(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167572
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電極組成物の製造方法及びリチウムイオン電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20221027BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221027BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073443
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】石溪 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA09
5H050EA23
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA08
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】効率よく導電パスが形成された電極組成物を得ることができるリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】電極活物質粒子と導電性繊維とを含むリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法であって、上記導電性繊維のみを乾式撹拌する第1撹拌工程と、上記第1撹拌工程を経た導電性繊維と上記電極活物質粒子との混合物を乾式撹拌する第2撹拌工程とを含み、上記第1撹拌工程における撹拌を、内容物を収納したまま回転する回転容器と、上記回転容器の内方でかつ上記回転容器の回転中心軸線より偏心した位置に上記回転中心軸線と平行に配置された撹拌羽根とを備え、上記回転容器と上記撹拌羽根がそれぞれ回転して内容物の撹拌を行うミキサーを用いて行う、ことを特徴とするリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質粒子と導電性繊維とを含むリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法であって、
前記導電性繊維のみを乾式撹拌する第1撹拌工程と、
前記第1撹拌工程を経た導電性繊維と前記電極活物質粒子との混合物を乾式撹拌する第2撹拌工程とを含み、
前記第1撹拌工程における撹拌を、内容物を収納したまま回転する回転容器と、前記回転容器の内方でかつ前記回転容器の回転中心軸線より偏心した位置に前記回転中心軸線と平行に配置された撹拌羽根とを備え、前記回転容器と前記撹拌羽根がそれぞれ回転して内容物の撹拌を行うミキサーを用いて行うことを特徴とするリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法。
【請求項2】
前記電極活物質粒子が、表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子である、請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第1撹拌工程を経た後の導電性繊維のかさ密度が、0.003~0.050g/mLである請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法。
【請求項4】
前記電極活物質粒子が正極活物質粒子であって、
前記第2撹拌工程において、撹拌により前記導電性繊維と前記正極活物質粒子との混合物のかさ密度を低下させ、
前記混合物のかさ密度が0.80~1.30g/mLの範囲にある時点で前記第2撹拌工程を終了する、
請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法。
【請求項5】
前記電極活物質粒子が負極活物質粒子であって、
前記第2撹拌工程において、撹拌により前記導電性繊維と前記負極活物質粒子との混合物のかさ密度を低下させ、
前記混合物のかさ密度が0.30~0.70g/mLの範囲にある時点で前記第2撹拌工程を終了する、
請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法で得られたリチウムイオン電池用電極組成物を含む電極形成用組成物を基材上に塗布する塗布工程を含むことを特徴とする、リチウムイオン電池用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用電極組成物の製造方法及びリチウムイオン電池用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気特性に優れたリチウムイオン電池を得るためには、電極活物質層中に効率良く導電パスを形成する必要がある。この目的のために導電助剤として導電性繊維を使用する試みがなされてきた。
【0003】
特許文献1には、電極活物質と導電助剤に非水電解液を添加した混合物を、所望の形状となるように押出成形する方法や、所定の領域に充填して圧縮する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたように、電極活物質と導電助剤と非水電解液とを含む混合物を電極として成形するためには、混合物中の構成部材を均一に分散し、導電パスを形成することが必要となる。
しかしながら、構成部材を均一に分散させようと混合撹拌すればするほど、導電助剤が破断したり、導電助剤が凝集して凝集体を形成する等して、電極組成物中で効率良く導電パスを形成できないという課題があった。電極組成物中で効率よく導電パスが形成されないと、充放電を繰り返した際の容量低下が大きくなり、サイクル特性が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、効率よく導電パスが形成された電極組成物を得ることができるリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、電気特性に優れたリチウムイオン電池用電極を得ることのできるリチウムイオン電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、電極活物質粒子と導電性繊維とを含むリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法であって、前記導電性繊維のみを乾式撹拌する第1撹拌工程と、前記第1撹拌工程を経た導電性繊維と前記電極活物質粒子との混合物を乾式撹拌する第2撹拌工程とを含み、前記第1撹拌工程における撹拌を、内容物を収納したまま回転する回転容器と、前記回転容器の内方でかつ前記回転容器の回転中心軸線より偏心した位置に前記回転中心軸線と平行に配置された撹拌羽根とを備え、前記回転容器と前記撹拌羽根がそれぞれ回転して内容物の撹拌を行うミキサーを用いて行うことを特徴とするリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法、及び、本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法で得られたリチウムイオン電池用電極組成物を含む電極形成用組成物を基材上に塗布する塗布工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法によれば、効率よく導電パスが形成された電極組成物を得ることができる。また、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法によれば、電気特性に優れたリチウムイオン電池用電極を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1撹拌工程で使用されるミキサーの具体例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例3に係る混合物のSEM画像である。
【
図3】
図3は、比較例1に係る混合物のSEM画像である。
【
図4】
図4は、実施例5に係る混合物のSEM画像である。
【
図5】
図5は、比較例4に係る混合物のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0011】
[リチウムイオン電池用電極組成物の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法は、電極活物質粒子と導電性繊維とを含むリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法であって、上記導電性繊維のみを乾式撹拌する第1撹拌工程と、上記第1撹拌工程を経た導電性繊維と上記電極活物質粒子との混合物を乾式撹拌する第2撹拌工程とを含み、上記第1撹拌工程における撹拌を、内容物を収納したまま回転する回転容器と、上記回転容器の内方でかつ上記回転容器の回転中心軸線より偏心した位置に上記回転中心軸線と平行に配置された撹拌羽根とを備え、上記回転容器と上記撹拌羽根がそれぞれ回転して内容物の撹拌を行うミキサーを用いて行う、ことを特徴とする。
【0012】
本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法は、第1撹拌工程及び第2撹拌工程を備える。
【0013】
(第1撹拌工程)
第1撹拌工程では、導電性繊維のみを乾式撹拌する。
【0014】
第1撹拌工程における撹拌は、内容物を収納したまま回転する回転容器と、回転容器の内方でかつ回転容器の回転中心軸線より偏心した位置に回転中心軸線と平行に配置された撹拌羽根とを備え、回転容器と撹拌羽根がそれぞれ回転して内容物の撹拌を行うミキサーを用いて行う。
【0015】
第1撹拌工程で使用されるミキサーの例について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法の第1撹拌工程において好ましく使用することができるミキサーの一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すミキサー1は、内容物を収納したまま回転する回転容器4を備える。回転容器4は回転中心軸線CL
1(以下、中心軸線CL
1ともいう)を中心に回転する。
中心軸線CL
1は水平面(図中に線Hで示す)に対して傾いていることが好ましい。
ミキサー1は、回転中心軸線CL
2(以下、中心軸線CL
2ともいう)を中心に回転する撹拌羽根3を備える。撹拌羽根3は回転駆動するヘッド部5とヘッド部5に取り付けられ回転容器4の底板7の近傍まで延びた棒状部材6を有する。
棒状部材6は少なくとも1本設けられていることが好ましいが、
図1に示すミキサーでは6本設けられている。
撹拌羽根3は回転容器の中心軸線CL
1より偏心した位置に配置される。
撹拌羽根3が回転容器の中心軸線CL
1より偏心した位置に配置されるとは、撹拌羽根3の回転の中心軸線CL
2が回転容器の中心軸線CL
1と一致しないことを意味する。
【0016】
撹拌羽根3のヘッド部5は、回転容器の中心軸線CL1と平行に配置されて回転駆動される。そして、ヘッド部5には棒状部材6が中心軸線CL2を中心にして周囲に均等角度でかつ同一距離に複数本配置されている。
棒状部材の形状は直線状に限定されるものではなく所定形状に曲がって形成されていてもよい。また、棒状部材の断面形状は円形が好ましいが、楕円形、多角形その他の所定形状であってもよい。
【0017】
回転容器4の中心軸線CL1を中心とした回転、又は、撹拌羽根3の中心軸線CL2を中心とした回転が行われることにより、ミキサー1内での内容物の撹拌が行われる。
このミキサー1を使用する場合には、回転容器4の中心軸線CL1を中心とした回転、及び、撹拌羽根3の中心軸線CL2を中心とした回転を同時に行うことが好ましい。この2種類の回転を同時に行うことにより、導電性繊維の破断及び凝集を起こすことなく、導電性繊維のかさ密度を低下させることができる。
【0018】
回転容器の回転方向と撹拌羽根の回転方向は同一方向であっても逆方向であってもよい。
図1には回転容器の回転方向(矢印B
1)が時計回りであり撹拌羽根の回転方向(矢印B
2)が反時計回りである例を示している。回転容器と撹拌羽根がこのように運動することにより、棒状部材が回転容器内を円周運動して、棒状部材が混合物を回転容器内の広い面積にわたって撹拌することができる。
【0019】
上記条件を満たすミキサーを第1撹拌工程で用いることで、導電性繊維の破断及び凝集を起こすことなく、導電性繊維のかさ密度を低下させることができる。
【0020】
上記条件を満たすミキサーとしては、例えば、日本アイリッヒ(株)製インテンシブミキサー(型番:EL-1)や、中央機工(株)製レーディゲミキサー等が挙げられる。
一方、上記条件を満たさないミキサーとしては、例えば、アキラ機工(株)製バランスグランや、遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}等が挙げられる。
【0021】
第1撹拌工程で導電性密度のかさ密度を低下させることで、続く第2撹拌工程における導電性繊維の分散性を高めることができる。
【0022】
上記ミキサーを使用した第1撹拌工程における好ましい撹拌条件は以下の通りである。
回転容器の回転条件: 撹拌羽根と逆回転で低速回転(好ましい周速度は1~3m/s)
撹拌羽根の周速度:特に限定されないが、例えば、10~30m/s、好ましくは17~25m/s
すなわち、第1撹拌工程においては、上記ミキサーを使用して、回転容器の回転方向を、撹拌羽根の回転方向と逆方向とすることが好ましい。また、回転容器の周速度を1~3m/sとすることが好ましい。
さらに、第1撹拌工程においては、上記ミキサーを使用して、撹拌羽根の周速度を10~30m/sとすることが好ましく、17~25m/sとすることがより好ましい。
【0023】
上記条件を満たすミキサーを用いる場合、第1撹拌工程における撹拌時間を伸ばしても、導電性繊維の破断や凝集が生じない。従って、第1撹拌工程における撹拌時間は、60秒以上であればよい。
第1撹拌工程における撹拌時間の上限は特に限定されないが、製造工程を簡素化する観点からは、300秒以下であることが好ましい。
【0024】
第1撹拌工程を経た後の導電性繊維のかさ密度は、0.003~0.050g/mLであることが好ましい。
【0025】
導電性繊維のかさ密度は、(株)セイシン企業製マルチテスター(MT-02)を用いて、ふるい目開き:710μm、振動数:50-52Hz、振り幅:1.5mm、マルチテスター上の設定:15、で測定することができる。
【0026】
[導電性繊維]
第1撹拌工程で用いられる導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。
これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
【0027】
導電性繊維の平均繊維長は、5~20μmであることが好ましい。
導電性繊維の平均繊維径は、0.1~20μmであることが好ましい。
【0028】
(第2撹拌工程)
第2撹拌工程では、第1撹拌工程を経た導電性繊維と、電極活物質粒子との混合物を乾式撹拌する。
【0029】
第2撹拌工程では、撹拌により導電性繊維と電極活物質粒子との混合物のかさ密度を低下させる。
【0030】
電極活物質粒子は、正極活物質粒子であってもよく、負極活物質粒子であってもよい。
【0031】
第2撹拌工程では、混合物のかさ密度を所定の値に調整することが好ましい。
具体的には、電極活物質粒子が正極活物質粒子の場合には、混合物のかさ密度を0.80~1.30g/mLに調整することが好ましい。
すなわち、第2撹拌工程において、撹拌により導電性繊維と正極活物質粒子との混合物のかさ密度を低下させ、混合物のかさ密度が0.80~1.30g/mLの範囲にある時点で第2撹拌工程を終了することが好ましい。
【0032】
電極活物質粒子が負極活物質粒子の場合には、混合物のかさ密度を0.30~0.70g/mLに調整することが好ましい。
すなわち、第2撹拌工程において、撹拌により導電性繊維と負極活物質粒子との混合物のかさ密度を低下させ、混合物のかさ密度が0.30~0.70g/mLの範囲にある時点で第2撹拌工程を終了することが好ましい。
【0033】
第2撹拌工程で用いられるミキサーは、第1撹拌工程と同じであってもよく、異なっていてもよいが、第1撹拌工程と同じミキサーを用いることが好ましい。
第1撹拌工程と同じミキサーを第2撹拌工程で用いる場合、第1撹拌工程と第2撹拌工程を連続して行ってもよい。
【0034】
第2撹拌工程における好ましい撹拌条件は以下の通りである。
回転容器の回転条件:撹拌羽根と逆回転で低速回転(好ましい周速度は1~3m/s)
撹拌羽根の周速度:特に限定されないが、例えば、10~30m/s、好ましくは17~25m/s
乾式撹拌の時間:5~30秒
すなわち、第2撹拌工程においては、上記ミキサーを使用して、回転容器の回転方向を、撹拌羽根の回転方向と逆方向とすることが好ましい。また、回転容器の周速度を1~3m/sとすることが好ましい。
さらに、第2撹拌工程においては、上記ミキサーを使用して、撹拌羽根の周速度を10~30m/sとすることが好ましく、17~25m/sとすることが好ましい。
【0035】
混合物のかさ密度を所定の範囲に調整する観点から、第2撹拌工程における撹拌時間は、5~30秒であることが好ましい。
撹拌時間が5秒未満であると、混合物のかさ密度を充分に低下させられない場合がある。また、撹拌時間が30秒を超えると、混合物中で電極活物質粒子及び/又は導電性繊維が凝集してしまい、混合物のかさ密度が所望の値よりも大きくなってしまうことがある。
【0036】
第2撹拌工程で乾式混合される混合物には、導電性繊維と電極活物質粒子の他に、シリカ等が含まれていてもよい。
【0037】
<電極活物質粒子>
電極活物質粒子としては、正極活物質粒子及び負極活物質粒子が挙げられる。
【0038】
(正極活物質粒子)
正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0039】
正極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることがさらに好ましい。
【0040】
なお、本明細書において、体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0041】
(負極活物質粒子)
負極活物質粒子としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0042】
負極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~60μmであることがより好ましく、2~40μmであることがさらに好ましい。
【0043】
電極活物質粒子は、表面の少なくとも一部が被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子であってもよい。
電極活物質粒子が正極活物質粒子である被覆電極活物質粒子を被覆正極活物質粒子ともいい、電極活物質粒子が負極活物質粒子である被覆電極活物質粒子を被覆負極活物質粒子ともいう。
【0044】
電極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層は、高分子化合物を含む。
高分子化合物としては、例えば、アクリルモノマー(a)を必須構成単量体とする重合体を含む樹脂であることが好ましい。
具体的には、被覆電極活物質粒子の被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%を超え、98重量%以下であることが好ましい。被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として93.0~97.5重量%であることがより好ましく、95.0~97.0重量%であることがさらに好ましい。
被覆負極活物質粒子の被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。
【0045】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)を含有してもよい。
【0046】
アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)としては、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。
【0047】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、下記一般式(1)で表されるモノマー(a2)を含有してもよい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4~12の直鎖又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0048】
上記一般式(1)で表されるモノマー(a2)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。R1はメチル基であることが好ましい。
R2は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0049】
モノマー(a2)は、R2の基によって(a21)と(a22)に分類される。
(a21)R2が炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0050】
(a22)R2が炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0051】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)を含有してもよい。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0052】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることが好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることがより好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが最も好ましい。
被覆層を構成する高分子化合物としては、例えば、モノマー(a1)としてマレイン酸を用いた、アクリル酸及びマレイン酸の共重合体、モノマー(a2)としてメタクリル酸2-エチルヘキシルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、エステル化合物(a3)としてメタクリル酸メチルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体等が挙げられる。
【0053】
モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)の合計含有量は、電極活物質粒子の体積変化抑制等の観点から、単量体全体の重量を基準として2.0~9.9重量%であることが好ましく、2.5~7.0重量%であることがより好ましい。
【0054】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含有しないことが好ましい。
【0055】
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0056】
また、被覆層を構成する高分子化合物は、物性を損なわない範囲で、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)と共重合可能であるラジカル重合性モノマー(a5)を含有してもよい。
ラジカル重合性モノマー(a5)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a51)~(a58)のモノマーを用いることができる。
【0057】
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール又は炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート。
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0058】
(a52)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]。
【0059】
(a53)窒素含有ビニル化合物
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド。
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]。
【0060】
(a53-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}。
【0061】
(a53-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)。
【0062】
(a53-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート。
【0063】
(a53-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等。
【0064】
(a54)ビニル炭化水素
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等。
【0065】
(a54-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン。
【0066】
(a54-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン。
【0067】
(a55)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]。
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]。
【0068】
(a56)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)。
【0069】
(a57)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)。
【0070】
(a58)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)。
【0071】
ラジカル重合性モノマー(a5)を含有する場合、その含有量は、単量体全体の重量を基準として0.1~3.0重量%であることが好ましい。
【0072】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は3,000、より好ましい下限は5,000、さらに好ましい下限は7,000である。一方、上記高分子化合物の重量平均分子量の好ましい上限は100,000、より好ましい上限は70,000である。
【0073】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する)、テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0074】
被覆層を構成する高分子化合物は、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)で行われる。
【0075】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばDMF)及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、さらに好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、さらに好ましくは30~80重量%である。
【0076】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。さらに安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
【0077】
被覆層を構成する高分子化合物は、該高分子化合物をカルボキシル基と反応する反応性官能基を有する架橋剤(A’){好ましくはポリエポキシ化合物(a’1)[ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等)及びポリグリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル))等]及び/又はポリオール化合物(a’2)(エチレングリコール等)}で架橋してなる架橋重合体であってもよい。
【0078】
架橋剤(A’)を用いて被覆層を構成する高分子化合物を架橋する方法としては、電極活物質粒子を、被覆層を構成する高分子化合物で被覆した後に架橋する方法が挙げられる。具体的には、電極活物質粒子と被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液を混合し脱溶剤することにより、被覆電極活物質粒子を製造した後に、架橋剤(A’)を含む溶液を該被覆電極活物質粒子に混合して加熱することにより、脱溶剤と架橋反応を生じさせて、被覆層を構成する高分子化合物が架橋剤(A’)によって架橋される反応を電極活物質粒子の表面で起こす方法が挙げられる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
【0079】
被覆層は、高分子化合物の他に、更に導電剤を含んでいてもよい。
【0080】
導電剤は、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
また、導電剤として、第1撹拌工程で使用される導電性繊維と同じものを用いることができる。
【0081】
導電剤の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
導電剤を上記範囲で含有することにより、被覆層の導電性を増加させることができる。
導電剤の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として2.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0082】
被覆層は、高分子化合物の他に、更にセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0083】
セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0084】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0085】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化インジウム(In2O3)、Li2B4O7、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3や、ABO3(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、及び、四ほう酸リチウム(Li2B4O7)が好ましい。
【0086】
セラミック粒子としては、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、ガラスセラミック粒子であることが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LixM”2P3O12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.05P2.95O12、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.05P2.95O12等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質が挙げられる。
【0088】
ここで、ガラスセラミック粒子におけるLi2Oの配合割合は酸化物換算で8質量%以下であることが好ましい。
NASICON型構造でなくとも、Li、La、Mg、Ca、Fe、Co、Cr、Mn、Ti、Zr、Sn、Y、Sc、P、Si、O、In、Nb、Fからなり、LISICON型、ぺロブスカイト型、β-Fe2(SO4)3型、Li3In2(PO4)3型の結晶構造を、持ち、Liイオンを室温で1×10-5S/cm以上伝導する固体電解質を用いても良い。
【0089】
上述したセラミック粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
セラミック粒子の体積平均粒子径は、エネルギー密度の観点及び電気抵抗値の観点から、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、1~150nmであることがさらに好ましい。
【0091】
セラミック粒子の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制することができる。
セラミック粒子の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として2.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0092】
[リチウムイオン電池用電極の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法で得られたリチウムイオン電池用電極組成物を含む電極形成用組成物を基材上に塗布する塗布工程を含むことを特徴とする。
【0093】
本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法により得られたリチウムイオン電池用電極組成物では、導電性繊維が破断、凝集することなく、電極組成物中に均一に分散している。そのため、本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法により得られたリチウムイオン電池用電極組成物を含む電極形成用組成物を基材上に塗布する塗布工程を含む本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、電気特性に優れたリチウムイオン電池用電極を得ることができる。
【0094】
塗布工程で用いられる電極形成用組成物は、電解液を含んでいてもよい。
上記の電極形成用組成物は、例えば、本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法により得られたリチウムイオン電池用電極組成物を、電解液と混合する混合工程により得ることができる。
【0095】
上記混合工程で使用されるミキサーは、第2撹拌工程と同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記混合工程で使用される、第2撹拌工程と異なるミキサーとしては、遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}等が挙げられる。
【0096】
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0097】
電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4及びLiN(FSO2)2等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiN(FSO2)2である。
【0098】
溶媒としては、公知の電解液に用いられている非水溶媒が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0099】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環(δ-バレロラクトン等)のラクトン化合物等が挙げられる。
【0100】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0101】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0102】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0103】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
【0104】
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
【0105】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
電解液中の電解質の濃度は、1.2~5.0mol/Lであることが好ましく、1.5~4.5mol/Lであることがより好ましく、1.8~4.0mol/Lであることがさらに好ましく、2.0~3.5mol/Lであることが特に好ましい。
【0107】
電極形成用組成物に占める電解液の重量割合は、50~85重量%であることが好ましい。
【0108】
なお、混合工程では、電解液の代わりに、電解液を構成する溶媒を用いることもできる。
【0109】
電極成形用組成物は、電解液の他に、粘着剤を含んでいてもよい。
電極形成用組成物が粘着剤を含む場合、リチウムイオン電池用電極組成物を電解液と混合する前に、粘着剤と混合することが好ましい。
【0110】
粘着剤としては、市販の粘着剤[ポリシックシリーズ 三洋化成工業(株)製等]を用いても良い。
【0111】
粘着剤は、溶剤乾燥型である公知のリチウムイオン電池電極用バインダー(デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン及びスチレン-ブタジエン共重合体等)とは異なる材料である。
【0112】
[塗布工程]
塗布工程では電極形成用組成物を基材上に塗布する。
電極形成用組成物を基材上に塗布することで、電極形成用組成物を成形してなる電極活物質層を基材上に形成することができる。
【0113】
電極形成用組成物を基材上に塗布する方法は特に限定されず、例えば、ディスペンサー、ダイコーター及びロールコータ等を用いる方法が挙げられる。
【0114】
電極形成用組成物を基材上に塗布した後、電極形成用組成物を加圧してもよい。
加圧圧力は特に限定されないが、0.1~200MPaが好ましい。
【0115】
電極を製造するために使用する基材としては、集電体を使用することが好ましい。
基材として集電体を用いると、リチウムイオン電池を製造する際に、電極活物質層と集電体とを組み合わせる工程を省略することができる。
【0116】
集電体は、正極集電体であってもよく、負極集電体であってもよい。
正極集電体及び負極集電体としては、樹脂集電体又は金属集電体を使用することができる。
【0117】
樹脂集電体としては、例えば、導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報等に記載されている)等を好適に用いることができる。
【0118】
樹脂集電体は、導電性フィラーと樹脂集電体の母体を構成する樹脂(マトリックス樹脂ともいう)とを含むことが好ましい。
マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0119】
導電性フィラーとしては、被覆層に含まれていてもよい導電剤として例示したものと同様のものを好適に用いることができる。
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。
【0120】
金属集電体を構成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料が挙げられる。
【0121】
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法において、電極活物質粒子同士は互いに結着していないことが好ましい。すなわち、電極形成用組成物を基材上に塗布して得られる電極活物質層は、非結着体であることが好ましい。
ここで、非結着体とは、電極活物質粒子同士が互いに結合していないことを意味し、結合とは、不可逆的に電極活物質粒子同士が固定されていることを意味する。
上述した粘着剤を用いた場合であっても、電極活物質粒子同士が互いに結着していない状態は維持される。
【0122】
電極形成用組成物を基材上に塗布する際に公知の電極用バインダー(結着剤ともいう)を併用しないことによって、電極活物質層を非結着体とすることができる。
公知の電極用バインダーとしては、例えば、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで固体化して、電極活物質粒子同士を不可逆的に固定するものである。
【0123】
上記手順により、基材上に電極成形組成物の成形体である電極活物質層が形成されたリチウムイオン電池用電極を得ることができる。
【0124】
[リチウムイオン電池の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法により得られたリチウムイオン電池用電極を用いてリチウムイオン電池を製造する方法としては、例えば、電極活物質粒子が正極活物質粒子であるリチウムイオン電池用正極と、電極活物質粒子が負極活物質粒子であるリチウムイオン電池用負極とを作製し、正極集電体、セパレータ、負極集電体と共に積層する方法が挙げられる。
このとき、リチウムイオン電池用正極の電極活物質層と、リチウムイオン電池用負極の電極活物質層とが、セパレータを介して対向するように配置する。
【0125】
リチウムイオン電池用正極において、基材が正極集電体である場合、リチウムイオン電池の製造方法において新たに正極集電体を準備する必要はない。また、リチウムイオン電池用負極において、基材が負極集電体である場合、リチウムイオン電池の製造方法において新たに負極集電体を準備する必要はない。従って、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法において、基材として電極集電体を用いていると、リチウムイオン電池用の製造方法において新たに電極集電体を準備する必要がなくなるため、リチウムイオン電池の製造工程を簡略化できる。
【0126】
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータが挙げられる。
【実施例0127】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0128】
<製造例1:被覆用高分子化合物の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、アクリル酸91部、メタクリル酸メチル9部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで、80℃に昇温して反応を3時間継続し、樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行い、DMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の被覆用高分子化合物を得た。
【0129】
<製造例2:被覆負極活物質粒子の作製>
製造例1で得られた被覆用高分子化合物0.1部をDMF5.3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm)76部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用高分子化合物溶液9部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]9部、カーボンナノファイバー[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]2部 及びガラスセラミック粒子(商品名「リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスLICGCTM焼結体-01」[(株)オハラ製]、体積平均粒子径1000nm)4部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子を得た。
【0130】
<実施例1>
(第1撹拌工程)
図1に示す形状のミキサーA[日本アイリッヒ(株)製、インテンシブミキサー(型式EL-1)]を準備し、ミキサーの回転容器に導電性繊維である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長11.3μm、平均繊維径13μm:かさ密度0.069g/mL]を投入して第1撹拌工程である乾式攪拌を行って導電性繊維のかさ密度を調整した。
第1撹拌工程における攪拌は、回転容器(混合パンともいう)の回転速度を撹拌羽根とは逆方向に85rpm(混合パンの内径:400mm、周速度1.8m/s)に、撹拌羽根(ローターともいう)の周速度を17m/sにセットし、乾式撹拌の時間を60秒間として行った。
第1撹拌工程後の導電性繊維のかさ密度は、0.030g/mLであった。
【0131】
(第2撹拌工程)
第1撹拌工程で得られた導電性繊維4.2部と、製造例2で得られた被覆負極活物質粒子206部とを混合した混合物を、第1撹拌工程と同じミキサーを使用して乾式撹拌して、第2撹拌工程を行った。
第2撹拌工程における攪拌は、回転容器(混合パンともいう)の回転速度を撹拌羽根とは逆方向に85rpm(混合パンの内径:400mm、周速度1.8m/s)に、撹拌羽根(ローターともいう)の周速度を17m/sにセットし、乾式撹拌の時間を20秒間として行った。
第2撹拌工程後の混合物のかさ密度は、0.66g/mLであった。
【0132】
<実施例2~4及び比較例1~2>
第1撹拌工程及び第2撹拌工程における撹拌条件(導電性繊維及びミキサーの種類並びに撹拌時間)を表1に示したように変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例2~4及び比較例1~2に係る混合物を得た。
なお、平均繊維長が16.6μmの導電性繊維は、導電性カーボンナノファイバー[(株)アルメディオ製:平均繊維径13μm:かさ密度0.025g/mL]である。
比較例1では、第1攪拌工程で使用するミキサーとして
図1に示す形状とは異なるミキサーB[アキラ機工(株)製 バランスグラン]を用い、比較例2では第1撹拌工程を行わず、原料となる導電性繊維をそのまま第2撹拌工程で使用した。
【0133】
<製造例3:被覆正極活物質粒子の作製>
製造例1で得られた被覆用高分子化合物0.1部をDMF5.3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末、体積平均粒子径4μm)84部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用高分子化合物溶液9部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]3部 及びガラスセラミック粒子(商品名「リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスLICGCTM焼結体-01」[(株)オハラ製]、体積平均粒子径1000nm)4部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子を得た。
【0134】
<実施例5>
(第1撹拌工程)
図1に示す形状のミキサーA[日本アイリッヒ(株)製、インテンシブミキサー、型式EL-1]を準備し、ミキサーの回転容器に導電性繊維である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長16.6μm、平均繊維径13μm:かさ密度0.025g/mL]を投入して第1撹拌工程である乾式攪拌を行って導電性繊維のかさ密度を調整した。
第1撹拌工程における撹拌は、回転容器(混合パンともいう)の回転速度を撹拌羽根とは逆方向に85rpm(混合パンの内径:400mm、周速度1.8m/s)に、撹拌羽根(ローターともいう)の周速度を17m/sにセットし、乾式撹拌の時間を60秒間として行った。
第1撹拌工程後の導電性繊維のかさ密度は、0.005g/mLであった。
【0135】
(第2撹拌工程)
第1撹拌工程で得られた導電性繊維4.2部と、製造例3で得られた被覆正極活物質粒子206部とを混合した混合物を、第1撹拌工程と同じミキサーを使用して、乾式撹拌し、第2撹拌工程を行った。
第2撹拌工程における攪拌は、回転容器(混合パンともいう)の回転速度を撹拌羽根とは逆方向に85rpm(混合パンの内径:400mm、周速度1.8m/s)に、撹拌羽根(ローターともいう)の周速度を17m/sにセットし、乾式撹拌の時間を20秒間として行った。
第2撹拌工程後の混合物のかさ密度は、0.83g/mLであった。
【0136】
<実施例6~7及び比較例3~4>
第1撹拌工程及び第2撹拌工程における撹拌条件(導電性繊維及びミキサーの種類並びに撹拌時間)を表1に示したように変更したほかは、実施例5と同様の手順で、実施例6~7及び比較例3~4に係る混合物を得た。
なお、比較例3では、第1攪拌工程で使用するミキサーとして
図1に示す形状とは異なるミキサーB[アキラ機工(株)製 バランスグラン]を用い、比較例4では第1撹拌工程を行わず、原料となる導電性繊維をそのまま第2撹拌工程で使用した。
【0137】
[導電性繊維の分散状態の確認]
各混合物について、第2撹拌工程を終了した後に、導電性繊維の分散状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。結果を表1に示す。
また、実施例3、比較例1、実施例5、比較例4については、SEM写真を、それぞれ、
図2、
図3、
図4、
図5に示す。
【0138】
【0139】
図2及び
図3の比較、及び、
図4及び
図5の比較から、本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法を用いると、導電性繊維が均一に分散したリチウムイオン電池用電極組成物を得ることができることを確認した。
【0140】
[リチウムイオン電池の製造]
<製造例4:電解液の作製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO2)2を2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液を作製した。
【0141】
[樹脂集電体の作製]
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名:「FloTube9000」、CNano社製]25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体用導電性フィルムを得た。次いで、得られた樹脂集電体用導電性フィルムを17.0cm×17.0cmとなるように切断し、片面にニッケル蒸着を施した後、電流取り出し用の端子(5mm×3cm)を接続した樹脂集電体を得た。
【0142】
<実施例8>
[リチウムイオン電池用負極の作製]
(混合工程)
製造例4で得られた電解液72部と実施例4に係る混合物206部を混合した後、遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで2分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液を2.3部更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間行い、負極形成用組成物を作製した。
【0143】
(塗布工程)
得られた負極形成用組成物を目付量が80mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが340μmの実施例8に係るリチウムイオン電池用負極(16.2cm×16.2cm)を作製した。
【0144】
[リチウムイオン電池用正極の作製]
(混合工程)
製造例4で得られた電解液42部と実施例5に係る混合物206部を混合した後、あわとり練太郎を用いて2000rpmで2分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液を2.3部更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間行い、正極形成用組成物を作製した。
【0145】
(塗布工程)
得られた正極形成用組成物を目付量が80mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが340μmの実施例8に係るリチウムイオン電池用正極(16.2cm×16.2cm)を作製した。
【0146】
[リチウムイオン電池の作製]
得られたリチウムイオン電池用負極及びリチウムイオン電池用正極を、セパレータ(セルガード製#3501)を介して組み合わせ、ラミネートセルを作製した。
【0147】
<比較例5~7>
負極形成用組成物及び正極形成用組成物を作製する際の混合物を、表2に示すものに変更したほかは、実施例8と同様の手順で、比較例5~7に係るラミネートセルを作製した。
【0148】
【0149】
[10サイクル後容量維持率の測定]
実施例8及び比較例5~7に係るラミネートセルを、45℃の条件下において、0.1Cの電流で4.2Vまでそれぞれ充電し、10分間の休止後、0.05Cの電流で2.5Vまで放電する充放電工程を、10分の休止を挟んで10回繰り返した。11回目の放電容量と初回の放電容量とを比較し、10サイクル後の容量維持率を求めた。結果を表2に示す。
【0150】
表2の結果より、本発明のリチウムイオン電池用電池の製造方法により製造されたリチウムイオン電池は、10サイクル容量維持率が80%以上と高く、導電性繊維が電極活物質層中で均一に分散していると考えられる。
本発明のリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられる双極型二次電池用及びリチウムイオン二次電池用等の電極を製造するために使用するリチウムイオン電池用電極組成物の製造方法として有用である。