(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167587
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】物体認識装置、物体認識装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221027BHJP
【FI】
G06T7/00 300C
G06T7/00 300B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073469
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔哉
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA02
5L096FA19
5L096GA51
5L096HA07
5L096JA03
5L096JA13
5L096JA25
(57)【要約】
【課題】顔認識に時間を要してしまい、ユーザが早期に作業に移れない。
【解決手段】対象者を撮像した撮像画像から対象者における所定の部分の画像を抽出した複数の部分撮像画像と、記憶部(12)に記憶されている認識対象における所定の部分の画像である複数の部分登録画像と、の照合を、部分登録画像にそれぞれ対応付けられた優先度に従った順番で行う照合部(14)と、照合部における照合が所定の条件を満たした時点で、対象者の認識結果を出力する認識出力部(15)と、を備える顔認識装置(10)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から、前記対象物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分撮像画像を作成する画像抽出部と、
記憶部に記憶されている、認識対象としての登録物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分登録画像と、前記部分撮像画像との照合を、前記部分登録画像にそれぞれ対応付けられた優先度に従った順番で行う照合部と、
前記照合部における照合が所定の条件を満たした時点で、前記対象物体の認識結果を出力する認識出力部と、を備える物体認識装置。
【請求項2】
前記照合部は、前記部分登録画像と前記部分撮像画像との類似度を算出し、所定の閾値と比較することで、照合を行う請求項1に記載の物体認識装置。
【請求項3】
前記照合部が、前記優先度に従った順番で照合を行い、前記部分登録画像と、当該部分登録画像に対応する前記部分撮像画像とが実質的に一致すると判定した時点で、前記認識出力部が前記対象物体の認識結果を出力する、請求項1または2に記載の物体認識装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記部分登録画像と、前記部分登録画像の優先度と、を複数の前記登録物体に関して記憶しており、
前記照合部は、ある優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行った後に、次の優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行う、請求項3に記載の物体認識装置。
【請求項5】
前記照合部が、前記優先度に従った順番で照合を行い、前記部分登録画像と、当該部分登録画像に対応する前記部分撮像画像とが実質的に一致しないと判定した時点で、前記認識出力部が前記対象物体の認識結果を出力する、請求項1に記載の物体認識装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記部分登録画像と、前記部分登録画像の優先度と、を複数の前記対象物体に関して記憶しており、
前記照合部は、ある優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行った後に、次の優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行い、
前記部分登録画像と、当該部分登録画像に対応する前記部分撮像画像とが実質的に一致しないと判定した場合に、次の優先度における該当登録物体に関する照合は行わない、請求項5に記載の物体認識装置。
【請求項7】
前記照合部は、前記類似度の算出結果を類似度履歴として記憶する処理を行い、
前記類似度履歴に基づき、前記部分登録画像の優先度を設定する優先度設定部を、さらに備える請求項2に記載の物体認識装置。
【請求項8】
ユーザの入力に基づき、前記部分登録画像の優先度を設定する優先度設定部をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項9】
前記対象物体は人物の顔である請求項1から8のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項10】
対象物体を撮像した撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮像画像から、前記対象物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分撮像画像を作成する画像抽出ステップと、
記憶部に記憶されている、認識対象としての登録物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分登録画像と、前記部分撮像画像との照合を、前記部分登録画像にそれぞれ対応付けられた優先度に従った順番で行う照合ステップと、
前記照合ステップにおける照合が所定の条件を満たした時点で、前記対象物体の認識結果を出力する認識出力ステップと、を含む物体認識装置の制御方法。
【請求項11】
請求項1に記載の物体認識装置としてコンピュータを機能させるための物体認識プログラムであって、上記画像取得部、上記画像抽出部、上記記憶部、上記照合部および上記認識出力部としてコンピュータを機能させるための物体認識プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの顔認識を行い、ユーザに特定の動作を行える権限があるかを識別する顔認識システムがある。例えば、セキュリティが高いエリアへの入退室の許可装置、または特定の装置の使用許可を出す装置などとして顔認識システムが用いられている。
【0003】
特許文献1には、ユーザがマスクをつけていたり、髪型が変更されたりした場合であっても、顔認識が正常に行えるようにする技術が開示されている。ある部位の特徴量を重視し、他の部位の特徴量を軽減することで、データベースに登録されているデータと差異があった場合でも正常に顔認識することができる。
【0004】
特許文献2は、マスク・サングラス・帽子などによりユーザの顔の撮像画像がデータベースに登録されている画像と異なる場合に、顔認識する発明である。上述した例により、撮像画像とデータベースの登録画像とに差異があった場合に、即座に顔認識を失敗させるのではなく、撮像画像を複数のエリアに分割し、照合に失敗したエリアをユーザに通知して再認識を促すことで、顔認識を成功させる技術である。
【0005】
特許文献3は、デジタルカメラにおける発明であり、撮影モードごとに被写体の優先度を定義することで、優先的に被写体の認識を行うことができ、早期に被写体に合わせた光学調整を行う技術である。
【0006】
特許文献4は、静脈パターンなどの生体のパターン画像に対し、複数の領域に分割した領域ごとに類似したパターンを認識し、領域ごとのパターンに相当する番号を保存することで、生体のパターン画像の容量を低減する発明である。
【0007】
特許文献5は、低解像度の画像でもって、顔認識を行い、同一の画像と判断された場合に、より高解像度の画像の一部分で顔認識を行うことで、速度を担保しながら、徐々に顔認識の精度を向上させていく発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-257221号公報
【特許文献2】特開2019-168929号公報
【特許文献3】特開2007-068149号公報
【特許文献4】特開2011-065315号公報
【特許文献5】特開2012-238059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来技術は、顔認識において照合する顔の部位の大きさ、または顔認識の対象の多さが原因となり、顔認識に時間がかかる。そのため、ユーザは早期に作業に移ることができず、ユーザにストレスを与える原因となっている。
【0010】
従来のアルゴリズムでは、撮像画像の解像度を荒くすることで、処理を早めることができるが、解像度が荒いことから、誤認識することもあった。また、顔認識だけではなく、物体を認識する需要もある。
【0011】
そこで、本発明の一態様は、認識精度を維持したまま、高速に物体認識を行える装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る物体認識装置は、対象物体を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から、前記対象物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分撮像画像を作成する画像抽出部と、記憶部に記憶されている、認識対象としての登録物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分登録画像と、前記部分撮像画像との照合を、前記部分登録画像にそれぞれ対応付けられた優先度に従った順番で行う照合部と、前記照合部における照合が所定の条件を満たした時点で、前記対象物体の認識結果を出力する認識出力部と、を備える。
【0013】
上記の構成によれば、部分撮像画像と部分登録画像との間で、部分登録画像に対応付けられた優先度の順番で、所定の条件を満たすまで照合を繰返すことで、対象物体が登録物体であるか否かを判定することができる。所定の条件を満たした時点で認識結果を出力するため、早期に対象物体の認識結果を出力することができる。
【0014】
前記照合部は、前記部分登録画像と前記部分撮像画像との類似度を算出し、所定の閾値と比較することで、照合を行ってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、類似度を閾値と比較することで、部分登録画像と部分撮像画像とを照合することができる。
【0016】
前記照合部が、前記優先度に従った順番で照合を行い、前記部分登録画像と、当該部分登録画像に対応する前記部分撮像画像とが実質的に一致すると判定した時点で、前記認識出力部が前記対象物体の認識結果を出力してもよい。
【0017】
上記の構成によれば、照合部が、部分登録画像と実質的に一致する部分撮像画像があると判定した時点で、当該対象物体は、登録物体であるとの認識結果を出力することができる。
【0018】
前記記憶部は、前記部分登録画像と、前記部分登録画像の優先度と、を複数の前記登録物体に関して記憶しており、前記照合部は、ある優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行った後に、次の優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行ってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、全ての登録物体に関して、優先度の順番で部分撮像画像の照合を行い、実質的に一致したと判定された時点で、当該対象物体は登録物体であるとの認識結果を出力することができる。
【0020】
前記照合部が、前記優先度に従った順番で照合を行い、前記部分登録画像と、当該部分登録画像に対応する前記部分撮像画像とが実質的に一致しないと判定した時点で、前記認識出力部が前記対象物体の認識結果を出力してもよい。
【0021】
上記の構成によれば、照合部が、部分登録画像と実質的に一致しない部分撮像画像があると判定した時点で、当該対象物体は、登録物体ではないとの認識結果を出力することができる。
【0022】
前記記憶部は、前記部分登録画像と、前記部分登録画像の優先度と、を複数の前記対象物体に関して記憶しており、前記照合部は、ある優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行った後に、次の優先度における全ての前記登録物体の前記部分登録画像に対する照合を行い、前記部分登録画像と、当該部分登録画像に対応する前記部分撮像画像とが実質的に一致しないと判定した場合に、次の優先度における該当登録物体に関する照合は行わなくてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、全ての登録物体に関して、優先度の順番で部分撮像画像の照合を行い、全ての登録物体が実質的に一致しないと判定された時点で、当該対象物体は登録物体ではないとの認識結果を出力することができる。
【0024】
前記照合部は、前記類似度の算出結果を類似度履歴として記憶する処理を行い、前記類似度履歴に基づき、前記部分登録画像の優先度を設定する優先度設定部を、さらに備えてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、部分登録画像の優先度を、類似度履歴に応じて自動的に設定することができる。よって、類似度の傾向に応じて部分登録画像の優先度を設定することによって、より早く対象物体が登録物体であるか否かの認識結果を出力することができる。
【0026】
ユーザの入力に基づき、前記部分登録画像の優先度を設定する優先度設定部をさらに備えてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、部分登録画像の優先度を、ユーザ入力に基づき、任意に設定できる。そのため、意図的に優先度を下げたい部位または意図的に優先度を上げたい部位の優先度を変更できる。
【0028】
前記対象物体は人物の顔であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、例えば、物体は人物の顔であってもよく、早期に顔認識をする場合に用いることができる。
【0030】
別の態様に係る物体認識装置は、対象物体を撮像した撮像画像を取得する画像取得ステップと、前記撮像画像から、前記対象物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分撮像画像を作成する画像抽出ステップと、記憶部に記憶されている、認識対象としての登録物体における所定の複数の部分の画像を抽出した複数の部分登録画像と、前記部分撮像画像との照合を、前記部分登録画像にそれぞれ対応付けられた優先度に従った順番で行う照合ステップと、前記照合部における照合が所定の条件を満たした時点で、前記対象物体の認識結果を出力する認識出力ステップと、を含む。
【0031】
本発明の各態様に係る物体認識装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記物体認識装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記物体認識装置をコンピュータにて実現させる物体認識装置の物体認識プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、撮像画像から抽出された部分撮像画像と、予め登録されている部分登録画像とを、部分登録画像に対応づけられた優先度でもって照合し、照合結果が所定の条件を満たした時点で早期に、認識を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態1に係る顔認識システムの要部の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る撮像画像と、部分撮像画像を示すモデル図である。
【
図3】部分登録画像を登録する流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1に係る動作例1の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る動作例2の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態1に係る動作例3の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1に係る動作例4の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態2に係る顔認識システムの要部の構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態3に係る撮像画像と部分撮像画像を示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0035】
§1.適用例
図1は、実施形態1に係る顔認識システム100の要部の構成を示すブロック図である。顔認識システム100は、顔を含む撮像画像を撮像するカメラ20と、撮像画像に対し顔認識を行う顔認識装置(物体認識装置)10と、顔認識装置10によって制御される電磁ロック30を備える。
【0036】
顔認識装置10は、予め登録されている部分登録画像に対応した部分撮像画像を撮像画像から抽出し、部分撮像画像と部分登録画像とを比較することで照合を行う。ここで、部分登録画像は複数用意されており、各部分登録画像には優先度が設定されている。各部分登録画像に対する照合は、優先度に従った順番で行われる。
【0037】
顔認識装置10には大きく分けて2つのモードがあり、顔認識の対象者が登録者であると認識する本人認識速度を優先するモードと、顔認識の対象者が登録者ではないと認識する他人認識速度を優先するモードである。本人認識速度を優先するモードでは、1セットの部分撮像画像と部分登録画像との対が同じ画像と認識できた段階で、実質的に同一の顔と認識する。対して、他人認識速度を優先するモードでは、1セットの部分撮像画像と部分登録画像との対が異なる画像と認識できた段階で、実質的に同一の顔ではないと認識する。実質的に同一の顔と認識した場合、顔認識装置10は、電磁ロック30を解除する。
【0038】
すなわち、顔認識装置10は、優先度に従った順番で照合を行い、1セットの部分撮像画像と部分登録画像との認識結果が出た時点で、顔認識の結果を出力することができる。そのため、撮像画像全体に対し、顔認識を行う場合よりも早期に認識結果を出力することができる。
【0039】
§2.構成例
(顔認識装置の構成)
図1に基づき、顔認識システム100の構成を説明する。顔認識装置10は、画像取得部11と、記憶部12と、画像抽出部13と、照合部14と、認識出力部15と、を備える。
【0040】
カメラ20は、顔認識を行う対象の顔を含む撮像画像を撮像するカメラである。カメラ20は、撮像画像を画像取得部11に出力する。
【0041】
電磁ロック30は、顔認識装置10で制御される電子錠である。電磁ロック30は、電子錠に限定されず、任意のプログラム制御された装置またはプログラムなどであり、開錠されないと、当該装置またはプログラムなどの機能を用いることができない。
【0042】
例えば、ドアに電磁ロック30が設けられている場合、顔認識によって電磁ロック30が開錠しないと当該ドアを開けて内部に侵入することができない。また、スマートフォンなどのカメラ20を内蔵した電子機器において、顔認識によって電磁ロック30を開錠(電磁ロック30を解除)しないと当該スマートフォンが操作を受け付けない。
【0043】
画像取得部11は、撮像画像を入力する。画像取得部11は、入力した撮像画像を、画像抽出部13に出力する。
【0044】
記憶部12は、顔認識の認識対象である登録者ごとに複数の部分登録画像を記憶している。また、記憶部12は、各部分登録画像と併せて、優先度も記憶されており、部分登録画像に対する顔認識を行う順番が定められている。なお、部分登録画像および優先度の情報は、顔認識装置10の外部の記憶部に記憶されており、各種通信手段を介して顔認識装置10が部分登録画像および優先度の情報を読み出してもよい。
【0045】
画像抽出部13は、入力された撮像画像の中から、部分登録画像に対応する部分を抽出し、部分撮像画像とする。画像抽出部13は、抽出した複数の部分撮像画像を、照合部14に出力する。
【0046】
照合部14は、入力された部分撮像画像と部分登録画像とを比較し、互いがどの程度類似するかを示す類似度という数値を算出する。その後、照合部14は、類似度を所定の閾値と比較することによって、実質的に同一の画像か否かを判断する。また、ある優先度の部分登録画像と当該部分登録画像に対応する部分撮像画像とを照合し、必要な場合は次の優先度の部分登録画像と当該部分登録画像に対応する部分撮像画像とを照合する処理を行う。顔認識に必要な照合を行い、照合結果が確定すると、照合部14は、認識出力部15に照合結果を出力する。
【0047】
認識出力部15は、入力された照合結果を受けて、電磁ロック30を開錠する信号を発するか否かを判断する。認識出力部15は、顔認識の対象者が登録者であるという照合結果が得られた場合、電磁ロック30を開錠する。対して、認識出力部15は、顔認識の対象者が登録者ではないという照合結果が得られた場合、電磁ロック30を開錠しない。
【0048】
(撮像画像における部分撮像画像の抽出)
図2は、実施形態1に係る撮像画像111と、部分撮像画像112とを示すモデル図である。撮像画像111は、
図2に示すように、顔認識の対象となる対象者の顔の全体が写った画像である。部分撮像画像112は、例えば5つの撮像画像111の一部分の画像であり、部分撮像画像112a~112eである。各部分撮像画像は、顔の特徴を表す部位を部分的に写した画像である。
【0049】
例えば、部分撮像画像112aは両目を、部分撮像画像112bは口を、部分撮像画像112cは頭髪を、部分撮像画像112dは鼻を、部分撮像画像112eは額を写した画像である。部分撮像画像112(部分撮像画像112a~112eを総称して部分撮像画像112と記す)の範囲は互いに重畳してもよい。例えば、
図2の例では、部分撮像画像112aおよび部分撮像画像112eにともに眉が含まれる。
【0050】
部分撮像画像112は、画像抽出部13によって撮像画像111から抽出されるが、抽出される範囲は、部分登録画像に対応する範囲が抽出される。
【0051】
すなわち、画像抽出部13は、撮像画像111の中から部分登録画像にそれぞれ対応づく部分撮像画像112を抽出する。この時、部分撮像画像112を抽出するために、撮像画像111に対し、部分撮像画像112の範囲を導出するためにパターンマッチングを行ってもよい。
【0052】
また、部分撮像画像112の抽出方法はこの方法に限定されず、予め撮像画像111の中から抽出すべき部分領域の位置を定めておき、該当部分領域を抽出し部分撮像画像112としてもよい。
【0053】
(部分登録画像の登録方法)
図3は、部分登録画像を登録する流れを示すフローチャートである。顔認識を行うためには、顔画像から部位ごとに分割した部分登録画像を予め登録しておく必要がある。
【0054】
S11において、カメラ20は、登録する登録者の顔画像を撮像する。S12において、撮像した顔画像を顔の部位ごとに抽出する。顔の部位としては、目、口、鼻、眉、額、頭髪などであり、それぞれの部位に加え周辺が写るような画像に抽出してもよい。この作業は、ユーザが顔認識装置10を操作して行うか、顔認識装置10が所定のルールに従い自動で行う。
【0055】
S13において、分割した部位ごとに記憶部12に部分登録画像として登録する。S14において、各部分登録画像に対して、顔認識を行う順番である優先度を割り当てる。ここで、優先度の割り当ては、ユーザが手動で行ってもよいし、顔認識装置10が所定のルールに従い自動で行ってもよい。
【0056】
§3.動作例
以降、4種類の動作例について具体例を交えて説明する。
【0057】
(動作例1:登録者一人における本人認識速度優先)
図4は、実施形態1に係る動作例1の動作の流れを示すフローチャートである。動作例1は、顔認識の対象となる部分登録画像が1人分の顔画像の場合において、当該部分登録画像の登録者に対する本人認識速度を優先した動作である。説明を簡単にするため、部分登録画像は5枚あるものとして説明する。
【0058】
S21において、カメラ20が顔画像を撮像し、画像取得部11は当該顔画像を撮像画像として取得する。
【0059】
S22において、認識出力部15は、i=1からi=5まで、部位ごとの部分登録画像の照合を行う照合ループをする。ここで、iは、部分登録画像の優先度を示す自然数である。
【0060】
S23において、画像抽出部13は、優先度がi番目の部分登録画像に対応する部分撮像画像を抽出する。
【0061】
S24において、照合部14は、部分撮像画像と優先度がi番目の部分登録画像とを比較し照合を行う。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致した場合、S25に進む。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致しない場合、S26に進む。
【0062】
S25において、照合部14は、部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致したことから、対象者が単体登録者と同一人物であると認識し、照合ループを抜ける。その後、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠する。
【0063】
S26において、照合部14は、i=5の場合、照合部14は、照合ループを抜け、またはi=i+1とインクリメントし、次の照合ループに移る。
【0064】
S27において、認識出力部15は、対象者が登録者と同一人物でなかったため、対象者が登録者と異なる人物であると認識する。そのため、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠しない。
【0065】
以上のような処理によれば、1つの部分撮像画像が部分登録画像と実質的に一致したと判定された時点で、早期に対象者が登録者と同一人物であると認識することができる。また、セキュリティを担保するために、部分撮像画像と部分登録画像が互いに実質的に一致すると判断する類似度の閾値を厳しめに設定しておくことが好ましい。閾値の設定が厳しめであることによって、登録者以外の対象者が顔認識によって同一人物と認識されてしまう可能性を抑制することができる。
【0066】
ここで、S24においては、1つの部分撮像画像が部分登録画像と実質的に一致するか否かによって条件分岐を行い、条件が成立した場合(S24においてYes)、電磁ロック30を解除した(S25)が、必ずしも1つの部分撮像画像による認識結果で解除しなくてもよい。すなわち、所定の数の部分撮像画像が部分登録画像と実質的に一致した場合に、対象者が単体登録者と同一人物であると認識してもよい。同一人物であると判定するのに必要な部分登録画像の数を増やすことで、セキュリティが向上する。ここで、同一人物であると判定するのに必要な部分登録画像の数は、記憶部12に記憶されている部分登録画像の数よりも少なくすることが好ましい。これにより、全ての部分登録画像と照合する場合と比較して、高速に照合結果を出力することができる。
【0067】
動作例1の実際の例としては、基本的に登録者のみが用いる装置で顔認識する場合に好適に用いられる。例えば、個人が所有するスマートフォンなどの電子機器において、ユーザ認識として顔認識を用いる場合が挙げられる。
【0068】
(動作例2:登録者一人における他人認識速度優先)
図5は、実施形態1に係る動作例2の動作の流れを示すフローチャートである。動作例2は、顔認識の対象となる部分登録画像が1人分の顔画像の場合において、当該部分登録画像の登録者ではないと認識する他人認識速度を優先した動作である。説明を簡単にするため、部分登録画像は5枚あるものとして説明する。
【0069】
S21~S23の処理は、動作例1と同一であるため、説明を省略する。
【0070】
S34において、照合部14は、部分撮像画像と優先度がi番目の部分登録画像とを比較し照合を行う。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致した場合、S36に進む。部分撮像画像と部分登録画像が実質的に一致しない場合、S35に進む。
【0071】
S35において、照合部14は、部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致しなかったことから、対象者が単体登録者と異なる人物であると認識し、照合ループを抜ける。その後、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠しない。
【0072】
S36において、i=5の場合、照合部14は、照合ループを抜けS37に進み、または照合部14は、i=i+1とインクリメントし、次の照合ループに移る。
【0073】
S37において、認識出力部15は、全ての部分登録画像に対応する部分撮像画像が実質的に一致したことから、対象者が登録者と同一人物であると認識する。そのため、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠する。
【0074】
以上のような処理によれば、1つの部分撮像画像が部分登録画像と実質的に一致しないと判定された時点で、早期に対象者が登録者と同一人物でないと認識することができる。なお、対象者が登録者である場合に、登録者ではないと誤判定することを抑制するために、部分撮像画像と部分登録画像が互いに一致すると判断する類似度の閾値を緩めに設定しておくことが好ましい。閾値の設定が緩めであることによって、登録者ではない対象者でも部位あたりの照合では実質的に一致すると判断されることがあるが、照合ループによって多数の部位を用いることで、結果的に登録者ではない対象者を登録者と異なる人物であると出力することができる。
【0075】
ここで、S34においては、1つの部分撮像画像が部分登録画像と実質的に一致するか否かによって条件分岐を行い、条件が成立しなかった場合(S34においてNo)、認識処理を終了したが、必ずしも1つの部分撮像画像による認識結果で終了しなくてもよい。すなわち、所定の数の部分撮像画像が部分登録画像と一致しなかった場合に、対象者が登録者と同一人物でないと認識してもよい。必要な部分登録画像の数を増やすことで、誤判定を抑制することができる。ここで、同一人物ではないと判定するのに必要な部分登録画像の数は、記憶部12に記憶されている部分登録画像の数よりも少なくすることが好ましい。これにより、全ての部分登録画像と照合する場合と比較して、高速に照合結果を出力することができる。
【0076】
動作例2の実際の例としては、基本的に登録者のみが用いる装置の他人による悪用を防ぐ場合に好適に用いられる。例えば、個人が所有するスマートフォンなどの電子機器の紛失時において、顔認証によるロック解除に対するセキュリティ向上のために用いられる。
【0077】
(動作例3:登録者複数における本人認識速度優先)
図6は、実施形態1に係る動作例3の動作の流れを示すフローチャートである。動作例3は、顔認識の対象となる部分登録画像が複数人分の顔画像が登録されている場合において、当該部分登録画像の本人に対する本人認識速度を優先した動作である。説明を簡単にするため、複数人の登録者は3名とし、登録者ごとの部分登録画像は5枚あるものとして説明する。
【0078】
S41において、カメラ20が顔画像を撮像し、画像取得部11は当該顔画像を撮像画像として取得する。
【0079】
S42において、照合部14は、i=1からi=5まで、部位ごとの部分登録画像の照合を行う照合ループを行う。ここで、iは、部分登録画像の優先度を示す自然数である。
【0080】
S43において、照合部14は、j=1からj=3まで、登録者ごとの照合を行う登録者ループを行う。ここで、jは、登録者を表す自然数である。
【0081】
S44において、画像抽出部13は、j番目の登録者におけるi番目の優先度の部分登録画像に対応する部分撮像画像を抽出する。
【0082】
S45において、照合部14は、部分撮像画像とj番目の登録者におけるi番目の優先度の部分登録画像とを比較し照合を行う。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致した場合、S46に進む。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致しない場合、S47に進む。
【0083】
S46において、照合部14は、部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致したことから、対象者が登録者のいずれかと同一人物であると認識し、照合ループを抜ける。その後、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠する。
【0084】
S47において、照合部14は、j=3の場合、照合部14は、登録者ループを抜け、またはj=j+1とインクリメントし、次の登録者ループに移る。
【0085】
S48において、照合部14は、i=5の場合、照合部14は、照合ループを抜け、またはi=i+1とインクリメントし、次の照合ループに移る。
【0086】
S49において、認識出力部15は、対象者が複数人の登録者全員と実質的に一致しなかったため、対象者が複数人の登録者と異なる人物であると認識する。そのため、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠しない。
【0087】
以上のような処理によれば、1つの部分撮像画像が複数人の登録者の中のいずれか1人の部分登録画像と実質的に一致したと判定された時点で、対象者が登録者のいずれかと同一人物であると認識して顔認識を終了する。そのため、早期に対象者の顔認識を行うことができる。また、セキュリティを担保するために、部分撮像画像と部分登録画像とが互いに実質的に一致すると判断する類似度の閾値を厳しめに設定しておくことが好ましい。閾値の設定が厳しめであることによって、複数人の登録者ではない対象者が顔認識によって複数人の登録者のいずれか1人と同一人物と認識されてしまう可能性を抑制することができる。
【0088】
動作例3の実際の例としては、登録者を除いた対象者が照合する可能性が低い装置であって、複数人の登録者が用いる装置で顔認識する場合に好適に用いられる。例えば、基本的に関係者が入場することが想定されている入場ゲートにおいて、登録者であれば入場を許可するというような用途での利用が考えられる。
【0089】
(動作例4:登録者複数における他人認識速度優先)
図7は、実施形態1に係る動作例4の動作の流れを示すフローチャートである。動作例4は、顔認識の対象となる部分登録画像が複数人分の顔画像が登録されている場合において、当該部分登録画像の本人を除いた他人の認識速度を優先した動作である。説明を簡単にするため、複数人の登録者は3名とし、登録者ごとの部分登録画像は5枚あるものとして説明する。
【0090】
S41~S44の処理は、動作例3と同一であるため、説明を省略する。
【0091】
S55において、照合部14は、部分撮像画像とj番目の登録者におけるi番目の優先度の部分登録画像とを比較し照合を行う。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致しない場合、S56に進む。部分撮像画像と部分登録画像とが実質的に一致した場合、S57に進む。
【0092】
S56において、照合部14は、対象者がj番目の登録者ではないと判断する。そのため、以降の処理において、j番目の登録者を候補から外し、以降の照合を行わない。
【0093】
S57において、照合部14は、j=3の場合、照合部14は、登録者ループを抜けS58に進み、またはj=j+1とインクリメントし、次の登録者ループに移る。
【0094】
S58において、照合部14は、複数人の登録者のうち、候補となる登録者が残っているかを判断する。候補となる登録者が残っていない場合、S59に進む。候補となる登録者が残っている場合、S60に進む。
【0095】
S59において、照合部14は、部分撮像画像と実質的に一致する部分登録画像がなかったことから、対象者が複数人の登録者のいずれか1人と異なる他人であると認識し、照合ループを抜ける。その後、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠しない。
【0096】
S60において、照合部14は、i=5の場合、照合部14は、照合ループを抜けS61に進み、またはi=i+1とインクリメントし、次の照合ループに移る。
【0097】
S61において、認識出力部15は、全ての部分登録画像に対応する部分撮像画像が実質的に一致する登録者がいたことから、対象者が複数人の登録者のいずれかと同一人物であると認識する。そのため、認識出力部15は、電磁ロック30を開錠する。
【0098】
以上のような処理によれば、1枚の部分撮像画像が複数人の登録者の中のいずれか1人の部分登録画像とも実質的に一致しないと判定された時点で、対象者が登録者と異なると認識することができるため、早期に対象者を他人と認識することができる。ただし、登録者を誤って他人と認識しないために、部分撮像画像と部分登録画像とが互いに実質的に一致すると判断する類似度の閾値を緩めに設定しておくことが好ましい。閾値の設定が緩めなため、登録者ではない対象者でも部位あたりの照合では実質的に一致すると判断されることがあるが、照合ループによって多数の部位を用いることで、結果的に登録者ではない対象者を登録者と異なる人物であると出力することができる。
【0099】
また、部分撮像画像と部分登録画像とを照合し、照合が実質的に一致しなかった時点で、当該登録者を複数登録者の候補から外していく処理となっている。そのため、照合を進めていくことで、複数人の登録者の候補者の人数が絞られることになる。結果として、対象者が複数人の登録者のいずれか1人と同一人物の場合で、電磁ロックを開錠する場合であっても総当たりで照合する場合よりも早く開錠することができる。
【0100】
動作例4の実際の例としては、登録者を除いた対象者が照合する可能性が高い装置であって、複数人の登録者が用いる装置で顔認識する場合に好適に用いられる。例えば、不特定多数が入場することが想定されている入場ゲートにおいて、登録者のみ入場を許可するというような用途での利用が考えられる。全ての部位で実質的に一致することで、同一人物と判断されるため、セキュリティが高い入退場ゲートの電磁ロックとして用いられる。
【0101】
§4.作用・効果
照合部は、部分登録画像と、部分登録画像に対応した部分撮像画像とが実質的に一致するかを、算出される類似度によって判断することができる。
【0102】
登録者が1人の場合、本人の認識速度を優先する場合は、少なくとも1つの部分登録画像と部分撮像画像とが実質的に一致する組み合わせが得られた時点で、対象者を登録者と同一人物であると認識する。対して、他人の認識速度を優先する場合は、少なくとも1つの部分登録画像と部分撮像画像とが実質的に一致する組み合わせが得られた時点で、対象者が登録者と同一人物ではないと認識する。
【0103】
また、登録者が複数人の場合、本人の認識速度を優先する場合は、少なくとも1つのある部位における部分登録画像と、部分撮像画像とが実質的に一致する組み合わせが得られた時点で、対象者を登録者と同一人物であると認識する。対して、他人の認識速度を優先する場合は、少なくとも1つのある部位における部分登録画像と、部分撮像画像とが実質的に一致しない組み合わせが得られた時点で、対象者を当該登録者と同一人物ではないと判断し、以降の処理において、当該登録者を候補から外して顔認識を行う。
【0104】
以上のように、ある部位における画像認識によって、顔認識の結果を左右することができる。そのため、早期に顔認識を終了することができるようになる。
【0105】
〔実施形態2〕
実施形態1では、顔認識の速度を高速化する手法に関して説明した。対して実施形態2では、顔認識の速度を高速化するために、部分登録画像の優先度を最適化する手法に関して説明する。
【0106】
図8は、実施形態2に係る顔認識システム100aの要部の構成を示すブロック図である。顔認識システム100aは、顔認識システム100と異なり、顔認識装置10aに優先度設定部16を備える点が異なる。
【0107】
優先度設定部16は、部分登録画像ごとの優先度を、過去に行った顔認識結果の類似度の履歴に基づき、最適化する機能ブロックである。優先度設定部16は、まず部分登録画像ごとに、類似度の履歴に基づいて類似度の傾向を学習する。一例としては、優先度設定部16は、類似度の履歴に基づいて平均類似度を算出する。そして、本人の認識速度を優先する場合(動作例1,3)は、優先度設定部16は、平均類似度が降順になる順番に各部分登録画像に優先度を割り振る。これにより、優先度が高い部分登録画像は、類似度が高くなり易くなり、早期に顔認識を終えることができる。同様に、他人の認識速度を優先する場合(動作例2,4)は、優先度設定部16は、平均類似度が降順になる順番に優先度を割り振る。これにより、優先度が高い部分登録画像は、他人に対しては類似度が低くなり易くなり、早期に顔認識を終えることができる。
【0108】
また、優先度の最適化処理は、顔認識装置10aが顔認識処理を行っていない間に随時行われてもよく、これにより常に最適な優先度でもって顔認識を行えるようになる。
【0109】
さらに、優先度設定部16における優先度の最適化は、自動で行わなくてもよく、ユーザ操作によって手動で任意の優先度の順番に設定してもよい。この場合、優先度設定部16は、顔認識装置10aが備える表示装置に部分登録画像のリストおよび画像を表示させ、顔認識装置10aが備える入力装置によってユーザからの各部分登録画像への優先度設定入力を受け付けるようにしてもよい。また、外部の端末装置においてユーザから受け付けた優先度設定情報を通信手段を介して優先度設定部16が取得して設定してもよい。
【0110】
優先度の割り当ての具体例としては、例えば、目は人の特徴が強くでている部位であるため、目の優先度を高めるように設定し、マスクをすることが多いため、口元の優先度を低く設定するなどである。また、自分の特徴や好みに応じて優先度を設定することが可能となる。例えば、該ユーザがサングラスをすることが多いことを理由に目の優先度を低めに設定したり、該ユーザが髪型をよく変えることを理由に頭髪の優先度を低めに設定したりすることが可能となる。
【0111】
〔実施形態3〕
実施形態1では、顔認識に焦点をあてて説明したが、認識する対象は顔に限定されない。実施形態3では、認識する対象を物体にした物体認識について説明する。
【0112】
図9は、実施形態3に係る撮像画像113と部分撮像画像114を示すモデル図である。撮像画像113は、任意の物体が写った画像であり、例えば
図9に示すような自動車の画像であってもよい。部分撮像画像114は、例えば4つの撮像画像113の一部分の画像であり、部分撮像画像114a~114dである。各部分撮像画像は、物体の特徴を表す。
【0113】
例えば、部分撮像画像114aはサイドガラスを、部分撮像画像114bはフロントガラスを、部分撮像画像114cはヘッドライトを、部分撮像画像114dはタイヤを写した画像である。部分撮像画像114(部分撮像画像114a~114dを総称して部分撮像画像114と記す)の範囲は互いに重畳してもよい。これら部分撮像画像114の作成方法および、部分撮像画像114の優先度の割り当て方法は、
図3に示した顔認識における動作のフローチャートと同様である。
【0114】
また、実施形態3に係る物体認識における動作のフローチャートは、
図4~
図7に示した顔認識における動作のフローチャートと同様である。上述した方法と同じ方法によって、対象物体を撮像し撮像画像を取得し、登録物体における部分登録画像に対応する部分撮像画像を撮像画像から抽出し、部分登録画像と部分撮像画像とを照合する。
【0115】
照合結果を受けて、登録物体であると認識する速度を優先する場合は、前記した動作例1に示したように、少なくとも1つの部位での照合結果が実質的に一致することで、対象物体が登録物体と同一物体であると認識する。対して、登録物体ではないと認識する速度を優先する場合は、前記した動作例2に示したように、少なくとも1つの部位での照合結果が実質的に一致しないことで、対象物体が登録物体と同一物体ではないと認識する。
【0116】
また、登録物体が複数ある場合に関して説明する。登録物体のいずれかであると認識する速度を優先する場合は、前記した動作例3に示したように、優先度ごとの部位の照合において、複数ある登録物体のいずれかと実質的に一致することで、対象物体が登録物体のいずれかと同一物体であると認識する。登録物体のいずれでもないと認識する速度を優先する場合は、前記した動作例4に示したように、優先度ごとの部位の照合処理において、複数ある登録物体は対象物体と実質的に一致しないことで、当該登録物体は候補から外れていき、候補がなくなることで、対象物体が複数ある登録物体の全てと同一物体ではないと認識する。
【0117】
〔ソフトウェアによる実現例〕
顔認識装置10・10aおよび物体認識装置(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に顔認識装置10・10aに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0118】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0119】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0120】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0121】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0122】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10、10a 顔認識装置
12 記憶部
13 画像抽出部
14 照合部
15 認識出力部
16 優先度設定部
20 カメラ
30 電磁ロック
100、100a 顔認識システム
111、113 撮像画像
112、112a~112e、114、114a~114d 部分撮像画像