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特開2022-167613車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167613
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20221027BHJP
   B60T 3/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B60T3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073528
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】592205883
【氏名又は名称】北陸電気工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 克彦
(72)【発明者】
【氏名】古村 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】能 裕二
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333DB10
(57)【要約】
【課題】作業者が車輪に輪止めを取り付け忘れることを防ぐためのものであって、車両に輪止めを検出するため部品を付加することなく、車輪に輪止めが取り付けられたことを確認できる車両逸走防止システムを提供する。
【解決手段】作業用装置およびその操作部を有する車両の停車時に車輪に取り付けられる輪止めと、輪止めの取り付けを確認するための確認用端末を備え、確認用端末は、撮影部と、撮影部により撮影された画像内に輪止めおよび輪止めの位置の基準となる基準対象物が存在することを検出する検出部と、輪止めと基準対象物の位置関係を算出する算出部と、輪止めと基準対象物の位置関係が所定の関係であるときに輪止めが車輪に取り付けられていることを認証する認証部と、認証部による認証がなされたことを条件として操作部の操作を可能とする操作許可信号を送信する操作許可部を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用装置およびその操作部を有する車両の停車時に車輪に取り付けられる輪止めと、該輪止めの取り付けを確認するための確認用端末を備え、
該確認用端末は、撮影部と、該撮影部により撮影された画像内に前記輪止めおよび前記輪止めの位置の基準となる基準対象物が存在することを検出する検出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係を算出する算出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係が所定の関係であるときに前記輪止めが前記車輪に取り付けられていることを認証する認証部と、該認証部による認証がなされたことを条件として前記操作部の操作を可能とする操作許可信号を送信する操作許可部を備えるものであることを特徴とする車両逸走防止システム。
【請求項2】
前記車輪の前後に取り付けられる1組の輪止めを備え、
一方の前記輪止めの位置の基準となる前記基準対象物が他方の前記輪止めであることを特徴とする請求項1記載の車両逸走防止システム。
【請求項3】
前記輪止めの位置の基準となる前記基準対象物が前記車輪であることを特徴とする請求項1または2記載の車両逸走防止システム。
【請求項4】
前記輪止めの表面に付されたマーカを備え、
前記検出部は、前記マーカを検出することにより前記輪止めの存在を検出するものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の車両逸走防止システム。
【請求項5】
前記操作部に設けられた開閉錠を備え、
該開閉錠は、施錠状態で前記操作部の操作を不可能とするものであって遠隔操作によって施解錠可能であり、
前記操作許可信号は、前記開閉錠を解錠する信号であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の車両逸走防止システム。
【請求項6】
前記輪止めに繋がれた接続部と、前記車両に設けられた接続錠を備え、
前記接続部は、前記車両に着脱可能なものであり、
前記接続錠は、前記車両に取り付けられた前記接続部を施錠して固定するものであって遠隔操作によって施解錠可能であり、前記操作部の操作が不可能であるときに解錠可能であり、
前記接続錠が施錠されたことを条件として前記操作部の操作が可能となるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の車両逸走防止システム。
【請求項7】
作業用装置およびその操作部を有する車両の停車時に車輪に取り付けられる輪止めの取り付けを確認するための確認用端末を、
撮影部と、該撮影部により撮影された画像内に前記輪止めおよび前記輪止めの位置の基準となる基準対象物が存在することを検出する検出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係を算出する算出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係が所定の関係であるときに前記輪止めが前記車輪に取り付けられていることを認証する認証部と、該認証部による認証がなされたことを条件として前記操作部の操作を可能とする操作許可信号を送信する操作許可部として機能させるものであることを特徴とする車両逸走防止プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車などの車両による作業時において、車輪に輪止めを取り付け忘れることを防ぐための車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車やクレーン車などのアウトリガを備える車両においては、アウトリガを展開する前に、車輪に輪止めを取り付けることで、車両の逸走を防止している。しかし、輪止めは作業者が個々に取り付けるものであるから、取り付け忘れてしまう場合があり、危険であった。
【0003】
そこで、作業者が輪止めを取り付け忘れることを防ぐために、特許文献1、2に示す発明が提案されている。これらの発明は、何れも車両の車輪近傍にセンサが取り付けられており、このセンサにより車輪に輪止めが取り付けられているか否かを検出して、輪止めが取り付けられていない場合にはアウトリガの操作が規制されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-117016号公報
【特許文献2】特許第6528429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの発明は、車両に輪止めを検出するためのセンサを取り付ける必要があり、そのための費用や手間がかかるものであった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、作業者が車輪に輪止めを取り付け忘れることを防ぐためのものであって、車両に輪止めを検出するための部品を付加することなく、車輪に輪止めが取り付けられたことを確認できる車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両逸走防止システムは、作業用装置およびその操作部を有する車両の停車時に車輪に取り付けられる輪止めと、該輪止めの取り付けを確認するための確認用端末を備え、該確認用端末は、撮影部と、該撮影部により撮影された画像内に前記輪止めおよび前記輪止めの位置の基準となる基準対象物が存在することを検出する検出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係を算出する算出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係が所定の関係であるときに前記輪止めが前記車輪に取り付けられていることを認証する認証部と、該認証部による認証がなされたことを条件として前記操作部の操作を可能とする操作許可信号を送信する操作許可部を備えるものであることを特徴とする。なお、基準対象物とは、車輪に取り付けられた輪止めの周囲に存在する物体であって、この基準対象物と輪止めとの位置関係に基づいて、輪止めが車輪に取り付けられていることを確認できるものである。
【0008】
また、本発明の車両逸走防止システムは、前記車輪の前後に取り付けられる1組の輪止めを備え、一方の前記輪止めの位置の基準となる前記基準対象物が他方の前記輪止めであるものであってもよい。
【0009】
また、本発明の車両逸走防止システムは、前記輪止めの位置の基準となる前記基準対象物が前記車輪であるものであってもよい。なお、1組の輪止めを備える場合において、一方の輪止めの基準対象物が、他方の輪止めと車輪の両方であってもよい。
【0010】
また、本発明の車両逸走防止システムは、前記輪止めの表面に付されたマーカを備え、前記検出部が、前記マーカを検出することにより前記輪止めの存在を検出するものであってもよい。なお、マーカとは、確認用端末(コンピュータ)が認識しやすい図柄のことであり、たとえば二次元コードが挙げられる。
【0011】
また、本発明の車両逸走防止システムは、前記操作部に設けられた開閉錠を備え、該開閉錠が、施錠状態で前記操作部の操作を不可能とするものであって遠隔操作によって施解錠可能であり、前記操作許可信号は、前記開閉錠を解錠する信号であるものであってもよい。
【0012】
また、本発明の車両逸走防止システムは、前記輪止めに繋がれた接続部と、前記車両に設けられた接続錠を備え、前記接続部は、前記車両に着脱可能なものであり、前記接続錠は、前記車両に取り付けられた前記接続部を施錠して固定するものであって遠隔操作によって施解錠可能であり、前記操作部の操作が不可能であるときに解錠可能であり、前記接続錠が施錠されたことを条件として前記操作部の操作が可能となるものであってもよい。なお、接続錠の施解錠状態と操作部の操作の可不可との関係については、確認用端末によって制御されるものであってもよいし、接続錠と操作部が直接接続されていて確認用端末によらず制御されるものであってもよい。また、開閉錠と接続錠の両方を備える場合においては、開閉錠が施錠された状態でなければ接続錠が解錠されず、接続錠が施錠された状態でなければ開閉錠が解錠されないものであってもよい。
【0013】
本発明の車両逸走防止プログラムは、作業用装置およびその操作部を有する車両の停車時に車輪に取り付けられる輪止めの取り付けを確認するための確認用端末を、撮影部と、該撮影部により撮影された画像内に前記輪止めおよび前記輪止めの位置の基準となる基準対象物が存在することを検出する検出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係を算出する算出部と、前記輪止めと前記基準対象物の位置関係が所定の関係であるときに前記輪止めが前記車輪に取り付けられていることを認証する認証部と、該認証部による認証がなされたことを条件として前記操作部の操作を可能とする操作許可信号を送信する操作許可部として機能させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラムによれば、確認用端末により輪止めが車輪に取り付けられたことが確認されないと操作部の操作ができないので、安全である。そして、確認用端末の撮影部が撮影した輪止めの画像に基づいて、画像内で輪止めが車輪に取り付けられたことを確認するものなので、車両に輪止めを検出するためのセンサなどの部品を付加する必要がなく、そのような部品を取り付けるための費用や手間がかからない。
【0015】
また、輪止めが車輪に取り付けられたことを確認する方法として、2つの輪止めを備える場合に一方の輪止めに対して他方の輪止めを基準対象物とするものや、輪止めに対して車輪を基準対象物とするものであれば、より確実に輪止めの取り付けを確認できる。
【0016】
また、輪止めの表面に付されたマーカを備えるものであれば、より確実かつ正確に輪止めの存在を検出してその位置を算出できる。マーカは単なる図柄であり、輪止めに直接描いたり、描かれた部材を輪止めに貼付したりすることで、容易に付すことができる。
【0017】
また、操作部に設けられた開閉錠を備えるものであれば、簡易な構成で操作部の操作の可・不可を切り替えることができる。
【0018】
また、輪止めに繋がれた接続部と車両に設けられた接続錠を備えるものであって、接続錠が施錠されたことを条件として操作部の操作を可能とするものであれば、輪止めが取り付けられたことをより確実に確認することができ、さらに操作部の操作が不可能であるときに接続錠が解錠可能であるものであれば、作業用装置の操作が完了する前に誤って輪止めを取り外してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両逸走防止システムの全体図である。
図2】車輪および輪止めの説明図である。
図3】高所作業車の説明図である。
図4】接続錠の説明図である。
図5】開閉錠の説明図である。
図6】確認用端末の説明図である。
図7】車両逸走防止プログラムの主たる部分のフローチャートである。
図8】(a)は車両逸走防止プログラムの緊急解錠ステップのフローチャート、(b)は車両逸走防止プログラムの直接解錠通知ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラムの具体的な内容について説明する。このシステムは、作業用装置を有する種々の車両を対象として、作業者が車輪に輪止めを取り付け忘れることを防ぎ、延いては輪止めを取り付けないまま作業用装置による作業が行われて車両が逸走してしまうことを防ぐためのものである。ここでは、作業用装置を有する車両として、高所作業車を対象とする場合を示す。
【0021】
まず、高所作業車100の構成について説明する。図3に示すように、高所作業車100は、前後に車輪110(前輪111と後輪112)を有する車体120と、車体120の前側部分に設けられた運転室130と、車体120の後側部分に設けられたブーム140と、ブーム140の先端に設けられたバケット150と、車体120の左右の前輪111の後側部分と後輪112の後側部分にそれぞれ設けられたアウトリガ160と、車体120の後端部に設けられたアウトリガ160の操作部170を備える。ブーム140は、起伏・伸縮・旋回自在なものであり、その操作のためのコントローラがブーム140の根元部分とバケット150の2箇所に設けられている(図示省略)。バケット150は、作業者が搭乗して高所において作業を行うためのものである。アウトリガ160は、車体120の側方に張り出し、上下に伸びて車体120を浮かせて支持するものであって、本発明における作業用装置に相当するものである。操作部170は、アウトリガ160を操作するためスイッチを備える操作盤171と、操作盤171を覆う被覆部172を有するものである。被覆部172は、ヒンジによって取り付けられており開閉自在となっている。なお、高所作業車100には、全てのアウトリガ160が展開された状態でないとブーム140が動かせず、ブーム140が格納された状態でないとアウトリガ160が収納できないようなインターロックシステムが備わっている。
【0022】
そして、図1に示すように、本発明の車両逸走防止システムは、高所作業車100の停車時に車輪110に取り付けられる輪止め1と、輪止め1の取り付けを確認するための確認用端末2と、輪止め1の表面に付されたマーカ3と、操作部170に設けられた開閉錠4と、輪止め1に繋がれた接続部5と、高所作業車100の車体120に設けられた接続錠6と、高所作業車100を用いる作業を管理するための管理用端末7を備える。なお、図1中の白抜き矢印は、情報が送受信されることを示す。
【0023】
輪止め1は、車輪110を固定するための既存のものであり、図2に示すように、略くさび形で、車輪110と地面の間に食い込ませるようにして取り付けられる。車輪110と接する面が車輪110の形状に合わせた凹曲面となっているものや、車輪110と接する面や地面と接する面に滑り止めのための溝や凹凸が形成されているものであってもよい。輪止め1は2つ1組で、車輪110の前後を挟むように取り付けられる。なお、輪止め1は複数組を用意して複数の車輪110に取り付けるものとすればより安全で望ましいが、以下の説明においては、簡単のために1組の輪止め1を1つの車輪110(後輪112)に取り付けることを想定する。なお、1組の輪止め1のうち、車輪110の前側に取り付けられるものを前側輪止め1a、後側に取り付けられるものを後側輪止め1bとする。
【0024】
また、前側輪止め1aと後側輪止め1bにそれぞれロープ11の一端が結ばれており、両方のロープ11の他端が、接続部5に結ばれている。換言すれば、前側輪止め1aと後側輪止め1bとがロープ11で繋がれており、このロープ11の中間部に接続部5が取り付けられている。接続部5は、磁性体である金属からなる略直方体形のブロック状のものである。
【0025】
マーカ3は、輪止め1の表面であって車輪110に取り付けたときに車体120の側方を向く面に付されている。ここではマーカ3は正方形の二次元コードであるものとし、マーカ3が印刷された樹脂板が輪止め1に貼り付けられている。なお、マーカ3が付される位置は、図2に示すように、前側輪止め1aと後側輪止め1bをそれぞれ車輪110の前後に取り付けたときに、前側輪止め1aと後側輪止め1bに付されたマーカ3同士の間隔(マーカ3のどの部分を基準としてもよいが、ここでは前側輪止め1aのマーカ3の前側辺と後側輪止め1bのマーカ3の後側辺の間の距離とする)が車輪110の直径と略同じになるような位置となっている。
【0026】
接続錠6は、車体120の後輪112(輪止め1を取り付ける車輪110)の近傍に設けられたものであって、電磁石式の電子錠からなるものである。より詳しくは、図4に示すように、電磁石61と、外部と通信を行う通信部62と、電磁石61の通電状態を切り替える切替部63と、各部に電力を供給する電源部64と、これらの各部が納められたケース65を備える。電磁石61は、ケース65の表面に露出しており、通電時にのみ磁力を有するものであって、接続部5を吸着するものである。その吸着力は、少なくとも人力では容易に取り外すことができないほどのものである。この電磁石61により接続部5を吸着した状態が、接続錠6における施錠状態であり、接続部5を吸着していない状態が、接続錠6における解錠状態である。すなわち、接続部5は、接続錠6を介して高所作業車100の車体120に着脱可能なものであって、接続錠6が、接続錠6を介して車体120に取り付けられた接続部5を施錠して固定するものとなっている。また、通信部62が外部からの施錠信号または解錠信号を受信して切替部63へと伝達することで、電磁石61の通電状態が切り替えられる。すなわち、施錠信号を受信したときは、切替部63により電源部64から電磁石61に電力が供給され、解錠信号を受信したときは、切替部63により電源部64から電磁石61への電力の供給が停止される。よって、接続錠6は、遠隔操作によって施解錠可能である。そして、接続錠6が施錠状態であるか解錠状態についての情報を、通信部62から外部へと送信できる。なお、電源部64は、接続錠6のケース65に内蔵された電池であってもよいし、高所作業車100のバッテリなど、接続錠6のケース65の外部のものであってもよい。
【0027】
開閉錠4は、操作部170に設けられたものであって、シリンダ錠型の電子錠からなるものである。より詳しくは、図5に示すように、シリンダ錠からなる錠本体45と、錠本体45に接続された略L字形の掛金41と、外部と通信を行う通信部42と、モータからなり掛金41の施解錠状態を切り替える切替部43と、各部に電力を供給する電源部44と、これらの各部が納められたものであって被覆部172側に取り付けられたケース46と、操作盤171側に取り付けられた掛金41と係合する受部47と、錠本体45を施解錠する開閉鍵48を備える。掛金41は、ケース46から突出しており、錠本体45に対して回転するものであって、受部47に係合した状態が施錠状態であり、受部47から離隔した状態が解錠状態である。掛金41を受部47に係合させて施錠状態とすることで、被覆部172が開けられなくなるので、操作盤171の操作ができなくなる。すなわち、開閉錠4が、施錠状態で操作部170の操作を不可能とするものである。また、通信部42が外部からの施錠信号または解錠信号を受信して切替部43へと伝達し、切替部43が掛金41を動かすことで、施解錠状態が切り替えられる。すなわち、施錠信号を受信したときは、掛金41が受部47に係合して施錠状態となり、解錠信号を受信したときは、掛金41が受部47から離隔して解錠状態となる。よって、開閉錠4は、遠隔操作によって施解錠可能である。そして、開閉錠4が施錠状態であるか解錠状態についての情報を、通信部42から外部へと送信できる。なお、電源部44は、開閉錠4のケース46に内蔵された電池であってもよいし、高所作業車100のバッテリなど、開閉錠4のケース46の外部のものであってもよい。また、ケース46が操作盤171側に設けられており、受部47が被覆部172側に設けられたものであってもよい。そして、開閉錠4は、遠隔操作による施解錠だけではなく、開閉鍵48を錠本体45の鍵穴に差し込んで回すことで直接施解錠することもできるものである。
【0028】
確認用端末2は、スマートフォンまたはタブレットからなるものであり、図6のハードウェア構成図に示すように、車輪110(後輪112)に取り付けられた輪止め1を撮影するカメラ21、カメラ21により撮影された画像やその他の画像を表示する表示部としてのディスプレイ22、操作入力を受け付ける入力部としてのタッチパネル23、プログラムの命令を順番に実行するCPU24、プログラムやその他のデータなどを保存しておく記憶装置(メモリ)25、インターネットや他の機器と無線接続するための通信装置26を備えている。ディスプレイ22とタッチパネル23とは、一体に形成されており、ディスプレイ22に表示されるボタンや画像自体が、タッチパネル23により入力部として機能する。また、入力部として、タッチパネル23の他に機械的なボタンなどの操作機構を有していてもよい。
【0029】
管理用端末7は、スマートフォン、タブレットまたはパーソナルコンピュータからなるものである。スマートフォンやタブレットであれば、確認用端末2と同様の構成でのものであり、パーソナルコンピュータであれば、入力部としてタッチパネルの替わりに(またはタッチパネルに加えて)キーボードを備えるものである。
【0030】
そして、確認用端末2は、上記のカメラ21により撮影を行う撮影部2aと、撮影部により撮影された画像内に輪止め1および輪止め1の位置の基準となる基準対象物が存在することを検出する検出部2bと、輪止め1と基準対象物の位置関係を算出する算出部2cと、輪止め1と基準対象物の位置関係が所定の関係であるときに輪止め1が車輪110に取り付けられていることを認証する認証部2dと、認証部2dによる認証がなされたことを条件として操作部170の操作を可能とする操作許可信号を送信する操作許可部2eと、操作許可部2eが操作許可信号を送信したときに管理用端末7へ通知を送信する開始通知部2fと、操作部170の操作が不可能であることを条件として接続錠6から接続部5を取り外すことを可能とする取外し許可信号を送信する取外し許可部2gと、取外し許可部2gが取外し許可信号を送信したときに管理用端末7へ通知を送信する終了通知部2hを備える。
【0031】
ただし、これらの撮影部2a、検出部2b、算出部2c、認証部2d、操作許可部2e、開始通知部2f、取外し許可部2gおよび終了通知部2hは、確認用端末2に実装されたソフトウェアによって、ハードウェアである確認用端末2が各部として機能するものである(図6において上記の各部が点線で示されているのは、ハードウェアそのものであるその他の構成要素との違いを表している)。すなわち、確認用端末2には、本発明の車両逸走防止プログラム(アプリ)がインストールされており、プログラムを起動することで、各処理が順次実行される。そして、プログラムの各処理段階において、ハードウェアである確認用端末2が、撮影部2a、検出部2b、算出部2c、認証部2d、操作許可部2e、開始通知部2f、取外し許可部2gおよび終了通知部2hを備える。以下において、プログラムの処理の流れを説明する。なお、図7に、このプログラムの処理の流れを表すフローチャートを示す。
【0032】
なお、撮影部2a、検出部2b、算出部2c、認証部2d、操作許可部2eおよび開始通知部2fについては、高所作業車100のアウトリガ160(作業用装置)を用いる前に順次機能するものであり、取外し許可部2gおよび終了通知部2hについては、高所作業車100のアウトリガ160(作業用装置)を用いた後に順次機能するものである。
【0033】
最初に、プログラムは、確認用端末2に撮影ステップS1を実行させる。撮影ステップS1が実行されることにより、確認用端末2が撮影部2aを備える。確認用端末2が備える撮影部2aは、カメラ21を起動し、ディスプレイ22にカメラ21で撮影された画像を表示する(静止画ではなく、カメラ21で撮影したものをリアルタイムに表示する)。
【0034】
次に、プログラムは、確認用端末2に検出ステップS2を実行させる。検出ステップS2が実行されることにより、確認用端末2が検出部2bを備える。確認用端末2が備える検出部2bは、撮影部2aにより撮影された画像内に輪止め1および輪止め1の位置の基準となる基準対象物が存在するか否かを検出する。ここで、一方の輪止め1の位置の基準となる基準対象物は、他方の輪止め1および車輪110(後輪112)であるとする。すなわち、前側輪止め1aの基準対象物は後側輪止め1bと車輪110であり、後側輪止め1bの基準対象物は前側輪止め1aと車輪110である。よって、検出部2bとしての確認用端末2は、前側輪止め1aと後側輪止め1bと車輪110の存在を検出する。輪止め1および車輪110が存在しなければ、検出が繰り返される。
【0035】
なお、確認用端末2が備える検出部2bは、輪止め1について、輪止め1の表面に付された二次元コードからなるマーカ3を検出することで、その存在を検出する。また、車輪110について、円形の外形を画像認識することで、その存在を検出する。
【0036】
次に、プログラムは、確認用端末2に算出ステップS3を実行させる。算出ステップS3が実行されることにより、確認用端末2が算出部2cを備える。確認用端末2が備える算出部2cは、検出部2bが検出した輪止め1と基準対象物、すなわち、前側輪止め1aと後側輪止め1bと車輪110の位置関係を算出する。より詳しくは、算出部2cは、前側輪止め1aと後側輪止め1bに付されたマーカ3の大きさ、位置および姿勢を算出し(具体的な算出方法は、既知の方法によるものであり、ここでは詳細な説明は省略する)、それらに基づいて、前側輪止め1aに付されたマーカ3と後側輪止め1bに付されたマーカ3の間の距離、すなわち前側輪止め1aと後側輪止め1bの間の距離を算出する。また、算出部2cは、画像認識した車輪110の中心または前端と後端の位置を算出する。算出結果は、記憶装置25に記憶される。
【0037】
次に、プログラムは、確認用端末2に認証ステップS4を実行させる。認証ステップS4が実行されることにより、確認用端末2が認証部2dを備える。確認用端末2が備える認証部2dは、算出部2c(算出ステップS3)の算出結果に基づき、輪止め1と基準対象物の位置関係、すなわち前側輪止め1aと後側輪止め1bと車輪110の位置関係が所定の関係であるときに、輪止め1が車輪110に取り付けられていることを認証する。より詳しくは、認証部2dは、前側輪止め1aと後側輪止め1bの間の距離(=前側輪止め1aに付されたマーカ3と後側輪止め1bに付されたマーカ3の間の距離)が、車輪110の直径と略同じであり、かつ車輪110が、前側輪止め1aと後側輪止め1bの間に位置していれば、輪止め1が車輪110に取り付けられていることを認証する。なお、車輪110の直径は、予め確認用端末2の記憶装置25に数値が保存されており、算出された距離がその数値に対して所定の誤差範囲に収まれば、略同じであると判断する。また、車輪110が前側輪止め1aと後側輪止め1bの間に位置しているか否か、すなわち車輪110が前側輪止め1aに付されたマーカ3と後側輪止め1bに付されたマーカ3の間に位置しているか否かは、車輪110の中心または前端と後端が水平方向において前後のマーカ3の間に存在するか否かにより判断される。認証結果は、ディスプレイ22に表示されるとともに、記憶装置25に記憶される。認証されなかった場合には、再び検出ステップS2が実行される。
【0038】
次に、プログラムは、確認用端末2に操作許可ステップS5を実行させる。操作許可ステップS5が実行されることにより、確認用端末2が操作許可部2eを備える。確認用端末2が備える操作許可部2eは、認証部2d(認証ステップS4)による認証がなされたことおよび接続錠6が施錠状態であることを条件として、開閉錠4を解錠する信号を送信する。信号を開閉錠4の通信部42が受信し、開閉錠4が解錠状態となることで、操作部170の被覆部172を開いて、操作盤171の操作ができるようになる。すなわち、開閉錠4を解錠する信号は、操作部170の操作を可能とする操作許可信号である。そして、接続錠6が施錠された状態でなければ、開閉錠4が解錠されないことになる。なお、接続錠6の施解錠状態については、接続錠6の通信部62から確認用端末2の通信装置26へと情報が送信される。接続錠6の施錠が確認されなければ、接続錠6の状態の検出が繰り返される。
【0039】
次に、プログラムは、確認用端末2に開始通知ステップS6を実行させる。開始通知ステップS6が実行されることにより、確認用端末2が開始通知部2fを備える。確認用端末2が備える開始通知部2fは、操作許可部2eが操作部170の操作を可能としたとき、すなわち、操作許可部2e(操作許可ステップS5)による操作許可信号(開閉錠4を解錠する信号)の送信に応じて、管理用端末7へ、アウトリガ160(作業用装置)を用いた作業が開始される旨の通知を送信する。より詳しくは、開始通知部2fは、管理用端末7へ作業開始の旨が記載された電子メールを送信する。また、それに併せて、作業者名、開閉錠4が解錠された時刻、車輪110に取り付けられた輪止め1の画像などの各種情報を送信するものであってもよい。さらに、確認用端末2が衛星測位システムに対応するものであれば、それによって得られた位置情報を送信するものであってもよい。
【0040】
ここまでは、アウトリガ160、ブーム140およびバケット150を用いた作業前に機能するものであり、ここからは、アウトリガ160、ブーム140およびバケット150を用いた作業後に機能するものである。なお、これらの作業後に、操作部170の被覆部172が閉じられ、開閉鍵48によって開閉錠4が施錠されるものとする。
【0041】
次に、プログラムは、確認用端末2に取外し許可ステップS7を実行させる。取外し許可ステップS7が実行されることにより、確認用端末2が取外し許可部2gを備える。確認用端末2が備える取外し許可部2gは、操作部170の操作が不可能であること、すなわち開閉錠4が施錠されていることを条件として、接続錠6を解錠する信号を送信する。信号を接続錠6の通信部62が受信し、接続錠6が解錠状態となることで、接続部5を取り外すことができるようになる。すなわち、接続錠6を解錠する信号は、接続部5を取り外すことを可能とする取外し許可信号である。そして、開閉錠4が施錠された状態でなければ、接続錠6が解錠されないことになる。なお、開閉錠4の施解錠状態については、開閉錠4の通信部42から確認用端末2の通信装置26へと情報が送信される。開閉錠4の施錠が確認されなければ、開閉錠4の状態の検出が繰り返される。
【0042】
次に、プログラムは、確認用端末2に終了通知ステップS8を実行させる。終了通知ステップS8が実行されることにより、確認用端末2が終了通知部2hを備える。確認用端末2が備える終了通知部2hは、取外し許可部2g(取外し許可ステップS7)による取外し許可信号(接続錠6を解錠する信号)の送信に応じて、管理用端末7へ、アウトリガ160(作業用装置)を用いた作業が終了した旨の通知を送信する。より詳しくは、終了通知部2hは、管理用端末7へ作業終了の旨が記載された電子メールを送信する。また、それに併せて、作業者名、開閉錠4が施錠された時刻、車輪110に取り付けられた輪止め1の画像などの各種情報を送信するものであってもよい。さらに、確認用端末2が衛星測位システムに対応するものであれば、それによって得られた位置情報を送信するものであってもよい。以上で、このプログラムの一連の動作が終了する。
【0043】
なお、上記の一連の動作とは別に、プログラムは、確認用端末2に緊急解錠ステップS9を実行させることができる(図8(a))。緊急解錠ステップS9が実行されることにより、確認用端末2が緊急解錠部2iを備える。確認用端末2が備える緊急解錠部2iは、各種の条件によることなく、作業者の操作によって、いつでも開閉錠4や接続錠6に解錠する信号を送信できる。緊急解錠部2iによって開閉錠4や接続錠6を解錠したことは記憶装置25に記憶され、また管理用端末7にその旨が通知される。より詳しくは、緊急解錠部2iは、緊急解錠部2iにより開閉錠4や接続錠6が解錠された旨が記載された電子メールを送信する。また、それに併せて、作業者名や解錠された時刻などの各種情報を送信するものであってもよい。さらに、確認用端末2が衛星測位システムに対応するものであれば、それによって得られた位置情報を送信するものであってもよい。
【0044】
また、同様にして上記の一連の動作とは別に、プログラムは、確認用端末2に直接解錠通知ステップS10を実行させることができる(図8(b))。直接解錠通知ステップS10が実行されることにより、確認用端末2が直接解錠通知部2jを備える。確認用端末2が備える直接解錠通知部2jは、作業者が開閉鍵48により開閉錠4を解錠したときに、開閉錠4からその旨の情報を受信し、そのことを記憶装置25に記憶し、管理用端末7にその旨の通知を送信する。より詳しくは、直接解錠通知部2jは、開閉鍵48により開閉錠4が解錠された旨が記載された電子メールを送信する。また、それに併せて、作業者名や解錠された時刻などの各種情報を送信するものであってもよい。さらに、確認用端末2が衛星測位システムに対応するものであれば、それによって得られた位置情報を送信するものであってもよい。
【0045】
続いて、上記の車両逸走防止システムを用いた高所作業車100による作業について、その工程を説明する。高所作業車100には輪止め1が搭載されており、また開閉錠4および接続錠6が取り付けられている。そして、作業者が確認用端末2を所持している。
【0046】
(1)輪止め取付け工程
まず、高所作業車100を所定の作業場所に停車させる。停車後、作業者は高所作業車100の収納箇所に収納された輪止め1を取り出す。そして、輪止め1に繋がれた接続部5を接続錠6に取り付けて接続錠6を施錠する(電磁石61に吸着させる)とともに、輪止め1を車輪110の前後に取り付ける。
【0047】
(2)輪止め確認工程
作業者は、確認用端末2の車両逸走防止プログラムを起動させ、確認用端末2のカメラ21で車輪110および車輪110に取り付けられた輪止め1を撮影する。適切な撮影がなされれば、プログラムの処理が進み、確認用端末2が開閉錠4を解錠する信号を送信する。また、それとともに、確認用端末2が管理用端末7へ作業開始の旨が記載された電子メールを送信する。
【0048】
(3)アウトリガ展開工程
作業者は、操作部170の被覆部172を開いて操作盤171を操作し、アウトリガ160を展開する。アウトリガ160により車体120が持ち上げられ、車輪110が輪止め1から離隔する。
【0049】
(4)本作業工程
高所作業車100の車体120がアウトリガ160によって確実に支持された状態で、作業者は、バケット150に乗り込んでブーム140を操作し、高所において必要な作業を行う。そして、作業が完了したら、ブーム140を格納する。
【0050】
(5)アウトリガ収納工程
作業者は、操作盤171を操作し、アウトリガ160を収納する。車体120がおろされて車輪110が再び輪止め1に接する。すなわち、車輪110に輪止め1が取り付けられた状態となるので、高所作業車100が逸走することはない。
【0051】
(6)輪止め取外し工程
作業者は、操作部170の被覆部172を閉じて、開閉鍵48によって開閉錠4を施錠する。これにより、確認用端末2が接続錠6を解錠する信号を送信する。また、それとともに、確認用端末2が管理用端末7へ作業終了の旨が記載された電子メールを送信する。そして、作業者は、接続錠6から接続部5を取り外すとともに、車輪110から輪止め1を取り外し、高所作業車100の収納箇所に収納する。以上で、一連の工程が終了する。
【0052】
なお、悪天候などが原因で確認用端末2が車止め1(マーカ3)を認識できない場合には、作業者が確認用端末2を操作して、緊急解錠部2iにより開閉錠4を解錠することで、以後の作業を行うことができる。また、確認用端末2を用いるのではなく、開閉鍵48を用いて直接開閉錠4を解錠してもよい。何れの場合も、通常と異なる手段で開閉錠4が解錠されたことは記録され、その旨が管理用端末7へ通知される。
【0053】
このような車両逸走防止システムおよび車両逸走防止プログラムによれば、確認用端末2により輪止め1が車輪110に取り付けられたことが確認されないと操作部170の操作ができないので、輪止め1が取り付けられないままアウトリガ160が展開されることが防がれ、安全である。そして、確認用端末2のカメラ21で撮影した輪止め1の画像に基づいて、画像内で輪止め1が車輪110に取り付けられたことを確認するものなので、車体120に輪止め1を検出するためのセンサなどの部品を付加する必要がなく、そのような部品を取り付けるための費用や手間がかからない。また、輪止め1が車輪110に取り付けられたことを確認する方法として、一方の輪止め1に対して他方の輪止め1を基準対象物とし、さらに輪止め1に対して車輪110を基準対象物としているので、より確実に輪止め1の取り付けを確認できる。さらに、輪止め1の表面に付されたマーカ3を備えるので、より確実かつ正確に輪止め1の存在を検出してその位置を算出できる。マーカ3は単なる図柄であって、ここではマーカ3が印刷された樹脂板が輪止め1に貼り付けられており、容易に付すことができる。また、操作部170に設けられた開閉錠4を備えるので、簡易な構成で操作部170の操作の可・不可を切り替えることができる。さらに、輪止め1に繋がれた接続部5と車体120に設けられた接続錠6を備えるものであって、接続錠6が施錠されたことを条件として開閉錠4が解錠されるものなので、輪止め1が取り付けられたことをより確実に確認することができる。また、開閉錠4が施錠されたことを条件として接続錠6が解錠されるものなので、アウトリガ160の操作が完了する前に誤って輪止め1を取り外してしまうことを防ぐことができる。なお、このような高所作業車はリース車両である場合も多く、その場合、車両に複雑な改造を施すことは難しいが、上記のような開閉錠4や接続錠6であれば、原状回復できる形で取り付けることもできる。また、確認用端末2が管理用端末7へ通知を送信する開始通知部2fや終了通知部2hを備えるので、作業現場から離れた場所で作業状況を確認することができるものであって、複数の高所作業車100がある場合でも作業状況を一括して管理できる。さらに、悪天候などが原因で確認用端末2が車止め1(マーカ3)を認識できない場合であっても、緊急解錠部2iにより開閉錠4を解錠するか、または開閉鍵48により開閉錠4を解錠することで、以後の作業を行うことができる。これらの解錠手段は緊急用であり、これらの手段により開閉錠4が解錠されたことは記録され管理用端末7へ通知されるので、平常時に乱用されることは防がれる。
【0054】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、輪止めを複数組備えるものであってもよく、その場合に、確認用端末が全ての輪止めの取り付けを確認するものであってもよいし、一部の輪止めの取り付けのみを確認するものであってもよい。また、マーカは、輪止めに直接描いたものであってもよい。さらに、開閉錠は、操作部の被覆部を閉じることで自動的に施錠されるものであってもよい。また、確認用端末は、その本体とは離隔した別体のカメラを備え、本体とカメラが相互に通信するものであってもよい。さらに、確認用端末において、検出部が輪止めを検出する際に、マーカを検出するのではなく、輪止め自体の形状を画像認識により検出するものであってもよい。また、認証部が前後の輪止めの間の距離と車輪の直径を比較するが、車輪の直径は車種により異なるので、作業者が直径を入力したり、予め記憶装置に記憶された複数の数値から選択できるようにしたりしてもよい。さらに、車種を選択することで、対応する車輪の直径の数値が適用されるようにしてもよい。また、輪止めのマーカを車種に対応したものとして、検出部がマーカを検出することで車種を認識して、自動的に対応する車輪の直径の数値が適用されるようにしてもよい。さらに、確認用端末から管理用端末に送信される通知は、電子メール以外の種々の手段によるものであってもよい。また、開閉錠と接続錠が、直接電気的または機械的に接続されていて、一方が施錠されると他方が解錠されるインターロックシステムが構成されているものであってもよい。さらに、作業者が正規の作業手順と異なる手順を実行しようとした場合に(たとえば、接続部を接続錠に取り付けずに、確認用端末による確認を行うなど)、音や光による警報が発報されるものであってもよい。警報は、車体に設けられた発報装置から発報されるものであってもよいし、確認用端末から発報されるものであってもよい。なお、本発明の車両逸走防止システムは、正規の手順を実行しなければ一切その先の手順が進められないような、厳格なインターロックシステムを構成するものでなくてもよい。たとえば、輪止めの取付けが確認されないと開閉錠が解錠されず操作部の操作ができないようにするものであるが、別途操作部の操作を可能とする手段が用意されていてもよい。そのような場合でも、作業者が正規の手順と違っていることに気付かせることはできるので、それだけでも効果が得られるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 輪止め
2 確認用端末
2a 撮影部
2b 検出部
2c 算出部
2d 認証部
2e 操作許可部
3 マーカ
4 開閉錠
5 接続部
6 接続錠
100 高所作業車(車両)
110 車輪
160 アウトリガ(作業用装置)
170 操作部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8