上面近傍に二軸式傾斜計32,32が配置されている。
【0035】
前記二軸式傾斜計32は、図示しないチャンバー内に電解液を満たし、そのチャンバー内の底面に、左右2本の金属電極が水平に左右2組配置され、即ち4本の金属電極が並んでおり、前記チャンバーの左右傾斜に伴い、前記電解液の液面は水平に保たれるが、前記底面が傾斜するから、それぞれの電極上の電解液の量が変化する。左右2本の金属電極の直線距離は、前記傾斜の有無に係らず一定で変化はないが、前記傾斜による左右2組の電極上の周囲を含めた導電量に差が生じる。ここで近傍浮遊電解効果と考えられる左右2組の金属電極の導電量の差を検出して傾斜に対応した電気信号を得ることができ、ケーソン1の傾斜方向及び傾斜角度を検出することができる。
【0036】
尚、通常は2台の二軸式傾斜計32,32の測定値の平均をケーソン1の傾斜角度として使用するが、2台の二軸式傾斜計32,32により測定された傾斜角度の差が角度差設定値以上になり、この設定値以上で所定時間経過すると、測定値が0度に近い二軸式傾斜計32の測定値を傾斜角度として使用する。尚、所定時間が経過する前に、傾斜角度の差が角度差設定値未満になった場合は、経時をリセットし、再度、角度差設定値以上になってから、所定時間の経時を0から開始する。また、それら角度差設定値と前記所定時間は、任意に設定することができ、例えば前記角度差設定値は1~5度(1度以上、5度以下)、好ましくは1~3度、前記所定時間は1~15秒の範囲で設定可能であり、この例では前記角度差設定値を1.5度、前記所定時間を5秒に設定している。
【0037】
このように二軸式傾斜計32,32を2台使用し、これらの平均値をケーソン1の傾斜角度とすることで測定値の精度を向上することができる。また、精密機器である二軸式傾斜計32,32の測定値の差が少なくとも1度以上となるということは、他に水位計でも制御を行っているから、大きな測定値を示す二軸式傾斜計32に異常が発生していると考えることができ、前記平均値から0度に近い測定値の二軸式傾斜計32の測定値を用いるように切り換えることにより、引き続き傾斜角度に基く制御を正確に行うことができる。
【0038】
また、超音波水位計31,31A及び二軸式傾斜計32は電気的に前記制御手段13に接続され、それらの測定データなどに基いて前記制御手段13により注水制御装置11の制御が行われる。
【0039】
以下、制御手段13による制御の一例を説明する。制御1として、
図3に示すように、全ての注水ポンプ12,12,12,12を駆動し(ステップ101)、ケーソン1内に連続注水が行われている状態で、超音波水位計31,31,31,31により対応する各区画K1,K2,K3,K4の水位を検出し(ステップ103)、次にステップ104において、それら測定値からエリア毎の区画の平均水位を算出する。
【0040】
具体的に、この例ではエリアE1の区画K1,K2の平均水位H1を算出し、エリアE2の区画K3,K4の平均水位H2を算出する。そして、平均水位の差(H1-H2)が水位差設定値である80cm以上になったら(ステップ104にて「YES」)、最低平均水位のエリアに補助注水ポンプ16により注水し(ステップ105)、注水開始後、各区画K1,K2,K3,K4の水位を検出(ステップ106)する。尚、前記水位差設定値は、任意に設定することができるが、100cmより小さい。また、本実施例のようにエリアE1,E2が2つの場合、一方のエリアの平均水位が最高平均水位であり、これより低い他方のエリアの平均水位が最低平均水位である。
【0041】
同型の注水ポンプ12,12,12,12を用いても、それらの新旧や接続した管路の相違などにより注水量には差が生じるため、例えば、連続注水の結果、前記エリアE1の平均水位H1がエリアE2の平均水位H2より80cm高くなったら、水位が低いエリアE2に補助注水手段15により注水を行うと共に、表示手段に「エリア毎の平均水位差が規定値を超えています。」を表示し、その後「水位が低いエリアへ補助注水ポンプにより加水を開始します。」と警報を表示する。
【0042】
水位が低いエリアに注水する前の初期段階で、補助注水ポンプ16は駆動しており、この状態で電磁弁21Bを開成し、残りの電磁弁22B,23Bを閉成し、補助注水ポンプ16は、吸引した海水を管端21Tから海に排水している(ステップ102)。この補助注水ポンプ16が連続駆動する状態で、水位の低いエリアE2に切り換えて注水するため、電磁弁23Bを開成した後、すぐに電磁弁21Bを閉成し、管端23TからエリアE2の区画K3に注水を行うことができる。
【0043】
こうすることにより、全ての注水ポンプ12,12,12,12を駆動した状態で、エリアの平均水位差を解消するように、補助注水ポンプ16による注水を速やかに行うことができる。尚、この駆動状態で、吐出し量は注水ポンプ12が補助注水ポンプ16より大きい。
【0044】
また、制御1においては、最低平均水位のエリアE2への補助注水ポンプ16の注水を開始した後、以下の条件で補助注水ポンプ16の最低平均水位のエリアE2へ注水を停止する。平均水位の差(H1-H2)が停止水位差設定値である60cm以下になると(ステップ107にて「YES」)、ステップ108に移行し、設定所定時間、例えば1分間だけ経過したら、最低水位のエリアE2への補助注水ポンプ16の注水を停止する。この場合、補助注水ポンプ16を連続駆動した状態で、電磁弁21B,23Bを切り替えて、最低平均水位のエリアへの注水をケーソン1の外部への放出に切り換える(ステップ108)。
【0045】
前記停止水位差設定値は、前記水位差設定値である80cm未満で、80cmの1/2以上とすることが好ましく、この範囲で任意に設定でき、停止水位差設定値の60cm以下になった後、設定経過時間である1分間経過するまで継続して注水を行うことにより、水位差が60cmより更に下がるから、停止水位差設定値である60cm以下になった時点で切り替える場合に比べて、最高平均水位のエリアE1と最低平均水位のエリアE2との水位差を低減することができる。尚、前記設定経過時間は任意に設定することができる。
【0046】
一方、
図3のフローチャート図には図示しないが、平均水位の差(H1-H2)が停止水位差設定値である60cm以下になった後、設定経過時間である1分間経過する前に、平均水位の差が60cmを越えた場合は、最低平均水位のエリアE2への注水を継続し、ステップ106の前に移行するように制御することもできる。このようにすれば、停止水位差設定値である60cm以下になった時点で切り替える場合に比べて、最高平均水位のエリアE1と最低平均水位のエリアE2との水位差を低減することができる。
【0047】
前記制御1中において、水位差が80cm未満の条件で、前記制御手段13は制御2を行う。この制御2では、超音波水位計31,31,31,31により対応する各区画K1,K2,K3,K4の水位から、少なくともエリアE1内で隣合う区画K1,K2の水位差である区画水位差を算出し、エリアE2内で隣合う区画K3,K4の水位差である区画水位差を算出し、区画水位差が80cm以上になると、全ての注水ポンプ12を停止し、また、補助注水ポンプ16がケーソン1内に注水している場合は、補助注水ポンプ16も停止する。そして、エリアE1内の区画K1,K2は通水孔5により連通し、エリアE2内の区画K3,K4は通水孔5により連通しており、水位差が出るのは通水孔5が塞がれるなどの異常時であるから、ケーソン1内に注水している全注水ポンプ12,12,12,12,16を停止する。尚、後述する実施例2のように、前後左右に隣り合わない対角線位置の区画の区画水位差を算出するから、制御2では、エリア内の全ての区画の区画水位差を算出して制御することができる。
【0048】
また、表示手段に「異常水位を検知しました。」を表示し、その後「全エリアへ注水ポンプを停止します。」と警報を表示する。
【0049】
前記超音波水位計31を用いた制御1と並行して、二軸式傾斜計32の測定データを用いた制御3を前記制御手段13が行うことができる。この制御3では、
図4に示すように、全ての注水ポンプ12,12,12,12を駆動し(ステップ101)、上述したように電磁弁21B,22B,23Bを切り替えると共に、補助注水ポンプ16を駆動し、管端21Tからケーソン1の外部に排水(ステップ102)する。これらステップ101,102は同時又は前後してもよい。
【0050】
次に、超音波水位計31,31・・・により各区画の水位を検出すると共に、2台の二軸式傾斜計32,32によりケーソン1の傾斜角度を検出し(ステップ303)、ケーソン1の傾斜角度が設定値である設定許容角度θS未満であれば(ステップ304にて「NO」)、ステップ303の前に戻り、ステップ303とステップ304を繰り返す。ケーソン1の傾斜角度が設定許容角度以上になると(ステップ304にて「YES」)、図示しない経時手段によりステップ305において許容設定時間を計測し、許容設定時間が経過する迄ステップ303の前に戻り(ステップ305にて「NO」)、ステップ303で検出した傾斜角度が設定許容角度以上の場合(ステップ304にて「YES」)は、設定時間の計測を続け(ステップ305)、一方、ステップ303で検出した傾斜角度が設定許容角度未満になった場合(ステップ304にて「NO」)は、ステップ303の前に戻る。
【0051】
ステップ305からステップ303に戻り、ステップ304,ステップ305を繰り返し、設定時間が経過すると(ステップ305にて「YES」)、必要な電磁弁21B,22B,23Bを切り替え、ステップ303で得られた区画K1,K2,K3,K4の水位からエリア毎の区画の平均水位を算出し、この最低平均水位のエリアに補助注水ポンプ16により注水を行う(ステップ306)。尚、ステップ306の後、制御1のステップ106に移行するように制御してもよく、ステップ106に移行すれば、上述したように、最高平均水位と最低平均水位の差が前記停止水位差設定値以下で、前記設定所定時間が経過すると、最低平均水位のエリアへの注水が終了する。また、前記設定許容角度及び許容設定時間は、任意に設定可能であり、例えば、前記設定許容角度を1.5度、許容設定時間を1分程度に設定することが好ましい。
【0052】
また、表示手段に「傾斜角が規定値を超えています。」を表示し、その後「水位が低いエリアへ補助注水ポンプにより加水を開始します。」と警報を表示する。
【0053】
前記制御1~3と並行して、制御4を前記制御手段13が行うことができる。この制御4は、ステップ101からステップ103の後、エリアE1,E2の平均水位の差が前記水位差設定値である100cm以上になった場合、または、隔壁4を挟んで前後又は左右に隣合う区画K1,K2,K3,K4の区画水位差が100cm以上になった場合、これらの場合は注水制御装置11の例えば注水ポンプ12,16に異常が発生した場合であるから、ケーソン1内に注水している全注水ポンプ12,12,12,12,16を停止する。また、表示手段に「水位差が限界値を超えました。注水ポンプを停止します。」と警報を表示する。尚、前記エリアE1,E2の平均水位の差と前記区画水位差の算出を繰り返す。また、斜めに隣合う区画K1,K4の区画水位差又は斜めに隣合う区画K2,K3の区画水位差が100cm以上になった場合も、ケーソン1内に注水している全注水ポンプ12,12,12,12,16を停止するように制御してもよい。
【0054】
そして、例えば、1次注水では、ケーソン1の底面と据付面の間隔が、事前に設定した任意の設定値になるまで、注水ポンプ12,12,12,12を稼働し、制御3によりケーソン1の傾斜角度が事前に設定した任意の設定値(設定許容角度)未満となるように補助注水ポンプ16による注水を自動で行う。尚、1次注水では、海底の据付面に対するケーソン1の底面との高さが例えば設定値である1m以下となるまで注水を行う。
【0055】
次の2次注水では、ケーソン1の据付位置への移動後、ケーソン1が着底するまで、注水ポンプ12,12,12,12を稼働させ、ケーソン1の傾斜角度が事前に設定した任意の設定値(設定許容角度)未満となるように補助注水ポンプ16による注水を自動で行う。
【0056】
次の3次注水では、ケーソン1の着底後、所定の高さまで注水ポンプ12,12,12,12を稼働させ、ケーソン1の傾斜角度が事前に設定した任意の設定値(設定許容角度)未満となるように補助注水ポンプ16による注水を自動で行う。尚、3次注水では、海底の据付面にケーソン1の底面が着底後、区画の水位が所定の高さに達するまで注水を行う。また、1次~3次注水において、制御1,制御2及び制御4を適宜併用することができる。
【0057】
このように本実施例では、請求項1に対応して、複数のエリアE1,E2を備えたケーソン1の注水制御装置11において、複数のエリアE1,E2に対応してそれぞれ配置され、対応するエリアE1,E2に注水する注水ポンプ12,12,12,12と、複数のエリアE1,E2に選択的に接続され、接続されたエリアE1,E2に注水する補助注水ポンプ16と、補助注水ポンプ16を水位の低いエリアE1,E2に注水するように制御する制御手段13と、を備えるから、エリアE1,E2間に水位差が生じたら、制御手段13の制御により、注水ポンプ12,12,12,12を止めることなく、水位の低いエリアE1,E2に補助注水ポンプ16による注水を行うから、停止による注水時間のロスを抑えることができる。
【0058】
このように本実施例では、請求項2に対応して、複数のエリアE1,E2及びケーソン1の外部に補助注水ポンプ16を選択的に接続する接続切換手段17を備えるから、予め補助注水ポンプ16を駆動してケーソン1の外部への排水状態とすることにより、水位の低いエリアE1,E2を選択接続して速やかに注水を開始することができる。
【0059】
このように本実施例では、請求項3に対応して、複数のエリアE1,E2は、連通する複数の区画K1,K2,K3,K4を備え、区画K1,K2,K3,K4の水位を検出する水位計31,31,31,31を設け、制御手段13は、水位計31,31,31,31で検出した複数のエリアE1,E2の複数の区画のエリアE1,E2毎の平均水位が最低水位のエリアE1,E2に補助注水ポンプ16により注水するように制御するから、区画K1,K2,K3,K4毎に水位を計測し、補助注水ポンプ16により区画K1,K2,K3,K4の平均水位が最低のエリアE1,E2に注水して、エリアE1,E2間の水位差を低減することができる。
【0060】
このように本実施例では、請求項4に対応して、傾斜計32を備え、制御手段13は、傾斜計32により計測したケーソン1の傾斜角度が設定値たる設定許容角度θS以上になると、水位計31,31,31,31で検出した複数のエリアE1,E2の複数の区画のエリアE1,E2毎の平均水位が最低水位のエリアE1,E2に補助注水ポンプ16により注水するように制御するから、区画K1,K2,K3,K4毎に水位を計測し、ケーソン1の傾斜角度が所定角度以上になると、区画の平均水位が最低のエリアE1,E2に補助注水ポンプ16により注水してエリアE1,E2間の水位差を低減し、傾斜角度を減少し、水平状態に近付けることができる。
【0061】
以下、実施例上の効果として、超音波水位計31,31Aを用いることにより、設置時間が例えば5分程度で済み、従来の投げ込み式の水位計に比べて、水位計の設置・撤去時間を大幅に短縮することができる。また、二軸式傾斜計32,32を2台使用し、平均値を用いることにより、測定値の精度を高めることができ、また、1台が異常値を示したら残りの1台のみの測定値を用いることで、機器トラブルに対応できる。さらに、上述したように2台の二軸式傾斜計32,32により測定された傾斜角度の差が角度差設定値以上になり、設定値以上で所定時間経過すると、一方の二軸式傾斜計32に異常が発生したと判断して、測定値が0度に近い二軸式傾斜計32の測定値を傾斜角度として測定値に用いることにより、速やかに機器トラブルに対応することができる。
【0062】
また、制御1では、補助注水ポンプ16の駆動により最低平均水位のエリアE2に注水し(ステップ105)、最低平均水位のエリアE2への補助注水ポンプ16の注水を開始した後、平均水位の差(H1-H2)が停止水位差設定値である60cm以下になると(ステップ107にて「YES」)、ステップ108に移行し、設定所定時間、例えば1分間だけ経過したら、最低水位のエリアE2への補助注水ポンプ16の注水を停止するから、停止水位差設定値になった時点で切り替える場合に比べて、最高平均水位のエリアE1と最低平均水位のエリアE2との水位差を低減することができる。
【0063】
また、エリアE2内で隣合う区画K3,K4の水位差である区画水位差を算出し、区画水位差が80cm以上になると、全ての注水ポンプ12を停止し、また、補助注水ポンプ16がケーソン1内に注水している場合は、補助注水ポンプ16も停止するから、区画水位が100cm以上になること確実に防止できる。
【0064】
二軸式傾斜計32,32による傾斜角度の計測と、超音波水位計31,31,31,31の計測値に基く最低平均水位のエリアの検出とを組み合わせて補助注水ポンプ16の注水により、傾斜角度を0に近付けることができる。また、ケーソン1には、該ケーソン1の外側の水位(海面水位)を検出する複数(4台)の超音波水位計31A,31A,31A,31Aを平面において前後左右対称位置に配置したから、ケーソン1の底面位置などを正確に測定することができる。
【0065】
また、エリアE1,E2の平均水位の差が前記水位差設定値である100cm以上になった場合、または、隔壁4を挟んで前後又は左右に隣合う区画K1,K2,K3,K4の区画水位差が100cm以上になった場合、ケーソン1内に注水している全注水ポンプ12,12,12,12,16を停止するから、水圧により設計強度以上の力が隔壁4に加わることを防止できる。尚、100cmの水位差設定値は、隔壁4の設計強度において許容可能な水位差であり、100cmに限定されず、任意に設定可能であるが、この許容可能な水位差に比べて、制御1の水位差設定値は小さく設定される。そして、水位差設定値及び区画水位差が100cmにならないように、水位差設定値及び区画水位差を、100cm未満から水位差設定値である80cmを越える範囲で、例えば下限は88cm(水位差設定値が80cmの場合の1.1倍)以上、上限は95cm以下又は100cm未満に設定することが好ましい。
また、前記隔壁4Aには前記通水孔5が設けられており、同一エリア内において、前後に隣り合う区画同士は前記通水孔5により連通し、左右に隣り合う区画同士は前記通水孔5により連通し、エリア内の4つの区画が連通する。
また、前記エリアE1,E2,E3,E4に注水する注水制御装置11は、複数の注水ポンプ12,12・・・を備え、この例ではエリア毎に1台の注水ポンプ12を配置している。
従って、上述した制御1~4により補助注水ポンプ16を駆動し、第1の電磁弁21Bのみを開くと、管端21Tからケーソン1の外部に排水され、第2の電磁弁22Bのみを開くと、第1のエリアE1に注水され、第3の電磁弁23Bのみを開くと、第2のエリアE2に注水され,第4の電磁弁24Bのみを開くと、第3のエリアE3に注水され、第5の電磁弁25Bのみを開くと、第4のエリアE4に注水される。
実施例1と同様に制御1~4が行われ、前記制御1では、エリア毎の区画の平均水位を算出し、平均水位が最高水位である最高平均水位のエリアと平均水位が最低水位の最低平均水位のエリアの水位差が、前記水位差設定値である80cm以上になったら、最低平均水位のエリアに補助注水ポンプ16により加水を行う。
また、前記制御2では、超音波水位計31,31,31,31・・・により対応する各区画K1~K16の水位から、例えばエリアE1では、同エリアE1の全ての区画K1~K4同士の区画水位差を算出し、区画水位差が80cm以上になると、全ての注水ポンプ12を停止し、また、補助注水ポンプ16がケーソン1内に注水している場合は、補助注水ポンプ16も停止するように制御し、他のエリアE2~E4も同様に制御する。尚、制御3は、超音波水位計31,31・・・により各区画の水位を検出すると共に、2台の二軸式傾斜計32,32によりケーソン1の傾斜角度を検出して実施例1と同様に行われる。
また、前記制御4では、ステップ101からステップ103の後、エリア毎に区画の平均水位を算出し、最高平均水位のエリアと最低平均水位のエリアの水位差が、水位差設定値である100cm以上になった場合、または、隔壁4,4Aを挟んで前後又は左右に隣合う区画K1,K2・・・K16の区画水位差が100cm以上になった場合、ケーソン1内に注水している全注水ポンプ12,12,12,12,16を停止する。尚、水位差設定値及び区画水位差などは実施例1と同様に設定することができる。
以下、実施例上の効果として、管端23T,24T,25Tを、ケーソン1の角部であり第2のエリアE2の区画K6,第3のエリアE3の区画K11,第4のエリアE4の区画K16に接続しているから、傾斜角度の低減に効果的な注水を行うことができる。
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、エリアの数及びエリアにおける区画の数は実施例に限定されず、前後に区画が4つ並び、左右に5つ並ぶタイプ等各種のケーソンに適用可能であり、前後に区画が4つ並び、左右に5つ並ぶ場合は、実施例2のようにE1~E4の4つのエリアの左右一側に、前後に区画が4つ並んだエリアE5を追加したものでもよい。また、開閉手段,水位計及び傾斜計は、実施例のタイプに限らず、各種のタイプのものを用いることができる。さらに、請求項1及び2においては、1つのエリアが1つの区画で構成されたものでもよい。