(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167729
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電気・電子機器の清浄保管装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021096943
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】520410507
【氏名又は名称】斎藤 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 俊幸
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD03
4C058DD13
4C058EE11
4C058KK02
(57)【要約】
【課題】本発明は効率的な清浄化機能に優れた電気・電子機器の保管装置を提供する。
【解決手段】本発明は保管中の多数の電気・電子機器を迅速に清浄化することを目的として、効率の良い紫外線照射を行なうための最適な優れた機能を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の電気・電子機器を収納する保管装置であって、保管中の多数の電気・電子機器の表面を効率的に清浄化するために必要な紫外線発生、及び照射を可能とするための機能を具備したことを特徴とする電気・電子機器の保管装置。
【請求項2】
前記保管装置において、保管されている多数の電気・電子機器のうちの1個乃至少数の電気・電子機器毎に逐次紫外線照射を行うことが出来るような機構や制御アルゴリズムなどを具備したことを特徴とする請求項1記載の保管装置。
【請求項3】
前記保管装置において、紫外線照射を同時に多数の電気・電子機器に実施出来るように該電気・電子機器の配置形態、照射機構、制御アルゴリズムなどを最適化したことを特徴とする請求項1記載の保管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不特定多数の人が利用するような電気・電子機器を収納する保管装置であって、保管中の多数の電気・電子機器の表面を清浄にするために必要な諸元の紫外線を発生しかつ、これを効率的に該機器の表面に照射する機能を備えたことを特徴とする電気・電子機器の保管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収納する対象物を清浄化する装置として従来、オゾンガスなどの清浄化作用のある気体を充満・流動させる形態のもの、又は紫外線の照射を行なう形態のものが開発されている。これら既存の清浄化装置は保管中の多数の電気・電子機器の表面を効率的に清浄化処理するに際して、その清浄化機能や使い勝手に制約を受けることが多いという問題が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-15618号 公報
【特許文献2】特開2014-25613号 公報
【0004】
【非特許文献1】日経クロステック 2020年06月15日 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04156/
【非特許文献2】広島大学サイト 掲載日 2020年09月05日 https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/59996
【非特許文献3】医療法人しばじクリニックサイト https://shibaji-clinic.com/care222.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
教育機関や企業、官公庁などで使用されるスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどの電気・電子機器はその用途の関係上、必然的に不特定多数の人間が接触する環境に晒される場合が相対的に多くなりやすい。その結果、細菌やウイルスの付着に伴って生じる感染症の引き金となる危険性が従来から指摘されている。特に、2020年の初頭あたりから国内での発症例が出始めた新型コロナウイルス感染症の病原体に汚染され、感染拡大の一因となる恐れが大きい。
そこで、不特定多数の人が利用するような電気・電子機器のための実用上確実な清浄化機能と使い勝手の良さとを兼ね備えた清浄保管装置に対する潜在ニーズはますます高まりつつある。
【0006】
従来多数の対象物の清浄化を実現するために該対象物を収納した密閉空間内にホルムアルデヒド、エチレンオキサイド、又はオゾン等の清浄化作用のある気体を充満、または流動させ、これを所定時間対象物の表面と接触させる処理が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
これは清浄化作用のある気体を対象物の表面と接触させることによって、対象物表面に付着している細菌やウイルスの死滅や不活化を起こすことを狙ったものである。例えば清浄化のための気体としてオゾンガスを用いる場合、オゾンの強い酸化力によって細菌やウイルス表面を構成する物質を分解する性質などを利用したものである。
【0008】
特許文献1の発明では清浄化を起こす手段として気体との接触を利用するので、同時に多数の対象物を処理できる利点を有する。しかし、気体と対象物表面の付着物との反応にかなりの長時間を要すると共に、清浄化処理の終了後も人体に有害な気体が密閉空間に残留するので、これの無害化(除害)処理や空間からの排出に一定の時間を要することが避けられない。
以上によって特許文献1の方法を実際に応用するには人体への安全性確保や処理・作業の迅速性を実現するための配慮が不可欠となるので、そのままでは多数の電気・電子機器を安全に効率良く清浄化する手段としては問題がある。
【0009】
他方、気体を用いることなく、食品などの対象物や室内各部分などの表面に紫外線を照射することによってそれらの表面を清浄にする装置が開発されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
例えば特許文献2の発明は紫外線の強いエネルギーが物質表面の分子結合の解裂などを起こす効果を利用することによって細菌、ウイルスなどの死滅、不活化を狙ったものである。
【0010】
清浄化のための手段として紫外線照射を使うので対象物1個あたりの処理時間ば短くてすみ、紫外線ランプの電源を断ってしまえば人体への有害性は完全に解消するという点においては、前記の気体を用いる場合よりも安全性が高いものの、多数の電気・電子機器や密に配列された電気・電子機器に効率良く照射を行なって迅速な清浄化を達成するためには処理機構、制御方法や対象物の載置態様などにそれなりの配慮や工夫を必要とする。
【0011】
以上述べたように先行技術文献で触れられているいずれの発明においても安全性確保や使い勝手などに関して実用面での問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した従来技術の欠点を解決するために、本発明になる不特定多数の人が利用するような電気・電子機器のための清浄化機能付き保管装置は、保管されている対象物の清浄化を達成するための手段として、該対象物に紫外線を効率良く照射出来るような機能を具備したことを特徴としている。
本発明の清浄化機能付き保管装置は不特定多数の人が共用で使用するような複数の電気・電子機器を整然と配列することによって限られた空間内にコンパクトに収納することを可能とすると共に、保管中の該電気・電子機器を順次少数個ずつ紫外線に暴露するか、又は多数の電気・電子機器を同時に紫外線に暴露することなどによって必要な清浄化処理を効率的に行うことが出来る。
【0013】
したがって、本発明の清浄化機能付き保管装置は、例えば教育機関や企業、官公庁などで不特定の人が共用で使用するような多数の電気・電子機器を、随時清浄な状態に復元・保持するために有用な効果を発揮する。
【0014】
各請求項の解説を以下に記述する。
請求項1の発明はその内部に多数の電気・電子機器を収納する保管装置であって、保管中の多数の電気・電子機器の表面を効率的に清浄化するために必要な紫外線発生、及び照射を可能とするための機能を具備したことを特徴とする電気・電子機器の保管装置である。
清浄化に必要な紫外線照射の諸元は、例えば非特許文献1で公表された知見を基に決めることが出来て、それを可能とするような種々の具体的機構や制御アルゴリズムを組込むことによって効率的な清浄化処理を実現できる。
上記によって、例えば学校の教室において生徒が利用する共用のタブレット端末を一日の授業終了後に本発明の保管装置内に収納して、充電を行なうと同時に紫外線の照射を行なうことが出来る。その結果、翌日の授業開始前にはタブレット端末の充電と表面の清浄化が完了することになる。
【0015】
請求項2の発明は前記保管装置において、保管されている多数の電気・電子機器のうちの1個乃至少数の電気・電子機器毎に逐次紫外線照射を行うことが出来るような機構や制御アルゴリズムなどを具備したことを特徴とする請求項1記載の保管装置である。
具体的には、例えば、紫外線照射を1個乃至少数の電気・電子機器毎に行うために保管対象を保持する部分の一部が他の部分とは独立に移動することによって1個乃至少数の電気・電子機器を紫外線照射可能な場所まで移送・停留させる。この場所で必要な時間にわたって所定の紫外線照射を行う。その後、紫外線照射した対象物を元の位置に戻すと共に次に紫外線照射を行なう電気・電子機器を照射場所に移送し同様に紫外線照射を行う。この過程を次々と繰返すことによって保管中の全ての電気・電子機器の紫外線照射による清浄化が出来る。
非特許文献1によると波長222nmの紫外線を照射することによって数分間で表面の清浄化は完了するとされている。
【0016】
請求項3の発明は前記保管装置において、紫外線照射を同時に多数の電気・電子機器に実施出来るように該電気・電子機器の配置形態、照射機構、制御アルゴリズムなどを最適化したことを特徴とする請求項1記載の保管装置である。
同時に多数の電気・電子機器への紫外線照射を可能とするため同一平面状に多数の該電気・電子機器を配置・配列したり、収納状態の対象物を照射する紫外線が隣接する他の対象物に遮られることのないように該電気・電子機器の配置・配列方法を最適化したりしている。
【発明の効果】
【0017】
上記したように本発明の保管装置は保管している多数の電気・電子機器の効率的な清浄化を行うために紫外線照射を効率的に行うための手段を採用している。
具体的には、一つの方策としては多数の保管対象物のうち1個乃至少数個ずつの紫外線照射を順次行うことによって、全個数の迅速な清浄化処理を可能としている。また、他の方策としては多数の該対象物を同時に清浄化処理出来るような配置・配列手段をとることを提案している。
上記発明によって例えば、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンなどの電気・電子機器表面に付着した細菌やウイルスの除去・不活化を随時実行できる。
特に学校や職場、ネットカフェなどに配備された共用の上記電気・電子機器は不特定多数の利用者が接触するので細菌やウイルス(最近世界中で蔓延している新型コロナウイルスを含む)に汚染される危険度が極めて高まっている。
本発明になる保管装置内に上記機器を夜間、不使用時などに一定時間収納し清浄化機能を稼動しておけば、自動的に短時間で表面の汚染が除去される。その結果、新型コロナウイルスを始めとする種々の病原体の感染拡大防止、ひいては公衆衛生の向上に寄与する度合いが大きく、非常に有用な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
保管装置は不特定多数の人が共用で使用するような電気・電子機器に効率的に紫外線を照射する機能を具備している。したがって、該機器に不可欠の充電操作時などに並行して効率的で迅速な清浄化処理を施すことが出来る。
【実施例0020】
以下、添付図面に従って一実施例を説明する。当然のことながら本章で触れる以外の実施例も想到可能である。
図1は本発明の請求項2で述べている保管装置1の内部の状況の一例として内部を密閉するための前面扉を省略した状態を示す。
図1の多数のトレイ2にはそれぞれ一つずつのタブレット端末3が竪置きで上下二段に収納されている。各トレイ2にはそれぞれ並進機構(
図1には示していない)が付随しておりトレイ2をその長手方向に並進移動することを可能としている。トレイ2の手前側には二つの紫外線発生装置4が移動台5の上に固定されており、それぞれタブレット端末の全面に紫外線を照射できるようになっている。移動台5に付随するナット7と係合する駆動用オネジ6をサーボモータ8によって回転することによって、移動台5をオネジの長手方向に並進移動することを可能としている。
なお、トレイ1の部材のうち紫外線が照射する部分の材料には石英ガラスを充当している。これは通常のガラスと異なり、石英ガラスが紫外線を透過することが明らかにされているためである。その結果、紫外線は遮られることなく該タブレット端末3の表面全体を照射・清浄化することが出来る。
【0021】
紫外線照射の手順としては、
図1の保管装置1の内部に保管されたタブレット端末3を載置しているトレイ2が手前側に並進移動することによって該タブレット端末3が紫外線照射ステージに移動・停留して表裏両面から紫外線の照射を受ける。非特許文献1によると波長222nmの紫外線を数分間照射することによって表面に存在する細菌やウイルス(新型コロナウイルスを含む)をほぼ不活化することが出来る。
所定の紫外線照射を完了したトレイ2は元の位置に戻り、紫外線発生装置4が次に照射するタブレット端末3の位置に移動した後、当該のトレイ2が手前側に移動して前記と同様に紫外線照射が行なわれる。
【0022】
上記の手順を各々のタブレット端末3に繰返して行なうことによって保管中の全てのタブレット端末3を短時間で清浄化することが出来る。前記のように1個のタプレット端末の清浄化に必要な紫外線照射時間は数分間なので、トレイ2の移動・位置決め時間などを加えた1個あたりに必要な工程時間を仮に5minと見積り、加えて保管装置内の全保管個数を100個とすると全てのタブレット端末2を清浄化するのに必要な時間は500min(≒8.3h)となる。したがって、通常日の保管時間を5:00pmから翌日の9:00amまでの16hとすると保管時間内に清浄化を容易に完了することが出来る。すなわち効率的な清浄化が実現出来ることになる。
【0023】
ここで、波長222nmの紫外線は人体に無害とされている(例えば非特許文献1参照)ものの、安全のため、扉が開いている場合は紫外線発生装置4の電源は須らく断状態とするようなインターロック機構を組込んでいる。
【0024】
なお、一般論として紫外線照射に起因してプラスチック材料が劣化・変質する場合がある。しかし、これは極短波長の紫外線が長時間照射された場合に初めて問題になる現象であって、本発明の照射条件の程度では何等危惧されるところではない。すなわち、保管中の電気・電子機器を構成するプラスチック部材が清浄化処理中に劣化・変質などを起こす心配は無い。
【0025】
実際に、この222nmの紫外線を利用した新型コロナウイルスの不活化・殺菌装置の性能・使い勝手などは実証試験によって確認されており(例えば、非特許文献2参照)、商品(ウシオ電機製品・商品名「Care222」)としてすでに市販されている。因みに本商品は医院のトイレ内で問題なく使用されているという実績(例えば、非特許文献3参照)がある。
【0026】
なお、本発明による保管装置は前記したものだけに限られるわけではなく種々の他形態や用途での利用・実施が可能なことは言うまでもない。