(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016759
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】肉様食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20220118BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20220118BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220118BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220118BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23J3/16
A23L13/00 Z
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119673
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】591043086
【氏名又は名称】株式会社みすずコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 和晃
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 恵子
(72)【発明者】
【氏名】岩間 明文
【テーマコード(参考)】
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE03
4B041LE10
4B041LH16
4B041LK25
4B041LP01
4B041LP16
4B041LP18
4B041LP25
4B042AC05
4B042AC10
4B042AD36
4B042AE05
4B042AK09
4B042AK13
4B042AK14
4B042AP02
4B042AP20
4B042AP21
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】食肉に近い弾力ある食感を有し、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を、従来と比較して簡易に且つ低コストで製造可能な方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る肉様食品の製造方法は、豆腐を微塵にする工程と、前記微塵にした豆腐を所定形状の包装体に真空包装して加熱する工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐を微塵にする工程と、
前記微塵にした豆腐を所定形状の包装体に真空包装して加熱する工程と、を含むこと
を特徴とする肉様食品の製造方法。
【請求項2】
前記豆腐または前記微塵にした豆腐の水分率を40質量%~70質量%に調整すること
を特徴とする請求項1記載の肉様食品の製造方法。
【請求項3】
前記水分率を、前記豆腐を脱水することによって調整すること
を特徴とする請求項2記載の肉様食品の製造方法。
【請求項4】
前記水分率を、前記豆腐または前記微塵にした豆腐に他の材料を混合することによって調整すること
を特徴とする請求項2記載の肉様食品の製造方法。
【請求項5】
前記豆腐を微塵にする工程の前に、豆腐を冷凍して解凍する工程、を含むこと
を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の肉様食品の製造方法。
【請求項6】
前記微塵にした豆腐に、もち種澱粉または増粘多糖類を混合すること
を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の肉様食品の製造方法。
【請求項7】
前記微塵にした豆腐に、食肉を混合すること
を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の肉様食品の製造方法。
【請求項8】
前記包装体を、平面視で、円形、楕円形、長円形、棒形、正方形または長方形に形成すること
を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の肉様食品の製造方法。
【請求項9】
前記肉様食品が、ハンバーグ、パティ、カツ、ハム、ソーセージ、ジャーキーまたはシート状食品であること
を特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の肉様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性蛋白質を原料として食肉の食感を模した肉様食品が知られている。
【0003】
従来の肉様食品は、植物性蛋白質を適度に結着させると共に食肉に近い弾力ある食感を持たせるために、複数種類の植物性蛋白質を混合したり、植物性蛋白質以外の材料を混合して製造していた。
【0004】
一例として、特許文献1(特開昭63-160554号公報)には、繊維状組織蛋白および分離大豆蛋白に食用油脂を添加する方法が記載されている。また、特許文献2(特開2001-275576号公報)には、大豆蛋白にマグネシウムおよびカルシウムを混合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-160554号公報
【特許文献2】特開2001-275576号公報
【特許文献3】特開平5-103593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の肉様食品では、複数種類の植物性蛋白質を混合したり、植物性蛋白質以外の材料を混合するため、比較的工程が煩雑で、製造コストが高くなるという課題がある。
【0007】
また、従来は、原料を押出し機の口金から押出して膨化させる方法により、肉様食品を所定の形状に成形していた。しかしながら、口金による方法では、成形可能な大きさおよび形状が制限される。また、押出し後に切断して所望の形状を形成しようとすると工程が煩雑になるという問題がある。一方、特許文献3(特開平5-103593号公報)には、原料を金型で押圧して成形する方法が記載されているが、様々な種類の金型を用意すると製造コストが高くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、食肉に近い弾力ある食感を有し、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を、従来と比較して簡易に且つ低コストで製造可能な方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係る肉様食品の製造方法は、豆腐を微塵にする工程と、前記微塵にした豆腐を所定形状の包装体に真空包装して加熱する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
これによれば、豆腐を微塵にして豆腐の凝集性を向上させることができる。したがって、豆腐を包装する工程を利用して製造対象の肉様食品の形状に成形することができ、豆腐を加熱殺菌する工程を利用して豆腐の微塵を結着させて食肉に近い弾力ある食感を付与すると共に、成形した豆腐の微塵をそのまま固めることができる。その結果、豆腐のみを原料として食肉に近い弾力ある食感を有する肉様食品を簡易に製造することができる。
【0012】
また、包装体を様々な形状に形成することにより、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を簡易に製造することができる。具体的に、包装体を、平面視で、円形、楕円形、長円形、棒形、正方形または長方形に形成することができる。これによれば、豆腐の微塵を包装体に充填すると一定の厚みが生じて、ハンバーグ、パティ、カツ、ハム、ソーセージ、ジャーキー、シート状食品等の肉様食品を製造することができる。
【0013】
また、前記豆腐または前記微塵にした豆腐の水分率を40質量%~70質量%に調整すると好適である。これによれば、蛋白質の含有率を向上させて肉様食品をより食肉の食感に近づけることができる。前記水分率を調整する方法として、前記豆腐を脱水する方法や、前記豆腐または前記微塵にした豆腐に他の材料を混合する方法を用いることができる。
【0014】
また、前記豆腐を微塵にする工程の前に、豆腐を冷凍して解凍する工程、を実施すると好適である。これによれば、蛋白質を変性させて肉様食品をより食肉の食感に近づけることができる。また、一定の脱水効果を有すると共に、豆腐を脱水し易い状態にすることができる。したがって、豆腐を冷凍して解凍した後で脱水したり乾燥させる方法によって効率的に豆腐の水分を調整できる。
【0015】
また、前記豆腐の微塵に、もち種澱粉または増粘多糖類を混合すると好適である。これによれば、豆腐を結着し易くしてより確実に成形して固めることができる。また、豆腐に粘性を付与して肉様食品をより食肉の食感に近づけることができる。また、前記微塵にした豆腐に、食肉を混合してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、食肉に近い弾力ある食感を有し、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を、従来と比較して簡易に且つ低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る製造方法によって製造された肉様食品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、本発明に係る「肉様食品」は、植物性蛋白質を原料として食肉の食感を模した食品であって、植物性蛋白質(豆腐)のみを原料として製造可能であるが、任意の原料として動物性蛋白質(食肉)が混合されているものを含む。
【0019】
本実施形態に係る肉様食品の製造方法は、豆腐を微塵にする工程と、前記微塵にした豆腐を所定形状の包装体に真空包装して加熱する工程と、を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0020】
先ず、豆腐を用意する。豆腐の種類は限定されず、木綿豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐等を任意に使用できる。後に微塵にするため、形状が崩れた豆腐でもよい。したがって、仕損品としての豆腐、凍り豆腐または油揚げの製造過程でロスとして発生する豆腐等も使用できる。豆腐は一般に比較的安価であるが、仕損品やロスを使用することによってさらに製造コストを低くすることができる。
【0021】
次に、豆腐を微塵にする工程を実施する。ここでいう「微塵」とは、豆腐を砕く、切断すること等により形成された比較的小さい塊やより細かい粒子であって、例えば直径10[mm]程度のものや直径1[mm]以下のものを含む。また、水分率によって状態は様々であり、水分率が比較的高く、水分中に固形分が分散した状態のものやペースト状のもの、また、水分率が比較的低く、粘土状のものや砂状(粉状)のものを含む。本工程によれば、豆腐の凝集性を向上させることができるため、次工程で微塵にした豆腐を包装体に真空包装することにより、簡易に成形し、加熱して固めることができる。なお、豆腐を微塵にする方法は限定されず、サイレントカッター、混錬機等を用いればよい。
【0022】
また、本工程に際して、予め豆腐の水分率を40[質量%]~70[質量%]程度に調整しておくと好適である。ただし、豆腐を微塵にした後で概ね上記の水分率に調整してもよい。これによれば、蛋白質の含有率を向上させて肉様食品をより食肉の食感に近づけることができる。水分の調整方法は限定されず、例えば適宜豆腐を押圧して水分を絞り出す等の方法により豆腐を脱水してもよい。また、本発明の目的に反しない範囲で、豆腐に粉豆腐(凍り豆腐を粉末化したもの)、大豆粉、きな粉、小麦粉、米粉等の粉状物に例示される比較的水分の少ない材料を混合する方法により水分を調整してもよい。なお、ここでの「水分率」とは、豆腐に含まれる水分の割合をいい、例えば水分率60[質量%]の豆腐は、水分を60[質量%]、水分以外の成分(固形分)を40[質量%]含む。
【0023】
また、本工程に際して、予め豆腐を冷凍して解凍しておくと好適である。これによれば、蛋白質を変性させて肉様食品をより食肉の食感に近づけることができる。このとき、豆腐を冷凍して凍結させた後は直ちに解凍してよいが、凍結させたまま所定時間(例えば、2[日]~3[日]程度)保持して豆腐を熟成させた後に解凍してもよい。冷凍方法は限定されず、豆腐を単に冷凍庫に入れる方法等でよい。解凍方法も限定されず、流水解凍、自然解凍等の方法でよい。
【0024】
また、豆腐を冷凍して解凍すると、一定の脱水効果を有すると共に、豆腐を脱水し易い状態にすることができる。したがって、豆腐を冷凍して解凍した後で脱水したり乾燥させる方法によって効率的に豆腐の水分を調整できる。すなわち、この方法によれば、豆腐の脱水効果を向上させて簡易に且つ短時間で水分を調整できる。
【0025】
また、本工程により豆腐は微塵にされているため、混合物を豆腐全体に均一に馴染ませることが可能である。したがって、微塵にした豆腐(豆腐の微塵)に、塩、醤油等の調味料等を混合して肉様食品(豆腐)を好適に味付けすることができる。あわせて所定量の食肉を混合してもよい。また、微塵にした豆腐(豆腐の微塵)に、もち種澱粉または増粘多糖類を好適に混合することができる。これによれば、豆腐を結着し易くしてより確実に成形して固めることができる。また、豆腐に粘性を付与して肉様食品をより食肉の食感に近づけることができる。もち種澱粉の例として、もち米澱粉、ワキシコーンスターチ、ワキシソルガム等が挙げられる。増粘多糖類の例として、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カードラン、ジュランガム等が挙げられる。勿論、これらのうち複数種類を混合してもよい。調味料等や、もち種澱粉、増粘多糖類等を混合する際には、本発明の目的に反しない範囲で(例えば、もち種澱粉または増粘多糖類の場合、水分調整後の豆腐100[質量%]に対して0.05[質量%]~0.5[質量%]程度)混合することが好ましい。また、予めこれらを水に膨潤または分散させたうえで混合してもよい。
【0026】
なお、豆腐を微塵にしながら、調味料等や、もち種澱粉、増粘多糖類等を混合してもよいが、微塵切り装置等により確実に豆腐を微塵にして、微塵にした豆腐(豆腐の微塵)とこれらとを均一に混合することが好ましい。また、調味料等や、もち種澱粉、増粘多糖類等の混合を利用して、微塵にした豆腐の水分を調整してもよい。この場合、もち種澱粉や増粘多糖類による食感の改善と共に、豆腐の水分が調整されてさらに食感を改善できる。
【0027】
次に、微塵にした豆腐(豆腐の微塵)を所定形状の包装体に真空包装して加熱する工程を実施する。その結果、肉様食品を製造できる。詳細には、耐熱性の合成樹脂等からなる包装体に豆腐の微塵を充填し、内部の空気を抜いて真空包装する。これによって、製造対象の肉様食品の形状に成形することができる。次いで、当該真空包装体を所定の条件(例えば、70[℃]~120[℃]で、40[分]~60[分])で加熱殺菌する。これによって、豆腐の微塵を結着させて食肉に近い弾力ある食感を付与すると共に、成形した形状のまま固めることができる。その結果、食肉に近い弾力ある食感を有する肉様食品を製造できる。
【0028】
図1に、本実施形態に係る製造方法で製造した肉様食品の写真を示す。本工程では、豆腐の微塵を包装体に充填することにより、そのまま成形して固めることができる。したがって、包装体を様々な形状に形成することにより、豆腐の微塵を複雑な形状を含む所望の形状に形成することができ、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を製造できる。具体例として、包装体(より詳しくは、包装体の収容部)を、平面視で、円形、楕円形、長円形、棒形、正方形、長方形等に形成する。これによれば、豆腐の微塵を包装体に充填すると一定の厚みが生じて、ハンバーグ、パティ、カツ、ハム、ソーセージ、ジャーキー、シート状食品等の肉様食品を製造できる。
図1に示す写真のうち、それぞれ
図1(a)はハム、
図1(b)はソーセージ、
図1(c)はシート状食品の例である。その他にも、包装体を星の形等に形成してもよい。
【0029】
以上の本実施形態に係る製造方法によれば、比較的安価で入手しやすい豆腐のみを原料として、食肉に近い弾力ある食感を有する肉様食品を簡易に製造することができる。豆腐を微塵にして豆腐の凝集性を向上させることにより、例えば押出し機を用いて豆腐を押出したり、加圧して押し固める工程が不要となる。すなわち、豆腐を包装する工程を利用して製造対象の肉様食品の形状に成形することができ、さらに豆腐を加熱殺菌する工程を利用して豆腐の微塵を結着させて食肉に近い弾力ある食感を付与すると共に、成形した豆腐の微塵をそのまま固めることができる。また、包装体を様々な形状に形成することにより、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を簡易に製造することができる。その結果、食肉に近い弾力ある食感を有し、大きさ、形状の異なる様々な種類の肉様食品を、従来と比較して簡易に且つ低コストで製造可能になる。
【実施例0030】
水分率75[質量%]の豆腐200[g]を、-5[℃]の冷凍庫に入れて24[時間]冷凍処理した後、解凍し、エアープレス機により押圧して豆腐の質量が100[g](すなわち、水分率50[質量%])になるまで脱水して水分を調整した。次いで、微塵切り装置を用いて脱水した豆腐を微塵にしながら、塩、醤油等の調味料等を混ぜ合わせて味付けし、さらに微塵にした豆腐に、ジュランガム0.3[g]を水9.0[g]に分散させたものを添加して混ぜ合わせた。なお、この場合、ジュランガムの混合割合[質量%]は、水分調整後の豆腐100[g]にジュランガム0.3[g]を混合したため、0.3[質量%]である。具体的には、ブラウン社製の「マルチクイック 5 ヴァリオ MQ5035(Type4191)」を使用した。チョッパーボウル内に脱水した豆腐および前記調味料等を収容し、カッターを取り付けた蓋をして高速回転(ターボスイッチ)(回転数は、約3400[回転/分])で、1分間運転した後、一旦運転を止めてゴムベラでチョッパーボウル内壁の付着物を落とし、再度高速回転で1分間運転した。次いで、チョッパーボウル内に前記ジュランガムを添加して、再度高速回転で1分間運転した。
【0031】
次いで、微塵にした豆腐(豆腐の微塵)をナイロンおよびポリエチレンのラミネート包材に充填し、内部の空気を抜いて真空包装した。次いで、当該真空包装体を98[℃]に設定したスチーマーに入れて40分加熱殺菌した。
【0032】
以上の方法により製造した肉様食品を、株式会社みすずコーポレーションの従業者10名が喫食し、表1に示す評価基準により食感を評価し、さらに全体評価した。具体的には、試験1として「肉類に類似する食感であるか」、試験2として「弾力のある食感であるか」を評価し、さらに試験3として「肉様食品としての好適性(肉様食品として好ましいか)」を評価した。結果を表2に示す。
【0033】
【0034】
【0035】
表2に示すように、試験1~試験3のいずれの評価点も1.5を上回り、最高点(2点)に極めて近い値であった。すなわち、本実施例に係る肉様食品は、全体として、肉類に類似する食感については「強く思う」と評価され、弾力のある食感については「しっかり弾力がある」と評価され、肉様食品としての好適性については「非常に好ましい」と評価された。このことから、本発明に係る製造方法によれば、食肉に近い弾力ある食感を有する好適な肉様食品を製造できることが示された。