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特開2022-167700漁網リサイクル方法および漁網リサイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167700
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】漁網リサイクル方法および漁網リサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/20 20220101AFI20221027BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B09B3/00 301W
B29B17/04 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073677
(22)【出願日】2021-04-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】503471695
【氏名又は名称】リファインバース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】松村 順也
(72)【発明者】
【氏名】玉城 吾郎
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AA50
4D004BA07
4D004CA04
4D004CA14
4D004CA40
4D004CA42
4D004CB13
4D004CB31
4F401AC20
4F401BA06
4F401CA02
4F401CA14
4F401CA79
4F401CB18
(57)【要約】
【課題】高品質な樹脂ペレットを製造すること。
【解決手段】漁網を20mm~50mmの大きさの漁網片に裁断する裁断ステップと、漁網片に対して、水を噴霧して、する洗浄ステップと、洗浄ステップでの洗浄後の漁網片を脱水する脱水ステップと、脱水後の漁網片を乾燥させる乾燥ステップと、乾燥後の漁網片をさらに10mm以下の繊維片に粉砕する粉砕ステップと、押出成形により、繊維片をペレット形状に加工する成形ステップと、を含む漁網リサイクル方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁網を20mm~50mmの大きさの漁網片に裁断する裁断ステップと、
前記漁網片に対して、水を噴霧する洗浄ステップと、
前記洗浄ステップでの洗浄後の漁網片を脱水する脱水ステップと、
脱水後の漁網片を乾燥させる乾燥ステップと、
乾燥後の前記漁網片をさらに10mm以下の繊維片に粉砕する粉砕ステップと、
押出成形により、前記繊維片をペレット形状に加工する成形ステップと、
を含む漁網リサイクル方法。
【請求項2】
前記洗浄ステップでは、前記漁網片1kgに対して毎分20~50Lの水を2.0MPa以上の水圧で噴霧して洗浄を行う請求項1に記載の漁網リサイクル方法。
【請求項3】
前記脱水ステップでは、含水率が10%以下になるように前記漁網片を脱水する請求項1または2に記載の漁網リサイクル方法。
【請求項4】
前記乾燥ステップでは、含水率が5%以下になるように前記漁網片を乾燥させる請求項1または2に記載の漁網リサイクル方法。
【請求項5】
漁網を20mm~50mmの大きさに裁断する裁断装置と、
裁断された漁網片に対して、水を噴霧する洗浄装置と、
前記洗浄装置による洗浄後の漁網片を脱水する脱水装置と、
脱水後の漁網片を乾燥させる乾燥装置と、
乾燥後の前記漁網片をさらに10mm以下の繊維片に粉砕する粉砕装置と、
押出成形により、前記繊維片をペレット形状に加工する成形装置と、
を備えた漁網リサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁網リサイクル方法および漁網リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、漁網ワイヤーを粉砕し、洗浄し、脱水押出しを行った後に溶融造粒する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-002336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、ナイロンワイヤーを材料としており、最大の長さが3cm~5cmの繊維を押出機に投入して、溶融造粒を行っている。そのため、高品質なペレットを製造することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
漁網を20mm~50mmの大きさの漁網片に裁断する裁断ステップと、
前記漁網片に対して、水を噴霧する洗浄ステップと、
前記洗浄ステップでの洗浄後の漁網片を脱水する脱水ステップと、
脱水後の漁網片を乾燥させる乾燥ステップと、
乾燥後の前記漁網片をさらに10mm以下の繊維片に粉砕する粉砕ステップと、
押出成形により、前記繊維片をペレット形状に加工する成形ステップと、
を含む漁網リサイクル方法である。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るシステムは、
漁網を20mm~50mmの大きさに裁断する裁断装置と、
裁断された漁網片に対して、水を噴霧する洗浄装置と、
前記洗浄装置による洗浄後の漁網片を脱水する脱水装置と、
脱水後の漁網片を乾燥させる乾燥装置と、
乾燥後の前記漁網片をさらに10mm以下の繊維片に粉砕する粉砕装置と、
押出成形により、前記繊維片をペレット形状に加工する成形装置と、
を備えた漁網リサイクルシステムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高品質な樹脂ペレットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る漁網リサイクルシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る洗浄装置の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る洗浄の具体的な様子を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る押出成形システムの構成を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る漁網リサイクル方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての漁網リサイクルシステム100について、図1を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、漁網リサイクルシステム100は、裁断装置101、洗浄装置102、脱水装置103、乾燥装置104、粉砕装置105および押出成形装置106を含む。
【0013】
一般的に、漁網は小さなものでも、2m~6mの幅をもち、150m~200mほどの長さを有している。定置網用の漁網になると、幅が70m、長さが300mほどの大きさに及ぶ。このような漁網については、現状、海洋廃棄物に占める割合が非常に高く、適正にリサイクル処理を施すことが非常に大きな社会的要望となっている。
【0014】
そこで、漁網リサイクルシステム100は、まず、裁断装置101において、漁網110を、20~50mm程度の漁網片120に裁断する。裁断装置101は、大型のシュレッダーのような機構を備えており、表面に複数の刃が設けられた直径300mm程度のロータが回転することにより、漁網を小さくカットして漁網片120を生成する。
【0015】
洗浄装置102は、網状のコンベアの上に載置された漁網片120に付着した汚れや固着したスケール(海水中に含まれるミネラル分等が析出して付着・固着したモノ)121を水圧により剥離しつつ、水流によって洗い流す。
【0016】
図2は、洗浄装置102の一例を示す図である。漁網片120を500mm幅のSUS製のメッシュベルトを使用したコンベア201に載置し、約2.0m/minのスピードで搬送しながら、コンベア201の上部に設置された高圧洗浄機202を使用して2.0MPaの水圧の水を連続的に漁網片120に噴射する。洗浄処理の長さは約5,000mmであるため、時間にして約2分30秒間、漁網片120に高圧洗浄水が噴射され、漁網片120に固着した汚れやスケールを剥離しつつ洗い流す。なお、汚れやスケールを洗い流す水の量は漁網1kg当りに対し20L~50L/分程度である。漁網片120は、50mm以下の厚みに重ねることが望ましく、高圧洗浄機202は、漁網片120の表面から40mm以下の距離となるように設置することが好ましい。
【0017】
このような洗浄方式によれば、図3に示すように、一般的な水槽での水洗いでは除去することのできない、ワイヤの結び目などに固着したスケール汚れ301を、水圧による物理的な力で剥離しつつ、洗浄水流で塩分等の汚れや剥離した不純物を洗い流すことができる。また、界面活性剤等を使う方法に比べて、環境に優しいという効果もある。
【0018】
図1に戻ると、洗浄装置102での洗浄後、漁網片120に残る水分130を脱水装置103および乾燥装置104を用いて取り除く。脱水装置103では、遠心脱水やエアブロー脱水により含水率が10%以下になるように漁網片を脱水することが好ましい。乾燥装置104では、熱風式や遠赤外線式等の乾燥機を使用し、含水率が5%以下になるように漁網片を乾燥させることが好ましい。
【0019】
次に、粉砕装置105を用いて、乾燥後の漁網片120を10mm以下の繊維片150に粉砕する。押出成形装置106における押出工程(ペレット加工)において安定的な加工を確保する為には、加工材料を定量で供給する必要がある。一般的にペレットや粉体原料などのハンドリング性の良好な原料であれば、スクリューフィーダー付タンクやアジテーター付きタンクなどの供給装置を使用し、材料を定量供給する。しかし、主に形状の問題(フィルム/フラフ状、布片、綿/糸状など)で前述の供給装置では定量的に原料を排出・供給できない場合があり、その様な材料を加工する際にはカッターコンパクタ(https://www.fareastnetwork.co.jp/theme71.html)を使用することがリペレット加工では主流である。
【0020】
ただし、このカッターコンパクタ方式も万能ではなく、糸状の非常に嵩が軽い材料の場合カッターコンパクタ内部で材料が浮いてしまう為、十分に粉砕・減容がされず、やはり押出機に定量的に材料を供給することができない。
【0021】
そこで、一般的な供給装置でもハンドリングできる形状に材料を粉砕加工する。具体的には、洗浄・脱水・乾燥処理を行った漁網片を、剪断式一軸破砕機を用いて10mm以下の繊維片に粉砕加工をする。10mm以下にまで粉砕加工する事で材料同士の強固な絡みつき(ブロッキング)が無くなり、ペレットに近いハンドリング性を有するようになり、結果、押出成形装置106への定量供給が行えるようになる。
【0022】
押出成形システム106では、繊維片150に対して一軸押出機で圧力および熱を加えることにより半溶融成形し、ペレット160を生成する。
【0023】
図4は、押出成形システム106の構成を示す図である。ベルトコンベア401は、粉砕された漁網をカッタコンパクタ403に搬送・供給するコンベアである。金属検出器402は、粉砕された漁網中に含まれる金属片(異物)を検知する装置である。
【0024】
カッタコンパクタ403は、ボトム部分に回転刃が設置された回転式の粉砕機であり、安定した押出加工を確保する為に、粉砕された漁網の乾燥と減容とを同時に行う。
【0025】
(乾燥)
押出加工時(熱をかけて樹脂を溶解)に材料が水分を含んでいると、水分が気化して加工不良(ストランド切れ)や加工ペレットの品質不良(発砲ペレット、基本物性の低下等)を起こす。そこで、押出機部分には水蒸気やその他ガス抜き用にベント(脱気口)が設けてあり、自然開放または真空ポンプによる強制吸気によって溶融させた樹脂からの脱気を行う。しかし、含水率が5%程もあると、ベントからの脱気方式だけでは十分に脱気ができない。そこで、押出機への投入前にさらに含水率を落とすため、カッタコンパクタ403での粉砕による剪断熱と材料と内壁の摩擦熱によって材料の予備乾燥を行う。
【0026】
(減容)
押出加工時には材料をスクリューで搬送しながら溶融加工をする為、加工前の材料の嵩比重が低いと押出加工の樹脂吐出量(生産量)は上がらない。そこで、カッタコンパクタ403での粉砕による剪断熱と材料と内壁の摩擦熱によって材料を半溶融させ、材料の嵩比重を上げる。
【0027】
主押出機404は、カッタコンパクタ403で予備乾燥かつ減容加工された材料を、スクリューで搬送しながら熱をかけて溶融させ、同時に、ベントおよび主押出機404と子押出機405の連結開放部分で脱気作業を行う。主押出機404で溶融した材料を一旦機外に出して、再度、子押出機405に入れることにより脱気を促している。
【0028】
子押出機405は、溶融・脱気された材料をΦ1~3mm程度のストラン状に押し出す。冷却水槽406は、ストラン状に押し出された材料を水に漬けて冷却し、固化させる。
【0029】
水切り装置407は、材料表面に付着した水分をエアブロー等により除去する。ペレットカッター408は、ストランド状の材料を1~3mm程度の長さにカットする。さらに振動篩い409により、成型不良品(径が細い、ペレットカットでカットできなかったモノ等)を除去する。
【0030】
ブロワー410は、ペレットタンク411へペレットを空送する装置である。ペレットタンク411は、空送で搬送されてきたペレットの一時貯留タンクである。
【0031】
図5は、上記の漁網リサイクルシステム100を用いた処理の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS501において、漁網を20~50mm程度の漁網片に裁断する。次に、ステップS503において、裁断された漁網片をコンベアで搬送しながら高圧の洗浄水を噴霧する。漁網片から30~40mm程度離れた距離から2.0MPaの水圧で水を噴霧して固着した汚れを剥離洗浄しつつ材料1Kg当たりに対し20~50L/min程度の水量の水で付着した汚れや剥離した汚れを洗い流す。
【0032】
次に、ステップS505において、含水率が10%以下になるように脱水し、ステップS507において、含水率が5%以下になるように乾燥させる。
【0033】
次にステップS509において、押出機に定量供給できるサイズ(10mm程度)に材料を粉砕する。
【0034】
最後に、ステップS511において、1軸押出機でペレット形状に加工する。
【0035】
以上のようなシステムおよび処理により、廃棄漁網から非常に高品質なペレットを生成することができ、環境問題およびエネルギー問題をより積極的に解決することが可能となる。
【0036】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5