(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167718
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】高所作業車のための制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20221027BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B66F9/24 S
B66F11/04
B66F9/24 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073705
(22)【出願日】2021-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】稲田 宏冶
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB03
3F333CA21
3F333FA11
3F333FA21
3F333FA34
3F333FD03
3F333FD15
(57)【要約】
【課題】作業者により操作許可部が操作許可状態で固定される不正行為を抑止することによって、高所作業車を用いて高所作業を行う際に作業者が不注意により高所の構造物(障害物)に衝突したり、作業用バスケットと高所の構造物(障害物)の間に挟まれたりする事故を防ぐことができるようにする。
【解決手段】作業員が搭乗して作業を行うためのバスケット4と、バスケット4を昇降させるリフター3とを備えた高所作業車1の制御システム100において、リフター3を操作するための操作レバー60と、操作レバー60による操作を許可するためのフットスイッチ7と、フットスイッチ7を無効化する無効化信号出力部115とを設ける。無効化信号出力部115による無効化の解除は、作業者がフットスイッチ7を操作することにより行われるようになっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員が搭乗して作業を行うための作業床と、前記作業床を昇降させる昇降機構とを備えた高所作業車の制御システムであって、
前記昇降機構を操作するための操作部と、
前記操作部による操作を許可するための操作許可部と、
前記操作許可部を無効化する無効化手段とを備え、
前記無効化手段による無効化の解除は、作業者が前記操作許可部を操作することにより行われるようになっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記作業床の高さが所定の上限位置に到達したことを検出する位置検出部をさらに備え、
前記無効化手段が、前記位置検出部による検出結果に基づいて前記操作許可部を無効化するようになっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記位置検出部による検出時には、前記無効化手段による前記操作許可部の無効化によって、前記昇降機構が停止するとともに、前記操作部が操作不能になっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記位置検出部による検出時には、前記作業床を前記昇降機構により上昇させる操作に関してのみ、前記操作部が操作不能になっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記無効化手段による無効化の解除は、作業者が前記操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻すことにより行われている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記無効化手段が、前記操作許可部による操作許可の開始時からタイマーにより予め設定された所定時間が経過したとき、前記操作許可部を無効化するようになっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記所定時間が経過する前に前記操作許可部が無効化されたときは、前記タイマーがクリアされるようになっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記操作許可部が前記昇降機構を緊急停止させる緊急停止機能を有している、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記昇降機構の緊急停止時には、前記昇降機構により前記作業床を徐々に下降させる緊急停止処理が行われるようになっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項10】
請求項1に記載の制御システムによる制御方法であって、
前記操作許可部が前記操作部による操作を許可することにより、前記操作部による前記昇降機構の操作を可能にする操作許可ステップと、
前記無効化手段が前記操作許可部を無効化する無効化ステップと、
作業者が前記操作許可部を操作することにより、前記無効化手段による無効化を解除する無効化解除ステップと、
を備えた制御方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記無効化ステップにおいては、前記作業床の高さが所定の上限位置に到達したことが検出されたとき、または、前記操作許可部による操作許可の開始時からタイマーにより予め設定された所定時間が経過したとき、前記無効化手段が前記操作許可部を無効化するようになっている、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項10において、
前記無効化解除ステップにおける無効化の解除は、作業者が前記操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻すことにより行われている、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車のための制御システムおよび制御方法において、高所作業時の安全性を向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや高速道路、橋梁等の建設、船舶の建造、工場等のメンテナンス、電線工事等において、高所での作業用に高所作業車が用いられている。一般に、高所作業車は、作業者が搭乗して作業を行うための作業用バスケットと、作業用バスケットを昇降させる昇降装置(リフター)と、作業用バスケット内に設けられ、昇降装置を操作するための操作部(操作レバー)と、昇降装置が架装された走行可能な走行装置(車体)とを備えている。
【0003】
高所作業車を用いて高所作業を行う際には、高所作業車を所定の位置まで移動させた後、作業者が作業用バスケットに搭乗して操作部により昇降装置を操作することにより、作業用バスケットを所望の高さ位置まで上昇させて作業を行っている。
【0004】
ところで、作業用バスケットが上昇する際には、作業用バスケットに搭乗した作業者が不注意により高所の構造物(障害物)に衝突したり、作業用バスケットと高所の構造物(障害物)との間に挟まれたりする事故が発生する恐れがある。
【0005】
そこで、このような事故を防ぐために、たとえば特許第6274665号公報には、昇降装置により昇降自在なバスケットと、昇降装置を操作する操作装置とを備えた高所作業車において、バスケットと上部障害物との距離を近接センサにより検出し、予め設定していた距離を検出した際に作業者に報知し、緊急停止信号により昇降装置の動作を停止させることにより、バスケットが上部障害物に衝突するのを防止するようにしたものが記載されている(段落[0009]、[0015]、[0016]、[0023]、
図1、
図2参照)。また、同公報に記載のものでは、操作装置と連動する連動フットスイッチが設けられており、作業者が連動フットスイッチを足で踏み込んだ状態にしなければ、操作装置により昇降装置を操作できないように構成されている(段落[0017]、[0029]、
図3参照)。また、同様のフットスイッチを用いる点は、特開2020―75769号公報(段落[0021]~[0022]、
図2参照)や特許第3479442号公報(段落[0013]~[0014]、
図3参照)にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高所作業車においては、上述したように、操作装置により昇降装置を操作するには、作業者が連動フットスイッチ(操作許可部)を足で踏み込んだ状態にする必要がある。ところが、作業者の中には、故意にこの手順を無視し、連動フットスイッチを足で踏み込まずに、たとえばテープ等を用いて連動フットスイッチを踏み込み位置(操作許可状態)で固定するといった危険な不正行為を行う者が存在する。その場合、作業者は連動フットスイッチの傍にいる必要がなく、また危険を感じてフットスイッチから足を離してフットスイッチをオフにすることができないので、高所の構造物に衝突したり挟まれたりする危険性が非常に高くなる。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、作業者により操作許可部が操作許可状態で固定される不正行為を抑止することによって、高所作業車を用いて高所作業を行う際に作業者が不注意により高所の構造物(障害物)に衝突したり、作業用バスケットと高所の構造物(障害物)の間に挟まれたりする事故を防ぐことができる高所作業車の制御システムおよび制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作業員が搭乗して作業を行うための作業床と、作業床を昇降させる昇降機構とを備えた高所作業車の制御システムである。本制御システムは、昇降機構を操作するための操作部と、操作部による操作を許可するための操作許可部と、操作許可部を無効化する無効化手段とを備えており、無効化手段による無効化の解除は、作業者が操作許可部を操作することにより行われるようになっている。
【0009】
本発明によれば、操作許可部が操作部による操作を許可することで、操作部による昇降機構の操作が行われて、作業床が昇降する。その一方、無効化手段により、操作許可部が無効化される。そして、無効化手段による無効化の解除は、作業者が操作許可部を操作することにより行われるようになっている。すなわち、作業者が操作許可部を操作しなければ無効化を解除できないようになっている。これにより、作業者が操作許可部を操作することなく操作許可状態で固定する不正行為を抑止できる。その結果、作業者が高所の構造物(障害物)に衝突したり、構造物(障害物)との間に挟まれたりする高所作業時の事故を回避でき、作業の安全性を向上できる。
【0010】
本発明では、作業床の高さが所定の上限位置に到達したことを検出する位置検出部をさらに備え、無効化手段が、位置検出部による検出結果に基づいて操作許可部を無効化するようになっている。
【0011】
本発明では、位置検出部による検出時には、無効化手段による操作許可部の無効化によって、昇降機構が停止するとともに、操作部が操作不能になっている。
【0012】
本発明では、位置検出部による検出時には、作業床を昇降機構により上昇させる操作に関してのみ、操作部が操作不能になっている。この場合、作業床は、そのときの高さ位置を維持するか、または、操作部の操作によって下方にのみ移動するようになっており、所定の上限位置から上方に移動することはないので、作業の安全性を担保できる。
【0013】
本発明では、無効化手段による無効化の解除は、作業者が操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻すことにより行われている。すなわち、作業者が操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻さなければ、無効化を解除できないようになっているので、作業者が操作することなく、不正行為により操作許可部が操作許可状態で固定されていた場合、無効化の解除のために操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻すことは面倒である。これにより、作業者が操作許可部を操作することなく操作許可状態で固定するのを抑止できる。
【0014】
本発明では、無効化手段が、操作許可部による操作許可の開始時からタイマーにより予め設定された所定時間が経過したとき、操作許可部を無効化するようになっている。このように、タイマーの設定によっても操作許可部を無効化できるので、高所作業をより安全に行えるようになる。
【0015】
本発明では、操作許可部による操作許可の開始時からタイマーにより予め設定された所定時間が経過する前に操作許可部が無効化されたときは、タイマーがクリアされるようになっている。
【0016】
本発明では、操作許可部が昇降機構を緊急停止させる緊急停止機能を有している。この場合には、作業者が操作許可部を操作している際に速やかに緊急停止に移行できるので、作業の安全性をさらに向上できる。
【0017】
本発明では、昇降機構の緊急停止時には、昇降機構により作業床を徐々に下降させる緊急停止処理が行われるようになっている。これにより、作業者が万一挟まれた状態にあるときや挟まれそうな状態になったときに、作業者を危険な状態から救出できる。
【0018】
本発明に係る高所作業車の制御システムによる制御方法は、以下の工程を備えている。すなわち、
i) 操作許可部が操作部による操作を許可することにより、操作部による昇降機構の操作を可能にする操作許可ステップ。
ii) 無効化手段が操作許可部を無効化する無効化ステップ。
iii)作業者が操作許可部を操作することにより、無効化手段による無効化を解除する無効化解除ステップ。
【0019】
本発明によれば、操作許可ステップにおいて、操作許可部が操作部による操作を許可することで、操作部による昇降機構の操作が行われて、作業床が昇降する。次に、無効化ステップにおいて、無効化手段により操作許可部が無効化される。そして、無効化手段による無効化の解除は、無効化解除ステップにおいて、作業者が操作許可部を操作することにより行われるようになっており、すなわち、作業者が操作許可部を操作しなければ無効化を解除できないようになっている。これにより、作業者が操作許可部を操作することなく操作許可状態で固定する不正行為を抑止できる。その結果、作業者が高所の構造物(障害物)に衝突したり、構造物(障害物)との間に挟まれたりする高所作業時の事故を回避でき、作業の安全性を向上できる。
【0020】
本発明では、無効化ステップにおいて、作業床の高さが所定の上限位置に到達したことが検出されたとき、または、操作許可部による操作許可の開始時からタイマーにより予め設定された所定時間が経過したとき、無効化手段が操作許可部を無効化するようになっている。これにより、高所作業をより安全に行えるようになる。
【0021】
本発明では、無効化解除ステップにおける無効化の解除は、作業者が操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻すことにより行われている。すなわち、作業者が操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻さなければ、無効化を解除できないようになっているので、作業者が操作することなく、不正行為により操作許可部が操作許可状態で固定されていた場合、無効化の解除のために操作許可部を操作許可前の状態に一旦戻すことは面倒である。これにより、作業者が操作許可部を操作することなく操作許可状態で固定するのを抑止できる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、作業者が故意に操作許可部を操作許可状態で固定する不正行為を抑止することによって、高所作業車を用いて高所作業を行う際に作業者が不注意により高所の構造物(障害物)に衝突したり、作業用バスケットと高所の構造物(障害物)の間に挟まれたりする事故を防ぐことができる高所作業車の制御システムおよび制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例による制御システムが適用された高所作業車の一例の正面概略図である。
【
図2】前記高所作業車(
図1)の一部拡大概略図であって、バスケット内における操作レバーおよびフットスイッチを示している。
【
図3】前記制御システム(
図1)の機能ブロック図である。
【
図4】前記制御システム(
図1)のタイムチャートの第1のパターンを示している。
【
図4A】前記制御システム(
図1)のタイムチャートの第2のパターンを示している。
【
図5】前記制御システム(
図1)のタイムチャートの第3のパターンを示している。
【
図6】前記制御システム(
図1)のタイムチャートの第4のパターンを示している。
【
図7】前記制御システム(
図1)のタイムチャートの第5のパターンを示している。
【
図8】前記制御システム(
図1)のフローチャートの一例を示しており、
図4に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし
図8は、本発明の一実施例による高所作業車の制御システムを説明するための図であって、
図1および
図2は、制御システムが適用された高所作業車の概略構成図、
図3は制御システムの機能ブロック図、
図4ないし
図7は制御システムを構成する各要素のタイムチャート、
図8は制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0025】
図1に示すように、高所作業車1は、床面FL上を走行可能な車体2と、車体2の上に架装された昇降可能なリフター(昇降機構)3と、リフター3の上部に取り付けられ、作業者が搭乗して高所作業を行うためのバスケット(作業床)4とを備えている。ここでは、リフター3として、パンタグラフ構造のシザース式を例にとる。
【0026】
リフター3は、上下方向に伸縮可能に構成された複数のリンク30と、各リンク30を伸縮させるための一つまたは複数のアクチュエータ(昇降機構駆動部)31(同図では一部のみ図示)とを備えており、アクチュエータ31の駆動により、各リンク30が伸縮することでバスケット4が昇降するようになっている。
【0027】
バスケット4は、床板部40と、その上に取り付けられた上下方向の複数の柱41および左右方向の複数の手摺42とから構成されている。バスケット4の上部には、リフター3によるバスケット4の上昇によって、バスケット4の高さが所定の上限位置に到達したことを検出する一つまたは複数のセンサ(位置検出部)5が設けられている。この例では、センサ5が天井(または高所の構造物/障害物)CLを検出したときに、バスケット4の高さが所定の上限位置に到達したと判断するように設定されている。センサ5が--天井CLを検出したとき、バスケット4は天井CLから所定の距離だけ下方に離れた警告位置WLに位置している。センサ5としては、物体の接近を検出する近接センサ(たとえば超音波センサ/光電スイッチ/レーザースキャナ)や、物体との距離を測定する距離センサ(測距センサ)(たとえばレーザ距離センサ)等の非接触センサが好ましい。
【0028】
図2に示すように、バスケット4内には、作業者が手で操作するための操作装置6と、作業者が足で操作するためのフットスイッチ(操作許可部)7とが設けられている。操作装置6は、バスケット4内のたとえば柱41に取り付けられており、作業者が手で把持して操作することにより、リフター3を操作する、つまりアクチュエータ31を駆動するための一つまたは複数の操作レバー(またはジョイスティック)(操作部)60を有している。なお、操作装置6には、高所作業車1の車体2(
図1)を走行させるためのレバー(図示せず)も併せて設けられている。また、操作装置6には、非常停止スイッチ61が設けられている。
【0029】
フットスイッチ7は、バスケット4内の床板部40の上に配置または固定されており、操作装置6の操作レバー60と連動するように設けられている。すなわち、作業者がフットスイッチ7を足で踏んでいる状態においてのみ、操作レバー60による操作を許可して操作レバー60が操作可能になっている。フットスイッチ7は、この例では3ポジションタイプのものが用いられており、作業者が足で踏んでいないときには、スイッチがポジション1にあってOFF状態にあり、作業者が足で軽く踏むと、スイッチがポジション2に移行してONとなり、作業者が足で強く踏み込むと、スイッチがポジション3に切り替わってOFFとなるようになっている。
【0030】
図3は、高所作業車1の制御システムの概略構成を示している。制御システム100は制御部110を有しており、制御部110は、操作装置6の操作部(操作レバー)60と、操作許可部(フットスイッチ)7と、位置検出部(センサ)5とが接続されている。制御部110は、操作レバー60から出力された操作信号を処理する操作信号処理部111と、フットスイッチ7から出力された操作許可信号を処理する操作許可信号処理部112と、駆動信号出力部113とを有している。操作信号処理部111の出力aおよび操作許可信号処理部112の出力bはいずれも駆動信号出力部113に入力されている。駆動信号出力部113はアンド回路から構成されており、操作信号処理部111の出力aおよび操作許可信号処理部112の出力bの双方が入力されたときに出力cを出力するようになっている。出力cは、昇降機構駆動部(アクチュエータ)31に入力されている。
【0031】
制御部110は、センサ5から出力された検出信号を処理する検出信号処理部114と、無効化信号出力部(無効化手段)115とを有している。検出信号処理部114の出力dは無効化信号出力部115に入力されている。無効化信号出力部115は、センサ5による検出結果に基づいてフットスイッチ7を無効化するための無効化信号eを出力するためのものである。無効化信号eは、操作許可信号処理部112に入力されている。また、検出信号処理部114の出力fは報知部117に入力されている。
【0032】
また、無効化信号出力部115には、バイタルセンサ(図示せず)で得られた作業者のバイタルデータ(たとえば心拍データや脈拍データ等)に基づいて作業者の異常を検出する検出信号、監視カメラ(図示せず)で得られた画像データに基づいて作業者の不正な危険行為を検出する検出信号、他のシステム(図示せず)からの制御信号等の外部信号が入力されるようになっている。
【0033】
さらに、タイマー116の出力gは無効化信号出力部115に入力されている。タイマー116の設定時間としては、任意の適切な時間に設定可能であるが、たとえば1分のような短すぎる時間に設定した場合には、1分ごとに解除動作が必要になって作業が非常に煩雑になるものの、作業者がテープ等でフットスイッチ7を固定する不正行為に対する抑止力が高まるので、より安全であり、これに対して、たとえば数十分のような長すぎる時間に設定した場合には、その時間内に作業者がテープ等でフットスイッチ7を固定する不正行為を行う可能性が高くなるので、危険である。このような点を考慮して、設定時間としては、たとえば10分程度の時間に設定されるが、高所作業に要する標準時間や高所作業位置に到達するのに要する時間を基に決定するようにしてもよい。より具体的には、一旦上昇して作業を行った後に下降する場合、上昇および下降に要する時間が通常5分だとすると、タイマー116の設定時間としては、これにさらに2分程度の時間を加えたものにすればよい。
【0034】
次に、
図4ないし
図7は、制御システム100を構成する各要素のタイムチャートの第1ないし第5のパターンをそれぞれ例示している。各図中、操作許可部(フットスイッチ)における「POS.1」、「POS.2」、「POS. 3」とはそれぞれポジション1、2、3を示しており、ここでの操作許可部が3ポジションタイプのものであることを示している。操作部(操作レバー)の「上昇」、「下降」、「静止」とは、操作部の操作により、バスケットを上昇、下降、静止させる場合をそれぞれ示している。位置検出部(センサ)の「検出」、「非検出」とは、位置検出部により高所の構造物(障害物)を検出したこと、検出していないことをそれぞれ示している。タイマーの「設定時間」とは、タイマーにより予め設定された時間を指している。外部信号(動作モード切替信号)は、通常動作モード(H)および緊急停止モード(L)の2つの動作モードを切り替えるためのものである。制御対象(バスケット)における「基準面」および「警告位置」とは、制御対象の高さ方向のリアルタイム位置を示しており、「基準面」は、リフターの伸長前(つまり制御対象の上昇前)に制御対象が高所作業車の車体の上に配置されていることを示し、「警告位置」は、制御対象が上昇し、「天井」の若干下方において位置検出部(センサ)により検出される位置を示している。なお、各図中、横軸は時間Tを表しており、各タイムチャートの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングをそれぞれ点線T
1~T
n(n:自然数)で示している。
【0035】
次に、第1ないし第5パターンについて、
図1ないし
図3を参照しつつ、
図4ないし
図7を用いて説明する。まず、各パターンの特徴部分の概略について簡単に説明し、次に、各パターンの詳細についてそれぞれのパターンに分けて説明する。
【0036】
第1、第2および第4のパターンは、位置検出部(センサ)5の検出によって操作許可部(フットスイッチ)7が無効化され、フットスイッチ7の踏み直しによって無効化が解除されるパターンを示している(
図4、
図4Aおよび
図6中のグレー着色領域参照)。第3のパターンは、タイマー116が所定の設定時間に達したときにフットスイッチ7が無効化されるとともに、フットスイッチ7の踏み直しによって無効化が解除されて、タイマー116が再スタートするパターンを示している(
図5中のグレー着色領域参照)。第5のパターンは、フットスイッチ7がPOS.3まで踏み込まれることにより、フットスイッチ7が無効化されて緊急停止されるパターンを示している(
図7中のグレー着色領域参照)。
【0037】
<第1のパターン>
図4は、タイムチャートの第1のパターンを示している。同図に示すように、区間T
0~T
1(つまりT
0≦T<T
1)においては、フットスイッチ7がPOS.1にあってスイッチOFFの状態にあり(
図2参照)、このとき、操作レバー60を上昇側に操作しても、バスケット4は上方に移動せず、その高さ位置は基準面のままである。
【0038】
これを
図3を用いて説明すると、フットスイッチ7から操作許可信号が出力されないので、操作許可信号処理部112から出力bは出力されない。一方、操作レバー60からは操作信号が出力されて操作信号処理部111に入力されるので、操作信号処理部111から出力aが出力されて駆動信号出力部113に入力される。ここで、駆動信号出力部113は出力aおよび出力bを入力とするアンド回路なので、出力aのみの入力では駆動信号出力部113から駆動信号cは出力されず、アクチュエータ31は駆動されない。その結果、バスケット4は上昇せず、静止したままである。
【0039】
図4に戻り、T
1(つまりT=T
1)になると、作業者がフットスイッチ7を踏み込むことにより、フットスイッチ7がPOS.1からPOS.2に切り替わってスイッチONの状態になる。これにより、操作レバー60による操作が許可されて操作可能な状態になる。
【0040】
次に、区間T1~T6(つまりT1≦T<T6)は、操作レバー60による操作が許可されて操作レバー60が操作可能になっているので、操作レバー60を上昇側に切り替えればバスケット4は上昇し(T2≦T<T3およびT5≦T<T6)、操作レバー60を下降側に切り替えればバスケット4は下降する(T3≦T<T4)。また、操作レバー60を静止状態にすれば、バケット4はそのときの位置を維持する(T4≦T<T5)。
【0041】
これを
図3を用いて説明すると、フットスイッチ7から出力された操作許可信号は操作許可信号処理部112に入力され、操作許可信号処理部112から出力bが出力されて、駆動信号出力部113に入力される。また、操作レバー60から出力された操作信号は操作信号処理部111に入力され、操作信号処理部111から出力aが出力されて駆動信号出力部113に入力される。駆動信号出力部113は、出力aおよび出力bを入力とするアンド回路なので、出力aおよびbの入力により、駆動信号出力部113から駆動信号cが出力されて、アクチュエータ31に入力される。これにより、アクチュエータ31が駆動されて、バスケット4が上下方向に移動する。
【0042】
図4に戻り、T
6(つまりT=T
6)になると、センサ5が天井CLを検出する(
図1参照)。すると、フットスイッチ7が無効化される(
図4中のグレー着色領域の左端参照)。このとき、
図3において、センサ5の検出信号が検出信号処理部114に入力され、検出信号処理部114からの出力dが無効化信号出力部115に入力されて、無効化信号出力部115が無効化信号eを出力する。操作許可信号処理部112は、無効化信号eが入力されると、操作許可部7からの操作許可信号が入力されていても出力bを出力しない。その結果、操作信号処理部111から出力aが入力されていても、すなわち、操作レバー60を操作しても(区間T
7≦T≦T
8参照)、駆動信号出力部113から出力cは出力されず、アクチュエータ31は駆動されなくなる(よって、操作レバー60は操作不能の状態になる)。これにより、バスケット4は、天井CLの若干下方に位置する警告位置WL(
図1)の位置を維持することになる。作業者は、たとえばバスケット4が警告位置WLに位置している間に所定の高所作業を行う。なお、センサ5の検出信号が検出信号処理部114に入力されると、検出信号処理部114から出力fが出力されて報知部117に入力される。報知部117は、無効化区間(つまり区間T
6≦T<T
9)中、アラーム(警告音/ブザー音/ビープ音等の警報音や警告ランプ等の点灯/点滅)により、作業者および周囲の者に対して注意を喚起する。
【0043】
次に、フットスイッチ7のタイムチャートにおいて、T=T
9の立下がり部およびT=T
10の立ち上がり部に示すように、作業者がフットスイッチ7をPOS.2からPOS.1に一旦戻した(つまりONからOFFにした)後、再びPOS.2まで踏み込む(つまりONにする)踏み直しを行う。すると、フットスイッチ7の無効化が解除される(
図4中のグレー着色領域の右端参照)。
【0044】
このとき、
図3において、フットスイッチ7からの出力が一旦OFFになった後、再びONとなって、操作許可信号処理部112に入力される。すると、操作許可信号処理部112は、無効化信号出力部115からの出力eが入力されていても、出力bを出力し、出力bは駆動信号出力部113に入力される。よって、操作信号処理部111からの出力aが駆動信号出力部113に入力されれば、駆動信号出力部113から出力cが出力されて、アクチュエータ31が駆動されることになる(
図4中の(T
11≦T≦T
12参照)。このように、無効化信号出力部115による無効化の解除は、作業者がフットスイッチ7を操作する、すなわち、上述したように、フットスイッチ7を操作許可時の状態から操作許可前の状態に一旦戻す(つまり、POS.2からPOS.1に戻す)ことにより行われる。
【0045】
このように第1のパターンによれば、フットスイッチ7が操作レバー60による操作を許可することで、操作レバー60によるアクチュエータ31の操作が行われてバスケット4が昇降し、無効化信号出力部115によりフットスイッチ7が無効化されるとともに、無効化信号出力部115による無効化の解除は、作業者がフットスイッチ7を操作することにより行われるようになっている。すなわち、作業者がフットスイッチ7を操作しなければ無効化を解除できないようになっている。
【0046】
これにより、作業者がフットスイッチ7から離れようとして、フットスイッチ7をテープ等を用いて操作許可状態で(つまりPOS.2の操作許可位置に)固定する不正行為を抑止できる。その結果、作業者が高所の構造物(障害物)に衝突したり、構造物(障害物)との間に挟まれたりする高所作業時の事故を回避でき、作業の安全性を向上できる。
【0047】
<第2のパターン>
図4Aは、タイムチャートの第2のパターンを示している。この第2のパターンにおいては、フットスイッチ7の無効化がセンサ5の検出によって発生する点は(同図中のグレー着色領域の左端参照)、前記第1のパターンと同様であるが、フットスイッチ7の無効化区間における制御の仕方が前記第1のパターンとは異なっている。
【0048】
前記第1のパターンでは、
図4中の無効化区間における区間T
7≦T≦T
8に示すように、当該区間中は、操作レバー60を下降側に操作しても、バスケット4は操作レバー60の操作に反応せず、バスケット4は静止したままである。これに対して、第2のパターンでは、
図4A中の無効化区間における区間T
7≦T<T
8においては、操作レバー60を下降側に切替操作すると、バスケット4は操作レバー60の操作に反応して下方に移動している。その一方、同図中の無効化区間におけるT
8≦T<T
9においては、操作レバー60を上昇側に切替操作しても、バスケット4は操作レバー60の操作に反応せず(つまり、操作レバー60は操作不能になっており)、バスケット4はそのときの高さ位置を維持している。
【0049】
このように、第2のパターンでは、フットスイッチ7が無効化されているとき、バスケット4をリフター3(
図1)により下降させる操作に関しては許容され、上昇させる操作に関しては許容されない、すなわち、上昇させる操作に関してのみ、操作レバー60が操作不能になっている(逆の言い方をすれば、下降させる操作に関してのみ、操作レバー60が操作可能になっている)ので、作業者がバスケット4を警告位置WLの下方に移動させることができ、高所作業をより安全に行えるようになる。これに対して、
図4に示した第1のパターンにおいては、バスケット4は、無効化区間(T
6≦T<T
9)の始端から終端に至る間中、警告位置WLに置かれたままである。
【0050】
<第3のパターン>
図5は、タイムチャートの第3のパターンを示している。この第3のパターンにおいては、位置検出部(センサ)5に加えて、タイマー116を用いている点が前記第1、第2のパターンと異なっている。すなわち、この場合には、T=T
1になった時点で(つまり、フットスイッチ7による操作許可の開始時に)、タイマー116がスタートしてカウントを開始する。
【0051】
次に、T
6(つまりT=T
6)になると、タイマー116が所定の設定時間に到達する。すると、フットスイッチ7が無効化される(
図5中のグレー着色領域の左端参照)。この場合、センサ5が天井CLを検出する前にタイマー116が所定の設定時間に到達しており(センサ5のタイムチャート参照)、また、フットスイッチ7がPOS.2におかれた状態のままで操作レバー60が長時間静止位置におかれているので(操作レバー60のタイムチャート参照)、作業者が操作レバー60の静止中にフットスイッチ7をガムテープ等で固定する不正行為を行っている可能性がある。
【0052】
無効化区間(つまり区間T
6≦T<T
9)中は、
図4Aに示した第2のパターンの場合と同様に、バスケット4を下降させる操作に関しては許容されるので(区間T
7≦T<T
8参照)、作業者がバスケット4を警告位置WLの下方に移動させることができ、高所作業をより安全に行えるようになる。
【0053】
次に、フットスイッチ7のタイムチャートにおいて、T=T
9の立下がり部およびT=T
10の立ち上がり部に示すように、作業者がフットスイッチ7をPOS.2からPOS.1に一旦戻した(つまりONからOFFにした)後、再びPOS.2まで踏み込む(つまりONにする)踏み直しを行った場合、作業者がフットスイッチ7をガムテープ等で固定する不正行為を行っている可能性はないので、フットスイッチ7の無効化が解除される(
図5中のグレー着色部分の右端参照)とともに、T=T
10において、タイマー116が再スタートする。この場合においても、無効化の解除は、作業者がフットスイッチ7を操作する、すなわち、フットスイッチ7を操作許可時の状態から操作許可前の状態に一旦戻す(つまり、POS.2からPOS.1に戻す)ことにより行われる。これにより、フットスイッチ7が操作レバー60による操作を許可するので、操作レバー60を操作すると、バスケット4が昇降する(区間T
11≦T<T
12参照)。
【0054】
<第4のパターン>
図6は、タイムチャートの第4のパターンを示している。この第4のパターンにおいては、位置検出部(センサ)5に加えてタイマー116を用いている点は、前記第3のパターンと同様であるが、この第4のパターンでは、前記第2のパターンと同様に、フットスイッチ7の無効化がセンサ5の検出によって発生している。
【0055】
すなわち、
図6に示すように、T
6(つまりT=T
6)において、センサ5が天井CLを検出すると、フットスイッチ7が無効化される(同図中のグレー着色領域の左端参照)。また、このとき、タイマー116は、所定の設定時間に到達しておらず、クリアもされない。
【0056】
無効化区間(つまり区間T
6≦T<T
9)中は、
図4Aに示した第2のパターンの場合と同様に、バスケット4を下降させる操作に関しては許容されるので(区間T
7≦T<T
8参照)、作業者がバスケット4を警告位置WLの下方に移動させることができ、高所作業をより安全に行えるようになる。
【0057】
次に、フットスイッチ7のタイムチャートにおいて、T=T
9の立下がり部およびT=T
10の立ち上がり部に示すように、作業者がフットスイッチ7をPOS.2からPOS.1に一旦戻した(つまりONからOFFにした)後、再びPOS.2まで踏み込む(つまりONにする)踏み直しを行う。すると、T=T
9において、タイマー116がクリアされ、フットスイッチ7の無効化が解除される(
図6中のグレー着色部分の右端参照)とともに、T=T
10において、タイマー116が再スタートする。
【0058】
この場合においても、無効化の解除は、作業者がフットスイッチ7を操作する、すなわち、フットスイッチ7を操作許可時の状態から操作許可前の状態に一旦戻す(つまり、POS.2からPOS.1に戻す)ことにより行われる。これにより、フットスイッチ7が操作レバー60による操作を許可するので、操作レバー60を操作すると、バスケット4が昇降する(区間T11≦T<T12参照)。
【0059】
また、
図6中、フットスイッチ7のタイムチャートには、2回目の踏み直しが行われる点が記載されている(区間T
13≦T≦T
14参照)。こうした無効化区間外に行われる踏み直しは、作業者の意図的操作によるものであって、このような意図的操作によって、作業者がフットスイッチ7をテープ等で固定する不正行為を行っていないものと推測されるので、2回目の踏み直しの際においても、タイマー116がクリアされている。
【0060】
<第5のパターン>
図7は、タイムチャートの第5のパターンを示している。前記第1ないし第4のパターンでは、フットスイッチ7がPOS.1および POS.2間でのみ切替操作され、POS.3の位置まで切替操作されない例を示したが、この第5のパターンにおいては、フットスイッチ7がPOS.3まで踏み込まれる例が示されている。また、第5のパターンでは、前記第1ないし第4のパターンに示した位置検出部(センサ)5およびタイマー116のタイムチャートの代わりに、外部信号(動作モード切替信号)のタイムチャートが示されている。この場合、リフター3によるバスケット4の制御において、通常動作モード(H)および緊急停止モード(L)という2つの動作モードがあり、動作モード切替信号によってこれら2つのモードが切り替えられるようになっている。
【0061】
図7に示すように、区間T
0~T
6(つまりT
0≦T<T
6)においては通常動作モードで動作しており、T
6(つまりT=T
6)のタイミングでフットスイッチ7がPOS.2からPOS.3に切替操作されている。このとき、作業者は、危険を感じる等してフットスイッチ7を強く踏み込んでおり、フットスイッチ7はPOS.1とは異なるスイッチOFF状態となっている。これにより、緊急停止モード(L)に移行する(つまりH→Lになる)とともに、フットスイッチ7が無効化され(
図7中のグレー着色領域の左端参照)、バスケット4が緊急停止する。
【0062】
バスケット4の制御が緊急停止モード(L)に移行すると、区間T6≦T≦T10-11の斜線領域に示すように、リフター3によりバスケット4を徐々に下降させる緊急停止処理が行われる。すなわち、この場合には、バスケット4が緊急停止した後、バスケット4はそのときの位置から徐々に下降し、スタート時の基準面の位置まで戻って停止する。この緊急停止モードの間は、フットスイッチ7は無効化されているので、操作レバー60によってバスケット4は操作されない(区間T7≦T<T10参照)。
【0063】
バスケット4が基準面の位置に戻った後、安全が確認される。そして、動作モード切替信号はT=T11のタイミングで通常動作モード(H)となり、フットスイッチ7の無効化が解除されてPOS.1からPOS.2に切替操作される(T=T12参照)。これにより、操作レバー60による操作が可能になって、操作レバー60を上昇側に切り替えることでバスケット4が上昇する(区間T≧T13参照)なお、T=T11のタイミングでの緊急停止モード(L)から通常動作モード(H)への移行については、他の装置からの安全入力を用いるようにしてもよい。
【0064】
次に、
図8は、制御システム(
図3)のフローチャートの一例を示しており、ここでは、
図4の第1のパターンに対応したものについてのみ説明し、第2ないし第5のパターンのものについては説明を省略する。
【0065】
プログラムがスタートすると、
図8のステップS1において、フットスイッチ7がONされる(つまり、POS.1から POS.2に切り替わる)のを待つ。フットスイッチ7がONされなければ、操作レバー60を操作してもバスケット4は移動しない(
図4中の操作レバーの区間T
0≦T<T
1参照)。
【0066】
フットスイッチ7がONされれば(
図4中のフットスイッチのT=T
1参照)、ステップS1での判断が「yes」となって、ステップS2に移行する。このとき、フットスイッチ7により操作レバー60の操作が許可されて、操作レバー60によるアクチュエータ31の操作が可能な状態である。
【0067】
ステップS2では、作業者が操作レバー60を操作する。ステップS3では、操作レバー60の操作により、バスケット4が上下方向に移動(つまり昇降または下降)する(
図4中の操作レバーおよびバスケットの区間T
2≦T<T
6参照)。ステップS1、S2およびS3は、本フローチャートの操作許可ステップを構成している。
【0068】
次に、ステップS4では、センサ5が天井CL(
図1)を検出したか否かを判断する。センサ5が天井CLを検出していなければ、ステップS2に戻り、ステップS2~S4の処理を繰り返す。センサ5が天井CLを検出すれば(
図4中のセンサのT=T
6参照)、ステップS4での判断が「yes」となって、ステップS5に移行する。ステップS5では、報知部117(
図3)によりアラームを発する。
【0069】
次に、ステップS6では、フットスイッチ7を無効化する。これにより、操作レバー60が操作不能となって、操作レバー60によるアクチュエータ31の操作ができなくなる(
図4中の操作レバーおよびバスケットの区間T
7≦T≦T
8参照)。ステップS6は、本フローチャートの無効化ステップを構成している。ステップS6での処理後、ステップS7において、バスケット4が停止する(
図4中のバスケットの区間T
6≦T<T
9参照)。このとき、バスケット4は警告位置WL(
図1)で停止しており、作業者は、たとえば、このT
6≦T<T
9の間に所定の高所作業を行う。
【0070】
次に、ステップS8では、作業者によりフットスイッチ7が踏み直しされる(つまり、POS.2から POS.1に切り替わった後、再びPOS.2に戻る)のを待つ。作業者によりフットスイッチ7が踏み直しされれば(
図4中のフットスイッチの区間T
9≦T≦T
10参照))、ステップS8での判断が「yes」となって、ステップS9に移行する。
【0071】
ステップS9では、フットスイッチ7の無効化が解除され、これに続くステップS10では、報知部117によるアラームを解除する。これにより、フットスイッチ7により操作レバー60の操作が再び許可され、操作レバー60によるアクチュエータ31の操作が可能になるので、操作レバー60の操作により、バスケット4が上下方向に移動(つまり昇降または下降)する(
図4中の操作レバーおよびバスケットの区間T
11≦T≦T
12参照)。ステップS8~S10は、本フローチャートの無効化解除ステップを構成している。
【0072】
次に、ステップS11では、処理を終了すべきか否かが判断され、終了すべきと判断されれば処理を終了し、終了すべきでないと判断されれば、ステップS1に戻り、ステップS1~S10の処理を繰り返す。
【0073】
〔第1の変形例〕
前記実施例では、センサ5が上方(つまり作業者の頭上)の天井CLを検出するようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されず、高所の構造物や障害物の形状・配置等に応じて、センサ5は、斜め上方や側方の構造物(障害物)を検出するようにしてもよい。また、センサ5はバスケット4の上部に直接固定するだけでなく、バスケット4の上部から上方(または斜め上方)に延びる支柱を設け、当該支柱の先端に固定するようにしてもよい。なお、支柱の先端に固定する場合、センサ5としては、必ずしも非接触センサでなくてもよく、検出体と接触する接触子を有する接触式センサでもよい。さらに、センサ5として、気圧計やGPS等を用いて高さを計測するようにしてもよい。これらの場合には、上方の構造物や障害物の高さを予め測定しておく必要がある。
【0074】
〔第2の変形例〕
前記実施例では、フットスイッチ7として、ポジション1、2に加えてポジション3を有する3ポジションタイプのものが用いられた例を示したが(とくに
図7のタイムチャート参照)、本発明の適用はこれに限定されない。フットスイッチ7は、ポジション3が設けられておらず、ポジション1、2の間で単にON/OFFするものでもよい(たとえば
図4ないし
図6のタイムチャート参照)。
【0075】
〔第3の変形例〕
前記実施例では、操作許可部として、作業者が足で踏んで操作するフットスイッチを用いた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。作業者が手でグリップして操作する片手(または両手)イネーブルスイッチを採用してもよく、これらイネーブルスイッチとフットスイッチを併用するようにしてもよい。イネーブルスイッチおよびフットスイッチを併用して二重化することにより、さらに安全なシステムの構築が可能になる。
【0076】
〔第4の変形例〕
図4ないし
図7に示した第1ないし第5のパターンによるタイムチャートはあくまで例示であって、これら以外のパターンに基いて制御するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0077】
〔第5の変形例〕
前記実施例では、タイマー116の設定時間として、一定の時間に設定する場合を例にとって説明したが、タイマー116の設定時間としては、ランダムな時間に設定するようにしてもよい。
【0078】
〔第6の変形例〕
前記実施例では、センサによる検出および(または)タイマーによる設定時間に基いて、あるいは外部信号に基いて、フットスイッチを無効化するようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0079】
一般に、高所作業を行う際には、作業者は安全帯(墜落制止用器具)を装着して作業を行うことが安全対策上求められており、このため、作業中は安全帯のフックを高所作業車のバスケットの手摺に係止した状態にする必要がある。そこで、手摺に係止されていることを検出するセンサ(たとえば、フックの外れ止めの開閉を検出する開閉スイッチ等)を安全帯のフックに設け、作業者がフックを手摺から外した際には、フックのセンサからの検出信号に基いてフットスイッチを無効化するように制御するようにしてもよい。
【0080】
これにより、作業者がフットスイッチから離れようとしてフットスイッチを操作許可状態で固定する不正行為を抑止できる。その結果、作業者が高所の構造物(障害物)に衝突したり、構造物(障害物)との間に挟まれたりする高所作業時の事故を回避でき、作業の安全性を向上できる。
【0081】
また、バイタルセンサから得られた作業者のバイタルデータや監視カメラで得られた作業者およびその周囲環境の画像データに基づいて、フットスイッチを無効化するように制御してもよく、さらには、バイタルセンサや監視カメラを前記実施例のセンサ(位置検出部)やタイマーと併用するようにしてもよい。
【0082】
〔他の適用例1〕
前記実施例では、本発明が適用される高所作業車として、たとえばエンジンやバッテリー等の動力源を有する自走可能なものを例にとったが、必ずしも自走式でなくてもよく、トラック等の車両のシャーシにバスケットのリフターを架装することで走行可能にしたものでもよい。また、昇降機構(リフター)としては、前記実施例に示したようなパンタグラフ構造のシザース式に限らず、複数段の昇降マストからなる垂直マスト式や、複数段のブームからなるブーム式でもよく、任意の構造を採用し得る。たとえばブーム式の場合には、バスケットが昇降だけでなく旋回もするので、側方や下方の障害物を検出するセンサも設置した方が好ましい。また、この場合、タイマー116(
図3)の設定時間としては、バスケットの移動(上下/左右)方向毎に異なる時間を設定するようにしてもよく、これにより、よりきめ細やかな制御が可能となる。
【0083】
〔他の適用例2〕
高所作業車は、一般に、昇降装置(リフター)に加えて走行装置(車体)を備えた走行可能なものを指すが、本発明は、走行装置を備えない据置型のいわゆる高所作業台にも適用される。したがって、本明細書中で用いられる高所作業車は、高所作業台を含む概念である。
【0084】
〔その他の変形例〕
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、高所作業車のための制御システムおよび制御方法に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1: 高所作業車
3: リフター(昇降機構)
4: バスケット(作業床)
5: センサ(位置検出部)
7: フットスイッチ(操作許可部)
60: 操作レバー(操作部)
100: 制御システム
115: 無効化信号出力部(無効化手段)
116: タイマー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特許第6274665号公報(段落[0009]、[0015]~[0017]、[0023]、[0029]、
図1~
図3参照)
【特許文献2】特開2020―75769号公報(段落[0021]~[0022]、
図2参照)
【特許文献3】特許第3479442号公報(段落[0013]~[0014]、
図3参照)