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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167736
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】モルヌピラビルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/04 20060101AFI20221027BHJP
   A61P 31/14 20060101ALN20221027BHJP
   A61K 31/513 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
C07D405/04
A61P31/14
A61K31/513
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116657
(22)【出願日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】202141018775
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】521312282
【氏名又は名称】ディヴィズ・ラボラトリーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DIVI’S LABORATORIES LTD.
【住所又は居所原語表記】1-72/23(P)/DIVIS/303,Divi Towers,Cyberhills,Gachibowli,Hyderabad-500032 Telangana,India
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ・クリシュナ・プラサド・ディヴィ
(72)【発明者】
【氏名】マイソール・アスワタナラヤナ・ラオ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC73
4C063DD29
4C063EE01
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA20
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】本発明は、モルヌピラビルの調製のための新規な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】Covid-19の治療のために研究されている抗ウイルス薬であるモルヌピラビルの製造方法は、塩基の存在下で2’-3’-イソプロピリデンシチジンを無水イソ酪酸と反応させて、アミド不純物を有する5’-イソ酪酸エステルを得る工程を含む。反応混合物をパラトルエンスルホン酸一水和物で処理する工程は、アセトニドが脱保護され、アミド不純物を含まない純粋なイソ酪酸シチジントシル酸塩を与える。トシル酸塩を遊離塩基に変換し、ヒドロキシルアミンと反応させる工程は、モルヌピラビルを与える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有するモルヌピラビルの製造方法であって、
【化1】
(a)構造(II)を有する硫酸2’,3’-O-イソプロピリデンシチジンを、非求核塩基の存在下、室温で溶媒中の無水イソ酪酸と反応させて、構造(III)の5-イソ酪酸エステルを得る工程であって、当該5-イソ酪酸エステルは、不純物としてN-イソ酪酸アミド(不純物1)を有する工程と、
【化2】
【化3】
(b)工程(a)で得られた反応生成物をパラトルエンスルホン酸一水和物と反応させて、N-イソ酪酸アミド不純物を含まない5’-イソブチリルシチジン酸トシル酸塩(IV)を得る工程と、
【化4】
(c)5’-イソブチリルシチジン酸塩(IV)をその遊離塩基(V)に変換し、(V)をヒドロキシルアミンと反応させて、構造(I)を有するモルヌピラビルを得る工程と、
を備えるモルヌピラビルの製造方法。
【化5】
【請求項2】
工程(a)において、非求核性塩基は、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N-メチルモルホリン、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン(DABCO)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)ならびにトリエチルアミンからなる群より選択される、請求項1に記載のモルヌピラビルの製造方法。
【請求項3】
工程(b)において、反応が50~90℃の温度で行われる、請求項1に記載のモルヌピラビルの製造方法。
【請求項4】
工程(b)において、パラトルエンスルホン酸一水和物は、8~15%の水和水を有する、請求項1に記載のモルヌピラビルの製造方法。
【請求項5】
工程(c)において、5’-イソブチリルシチジン酸塩(IV)が、ジシクロヘキシルアミンを使用して遊離塩基(V)に変換される、請求項1に記載のモルヌピラビルの製造方法。
【請求項6】
工程(c)において、5’-イソブチリルシチジン酸塩(IV)が、溶媒としてアセトンまたは1,4-ジオキサンを使用して遊離塩基(V)に変換される、請求項1に記載のモルヌピラビルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COVID-19感染を治療するために研究されている経口的に活性な抗ウイルス剤であるモルヌピラビル(MK-4482、以前はEIDD-2801として知られていた)の調製のための改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルヌピラビル(Molnupiravir)は化学的に[(2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[4-(ヒドロキシアミノ)-2-オキソピリミジン-1-イル]オキソラン-2-イル]メチル2-メチルプロパノエートであり、構造(I)を有する。
【化1】
モルヌピラビルはエモリー大学で発見され、リッジバックバイオセラピューティクスおよびメルク社と共同で臨床開発が行われている。
【0003】
モルヌピラビルについて報告された最初の合成経路は、高価で入手可能性が限られている出発物質としてウリジン(Uridine)を使用した(国際公開第2019/113462号;国際公開第2019/173602号)。さらに、このルートは歩留まりが低いという問題があった。ウリジンと比較して、シチジン(cytidine)はより安価であり、ヒドロキシルアミンによるシチジンの直接アミノ基転移が可能である。したがって、シチジンに基づく新しい経路が報告されている(スキーム1および2)。
【化2】
【0004】
スキーム1は、固定化したカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼBであるNovozyme435を使用したイソブチリルアセトンオキシムエステルによるシチジンの第一級アルコールの選択的エステル化を示す。次の工程では、シチジンエステルを硫酸ヒドロキシルアミンと反応させてモルヌピラビルを得た(Chem.Commun.2020,56,13363-13364)。固定化酵素を使用すると、スキームが高価になる。さらに、酵素を使用しているにもかかわらず、第1段階でいくらかの量のジおよびトリエステル不純物が形成され、第2段階で部分的な脱アミノ化が観察された。どちらの段階でも、カラムクロマトグラフィーによる精製が必要である。
【0005】
スキーム2は、酵素系の代わりに、シチジンの第一級アルコールを選択的にエステル化するための化学的アプローチを採用した。
【化3】
【0006】
シチジンをアセトン、硫酸および2,2-ジメトキシプロパンと反応させて、硫酸2’,3’-O-イソプロピリデンシチジンを得た。それを、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)および触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下、アセトニトリル中で無水イソ酪酸と反応させた。得られたシチジンアセトニドエステルを70%IPA(KF滴定で24%水)中で硫酸ヒドロキシルアミンと反応させた後、ギ酸を使用してアセトニドを脱保護し、モルヌピラビルを得た。最終生成物は、カラム精製を使用して64%の収率で単離した。或いは、シチジンアセトニドエステルは、硫酸ヒドロキシルアミンで40%IPA(60%水)中で長時間処理することにより、ヒドロキシルアミノ化とアセトニド脱保護の両方を1つの工程で実行し、それにより、モルヌピラビルに直接変換した。しかし、これはエステルの有意な加水分解をもたらし、副産物として約20%のN-ヒドロキシシチジンの形成をもたらした(Synlett.2021、32(3)、326-328)。
【0007】
スキーム2のもう1つの大きな欠点は、アセトニドの脱保護に使用されるギ酸との反応中に一酸化炭素の放出が観察されたことである。アセトニドの脱保護のためのギ酸の使用は、いくつかの文献で報告されている(国際公開第2019/113462号;国際公開第2019/173602号;国際公開第2016/106050号)。しかし、ギ酸は一酸化炭素の供給源であり、それを長期間保存するだけで一酸化炭素が遊離することも文献で知られている(容器は頻繁に換気される)。
したがって、シチジンに基づく両方のスキームには特定の欠点があり、より安全な代替の製造方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
塩基の存在下での無水酪酸による硫酸2’,3’-O-イソプロピリデンシチジン(II)のエステル化を研究している間、5’-イソブチリルシチジンアセトニド(III)に加えて、約8%のアミドがシチジンのアミノ基の交差反応により、副産物(不純物1)として形成されることが観察された(スキーム3)。
【0009】
精製方法として、カラムクロマトグラフィーを使用せずに、様々な酸による塩の形成を調べた。一水和物であるパラ-トルエンスルホン酸(PTSA)を塩形成に使用した場合、アミド不純物を含まない純粋な塩を得ることに加えて、アセトニド基の脱保護も観察され、直接、トシル酸5’-イソブチリルシチジン(IV)が得られた(スキーム3)。
【0010】
結晶水の重要性は、アゼオトロープされたPTSA(azeotroped PTSA)がトシル酸塩を形成する可能性があるものの、アセトニド基を加水分解できなかったという事実によってさらに示される。
【0011】
酸に存在する結晶水が、分子に存在するイソブチリルエステル基に影響を与えることなく、アセトニド基のみを加水分解していることに注目することも嬉しい驚きであった。
【0012】
トシル酸塩(IV)を5-イソブチリルシチジン遊離塩基(V)に変換し、ヒドロキシルアミンと反応するとモルヌピラビル(I)が得られる。
【0013】
本製造方法の主な利点は、一酸化炭素の供給源であるアセトニド脱保護のためのギ酸を回避し、カラムクロマトグラフィーを使用せずに精製を達成することである。
【化4】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、モルヌピラビルの調製のための新規な製造方法を提供し、当該方法は、
(a)構造(II)を有する硫酸2’,3’-O-イソプロピリデンシチジンを、非求核塩基の存在下、室温で無水イソ酪酸と溶媒中で反応させて、構造(III)の5-イソ酪酸エステルを得る工程であって、当該5-イソ酪酸エステルは、不純物(不純物1)としてN-イソ酪酸アミドを有する工程と、
【化5】
【化6】
(b)工程(a)で得られた反応生成物をパラトルエンスルホン酸一水和物と反応させて、N-イソ酪酸アミド不純物を含まない5’-イソブチリルシチジン酸トシル酸塩(IV)を得る工程と、
【化7】
(c)5’-イソブチリルシチジン酸塩(IV)をその遊離塩基(V)に変換し、当該遊離塩基をヒドロキシルアミンと反応させて、モルヌピラビル(I)を得る工程と、を備える。
【0015】
必要な出発物質である式(II)の硫酸2’,3’-O-イソプロピリデンシチジンは、Synlett(2021)、32(3)、326-328に記載されている方法で調製することができる。
【0016】
非求核性塩基の存在下での無水イソ酪酸による(II)のエステル化は、イソ酪酸エステル(III)を与える。反応は、アセトニトリル中、室温で行うことができる。使用できる非求核塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、N-メチルモルホリン(NMM)、および1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン(DABCO)である。触媒量の4-ジメチルアミノピリジンの添加は反応を促進する。反応が完了するまで約18~24時間かかり、その後それを濃縮し、残留物を水とジクロロメタンの混合物と共に約5分間撹拌する。層を分離した後、有機層を乾燥および濃縮して、約90%の収率の(III)を含む泡状の固体を得る。残留物には、アミド誘導体である不純物1が約8%含まれ、HPLC分析では未知の不純物2が約0.5%含まれる。
【0017】
上記の残留物をパラトルエンスルホン酸一水和物で処理すると、アセトニドの加水分解とともにトシル酸5’-イソブチリルシチジンが得られた。反応は酢酸エチルまたはアセトニトリルで行うことができる。室温では、トシル酸塩のみが形成される。しかしながら、反応が75~80℃で約24時間行われる場合、アセトニド部分は、HPLCによって98%の純度を有する(IV)を形成するように加水分解される。不純物1は完全に含まれておらず、不純物2は約<0.05%に減少した。アセトニドの加水分解は、約12%のパラトルエンスルホン酸一水和物に存在する結晶水によって引き起こされた。キシレンの共沸混合(azeotrope)後のPTSAは、アセトニドの加水分解を引き起こすのに効果がなかった。デシケーターでPTSA一水和物を乾燥させても水分含有量は減少しなかった。アセトニトリルを溶媒として使用した場合、エステルの約5%の加水分解が観察された。トシル酸塩(IV)を塩基と反応させると、5’-イソブチリルシチジン(V)が得られる。さまざまな有機塩基を使用できるが、ジシクロヘキシルアミン(DCHA)を使用した場合に最良の結果が得られた。(IV)を約1~1.5当量のDCHAで、アセトン中で室温で約1時間処理すると、PTSA.DCHA塩が沈殿し、濾過によって除去される。濾液を濃縮し、残留物を水およびジクロロメタンで処理して、残留PTSA-DCHA塩および残りの遊離DCHAを除去する。
【0018】
シトシン誘導体とヒドロキシルアミンとの反応によるN-ヒドロキシシトシンの取得は、1965年以来知られている(Biochemical&Biophysical research Communications、18(4)、1965,617-622)。
【0019】
シチジン酪酸エステル(V)の遊離塩基は、ヒドロキシルアミンと反応することによってモルヌピラビルに変換することができる。反応は、HClまたは硫酸塩などの市販のヒドロキシルアミンの塩を使用して実施することができる。反応を完了するには、3~5モルのヒドロキシルアミンと、70~80℃で15~20時間加熱する必要がある。
【0020】
本発明の実施形態は、以下の実施例にさらに記載されており、これらは、本発明の範囲を限定することを決して意図していない。
【実施例0021】
実施例1:トシル酸5-イソブチリルシチジン(IV)の調製:
硫酸シチジンアセトニド(II)(22g、57.69mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.41g、0.2当量)、1.4-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(27.23g、3.1当量)をアセトニトリル(220mL)に溶解し、無水イソ酪酸(14.6g、1.6当量)を15分間加えた。溶液を20時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物を水(100mL)およびジクロロメタン(100mL)で処理した。5分間撹拌した後、2つの層を分離し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、89.7%の(III)、8.54%の不純物1および0.54%の未知の不純物2を含む20.9gの泡状固体を得た。
【0022】
上記の固体を酢酸エチル(100mL)に溶解し、これに、酢酸エチル(100mL)中のパラトルエンスルホン酸一水和物(10.98g、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を75~80℃に加熱し、24時間撹拌した。室温まで冷却した後、沈殿した固体を濾過し、酢酸エチル(100mL)で洗浄し、真空下で4時間乾燥させて、21.5g(76.7%)の(IV)を得た。HPLCによる純度:98.53%、(III)のトシル酸塩:0.24%、不純物1:なし、不純物2:0.03%
【0023】
FT-IR (KBr, cm-1): 3481, 3415, 3282, 3137, 2923, 1724, 1690, 1542, 1497, 1453, 1420, 1397, 1331, 1280, 1243, 1198, 1172, 1138, 1126, 1099, 1035, 1010, 919, 875, 830, 814, 765, 683, 622, 585, 567, 527.
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 9.50 (s, 1H), 8.44 (s, 1H), 7.95-7.93 (d, 1H), 7.50-7.46 (d, 2H, Ar-H), 7.13-7.10 (d, 2H, Ar-H), 6.12-6.09 (d, 1H), 5.71-5.69 (d, 1H), 4.33-4.20 (m, 2H), 4.12-4.04 (m, 2H), 3.93-3.89 (m, 1H), 2.64-2.54 (m, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.11-1.05 (d, 6H).
13C-NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ 176.40, 159.64, 147.65, 145.05, 144.87, 138.82, 128.76, 125.93, 94.65, 90.99, 81.64, 73.73, 69.71, 63.90, 33.60, 21.25, 19.24, 19.19.
ESI-MS: 314.18 [M+H] + (遊離塩基 M.W.: 313.31).
【0024】
実施例2:2段階でのトシル酸5-イソブチリルシチジン(IV)の調製:
硫酸シチジンアセトニド(II)(30.3g)、4-ジメチルアミノピリジン(1.94g、0.2当量)、1.4-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(37.5g、3.1当量)をアセトニトリル(300mL)に溶解し、無水イソ酪酸(20.1g、1.6当量)を滴下し、実施例1に記載のように反応を完了して、HPLC分析で88.17%の(III)、7.31%の不純物1および0.43%の未知の不純物2を含む29.1gの泡状固体を得た。
【0025】
上記の固体を酢酸エチル(150mL)に溶解し、これに、酢酸エチル(100mL)中のパラトルエンスルホン酸一水和物(17.23g、1.1当量)の溶液を加えた。反応混合物を25~30℃で1時間撹拌し、沈殿した固体を濾過し、酢酸エチル(100mL)で洗浄し、真空下で4時間乾燥させて、32.8g(78.54%)の(III)のトシル酸塩を得た。HPLCによる純度:97.4%、(IV):1.98%、不純物1:なし。M.R:160~169℃。
【0026】
FT-IR (KBr, cm-1): 3256, 3059, 2987, 2941, 2786, 1731, 1702, 1660, 1543, 1496, 1458, 1409, 1388, 1373, 1352, 1326, 1265, 1252, 1233, 1205, 1191, 1166, 1154, 1124, 1111, 1092, 1072, 1034, 1009, 970, 899, 868, 817, 755, 681, 623, 593, 577, 564,
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 9.51 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 8.00-7.98 (d, 1H), 7.49-7.47 (d, 2H, Ar-H), 7.13-7.10 (d, 2H, Ar-H), 6.08-6.06 (d, 1H), 5.80-5.79 (d, 1H), 5.07-5.04 (dd, 1H), 4.80-4.77 (dd, 1H), 4.36-4.32 (m, 1H), 4.28-4.17 (m, 2H), 2.54-2.47 (m, 1H and DMSO), 2.29 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.08-1.05 (d, 6H).
13C-NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ 176.27, 159.93, 147.68, 146.80, 145.46, 138.55, 128.68, 125.93, 113.63, 94.44, 85.48, 84.38, 81.12, 64.21, 33.51, 27.32, 25.54, 21.25, 19.19, 19.10.
ESI-MS: 354.12 [M+H] + (遊離塩基 M.W.: 353.37).
【0027】
上記の固体の(III)のトシル酸塩(32.7g)を酢酸エチル(300mL)に懸濁し、75~80℃に加熱し、20~24時間撹拌した。室温まで冷却した後、固体を濾過し、酢酸エチル(100mL)およびアセトン(100mL)で洗浄し、真空下で3~4時間乾燥させて、21.5gの(IV)を得た。HPLCによる純度:98.8%、O-イソプロピリデンシチジン-5-イソ酪酸エステル(III):0.16%。
【0028】
実施例3:トシル酸5-イソブチリルシチジン(IV)の調製:
溶媒の酢酸エチルをアセトニトリルに置き換えたことを除いて、実施例1に記載のように実験を行った(収率:80.6%;HPLCによる純度:98.6%)。
【0029】
実施例4:2’,3’-O-イソプロピリデンシチジン-5’-イソ酪酸エステル(III)の調製:
硫酸シチジンアセトニド(II)(3g)、4-ジメチルアミノピリジン(0.19g、0.2当量)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(3.15g、3.1当量)をアセトニトリル(30mL)に溶解し、無水イソ酪酸(3.15g、1.6当量)を15分間加えた。溶液を16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物を水(100mL)およびジクロロメタン(100mL)で処理した。5分間撹拌した後、2つの層を分離し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して2.6g(95%)の(III)を得た。HPLCによる純度:83.15%;9.04%の不純物1および0.31%の未知の不純物2
【0030】
実施例5:シチジン-5’-イソ酪酸エステル遊離塩基(V)の調製:
シチジン-5’-イソ酪酸エステルトシル酸塩(IV)(15g、0.031mol)をアセトン(300mL)に懸濁し、撹拌した。懸濁液にジシクロヘキシルアミン(6.72g、0.037mol)を加え、撹拌を2時間続けた。トシル酸ジシクロヘキシルアンモニウムの沈殿した塩を濾過により除去した。固体をアセトン(50mL)で洗浄した。アセトン濾液をプールし、減圧下で濃縮した。残留物を水(100mL)に溶解し、ジクロロメタン(2×100mL)で洗浄した。水溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体残留物をアセトンで共沸混合させて、8.3g(85%Y)の泡状固体(V)を得た。HPLCによる純度:99.5%。
【0031】
実施例6:シチジン-5’-イソ酪酸エステル遊離塩基(V)の調製:
アセトンを1,4-ジオキサンに置き換えて7.8g(80.6%Y)の(V)を得たことを除いて、実施例4に記載のように実験を行った。HPLCによる純度:98.6%。
【0032】
実施例7:モルヌピラビル(I)の調製:
イソブチリルシチジン(V)(5.0g、0.15mmol)を70%イソプロピルアルコールに懸濁し、硫酸ヒドロキシルアミン(8.4g、0.51mmol)を加えた。反応混合物を75~80℃に16時間加熱した。イソプロピルアルコール層を分離し、減圧下で濃縮した。残留物をイソプロピルアルコール(60mL)に溶解し、濾過により未溶解物を除去し、濾液を濃縮し、残留物を再び50℃でイソプロピルアルコールに溶解した。透明な溶液を冷却し、固体を濾過して、3.7g(71%)の(I)を無色の固体として得た。HPLC:99.29。
【外国語明細書】