(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167757
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】内服液剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/51 20060101AFI20221027BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221027BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K31/51
A61K47/36
A61K9/08
A61K9/06
A61K47/18
A61P3/02 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174641
(22)【出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2021072237
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本間 芳子
(72)【発明者】
【氏名】山地 貴之
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076BB01
4C076CC22
4C076DD43Z
4C076DD57
4C076DD57Q
4C076DD60
4C076EE30G
4C076EE30P
4C076EE38
4C076EE38Q
4C076FF17
4C076FF35
4C076FF65
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC25
(57)【要約】
【課題】
本発明は、フルスルチアミン又はその塩を安定に含有する内服液剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
a)フルスルチアミン又はその塩 、b)寒天、及びc)デキストリンを含有することを特徴とする内服液剤。
好ましくは、さらにタウリンを含有する内服液剤である。本発明の内服液剤はゲル状の製剤が好ましく、パウチ容器に供されるものである。特に医薬品、医薬部外品に分野に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フルスルチアミン又はその塩 、b)寒天、及びc)デキストリンを含有することを特徴とする内服液剤。
【請求項2】
タウリンを含有することを特徴とする請求項1に記載の内服液剤。
【請求項3】
pHが2.8~4.0である、請求項1~2のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項4】
ゲル状である、請求項1~3のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項5】
25℃における粘度が0.1~30Pa・sである請求項1~4のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項6】
医薬品、又は医薬部外品である、請求項1~5のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項7】
パウチ容器に充填されている、請求項1~6のいずれかに記載の内服液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルスルチアミン又はその塩を含有する内服液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1の誘導体であるフルスルチアミン又はその塩は、疲労回復への効果など、生体に対して様々な薬効が知られており、医薬品、医薬部外品などに広く配合されている。
近年、フルスルチアミンなどのビタミンの補給を目的とした製剤として、手軽に摂取できるパウチ容器入りのゼリー飲料が生活者に選ばれることが増加している。飲用する場所を選ばずに手軽にエネルギー補給が可能であることや、非常時の食事代替品として期待されていることもパウチタイプのゼリー飲料が選ばれる理由として考えられる。
しかしながら、ビタミンB1類は、ゼリー飲料中で経時的に安定性を保つことが難しいという問題がある。
尚、今までに、ビタミンB1類とカンテンを含有する経口ゼリー剤、フルスルチアミンとカンテンを含む経口ゲル状組成物が報告されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-231051号公報
【特許文献2】特開2019-123706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フルスルチアミン又はその塩、及び寒天を含有する内服液剤中のフルスルチアミン又はその塩の経時的な含量低下を抑制した内服液剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フルスルチアミン又はその塩、及び寒天を含有する内服液剤に、デキストリンを配合した場合、フルスルチアミン又はその塩の経時的な含量の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は
(1)a)フルスルチアミン又はその塩 、b)寒天、及びc)デキストリンを含有することを特徴とする内服液剤。
(2)タウリンを含有することを特徴とする(1)に記載の内服液剤。
(3)pHが2.8~4.0である、(1)又は(2)のいずれかに記載の内服液剤。
(4)ゲル状である、(1)~(3)のいずれかに記載の内服液剤。
(5)25℃における粘度が0.1~30Pa・sである、(1)~(4)のいずれかに記載の内服液剤
(6)医薬品、又は医薬部外品である、(1)~(5)のいずれかに記載の内服液剤。
(7)パウチ容器に充填されている、(1)~(6)のいずれかに記載の内服液剤。
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、フルスルチアミン又はその塩、及び寒天を含有する内服液剤において、フルスルチアミンの含量低下を抑制した優れた内服液剤を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に使用するフルスルチアミン又はその塩とは、通常可食性のものを指す。本発明に使用する塩とは塩酸塩などが挙げられる。本発明の内服液剤中におけるフルスルチアミン又はその塩の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001~0.1w/v%、より好ましくはフルスルチアミンとして0.002~0.01w/v%である。
【0009】
本発明における寒天は、テングサなどの紅藻類から得られる天然多糖類である。本発明における寒天は、特に限定されないが、カンテン末が好ましい。また、本発明の内服液剤中における寒天の含有量は特に限定されないが、粘稠性を付与する点から、好ましくは0.05~1w/v%,より好ましくは0.2~0.5w/v%である。量が少ないと十分な粘稠性が付与できず、多すぎると内服液剤全体の風味に影響するからである。
【0010】
本発明におけるデキストリンとは、コーンスターチや馬鈴薯デンプンを原料とし、デンプンを化学的あるいは酵素的な方法により低分子化したものである。なお、本発明におけるデキストリンには、難消化性デキストリン及び環状構造のデキストリンは含まれない。本発明のデキストリンとしては、市販品を用いてもよく、例えば、パインデックス#1(松谷化学工業株式会社製)、パインデックス#2(松谷化学工業株式会社製)、サンデック#70FN(三和澱粉工業株式会社製)、サンデック#150(三和澱粉工業株式会社製)等を用いることができる。また、本発明で用いるデキストリンのデキストロース当量は、特に限定されないが、嗜好性の高い風味設計を実現する観点から、好ましくは35以下、より好ましくは1以上15以下である。本発明の内服液剤中におけるデキストリンの含有量は、特に限定されないが、本発明の効果の点から、好ましくは2~30w/v%、より好ましくは5~20w/v%である。
【0011】
本発明におけるタウリンは、アミノエチルスルホン酸とも呼ばれる、分子量125.15の単純な化学構造をもつ含硫アミノ酸である。タウリンは化学構造的にはアミノ酸に属するが、タンパク質を構成するアミノ酸とは異なり、ビタミン類やホルモンのような作用、さらには脳神経系、循環系、肝胆系をはじめとして様々な薬理作用を示すことが知られている。本発明のタウリンの含有量は、特に限定されないが、本発明の内服液剤中におけるフルスルチアミンの含量低下を抑制する効果を付与する観点から、好ましくは0.25~30w/v%、より好ましくは0.25~3w/v%、さらに好ましくは0.25~1.5w/v%である。量が少ないと十分な効果が得られず、多すぎると内服液剤全体の性状に影響するからである。また、タウリンの含有量は、本発明の効果の点からフルスルチアミン又はその塩1質量部に対して上限は300質量部以下が好ましく、より好ましい範囲は、フルスルチアミン又はその塩1質量部に対して15~200質量部である。
【0012】
本発明にかかる内服液剤のpHは、特に限定されず、例えば、2.0~7.0である。風味の観点からはpH2.8~4.0であることが好ましく、さらに好ましくはpH3.0~3.8であり、最も好ましくはpH3.4~3.8である。本発明の内服液剤のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸等の無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられる。
【0013】
本発明の内服液剤は液状又はゲル状の内服液剤が好ましく、より好ましくは、流動性のある粘稠なゲル状の製剤である。本発明の内服液剤には、本発明の寒天以外に粘稠剤(又は増粘剤)として、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナンなどが含まれてもよい。
【0014】
本発明の内服液剤の粘度は、服用性の観点から測定時の試料温度25℃で0.1~30Pa・s の範囲が好ましい。本発明の内服液剤の粘度は、東機産業株式会社の回転粘度計(TVB-10M)で、測定時の試料温度25℃、ローター名称M3、回転数6rpm(20Pa・s以下のとき)または3rpm(20Pa・sを超えるとき)、測定時間60秒の条件で測定される。
【0015】
本発明の内服液剤にはその他の成分として、他のビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、他の生薬や生薬抽出物などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0016】
さらに必要に応じて、酸味料、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、甘味料、保存料、調味料、苦味料、強化剤、可溶化剤、乳化剤、増粘剤などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0017】
本発明の内服液剤は、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種製剤、健康飲料、清涼飲料などの各種飲料に適用することができ、特に医薬品、医薬部外品に有用である。
【0018】
本発明の内服液剤は、容器に充填されていることが好ましい。容器としては、パウチ容器、ビン、缶、PETボトルなどが挙げられ、好ましくはパウチ容器である。パウチ容器としては、ガゼットパウチ、スタンディングパウチ、レトルトパウチなどを使用することができ、好ましくはガゼットパウチ、スタンディングパウチ、さらに好ましくはスパウト付きガゼットパウチ、スパウト付きスタンドパウチが挙げられる。
【0019】
本発明の内服液剤は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により製造することができる。
【実施例0020】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。なお、デキストリンはパインデックス#1(松谷化学工業株式会社製)を使用した。
(実施例1~2、比較例1~2)
表1に示す組成に従い、成分を精製水に溶解させ、殺菌を行い、スパウト付きガゼットパウチに充填し、pH3.45の内服液剤を調製した。表1中の粘度は以下の通り測定した値である。内服液剤を容器から全量出して温度を25℃に調整し、東機産業株式会社の回転粘度計(TVB-10M)で、ローター名称M3、回転数6rpm、測定時間60秒の条件で測定した。
【0021】
【0022】
試験例1:フルスルチアミン塩酸塩の安定性試験
表1の実施例1~2、及び比較例1~2の内服液剤を85℃で40時間保存した時のフルスルチアミン塩酸塩の安定性を調べた。フルスルチアミン塩酸塩の残存率は、HPLC(液体クロマトグラフィー)法でフルスルチアミン塩酸塩の残存量を測定することで求めた。結果を表2に示す。
【0023】
【0024】
表2から明らかなように、フルスルチアミン塩酸塩とカンテン末を配合した比較例1の処方にデキストリンを配合すると、フルスルチアミン塩酸塩の残存率が向上した(実施例1)。実施例1の処方にタウリンを配合すると、さらにフルスルチアミン塩酸塩の残存率が向上した(実施例2)。なお、比較例1の処方に環状構造を有するα―シクロデキストリンを配合した場合、フルスルチアミン塩酸塩の残存率の向上は認められなかった(比較例2)。
【0025】
(実施例3~6、比較例3~5)
表3及び表4に示す組成に従い、成分を精製水に溶解させ、殺菌を行い、スパウト付きガゼットパウチに充填し、内服液剤を得た。表4中の粘度は以下の通り測定した値である。内服液剤を容器から全量出して温度を25℃に調整し、東機産業株式会社の回転粘度計(TVB-10M)で、ローター名称M3、回転数6rpm、測定時間60秒の条件で測定した。なお、表3に示す実施例3及び実施例4の粘度を上記の方法で測定したところ、機器の測定下限以下の粘度であった。
【0026】
【0027】
【0028】
試験例1に従い、表3の実施例3~4、及び比較例3、表4の実施例5~6及び比較例4の内服液剤について、85℃で40時間保存した時のフルスルチアミン塩酸塩の安定性を調べた。フルスルチアミン塩酸塩の残存率は、HPLC(液体クロマトグラフィー)法でフルスルチアミン塩酸塩の残存量を測定することで求めた。結果を表5及び表6に示す。
【0029】
【0030】
【0031】
表5及び表6から明らかなように、フルスルチアミン塩酸塩とカンテン末を配合した比較例3及び比較例4の処方にそれぞれデキストリンを配合すると、フルスルチアミン塩酸塩の残存率が向上した(実施例3及び実施例5)。また、比較例3及び比較例4の処方にそれぞれデキストリン及びタウリンを配合すると、フルスルチアミン塩酸塩の残存率が向上した(実施例4及び実施例6)。
【0032】
以上より、フルスルチアミン塩酸塩と寒天を含有する内服液剤にデキストリン、またはデキストリン及びタウリンを配合すると、フルスルチアミン塩酸塩の経時的な残存率低下を抑制できることが明らかとなった。
【0033】
(製剤例1)
【0034】
【0035】
製剤例1の内服液剤を、容量100mLのスパウト付きガゼットパウチに充填する。
【0036】
本発明によりフルスルチアミン又はその塩の安定性が改善された内服液剤を得ることができ、保管性、携帯性に優れた医薬品、医薬部外品、食品、健康飲料、特定保健用食品などに使用可能である。