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特開2022-167685FMCWレーダ信号処理装置及びFMCWレーダ信号処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167685
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】FMCWレーダ信号処理装置及びFMCWレーダ信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073651
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓真
(72)【発明者】
【氏名】小田 康明
(72)【発明者】
【氏名】矢野 邦哲
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD06
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】本開示は、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、信号処理量及びデータメモリ量を削減することを目的とする。
【解決手段】本開示は、第1段階では、第1次元方向及び第2次元方向において、フーリエ変換を実行したうえで、第1次元方向の逆空間方向及び第2次元方向の逆空間方向において、物標を検出する。そして、第2段階では、第3次元方向において、フーリエ変換を実行するにあたり、物標が検出されないデータを抽出しないで、物標が検出されたデータのみを抽出したうえで、第3次元方向の逆空間方向において、物標を検出する。
【選択図】図6


【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMCW(Frequency Modulation-Continuous Wave)レーダを用いるFMCWレーダ信号処理装置であって、
複数のサンプル数だけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数及び複数のアンテナ数だけ算出するビート信号算出部と、
時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第1次元方向において、前記ビート信号算出部で算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第2次元方向及び第3次元方向の全座標値を含むビート信号を抽出する第1フーリエ変換部と、
前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換部でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値及び前記第3次元方向の特定座標値を含む位相値を抽出する第2フーリエ変換部と、
前記第1次元方向及び前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度のうちのいずれか2つを検出する第1物標検出部と、
前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換部でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の物標座標値及び前記第3次元方向の全座標値を含む位相値を抽出する第3フーリエ変換部と、
前記第3次元方向において、前記第3フーリエ変換部でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値を含む位相値を抽出する第4フーリエ変換部と、
前記第1次元方向、前記第2次元方向及び前記第3次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する第2物標検出部と、
を備えることを特徴とするFMCWレーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記FMCWレーダ信号処理装置の全体でのフーリエ変換回数は、N2×N3+B1+T1×N3+T2である(N2及びN3は、それぞれ前記第2次元方向及び前記第3次元方向の全座標値数、B1は、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値数、T1及びT2は、それぞれ前記第1次元方向及び前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値数。)
ことを特徴とする、請求項1に記載のFMCWレーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記FMCWレーダ信号処理装置の全体での物標検出回数は、B1×B2+B3×T3である(B1、B2及びB3は、それぞれ前記第1次元方向、前記第2次元方向及び前記第3次元方向の逆空間方向の全座標値数、T3は、前記第2物標検出部での全検出数。)
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のFMCWレーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記FMCWレーダ信号処理装置の全体での最小限の必要なメモリ量は、B1×N2×N3×Dである(B1は、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値数、N2及びN3は、それぞれ前記第2次元方向及び前記第3次元方向の全座標値数、Dは、前記第1フーリエ変換部での各フーリエ変換結果のデータ型に応じたデータ量。)
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のFMCWレーダ信号処理装置。
【請求項5】
FMCW(Frequency Modulation-Continuous Wave)レーダを用いるFMCWレーダ信号処理プログラムであって、
複数のサンプル数だけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数及び複数のアンテナ数だけ算出するビート信号算出ステップと、
時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第1次元方向において、前記ビート信号算出ステップで算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第2次元方向及び第3次元方向の全座標値を含むビート信号を抽出する第1フーリエ変換ステップと、
前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換ステップでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値及び前記第3次元方向の特定座標値を含む位相値を抽出する第2フーリエ変換ステップと、
前記第1次元方向及び前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度のうちのいずれか2つを検出する第1物標検出ステップと、
前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換ステップでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の物標座標値及び前記第3次元方向の全座標値を含む位相値を抽出する第3フーリエ変換ステップと、
前記第3次元方向において、前記第3フーリエ変換ステップでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値を含む位相値を抽出する第4フーリエ変換ステップと、
前記第1次元方向、前記第2次元方向及び前記第3次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する第2物標検出ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのFMCWレーダ信号処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FMCW(Frequency Modulation-Continuous Wave)レーダを用いるFMCWレーダ信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
FMCWレーダを用いるFMCWレーダ信号処理技術が、特許文献1及び非特許文献1に開示されており、ミリ波帯等の高周波帯及びMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)等のアンテナ配列に適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-315447号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ミリ波レーダの基礎1[距離・速度・角度検出について]、[online]、丸文株式会社、[令和3年4月7日検索]、<URL:https://www.marubun.co.jp/service/technicalsquare/a7ijkd000000dtyd.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のFMCWレーダ信号処理装置の構成を図1に示す。従来技術のFMCWレーダ信号処理プログラムの手順を図2に示す。FMCWレーダ信号処理装置R1は、送信アンテナ1、受信アンテナ2-1~2-a、ミキサ3-1~3-a、発振器4、A/D(Analog/Digital)変換部5-1~5-a、距離解析部6-1~6-a、データ記憶部7、速度解析部8-1~8-a、データ記憶部9、角度解析部10、データ記憶部11及び物標検出部12を備える。
【0006】
ミキサ3-1~3-a、発振器4及びA/D変換部5-1~5-aは、複数のサンプル数Nsだけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数Nc及び複数のアンテナ数Naだけ算出する(図2の左上欄)。
【0007】
距離解析部6-1~6-aは、時間経過方向において、ミキサ3-1~3-a等で算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向の全座標値を含むビート信号を抽出する(図2の左上欄及び右上欄)。距離解析部6-1~6-aでのフーリエ変換回数は、Nc×Naである。
【0008】
データ記憶部7は、距離解析部6-1~6-aでのフーリエ変換結果を記憶する(図2の右上欄)。データ記憶部7での必要なメモリ量は、Br×Nc×Na×Dである(Brは、距離ビン方向の全ビン数、Dは、データ型に応じたデータ量。)。
【0009】
速度解析部8-1~8-aは、チャープ回数方向において、距離解析部6-1~6-aでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、距離ビン方向の全ビン値及びアンテナ配列方向の全座標値を含む位相値を抽出する(図2の右上欄及び左下欄)。速度解析部8-1~8-aでのフーリエ変換回数は、Br×Naである。
【0010】
データ記憶部9は、速度解析部8-1~8-aでのフーリエ変換結果を記憶する(図2の左下欄)。データ記憶部9での必要なメモリ量は、Br×Bv×Na×Dである(Bvは、速度ビン方向の全ビン数、Dは、データ型に応じたデータ量。)。
【0011】
角度解析部10は、アンテナ配列方向において、速度解析部8-1~8-aでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、距離ビン方向及び速度ビン方向の全ビン値を含む位相値を抽出する(図2の左下欄及び右下欄)。角度解析部10でのフーリエ変換回数は、Br×Bvである。
【0012】
データ記憶部11は、角度解析部10でのフーリエ変換結果を記憶する(図2の右下欄)。データ記憶部11での必要なメモリ量は、Br×Bv×Ba×Dである(Baは、角度ビン方向の全ビン数、Dは、データ型に応じたデータ量。)。
【0013】
物標検出部12は、閾値検出を行なったうえで、距離ビン方向、速度ビン方向及び角度ビン方向の物標ビン値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する(図2の右下欄)。物標検出部12での物標検出回数は、Br×Bv×Baである。
【0014】
FMCWレーダ信号処理装置R1の全体でのフーリエ変換回数は、Nc×Na+Br×Na+Br×Bvである。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体でのフーリエ変換計算量は、Nc×Na×Br×lоgBr+Br×Na×Bv×lоgBv+Br×Bv×Ba×lоgBaである。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体での物標検出回数は、Br×Bv×Baである。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体での最小限の必要なメモリ量は、Br×Bv×Ba×Dである(メモリの上書きをしている。)。
【0015】
例えば、Ns=128、Nc=128、Na=16、Br=128、Bv=256、Ba=32であるとする。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体でのフーリエ変換回数は、36,864である。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体でのフーリエ変換計算量は、11,272,192である。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体での物標検出回数は、1,048,576である。FMCWレーダ信号処理装置R1の全体での最小限の必要なメモリ量は、1,048,576×Dである。そして、フーリエ変換でゼロ補間するときや、アレイアンテナを仮想拡張するときに、データ型に応じたデータ量Dが増えるため、FMCWレーダ信号処理装置R1の全体での最小限の必要なメモリ量が増える。
【0016】
このように、従来技術では、FMCWレーダ信号処理装置R1を実機に実装するにあたり、信号処理量及びデータメモリ量を削減することが困難であった。
【0017】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、信号処理量及びデータメモリ量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するにあたり、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちのいずれかを、第1次元方向、第2次元方向及び第3次元方向と定義する。そして、距離ビン方向、速度ビン方向及び角度ビン方向のうちのいずれかを、第1次元方向の逆空間方向、第2次元方向の逆空間方向及び第3次元方向の逆空間方向と定義する。
【0019】
前記課題を解決するために、第1段階では、第1次元方向及び第2次元方向において、フーリエ変換を実行したうえで、第1次元方向の逆空間方向及び第2次元方向の逆空間方向において、物標を検出する。そして、第2段階では、第3次元方向において、フーリエ変換を実行するにあたり、物標が検出されないデータを抽出しないで、物標が検出されたデータのみを抽出したうえで、第3次元方向の逆空間方向において、物標を検出する。
【0020】
具体的には、本開示は、FMCWレーダを用いるFMCWレーダ信号処理装置であって、複数のサンプル数だけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数及び複数のアンテナ数だけ算出するビート信号算出部と、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第1次元方向において、前記ビート信号算出部で算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第2次元方向及び第3次元方向の全座標値を含むビート信号を抽出する第1フーリエ変換部と、前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換部でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値及び前記第3次元方向の特定座標値を含む位相値を抽出する第2フーリエ変換部と、前記第1次元方向及び前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度のうちのいずれか2つを検出する第1物標検出部と、前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換部でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の物標座標値及び前記第3次元方向の全座標値を含む位相値を抽出する第3フーリエ変換部と、前記第3次元方向において、前記第3フーリエ変換部でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値を含む位相値を抽出する第4フーリエ変換部と、前記第1次元方向、前記第2次元方向及び前記第3次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する第2物標検出部と、を備えることを特徴とするFMCWレーダ信号処理装置である。
【0021】
また、本開示は、FMCWレーダを用いるFMCWレーダ信号処理プログラムであって、複数のサンプル数だけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数及び複数のアンテナ数だけ算出するビート信号算出ステップと、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第1次元方向において、前記ビート信号算出ステップで算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちの第2次元方向及び第3次元方向の全座標値を含むビート信号を抽出する第1フーリエ変換ステップと、前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換ステップでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値及び前記第3次元方向の特定座標値を含む位相値を抽出する第2フーリエ変換ステップと、前記第1次元方向及び前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度のうちのいずれか2つを検出する第1物標検出ステップと、前記第2次元方向において、前記第1フーリエ変換ステップでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第1次元方向の逆空間方向の物標座標値及び前記第3次元方向の全座標値を含む位相値を抽出する第3フーリエ変換ステップと、前記第3次元方向において、前記第3フーリエ変換ステップでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値を含む位相値を抽出する第4フーリエ変換ステップと、前記第1次元方向、前記第2次元方向及び前記第3次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する第2物標検出ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのFMCWレーダ信号処理プログラムである。
【0022】
これらの構成によれば、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、フーリエ変換回数、物標検出回数及びデータメモリ量を削減することができる。
【0023】
また、本開示は、前記FMCWレーダ信号処理装置の全体でのフーリエ変換回数は、N2×N3+B1+T1×N3+T2である(N2及びN3は、それぞれ前記第2次元方向及び前記第3次元方向の全座標値数、B1は、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値数、T1及びT2は、それぞれ前記第1次元方向及び前記第2次元方向の逆空間方向の物標座標値数。)ことを特徴とするFMCWレーダ信号処理装置である。
【0024】
この構成によれば、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、フーリエ変換回数をN2×N3+B1+T1×N3+T2に削減することができる。
【0025】
また、本開示は、前記FMCWレーダ信号処理装置の全体での物標検出回数は、B1×B2+B3×T3である(B1、B2及びB3は、それぞれ前記第1次元方向、前記第2次元方向及び前記第3次元方向の逆空間方向の全座標値数、T3は、前記第2物標検出部での全検出数。)ことを特徴とするFMCWレーダ信号処理装置である。
【0026】
この構成によれば、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、物標検出回数をB1×B2+B3×T3に削減することができる。
【0027】
また、本開示は、前記FMCWレーダ信号処理装置の全体での最小限の必要なメモリ量は、B1×N2×N3×Dである(B1は、前記第1次元方向の逆空間方向の全座標値数、N2及びN3は、それぞれ前記第2次元方向及び前記第3次元方向の全座標値数、Dは、前記第1フーリエ変換部での各フーリエ変換結果のデータ型に応じたデータ量。)ことを特徴とするFMCWレーダ信号処理装置である。
【0028】
この構成によれば、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、最小限の必要なデータメモリ量をB1×N2×N3×Dに削減することができる。
【発明の効果】
【0029】
このように、本開示は、FMCWレーダ信号処理装置を実機に実装するにあたり、信号処理量及びデータメモリ量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術のFMCWレーダ信号処理装置の構成を示す図である。
図2】従来技術のFMCWレーダ信号処理プログラムの手順を示す図である。
図3】第1実施形態のFMCWレーダ信号処理装置の構成を示す図である。
図4】第1実施形態のFMCWレーダ信号処理プログラムの手順を示す図である。
図5】第2実施形態のFMCWレーダ信号処理装置の構成を示す図である。
図6】第2実施形態のFMCWレーダ信号処理プログラムの手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0032】
(第1実施形態のFMCWレーダ信号処理装置)
第1段階では、時間経過方向及びチャープ回数方向において、フーリエ変換を実行したうえで、距離ビン方向及び速度ビン方向において、物標を検出する。第2段階では、アンテナ配列方向において、フーリエ変換を実行するにあたり、物標が検出されないデータを抽出しないで、物標が検出されたデータのみを抽出したうえで、角度ビン方向において、物標を検出する。以下では、各段階を具体的に説明する。
【0033】
第1実施形態のFMCWレーダ信号処理装置の構成を図3に示す。第1実施形態のFMCWレーダ信号処理プログラムの手順を図4に示す。FMCWレーダ信号処理装置R2は、送信アンテナ21、受信アンテナ22-1~22-a、ミキサ23-1~23-a、発振器24、A/D変換部25-1~25-a、距離解析部26-1~26-a、データ記憶部27、速度解析部28、物標検出部29、リスト記憶部30、速度解析部31、角度解析部32、物標検出部33及びリスト記憶部34を備える。
【0034】
ミキサ23-1~23-a、発振器24及びA/D変換部25-1~25-aは、複数のサンプル数Nsだけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数Nc及び複数のアンテナ数Naだけ算出する(図4の左上欄)。
【0035】
距離解析部26-1~26-aは、時間経過方向において、ミキサ23-1~23-a等で算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向の全座標値を含むビート信号を抽出する(図4の左上欄及び中上欄)。距離解析部26-1~26-aでのフーリエ変換回数は、Nc×Naである。
【0036】
データ記憶部27は、距離解析部26-1~26-aでのフーリエ変換結果を記憶する(図4の中上欄)。データ記憶部27での必要なメモリ量は、Br×Nc×Na×Dである(Brは、距離ビン方向の全ビン数、Dは、データ型に応じたデータ量。)。
【0037】
速度解析部28は、チャープ回数方向において、距離解析部26-1~26-aでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、距離ビン方向の全ビン値及びアンテナ配列方向の特定座標値(1個の座標値)を含む位相値を抽出する(図4の中上欄及び右上欄)。速度解析部28でのフーリエ変換回数は、Br×1=Brである。
【0038】
物標検出部29は、閾値検出を行なったうえで、距離ビン方向及び速度ビン方向の物標ビン値に基づいて、物標距離及び物標速度を検出する(図4の右上欄)。物標検出部29での物標検出回数は、Br×Bvである(Bvは、速度ビン方向の全ビン数。)。
【0039】
リスト記憶部30は、物標検出部29での物標検出結果及びフーリエ変換強度を記憶する(図4の右上欄)。リスト記憶部30での必要なメモリ量は、Tr×D又はTv×Dである(Tr(図4では1)は、距離ビン方向の全検出数、Tv(図4では1)は、速度ビン方向の全検出数、Dは、データ型に応じたデータ量。同一の距離/速度ビン値において、複数の物標が存在することがあるため、TrとTvとは、異なることもあり得る。)。
【0040】
速度解析部31は、チャープ回数方向において、距離解析部26-1~26-aでのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、距離ビン方向の物標ビン値(図4では、1個のビン値)及びアンテナ配列方向の全座標値を含む位相値を抽出する(図4の左下欄及び中下欄)。速度解析部31でのフーリエ変換回数は、Tr×Naである。
【0041】
ここで、速度解析部28は、アンテナ配列方向の特定座標値(1個の座標値)を含む位相値のみをフーリエ変換する。そこで、速度解析部31は、アンテナ配列方向の全座標値を含む位相値をフーリエ変換する。すると、角度解析部32の処理が可能となる。
【0042】
角度解析部32は、アンテナ配列方向において、速度解析部31でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、速度ビン方向の物標ビン値(図4では、1個のビン値)を含む位相値を抽出する(図4の中下欄及び右下欄)。角度解析部32でのフーリエ変換回数は、Tvである(Tv(図4では1)は、速度ビン方向の全検出数。)。
【0043】
物標検出部33は、閾値検出を行なったうえで、距離ビン方向、速度ビン方向及び角度ビン方向の物標ビン値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する(図4の右下欄)。物標検出部33での物標検出回数は、Ba×Taである(Baは、角度ビン方向の全ビン数、Ta(図4では1)は、物標検出部33での全検出数。)。
【0044】
リスト記憶部34は、物標検出部33での物標検出結果及びフーリエ変換強度を記憶する(図4の右下欄)。リスト記憶部34での必要なメモリ量は、Ta×Dである(Dは、データ型に応じたデータ量。同一の距離/速度/角度ビン値において、複数の物標が存在することがあるため、Taは、Tr及びTvと異なることもあり得る。)。
【0045】
FMCWレーダ信号処理装置R2の全体でのフーリエ変換回数は、Nc×Na+Br+Tr×Na+Tvである。FMCWレーダ信号処理装置R2の全体でのフーリエ変換計算量は、Nc×Na×Br×lоgBr+Br×Bv×lоgBv+Tr×Na×Bv×lоgBv+Tv×Ba×lоgBaである。FMCWレーダ信号処理装置R2の全体での物標検出回数は、Br×Bv+Ba×Taである。FMCWレーダ信号処理装置R2の全体での最小限の必要なメモリ量は、Br×Nc×Na×Dである(速度解析部28より以降において、データ記憶部27から必要なデータを読み出し、途中の演算結果を保存することなく破棄すればよいため、データ記憶部27のメモリ量を確保すれば足りる。)。
【0046】
例えば、Ns=128、Nc=128、Na=16、Br=128、Bv=256、Ba=32であるとする。ただし、最悪条件として、物標検出部33での全検出数は、最大検出数の512であり、距離ビン方向の物標ビン値数は、全ビン値数の128である。
【0047】
FMCWレーダ信号処理装置R2の全体でのフーリエ変換回数は、4,736である。FMCWレーダ信号処理装置R2の全体でのフーリエ変換計算量は、6,373,376である。FMCWレーダ信号処理装置R2の全体での物標検出回数は、49,152である。FMCWレーダ信号処理装置R2の全体での最小限の必要なメモリ量は、262,144×Dである。そして、フーリエ変換でゼロ補間するときや、アレイアンテナを仮想拡張するときに、データ型に応じたデータ量Dが増えるとしても、FMCWレーダ信号処理装置R2の全体での最小限の必要なメモリ量が大きくは増えない。
【0048】
このように、第1実施形態では、FMCWレーダ信号処理装置R2を実機に実装するにあたり、信号処理量及びデータメモリ量を削減することが容易になる。
【0049】
(第2実施形態のFMCWレーダ信号処理装置)
第2実施形態では、第1実施形態を拡張する。時間経過方向、チャープ回数方向及びアンテナ配列方向のうちのいずれかを、第1次元方向、第2次元方向及び第3次元方向と定義する。距離ビン方向、速度ビン方向及び角度ビン方向のうちのいずれかを、第1次元方向の逆空間方向、第2次元方向の逆空間方向及び第3次元方向の逆空間方向と定義する。
【0050】
第1段階では、第1次元方向及び第2次元方向において、フーリエ変換を実行したうえで、第1次元方向の逆空間方向及び第2次元方向の逆空間方向において、物標を検出する。第2段階では、第3次元方向において、フーリエ変換を実行するにあたり、物標が検出されないデータを抽出しないで、物標が検出されたデータのみを抽出したうえで、第3次元方向の逆空間方向において、物標を検出する。以下では、各段階を具体的に説明する。
【0051】
第2実施形態のFMCWレーダ信号処理装置の構成を図5に示す。第2実施形態のFMCWレーダ信号処理プログラムの手順を図6に示す。FMCWレーダ信号処理装置R3は、送信アンテナ41、受信アンテナ42-1~42-a、ミキサ43-1~43-a、発振器44、A/D変換部45-1~45-a、第1解析部46、データ記憶部47、第2解析部48、物標検出部49、リスト記憶部50、第2解析部51、第3解析部52、物標検出部53及びリスト記憶部54を備える。
【0052】
ミキサ43-1~43-a、発振器44及びA/D変換部45-1~45-aは、複数のサンプル数だけサンプリングした送信信号と受信信号との間のビート信号を、複数のチャープ数及び複数のアンテナ数だけ算出する(図6の左上欄)。複数のサンプル数、複数のチャープ数及び複数のアンテナ数のうちのいずれかを、N1、N2及びN3と定義する。
【0053】
第1解析部46は、第1次元方向において、ミキサ43-1~43-a等で算出されたビート信号をフーリエ変換するにあたり、第2次元方向及び第3次元方向の全座標値を含むビート信号を抽出する(図6の左上欄及び中上欄)。第1解析部46でのフーリエ変換回数は、N2×N3である。
【0054】
データ記憶部47は、第1解析部46でのフーリエ変換結果を記憶する(図6の中上欄)。データ記憶部47での必要なメモリ量は、B1×N2×N3×Dである(B1は、第1次元方向の逆空間方向の全座標値数、Dは、データ型に応じたデータ量。)。
【0055】
第2解析部48は、第2次元方向において、第1解析部46でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、第1次元方向の逆空間方向の全座標値及び第3次元方向の特定座標値(1個の座標値)を含む位相値を抽出する(図6の中上欄及び右上欄)。第2解析部48でのフーリエ変換回数は、B1×1=B1である。
【0056】
物標検出部49は、閾値検出を行なったうえで、第1次元方向及び第2次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度のうちのいずれか2つを検出する(図6の右上欄)。物標検出部49での物標検出回数は、B1×B2である(B2は、第2次元方向の逆空間方向の全座標値数。)。
【0057】
リスト記憶部50は、物標検出部49での物標検出結果及びフーリエ変換強度を記憶する(図6の右上欄)。リスト記憶部50での必要なメモリ量は、T1×D又はT2×Dである(T1(図6では1)は、第1次元方向の逆空間方向の全検出数、T2(図6では1)は、第2次元方向の逆空間方向の全検出数、Dは、データ型に応じたデータ量。同一の第1/第2次元方向の逆空間方向の座標値において、複数の物標が存在することがあるため、T1とT2とは、異なることもあり得る。)。
【0058】
第2解析部51は、第2次元方向において、第1解析部46でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、第1次元方向の逆空間方向の物標座標値(図6では、1個の座標値)及び第3次元方向の全座標値を含む位相値を抽出する(図6の左下欄及び中下欄)。第2解析部51でのフーリエ変換回数は、T1×N3である。
【0059】
ここで、第2解析部48は、第3次元方向の特定座標値(1個の座標値)を含む位相値のみをフーリエ変換する。そこで、第2解析部51は、第3次元方向の全座標値を含む位相値をフーリエ変換する。すると、第3解析部52の処理が可能となる。
【0060】
第3解析部52は、第3次元方向において、第2解析部51でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換するにあたり、第2次元方向の逆空間方向の物標座標値(図6では、1個の座標値)を含む位相値を抽出する(図6の中下欄及び右下欄)。第3解析部52でのフーリエ変換回数は、T2である(T2(図6では1)は、第2次元方向の逆空間方向の全検出数。)。
【0061】
物標検出部53は、閾値検出を行なったうえで、第1次元方向、第2次元方向及び第3次元方向の逆空間方向の物標座標値に基づいて、物標距離、物標速度及び物標角度を検出する(図6の右下欄)。物標検出部53での物標検出回数は、B3×T3である(B3は、第3次元方向の逆空間方向の全座標値数、T3(図6では1)は、物標検出部53での全検出数。)。
【0062】
リスト記憶部54は、物標検出部53での物標検出結果及びフーリエ変換強度を記憶する(図6の右下欄)。リスト記憶部54での必要なメモリ量は、T3×Dである(Dは、データ型に応じたデータ量。同一の第1/第2/第3次元方向の逆空間方向の座標値において、複数の物標が存在することがあるため、T3は、T1及びT2と異なることもあり得る。)。
【0063】
FMCWレーダ信号処理装置R3の全体でのフーリエ変換回数は、N2×N3+B1+T1×N3+T2である。FMCWレーダ信号処理装置R3の全体でのフーリエ変換計算量は、N2×N3×B1×lоgB1+B1×B2×lоgB2+T1×N3×B2×lоgB2+T2×B3×lоgB3である。FMCWレーダ信号処理装置R3の全体での物標検出回数は、B1×B2+B3×T3である。FMCWレーダ信号処理装置R3の全体での最小限の必要なメモリ量は、B1×N2×N3×Dである(第2解析部48より以降において、データ記憶部47から必要なデータを読み出し、途中の演算結果を保存することなく破棄すればよいため、データ記憶部47のメモリ量を確保すれば足りる。)。
【0064】
このように、第2実施形態でも、FMCWレーダ信号処理装置R3を実機に実装するにあたり、信号処理量及びデータメモリ量を削減することが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示のFMCWレーダ信号処理装置及びFMCWレーダ信号処理プログラムは、ミリ波帯等の高周波帯及びMIMO等のアンテナ配列に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
R1:FMCWレーダ信号処理装置
1:送信アンテナ
2-1、2-a:受信アンテナ
3-1、3-a:ミキサ
4:発振器
5-1、5-a:A/D変換部
6-1、6-a:距離解析部
7:データ記憶部
8-1、8-a:速度解析部
9:データ記憶部
10:角度解析部
11:データ記憶部
12:物標検出部
R2:FMCWレーダ信号処理装置
21:送信アンテナ
22-1、22-a:受信アンテナ
23-1、23-a:ミキサ
24:発振器
25-1、25-a:A/D変換部
26-1、26-a:距離解析部
27:データ記憶部
28:速度解析部
29:物標検出部
30:リスト記憶部
31:速度解析部
32:角度解析部
33:物標検出部
34:リスト記憶部
R3:FMCWレーダ信号処理装置
41:送信アンテナ
42-1、42-a:受信アンテナ
43-1、43-a:ミキサ
44:発振器
45-1、45-a:A/D変換部
46:第1解析部
47:データ記憶部
48:第2解析部
49:物標検出部
50:リスト記憶部
51:第2解析部
52:第3解析部
53:物標検出部
54:リスト記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6