(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167656
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ビタミン含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4415 20060101AFI20221027BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221027BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221027BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20221027BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20221027BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K31/4415
A61P17/00
A61P1/02
A61Q11/00
A61Q19/00
A61P43/00 111
A61K31/19
A61K8/67
A61K8/63
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073594
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木平 成子
(72)【発明者】
【氏名】有田 卓矢
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD631
4C083AD632
4C083BB51
4C083BB55
4C083CC02
4C083CC41
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC18
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4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZC75
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4C206NA14
4C206ZA67
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】MMP-1を効率よく抑制できる手法の提供。
【解決手段】ビタミンB6及びグリチルリチン酸ジカリウムを、質量比1:1.5~8.5で含有する組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB6及びグリチルリチン酸ジカリウムを、質量比1:1.5~8.5で含有する組成物。
【請求項2】
マトリックスメタロプロテアーゼ-1抑制用組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
口腔用組成物又は外用組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
歯肉退縮予防又は改善用の口腔用組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
ビタミンB6の含有量が0.005~0.5質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
グリチルリチン酸ジカリウムの含有量が0.005~1質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビタミン含有組成物等に関し、より詳細には、ビタミンB6(VB6)及びグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)を含有する組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)は、細胞外基質であるコラーゲンを分解する酵素で、通常、コラーゲンの分解を介した組織再構築機能を担っている。しかし、例えば、感染や自己免疫、紫外線暴露等により炎症が生じると(特に炎症が慢性化すると)、MMP-1が過剰産生され、組織破壊が進行し、歯周病や関節リウマチ、シワの形成等に至る。特に、歯周病は細菌感染症であり、歯周組織で感染に起因する炎症が惹起される。この炎症が慢性化することでMMP-1が過剰に活性化され、組織破壊が進行し、歯肉退縮、歯周ポケット深化が起こり、歯周病が悪化していくことから、MMP-1抑制は重要である。このため、MMP-1を効率よく抑制する手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180070号公報
【特許文献1】特開2020-180071号公報
【特許文献1】特開2020-180072号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synergism and antagonism in chemotherapy, Ting-Chao et al., 1983, 4, p450-454
【非特許文献2】Methods in Molecular Medicine, (2005) vol. 110: 173-183. Chemosensitivity: Vol. 1: In Vitro Assays, C. Patrick Reynolds and Barry J. Maurer “Evaluating Response to Antineoplastic Drug Combinations in Tissue Culture Models”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)を効率よく抑制する手法を見いだすことを主な目的として、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ビタミンB6(VB6)及びグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)を特定比率で組み合わせて用いることにより、MMP-1を効率よく抑制できる可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
ビタミンB6及びグリチルリチン酸ジカリウムを、質量比1:1.5~8.5で含有する組成物。
項2.
マトリックスメタロプロテアーゼ-1抑制用組成物である、項1に記載の組成物。
項3.
口腔用組成物又は外用組成物である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
歯肉退縮予防又は改善用の口腔用組成物である、項1又は2に記載の組成物。
項5.
ビタミンB6の含有量が0.005~0.5質量%である、項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
グリチルリチン酸ジカリウムの含有量が0.005~1質量%である、項1~5のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
MMP-1を効率よく抑制できる手法が提供される。これにより、歯周病や関節リウマチ、シワの形成等を効率よく経済的に抑制することが可能となる。特に、歯周病に関してはその進行抑制及び改善に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、ビタミンB6(VB6)及びグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)を含有する組成物や、当該組成物の用途等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0010】
本開示に包含される組成物は、ビタミンB6(VB6)及びグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)を含有する。以下、本開示に包含される当該組成物を「本開示の組成物」ということがある。なお、ビタミンB6をVB6と、グリチルリチン酸ジカリウムをGK2と、マトリックスメタロプロテアーゼ-1をMMP-1と、それぞれ略記することがある。
【0011】
本開示の組成物においては、VB6とGK2とは、質量比1:1.5~8.5で含有される。当該範囲(1.5~8.5)の上限又は下限は、例えば1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、又は8.4であってもよい。例えば当該範囲は2~8であってもよい。
【0012】
本開示の組成物におけるVB6の含有量は、上記VB6とGK2との質量比を満たすことは前提で、好ましくは例えば0.005~0.5質量%である。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、又は0.45質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.006~0.4質量%であってもよい。
【0013】
なお、VB6としては、ピリドキシン(pyridoxine)、ピリドキサール(pyridoxal) 、及びピリドキサミン(pyridoxiamine)又はそれらの塩のいずれも用いることができる。中でもピリドキシン又はその塩が好ましい。塩としては、本分野における公知の塩を用いることができ、例えば塩酸塩が好ましく挙げられる。VB6は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0014】
本開示の組成物におけるGK2の含有量は、上記VB6とGK2との質量比を満たすことは前提で、好ましくは例えば0.005~1質量%である。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、又は0.95質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.01~0.9質量%であってもよい。
【0015】
本開示の組成物は、特に限定はされないが、例えば口腔用組成物及び外用組成物として好ましく用いることができる。これらを、それぞれ、本開示の口腔用組成物及び本開示の外用組成物ということがある。
【0016】
本開示の口腔用組成物は、例えば固形組成物、液体組成物であり得、固形組成物であることが好ましい。当該口腔用組成物は、例えば医薬品、医薬部外品として用いることができる。また、本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤、トローチ、キャンディ、ロゼンジ等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤であることが好ましい。
【0017】
また、本開示の口腔用組成物は、VB6及びGK2を上記特定質量比にて含有することによりMMP-1を効率よく経済的に抑制できることから、例えば歯周病改善及び予防のために好ましく用いることができる。また例えば、歯肉の退縮予防又は改善のために、特に好ましく用いることができる。歯肉の退縮の予防又は改善は、MMP-1を抑制することによる歯周組織でのコラーゲン分解を抑制することにより達成されるため、コラーゲンを細胞質基質として有する歯周組織において、歯肉結合組織破壊抑制、歯根膜破壊抑制、歯周組織修復促進のために用いることもできる。またさらに歯周病予防、歯肉下がり予防、根面う蝕予防、知覚過敏予防、歯肉弾力保持、歯肉のハリ保持、歯肉ライン保持、歯肉ダメージ予防、歯肉抗老化、歯肉審美、歯肉活性化、弱った歯肉の再活性化、歯肉の活力維持等のために用いることもできる。
【0018】
本開示の口腔用組成物は、効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0019】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0020】
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001~1.5質量%配合することができる。
【0021】
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0022】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0023】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。
【0024】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。
【0025】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%であってよい。
【0026】
本開示の口腔用組成物には、さらに、薬効成分として、例えば酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等の非イオン性殺菌剤、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0027】
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。
【0028】
また、本発明の外用組成物は、特に皮膚に適用する組成物として用いることが好ましい。外用組成物としては、例えば医薬組成物、医薬部外品組成物、及び化粧品組成物が例示される。剤形としては、特に限定するものではないが、フェイスパック、ペースト、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、乳液、美容液、化粧水、スプレー剤などが挙げられる。
【0029】
また、本開示の外用組成物は、VB6及びGK2を上記特定質量比にて含有することによりMMP-1を効率よく経済的に抑制できることから、例えば皮膚のシワ又はたるみに効果的であり、これらの抑制のために好ましく用いることができる。MMP-1は、自然老化皮膚及び光老化皮膚のいずれにおいてもコラーゲン分解を担っていることから、これらのいずれにおいてもシワまたはたるみの抑制及び改善に有用であると考えられる。このため、例えば30、40、50、若しくは60歳以上の対象の皮膚のシワまたはたるみの抑制及び改善のため、あるいは、光(特に紫外線)により生じる皮膚のシワまたはたるみの抑制及び改善のため、好ましく用いることができる。
【0030】
本開示の外用組成物は、効果を損なわない範囲で、外用組成物に配合し得る他の成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0031】
他成分として、例えば、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを配合することができる。高分子としては、例えばカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどが例示できるが、これらに限定されるものでもない。カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムが好ましく、特にカルボキシビニルポリマーが好ましい。これら高分子等は1種または2種以上を組み合わせて使用できる。高分子の配合量は特に限定しないが、0.001~20%、好ましくは 0.005~10%、特に好ましくは 0.01~5%である。蛋白質及びその加水分解物としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン、それらの加水分解物、加水分解物の塩、加水分解物のエステル、あるいは酵素処理されたものが挙げられるが、特にコラーゲンが好ましい。蛋白質及びその加水分解物の配合量は特に限定しないが、0.001~5%、好ましくは0.01~1%である。ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ムコイチン硫酸、ヘパリンとその誘導体、及びそれらの塩類などが挙げられるが、特にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びこれらのナトリウム塩が好ましい。ムコ多糖の配合量は特に限定しないが、 0.0005~5%、好ましくは0.001~1%である。
【0032】
また、この他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、通常外用組成物に用いられる公知の成分を配合することもできる。このような成分としては、保湿剤、水溶性高分子、油成分、着色剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、香料、紫外線吸収・散乱剤、抗酸化剤、薬効成分などが例示できる。
【0033】
本開示の組成物(例えば本開示の口腔用組成物及び外用組成物)は、公知の方法または公知の方法から容易に想到する方法により調製することができる。例えば、VB6及びGK2並びに必要に応じてその他の成分等を適宜混合することによって調製することができる。
【0034】
また、本開示の組成物(例えば本開示の口腔用組成物及び外用組成物)を適用する対象は、特に限定はされず、ヒト及び非ヒト哺乳類が好ましく挙げられる。非ヒト哺乳類としては、家畜やペットなどが好ましく、より具体的には例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、サル等が挙げられる。
【0035】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0036】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0037】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0038】
被験物質によるMMP-1抑制効果及び細胞生存率の検討
以下の検討においては、グリチルリチン酸ジカリウム(GK2)と、VB6としてピリドキシン塩酸塩を用いた。
[検討手法]
歯肉線維芽細胞(human gingival fibroblast:HGF)を0.5×104 cells/wellになるように培地(D-MEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium-I)、以下同じ)に播種し、37℃5%CO2条件下で24時間培養した。
【0039】
VB6及びGK2(被験物質)を培地で適当な添加濃度になるように溶解し、被験溶液を作製した。上記の培養後の培地を除き、作製した被験溶液を細胞に添加し、37℃5%CO2条件下でさらに2時間培養した。粗精製A.a.-LPS(A.a.:Aggregatibacter actinomycetemcomitans)を培地で適当な添加濃度になるように溶解し、LPS(Lipopolysaccharide)溶液を作製した。作製したLPS溶液を、上記の被験溶液を添加した細胞に対して、終濃度1μg/mLとなるよう添加し、37℃5%CO2条件下で48時間培養した。被験溶液添加及びLPS処理後の培養上清をMMP-1測定用サンプルとして回収し、-30℃の冷凍庫で保管した。
【0040】
また、上清を回収後の細胞において、WST-1試薬 (Cat. MK400, TaKaRa)を用いて細胞生存率を測定した。なお、細胞生存率は、被験溶液の代わりに培地を使用した(すなわち、被験物質を用いない)場合の細胞生存率を100%として、その相対値として求めた。
【0041】
保管していたサンプルを溶解し、Human pro-MMP-1 ELISA Kit(Cat.DMP100,R&D Systems)を用いて、ELISA法にてMMP-1のタンパク質量を測定した。そして、被験溶液の代わりに培地を使用した(すなわち、被験物質を用いない)場合のMMP-1のタンパク質量を100%として、各被験溶液を用いた時のタンパク質量の比率を算出した。そして、100からその比率を引いた値をMMP-1産生抑制率とした。例えば、被験溶液の代わりに培地を使用した(すなわち、被験物質を用いない)場合のMMP-1産生抑制率は、100-100=0(%)であり、また例えば被験溶液を用いた時のタンパク質量の比率が40%であった場合には、そのMMP-1産生抑制率は100-40=60(%)である。
【0042】
[解析方法]
下記式に従い、CI(Combination Index)値を算出した。
CI=(D)1/(Dx)1+(D)2/(Dx)2
(D)1:GK2各添加濃度
(D)2:VB6各添加濃度
(Dx)1:GK2のLPS(-)のMMP産生抑制率にあたる濃度:0.068質量%
(Dx)2:VB6のLPS(-)のMMP産生抑制率にあたる濃度:0.17質量%
なお、GK2濃度及びVB6濃度とは、被験溶液を加えた段階での濃度である。
【0043】
また、GK2又はVB6のLPS(-)のMMP産生抑制率にあたる濃度とは、LPS溶液の代わりに培地を添加し、且つ被験物質を添加していないときの、MMP産生抑制率と同じMMP産生抑制率を示すGK2又はVB6の濃度をいう。当該濃度は、次のようにして求めた。すなわち、GK2のみ又はVB6のみ含まれる被験溶液の段階希釈溶液を用いて各濃度におけるMMP産生抑制率をグラフ化して検量線を引き、その検量線においてLPS(-)のMMP産生抑制率に相当するGK2又はVB6の濃度を求めた。
【0044】
なお、CI値が、0.9未満で相乗効果が示されたことになり、0.9以上1.1未満で相加効果が示されたことになり、1.1以上で拮抗作用が示されたことになる(上記非特許文献1及び非特許文献2を参照)。また、LPS(-)のMMP産生抑制率は53.8%であった。
【0045】
[VB6及びGK2の比率の検討]
被験溶液を加えた段階での、被験物質(VB6及びGK2)の濃度が、GK2濃度が0.05質量%、VB6濃度が0.1、0.05、0.025、0.0125、又は0.00625質量%となるよう検討を行った。当該検討における、VB6とGK2の質量比(VB6:GK2)は、1:0.5、1:1、1:2、1:4、又は1:8になる。
【0046】
また、VB6とGK2の質量比が1:0.5~8以外の質量比となる場合も検討するため、被験溶液を加えた段階での、被験物質(VB6及びGK2)の濃度が、GK2濃度が0.025質量%、VB6濃度が0.4、0.2、又は0.1質量%となるよう検討を行った。当該検討における、VB6とGK2の質量比(VB6:GK2)は、1:0.0625、1:0.125、又は1:0.25になる。また、被験物質(VB6及びGK2)の濃度が、VB6濃度が0.00625質量%、GK2濃度が0.1、又は0.2質量%となるよう検討を行った。当該検討における、VB6とGK2の質量比(VB6:GK2)は、1:16、又は1:32になる。
【0047】
以上のようにして検討した際の、CI値及び細胞生存率を以下の表にまとめた。なお、CI値については、その効果の解釈についてもあわせて示す。
【0048】
【0049】
当該結果から、VB6とGK2の質量比(VB6:GK2)が1:2、1:4、又は1:8のときに、これら2種の成分により、MMP-1抑制のための相乗効果が奏されること、及び、細胞生存率も高く、従って細胞障害も起こり難いこと、が分かった。
【0050】
また、上記検討のいずれの場合においても、VB6及びGK2いずれの濃度も比較的薄いにも関わらず、MMP-1産生抑制率は、LPS(-)のMMP-1産生抑制率(53.8%)より高く、LPS刺激があっても通常以上にMMP-1産生を抑制できることがわかった。特に、GK2濃度が0.05質量%であって、VB6濃度が0.05、0.025、0.0125、又は0.00625質量%である場合におけるMMP-1産生抑制率は、このVB6の濃度の順にそれぞれ、56.40%、54.44%、57.37%、55.37%であり、VB6の濃度が低くなってもMMP-1産生抑制率はほとんど変わらないか、又は、むしろ向上した。