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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167712
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電磁機器の鉄心
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/25 20060101AFI20221027BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20221027BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01F27/25
H01F27/245
H01F41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073697
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹中 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 千絵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊明
(72)【発明者】
【氏名】中島 晶
【テーマコード(参考)】
5E062
【Fターム(参考)】
5E062AB19
(57)【要約】
【課題】
軟磁性薄板を用いた鉄心において、組み立てなどによって印加される圧縮応力が鉄損の増加を引き起すため、製造工程において鉄損特性を測定しながら作業が可能な電磁機器の鉄心を提供する。
【解決手段】
軟磁性薄板を積層して構成した電磁機器の鉄心であって、軟磁性薄板に接触するように挟み込まれ一部が外に露出するように配置された導電性の薄板からなる抵抗測定用端子を備え、抵抗測定用端子は切り離し線を有する構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性薄板を積層して構成した電磁機器の鉄心であって、
前記軟磁性薄板に接触するように挟み込まれ一部が外に露出するように配置された導電性の薄板からなる抵抗測定用端子を備え、
前記抵抗測定用端子は切り離し線を有することを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記切り離し線は、前記抵抗測定用端子の鉄心の外に露出している部分を前記軟磁性薄板に挟み込まれている接触部分から切り離すことができるように構成されていることを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記鉄心の最外層には絶縁材料が巻回されており、
前記抵抗測定用端子は前記絶縁材料よりも内側の前記軟磁性薄板に接触するように挟み込まれていることを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記抵抗測定用端子を2枚有することを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記切り離し線は厚み方向に貫通する穴を連続的に並べることで構成された点線状の切り離し線であることを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項6】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記切り離し線は溝状の切り離し線であることを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項7】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記鉄心は、前記抵抗測定用端子を前記切り離し線により切り離した後の鉄心断面を覆うように巻回した絶縁材料を有することを特徴とする電磁機器の鉄心。
【請求項8】
請求項1に記載の電磁機器の鉄心において、
前記抵抗測定用端子は、前記鉄心と同一の材料から切り出された導電性の薄板であることを特徴とする電磁機器の鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁機器の鉄損測定に係わり、特に、製造工程の中で鉄損を測定することができる電磁機器の鉄心構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧器や電動機をはじめとする電磁機器の鉄心には、主にケイ素鋼板やアモルファスを代表とする軟磁性薄板が広く使用されている。昨今では、電磁機器の小型化や高周波数化が進んでおり、これら鉄心の鉄損特性に対する要求は厳しくなっている。一般に、軟磁性薄板によって鉄心を構成する際には、渦電流損失を低減するために薄板を積層する構造を採るが、鉄心に圧縮応力が印加されると鉄損が増加する。そこで、従来、軟磁性薄板を用いた鉄心の鉄損特性について、製品出荷前に鉄心を実際に励磁して鉄損特性を検査するなどの対策が採られている。
【0003】
本技術分野における背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、鉄心の最外層薄板間の層間抵抗値を測定することで鉄損特性を検査する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-256064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、実際の製造工程において、鉄心の最外層が絶縁紙や絶縁被膜等の絶縁材料で覆われている場合には抵抗値が測定できない。特に、ケイ素鋼板は絶縁を保つために絶縁被膜を生成して使用し、アモルファス材料は薄く破片が生じやすいため絶縁紙で鉄心全体を保護することが多い。
【0006】
また、軟磁性薄板を用いた鉄心において、鉄心と巻線の組み立てなどによって印加される圧縮応力が鉄損の増加を引き起こす。製品組み立て後に鉄心を実際に励磁して鉄損特性を測定する場合、測定で鉄損特性の著しい悪化が確認された際には、鉄心の作り直しや、製品を分解したのち再度組み立て直すなどの作業が必要となり、多大な作業時間と人的コストが発生する。そこで、製造工程において鉄損特性を測定しながら作業ができるような測定法が求められている。
【0007】
これに対して、特許文献1の鉄損測定法は、あくまで鉄心製作における鉄損特性のバラつきを検証するための方法であり、実際の製造工程における作業中に鉄損を測定することは考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を鑑み、製造工程における作業中に鉄損を測定可能な電磁機器の鉄心を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その一例を挙げるならば、軟磁性薄板を積層して構成した電磁機器の鉄心であって、軟磁性薄板に接触するように挟み込まれ一部が外に露出するように配置された導電性の薄板からなる抵抗測定用端子を備え、抵抗測定用端子は切り離し線を有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造工程における作業中に鉄損を測定可能な電磁機器の鉄心を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における静止誘導電器用の巻鉄心の概略外観図である。
図2】実施例1における点線状の切り離し線を有する抵抗測定用端子を示す図である。
図3】実施例1における溝状の切り離し線を有する抵抗測定用端子を示す図である。
図4】実施例1における鉄心において接触端子が挟みこまれた部分の積層面を示す図である。
図5】実施例1における抵抗測定用端子を切り離した後の鉄心における絶縁材料の巻回し方法を説明する図である。
図6】実施例1における層間抵抗値の測定方法を説明する図である。
図7】実施例2における静止誘導電器用の積鉄心の概略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0013】
図1は、本実施例における静止誘導電器用の巻鉄心の概略外観図である。図1において、鉄心1は積層された軟磁性薄板からなる巻鉄心であり、2つの抵抗測定用端子2a、2bを備える。鉄心1の最外層には絶縁紙などの絶縁材料3が巻回され、このとき、抵抗測定用端子2a、2bは軟磁性薄板に接触するように挟み込まれ一部が鉄心1の外に露出するように構成される。また、鉄心1には巻線4が巻回される。
【0014】
図2は、本実施例における抵抗測定用端子の構成を示す図である。図2においては、抵抗測定用端子2aのみを示すが、抵抗測定用端子2bについては、2aと同様の構成であるので省略する。図2(A)において、抵抗測定用端子2aは、軟磁性薄板と接触している部分を接触端子6aとして区別して説明するが、抵抗測定用端子2aと接触端子6aは同一材料から切り出され一体であって、導電性の材料で構成される。
【0015】
接触端子6aは鉄心1の中に挟み込まれ、軟磁性薄板と同様の磁界が印加されるので、磁界の不均一を避けるためにも、接触端子6aには軟磁性薄板と近しい透磁率の材料、または同一の材料を使用することが望ましい。また、鉄心の層間抵抗値を正しく測定するために、接触端子6aと抵抗測定用端子2aには、導電率が高い材料、または、鉄心と同一の材料を使用することが望ましい。
【0016】
抵抗測定用端子2aと接触端子6aの間には点線状の切り離し線5が設けられ、切り離し線5に沿ってはさみ等で切りとる、または折り曲げや引張りの力を加えることで、抵抗測定用端子2aの鉄心1の外に露出している部分を接触端子6aから切り離すことができるように構成される。
【0017】
切り離し線5と平行な方向における抵抗測定用端子2aの長さL1と、接触端子6aの長さL2について特に制限はないが、長さL1は抵抗測定器の測定端子が接続できる程度の幅が必要であり、接触端子6aの長さL2はできるだけ長い方が、鉄心1を構成する軟磁性薄板との接触面積が広くなり、測定する層間抵抗値に対する接触端子6aと軟磁性薄板との接触抵抗の影響が小さくなるので好ましい。また、抵抗測定用端子2aの長さL1と、接触端子6aの長さL2を等しくした場合には、切り出しなど抵抗測定用端子の加工にかかる手間を削減することができる。
【0018】
図2(B)は、図2(A)におけるA-A’ラインの断面図である。点線状の切り離し線5は抵抗測定用端子2aの厚み方向に貫通する穴を連続的に並べることで構成される。ここで、切り離し線5の穴を配置する間隔を狭くする、または穴の面積を大きくした場合には抵抗測定用端子2aが切り離しやすくなる。
【0019】
図3は、本実施例における抵抗測定用端子の他の構成を示す図である。図3において、図2と同じ構成には同じ符号を付しその説明は省略する。図3において、図2と異なる点は、抵抗測定用端子2aと接触端子6aの切り離し線7を溝状に構成した点である。
【0020】
図3(A)は、抵抗測定用端子2aと接触端子6aの切り離し線7が溝状に構成した例を示し、図3(B)は、図3(A)におけるB-B’ラインの断面図である。切り離し線7の溝の深さを深くする、または溝の幅を広くすることで抵抗測定用端子2aの鉄心1の外に露出している部分を切り離しやすくなる。
【0021】
図4は、鉄心1において接触端子6a、6bが挟みこまれた部分の積層面を示す図である。図4に示すように、鉄心1は、鉄心1を構成する軟磁性薄板と同様の積層方向で接触端子6a、6bを挟みこみ、さらには、接触端子6a、6bが積層方向において最外層の絶縁材料3よりも内側の最低一面の軟磁性薄板に接触するように積層して構成される。
【0022】
抵抗測定用端子2a、2bの接触端子6a、6bの挿入位置は、できるだけ鉄心の積層方向の両最外層側として、抵抗測定用端子2a、2b間の抵抗値が大きくなる位置がよく、抵抗値の変化が見やすい位置とするのが望ましい。
【0023】
抵抗測定用端子2a、2bにおいては、それぞれ接触端子6a、6bとの切り離し線が鉄心1の外部に露出しており、鉄心と巻線の組み立てが完了するなどして、層間抵抗の測定が不要となった後には、抵抗測定用端子2a、2bの鉄心1の外に露出している部分を切り離し線から切り離すことができるように構成される。製造工程の中で抵抗測定用端子を切り離すタイミングは任意である。
【0024】
図5は、本実施例における抵抗測定用端子2a、2bを切り離した後における、鉄心1への絶縁材料の巻回し方法を説明する図である。図5(A)に示すように、抵抗測定用端子2a、2bは鉄心1の外に露出するように構成されており、抵抗測定用端子2a、2bを切り離した後、それぞれ接触端子6a、6bの切り離し断面には絶縁材料3が巻回されておらず鉄心1の外に露出している。そこで、図5(B)に示すように、鉄心1において絶縁材料3が巻回されずに露出している部分を覆うような、十分な面積をもつ露出部保護用の絶縁材料8を使用し、図5(C)のように、露出部を絶縁材料8で覆うように巻回する。これにより、鉄心1について、抵抗測定用端子を備えない一般的な鉄心と同様の取り扱いができる。
【0025】
図6は、本実施例における層間抵抗値の測定方法を説明する図である。図6に示すように、鉄心1から露出している抵抗測定用端子2a、2bに、抵抗計またはマルチメータ、あるいはLCRメータなど、抵抗測定機器9の端子を接続することで、逐次層間抵抗値を測定しながら製造工程における作業が可能となる。あらかじめ予備測定によって層間抵抗値と鉄損の関係を求めておくことで、本実施例における電磁機器の鉄心構造によって鉄損が測定できる。なお、例えば4端子法で抵抗を測定する等の場合を想定し、抵抗測定用端子は2枚に限定されず、4枚でもその他の枚数でもよい。
【0026】
また、本実施例によれば、鉄心の焼鈍前後で抵抗測定用端子2a、2bによって層間抵抗を測定し層間抵抗の変化を見ることで、焼鈍中に生じた材料の焼き付きを検出することができる。アモルファス材料などの厚みが薄い軟磁性薄板を積層して構成した鉄心においては、焼鈍によって軟磁性薄板同士が一部固着する可能性がある。固着した部分は抵抗値が著しく低下するため、電流が流れやすくなり鉄損の増加につながる。そのため、焼鈍後の層間抵抗値が焼鈍前に比べて著しく低下している場合は、焼き付きが発生したと判断することができるため、焼き付いた部分を探して固着を引きはがすなどの対応が可能となる。
【0027】
以上のように、本実施例によれば、鉄心の最外層の絶縁材料よりも内側の軟磁性薄板に接触するように挟み込まれた層間抵抗を測定するための抵抗測定用端子を備え、最外層が絶縁材料である鉄心においても、製造工程の作業中に層間抵抗値を測定しながら鉄心の鉄損特性を容易に検査することが可能な電磁機器の鉄心を提供できる。また、鉄心と巻線の組み立てが完了し、鉄損特性に問題が無いことを確認した後、余分な突出部が生じないように、鉄心から抵抗測定用端子を切り離しすることができるように、抵抗測定用端子は切り離し線を有している。
【実施例0028】
図7は、本実施例における静止誘導電器用の積鉄心の概略外観図である。図7に示すように、本実施例の鉄心1は2つの抵抗測定用端子2a、2bを備える。鉄心1の積層方向における最外層は絶縁被膜などでコーティングされたケイ素鋼板などの絶縁材料3で挟まれており、抵抗測定用端子2a、2bは鉄心1の外に露出するように構成される。また、抵抗測定用端子2a、2bは、実施例1と同様に、積鉄心に使用される軟磁性薄板により挟み込まれる接触端子6a、6bを有している。
【0029】
一般に、積鉄心に使用される軟磁性薄板は、巻鉄心に使用される軟磁性薄板に比べて厚みが厚く変形しにくいため、接触端子6a、6bの厚みが厚い場合、接触端子6a、6bが挟み込まれた部分付近で鉄心1の積層方向において隙間が生じてしまう。鉄心1は、組み立てにおいて積層方向に対してバンドやボルトなどで締め付けられるが、隙間が生じている場合は圧縮によって隙間が押しつぶされることで軟磁性薄板に曲げ応力が加わり、鉄損特性が悪化する。以上より、鉄心1に挟み込む接触端子6a、6bは作業性を落とさない範囲で厚みが薄い材料を使用することが望ましい。
【0030】
以上のように、本実施例によれば、積鉄心においても、製造工程の作業中に層間抵抗値を測定しながら鉄心の鉄損特性を容易に検査することが可能な電磁機器の鉄心を提供できる。また、鉄心と巻線の組み立て後には余分な突出部が生じないように、本体から切り離し可能な抵抗測定用端子を有する電磁機器の鉄心を提供できる。
【0031】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:鉄心、2a、2b:抵抗測定用端子、3:絶縁材料、4:巻線、5:切り離し線、6a、6b:接触端子、7:切り離し線、8:絶縁材料、9:抵抗測定機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7