(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167708
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】微粒子計測器を用いた建物内空気浄化支援システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20221027BHJP
G01N 15/06 20060101ALI20221027BHJP
G01N 15/02 20060101ALI20221027BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20221027BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20221027BHJP
【FI】
F24F7/007 B
G01N15/06 D
G01N15/02 Z
F24F8/108 330
F24F8/80 165
F24F8/80 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073693
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】313014169
【氏名又は名称】株式会社スマートセンシング
(71)【出願人】
【識別番号】520206988
【氏名又は名称】豊光社テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山野井 康友
(72)【発明者】
【氏名】倉光 宏
(72)【発明者】
【氏名】安 克彦
【テーマコード(参考)】
3L056
【Fターム(参考)】
3L056BA06
3L056BD01
3L056BD06
3L056BF06
(57)【要約】
【課題】本発明は、建物内空気の浮遊粒子による汚濁程度を判定して自動的に建物内空気を清浄化する建物内空気浄化支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る建物内空気浄化支援システムは、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について粒径区分、粒子数及び/又は粒子質量からなる粒子情報を計測する微粒子計測器2が建物1の建物内に配置され、建物内に空気清浄化手段5が配置され、建物1の建物内又は建物外に制御部4が配置され、制御部4と微粒子計測器2がネットワークAを介して双方向に通信可能に構成され、制御部4と空気清浄化手段5がネットワークBを介して通信可能に構成され、微粒子計測器2は計測した建物内の計測粒子情報を制御部4に送信し、計測粒子情報に基づいて制御部4が空気清浄化手段5にオンオフ制御信号を送信し、空気清浄化手段5がオンオフ動作して建物内の空気の浄化を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測する1台以上の微粒子計測器が建物の建物内に配置され、
前記建物内に1台以上の空気清浄化手段が配置され、
前記建物の建物内又は建物外に制御部が配置され、当該制御部と前記微粒子計測器がネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、
当該制御部と前記空気清浄化手段がネットワークを介して通信可能に構成され、
前記微粒子計測器は計測した前記建物内の粒子情報である計測粒子情報を制御部に送信し、
前記制御部は、当該計測粒子情報に基づいて前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信するオンオフ駆動手段を有し、
当該オンオフ制御信号を受信して前記空気清浄化手段がオンオフ動作して前記建物内の空気の浄化を行うことを特徴とする建物内空気浄化支援システム。
【請求項2】
前記制御部は記憶手段を有し、
前記複数段階の各粒径区分に閾粒子数及び/又は閾粒子質量が設定されて、前記記憶手段に記憶され、
前記制御部のオンオフ駆動手段は、前記計測粒子情報に係る、一つ以上の粒径区分において計測された粒子数が閾粒子数に到達した場合及び/又は計測された粒子質量が閾粒子質量に到達した場合には、オン制御信号を送信し、
当該オン制御信号を受信して前記空気清浄化手段はオン動作して前記建物内の空気の浄化を行う請求項1に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項3】
前記制御部は記憶手段を有し、
浮遊する複数の粒子種に関する粒子種データが前記記憶手段に記憶され、
当該粒子種データと前記計測粒子情報とを対比して、吸引した空気中に浮遊している粒子種を判別する粒子種判別手段を更に有し、
当該粒子種判別手段によって吸引した空気中に浮遊していると判別された粒子種に基づいて、前記オンオフ駆動手段は、夫々の前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して当該空気清浄化手段をオンオフ動作させる請求項1又は2に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項4】
地域別及び季節別に浮遊する複数の粒子種に関する粒子種データが前記記憶手段に記憶され、
前記粒子種判別手段は、地域別及び季節別に浮遊する複数の粒子種に関する当該粒子種データと、地域別及び季節別に得られた前記計測粒子情報とを対比して、吸引した空気中に浮遊している粒子種を判別する請求項3に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項5】
前記建物がコンサートホールや劇場等の大型建物の場合には、
前記建物内に複数台の前記微粒子計測器と複数台の前記空気清浄化手段が配置されており、
前記制御部は、複数台の前記微粒子計測器から送信される前記計測粒子情報に基づいて、当該大型建物の内部における空気浄化を効率的に行うために複数台の前記空気清浄化手段の好適オンオフ駆動状態を導出して、当該好適オンオフ駆動状態を実現するように複数台の前記空気清浄化手段の夫々に対し前記オンオフ制御信号を送信する好適オンオフ駆動手段を有し、
当該オンオフ制御信号を受信して前記空気清浄化手段の夫々がオンオフ動作し、
前記建物内の空気流を好適化して空気浄化を効率的に行う請求項1~4のいずれかに記
載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項6】
前記建物の外側にも1台以上の微粒子計測器が追加的に配置されて建物外の前記粒子情報が計測され、そして建物外の前記微粒子計測器は計測した建物外の粒子情報である計測粒子情報を前記制御部にネットワークを介して送信可能に構成され、
前記制御部は建物外の前記計測粒子情報を受信し、
前記制御部は、建物外の前記計測粒子情報と建物内の前記計測粒子情報に基づいて前記建物内外の空気の状態を判定する空気状態判定手段を有し、
前記制御部は、発音手段又は表示手段によりユーザーに前記建物の窓の開閉や換気扇の動作の指示や外出の可否等の情報提供を行う情報提供手段と、前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して前記空気清浄化手段をオンオフ動作させるオンオフ駆動手段を有し、
前記制御部は、前記空気状態判定手段による判定に基づいて、前記情報提供手段によりユーザーに情報提供を行い、及び/又は、前記オンオフ駆動手段により前記空気清浄化手段をオンオフ動作させる請求項1~5のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項7】
前記制御部は記憶手段を有し、
当該記憶手段は、前記制御部が前記微粒子計測器から受信した計測粒子情報を記憶し、
前記制御部は、前記計測粒子情報を前記記憶手段から読み出して外部装置に送信することができる請求項1~6のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項8】
前記外部装置はネットワークを介して前記制御部と双方向に通信可能に構成されており、
前記外部装置は、前記制御部を介して、前記記憶手段に記憶された前記建物内又は建物外の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信することができる請求項7に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項9】
複数の建物が地域的に散在しており、
夫々の前記建物の建物内には1台以上の微粒子計測器が配置されており、
前記微粒子計測器は、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測することができ、
夫々の前記建物の建物内に1台以上の空気清浄化手段が配置されており、
前記建物の建物内又は建物外に制御部が配置され、当該制御部と前記微粒子計測器がネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、
当該制御部と前記空気清浄化手段がネットワークを介して通信可能に構成され、
夫々の前記建物では、前記微粒子計測器は計測した前記建物内の粒子情報である計測粒子情報を前記制御部に送信し、前記制御部は当該計測粒子情報に基づいて前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信するオンオフ駆動手段を有し、当該オンオフ制御信号を受信して前記空気清浄化手段がオンオフ動作して前記建物内の空気の浄化を行う建物内空気浄化支援システムであり、
夫々の建物の制御部を全体的に統括する広域制御部が本部に配置され、当該広域制御部と夫々の建物の前記制御部はネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、
当該ネットワークにより夫々の建物の前記制御部を介して、前記広域制御部は、夫々の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信し、且つ夫々の建物の前記空気清浄化手段に関する情報を受信でき、
前記広域制御部は広域記憶手段を有し、
当該広域記憶手段は、夫々の建物の前記制御部から受信した、当該建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報、及び、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報を、計測時刻又は受信時刻とともに時系列で記憶することを特徴とする建物内空気浄化支援システム。
【請求項10】
前記空気清浄化手段がフィルタを内蔵している場合に、
前記広域制御部は、夫々の建物の制御部から受信した前記計測粒子情報から夫々の建物の空気清浄化手段のフィルタの汚濁度を判定する汚濁度判定手段を有し、
前記広域制御部は、当該汚濁度判定手段により判定された汚濁度が設定された閾汚濁度に到達したときに前記フィルタを新品のフィルタに交換せよとの交換情報を前記制御部に送信するか、及び/又は目の異なる最適なフィルタに変更せよとの変更情報を前記制御部に送信する情報送信手段を有する請求項9に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項11】
前記空気清浄化手段がフィルタを内蔵している場合に、
前記広域制御部は、前記広域記憶手段に記憶された、当該空気清浄化手段に係る建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列、及び、当該空気清浄化手段に関する情報の時系列に基づいて、前記フィルタの汚濁度を判定する汚濁度判定手段と、前記フィルタの交換時期を予測する交換時期予測手段と、を有する請求項9又は10に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項12】
前記広域制御部は、前記広域記憶手段に記憶された、ある前記建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列、及び、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報の時系列に基づいて、当該建物に設置すべき空気清浄化手段の能力やフィルタの種類に関する提案を行う提案手段を有する請求項9~11のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項13】
前記広域制御部は、夫々の建物の微粒子計測器に係る前記計測粒子情報と、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報と、を前記広域記憶手段から読み出して広域外部装置に送信することができる請求項9~12のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項14】
前記広域外部装置はネットワークを介して前記広域制御部と双方向に通信可能に構成されており、
前記広域外部装置は、前記広域制御部を介して、前記広域記憶手段に記憶された夫々の前記建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報と、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報と、を受信することができる請求項13に記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項15】
前記空気清浄化手段は空気清浄機、エアコン、換気扇、換気用ダクト又はサーキュレータから適宜に選択される請求項1~14のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項16】
前記微粒子計測器は常時計測状態に設定されて建物内の粒子情報を常時送信する請求項1~15のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項17】
前記微粒子計測器は更にCO2濃度センサ、温度センサ及び湿度センサを有し、前記計測粒子情報に加えて、これらのセンサにより計測されたCO2濃度、温度及び湿度を常時送信する請求項1~16のいずれかに記載の建物内空気浄化支援システム。
【請求項18】
請求項9に記載の建物内空気浄化支援システムにおいて、1つ以上の前記建物の微粒子計測器に係る前記計測粒子情報を、コンピュータにより読み出し可能な形態で記録したことを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋・アパート・マンション・ビル・ホール・劇場・部屋等からなる建物において、単一又は複数の建物内に、空気中に浮遊する微粒子を計測する微粒子計測器と空気中の微粒子を減少させて清浄化する空気清浄化手段とを配置し、これらと制御部を、ネットワークを介して互いに通信可能に構成することにより、建物内の空気の汚濁程度を判定しながら自動的に建物内の空気を清浄化する建物内空気浄化支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物内の空気を清浄化する空気清浄化手段として、空気清浄機・エアコン・換気扇・換気用ダクト・サーキュレータ等が存在する。これらの空気清浄化手段は、人が建物内外の状況を人為的に判断して、人為的操作でオンオフ動作させるのが通例である。
【0003】
また、空気中に浮遊する粒子を計測する微粒子計測器が存在する。特に、クリーンルームのように空気を清浄化する必要がある場合には、クリーンルーム内に浮遊する粒子の状況をパーティクルカウンタやパーティクルセンサと称される微粒子計測器により計測して、クリーンルーム内に配置された空気清浄化手段を人為的にオンオフ動作させて清浄化することが通例である。
【0004】
現在までのところ、建物内に微粒子計測器と制御部と空気清浄化手段を相互にネットワークを介して通信可能に配置し、建物内に浮遊する粒子状況を微粒子計測器で計測し、計測粒子情報を制御部に送信して汚濁状態を判定し、この汚濁状態に応じて制御部が空気清浄化手段を自動的にオンオフ動作させて建物内の空気を清浄化させる建物内空気浄化支援システムは存在しない。
【0005】
従来技術1として、特開2009-74929号公報(特許文献1)が存在する。この特許文献1の発明の名称は「パーティクルカウンタおよびその計測方法」である。
特許文献1のパーティクルカウンタは液中微粒子を計測するパーティクルカウンタであるが、気中微粒子を計測するパーティクルカウンタと基本構成は同じである。レーザー光源から射出されたレーザービームを照明レンズ系に入射させて微粒子が内在する試料セルを照射する。試料セル中の微粒子により散乱された散乱ビームを集光レンズ系で集光して光検出器で検出し、計数ユニットを介して計算機で粒径サイズや粒子数を算出する。
微粒子の粒径サイズや粒子数からなる粒子情報を算出することはできるが、この計測粒子情報を利用して試料セル中の微粒子を除去する等の操作は全く行われていない。
【0006】
従来技術2として、特開2019-62495号公報(特許文献2)が存在する。この特許文献2の発明の名称は「遠隔操作システム、測定システムおよび遠隔操作システム用プログラム」である。
特許文献2では、複数の測定器を中継器や携帯電話通信網を介してインターネットに接続し、又はブロードバンドルータと送受信可能にしてインターネットに接続し、また操作端末とも送受信可能にした構成を開示している。複数の測定器の夫々の測定信号は、操作端末から参照可能に構成されている。
しかし、夫々の測定信号を利用して夫々の測定器が配置された場所において何らかの操作・処理を行うことは一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-74929号公報
【特許文献2】特開2019-62495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、家屋・アパート・マンション・ビル・ホール・劇場・部屋等からなる建物において、単一又は複数の建物内に空気中に浮遊する微粒子を計測する微粒子計測器を配置し、同時に空気中の微粒子を減少させて清浄化する空気清浄化手段と制御部を配置し、制御部と微粒子計測器と空気清浄化手段とをネットワークを介して通信可能に構成することにより、建物内の空気の浮遊微粒子による汚濁程度を判定しながら自動的に建物内の空気を清浄化する建物内空気浄化支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測する1台以上の微粒子計測器が建物の建物内に配置され、前記建物内に1台以上の空気清浄化手段が配置され、前記建物の建物内又は建物外に制御部が配置され、当該制御部と前記微粒子計測器がネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、当該制御部と前記空気清浄化手段がネットワークを介して通信可能に構成され、前記微粒子計測器は計測した前記建物内の粒子情報である計測粒子情報を制御部に送信し、前記制御部は、当該計測粒子情報に基づいて前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信するオンオフ駆動手段を有し、当該オンオフ制御信号を受信して前記空気清浄化手段がオンオフ動作して前記建物内の空気の浄化を行うことを特徴とする建物内空気浄化支援システムである。
【0010】
本発明の第2の形態は、前記第1形態において、前記制御部は記憶手段を有し、前記複数段階の各粒径区分に閾粒子数及び/又は閾粒子質量が設定されて、前記記憶手段に記憶され、前記制御部のオンオフ駆動手段は、前記計測粒子情報に係る、一つ以上の粒径区分において計測された粒子数が閾粒子数に到達した場合及び/又は計測された粒子質量が閾粒子質量に到達した場合には、オン制御信号を送信し、当該オン制御信号を受信して前記空気清浄化手段はオン動作して前記建物内の空気の浄化を行う建物内空気浄化支援システムである。
【0011】
本発明の第3の形態は、前記第1又は第2形態において、前記制御部は記憶手段を有し、浮遊する複数の粒子種に関する粒子種データが前記記憶手段に記憶され、当該粒子種データと前記計測粒子情報とを対比して、吸引した空気中に浮遊している粒子種を判別する粒子種判別手段を更に有し、当該粒子種判別手段によって吸引した空気中に浮遊していると判別された粒子種に基づいて、前記オンオフ駆動手段は、夫々の前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して当該空気清浄化手段をオンオフ動作させる建物内空気浄化支援システムである。
【0012】
本発明の第4の形態は、前記第3形態において、地域別及び季節別に浮遊する複数の粒子種に関する粒子種データが前記記憶手段に記憶され、前記粒子種判別手段は、地域別及び季節別に浮遊する複数の粒子種に関する当該粒子種データと、地域別及び季節別に得られた前記計測粒子情報とを対比して、吸引した空気中に浮遊している粒子種を判別する建物内空気浄化支援システムである。
【0013】
本発明の第5の形態は、前記第1~第4形態のいずれかにおいて、前記建物がコンサートホールや劇場等の大型建物の場合には、前記建物内に複数台の前記微粒子計測器と複数台の前記空気清浄化手段が配置されており、前記制御部は、複数台の前記微粒子計測器から送信される前記計測粒子情報に基づいて、前記制御部は当該大型建物の内部における空
気浄化を効率的に行うために複数台の前記空気清浄化手段の好適オンオフ駆動状態を導出して、当該好適オンオフ駆動状態を実現するように複数台の前記空気清浄化手段の夫々に対し前記オンオフ制御信号を送信する好適オンオフ駆動手段を有し、当該オンオフ制御信号を受信して前記空気清浄化手段の夫々がオンオフ動作し、前記建物内の空気流を好適化して空気浄化を効率的に行う建物内空気浄化支援システムである。
【0014】
本発明の第6の形態は、前記第1~第5形態のいずれかにおいて、前記建物の外側にも1台以上の微粒子計測器が追加的に配置されて建物外の前記粒子情報が計測され、そして建物外の前記微粒子計測器は計測した建物外の粒子情報である計測粒子情報を前記制御部にネットワークを介して送信可能に構成され、前記制御部は建物外の前記計測粒子情報を受信し、前記制御部は、建物外の前記計測粒子情報と建物内の前記計測粒子情報に基づいて前記建物内外の空気の状態を判定する空気状態判定手段を有し、前記制御部は、発音手段又は表示手段によりユーザーに前記建物の窓の開閉や換気扇の動作の指示や外出の可否等の情報提供を行う情報提供手段と、前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して前記空気清浄化手段をオンオフ動作させるオンオフ駆動手段を有し、前記制御部は、前記空気状態判定手段による判定に基づいて、前記情報提供手段によりユーザーに情報提供を行い、及び/又は、前記オンオフ駆動手段により前記空気清浄化手段をオンオフ動作させる建物内空気浄化支援システムである。
【0015】
本発明の第7の形態は、前記第1~第6形態のいずれかにおいて、前記制御部は記憶手段を有し、当該記憶手段は、前記制御部が前記微粒子計測器から受信した計測粒子情報を記憶し、前記制御部は、前記計測粒子情報を前記記憶手段から読み出して外部装置に送信することができる建物内空気浄化支援システムである。
【0016】
本発明の第8の形態は、前記第7形態において、前記外部装置はネットワークを介して前記制御部と双方向に通信可能に構成されており、前記外部装置は、前記制御部を介して、前記記憶手段に記憶された前記建物内又は建物外の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信することができる建物内空気浄化支援システムである。
【0017】
本発明の第9の形態は、複数の建物が地域的に散在しており、夫々の前記建物の建物内には1台以上の微粒子計測器が配置されており、前記微粒子計測器は、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測することができ、夫々の前記建物の建物内に1台以上の空気清浄化手段が配置されており、前記建物の建物内又は建物外に制御部が配置され、当該制御部と前記微粒子計測器がネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、当該制御部と前記空気清浄化手段がネットワークを介して通信可能に構成され、夫々の前記建物では、前記微粒子計測器は計測した前記建物内の粒子情報である計測粒子情報を前記制御部に送信し、前記制御部は当該計測粒子情報に基づいて前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信するオンオフ駆動手段を有し、当該オンオフ制御信号を受信して前記空気清浄化手段がオンオフ動作して前記建物内の空気の浄化を行う建物内空気浄化支援システムであり、夫々の建物の制御部を全体的に統括する広域制御部が本部に配置され、当該広域制御部と夫々の建物の前記制御部はネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、当該ネットワークにより夫々の建物の前記制御部を介して、前記広域制御部は、夫々の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信し、且つ夫々の建物の前記空気清浄化手段に関する情報を受信でき、前記広域制御部は広域記憶手段を有し、当該広域記憶手段は、夫々の建物の前記制御部から受信した、当該建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報、及び、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報を、計測時刻又は受信時刻とともに時系列で記憶することを特徴とする建物内空気浄化支援システムである。
【0018】
本発明の第10の形態は、前記第9形態において、前記空気清浄化手段がフィルタを内
蔵している場合に、前記広域制御部は、夫々の建物の制御部から受信した前記計測粒子情報から夫々の建物の空気清浄化手段のフィルタの汚濁度を判定する汚濁度判定手段を有し、前記広域制御部は、当該汚濁度判定手段により判定された汚濁度が設定された閾汚濁度に到達したときに前記フィルタを新品のフィルタに交換せよとの交換情報を前記制御部に送信するか、及び/又は目の異なる最適なフィルタに変更せよとの変更情報を前記制御部に送信する情報送信手段を有する建物内空気浄化支援システムである。
【0019】
本発明の第11の形態は、前記第9又は第10形態において、前記空気清浄化手段がフィルタを内蔵している場合に、前記広域制御部は、前記広域記憶手段に記憶された、当該空気清浄化手段に係る建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列、及び、当該空気清浄化手段に関する情報の時系列に基づいて、前記フィルタの汚濁度を判定する汚濁度判定手段と、前記フィルタの交換時期を予測する交換時期予測手段と、を有する建物内空気浄化支援システムである。
【0020】
本発明の第12の形態は、前記第9~第11形態のいずれかにおいて、前記広域制御部は、前記広域記憶手段に記憶された、ある前記建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列、及び、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報の時系列に基づいて、当該建物に設置すべき空気清浄化手段の能力やフィルタの種類に関する提案を行う提案手段を有する建物内空気浄化支援システムである。
【0021】
本発明の第13の形態は、前記第9~第12形態のいずれかにおいて、前記広域制御部は、夫々の建物の微粒子計測器に係る前記計測粒子情報と、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報と、を前記広域記憶手段から読み出して広域外部装置に送信することができる建物内空気浄化支援システムである。
【0022】
本発明の第14の形態は、前記第13形態において、前記広域外部装置はネットワークを介して前記広域制御部と双方向に通信可能に構成されており、前記広域外部装置は、前記広域制御部を介して、前記広域記憶手段に記憶された夫々の前記建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報と、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報と、を受信することができる建物内空気浄化支援システムである。
【0023】
本発明の第15の形態は、前記第1~第14形態のいずれかにおいて、前記空気清浄化手段は空気清浄機、エアコン、換気扇、換気用ダクト又はサーキュレータから適宜に選択される建物内空気浄化支援システムである。
【0024】
本発明の第16の形態は、前記第1~第15形態のいずれかにおいて、前記微粒子計測器は常時計測状態に設定されて建物内の粒子情報を常時送信する建物内空気浄化支援システムである。
【0025】
本発明の第17の形態は、前記第1~第16形態のいずれかにおいて、前記微粒子計測器は更にCO2濃度センサ、温度センサ及び湿度センサを有し、前記計測粒子情報に加えて、これらのセンサにより計測されたCO2濃度、温度及び湿度を常時送信する建物内空気浄化支援システムである。
【0026】
本発明の第18の形態は、前記第9形態の建物内空気浄化支援システムにおいて、1つ以上の前記建物の微粒子計測器に係る前記計測粒子情報を、コンピュータにより読み出し可能な形態で記録したことを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の形態によれば、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複
数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測する1台以上の微粒子計測器が建物の建物内に配置される。
ここで、所定体積とは、単位体積(m3、cm3、L等)に限らず、所定断面積の吸込管から所定時間に吸引された空気体積(例えば28.3L/min)、測定室の容積など微粒子計測器が用いる種々の体積概念が含まれる。また、粒径区分とは、0.3~0.5μm、0.5~1.0μm等の上下限粒径範囲、0.3μm以下、0.5μm以下、1.0μm以下等の下限指定の無い上限粒径範囲や0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上等の上限指定の無い下限粒径範囲など微粒子計測器が使用する種々の粒径区分概念が存在する。更に、粒子質量とは、0.3~0.5μm、0.5~1.0μm等の上下限粒径範囲内の粒子の総質量、0.3μm以下、0.5μm以下、1.0μm以下等の下限指定の無い上限粒径範囲内の粒子の総質量や0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上等の上限指定の無い下限粒径範囲内の粒子の総質量など微粒子計測器が用いる種々の粒子質量概念が存在する。
また、前記建物内に1台以上の空気清浄化手段が配置されている。空気清浄化手段には、後述するように、例えば空気清浄機、エアコン、換気扇、換気用ダクト、サーキュレータ等の室内の微粒子数を減少させる空気清浄化装置が含まれる。
【0028】
また、本発明の第1の形態において、前記建物の建物内又は建物外に制御部が配置されている。制御部には、制御回路単体、パソコン、タブレット、スマートフォン等が含まれる。当該制御部と微粒子計測器がネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、当該制御部と空気清浄化手段がネットワークを介して通信可能に構成されている。当該制御部は、微粒子計測器と一体化されていても良いし、微粒子計測器と別体に配置されていても良い。また、ネットワークは無線ネットワーク、有線ネットワークや回路結線でも良く、無線ネットワークとしてはインターネット、イントラネット等の無線通信を用いたネットワークであれば何でも構わない。
【0029】
なお、本明細書においては、一般に「装置Xと装置YがネットワークZを介して通信可能に構成される」とは、「装置Xが送信手段(又は受信手段)を有し、装置Yが受信手段(又は送信手段)を有し、ネットワークZを介して、装置X(又はY)が当該送信手段を用いて情報を送信し、送信された当該情報を装置Y(又はX)が当該受信手段を用いて受信することが可能なように構成される」ことを言う。ここで「装置」としては、微粒子計測器、空気清浄化手段、制御部や、後述する外部装置、広域制御部、広域記憶手段、広域外部装置などが挙げられる。
【0030】
オンオフ動作とは、オン動作とオフ動作のいずれかであり、オン動作には単一強度動作だけでなく、例えば強動作・中動作・弱動作のように複数段階のオン動作を含んでも良い。従って、オンオフ制御とはオン制御とオフ制御のいずれかであり、オン制御には単一強度制御だけでなく、例えば強制御・中制御・弱制御のように複数強度段階のオン制御を含んでも良い。
本第1形態の特徴は、微粒子計測器が計測した建物内の粒子情報である計測粒子情報を制御部に送信し、当該計測粒子情報に基づいて制御部のオンオフ駆動手段が空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信し、当該オンオフ制御信号を受信して空気清浄化手段がオンオフ動作して建物内の空気の浄化を自動的に実行する建物内空気浄化支援システムを提供することである。従って、微粒子計測器と制御部と空気清浄化手段が、ネットワークを介して通信可能に構成されて、建物内の空気の浄化を自動的に実行して建物内を常に清潔に保持し、環境にも衛生にも良好であり、居住者の健康を守るという作用効果を有する。
【0031】
本発明の第2の形態によれば、前記制御部は記憶手段を有し、前記複数段階の各粒径区分に閾粒子数及び/又は閾粒子質量が設定されて、前記記憶手段に記憶される。これらの閾粒子数や閾粒子質量は、例えば環境基本法で定められた環境基準に基づいた閾値であっ
ても良いし、その他健康被害を生起しない範囲において自在に定めることができる。
前記計測粒子情報に係る、一つ以上の粒径区分において計測された粒子数が閾粒子数に到達した場合及び/又は計測された粒子質量が閾粒子質量に到達した場合には、前記制御部のオンオフ駆動手段はオン制御信号を送信する。上述したように、オン制御信号とは、単一強度制御信号だけでなく、例えば強制御信号・中制御信号・弱制御信号のように複数強度段階のオン制御信号を含む概念である。従って、当該第2形態に係る建物内空気浄化支援システムは、当該オン制御信号を受信して前記空気清浄化手段はオン動作して前記建物内の空気の浄化を自動的に行い、建物内の居住者の健康・安全を保持する作用効果を有する。
【0032】
本発明の第3の形態によれば、前記制御部は記憶手段を有し、浮遊する複数の粒子種に関する粒子種データが前記記憶手段に記憶され、粒子種判別手段により、当該粒子種データと前記計測粒子情報とを対比して、吸引した空気中に浮遊している粒子種を判別し、当該粒子種判別手段によって吸引した空気中に浮遊していると判別された粒子種に基づいて、前記オンオフ駆動手段は、夫々の前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して当該空気清浄化手段をオンオフ動作させることが可能になる。粒子種判別手段は、前記制御部に設けることができる。あるいは、前記制御部とは別に設けたコンピュータ等の外部装置に粒子種判別手段を設けてもよい。
空気中に浮遊する粒子には各種の粒子種が含まれる。例えば、粒径別に区分けすると、PM0.5にはウィルスなど、PM1.0には真菌など、PM2.5にはカビ胞子など、PM10には黄砂など、PM25には花粉など、PM50にはホコリなどが含まれている。ここで、例えばPM2.5とは、粒径が2.5μm以下の粒子を意味する。前記粒子種データとは、複数の粒子種を粒径別に分類したデータである。
従って、本第3形態の建物内空気浄化支援システムによれば、計測粒子情報の粒径区分ごとの粒子数又は粒子質量と前記粒子種データを対比することにより、吸引した空気中に浮遊している粒子の粒子種がウィルス、真菌、カビ胞子、黄砂、花粉、ホコリ等のいずれであるのかを判別し、判別した粒子種に基づいて、「空気の浄化」、「換気」、「除湿」、「加湿」等のいずれが必要であるのかを判定して、当該判定に従って、夫々の前記空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して当該空気清浄化手段をオンオフ動作させることが可能になる。
【0033】
本発明の第4の形態によれば、前記第3形態において、地域別及び季節別に浮遊する複数の粒子種に関する粒子種データが前記記憶手段に記憶され、前記粒子種判別手段は、地域別及び季節別に浮遊する複数の粒子種に関する当該粒子種データと、地域別及び季節別に得られた前記計測粒子情報とを対比して、吸引した空気中に浮遊している粒子種を判別することが可能になる。
空気中に浮遊する粒子には各種の粒子種が含まれる。例えば、粒径別に区分けすると、PM0.5にはウィルスなど、PM1.0には真菌など、PM2.5にはカビ胞子など、PM10には黄砂など、PM25には花粉など、PM50にはホコリなどが含まれている。これらの粒子種の所定体積当たりの粒子数又は粒子質量は、地域別・季節別に変動することが知られている。前記粒子種データとは、複数の粒子種を粒径別、地域別及び季節別に分類したデータである。
従って、本第4形態の建物内空気浄化支援システムは、地域別及び季節別に分類された粒子種データと、地域別及び季節別に得られた計測粒子情報とを対比することにより、空気中に浮遊している粒子種をより正確に判別することが可能になる作用効果を有する。
【0034】
本発明の第5の形態によれば、建物がコンサートホールや劇場等の大型建物の場合に、建物内に複数台の微粒子計測器と複数台の空気清浄化手段を配置する。制御部は好適オンオフ駆動手段を有し、複数台の微粒子計測器から送信される計測粒子情報に基づいて、当該大型建物の内部における空気浄化を効率的に行うために複数台の空気清浄化手段の好適
オンオフ駆動状態を自動的に導出する。ここで、好適オンオフ駆動状態とは、建物内の空気流を好適化し、好適空気流れ分布に誘導する駆動状態である。
従って、本第5形態の建物内空気浄化支援システムにおいては、好適オンオフ駆動手段が、当該好適オンオフ駆動状態を実現するように複数台の空気清浄化手段の夫々に対しオンオフ制御信号を送信し、当該オンオフ制御信号を受信して空気清浄化手段の夫々がオンオフ動作し、その結果、建物内の空気流を好適化させて空気浄化を効率的に実行できる。上述したように、オンオフ制御信号の中でオン制御信号とは、単一強度制御信号だけでなく、例えば強制御信号・中制御信号・弱制御信号のように複数強度段階のオン制御信号を含む概念である。
【0035】
本発明の第6の形態によれば、建物の外側にも1台以上の微粒子計測器が追加的に配置されて建物外の粒子情報が計測され、そして建物外の微粒子計測器は計測した建物外の粒子情報である計測粒子情報を制御部にネットワークを介して送信可能に構成され、制御部は建物外の計測粒子情報を受信し、制御部は、建物外の計測粒子情報と建物内の計測粒子情報に基づいて建物内外の空気の状態を判定する空気状態判定手段を有する。詳細には、建物の内外の計測粒子情報に基づいて、建物内が建物外より粒子濃度が高ければ、窓を開けて建物内の粒子を排出する方が効率的であり、建物内が建物外とほぼ同じ粒子濃度であれば空気清浄化手段を強動作させて建物内粒子濃度を急速低下させることができ、建物内が建物外より粒子濃度がかなり低ければ空気清浄化手段を弱動作させるか停止させても良いと判定できる。
従って、本第6形態の建物内空気浄化支援システムにより、当該空気状態判定手段による判定に基づいて制御部の情報提供手段は、発音手段又は表示手段によりユーザーに建物の窓の開閉や換気扇(空気清浄化手段の一つ)の動作の指示や外出の可否等の情報提供を行うことができる。また、当該判定に基づいて制御部のオンオフ駆動手段は空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信して空気清浄化手段をオンオフ動作させて建物内の空気浄化を効率的に行うことができる。
【0036】
本発明の第7の形態によれば、制御部は記憶手段を有し、当該記憶手段は、制御部が微粒子計測器から受信した計測粒子情報を記憶し、制御部は、計測粒子情報を記憶手段から読み出して外部装置に送信できる建物内空気浄化支援システムを提供することができる。
当該記憶手段は制御部と一体に構成されても良いし、制御部と別体に構成されても良い。微粒子計測器が例えば1分ごとに計測粒子情報を出力すると、記憶手段は多くの計測粒子情報を記憶することになり、しかも計測を1年間続けるとすると、更に膨大な計測粒子情報を記憶することになる。これらの膨大な計測粒子情報を、例えば外部装置の一種であるコンピュータに送信すると、当該コンピュータを用いて空気浮遊粒子の挙動に関する分析研究を行うことができる。
従って、本第7形態の建物内空気浄化支援システムは、記憶手段が記憶した膨大な計測粒子情報を外部装置に送信して科学研究等に貢献することが可能になる等の作用効果を有する。
【0037】
本発明の第8の形態によれば、外部装置はネットワークを介して制御部と双方向に通信可能に構成されており、外部装置は、制御部を介して、記憶装置に記憶された建物内又は建物外の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信することができる建物内空気浄化支援システムを提供することができる。
外部装置が外部の研究所が有するコンピュータであるとすると、当該コンピュータは記憶装置に記憶された建物内外の微粒子計測器に係る計測粒子情報をネットワークを介して自動的に受信することができる。当該研究所をして建物内外の計測粒子情報を駆使して空気中浮遊粒子に関する科学研究を強力に前進させることができる作用効果がある。また、外部装置は汎用のコンピュータ以外にも専用の解析装置など種々存在するから、建物内外の計測粒子情報を使った各種科学研究にも貢献できる事は言うまでもない。
【0038】
本発明の第9の形態によれば、複数の建物が地域的に散在していることが特徴である。地域的とは、同じ市町村内でも良いし、同じ都道府県内でも良いし、日本全国でも良い。複数とは2以上であれば良く上限はない。
夫々の建物の建物内には1台以上の微粒子計測器が配置されており、微粒子計測器は、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測することができる。なお、微粒子計測器が用いる種々の体積概念、粒径区分概念及び粒子質量概念については、本発明の第1の形態について記載したところと同様である。
また、夫々の前記建物の建物内に1台以上の空気清浄化手段が配置されている。当該空気清浄化手段には、後述するように、例えば空気清浄機、エアコン、換気扇、換気用ダクト、サーキュレータ等の室内の微粒子数を減少させる空気清浄化装置が含まれる。
【0039】
また、本発明の第9の形態において、前記建物の建物内又は建物外に制御部が配置されている。制御部には、制御回路単体、パソコン、タブレット、スマートフォン等が含まれる。当該制御部と微粒子計測器がネットワークを介して双方向に通信可能に構成されている。当該制御部は、微粒子計測器と一体化されていても良いし、微粒子計測器と別体に配置されていても良い。同時に、当該制御部と空気清浄化手段がネットワークを介して通信可能に構成されている。
上記ネットワークは無線ネットワーク、有線ネットワークや回路結線でも良く、無線ネットワークとしてはインターネット、イントラネット等の無線通信を用いたネットワークであれば何でも構わない。
夫々の前記建物では、微粒子計測器は計測した建物内の粒子情報である計測粒子情報を制御部に送信し、当該計測粒子情報に基づいて制御部のオンオフ駆動手段が空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信し、当該オンオフ制御信号を受信して空気清浄化手段がオンオフ動作して建物内の空気を自動的に浄化することができる。
オンオフ動作とは、オン動作とオフ動作のいずれかであり、オン動作には単一強度動作だけでなく、例えば強動作・中動作・弱動作のように複数段階のオン動作を含んでも良い。従って、オンオフ制御とはオン制御とオフ制御のいずれかであり、オン制御には単一強度制御だけでなく、例えば強制御・中制御・弱制御のように複数強度段階のオン制御を含んでも良い。
本第9形態の特徴は、地域的に散在する複数の夫々の建物において、微粒子計測器が計測した建物内の粒子情報である計測粒子情報を制御部に送信し、計測粒子情報に基づいて制御部が空気清浄化手段にオンオフ制御信号を送信し、オンオフ制御信号を受信して空気清浄化手段がオンオフ動作して建物内の空気の浄化を自動的に実行する建物内空気浄化支援システムを提供することである。従って、微粒子計測器と制御部と空気清浄化手段が配置されてネットワークを介して通信可能に構成され、夫々の建物内の空気の浄化を自動的に実行して建物内を常に清潔に保持し、環境にも衛生にも良好であり、居住者の健康を守るという作用効果を有する。
【0040】
更に、本発明の第9の形態においては、夫々の建物の制御部を全体的に統括する広域制御部が本部に配置され、当該広域制御部と夫々の建物の制御部はネットワークを介して双方向に通信可能に構成され、当該ネットワークにより夫々の建物の制御部を介して、広域制御部は、夫々の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信し、且つ夫々の建物の空気清浄化手段に関する情報を受信でき、更に、広域制御部は広域記憶手段を有し、当該広域記憶手段は、夫々の建物の前記制御部から受信した、当該建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報、及び、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報を、計測時刻又は受信時刻とともに時系列で記憶する建物内空気浄化支援システムを提供することができる。
上記ネットワークは、地域が狭い場合には無線ネットワークでも有線ネットワークでも良いが、地域が広くなると無線ネットワークが有効になる。無線ネットワークとしてはイ
ンターネット、イントラネット等の無線通信を用いたネットワークであれば何でも構わない。
本第9形態の建物内空気浄化支援システムによれば、夫々の建物を本部により全体的に統括するために、夫々の建物の微粒子計測器と空気清浄化手段は本部により集中管理される。そして、夫々の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報と、夫々の建物の空気清浄化手段に関する情報は、夫々の建物の夫々の制御部を介して本部の広域制御部により全体的に把握可能であるという作用効果を有する。
【0041】
本発明の第10の形態によれば、夫々の建物の空気清浄化手段がフィルタを内蔵している場合に、前記広域制御部は、夫々の建物の制御部から受信した前記計測粒子情報から夫々の建物の空気清浄化手段のフィルタの汚濁度を判定する汚濁度判定手段を有する。広域制御部は、当該汚濁度判定手段により判定された汚濁度が設定された閾汚濁度に到達したと判断されると、フィルタを新品のフィルタに交換せよとの交換情報を夫々の制御部に送信したり、及び/又は目の異なる最適なフィルタに変更せよとの変更情報を夫々の制御部に送信する情報送信手段を有する。したがって本形態によれば、全体のフィルタ群を個別に管理可能な建物内空気浄化支援システムが提供される。
【0042】
本発明の第11の形態によれば、前記空気清浄化手段がフィルタを内蔵している場合に、前記広域制御部は、前記広域記憶手段に記憶された、当該空気清浄化手段に係る建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列、及び、当該空気清浄化手段に関する情報の時系列に基づいて、前記フィルタの汚濁度を判定する汚濁度判定手段と、前記フィルタの交換時期を予測する交換時期予測手段と、を有する建物内空気浄化支援システムを提供できる。本第11形態によれば、汚濁度判定手段によって判定された、地域内の建物の各空気清浄化手段が内蔵するフィルタの汚濁度をリアルタイムで、地域内の建物に人が出向くことなく本部において把握できるから省力化につながる。また、地域内の建物の各空気清浄化手段が内蔵するフィルタの交換時期を予測できるから、公知の在庫管理システム等と組み合わせて、本部が準備する交換用フィルタの在庫量を常に最適に管理することが容易になる。
【0043】
本第11形態において、フィルタの汚濁度を判定する方法及びその交換時期を予測する方法には、その精度に応じて種々の方法があり得る。
1つの方法は、当該フィルタを内蔵する空気清浄化手段に係る建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列から、粒径区分ごとの粒子数又は粒子質量の積算値(時間積分値)を求め、その建物のすべての微粒子計測器について粒径区分ごとの前記積算値の平均値又は重み付き平均値を求め、当該平均値又は重み付き平均値を、前記フィルタの種類に応じて粒径区分ごとに予め設けられている閾積算値で割り算して得られる比の値を求め、粒径区分ごとに求めた当該比の値の最大値をフィルタの汚濁度と判定するものである。未使用のフィルタの汚濁度は0であり、使用中のフィルタの汚濁度は0以上であり、交換が必要なフィルタの汚濁度は1以上である。フィルタの交換時期を予測するには、例えば、上記のようにして時々刻々求めた当該フィルタの汚濁度を時刻の関数として1次関数で近似し、当該1次関数の値が1や0.9等の所定の値を超える日時をフィルタの交換時期とする。
より精度の高い別の方法は、広域記憶手段に記憶された、当該フィルタを内蔵する空気清浄化手段に係る情報の時系列から、当該フィルタを単位時間あたりに通過した空気の流量の時系列を求めておき、また、当該空気清浄化手段に係る建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列から、粒径区分ごとに、当該建物のすべての微粒子計測器についての単位体積当たりの粒子数又は粒子質量の平均値又は重み付き平均値の時系列を求めておき、前記空気の流量の時系列と、前記平均値又は重み付き平均値の時系列とを項ごとに掛け算して得られる時系列(以下では、通過粒子数又は通過粒子質量の時系列と呼ぶ)を粒径区分ごとに求め、この通過粒子数又は通過粒子質量の時系列から、粒径区分ごとに、通
過粒子数又は通過粒子質量の積算値(時間積分値)を求め、当該積算値を、前記フィルタの種類に応じて粒径区分ごとに予め設けられている閾積算値で割り算して得られる比の値を求め、粒径区分ごとに求めた当該比の値の最大値をフィルタの汚濁度と判定するものである。こうして求めたフィルタの汚濁度の時系列から、フィルタの交換時期を予測する方法は、前記の方法と同様である。
【0044】
本発明の第12の形態によれば、前記広域制御部は、前記広域記憶手段に記憶された、ある前記建物の各微粒子計測器に係る計測粒子情報の時系列、及び、当該建物の各空気清浄化手段に関する情報の時系列に基づいて、当該建物に設置すべき空気清浄化手段の能力やフィルタの種類に関する提案を行う提案手段を有する建物内空気浄化支援システムを提供できる。本第12形態によれば、ある建物に浮遊する微粒子の状態からみて現在設置されている空気清浄化手段が浄化能力やエネルギー効率の点で適切でなければ、最適な浄化能力やエネルギー効率を持った代替の空気清浄化手段を提案することができ、また、ある建物に最適な空気清浄化手段が設置されているにも関わらず浮遊する微粒子の状態が改善しない場合には、フィルタの交換や種類の変更を提案することができるから、個々の建物の状況に合致した建物内空気浄化の支援を効率的に行うことができる。
【0045】
本発明の第13の形態によれば、広域制御部は広域記憶手段を有し、当該広域記憶手段は、夫々の建物の制御部から受信した夫々の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報を記憶し、前記広域制御部は、夫々の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報を広域記憶手段から読み出して広域外部装置に送信することができる建物内空気浄化支援システムを提供することができる。
勿論、各建物の制御部にも個別の記憶手段を配置して、同じ建物に係る微粒子計測器が計測した計測粒子情報を個別の記憶手段に記憶させて蓄積することができることは云うまでもない。
夫々の建物の微粒子計測器が例えば1分ごとに計測粒子情報を出力すると、広域記憶手段は夫々の建物毎に非常に多くの計測粒子情報を記憶することになり、しかも計測を1年間続けるとすると、更に膨大な計測粒子情報を記憶することになる。これらの膨大な計測粒子情報を、例えば広域外部装置の一種であるコンピュータに送信すると、当該コンピュータを用いて建物が散在する地域全体に関する空気中浮遊粒子の分析研究を行うことができる。
従って、本第13形態の建物内空気浄化支援システムは、広域記憶手段が記憶した膨大な計測粒子情報を広域制御部が読み出して広域外部装置に送信して科学研究等に貢献することが可能になる等の作用効果を有する。
【0046】
本発明の第14の形態によれば、広域外部装置はネットワークを介して広域制御部と双方向に通信可能に構成されており、広域外部装置は、広域制御部を介して、広域記憶手段に記憶された夫々の建物内外の微粒子計測器に係る計測粒子情報を受信することができる建物内空気浄化支援システムを提供することができる。
例えば、広域外部装置が外部の研究所が有するコンピュータであるとすると、当該コンピュータは広域記憶手段に記憶された多数の建物内外の微粒子計測器に係る計測粒子情報を、ネットワークを介して自動的に受信することができる。当該研究所は、上記コンピュータを用いて地域的に散在する建物内外の計測粒子情報を駆使して地域全体の空気中浮遊粒子に関する分析研究を強力に前進させることができる。また、広域外部装置は汎用のコンピュータ以外にも専用の分析装置など種々存在するから、地域的に散在する建物内外の計測粒子情報を使った各種科学研究にも貢献できる事は言うまでもない。
【0047】
本発明の第15の形態によれば、空気清浄化手段が空気清浄機、エアコン、換気扇、換気用ダクト又はサーキュレータから適宜に選択される建物内空気浄化支援システムを提供することができる。
空気清浄機は空気を清浄化する機種であれば何でもよく、例えば加湿型、光触媒型、オゾン型、プラズマ型や単純フィルタ型など各種が存在する。エアコンは主として温度制御型であるが、空気清浄機能を有するエアコンも包含される。換気扇は排気型・吸引型・吸排気型のどれでも良い。換気用ダクトには、排気ダクト・吸気ダクト・吸排気ダクトのどれでも良く、用途に応じて厨房ダクト・フレキシブルダクト・排煙ダクトなど各種使用できる。サーキュレータは空気循環用の扇風機と考えてよいが、ここでは通常の扇風機も包含する概念であり、空気循環のみならず空気の吸排気装置の一種である。サーキュレータは通常、エアコンや換気扇、換気用ダクト等の他の空気清浄化手段との併用や、窓の開放等の空気の吸排気操作との併用により、空気浄化効果を発揮する。
【0048】
本発明の第16の形態によれば、前記微粒子計測器は常時計測状態に設定されて建物内の粒子情報を常時送信する建物内空気浄化支援システムを提供することができる。微粒子計測器を常時計測状態、即ち24時間計測状態に設定しておけば、昼間夜中を通して建物内外の空気中粒子濃度を例えば1分間隔で休まず計測できるから、建物内の空気清浄化手段を24時間オンオフ制御して建物内の空気を常時正常に保持して、居住者の健康増進に一層貢献できる作用効果を有する。
【0049】
本発明の第17の形態によれば、前記微粒子計測器は更にCO2濃度センサ、温度センサ及び湿度センサを有し、前記計測粒子情報に加えて、これらのセンサにより計測されたCO2濃度、温度及び湿度を常時送信する建物内空気浄化支援システムを提供できる。微粒子計測器が、計測粒子情報に加えて、CO2濃度、温度及び湿度を常時送信するから、送信されたこれらのデータを受信した制御部又は広域制御部は、建物内に浮遊する微粒子を減少させるためにとるべき手段についてより正確に判定できる。例えば、計測粒子情報において、カビに該当するPM2.5の粒径区分の粒子数又は粒子質量が多い場合、湿度が低ければ、制御部は空気清浄機にオン信号を送信するだけでよいが、湿度が高ければ、それに加えて、除湿器にオン信号を送信することが好ましい。
また、例えば、計測粒子情報において各粒径区分の粒子数又は粒子質量が一斉に急増し、かつ温度とCO2濃度がともに急増している場合には、建物内に火災が発生して煙が充満している可能性がある。本第17形態は、このような異常な状況を検知して本部のユーザー等に報知する手段を容易に付設することが可能な利点がある。
【0050】
本発明の第18の形態によれば、第8形態の建物内空気浄化支援システムにおいて、1つ以上の建物の微粒子計測器に係る計測粒子情報を、コンピュータにより読み出し可能な形態で記録したことを特徴とする記録媒体を提供することができる。
地域的に散在する複数の建物の計測粒子情報を集めると、その地域全体の建物内外の空気中粒子濃度状態が判定できるから、これらの計測粒子情報を記録媒体に読み出し可能に記録しておけば、この記録媒体を入手した人達が地域全体の計測粒子情報を分析研究等の各種用途に利用することが可能になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、一つの建物1の建物内に微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5を配置した全体説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、一つの建物1の建物内に微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5を配置し、且つ建物外にも微粒子計測器2Xを配置した全体説明図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、大型建物からなる一つの建物1の建物内に制御部4と複数台の微粒子計測器2と複数台の空気清浄化手段5を配置した全体説明図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、地域的に分散した複数の建物1を広域制御部11で管理し、各建物1の建物内又は建物外に配置された微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5をネットワークNで双方向通信可能にした全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、本発明に係る建物内空気浄化支援システムの実施形態を図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、一つの建物1の建物内に微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5を配置した全体説明図である。
ここで、建物1は、家屋・アパート・マンション・ビル・ホール・劇場・部屋等の建造物を意味する。また、微粒子計測器2は、通常パーティクルカウンタやパーティクルセンサと称される空気中の浮遊粒子に関する測定装置であり、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測することができる。制御部4とは制御装置として動作するものなら何でもよく、制御回路装置、コンピュータ、パソコン、タブレット、スマートフォン等から適宜選択される。更に、空気清浄化手段5とは建物内の空気を清浄化する装置なら何でもよく、空気清浄機・エアコン・換気扇・換気用ダクト・サーキュレータ・扇風機などから状況に応じて適宜選択される。また、前記微粒子計測器2は制御部4と一体化された装置でも良いし、両者が別体として分離した装置でも良い。
【0053】
前記微粒子計測器2において、所定体積とは、単位体積(m3、cm3、L等)に限らず、所定断面積の吸込管から所定時間に吸引された空気体積(例えば28.3L/min)、測定室の容積など微粒子計測器が用いる種々の体積概念が含まれる。また、粒径区分とは、0.3~0.5μm、0.5~1.0μm等の上下限粒径範囲、0.3μm以下、0.5μm以下、1.0μm以下等の下限指定の無い上限粒径範囲や0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上等の上限指定の無い下限粒径範囲など微粒子計測器2が使用する種々の粒径区分概念が存在する。更に、粒子質量とは、0.3~0.5μm、0.5~1.0μm等の上下限粒径範囲内の粒子の総質量、0.3μm以下、0.5μm以下、1.0μm以下等の下限指定の無い上限粒径範囲内の粒子の総質量や0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上等の上限指定の無い下限粒径範囲内の粒子の総質量など微粒子計測器が用いる種々の粒子質量概念が存在する。
微粒子計測器2としては、吸引した空気中の所定体積に浮遊する微粒子について複数段階の粒径区分、各粒径区分の粒子数及び/又は各粒径区分の粒子質量からなる粒子情報を計測することができるものなら、どんな種類の微粒子計測器2でも構わない。
【0054】
前記建物1において、前記微粒子計測器2と前記制御部4はネットワークAを介して双方向に通信可能に構成されている。また、前記空気清浄化手段5と前記制御部4はネットワークBを介して双方向に通信可能に構成されている。更に、制御部4には記憶手段6が付設されており、当該記憶手段6に前記微粒子計測器2により計測された計測粒子情報が蓄積されてゆく。記憶手段6は制御部4とネットワークDにより入出力可能に接続されている。
更に、建物外に存在する外部装置7と前記制御部4はネットワークCを介して双方向に通信可能に構成されている。外部装置7は例えば外部の研究所が有するコンピュータである。外部装置7は記憶装置6に記憶された建物内外の微粒子計測器に係る計測粒子情報をネットワークCを介して自動的に送受信することができる。当該研究所は外部装置7により受信した建物内外の計測粒子情報を駆使して空気中浮遊粒子に関する科学研究を強力に推進することができる。また、外部装置7は汎用のコンピュータ以外にも専用の解析装置など種々存在するから、建物内外の計測粒子情報を使った各種科学研究にも貢献することができる。
【0055】
図1に示されるように、建物1の建物内の粒子情報が微粒子計測器2により計測され、
この計測粒子情報は矢印A1に従い制御部4に送信され、そして矢印Dに従い記憶手段6に記憶される。前記計測粒子情報に基づいて、制御部4からオンオフ制御信号が矢印B1に従い空気清浄化手段5に送信され、この制御信号を受信して空気清浄化手段5はオンオフ動作をして建物1の内部を清浄化する。
また、空気清浄化手段5は矢印B2に従って動作情報を制御部4に送信する。この動作情報に基づくか、又はタイマの経過時間等の基準に基づく独自の判断で制御部4は矢印A2に従い微粒子計測器2に次の計測粒子情報を要請し、微粒子計測器2から矢印A1に従い計測粒子情報を制御部4は受信する。以上の双方向通信が反復されるものである。
更に、制御部4は外部装置7から矢印C2に従い情報提供要請を受けると、制御部4は記憶手段6から矢印Dに従って蓄積した計測粒子情報である計測粒子情報群を受信し、この計測粒子情報群を制御部4は矢印C1に従い外部装置7に送信する。この計測粒子情報群を用いて外部装置7は種々の科学研究のための分析を実行する。
【0056】
図2は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、一つの建物1の建物内に微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5を配置し、且つ建物外にも微粒子計測器2Xを配置した全体説明図である。
建物1、微粒子計測器2、制御部4及び空気清浄化手段5は
図1に説明したと同様であるから、ここでは再説明しない。
図2では、建物外にも微粒子計測器2Xが配置されており、その機能は建物内に配置された微粒子計測器2と同様である。更に、建物内に視覚情報を表示するディスプレイ等の表示手段8が配置され、同時に聴覚情報を発声するスピーカ等の発音手段9が追加配置されている。
建物内の微粒子計測器2は建物内の粒子情報を計測し、制御部4とネットワークAを介して双方向に通信する。建物外の微粒子計測器2Xは建物外の粒子情報を計測し、制御部4とネットワークEを介して双方向に通信する。空気清浄化手段5は建物内の空気を清浄化し、制御部4とネットワークBを介して双方向に通信可能に配置されている。しかし、空気清浄化手段5は制御部4から制御信号を受信して清浄化動作をするだけの場合には、制御部4には送信しなくても良いから、ネットワークBは単方向のネットワークであっても良い。表示手段8及び発音手段9は制御部4の制御信号により夫々表示及び発音するだけであるから、ネットワークG、Fは単方向ネットワークでも良い。
ネットワークA、Bについては
図1と同様であるから、矢印A1・A2及び矢印B1・B2については再説明しない。建物外の微粒子計測器2Xは建物外の空気中の粒子情報を計測して、制御部4に矢印E1に従って計測粒子情報を送信し、制御部4は建物外の微粒子計測器2Xに矢印E2に従って次の計測粒子情報を要請する。
制御部4は、建物外の計測粒子情報と建物内の計測粒子情報に基づいて建物内外の空気の状態を判定する空気状態判別手段を有する。詳細には、建物1の内外の計測粒子情報に基づいて、建物内が建物外より粒子濃度が高ければ、窓を開けて建物内の粒子を排出する方が効率的であり、建物内が建物外とほぼ同じ粒子濃度であれば空気清浄化手段5を強動作させて建物内粒子濃度を急速低下させることができ、建物内が建物外より粒子濃度がかなり低ければ空気清浄化手段5を弱動作させるか停止させても良いと判定できる。
当該空気判定手段による判定に基づいて制御部4は、発音手段9又は表示手段8によりユーザーに建物1の窓の開閉や換気扇(空気清浄化手段の一つ)の動作の指示や外出の可否(例えば、建物外の花粉量が多ければアレルギーをもつ居住者は外出を控えるべきであろう)等の情報提供を行うことができる。また、上記判定に基づいて制御部4は空気清浄化手段5にオンオフ制御信号を送信して空気清浄化手段5をオンオフ動作させて建物内の空気浄化を効率的に行うことができる。
【0057】
図3は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、大型建物からなる一つの建物1の建物内に制御部4と複数台の微粒子計測器2と複数台の空気清浄化手段5を配置した全体説明図である。
建物1がコンサートホールや劇場等の大型建物の場合に、建物内に複数台の微粒子計測
器2と複数台の空気清浄化手段5が配置される。制御部4と複数台の微粒子計測器2とはネットワークAを介して相互に通信可能に構成されている。また、制御部4と複数台の空気清浄化手段5とはネットワークBを介して相互に通信可能に構成されている。ネットワークAとネットワークBは単一のネットワークを構成していてもよい。
複数台の微粒子計測器2から送信される計測粒子情報に基づいて、制御部4の好適オンオフ駆動手段は、当該大型建物の内部における空気浄化を効率的に行うために複数台の空気清浄化手段5の好適オンオフ駆動状態を自動的に導出する。ここで、好適オンオフ駆動状態とは、建物内の空気流を好適化し、好適な空気流れ分布10に誘導する駆動状態である。また、「空気浄化を効率的に行う」とは、空気浄化効率の大きなオンオフ駆動状態を実現することであり、ここで「空気浄化効率」は、例えば、建物内に配置された複数台の微粒子計測器の各々における、特定の粒径区分又はすべての粒径区分の吸気単位体積当たりの計測粒子数又は計測粒子質量の総和の時間減少率を、配置された複数台の空気清浄化手段における総消費電力で割った値として定めることができる。
制御部4の好適オンオフ駆動手段は、当該好適オンオフ駆動状態を実現するように複数台の空気清浄化手段5の夫々に対しオンオフ制御信号を送信し、当該オンオフ制御信号を受信して空気清浄化手段5の夫々がオンオフ動作する。その結果、建物内の空気流が好適化されて好適な空気流れ分布10が形成され、空気浄化が効率的に実行される。前述したように、オンオフ制御信号の中でオン制御信号とは、単一強度制御信号だけでなく、例えば強制御信号・中制御信号・弱制御信号のように複数強度段階のオン制御信号を含む概念である。
【0058】
図4は、本発明に係る建物内空気浄化支援システムにおいて、地域的に分散した複数の建物1を広域制御部11で管理し、各建物1の建物内に配置された微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5をネットワークNを介して双方向通信可能に構成した全体説明図である。
図4において、ネットワークNには複数の建物1が地域的に分散して配置されている。夫々の建物1の建物内には、微粒子計測器2と制御部4と空気清浄化手段5が配置されている。建物1の建物外には、微粒子計測器2Xが配置されていてもよい。微粒子計測器2と制御部4はネットワークAを介して相互に通信可能に構成され、空気清浄化手段5と制御部4はネットワークBを介して相互に通信可能に構成されている。微粒子計測器2Xと制御部4はネットワークEを介して相互に通信可能に構成されている。これら部材の配置と接続と相互通信は
図1~
図3と同様であるから、再説明を省略する。
図4においては、夫々の建物1の制御部4はネットワークHとネットワークNを介して全体的に統括する本部の広域制御部11と相互通信可能に構成されている。広域制御部11は、夫々の建物1の微粒子計測器2に係る計測粒子情報を受信し、且つ夫々の建物1の空気清浄化手段5に関する情報を受信することができる。ネットワークN及びネットワークHは、地域が狭い場合には無線ネットワークでも有線ネットワークでも良いが、地域が広くなると無線ネットワークが有効になる。無線ネットワークとしてはインターネット、イントラネット等の無線通信を用いたネットワークであれば何でも構わない。
従って、夫々の建物1は本部により全体的に統括され、夫々の建物1の微粒子計測器2と空気清浄化手段5は本部により集中管理される。そして、夫々の建物1の微粒子計測器2に係る計測粒子情報と、夫々の建物1の空気清浄化手段5に関する情報は、夫々の建物1の夫々の制御部4を介して本部の広域制御部11が受信可能であるから、全情報が本部により把握可能である。
【0059】
広域制御部11はネットワークLを介して広域記憶手段12と相互通信可能に構成されている。広域記憶手段12は、夫々の建物1の制御部4から受信した夫々の建物1の微粒子計測器2に係る計測粒子情報を記憶する。広域制御部11は、夫々の建物1の微粒子計測器2に係る計測粒子情報を広域記憶手段12から読み出して広域外部装置13に送信することができる。
勿論、各建物1の制御部4にも個別の記憶手段6を配置して、同じ建物内の微粒子計測器2が計測した計測粒子情報を個別の記憶手段6に記憶させて蓄積することができることは云うまでもない。
広域記憶手段12は夫々の建物毎に非常に多くの計測粒子情報を記憶することになり、これらの膨大な計測粒子情報を、例えば外部の研究所が有する広域外部装置13の一種であるコンピュータに送信すると、当該研究所はこのコンピュータを用いて建物1が散在する地域全体に関する空気中浮遊粒子の分析研究を行うことができる。
【0060】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述したように、本発明は、家屋・アパート・マンション・ビル・ホール・劇場・部屋等からなる建物において、単一又は複数の建物の建物内外に、空気中に浮遊する微粒子を計測する微粒子計測器を配置し、同時に空気中の微粒子を減少させて清浄化する空気清浄化手段と制御部を配置し、制御部と微粒子計測器と空気清浄化手段とをネットワークを介して通信可能にすることにより、建物内の空気の浮遊微粒子による汚濁程度を判定しながら自動的に建物内の空気を清浄化する建物内空気浄化支援システムを提供するものである。従って、単一の建物内又は地域的に散在した複数の建物内の空気を清浄化して居住者が安心して健康に過ごすことができる清浄化事業を積極的に推進することが可能になる。
また、それぞれ微粒子計測器、空気清浄化手段及び制御部を備えた複数の建物が地域的に散在しており、各建物の制御部とネットワークを介して相互に通信可能な広域制御部が本部に設けられている場合には、各建物にスタッフが赴くことなく、広域制御部が計測粒子情報に基づいてリアルタイムに各建物の空気清浄化手段のフィルタの汚濁度を把握・可視化するとともに、フィルタの交換時期を予測して、本部はその予測を適切なフィルタの在庫管理に役立てることができる。本発明は、空気清浄化手段の機器や交換部品の在庫の最適化を支援することで地域の建物内の空気浄化を効率的に実施する助けとなり、新たな健康産業の創出を促進することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 建物
2 微粒子計測器
2X 建物外の微粒子計測器
4 制御部
5 空気清浄化手段
6 記憶手段
7 外部装置
8 表示手段
9 発音手段
10 好適な空気流れ分布
11 広域制御部
12 広域記憶手段
13 広域外部装置