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特開2022-167582真空ポンプおよび真空ポンプの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167582
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】真空ポンプおよび真空ポンプの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20221027BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20221027BHJP
   H02P 6/24 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F04D19/04 H
F04C25/02 B
H02P6/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073462
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 寿文
【テーマコード(参考)】
3H129
3H131
5H560
【Fターム(参考)】
3H129AA01
3H129AB06
3H129BB54
3H131AA02
3H131AA07
3H131BA13
3H131BA15
3H131CA38
3H131CA40
5H560AA10
5H560BB04
5H560DC13
5H560DC20
5H560EB01
5H560HB02
5H560HB10
5H560TT11
5H560TT15
5H560UA02
5H560XA12
(57)【要約】
【課題】安定した動作で停止時間を早めることが可能な真空ポンプを提供する。
【解決手段】真空ポンプは、真空ポンプ本体と、負荷発生部と、制御部と、を備える。真空ポンプ本体は、ロータと、モータと、を有する。モータは、ロータを駆動する。負荷発生部は、モータの回生電力の供給によってモータを減速するための負荷を発生可能である。制御部は、負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータを駆動するモータと、を有する真空ポンプ本体と、
前記モータの回生電力の供給によって前記モータを減速するための負荷を発生する負荷発生部と、
前記負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する制御部と、を備えた、
真空ポンプ。
【請求項2】
前記負荷発生部は、開状態において前記真空ポンプ本体の内部に大気を供給する電磁弁を有し、
前記制御部は、前記電磁弁へ供給される前記回生電力を徐々に増加させるように制御して前記電磁弁を前記開状態にする、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記負荷発生部は、前記回生電力を熱エネルギーに変換するブレーキ抵抗を有し、
前記制御部は、前記ブレーキ抵抗へ供給される前記回生電力を徐々に増加させるように制御する、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
開状態において前記回生電力を前記負荷発生部に供給し、閉状態において前記回生電力の前記負荷発生部への供給を停止するスイッチング素子を有し、
前記制御部は、前記スイッチング素子を開閉させるパルス信号を出力し、前記パルス信号を変調させることによって、前記負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記制御部は、前記パルス信号のパルス幅のデューティ比を徐々に増加させることによって、前記負荷発生部に供給する前記回生電力の供給を徐々に増加させる、
請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記回生駆動における前記モータの電圧を計測する電圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記電圧検出部の検出値に基づいて、前記負荷発生部に供給する前記回生電力を変更する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
外部からの前記真空ポンプへの電力供給に関する情報を検出する電力検出部を更に備え、
前記制御部は、前記電力検出部の検出に基づいて外部からの電力供給の停止を検出した場合、前記負荷発生部に供給される前記回生電力が徐々に増加されるように制御する、
請求項1~6のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記制御部は、前記電力検出部の検出に基づいて外部からの電力供給の停止を検出した場合、所定の遅延時間の後に、前記負荷発生部に供給される前記回生電力が徐々に増加されるように制御する、
請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
真空ポンプへの電力供給の停止を検出する検出工程と、
前記電力供給の停止を検出した後に、前記真空ポンプのロータを駆動するモータが回生駆動されて発生する回生電力から、電力の供給によって前記モータを減速するための負荷を発生可能な負荷発生部に供給される電力を徐々に増加する電力供給工程と、を備えた、
真空ポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプおよび真空ポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の分野において、高真空雰囲気にするために真空ポンプの一種であるターボ分子ポンプが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示すターボ分子ポンプには、ロータ、ロータを駆動するモータ部、およびロータとモータ部を収容するケーシングを有する真空ポンプ本体と、モータ部の駆動制御を行う制御装置が設けられている。
【0004】
小型のターボ分子ポンプは、持ち運びや移動が可能な真空装置に搭載されることが多く、このような装置は使用後に電源をオフするとすぐに、次の使用場所に移動したいという要望がある。ターボ分子ポンプは定格運転から停止までに1時間必要となる場合もあるため、モータの負荷を増やして減速を早めることが行われている。例えば、電磁弁を使用してターボ分子ポンプの減速時に大気を流入させることでモータの負荷を増やして減速を早めることが行われている。また、ブレーキ抵抗を用いて回生電力を熱エネルギーに変換することで、モータの負荷を増やすことも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-153367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
装置の電源をオフにすると、ターボ分子ポンプへの電源供給が断たれるため、ターボ分子ポンプは力行駆動から回生駆動に切り替わり、回生電力からモータの制御回路に電源供給を行いながら減速が行われる。
装置の電源がオフされるため、回生電力を使用して上述した電磁弁を開状態に駆動するが、電磁弁を開状態にする際に回生電力の負荷が急変する場合がある。その結果、回生電力が不足し、制御回路が動作しなくなる場合がある。
【0007】
本発明は、安定した動作で停止時間を早めることが可能な真空ポンプおよび真空ポンプの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る真空ポンプは、真空ポンプ本体と、負荷発生部と、制御部と、を備える。真空ポンプ本体は、ロータと、モータと、を有する。モータは、ロータを駆動する。負荷発生部は、モータの回生電力の供給によってモータを減速するための負荷を発生可能である。制御部は、負荷発生部に供給する回生電力が徐々に増加されるように制御する。
【0009】
本発明の他の一態様に係る真空ポンプの制御方法は、検出工程と、電力供給工程と、を備える。検出工程は、真空ポンプへの電力供給の停止を検出する。電力供給工程は、電力供給の停止を検出した後に、真空ポンプのロータを駆動するモータが回生駆動されて発生する回生電力から、電力の供給によってモータを減速するための負荷を発生可能な負荷発生部に供給される電力を徐々に増加する。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明の態様によれば、安定した動作で停止時間を早めることが可能な真空ポンプおよび真空ポンプの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る真空ポンプの外観図である。
図2】実施形態に係る真空ポンプの断面図である。
図3】実施形態に係る真空ポンプに設けられた制御回路を示す図である。
図4】実施形態に係る真空ポンプに設けられたコントローラの機能ブロックを示す図である。
図5】実施形態に係るPWM信号の一例を模式的に示す図である。
図6】実施形態に係るPPWM出力とベンディングバルブに供給される電流との関係を示す図である。
図7】実施形態に係るPWM出力を行った場合のモータ電圧の変化を示す図である。
図8】実施形態に係る負荷変化によってモータ電圧が目標値から変動した場合のPWM出力の変更を示す図。
図9】実施形態に係る真空ポンプの制御方法を示すフロー図である。
図10】実施形態の変形例に係る真空ポンプの制御回路を示す図である。
図11】実施形態の変形例に係るPPWM出力とベンディングバルブに供給される電流との関係を示す図である。
図12】回生電力を得ながら減速した場合のモータ電圧の変化のグラフを示す図である。
図13】回生電力を得ている最中に負荷が急変した場合のモータ電圧の変化のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
装置の電源をオフにすると、ターボ分子ポンプへの電源供給が断たれるため、ターボ分子ポンプは力行駆動から回生駆動に切り替わり、回生電力からモータの制御回路に電源供給を行いながら減速が行われる。図12は、回生電力を得ながら減速した場合のモータ電圧の変化のグラフを示す図である。図12の横軸は、時間(s)を示し、縦軸はモータ電圧(v)を示す。時刻t1で電源がオフされてターボ分子ポンプへの電源供給が停止されると、時刻t2で電源供給の停止が検出されて回生駆動に切り替えられる。回生電力を取り出す際には、モータ電圧が一定になるようにモータ制御が行われる。
【0013】
装置の電源がオフされるため、回生電力を使用して上述した電磁弁を開状態に駆動するが、電磁弁を開状態にする際に回生電力の負荷が急変する場合がある。図13は、回生電力を得ている最中に負荷が急変した場合のモータ電圧の変化のグラフを示す図である。図13の横軸は、時間(s)を示し、縦軸はモータ電圧(v)を示す。時刻t2の後に時刻t3において開閉弁を開状態にすると、時刻t3~t4に示すように回生電力が不足し、制御回路が動作しなくなり、時刻t4以降の電圧が逆起電圧そのままの電圧となる場合がある。また、ブレーキ抵抗に回生電力を供給する場合も同様であり、回生電力の消費が急変し、制御回路が動作しなくなる場合がある。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するものであり、以下、図面を参照して一実施形態に係る真空ポンプについて説明する。
【0015】
(真空ポンプの構成の概要)
図1は、実施形態に係る真空ポンプ1の外観図である。
【0016】
本実施の形態の真空ポンプ1は、ターボ分子ポンプと、ネジ溝ポンプとを含む。真空ポンプ1は、排気対象空間を含む排気対象装置に接続される。排気対象空間からのガスは、ターボ分子ポンプで排気された後、ネジ溝ポンプで排気され、真空ポンプ1の外に排気される。
【0017】
真空ポンプ1は、真空ポンプ本体2と、ベンディングバルブ3(負荷発生部、電磁弁)と、制御装置4と、を備える。真空ポンプ本体2は、排気対象空間からのガスを吸引し、外部に排出する。ベンディングバルブ3は、真空ポンプ本体2に取り付けられている。真空ポンプ本体2のロータ12(後述する)の回転を停止する際に、ベンディングバルブ3を開状態にして真空ポンプ本体2内に大気を流入させる。制御装置4は、真空ポンプ本体2のモータ13(後述する)の回転を制御する。制御装置4は、ベンディングバルブ3の開閉を制御する。
【0018】
(真空ポンプ本体2)
図2は、真空ポンプ本体2の断面図である。図2に示すように、真空ポンプ本体2は、筐体11と、ロータ12と、モータ13と、複数のステータ翼ユニット14と、ステータ円筒部15と、を有する。
【0019】
(筐体11)
筐体11は、ケーシング21と、ベース22と、を有する。ケーシング21およびベース22は、アルミニウム合金または鉄等の金属によって形成されている。ケーシング21は、一端にフランジ部を有する筒状の部材である。
【0020】
ケーシング21は、複数のステータ翼ユニット14と、ロータ12に設けられた複数段のロータ翼ユニット32と、を収容する。ケーシング21は、第1端部23と、第2端部24と、側面部25と、バルブポート26と、を含む。第1端部23は、フランジ部を形成する。第1端部23には、吸気口23aが設けられている。第1端部23には排気対象装置が接続される。第2端部24は、ロータ12の軸線方向A1において、第1端部23と反対側に位置している。第2端部24は、ベース22に接続される。側面部25は、第1端部23と第2端部24を繋ぐ。側面部25には、ベンディングバルブ3に接続されるバルブポート26が設けられている。ケーシング21の内側には、第1内部空間S1が形成されている。バルブポート26には、ケーシング21の内側に形成される第1内部空間S1とベンディングバルブ3と連通する連通口26aが形成されている。第1内部空間S1は、吸気口23aに連通している。
【0021】
ベース22は、ケーシング21の第2端部24側の開口を塞ぐように配置されている。ベース22は、ベース端部27と、排気ポート28と、を含む。ベース端部27は、ケーシング21の第2端部24に接続されている。ベース22とケーシング21に、ステータ円筒部15とロータ12に設けられているロータ円筒部33が収納されている。ベース22とケーシング21の内側に第2内部空間S2が形成される。第2内部空間S2は、ケーシング21の第1内部空間S1と連通している。排気ポート28は、ベース22の側面部に設けられている。排気ポート28には、排気口28aが形成されており、排気口28aは第2内部空間S2と連通している。
【0022】
排気対象空間から真空ポンプ本体2に流入したガス(気体分子)は、吸気口23aから第1内部空間S1に入る。ガスは、第1内部空間S1から第2内部空間S2に達する。ガスは、第2内部空間S2から排気口28aを経由して真空ポンプ本体2の外部に排出される。
【0023】
(ロータ12)
ロータ12は、シャフト31と、複数段のロータ翼ユニット32と、ロータ円筒部33と、を有する。
【0024】
シャフト31は、ロータ12の軸線方向A1に延びている。以下の説明では、軸線方向A1において、ケーシング21からベース22に向かう方向が下方と定義され、その反対方向が上方と定義される。
【0025】
真空ポンプ本体2は、ボールベアリング16と、タッチダウンベアリング17と、永久磁石磁気軸受18と、を更に有する。ボールベアリング16、タッチダウンベアリング17および永久磁石磁気軸受18は、ロータ12を回転可能に筐体11に支持する。ボールベアリング16は、ベース22に取り付けられている。タッチダウンベアリング17は、ケーシング21に取り付けられている。永久磁石磁気軸受18は、永久磁石18a、18bを有している。永久磁石18aは、ケーシング21に取り付けられている。永久磁石18bは、シャフト31に取り付けられている。永久磁石18bは、永久磁石18aの径方向外側に永久磁石18aと対向して配置されている。
【0026】
複数段のロータ翼ユニット32は、それぞれシャフト31に接続されている。複数段のロータ翼ユニット32は、軸線方向A1に互いに間隔をおいて配置されている。各々のロータ翼ユニット32は、複数のロータ翼34を含む、図示を省略するが、複数のロータ翼34の各々は、シャフト31を中心にして放射状に延びている。なお、図面においては、複数段のロータ翼ユニット32の1つ、および複数のロータ翼34の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼ユニット32および他のロータ翼34の符号は省略されている。
【0027】
ロータ円筒部33は、シャフト31に接続されている。ロータ円筒部33は、ロータ翼ユニット32の下方に配置されている。ロータ円筒部33は、軸線方向A1に延びている。ロータ円筒部33は、シャフト31の外周側においてシャフト31を囲むように配置されている。ロータ円筒部33は、円筒状の外側ロータ円筒部33aと、円筒状の内側ロータ円筒部33bと、を有する。外側ロータ円筒部33aは、内側ロータ円筒部33bの径方向外側に配置されている。シャフト31、内側ロータ円筒部33b、および外側ロータ円筒部33aは、順に径方向外側に向かって配置されている。
【0028】
(モータ13)
モータ13は、ロータ12を回転駆動する。モータ13としては、例えばDCブラシレスモータが用いられる。モータ13は、モータロータ35と、モータステータ36と、を有する。モータロータ35は、シャフト31に取り付けられている。モータステータ36は、ベース22に取り付けられている。モータステータ36は、モータロータ35と向かい合って配置されている。
【0029】
(複数段のステータ翼ユニット14)
複数段のステータ翼ユニット14は、ケーシング21の内面に接続されている。複数段のステータ翼ユニット14は、軸線方向A1において、互いに間隔を空けて配置されている。複数段のステータ翼ユニット14の各々は、複数段のロータ翼ユニット32の間に配置されている。各々のステータ翼ユニット14は、複数のステータ翼37を含む。図示を省略するが、複数のステータ翼37は、それぞれシャフト31を中心として放射状に延びている。
【0030】
複数段のロータ翼ユニット32と複数段のステータ翼ユニット14とは、ターボ分子ポンプを構成する。なお、図面においては、複数のステータ翼ユニット14の1つ、および複数のステータ翼37の1つのみに符号が付されており、他のステータ翼ユニット14および他のステータ翼37の符号は省略されている。
【0031】
(ステータ円筒部15)
ステータ円筒部15は、外側ステータ円筒部15aと、内側ステータ円筒部15bと、を有する。外側ステータ円筒部15aは、ケーシング21またはベース22に取り付けられている。内側ステータ円筒部15bは、ベース22に取り付けられている。外側ステータ円筒部15aおよび内側ステータ円筒部15bは、円筒状であって、軸線方向A1に沿って形成されている。内側ステータ円筒部15bは、シャフト31の径方向外側に配置されている。外側ステータ円筒部15aは、内側ステータ円筒部15bの外側に配置されている。
【0032】
外側ステータ円筒部15aと内側ステータ円筒部15bの間に、外側ロータ円筒部33aが配置されている。内側ステータ円筒部15bの径方向内側に内側ロータ円筒部33bが配置されている。外側ステータ円筒部15aの内周側面と外側ロータ円筒部33aの外周側面の一方には、ネジ状溝(図示せず)が形成されている。内側ステータ円筒部15bの内周側面と内側ロータ円筒部33bの外周側面の一方には、ネジ状溝(図示せず)が形成されている。ステータ円筒部15とロータ円筒部33とは、ネジ溝ポンプを形成する。
【0033】
(ベンディングバルブ3)
ベンディングバルブ3は、図1に示すように、真空ポンプ本体2の側面に取り付けられる。ベンディングバルブ3は、図2に示すバルブポート26に接続される。ベンディングバルブ3は、例えば、ソレノイドバルブである。ベンディングバルブ3は、非通電状態において閉状態であり、所定の電圧を通電することによって開状態となる。
【0034】
ベンディングバルブ3が開状態において、真空ポンプ本体2の内部空間(第1内部空間S1および第2内部空間S2)と外部が連通する。真空ポンプ本体2の駆動を停止する際に、ベンディングバルブ3を開状態にすることによって真空ポンプ本体2の内部空間に大気が流入する。これによって、ロータ12の回転に負荷が生じ、モータ13を早く減速させることができる。
【0035】
(制御装置4)
制御装置4は、図1に示すように、筐体11の一側面の下部側に取り付けられている。制御装置4は、コントロールパネル41と、制御回路42と、を有する。図3は、制御装置4に設けられている制御回路42を示す図である。
【0036】
コントロールパネル41は、ユーザによって操作される。コントロールパネル41は、モータ13を駆動および停止するための釦41aおよびモータ13の状態を示すランプ41b等を有している。なお、制御装置4には、パーソナルコンピュータ等に接続可能な端子が設けられており、パーソナルコンピュータから各種設定を行うことが可能であってもよい。
【0037】
制御回路42は、モータ13およびベンディングバルブ3の制御を行う。制御回路42は、インターフェースコネクタ(以下、IFコネクタ)43、バルブ接続コネクタ44(図3ではCNと示す)、ケーブル45と、母線46a、46bと、DC/DCコンバータ47と、3相インバータ回路48と、スイッチング素子49(電力変更部)と、ダイオード50と、第1電圧センサ51(電圧検出部)と、第2電圧センサ52(電力検出部)と、回転数検出部53(後述する図4参照)と、コントローラ54(制御部)と、を有する。
【0038】
IFコネクタ43には、直流電源から例えば24Vの直流電力が入力される。IFコネクタ43を介してモータ13およびコントローラ54に電力が供給される。IFコネクタ43には、電力の供給および遮断を行うスイッチが設けられていてもよい。また、電力の供給および遮断を行うスイッチは、IFコネクタ43と直流電源の間若しくは、直流電源と商用交流電源の間に設けられていてもよい。
【0039】
バルブ接続コネクタ44は、図1に示すように、制御装置4の側面に設けられている。バルブ接続コネクタ44には、図3に示すようにベンディングバルブ3に接続されたケーブル45(図1では省略)の一端が接続される。ケーブル45の他端は、ベンディングバルブ3に接続される。
【0040】
母線46aはIFコネクタ43を介して24V側に接続されている。母線46bは、IFコネクタ43を介してグランド側に接続されている。また、母線46a、46bは、バルブ接続コネクタ44に接続されている。
【0041】
DC/DCコンバータ47は、2つの母線46a、46bに接続されている。DC/DCコンバータ47には、IFコネクタ43を介して24Vの直流電力が供給される。DC/DCコンバータ47は、供給された直流電力の電圧を変換してコントローラ54に供給する。また、DC/DCコンバータ47は、回生運転時にモータ13で生じた回生電力の電圧を変換してコントローラ54に供給する。
【0042】
3相インバータ回路48は、IFコネクタ43を介して供給された電力を用いて、モータ13を回転駆動する。3相インバータ回路48は、母線46aまたは母線46bに接続された複数のスイッチング素子48a~48fを有する。これらスイッチング素子48a~48fには、例えばトランジスタが用いられる。3相インバータ回路48は、スイッチング素子48a~48fが3相ブリッジ接続して構成されており、各相の出力端子は、モータ13の各相巻き線にそれぞれ接続されている。スイッチング素子48a~48fの各々のベースには、コントローラ54からのPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力され、スイッチング素子48a~48fの各々が開閉制御されることによって、電力が供給されてモータ13が回転する。なお、コントローラ54からのスイッチング素子48a~48fおよびスイッチング素子49(後段にて説明する)への信号線は、図を分かり易くするため点線で示す。
【0043】
また、外部からの電力を遮断して真空ポンプ本体2を停止する際には、モータ13が回生駆動されて回生電力が発生する。回生電力はDC/DCコンバータ47を介してコントローラ54に供給される。コントローラ54は、供給される電力を利用して3相インバータ回路48を制御し、モータ13の回転を制御する。モータ13で発生する回生電力は、スイッチング素子49が開状態においてベンディングバルブ3に供給される。
【0044】
スイッチング素子49は、3相インバータ回路48とバルブ接続コネクタ44の間の母線46bに配置されている。スイッチング素子49は開状態において母線46bを接続し、閉状態において母線46bを遮断する。スイッチング素子49には、例えばトランジスタが用いられる。スイッチング素子49のベースには、コントローラ54からのPWM信号が入力される。スイッチング素子49は、入力されるPWM信号に応じて開閉する。
【0045】
例えば、外部から電力が供給されている状態では、スイッチング素子49を開閉することによって、外部電力からベンディングバルブ3への電力の供給または遮断が行われる。また、モータ13において回生電力が発生している状態では、スイッチング素子49を開閉することによって、回生電力からベンディングバルブ3への電力の供給または遮断が行われる。
【0046】
ダイオード50は、母線46aのDC/DCコンバータ47との接続箇所とIFコネクタ43の間に配置されている。ダイオード50は、モータ13において発生する回生電力の外部電力への逆流防止のために設けられている。
【0047】
第1電圧センサ51は、母線46aのIFコネクタ43とダイオード50の間に配置されている。第1電圧センサ51は、外部電力から供給される電圧を検出し、検出値をコントローラ54に出力する。
【0048】
第2電圧センサ52は、母線46aのダイオード50とDC/DCコンバータ47との接続箇所の間に配置されている。第2電圧センサ52は、回生駆動の際にモータ13で発生する回生電力の電圧を検出し、検出値をコントローラ54に出力する。
【0049】
後述する図4に示す回転数検出部53は、ロータ12の回転数を検出または演算する。回転数検出部53は、検出値をコントローラ54に出力する。
【0050】
コントローラ54は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従って真空ポンプ1の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、真空ポンプ1を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。記憶装置は、例えば、後述する閾値およびモータの目標電圧値のデータを記憶している。
【0051】
コントローラ54は、スイッチング素子48a~48f、およびスイッチング素子49を制御する。
【0052】
図4は、コントローラ54の機能ブロックを示す図である。
【0053】
コントローラ54は、停電検出部61と、モータ電圧検出部62と、モータ用PWM信号出力部63と、バルブ用PWM信号出力部64と、を有する。
【0054】
停電検出部61は、第1電圧センサ51の検出値を取得し、外部電源からの電力の供給が停止したか否かを検出する。例えば、上述した記憶装置に閾値が記憶されている。停電検出部61は、第1電圧センサ51の検出値と閾値を比較し、検出値が閾値よりも小さい値の場合、外部電源からの電力の供給が停止したこと(電源オフ)を検出する。
【0055】
モータ電圧検出部62は、第2電圧センサ52の検出値を取得し、回生駆動時におけるモータ13からの回生電圧が、目標とするモータ電圧よりも高くなったこと若しくは低くなったことを検出する。例えば、上述した記憶装置にモータ電圧の目標値が記憶されている。モータ電圧検出部62は、第2電圧センサ52の検出値が目標値よりも高くなっているか低くなっているかを検出する。
【0056】
モータ用PWM信号出力部63は、モータ13を駆動するためのPWM信号を3相インバータ回路48のスイッチング素子48a~48fに出力する。PWM信号に基づいてスイッチング素子48a~48fの各々が開閉されることによって、モータ13が回転制御される。
【0057】
モータ用PWM信号出力部63は、外部電源から電力が供給される力行駆動の際に、回転数検出部53の検出値に基づいて、排気対象空間からガスを吸引するために適切なモータ13の目標回転数になるように外部電源からの電力を用いてPWM信号を3相インバータ回路48に出力する。
【0058】
また、モータ用PWM信号出力部63は、外部電源からの電力が停止した回生駆動の際に、第2電圧センサ52および回転数検出部53の検出値に基づいて、回生電力を取り出すために適切なモータ13の目標回転数および目標電圧値になるようにモータ13で発生する回生電力を用いてPWM信号を3相インバータ回路48に出力する。
【0059】
バルブ用PWM信号出力部64は、停電検出部61によって外部電力の供給が停止されていることが検出された場合、周期に対するパルス幅の比であるデューティ比が0~100%まで徐々に大きくなるようにPWM信号をスイッチング素子49に出力する。デューティ比の0~100%までの増加は例えば約1秒間で行うことができる。
【0060】
図5は、デューティ比が徐々に大きくなるように設定されたPWM信号の一例を模式的に示す図である。図5では、横軸が時間(s)を示し、縦軸が電圧(V)を示す。周期をTcとし、1つのパルス幅をTpとする。デューティ比は、Tp/Tc×100(%)で表すことができる。また、パルスの電圧は、Vpで示されている。図5に示すPWM信号では、所定時間Tdごとにデューティ比が大きくなるように設定されている。なお、図5では、分かり易くするために、時間0から順番に所定時間Td(1)、Td(2)、・・・Td(n)と番号を付し、各々の所定時間Tdにおけるパルスのパルス幅もTp(1)、Tp(2)、・・・Tp(n)と番号を付す。また、図を分かり易くするために、各々の所定時間Tdにおける周期Tcを4周期として図示する。
【0061】
具体的には、最初の所定時間Td(1)では、デューティ比が0(ゼロ)に設定されており、パルスが生じていない。図示されないが、パルス幅Tp(1)がゼロに設定されている。
【0062】
2番目の所定時間Td(2)では、1周期ごとにパルス幅Tp(2)のパルスが出力される。3番目の所定時間Td(3)では、2番目のパルス幅Tp(2)よりも時間の長いパルス幅Tp(3)のパルスが出力される。4番目の所定時間Td(4)では、3番目のパルス幅Tp(3)よりも時間の長いパルス幅Tp(4)のパルスが出力される。このように、徐々にデューティ比が大きくなるパルス信号が出力され、最終的にデューティ比が100%となる。図5では、所定時間Td(n)においてパルス幅Tp(n)が周期Tcと同じ時間幅となり、デューティ比が100%の信号が出力される。
【0063】
なお、図5の例に限定されることなく、例えば、毎周期ごとにデューティ比を増加させることで、デューティ―比を0%から100%に変化させてもよい。
【0064】
図6は、PWM出力とベンディングバルブ3に供給される電流との関係を示す図である。図6では、横軸は時間(s)を示し、時刻0(s)(ゼロ)で電力供給が停止される(停電される)。左側の縦軸は、PWM出力(%)を示す。PWM出力(%)はデューティ比である。PWM出力の変化は実線で示されている。右側の縦軸は、ベンディングバルブ3に供給される電流の平均値(A)を示す。ベンディングバルブ3に供給される電流の平均値の変化は破線で示されている。図6に示すように、停電後、PWM信号の出力を徐々に増加させた場合には、ベンディングバルブ3に供給される電流が徐々に増えるため負荷の急変が発生しない。なお、PWM信号におけるデューティ比の増加は、図6に示すように時間に対して直線的に増加してもよいが、これに限らず指数関数的に増加してもよい。また、回生電力からベンディングバルブ3に供給する電力を徐々に増加するとは、回生電力の消費の急変を抑えることが出来る程度の割合で電力を増加することである。
【0065】
図7は、図5および図6のようなPWM出力を行った場合のモータ電圧の変化を示す図である。図7の横軸は、時間(s)を示し、縦軸はモータ電圧(V)を示す。時刻t1において真空ポンプ1への電力供給が停止される。そして、時刻t2において停電検出部61が電力供給の停止を検出する。図7に示すグラフでは、図13と比較して、PWM信号によってベンディングバルブ3に供給される電力が徐々に増加し、時刻t5においてベンディングバルブ3が開状態となる。このように負荷が徐々に増加するため、回生電力の不足が発生せずに回生電力によって駆動することができ、時刻t6以降には回生電力により一定のモータ電圧を得て制御回路42を動作することができる。
【0066】
このように、PWM信号のデューティ比を徐々に大きくすることによって、周期に対するパルス幅が大きくなり、スイッチング素子49の所定時間Tdにおける開状態が長くなる。このため、モータ13で発生する回生電力からベンディングバルブ3に供給される印加電圧が徐々に大きくなり、所定電圧を超えたときにベンディングバルブ3が開状態となる。これにより、外部電源からの電力供給が停止した状態において、モータ13で発生する回生電力を用いてベンディングバルブ3を開状態にして大気を真空ポンプ本体2に供給することができる。また、回生電力からベンディングバルブ3に供給する電力を徐々に増加させているため、回生電力の消費の急変を抑制しつつ、ベンディングバルブ3を開状態にすることができる。
【0067】
なお、外部からの電力が供給されている場合には、ベンディングバルブ3を開状態に駆動することによる電力消費の急変を考慮する必要がないため、バルブ用PWM信号出力部64は、初めからデューティ比100%の信号をスイッチング素子49に出力すればよい。
【0068】
バルブ用PWM信号出力部64は、モータ電圧検出部62の検出に基づいて、PWM信号のデューティ比を変化させる。図8は、負荷変化によってモータ電圧が目標値から変動した場合のPWM出力の変更を示す図である。図8の横軸は、時間(s)を示す。図8の左側の縦軸は、モータ電圧(v)を示す。モータ電圧の変化は実線で示されている。図8の右側の縦軸は、PWM出力を示す。PWM出力の変化は破線で示されている。時刻0において、真空ポンプ本体2への電力供給が停止されている。モータ電圧の目標値をVtとすると、図7では時刻t6でモータ電圧はVtに達しているが、図8ではモータ電圧がVtに達していない。そのため、目標値よりもモータ電圧が低くなっていることが検出され、PWM信号の出力を下げる(デューティ比を小さくする)ようにPWM信号が変更される。これによって、ベンディングバルブ3に供給される電力が減少し、モータ電圧を上げることができる。このため、時刻t7においてモータ電圧が目標値Vtに達している。また、時刻t8において、モータ電圧が目標値よりも高くなっていることが検出されると、PWM信号の出力を上げる(デューティ比を大きくする)ようにPWM信号が変更される。これによって、ベンディングバルブ3に供給される電力が増加し、モータ電圧を下げることができる。このため、時刻t9においてモータ電圧が目標値Vtに戻っている。
【0069】
PWM出力の変更は、モータ電圧の目標値Vtと現在のモータ電圧値との偏差に応じて行われる。すなわち、偏差が大きい場合には、PWM出力を大きく変更し、偏差が小さい場合には、PWM出力の変更を小さくする。
【0070】
(制御方法)
次に、本実施の形態の真空ポンプ1の制御方法について説明する。本実施の形態の真空ポンプ1の制御方法は、真空ポンプ1を停止する際に行われる。
【0071】
図9は、本実施の形態の真空ポンプ1の制御方法を示すフロー図である。
【0072】
はじめにステップS10(検出工程)において、停電検出部61が、第1電圧センサ51の検出値に基づいて外部からの電力供給が停止したか否かを判定する。停電検出部61が外部からの電力供給の停止を判定するまでステップS10が繰り返される。停電検出部61が、外部からの電力供給が停止したことを検出すると、制御はステップS20に進む。なお、外部からの電源供給の停止は、制御回路42または制御回路42と商用電源の間にスイッチを設け、スイッチをオフにしてもよいし、商用電源との接続を解除してもよい。商用電源との接続を解除するとは、例えば、商用電源からコンセントを抜くことである。
【0073】
ステップS20において、バルブ用PWM信号出力部64が、デューティ比を0%から徐々に増加させるようなPWM信号をスイッチング素子49に出力開始する。デューティ比の増加は、例えば所定時間ごとに予め決められた増加量または増加割合で行えばよい(図5参照。)。
【0074】
次に、ステップS30において、バルブ用PWM信号出力部64が、PWM信号のデューティ比が100%まで増加した後、所定時間が経過してPWM信号の出力が終了したか否かが判定される。ステップS20、S30が、電力供給工程に対応する。
【0075】
PWM信号の出力が終了していない場合、制御はステップS40に進む。
【0076】
そして、ステップS40において、モータ電圧検出部62が、第2電圧センサ52の検出値に基づいて、モータ電圧が目標値であるか否かを判定する。モータ電圧が目標値でないことが検出された場合には、制御はステップS50に進む。
【0077】
ステップS50において、バルブ用PWM信号出力部64は、モータ電圧検出部62の検出結果に基づいて、PWM信号を変更する。例えば、モータ電圧検出部62によってモータ電圧が目標値よりも高くなっていることが検出された場合には、バルブ用PWM信号出力部64は、予め決められた増加量または増加割合でのデューティ比よりも大きいデューティ比のPWM信号を出力する。これにより、ベンディングバルブ3に供給される電力が大きくなるため、回生電力の消費量を大きくでき、モータ電圧を下げることができる。また、例えば、モータ電圧検出部62が、モータ電圧が目標値よりも低くなっていることを検出した場合には、バルブ用PWM信号出力部64は、予め決められた増加量または増加割合でのデューティ比よりも小さいデューティ比のPWM信号を出力する。これにより、ベンディングバルブ3に供給される電力が少なくなるため、回生電力の消費量を小さくでき、モータ電圧を上げることができる。
【0078】
次に、制御は、ステップS30に戻り、PWM信号の出力が終了したか否かが判定される。なお、ステップS40において、モータ電圧が目標値であると判定された場合も、制御はステップS30に戻る。
【0079】
このため、ステップS30においてPWM信号の出力が終了したと判定されるまで、ステップS40およびステップS50が繰り返される。
【0080】
ステップS30において、PWM信号の出力が終了したと判定された場合は、制御が終了する。
【0081】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
上記実施の形態では、真空ポンプ1の停止時に、負荷発生部の一例としてベンディングバルブ3を挙げて説明したが、これに限らなくてもよい。例えば、ベンディングバルブ3とともに若しくはベンディングバルブ3の代わりに、負荷発生部の一例として回生ブレーキ抵抗が設けられていてもよい。
【0083】
図10は、負荷発生部としてベンディングバルブ3に加えて回生ブレーキ抵抗55(ブレーキ抵抗)が設けられた構成の制御回路42を示す図である。図10に示すように、回生ブレーキ抵抗55は、母線46aと母線46bに接続されている。回生ブレーキ抵抗55と母線46bの間には、スイッチング素子56が配置されている。このスイッチング素子56が閉じた状態において、回生ブレーキ抵抗55にモータ13で発生した回生電力が供給される。回生電力が回生ブレーキ抵抗55に供給されると、熱エネルギーに変換される。スイッチング素子56は、トランジスタであり、ベースにコントローラ54からのPWM信号が入力される。コントローラ54から出力されるPWM信号は、上述したスイッチング素子49へのPWM信号と同様にデューティ比が徐々に大きくなるように設定される。これによって、回生電力から回生ブレーキ抵抗55に供給される電力を徐々に増加させることができる。なお、バルブ用PWM信号出力部64からスイッチング素子56にPWM信号を出力してもよいし、スイッチング素子56にPWM信号を出力するブレーキ用PWM信号出力部がコントローラ54に別途設けられていてもよい。
【0084】
上記実施の形態では、図6に示すように真空ポンプ1への電力供給が停止したことを検出するとすぐに、PWM出力を開始しているが、真空ポンプ1への電力供給が停止したことを検出してから所定の遅延時間をおいてからPWM出力が開始されてもよい。図11は、遅延時間Δtが設定された場合のPWM出力とベンディングバルブ3に供給される電流の関係のグラフを示す図である。図11では、横軸は時間(s)を示し、時刻0(s)(ゼロ)で電力供給が停止される(停電される)。左側の縦軸は、PWM出力(%)を示す。PWM出力(%)はデューティ比である。PWM出力の変化は実線で示されている。右側の縦軸は、ベンディングバルブ3に供給される電流の平均値(A)を示す。ベンディングバルブ3に供給される電流の平均値の変化は破線で示されている。図11に示すように、停電後、所定の遅延時間Δtの後にPWM信号の出力が開始される。この遅延時間Δtは、ユーザによって設定可能であってもよく、コントローラ54の記憶部に記憶される。
【0085】
真空ポンプの電源のオフと同時に大気が流入すると圧力上昇によって損傷する可能性がある場合、または大気の成分によって損傷する可能がある場合に、真空ポンプの電源のオフと同時にベンディングバルブを開状態にすることが望まれない場合がある。このような場合に、電力の供給停止を検出した後に遅延時間を設けることによって、センサ機器の損傷を低減することができるため好ましい。
【0086】
上記実施の形態では、PWM出力を用いて負荷発生部への電力の供給を増加させているが、PWMに限らなくてもよく、PDM(Pulse Density Modulation)(パルス密度変調)、PFM(Pulse Frequency Modulation)(パルス周波数変調)、またはPAM(Pulse Amplitude Modulation)(パルス振幅変調)等を用いてもよい。
【0087】
上記実施の形態では、モータ電圧の目標値Vtが設定されているが、目標値が幅を有し、上限値と下限値が設けられていてもよい。
上記実施の形態では、電力検出部の一例として第2電圧センサ52を用いて、外部からの電力供給の停止(電源オフ)を検出しているが、電圧に限らず電流を検出してもよい。
【0088】
上記実施の形態では、コントローラ54がバルブ用PWM信号出力部64を備えているが、IFコネクタ43がバルブ用PWM信号出力部64を備えていてもよい。
【0089】
(態様)
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0090】
(第1態様)真空ポンプは、真空ポンプ本体と、負荷発生部と、制御部と、を備える。真空ポンプ本体は、ロータと、モータと、を有する。モータは、ロータを駆動する。負荷発生部は、モータの回生電力の供給によってモータを減速するための負荷を発生可能である。制御部は、負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する。
【0091】
第1態様に係る真空ポンプでは、回生電力から負荷発生部に供給する電力を徐々に増加させている。これによって、負荷発生部による回生電力の消費の急変を抑えることができ、制御部が安定して動作することができる。また、モータを減速させる負荷を生じさせることができる。このため、安定した動作で停止時間早めることが可能となる。
【0092】
(第2態様)第1態様に係る真空ポンプにおいて、負荷発生部は、開状態において真空ポンプ本体の内部に大気を供給する電磁弁を有する。制御部は、電磁弁へ供給される回生電力を徐々に増加させるように制御して電磁弁を開状態にする。
【0093】
第2態様に係る真空ポンプでは、回生電力から電磁弁に供給する電力を徐々に増加させて、電磁弁を開状態にしている。これによって、回生電力の消費の急変を抑えた状態で真空ポンプ本体の内部に大気を供給して負荷を発生することができる。このため、安定した動作で停止時間を早めることが可能となる。
【0094】
(第3態様)第1態様に係る真空ポンプにおいて、回生電力を熱エネルギーに変換するブレーキ抵抗を有する。制御部は、ブレーキ抵抗へ供給される回生電力を徐々に増加させるように制御する。
【0095】
第3態様に係る真空ポンプでは、回生電力からブレーキ抵抗に供給する電力を徐々に増加させている。これによって、回生電力の消費の急変を抑えた状態で回生電力を熱エネルギーに変換して負荷を発生することができる。このため、安定した動作で停止時間を早めることが可能となる。
【0096】
(第4態様)第1~第3のいずれかの態様に係る真空ポンプは、開状態において回生電力を負荷発生部に供給し、閉状態において回生電力の負荷発生部への供給を停止するスイッチング素子を有する。制御部は、スイッチング素子を開閉させるパルス信号を出力し、パルス信号を変調させることによって、負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する。
【0097】
第4態様に係る真空ポンプでは、パルス信号を出力することによって、スイッチング素子の開閉を制御することができるため、回生電力から負荷発生部への電力の供給量を制御することが可能となる。
【0098】
また、パルス信号を変調させることによって、スイッチング素子の開閉時間を制御することができる。これによって、回生電力から負荷発生部への電力の供給量を制御することができる。
【0099】
(第5態様)第4の態様に係る真空ポンプにおいて、制御部は、パルス信号のパルス幅のデューティ比を徐々に増加させることによって、負荷発生部に供給する回生電力の供給を徐々に増加させる。
【0100】
第5態様に係る真空ポンプでは、デューティ比が徐々に大きくなるように設定したパルス信号をスイッチング素子に出力することによって、回生電力から負荷発生部への電力の供給量を徐々に増加させることができる。
【0101】
(第6態様)第1~第5のいずれかの態様に係る真空ポンプにおいて、回生駆動におけるモータの電圧を計測する電圧検出部を更に備える。制御部は、電圧検出部の検出値に基づいて、負荷発生部に供給する回生電力を変更する。
【0102】
第6態様に係る真空ポンプでは、回生駆動時にモータの電圧を検出することによって、目標となるモータ電圧になるように、負荷発生部に供給する電力を変更することができる。これによって、例えば、負荷の発生が遅い場合若しくは負荷変動によって目標のモータ電圧値よりも低くなった場合、または負荷変動でモータ電圧が目標のモータ電圧よりも高くなった場合に、目標のモータ電圧値になるように制御することができる。
【0103】
(第7態様)第4の態様に係る真空ポンプにおいて、外部からの真空ポンプへの電力供給に関する情報を検出する電力検出部を更に備える。制御部は、電力検出部の検出に基づいて外部からの電力供給の停止を検出した場合、負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する。
【0104】
第7態様に係る真空ポンプでは、外部からの電力供給の停止を検出することによって、回生駆動への切換を検出してパルス信号のスイッチング素子への出力を開始することができる。
【0105】
(第8態様)第7の態様に係る真空ポンプにおいて、制御部は、電力検出部の検出に基づいて外部からの電力供給の停止を検出した場合、所定の遅延時間の後に、負荷発生部に供給される回生電力が徐々に増加されるように制御する。
【0106】
排気対象装置に設けられたセンサ機器が、真空ポンプの電源のオフと同時に大気が流入すると圧力上昇によって損傷する可能性がある場合、または大気の成分によって損傷する可能がある場合に、真空ポンプの電源のオフと同時にベンディングバルブを開状態にすることが望まれない場合がある。このような場合に、電力の供給停止を検出した後に遅延時間を設けることによって、センサ機器の損傷を低減することができる。
【0107】
(第9態様)真空ポンプの制御方法は、検出工程と、電力供給工程と、を備える。検出工程は、真空ポンプへの電力供給の停止を検出する。電力供給工程は、電力供給の停止を検出した後に、真空ポンプのロータを駆動するモータが回生駆動されて発生する回生電力から、電力の供給によってモータを減速するための負荷を発生可能な負荷発生部に供給される電力を徐々に増加する。
【0108】
第9態様に係る真空ポンプの制御方法では、回生電力から負荷発生部に供給する電力を徐々に増加させている。これによって、回生電力の消費の急変を抑えることができ、制御回路が安定して動作することができる。また、モータを減速させる負荷を生じさせることができる。このため、安定した動作で停止時間早めることが可能となる。
【符号の説明】
【0109】
1:真空ポンプ、2:真空ポンプ本体、3:ベンディングバルブ、4:制御装置、11:筐体、12:ロータ、13:モータ、14:ステータ翼ユニット、15:ステータ円筒部、15a:外側ステータ円筒部、15b:内側ステータ円筒部、16:ボールベアリング、17:タッチダウンベアリング、18:永久磁石磁気軸受、18a:永久磁石、18b:永久磁石、21:ケーシング、22:ベース、23:第1端部、23a:吸気口、24:第2端部、25:側面部、26:バルブポート、26a:連通口、27:ベース端部、28:排気ポート、28a:排気口、31:シャフト、32:ロータ翼ユニット、33:ロータ円筒部、33a:外側ロータ円筒部、33b:内側ロータ円筒部、34:ロータ翼、35:モータロータ、36:モータステータ、37:ステータ翼、41:コントロールパネル、41a:釦、41b:ランプ、42:制御回路、43:IFコネクタ、44:バルブ接続コネクタ、45:ケーブル、46a:母線、46b:母線、47:DC/DCコンバータ、48a~48f:スイッチング素子、49:スイッチング素子、50:ダイオード、51:第1電圧センサ、52:第2電圧センサ、53:回転数検出部、54:コントローラ、55:回生ブレーキ抵抗、56:スイッチング素子、61:停電検出部、62:モータ電圧検出部、63:モータ用PWM信号出力部、64:バルブ用PWM信号出力部、A1:軸線方向、S1:第1内部空間、S2:第2内部空間、Tc:周期、Td:所定時間、Tp:パルス幅、Vt:目標値、Δt:遅延時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13