(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167737
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119987
(22)【出願日】2021-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021073562
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597164460
【氏名又は名称】株式会社アビックス
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】二宮 俊二
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK33
(57)【要約】
【課題】装置の大型化及び構造の複雑化を招くことなく、比較的低出力な紫外線照射機能でも、除菌対象物を十分に除菌可能にする。
【解決手段】紫外線殺菌装置10は、長さ方向の少なくとも一端部が開放され、内部に車両用手摺り12を受け入れる開口部が形成された筒状の本体部11と、本体部11の内壁面11B又は車両用手摺り12に取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射部13と、を備え、本体部11は、外周面11Aを有して紫外線を透過させる素材により形成された筒状の外周部111と、本体部11の径方向において外周部111の内側に設けられた筒状の内周部112とを有し、内周部112に、照射する紫外線が外周部111の内壁面11Bに向けて進む向きで紫外線照射部13が設けられ、紫外線照射部13は、紫外線が外周部111の内部を透過して外周面11Aまで到達する照射出力とされている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が人の手が触れる接触面とされ、長さ方向の少なくとも一端部が開放されて、内部に棒状部材を受け入れる開口部が形成された筒状の本体部と、
前記本体部に取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、
前記本体部は、前記外周面を有して紫外線を透過させる素材により形成された筒状の外周部と、前記本体部の径方向において前記外周部の内側に設けられた筒状の内周部とを有し、
前記内周部に、照射する紫外線が前記外周部の内壁面に向けて進む向きで前記紫外線照射部が設けられ、
前記紫外線照射部は、紫外線が前記外周部の内部を透過して前記外周面まで到達する照射出力とされている紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記外周部は、フォトクロミック色素のスピロピラン又はスピロオキサジンからなる物質を含み、前記紫外線照射部による紫外線照射時には有色となって、紫外線を前記外周面よりも外側に通過させない請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記外周部には、前記外周面に対する接触でスイッチがオンとなる静電容量スイッチと、前記静電容量スイッチがオンとなったときに光を透過させ、前記静電容量スイッチがオフであるときには光を透過させない液晶ブラインド構造とが設けられている請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
前記外周部は、可撓性を有する素材により形成され、外側からの押圧により撓むことが可能とされ、
前記内周部及び前記外周部は、同一の屈折率を有する素材からなり、
前記外周部が前記押圧により前記内周部側に撓まない状態では、前記紫外線照射部による照射で前記外周部の前記外周面に入射する紫外線の角度θが臨界角θc以上とされ、
前記外周部が前記押圧により前記内周部側に撓んだときに、前記紫外線照射部から照射される紫外線が、前記外周面に入射する角度θが臨界角θcよりも小さくなって、前記外周部の撓み部分を透過する、請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項5】
前記紫外線照射部は、前記外周部の厚み方向において前記外周部内に一部が入り込んだ状態で前記内周部の周方向における複数の位置に配置され、
前記本体部は、前記外周部及び前記内周部に加えて、前記外周部及び前記内周部の間に介在して前記外周部と前記内周部との間に空間を形成する複数のスペーサーを備え、
前記スペーサーは、少なくとも前記紫外線照射部に対向する側面部が、紫外線を透過させない素材からなり、前記内周部の前記外周部側の壁面を周方向に取り囲む輪状とされ、前記内周部の前記壁面上に前記本体部の長さ方向において一定間隔おきに複数設けられ、
前記外周部は、可撓性を有する素材により形成され、複数の前記スペーサー間において、外側からの押圧により撓むことが可能な厚さとされ、
前記紫外線照射部は、前記内周部の周方向における複数の位置に配置され、前記外周部の内壁面及び前記内周部の前記壁面に対して平行に前記本体部の長さ方向に前記外周部内を進む紫外線を照射し、
前記外周部が前記押圧により前記内周部側に撓んだときに、前記紫外線照射部から照射される紫外線が前記外周部の前記外周面に向けて進んで前記外周部の撓み部分を透過する、請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項6】
前記外周部の前記外周面にフォトクロミック色素のスピロピラン又はスピロオキサジンからなる物質を塗布、又は、前記外周部内で前記外周面から前記撓む部分に相当する厚み部分に前記外周部がフォトクロミック色素のスピロピラン又はスピロオキサジンからなる物質を含み、前記紫外線照射部による紫外線照射時には前記外周部の前記塗布の部分又は前記厚み部分が有色となって、紫外線を前記外周部の前記外周面よりも外側に通過させない請求項5に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項7】
前記紫外線照射部は、前記外周部の厚み方向において前記外周部内に一部が入り込んだ状態で前記内周部の周方向における複数の位置に配置され、
前記本体部は、前記外周部及び前記内周部に加えて、前記外周部及び前記内周部の間に介在して前記外周部と前記内周部との間に空間を形成する複数のスペーサーを備え、
前記スペーサーは、前記内周部の前記外周部側の壁面上に一定間隔おきに設けられ、
前記紫外線照射部に対向する前記外周部の断面領域であって、前記外周部の厚み方向における、前記外周部の前記外周面が前記内周部側に撓む部分以外の領域と、前記厚み方向において前記撓む部分にその最大撓み量の半分まで入り込んだ領域とに、前記紫外線照射部から照射される紫外線を遮断する遮光層が設けられ、
前記紫外線照射部の紫外線照射方向前方となる前記空間に、前記紫外線照射部から照射される紫外線を遮断する遮光板が前記紫外線照射部に密接させて設けられ、
前記紫外線照射部は、前記内周部の周方向における複数の位置に配置され、前記外周部の内壁面及び前記内周部の前記壁面に対して平行に前記本体部の長さ方向に前記外周部内を進む紫外線を前記遮光層が設けられていない領域を通して前記外周部内に照射し、前記外周部の前記外周面が前記内周部側に撓む部分にのみ紫外線を照射する、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記スペーサーにより形成される前記空間は、前記外周部及び前記内周部の間を、人の手の指紋の溝深さに角層の厚みを加算した距離に相当する予め定められた間隔とするものである、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の紫外線殺菌装置。
【請求項9】
前記紫外線照射部は、紫外線照射方向の前方に凸レンズを備え、
前記凸レンズが、前記照射される紫外線を、前記外周部の内壁面及び前記内周部の前記壁面に対して平行に前記本体部の長さ方向に前記空間内を進む紫外線とする、請求項5乃至請求項8のいずれかに記載の紫外線殺菌装置。
【請求項10】
前記紫外線照射部は、前記本体部の長手方向の一方に向けて紫外線を照射する第1照射部と、前記一方と逆方向に向けて紫外線を照射する第2照射部とが、前記長手方向において互いの照射方向を向き合わせて配置されて構成され、
前記内周部の周方向における複数の位置に前記紫外線照射部がそれぞれ配置されている、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線殺菌装置に関し、特に、対象物を消毒する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に悪影響を与えるウイルス及び菌の存在が懸念されており、ウイルス及び菌の感染経路の1つとして接触感染がある。そのため、この経路による感染を断つことができれば感染を防ぐことができる。不特定多数の人が触れる鉄道車両の手摺り等に対しては、この観点からの感染予防策を採ることが望まれる。
【0003】
下記特許文献1~3には、エスカレーターの手摺りベルトの手摺り面にその表面から紫外線を照射する紫外線殺菌装置を設ける構造が記載されている。下記特許文献4には、エスカレーター及びトラベーター(動く歩道)の手摺りに、手摺りの送り出し口に消毒液を含ませた拭布を設け同時に紫外線除菌管を設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3226161号公報
【特許文献2】特許第6412231号公報
【特許文献3】特表2005-523860号公報
【特許文献4】特開平11-116173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線には細菌やウイルスを死滅させる効果があるが、上記特許文献1~4に記載されているように、除菌対象物の表面(人の手が触れる部分)に紫外線を直接照射させる場合、紫外線殺菌装置を除菌対象物に対向する位置に配置しなければならず、装置の大型化及び構造の複雑化を招く。このため、例えば、鉄道車両の手摺りの表面の近くに紫外線殺菌装置を配置して当該表面に紫外線を直接照射するのは設計上困難である。また、紫外線殺菌装置を除菌対象物から距離が離れた位置に配設すると、十分な除菌効果を確保するために比較的高出力な紫外線線照射機能が必要になる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、装置の大型化及び構造の複雑化を招くことなく、比較的低出力な紫外線照射機能でも、除菌対象物を十分に除菌可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る紫外線殺菌装置は、外周面が人の手が触れる接触面とされ、長さ方向の少なくとも一端部が開放されて、内部に棒状部材を受け入れる開口部が形成された筒状の本体部と、前記本体部に取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、前記本体部は、前記外周面を有して紫外線を透過させる素材により形成された筒状の外周部と、前記本体部の径方向において前記外周部の内側に設けられた筒状の内周部とを有し、前記内周部に、照射する紫外線が前記外周部の内壁面に向けて進む向きで前記紫外線照射部が設けられ、前記紫外線照射部は、紫外線が前記外周部の内部を透過して前記外周面まで到達する照射出力とされているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、除菌対象とする、人の手が触れる外周面に対して、その外側からではなく、その内側から紫外線を照射するので、本体部の内側に外周面と接近させて紫外線照射部を配設することが可能となる。これにより、装置の大型化及び構造の複雑化を招くことなく、比較的低出力な紫外線照射機能でも、人の手が触れる部分を十分に除菌することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る紫外線殺菌装置を有した、車両用手摺りを備えた鉄道車両の内装構造の一例を示す概略図である。
【
図2】(A)は第1実施形態に係る紫外線殺菌装置及び車両用手摺り部分を示す透過斜視図であり、(B)は(A)で示すB-B線断面図である。
【
図4】(A)は第2実施形態に係る紫外線殺菌装置及び車両用手摺り部分を示す透過斜視図であり、(B)は(A)で示すB-B線断面図である。
【
図5】特有の構成を有する紫外線殺菌装置の第1実施形態を示す図であり、(A)は特有の構成を有する紫外線殺菌装置の第1実施形態を示す、
図2に示すB-B線での断面図であり、(B)は(A)におけるC-C線での断面を部分的に示した図であり、紫外線照射を受けて外周部が有色に変化した状態を示す図、(C)は(A)におけるC-C線での断面を部分的に示した図であり、人の手が触れて当該手の熱により部分的に消色した外周部の状態を示す図である。
【
図6】特有の構成を有する紫外線殺菌装置の第2実施形態を示す図であり、(A)は特有の構成を有する紫外線殺菌装置の第2実施形態を示す、
図2に示すB-B線での断面図であり、(B)は(A)におけるD-D線での断面を部分的に示した図であり、液晶ブラインド装置が紫外線を透過させていない状態を示す図、(C)は(A)におけるD-D線での断面を部分的に示した図であり、液晶ブラインド装置が紫外線を透過させている状態を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係る紫外線殺菌装置における外周部の外周面に入射する紫外線の反射具合を示す図である。
【
図8】(A)は、第4実施形態に係る紫外線殺菌装置における外周部の外周面に入射する紫外線の反射具合を示す図、(B)は、第4実施形態に係る紫外線殺菌装置において、外周部の内壁が撓んだときに外周部の外周面に入射する紫外線の反射具合を示す図である。
【
図9A】特有の構成を有する紫外線殺菌装置の第5実施形態を示す、
図2に示すB-B線での断面図である。
【
図9B】
図9AにおけるE-E線での断面を部分的に示した図である。
【
図10】特有の構成を有する紫外線殺菌装置の第5実施形態において、本体部を側方の外側から見た状態の他の例を示す図である。
【
図11】紫外線殺菌装置を、人が手で本体部の外周部を外周側から掴んで押圧したときの様子を側断面視で示す図である。
【
図12】紫外線殺菌装置の第6実施形態において、本体部を側方の外側から見た状態を示す図である。
【
図13】紫外線殺菌装置の第6実施形態を、人が手で本体部の外周部を外周側から掴んで押圧したときの様子を側断面視で示す図である。
【
図14】紫外線殺菌装置の第5実施形態の更なる実施形態である第7実施形態において、本体部を側方の外側から見た状態を示す図である。
【
図15】紫外線殺菌装置の第7実施形態を、人が手で本体部の外周部を外周側から掴んで押圧したときの様子を側断面視で示す図である。
【
図16】紫外線殺菌装置の第8実施形態において、本体部を側方の外側から見た状態を示す図である。
【
図17】紫外線殺菌装置の第8実施形態において、本体部を側方の外側から見た状態を示す図である。
【
図18】紫外線殺菌装置の第8実施形態を、人が手で本体部の外周部を外周側から掴んで押圧したときの様子を側断面視で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る紫外線殺菌装置について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置を有した、車両用手摺りを備えた鉄道車両の内装構造の一例を示す概略図である。
【0011】
鉄道車両1には、腰掛2と、腰掛2の上方において鉄道車両1の前後方向に伸びる内装バー3と、内装バー3に取り付けられた吊手4と、床面5から垂直方向に延びる車両用手摺り12と、紫外線殺菌装置10と、が備えられている。紫外線殺菌装置10は、人の手が接触する外周面11Aを有する本体部11を備える。車両用手摺り12は、床面5から垂直方向に伸び、本体部11を支持する棒状の部材(例えば、ステンレス支柱)である。以下、車両用手摺り12は、特許請求の範囲における棒状部材の一例である。
【0012】
図2(A)は、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10及び車両用手摺り12部分を示す透過斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)で示すB-B線断面図である。
【0013】
紫外線殺菌装置10は、本体部11と、紫外線を照射する紫外線照射部13とを備える。本体部11は、外周面11Aが人の手が触れる接触面とされ、長さ方向の少なくとも一端部が開放された筒状とされている。本実施形態では、本体部11は、長さ方向の両端部が開放された形状のものを示している。本体部11は、このように長さ方向の一端部又は両端部が開放されることで、当該開放部分を開口部11Cとして、開口部11Cから内部に、棒状部材である車両用手摺り12の受け入れが可能とされている。なお、紫外線殺菌装置10の車両用手摺り12への取付は、例えば、紫外線殺菌装置10を、車両用手摺り12を鉄道車両1に配設して固定する前に、車両用手摺り12に取り付けておくようにする。或いは、長さ方向から見て側面視半月状等となるように長さ方向に切断して紫外線殺菌装置10を複数部分に分割し、分割した各部分を鉄道車両1に配設された状態の車両用手摺り12の外周に1つずつ取り付けて紫外線殺菌装置10として完成させることで、紫外線殺菌装置10を車両用手摺り12に取り付けるようにしてもよい。
【0014】
本体部11は、紫外線を透過させる材質の部材(例えば、アクリル、石英、又は蛍石)で構成されている。本体部11は、長さ方向に延びる空洞を有する。本体部11は、車両用手摺り12を包むように配設される。本体部11は、外周部111及び内周部112を備えている。外周部111は、外周面11Aを有して紫外線を透過させる素材により形成された筒状の部材である。内周部112は、本体部11の径方向において外周部111の内側に設けられた筒状の部材である。外周部111及び内周部112は、紫外線を透過させる材質の上記部材により成形されてなる。
【0015】
紫外線照射部13は、例えば、紫外線LED(Light emitting diode)であり、
図3に示すように、車両用手摺り12の長さ方向D1の一方に向けて紫外線を照射するように配置される第1照射部131と、その逆方向に向けて紫外線を照射するように配置される第2照射部132とを備える。また、
図2(A)(B)に示すように、第1照射部131及び第2照射部132は、長さ方向において互いの照射方向を向き合わせて対の関係を生成して、内周部112の内部に設けられている。紫外線照射部13は、紫外線が外周部111の内部を透過して外周部111の外周面11Aまで到達する照射出力とされている。内周部112の内部には一対の第1照射部131及び第2照射部132を内包するための空間が複数設けられており、一対の第1照射部131及び第2照射部132がそれぞれの当該空間に収納される。すなわち、内周部112は、紫外線照射モジュールとして機能する。
【0016】
また、紫外線照射部13は、内周部112の内部において、その周方向における複数の位置にそれぞれ配置されている。本実施形態では、紫外線照射部13は、内周部112の周方向の全域における複数の位置にそれぞれ配置されている形態を示している。すなわち、対の関係を生成する第1照射部131,第2照射部132は、上記周方向における内周部112の全域にわたって配置されている。本実施形態では、対の関係を生成する第1照射部131,第2照射部132が、内周部112に、本体部11の長さ方向においても複数の位置にそれぞれ設けられた形態を示す。第1照射部131,第2照射部132は、紫外線を照射できる距離が、その性能上長く確保でき、後述する他の条件を満たせる場合は、当該長さ方向においては、一対の第1照射部131,第2照射部132のみを設けるようにすることも可能である。なお、紫外線照射部13(第1照射部131,第2照射部132)については、頂部が半球形状の砲弾型LEDが適用可能であり、更にはこれよりも、広範囲に紫外線が広がる円筒型LEDが望ましい。
【0017】
紫外線照射部13は、内周部112への取付は、(1)紫外線照射部13を内周部112の内部に形成した空間からなる収納部に直接取り付ける、或いは、(2)紫外線照射部13を基板上に設け(当該基板は内周部112の周方向の形状に沿った形状とされる。当該基板は図略)、この基板を、紫外線照射部13が配設されている面を外周部111の内壁面11Bに向けた状態として内周部112に配置されるように、収納部に取り付ける、等により行う。なお、紫外線照射部13からの電気配線は、特に図示していないが、紫外線照射部13に接続された電気配線が、電源に接続されているものとする。
【0018】
次に、第2実施形態に係る紫外線殺菌装置20を説明する。
図4(A)は、第2実施形態に係る紫外線殺菌装置20及び車両用手摺り12部分を示す透過斜視図であり、
図4(B)は、
図4(A)で示すB-B線断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0019】
紫外線殺菌装置20は、本体部11と、紫外線を面照射する紫外線照射部23と、を備える。本体部11は、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10と同様の構成である。
【0020】
紫外線照射部23は、例えば、面照射型の紫外線LEDである。紫外線照射部23は、外周部111の内壁面21B側に向けて紫外線を照射する向きで、内周部112の内部において、その周方向における複数の位置にそれぞれ配置されている。本実施形態では、紫外線照射部23は、内周部112の周方向の全域における複数の位置にそれぞれ配置されている形態を示している。すなわち、紫外線照射部23は、上記周方向における内周部112の全域にわたって配置されている。本実施形態では、紫外線照射部23が、内周部112に、本体部11の長さ方向においても複数の位置にそれぞれ設けられた形態を示す。紫外線照射部23は、紫外線が外周部111の内部を透過して外周部111の外周面21Aまで到達する照射出力とされている。
【0021】
紫外線照射部23は、内周部112への取付は、(1)紫外線照射部23を内周部112の内部に形成した収納部に直接取り付ける、或いは、(2)紫外線照射部23を基板上に設け(当該基板は内周部112の周方向の形状に沿った形状とされる。当該基板は図略)、この基板を、紫外線照射部23が配設されている面を外周部111の内壁面21Bに向けた状態として内周部112に配置されるように、収納部に取り付ける、等により行う。なお、紫外線照射部23からの電気配線は、特に図示していないが、紫外線照射部23に接続された電気配線が、電源に接続されているものとする。
【0022】
上記第2実施形態によれば、除菌対象である本体部21の外周面21Aに対して、本体部21の外側からではなく、内壁面21Bから紫外線が照射される。このため、紫外線照射部23と除菌対象との距離は本体部21の厚み分のみに近くなり、除菌対象に対して紫外線照射部23を接近した位置に配置できるので、除菌対象と紫外線照射部23との距離を従来よりも縮めることができる。また、紫外線照射部23を本体部21の内部に配設しているので、紫外線照射部23の配設に複雑な構造が要求されることもない。これにより、上記実施形態に係る紫外線殺菌装置20では、装置の大型化及び構造の複雑化を招くことなく、比較的低出力な紫外線照射機能でも、人の手が触れる部分である外周面21Aを、十分に除菌することが可能になる。
【0023】
また、上記第1又は第2実施形態では、紫外線殺菌装置10が備える本体部11、及び紫外線殺菌装置20が備える本体部21は筒状とされ、車両用手摺り12は円柱状とされているが、これに代えて、車両用手摺り12が角柱状とされ、本体部11が、車両用手摺り12の外径に合わせた形状として同様に角柱状とされてもよい。
【0024】
次に、上記第1又は第2実施形態に係る紫外線殺菌装置10,20が示す構造を前提として、更に特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の実施形態を説明する。
図5は、特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第1実施形態を示す図である。
図5(A)は特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第1実施形態を示す、
図2に示すB-B線での断面図であり、(B)は(A)におけるC-C線での断面を部分的に示した図であり、紫外線照射を受けて外周部111が有色に変化した状態を示す図、(C)は(A)におけるC-C線での断面を部分的に示した図であり、人の手が触れて当該手の熱により部分的に消色した外周部111の状態を示す図である。
【0025】
特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第1実施形態は、第1又は第2実施形態に係る紫外線殺菌装置10,20のいずれの構造を備えていてもよいが、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10の構造を備える場合を例にして説明する。
【0026】
図5(A)に示すように、特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第1実施形態では、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10の構成を備え、更に、外周部111に、フォトクロミック色素のスピロピラン又はスピロ系化合物(以下、単にフォトクロミック色素という)Pgが含まれている。外周部111は、上述したアクリル、石英、又は蛍石等で形成された筒状部材からなるが、フォトクロミック色素Pgが充填(表面に塗布)されている。そして、紫外線照射部13が紫外線を照射して、このような外周部111の内壁面11B側から外周部111の内部を通って外周面11Aまで紫外線を到達させる。
【0027】
外周部111が紫外線照射部13により紫外線の照射を受けると、
図5(B)に示すように、外周部111内のフォトクロミック色素Pgはメロシアニン体の異性化(開環体)により有色(ここでは、黒色)に変化する。このため、外周部111は、外周面11Aを含む全体が紫外線により殺菌されるが、外周部111を透過する紫外線は、有色のメロシアニン体(開環体)により遮られて外周部111の外周面11Aよりも外側には通過せず、外周面11Aまでで止まる。
【0028】
また、このように紫外線照射で有色に変化した外周部111は、外周面11Aに人の手が触れて、当該手の熱(約35~40℃)が伝達されると、手が接触している間は、
図5(C)に示すように、触れた指により加熱されている部分P1のフォトクロミック色素Pgは元のメロシアニン体(閉環体)に戻り消色する。このため、外周部111内において元のメロシアニン体(閉環体)に戻ったフォトクロミック色素Pgの部分P1では、メロシアニン体により紫外線が遮られるという現象は起こらないため、紫外線照射部13により照射された紫外線は、外周部111内を透過して外周面11Aよりも外側に通過する状態になる。ここで、当該外周面11A部分には、人の手が触れているため、紫外線は外周面11Aにおいて人の手により遮られる。従って、紫外線照射部13により照射された紫外線は、外周面11Aまで到達して、外周部111及び接触している人の手部分を殺菌するが、紫外線殺菌装置100の周辺に放出されることはない。
【0029】
このように、特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第1実施形態によれば、紫外線殺菌装置100の周辺に紫外線を放出することなく、紫外線照射部13から照射する紫外線により外周部111及び接触している人の手部分を効果的に殺菌することができる。
【0030】
次に、上記第1又は第2実施形態に係る紫外線殺菌装置10,20が示す構造を前提として、更に特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第2実施形態を説明する。
図6は、特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第2実施形態を示す図である。
図6(A)は特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第2実施形態を示す、
図2に示すB-B線での断面図であり、(B)は(A)におけるD-D線での断面を部分的に示した図であり、液晶ブラインド装置が紫外線を透過させていない状態を示す図、(C)は(A)におけるD-D線での断面を部分的に示した図であり、液晶ブラインド装置が紫外線を透過させている状態を示す図である。
【0031】
第2実施形態に係る紫外線殺菌装置100は、第1又は第2実施形態に係る紫外線殺菌装置10,20のいずれの構造を備えていてもよいが、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10の構造を備える場合を例にして説明する。但し、外周部111の構造は第1又は第2実施形態に係る紫外線殺菌装置10,20の構造とは異なる。
【0032】
図6(A)に示すように、第2実施形態に係る紫外線殺菌装置100では、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10の構成が備えられ、更に、外周部111の外周面11Aにおける予め定められた領域に、静電容量方式の静電容量センサーSnが設けられている。当該予め定められた領域は、人の手が触れる領域として定められた外周面11Aの全域又はその一部領域である。ここでは、予め定められた領域を当該全域として説明する。本実施形態で用いる静電容量センサーSnは、透明である。また、静電容量センサーSnは、外周部111の一部であり、静電容量センサーSnの外周面が外周部111の外周面11Aをなすものとする。
【0033】
また、外周部111には、液晶ブラインド装置50がその周方向の全域を覆って設けられている。液晶ブラインド装置50は、例えば、2枚の透明電極付きガラス基板で液晶層を挟んだ構造である。液晶ブラインド装置50は、液晶層内の液晶分子の向きと2枚の偏光板の偏光方向を組み合わせて光の透過量を制御して紫外線の透過及び不透過を切り換える。
【0034】
外周部111は、液晶ブラインド装置50の上(外側)に静電容量センサーSnが重ねて設けられてなる。静電容量センサーSnは、既存の静電容量センサーであり、外周面11Aに対して人の手が接触すると、当該接触した領域部分についてのスイッチがオンとなり、外周面11Aに対して人の手が接触していないときに接触していない部分についてのスイッチがオフとなり、これら各領域についてのスイッチオンオフを示す、オン信号及びオフ信号を液晶ブラインド装置50に出力する。
【0035】
液晶ブラインド装置50は、静電容量センサーSnからオン信号を受け取ったときに当該オン信号の対象となっている領域部分については紫外線を透過させ、静電容量センサーSnからオフ信号を受け取ったときは当該オフ信号の対象となっている領域部分については紫外線を透過させない動作を行う。
【0036】
これにより、第2実施形態に係る紫外線殺菌装置100では、外周部111が紫外線照射部13により紫外線の照射を受けている状態で、人の手が外周面11Aに触れず、静電容量センサーSnがオフ信号を液晶ブラインド装置50に出力しているときは、
図6(B)に示すように、液晶ブラインド装置50は、当該オフ信号の対象となっている領域部分については紫外線を透過させない。
【0037】
また、第2実施形態に係る紫外線殺菌装置100では、外周部111が紫外線照射部13により紫外線の照射を受けている状態で、人の手が外周面11Aに触れて、静電容量センサーSnがオン信号を液晶ブラインド装置50に出力しているときは、
図6(C)に示すように、液晶ブラインド装置50は、当該オン信号の対象となっている領域部分については紫外線を透過させる。
【0038】
このように液晶ブラインド装置50が、当該オン信号の対象となっている領域部分についてのみ紫外線を透過させるとき、外周部111の内壁面11B側から紫外線照射部13により照射される紫外線は外周面11Aよりも外側に通過する状態にする。ここで、当該外周面11Aのオン信号の対象となる部分には、人の手が触れているため、紫外線は外周面11Aの外側では人の手により遮られる。従って、紫外線照射部13により照射された紫外線は、外周部111及びその外周面11A(静電容量センサーSnを含む)と、接触している人の手部分とを殺菌するが、紫外線殺菌装置100の周辺に照射されることはない。
【0039】
すなわち、特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第2実施形態によれば、紫外線殺菌装置100の周辺に紫外線を放出することなく、紫外線照射部13から照射する紫外線により外周部111及びその外周面11A(静電容量センサーSnを含む)と、接触している人の手部分とを効果的に殺菌することができる。
【0040】
次に、上記第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10が示す構造を前提として、更に特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る紫外線殺菌装置100は、第1実施形態に係る紫外線殺菌装置10の構造を備えている。
【0041】
第3実施形態に係る紫外線殺菌装置100では、
図7に示すように、紫外線照射部13による照射で、内周部112及び外周部111を透過して外周面11Aに入射する紫外線の角度θが、外周面11Aに入射する紫外線が全反射を生じる臨界角θc以上とされている。
【0042】
このため、第3実施形態に係る紫外線殺菌装置100によれば、外周面11Aを通過して紫外線殺菌装置100の周辺に紫外線を放出させることなく、外周面11Aを殺菌することができる。
【0043】
なお、第3実施形態に係る紫外線殺菌装置100では、紫外線照射部13の第1照射部131及び第2照射部132から照射される紫外線は、外周面11Aに入射する紫外線の角度θを安定して臨界角θc以上にするために、凸レンズを通すことにより紫外線同士の平行度の高い光線を作り出して、第1照射部131及び第2照射部132からの紫外線照射方向を一定方向に限定し、この光線を外周部111に向かわせることにより、光線による外周面11Aに対する紫外線の入射角度を一定にすることが望ましい。下記に示す第4実施形態でも同様である。
【0044】
このように、上記紫外線殺菌装置10,20,100によれば、除菌対象である本体部11の外周面11Aに対して、本体部11の外側からではなく、内壁面11Bから紫外線が照射される。このため、紫外線照射部13と除菌対象との距離は本体部11の厚み分のみに近くなり、除菌対象に対して紫外線照射部13を接近した位置に配置できるので、除菌対象と紫外線照射部13との距離を従来よりも縮めることができる。また、紫外線照射部13を本体部11の内部に配設しているので、紫外線照射部13の配設のために複雑な構造が要求されることもない。これにより、上記実施形態に係る紫外線殺菌装置10,20,100では、装置の大型化及び構造の複雑化を招くことなく、比較的低出力な紫外線照射機能でも、人の手が触れる部分である外周面11Aを、十分に除菌することが可能になる。
【0045】
次に、上記紫外線殺菌装置100の第3実施形態が示す構造を前提として、更に特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第4施形態を説明する。第4実施形態に係る紫外線殺菌装置100の説明では、紫外線殺菌装置100の第3実施形態と異なる構造について説明する。
【0046】
第4実施形態に係る紫外線殺菌装置100は、外周部111は、可撓性を有する材質、例えば、シリコーンゲル、又はアクリルアミドゲル等からなる。
【0047】
図8(A)に示すように、紫外線照射部13は内周部112の内部に設けられ、内周部112の内を通って、外周部111の外周面11Aに到達する。更に、紫外線照射部13による照射で外周部111の外周面11Aに入射する紫外線の角度θが、外周面11Aに入射する紫外線が全反射を生じる臨界角θc以上とされている。ここでは、「臨界角」からは紫外線が全反射を生じるものとしている。すなわち、第4実施形態に係る紫外線殺菌装置100では、外周部111の外周面11Aに入射する紫外線の角度θが、外周面11Aに入射する紫外線が全反射を生じる臨界角θc以上となる紫外線照射部13を用いる。
【0048】
ここで、人が外周部111の外周面11Aを手で握り、外周面11Aに押圧が加わると、外周部111は可撓性を有するため、外周部111の外周面11Aは、
図8(B)に示すように、内周部112側に撓む。このとき、外周面11Aに対する紫外線の入射角は、撓む前の角度θから撓み後の角度θ1に変化し、両角度はθ>θ1の関係となる部分が生じる。このため、撓み後の角度θ1が臨界角θc未満となれば、紫外線は外周面11Aを透過して外周部111の外方に向かうことになる。これにより、紫外線照射部13により照射された紫外線は、外周面11Aまで到達して、外周部111及び接触している人の手部分を殺菌する。しかしながら、当該撓んだ部分の外周面11A部分には、人の手が触れているため、紫外線は外周面11Aにおいて人の手により遮られる。従って、紫外線照射部13により照射された紫外線は、外周面11Aまで到達して、外周部111及び接触している人の手部分を殺菌するが、紫外線殺菌装置100の周辺に放出されることは極めて少ない。
【0049】
このため、特有の構成を有する紫外線殺菌装置100の第4実施形態によれば、紫外線殺菌装置100の周辺に紫外線を放出することなく、紫外線照射部13から照射する紫外線により外周部111及び接触している人の手部分を効果的に殺菌することができる。
【0050】
次に、上記紫外線殺菌装置100の第3実施形態が示す構造を前提として、更に特有の構成を有する、紫外線殺菌装置100の第5実施形態となる紫外線殺菌装置10Aを説明する。以下には、紫外線殺菌装置10Aが、第4実施形態に係る紫外線殺菌装置100と異なる点を説明する。
【0051】
紫外線殺菌装置10Aは、紫外線殺菌装置100の第3実施形態とは本体部11の構成が異なる。紫外線殺菌装置10Aにおいて、本体部11は、長さ方向の両端部が開放され、開放された開口部から内部に、棒状部材である車両用手摺り12の受け入れが可能とされている構成は、紫外線殺菌装置100の第3実施形態と同様であるが、紫外線殺菌装置10Aでは、
図9A及び
図9Bに示すように、本体部11が、外周部113と、スペーサー114と、内周部112とで構成される点で、紫外線殺菌装置100の第3実施形態とは異なっている。なお、各実施形態では、全ての図において、紫外線殺菌装置の構造を分かりやすく示すために、装置各部の大きさは実際とは異なる大きさで例示している。特に
図9A及び
図9B以降の各図では、紫外線殺菌装置100の第3実施形態の構造を分かりやすく示すために、各部材の相対的な大きさは実際とは異なる大きさで示している。
【0052】
上記の外周部113は、可撓性を有する材質、例えば、PET等からなる筒状の部材である。外周部113は、外側からの押圧により撓むことが可能な厚さ、例えば、0.1~0.6mmの厚さとされることが好ましい。外周部113は、撓むことが可能な強度を確保できる場合は、シリコーンゲル又はアクリルアミドゲル等からなるものとしてもよい。本実施形態では、外周部113の厚さが0.2mmであるものとする。内周部112は、上述したように、紫外線を透過させる材質の部材(例えば、アクリル、石英、又は蛍石)により形成された筒状の部材である。
【0053】
外周部113は、スペーサー114を介して内周部112の壁面112Bに取り付けられている。すなわち、外周部113は、内周部112よりも直径が大きい筒状である。外周部113は、スペーサー114により、内周部112の壁面112Bから一定距離だけ離れた位置において、内周部112の外周に沿った形状で、内周部112の外方を覆っている。すなわち、外周部113の内壁面113Aと内周部112の壁面112Bとの間には、スペーサー114が介在し、当該スペーサー114により、外周部113の内壁113Aと内周部112の壁面112Bとの間に、これら両部材間が上記一定距離となる空間Sが設けられている。
【0054】
スペーサー114は、紫外線を透過させない材質の部材、例えば、合成樹脂等により形成される。スペーサー114は、少なくとも紫外線照射部13に対向する側面部が紫外線を透過させない素材により形成されていればよい。例えば、スペーサー114は、アクリル、石英、又は蛍石等により形成され、上記側面部に、紫外線を遮光する素材からなる遮光層が設けられたものであってもよい。スペーサー114は例えば、その高さhが上記一定距離とされ、上記一定距離は、例えば、0.05~0.1mm、最も好ましくは0.07mmとされる。本実施形態では、上記一定距離は、0.07mmであるものとする。また、スペーサー114は、例えば、(i)長さが上記一定距離で、直径が1~2mmの円柱状、又は、(ii)長さが上記一定距離で、外周部111の径方向から見た断面視での対角線が1~2mmの四角柱状とされる。
【0055】
ここで、スペーサー114は、例えば、
図10に示すように、スペーサー114は、内周部112の外周部113側の壁面を周方向に取り囲む輪状とされる。スペーサー114は、上記一定距離の高さhを幅として有する輪状からなる。スペーサー114は、本体部11の長さ方向において複数の位置に設けられる。例えば、当該方向において隣り合う2つのスペーサー114により挟まれて形成される矩形領域Sqは、少なくとも、一般的な人の親指の腹部分の面積として予め定められた面積以上の領域が収まる大きさとされる。これにより、例えば、人が手で本体部11の外周部113を外周側から掴んで押圧したときに、外周部113の矩形領域Sq部分が内周部112方向に撓むことを可能にしている。この場合における矩形領域Sqは、好ましくは、例えば、本体部11の長さ方向幅が3cmで、当該長さ方向に直交する方向の長さは、輪状のスペーサー114の直径とされる。なお、紫外線照射部13の向かい合う第1照射部131及び第2照射部132は、上記長さ方向における第1照射部131及び第2照射部132の間に必ず2つのスペーサー114が配置される状態で設けられる。
【0056】
更に、
図9Bに示すように、内周部112には、内周部112の径方向(厚さ方向)に窪んだ凹部からなる収容部1121が設けられている。収容部1121は、
図9Bに示す側面視で、紫外線照射部13の紫外線照射部分の一部を空間Sに露出させ、更に外周部113の厚み方向において外周部113内に一部が入り込んだ状態で、紫外線照射部13を収容する。これにより、紫外線照射部13による外周部113内への紫外線照射を可能にしている。
【0057】
そして、紫外線照射部13の第1照射部131及び第2照射部132は、
図9Bに示す側面視で、外周部113の外周面11Aに対して平行に外周部113内を進む紫外線を照射する。紫外線照射部13による機能により当該平行な紫外線を照射してもよいし、凸レンズ116を用いて、当該平行な方向に紫外線が照射されるようにしてもよい。本実施形態では、凸レンズ116を用いる例を説明する。すなわち、紫外線殺菌装置100の第5実施形態では、このようにして当該平行な方向に紫外線を照射可能となる紫外線照射部13を用いる。
【0058】
本実施形態では、本体部11には、凸レンズ116が備えられている。凸レンズ116は、紫外線照射部13の第1照射部131及び第2照射部132が紫外線を照射する方向となる、第1照射部131及び第2照射部132の前方に設けられている。第1照射部131及び第2照射部132から照射される紫外線は、凸レンズ116を通すことにより、
図9Bに示す側面視で、外周部113の外周面11Aに対して平行な光線を作り出して、第1照射部131及び第2照射部132からの紫外線照射方向を、本体部11の長さ方向となる一定方向に限定する。これにより、紫外線照射部13の第1照射部131及び第2照射部132から照射される紫外線は、
図9Bに示すように、上記長さ方向において、外周部113の外周面11A及び内壁113Aに対して平行に、外周部113内を進む。
【0059】
続いて、第5実施形態に係る紫外線殺菌装置10Aにおいて、人が手で本体部11の外周部113を外周側から掴んで押圧したときの様子を説明する。
図11は、紫外線殺菌装置10Aを、人が手で本体部11の外周部113を外周側から掴んで押圧したときの様子を側断面視で示す図である。
【0060】
紫外線殺菌装置10Aを、人が手で本体部11の外周部113を外周側から押圧していない場合、すなわち、外周部113が内周部112方向に撓んでいない場合、紫外線照射部13の第1照射部131及び第2照射部132から照射される紫外線は、
図9Bに示すように、外周部113及び内周部112に対して平行に外周部113内を進むため、外周部113の外周面11Aがフラットな状態である状態では外周面11Aに入射しない。
【0061】
一方、紫外線殺菌装置10Aを、人が手で本体部11の外周部113を外周側から掴んで押圧した場合、例えば、手の指部分により外周部113が押圧される。このとき、
図11に示すように、外周部113の矩形領域Sq部分が内周部112方向に撓んで凹む。また、スペーサー114により、外周部113の内壁113Aと内周部112の壁面112Bとの間の空間Sは、スペーサー114の高さhである上記一定距離となるため、上記押圧による矩形領域Sq部分の撓み量dは、上記一定距離までに収まる。上記一定距離は、上述のように0.07mmであるが、この数値は、人の手の指における指紋の溝深さに角層の厚みを加算した距離の一般的な値が約0.07mmであることに対応している。
【0062】
このため、外周部113内を外周部113の外周面11Aに対して平行に進む紫外線照射部13から照射される紫外線は、外周部113に撓みが生じていない限り、外周部113に対して入射しないが、
図11に示すように、上記押圧により形成された矩形領域Sq部分の撓み部分113Cには到達する。このとき、撓み部分113Cに到達した紫外線は、撓み部分113Cをなす面に対して臨界角θcよりも小さい角度で入射する紫外線は、撓み部分113Cをなす外周面11Aを透過して外周部113の外方に向かい、外周部113を押圧している指まで到達する。このため、紫外線照射部13により照射された紫外線は、外周面11A及び外周面11Aに接触している人の手部分を殺菌する。しかしながら、当該撓み部分113Cの外周面11A部分には、人の手が触れているため、外周面11Aを透過した紫外線は外周面11Aにおいて人の手により遮られる。従って、外周面11Aを透過した紫外線が、紫外線殺菌装置100の周辺に放出されることは極めて少ない。
【0063】
なお、撓み部分113Cに到達した紫外線は、撓み部分113Cをなす外周部113の外周面11Aに対して臨界角θc以上の角度で入射した場合、撓み部分113Cの当該外周面11Aで全反射する。なお、このように紫外線が入射した外周面11A部分には、人の指が触れており、しかも、外周部113と人の指の光屈折率が近似することから、エバネッセント場は発生しない。仮に、紫外線が全反射する撓み部分113Cの領域で人の指が触れていない外周面11A部分があり、当該部分にエバネッセント場が発生しても、発生するエバネッセント場は100~150nm以下の厚みである。そして、当該部分には、人の手指からの皮脂汚れ(皮脂膜、剥離した角層、汗、汗が乾いて残った塩分や尿素等)、更には、周辺からの塵、埃、又は化粧残り等が付着し、これらはエバネッセント場の厚みよりも遙かに厚いため、皮脂汚れ等が付着した状態の外周面11Aによりエバネッセント場で殺菌を行うことは不可能である。このため、紫外線殺菌装置10Aでは、接触面11A及び接触面11Aに接触している人の手部分の殺菌は、エバネッセント場ではなく、接触面11Aを透過する紫外線により行う。
【0064】
このように、特有の構成を有する紫外線殺菌装置10Aによれば、紫外線照射部13から照射する紫外線により人の手が触れている外周部113の外周面11A、更には当該外周面11Aに接触している人の手部分を効果的に殺菌することができる。ここで、紫外線として、UVC254nmを用いる場合、紫外線は人の手の表面から0.06~0.1mmの深さまで透過する。ここで、紫外線殺菌装置10Aでは、スペーサー114の高さh及び上記一定距離が0.07mmであるため、撓み部分113Cに外側から入り込む人の手部分(指等)は、手の表面から0.07mmまでの部分となる。このため、撓み部分113Cの接触面11Aを透過して外周部113の外方に向かう紫外線は、人の手の指における表皮(一般的に、肌の表皮は表面から0.2mm程度の厚みとされている)における、指紋の溝(一般的に0.05mm程度)及び角層(肌の表面から0.02mm程度の厚み)程度まで、すなわち、指紋の溝の最も深い部分における表面から角層の厚みの程度(0.05+0.02=0.07mm)までの部分しか照射せず、人の手の表面から深く内部までは入り込まない。
【0065】
このように外周面11Aを透過した紫外線は、人の手の表皮における角層を照射しつつも、肌の表面から角層までしか到達しないので、安全に人の手の表面を確実に殺菌できる。なお、紫外線照射部13から照射されて外周部113の外周面11Aに対して平行に空間S内を進む紫外線は、撓み部分113Cの接触面11Aを透過したとき、内周部112側へ屈折するため、撓んだ外周面11Aの窪みの内部に留まり、当該窪み内においてのみ人の手の表面(角層)を照射する。そして、当該窪み内では、紫外線は人の手により遮られているため、紫外線殺菌装置10Aの周辺への紫外線の放出は極めて少ない。
【0066】
更に、第6実施形態として、第5実施形態の構成に加えて、紫外線殺菌装置10Aの外周部113に、上述したフォトクロミック色素Pgを充填(表面に塗布)させるようにしてもよい。
図12は、紫外線殺菌装置10Aの第6実施形態を示す図である。第6実施形態では、
図12に示すように、外周部113の外周面11Aの周面には、フォトクロミック色素Pgのスピロピラン又はスピロオキサジンからなる物質Mが塗布され、外周面11Aの周面が当該物質Mにより覆われている。
【0067】
この第6実施形態では、
図13に示すように、人が手で外周部113を外周側から掴んで押圧した場合、手の指部分により外周面11Aが押圧され、外周部113の矩形領域Sq部分が内周部112方向に撓んで凹むが、このとき、触れた指により加熱されている部分P1におけるフォトクロミック色素Pgは元のメロシアニン体(閉環体)に戻り消色する。このため、上記平行に本体部11の長さ方向に進む紫外線が外周部113内に照射されたとき、紫外線は外周部113の撓み部分を通過して当該人の手の指に到達する。一方、当該撓み部分であっても、触れた指により加熱されていない部分P2におけるフォトクロミック色素Pgは有色のままとなるため、紫外線は、外周部113の外周面11A(物質M)よりも外側に通過せず、また、当該撓み部分における人の指が触れていない領域には紫外線が到達しないためエバネッセント場は発生しない。
【0068】
従って、第6実施形態では、上記のように人が手で本体部11の外周部113を外周側から掴んで押圧して、外周部113が内周部112側に撓んだときに、撓み部分113Cにおいて、人の手が触れていない領域が存在した場合であっても、当該領域では、人の手が触れていないことから、フォトクロミック色素Pgはメロシアニン体の異性化(開環体)により有色(ここでは、黒色)に変化しているため、紫外線は、有色のメロシアニン体(開環体)により遮られて外周部113の外周面11Aよりも外側には到達せず、外周面11A(物質M)までで止まる。このため、人の手が存在しない当該領域においても、紫外線が手の間を通り抜けて紫外線殺菌装置10Aの周辺に放出されることはない。これにより、更に確実に、紫外線殺菌装置10Aの周辺に紫外線が放出される事態を防止することができる。また、第6実施形態では、外周面11Aでの紫外線の全反射により紫外線が外部に放出されることを防止する構成ではなく、フォトクロミック色素Pgの有色化により外周面11Aに紫外線を到達させないことで、紫外線が外部に放出されることを防止する構成を採っているため、外周面11Aに水滴や異物が付着した場合でも、紫外線が全反射せずに紫外線殺菌装置10Aの周辺に放出するといった事態は生じない。
【0069】
続いて、紫外線殺菌装置10Aの第5実施形態の更なる実施形態である第7実施形態を説明する。
図14は、紫外線殺菌装置10Aの第7実施形態において、本体部11を側方の外側から見た状態を示す図である。当該更なる実施形態では、紫外線殺菌装置10Aの第5実施形態と同様に、紫外線照射部13が外周部113の厚み方向において外周部113内に一部が入り込んだ状態で内周部112に配置される。そして、当該更なる実施形態では、外周部113の紫外線照射部13に対向する断面に遮光壁51が設けられている。
図14に示すように、遮光壁51は、紫外線照射部13に対向する外周部113の断面領域であって、外周部113の厚み方向における、外周部113の外周面11Aが内周部112側に撓む部分113C(
図15)以外の領域と、当該厚み方向において当該撓む部分113Cにその最大撓み量の半分まで入り込んだ領域とに設けられている。この遮光壁51は、紫外線照射部13から照射される紫外線を遮断可能な素材(例えば、合成樹脂)により形成されている。
【0070】
更に、当該第7実施形態でも、スペーサー114は、第5実施形態と同様の構成であり、紫外線を透過させない素材(例えば、合成樹脂)で構成されている。紫外線照射部13の向かい合う第1照射部131及び第2照射部132は、上記長さ方向における第1照射部131及び第2照射部132の間に必ず2つのスペーサー114が配置される状態で設けられる。
【0071】
紫外線照射部13は、遮光壁51が設けられていない領域を通して、上記平行に本体部11の長さ方向に進む紫外線を外周部113内に照射することで、外周部113の外周面11Aが内周部112側に撓む部分の上記厚み方向における一部にのみ紫外線を照射する。
【0072】
これにより、
図15に示すように、撓み部分113Cの外周面11Aに触れている人の手の表面からごく浅い部分に限定して紫外線を照射できるため、人の手の表面を更に安全に殺菌することができる。
【0073】
更に、紫外線殺菌装置10Aの第7実施形態の更なる実施形態としての第8実施形態を説明する。
図16は、紫外線殺菌装置10Aの第7実施形態の更なる実施形態において、本体部11を側方の外側から見た状態を示す図である。
【0074】
第8実施形態では、紫外線照射部13の第1照射部131及び第2照射部132のそれぞれの紫外線照射方向の前方となる、外周部113の内壁113Aと内周部112の壁面112Bとの間に設けられた上記空間Sに、紫外線照射部13から照射される紫外線を遮断する遮光板60が第1照射部131及び第2照射部132にそれぞれ密接させて設けられている。すなわち、遮光板60は、第1照射部131及び第2照射部132が空間Sに向けて紫外線を発光する部分に設けられ、第1照射部131及び第2照射部132による空間Sに向けた紫外線の発光を遮る機能を果たす。
【0075】
また、第8実施形態では、第7実施形態とは、スペーサー114の構成及び配置が異なる。第8実施形態では、複数のスペーサー114は、紫外線を透過させる素材及び透過させない素材のいずれであっても構わない。当該複数のスペーサー114は、
図17に示すように、本体部11を側方の外側から見た場合に、内周部112の壁面112B上に、一定間隔(例えば、3cm)おきに複数設けられる。例えば、4つのスペーサー114により形成される矩形領域Sq1は、少なくとも、一般的な人の親指の腹部分の面積として予め定められた面積以上の領域が収まる大きさとされる。好ましくは、矩形領域Sq1は、各辺3cm×3cmの9cm
2とされる。これにより、例えば、人が手で本体部11の外周部113を外周側から掴んで押圧したときに、外周部113の矩形領域Sq1部分が内周部112方向に撓むことを可能にしている。
【0076】
これにより、第8実施形態では、
図17に示すように、スペーサー114が紫外線を透過させる素材であったとしても、撓み部分113Cの外周面11Aに触れている人の手の表面からごく浅い部分に限定して紫外線を照射でき、人の手の表面を更に安全に殺菌することができる。
【0077】
次に、紫外線照射部13,23が照射する紫外線について説明する。紫外線は、波長の長さによってUV-A(紫外線A波)、UV-B(紫外線B波)、UV-C(紫外線C波)の3種類に分けられる。そして、高い除菌力を持つ波長222nmの紫外線(UV-C)は人に与える害が最小である。
【0078】
また、照射距離100mm、照度1mW/cm2で紫外線(波長222nm又は254nm)を照射した場合に、ウイルスの不活性化に必要な紫外線照射量(3.5mJ/cm2)に達するまでの時間(ウイルスの不活性化までに要する時間)が6秒であった、との研究結果が発表されている。
【0079】
ウイルスの不活性化に必要な紫外線照射量(必要照射量)に到達する時間は紫外線の照度に反比例するので、照度が大きければ、必要照射量に到達する時間は短くなり、逆に、照度が小さければ、必要照射量に到達する時間は長くなる。
【0080】
例えば、仕様が照射距離20mm、照度7mW/cm2の紫外線照射部を用いて、除菌対象物を除菌しようとした場合、この照度は上記研究結果(1mW/cm2)の7倍であるので、除菌対象物までの距離が仕様と同じ20mmのときには、紫外線照射量は、0.86秒(≒6秒×1/7)で必要照射量に到達することになる。
【0081】
上記の各実施形態では、除菌対象物に紫外線が照射されるまでに、例えば、アクリル(透過率10%)で構成された本体部11を透過するので、紫外線の照度は減衰し、上記紫外線照射部を用いて、20mm離れた除菌対象物を除菌しようとした場合、照度は0.7mW/cm2(≒7×10%)まで減衰する。
【0082】
上記研究結果から、照度1mW/cm2の紫外線でのウイルス不活性化までに要する時間は6秒であることが分かっている。また、必要照射量に到達する時間は照度に反比例するので、照度が0.7mW/cm2のとき、ウイルス不活性化までに要する時間は8.57秒(≒6秒/0.7)となる。すなわち、上記紫外線照射部13,23を用いて、20mm離れた除菌対象物を除菌しようとした場合、ウイルス不活性化までに要する時間は約8.57秒となる。
【0083】
このため、本実施形態では、本体部11をアクリルで構成する場合には、一例として、仕様を、波長222nm又は254nm、照射距離20mm、照度7mW/cm2とした紫外線照射部13,23を用いる。
【0084】
なお、仕様を、波長222nm又は254nm、照射距離20mm、照度7mW/cm2とした紫外線照射部13,23を用いて、30mm離れた除菌対象物を除菌しようとした場合、光の減衰の法則により、照度は7mW/cm2から3.11mW/cm2(≒7×(20/30)2)に減衰する。
【0085】
上記の各実施形態では、除菌対象物に紫外線が照射されるまでに、例えば、アクリル(透過率10%)で構成された本体部11を透過するので、紫外線の照度は減衰し、上記紫外線照射部を用いて、30mm離れた除菌対象物を除菌しようとした場合、照度は0.31mW/cm2(≒3.11×10%)まで減衰する。
【0086】
上記研究結果から、照度1mW/cm2の紫外線でのウイルス不活性化までに要する時間は6秒であることが分かっている。また、必要照射量に到達する時間は照度に反比例するので、照度が0.31mW/cm2のとき、ウイルス不活性化までに要する時間は19.35秒(≒6秒/0.31)となる。すなわち、上記紫外線照射部13を用いて、30mm離れた除菌対象物を除菌しようとした場合、ウイルス不活性化までに要する時間は約19秒となる。
【0087】
また、上記実施形態では、
図1乃至
図18を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0088】
1 鉄道車両
10,100,10A 紫外線殺菌装置
111 外周部
11 本体部
11A 外周面
11B 内壁面
11C 開口部
112 内周部
12 車両用手摺り
13 紫外線照射部
131 第1照射部
132 第2照射部
20 紫外線殺菌装置
21 本体部
21A 外周面
21B 内壁
23 紫外線照射部
50 液晶ブラインド装置
51 遮光壁
60 遮光板
Pg フォトクロミック色素
Sn 静電容量センサー
113 外周部
113C 撓み部分
114 スペーサー
116 凸レンズ
M 物質
S 空間
【手続補正書】
【提出日】2021-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
これにより、第8実施形態では、図18に示すように、スペーサー114が紫外線を透過させる素材であったとしても、撓み部分113Cの外周面11Aに触れている人の手の表面からごく浅い部分に限定して紫外線を照射でき、人の手の表面を更に安全に殺菌することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が人の手が触れる接触面とされ、長さ方向の少なくとも一端部が開放されて、内部に棒状部材を受け入れる開口部が形成された筒状の本体部と、
前記本体部に取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、
前記本体部は、前記外周面を有して紫外線を透過させる素材により形成された筒状の外周部と、前記本体部の径方向において前記外周部の内側に設けられた筒状の内周部とを有し、
前記内周部に、照射する紫外線が前記外周部の内壁面に向けて進む向きで前記紫外線照射部が設けられ、
前記紫外線照射部は、紫外線が前記外周部の内部を透過して前記外周面まで到達する照射出力とされ、
前記外周部は、
フォトクロミック色素のスピロピラン又はスピロオキサジンからなる物質を含み、前記紫外線照射部による紫外線照射時には有色となって、紫外線を前記外周面よりも外側に通過させず、
前記外周面に人の手が触れたときに、当該手の熱により加熱されている前記外周面部分のフォトクロミック色素が消色して、前記紫外線照射部により照射された紫外線が前記外周部内を透過して前記外周面よりも外側に通過する状態になる紫外線殺菌装置。
【請求項2】
外周面が人の手が触れる接触面とされ、長さ方向の少なくとも一端部が開放されて、内部に棒状部材を受け入れる開口部が形成された筒状の本体部と、
前記本体部に取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、
前記本体部は、前記外周面を有して紫外線を透過させる素材により形成された筒状の外周部と、前記本体部の径方向において前記外周部の内側に設けられた筒状の内周部とを有し、
前記内周部に、照射する紫外線が前記外周部の内壁面に向けて進む向きで前記紫外線照射部が設けられ、
前記紫外線照射部は、紫外線が前記外周部の内部を透過して前記外周面まで到達する照射出力とされ、
前記外周部の前記外周面には、前記外周面に対して人の手が接触したときに、当該接触した領域部分についてのスイッチがオンとなり、この領域部分についてのスイッチオンを示すオン信号を出力し、前記外周面に対して人の手が接触していないときに接触していない部分についてのスイッチがオフとなり、この領域についてのスイッチオフを示すオフ信号を出力する静電容量センサーが設けられ、
前記外周部には、前記静電容量センサーから前記オン信号を受け取ったときに前記オン信号の対象となっている領域部分については紫外線を透過させ、前記静電容量センサーから前記オフ信号を受け取ったときは前記オフ信号の対象となっている領域部分については紫外線を透過させない動作を行う液晶ブラインド装置とが設けられている紫外線殺菌装置。