(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167778
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】画素判定方法、X線CT装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221027BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20221027BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20221027BHJP
G01T 1/36 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61B6/03 350H
A61B6/03 F
A61B6/03 320R
A61B6/03 373
G01T1/16 Z
G01T1/17 E
G01T1/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016978
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】17/238,921
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオホイ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】キシャオチュン ライ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン クリストファー ツィマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヂーホン イェ
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188DD05
2G188FF15
2G188FF19
2G188FF28
4C093CA36
4C093CA41
4C093FC12
4C093FC14
4C093FC16
4C093FC17
4C093FD08
4C093FD09
(57)【要約】
【課題】劣っている画素を判定すること。
【解決手段】実施形態に係る画素判定方法は、複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定し、前記判定された画素の情報を記憶する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定し、
前記判定された画素の情報を記憶する、
画素判定方法。
【請求項2】
前記複数のスキャンは、(a)異なる強度での複数の空気スキャンと、(b)異なる減弱路長での複数のスキャンと、(c)複数の再現性および/または信頼性スキャンと、の少なくともいずれかを実行する、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項3】
計数バックグラウンドを測定するためのX線を用いないダークスキャンと、ノイズスキャンとのうちいずれかを更に実行する、請求項2に記載の画素判定方法。
【請求項4】
前記複数のスキャンが較正されたフォワードモデルに一致しているか否かを判定することにより、前記劣っている画素を判定する、
請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項5】
前記計数画像に対して第1の判定基準により前記劣っている画素を判定し、
前記スペクトル画像に対して前記第1の判定基準とは異なる第2の判定基準により前記劣っている画素を特定する、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項6】
前記複数のスキャンは、キャリブレーション用ファントムを用いたスキャンである、
請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項7】
第1の判定基準に基づいて画像の再構成を行い、前記再構成された前記画像に、前記劣っている画素によって形成されたリングを含んでいるか否かに基づいて、前記劣っている画素を判定する、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項8】
不良スペクトル画素テーブルまたは不良計数画素テーブルに前記劣っている画素の情報を記憶する、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項9】
前記劣っている画素が、
(1)過剰なバックグラウンドの計数率と、(2)あるX線束での高すぎる計数率と、(3)あるX線束での低すぎる計数率と、(4)第1閾値より大きい、計数の平均値に対する計数変動の割合と、(5)第2閾値より大きい、計数平均からの偏差と、の少なくとも一つを経験したことを不良計数画素テーブルに保存する、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項10】
前記劣っている画素の性能を判定するためのプロトコルを保存する、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項11】
時間領域での検出器性能の不一致を判定するために前記複数のスキャンを周期的に行う、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項12】
前記劣っている画素を用いることなく計数ベースの被検体のスキャンを行う、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項13】
前記劣っている画素を用いることなくスペクトルベースの被検体のスキャンを行う、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項14】
前記劣っている画素の性能を判定するための前記プロトコルのために、前記劣っている画素を用いることなく被検体のスキャンを行い、
前記プロトコル以外のプロトコルのために、前記劣っている画素を用いて前記被検体のスキャンを行う、請求項10に記載の画素判定方法。
【請求項15】
前記劣っている画素を加算の結果の一部として用いることなく、前記劣っている画素を含むブロックからの値を加算しながら、被検体のスキャンを行う、請求項1に記載の画素判定方法。
【請求項16】
前記劣っている画素が、(1)正規化ビン計数が最大閾値を上回る(2)正規化ビン計数が最小閾値を下回るのうち少なくとも1つを経験したことを、不良スペクトル画素テーブルに保存する、請求項8に記載の画素判定方法。
【請求項17】
複数のスキャンを行う制御部と、
前記複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定する判定部と、
前記判定された画素の情報を記憶する記憶部と、
を備える、X線CT装置。
【請求項18】
複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定し、
前記判定された画素の情報を記憶する処理をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、画素判定方法、X線CT装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置において、従来は、エネルギー積分型検出器がCT投影データの計測に使用されていた。現在は光子計数型検出器(photon-counting detector:PCD)がエネルギー積分型検出器に替わって有効に使用されている。光子計数型CTシステムでは、直接変換を用いた半導体ベースの検出器を用いて個々の入射光子のエネルギを分解し、積分期間毎に複数のエネルギビン計数の計測値を生成する。
【0003】
このようなセンサ材料(例えば、CdTe/CZT/Si)において光子の蓄積エネルギ、すなわち電荷雲が形成され、印加電界下で陰極に向かってドリフトする。検出器のエネルギ応答は大部分が、エネルギ蓄積過程とその後の電荷誘導過程とにおける電荷共有、K-escape、および散乱効果、並びに関連するフロントエンドの電子回路の電子的ノイズによって劣化したり歪んだりする。信号誘導時間が有限であるために、高計数速度条件では、パルスパイルアップによっても検出器のエネルギ応答が歪む。
【0004】
センサ材料の不均一性と、関連するフロントエンドの電子回路の性能ばらつきに起因して、集積された検出器画素の実際の検出器応答は相互にわずかに異なっている。フォワードモデルの適正なキャリブレーションを行うと、画素のほとんどは、逆問題を解くことによって良好な路長の推定値が得られる測定値を生成できる。
【0005】
しかし、画素の性能が公称値をはるかに越えている場合、その画素の測定値は使用不能になることがあり、以降の処理から除く必要がある。従来のシンチレータに基づくエネルギ集積型検出器(Energy Integration Detector:EID)と異なり、光子計数型検出器における「不良の」画素には以下の点が生じる恐れがある。(1)ノイズの多い計数バックグラウンド、(2)異常な計数性能、(3)異常なエネルギ分解能、(4)非線形なエネルギ応答、(5)不正確なエネルギ閾値。この結果、画素は較正も補正もできなくなる恐れがあり、スクリーニングの基準が従来のEIDシステムよりも複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、劣っている画素を判定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る画素判定方法は、複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定し、前記判定された画素の情報を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、光子計数型検出器におけるPCDビンの応答関数S
b(E)の例を示すもので、各曲線はエネルギビン毎の関数例を表す図である。
【
図2】
図2は、画像キャプチャプロセス時に使用された不良光子計数型検出器の影響を受ける画像例を示す図である。
【
図3】
図3は、計数型光検出器がスペクトル画像と計数画像との取り込みに関して適正に動作しているか否かを判定する、プロセスを示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、
図3の不良画素検出プロセスの前後における不良スペクトル画素テーブルの例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、
図3の不良画素検出プロセスの前後における不良スペクトル画素テーブルの例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、
図3の不良画素検出プロセスの前後における不良計数画素テーブルの例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図3の不良画素検出プロセスの前後における不良計数画素テーブルの例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3の一態様に係る、一連のキャリブレーションスキャンを実行するキャリブレーション技術の模式図である。
【
図7】
図7は、
図3の一態様に係る、一連のキャリブレーションスキャンの一部として使用可能な、異なる検出器画素におけるキャリブレーションスラブの路長を示す図である。
【
図8】
図8は、キャリブレーションスラブを寝台装置または検出器場内の他の可動機構の少なくとも一部に沿ってZ方向に整列させた、キャリブレーションスラブ構成の一例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、キャリブレーションおよび処理に用いることができる加算方式を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、キャリブレーションおよび処理に用いることができる加算方式を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、キャリブレーションおよび処理に用いることができる加算方式を示す図である。
【
図9D】
図9Dは、キャリブレーションおよび処理に用いることができる加算方式を示す図である。
【
図10】
図10は、異なるX線管の位置によって、キャリブレーション時のスラブスキャンの異なる路長が生じ得る仕組みを示す模式図である。
【
図11】
図11は、本開示の技術を取り入れることのできるCTスキャナシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、画素判定方法、X線CT装置及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本明細書全体にわたって「ある実施形態」または「一実施形態」との表現は、その実施形態に関連して述べた特定の特徴、構造、材料、または性質が本出願の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、全ての実施形態に含まれていることを意味するものではない。
【0012】
したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所に出現する「ある実施形態では」または「一実施形態において」とのフレーズは、必ずしも本出願の同一の実施形態を指すものではない。さらに、前記特定の特徴、構造、材料、または性質は、1つ以上の実施形態において任意の適当な方法で組み合わせることも可能である。
【0013】
本開示は物質弁別用の光子計数型CTスキャナシステムに関するもので、前記CTスキャナシステムは、X線放射を放つ1つ以上のX線管と、CTスキャンシステムの視野を通って伝搬するX線放射を受ける検出器画素のアレイとを備えている。
【0014】
光子計数エネルギ分解型検出器(PCD)を用いた透過測定において、フォワードモデルは次の式(1)で表すことができる。
【0015】
【0016】
式中、Sb(E)は以下の式(2)で定義されるビン応答関数である。
【0017】
【0018】
R(E,E)は検出器応答関数で、E
bLとE
bHとはそれぞれ各計数ビンの低エネルギ閾値および高エネルギ閾値である。
図1はPCDにおける典型的なS
b(E)関数のモデルの一例を示しており、エネルギウィンドウを超える長いテールは電荷共有、K-escape、および散乱効果によって誘起されたものである。低エネルギのテールは、ほとんどが関連する電子的ノイズによるエネルギ分解能の限界に起因するものである。N
0は空気スキャンからの全X線束、μ
mとl
mとはそれぞれm番目の基礎物質の線形減弱係数と路長とである。w(E)は正規化された入射X線スペクトルである。実際には、w(E)とS
b(E)とはいずれも正確に知ることはできないが、1つの項としてS
wb(E)=w(E)S
b(E)に結合できる(以後、この項を重み付けビン応答関数と呼ぶ)。S
wb(E)を測定値を用いて較正できれば、低線束条件での分解の問題は解決することができる。
【0019】
高X線束スキャン条件(例えば、数パーセントのパルスパイルアップ)では、パルスパイルアップによって測定値にさらなるスペクトル歪が導入される。パイルアップ効果を補正する1つの方法として、補正項を追加することがある。フォワードモデルは次の式(3)のように表される。
【0020】
【0021】
式中、Pbは光子エネルギと、測定されたビン計数と、合計計数とに基づくパラメタリゼーションである。
【0022】
計数画像測定の場合、個々のビン計数の代わりに合計計数が用いられ、フォワードモデルは次の式(4)のように調整することができる。
【0023】
【0024】
式中、μ(E.r)は局所的減弱係数であり、射影積分p=∫μ(E,r)dl、Sw(E)はここでは合計計数重み付けビン応答関数であり、P(E,Ntot)は、E、Ntot,pの関数である合計計数パイルアップ補正項である。
【0025】
光子計数型検出器センサの製造、フロントエンドの電子回路の性能、および実装プロセスの複雑さのために、性能の劣る画素(「不良画素」とも呼ぶ)が、高いバックグラウンドの計数、計数の不均一性、異常なエネルギ応答、および不安定性などの問題を発現することがある。その結果、画素は、安定なフォワードモデルを伴う有効な測定値を与えることができない、または路長情報に無反応なフォワードモデルを有してしまう、のいずれかになる。いずれにしても、その画素は走査測定または後の処理から除外される。以下で詳細に述べるとおり、性能の劣る画素が「不良」画素とみなされるほど機能が不十分とは限らない。実際には、性能の劣る検出器画素が最初のイメージングプロトコルに対して「不良」であるが、次のイメージングプロトコルに対しては「不良」ではないこともある。
【0026】
計数モードでは、画質は各投影における合計計数に対して感度が高く、記録された光子のエネルギ情報は必要でない。スペクトルモードでは、記録された計数が正確である必要があるだけでなく、記録された各光子のエネルギビンも重要である。したがって、異なるイメージングモードにおける不良画素の基準も異なっている。データ処理で不良画素を適正に識別しかつ補正をしないと、
図2(リングアーチファクト200Aと200Bとが見えている)に示したように、得られた画像には診断に悪影響を及ぼすリング/バンド状のアーチファクトが現れることがある。
【0027】
また、一般に検出器は累積利用に応じて劣化していき、時折新しい不良画素が生じることがある。それらの新しい不良画素は、システム寿命の間中画質を一定に保つために取り込む必要がある。
【0028】
図3は、その場処理300であって、計数型光検出器がスペクトル画像と計数画像との取り込みに対して適正に動作しているか否かを判定する処理300を示すフローチャートである。ステップ310で一連の不良画素のキャリブレーションスキャンが実行された後、それらスキャンについての処理が行われてスペクトル画像と計数画像とに対する検出器の使用可能性が評価される。すなわち、複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定する。換言すると、実施形態に係るX線CT装置は、
図11で示される制御部としてのシステムコントローラ1160が、複数のスキャンを行い、判定部としての機能を有する再構成装置1164が、当該複数のスキャンに基づいて生成された計数画像とスペクトル画像とに基づいて、検出器の画素のうち性能が劣っている画素を判定する。例えば、一様なキャリブレーション用ファントムから得られる低ノイズ画像を用いて不良画素を識別することができる。
【0029】
図3に示したとおり、スペクトル画像と計数画像との処理は基本的に独立しており、シリアルまたはパラレルのいずれでも実行可能である。パラレルの場合、それぞれの処理を別々のコンピュータシステムで実行することもできる。一例として、計数画像に対して第1の判定基準により劣っている画素を判定し、スペクトル画像に対して第1の判定基準とは異なる第2の判定基準により劣っている画像を特定する。
【0030】
スペクトル画像用の検出器の使用可能性の処理については、キャリブレーションスキャン310によってスペクトル指向のデータが取得された後、プロセスの制御はステップ320Sに移って、スペクトル指向のデータが複数のテストに基づいて処理される。一般に、ステップ320Sでテストシステムがテストを実行する度に、制御はステップ330Sに移り、検出器が当該テストの条件下で使用可能か否かが判定される。検出器が使用可能である場合、残りのスペクトルテストがあれば制御はステップ320Sに戻る。残りのスペクトルテストがなければ制御は終了する(または制御を計数テストに移す)。
【0031】
ステップ330Sでスペクトルテストに不合格と判定されると、制御はステップ340Sに移り、システムは欠陥検出器内の不良画素を分離してその不良画素を補正する。さらにシステムはステップ340Sで、不良画素を分離した別のキャリブレーション用ファントムスペクトル画像を生成して、補正により得られた画質(Image Quality:IQ)をテストする。画質が十分に良好であれば、システムは、ステップ360Sで、システムが後続のスペクトル画像の処理の際に利用可能な、不良スペクトル画素のテーブル(例えば、
図4A、4Bに示したテーブル)を更新することができる。そして、制御は、次のスペクトル処理のテストに備えてステップ320Sに戻ることができる。
【0032】
ステップ350Sで画質が不十分と判定されると、処理の基準は調整を必要とする可能性があり(詳細は後述する)、制御はステップ370Sに移る。その後、残りのスペクトルテストに備えてステップ320Sに戻る。
【0033】
スペクトル画像用の検出器の使用可能性についての処理の後またはその処理と並行して、システムは計数画像用の検出器の使用可能性についての処理を行う。処理は、ステップ320Cで開始され、このステップで計数指向のデータが複数のテストに基づいて処理される。一般に、ステップ320Cでテストシステムがテストを実行する度に、制御はステップ330Cに移り、検出器が当該テストの条件下で使用可能か否かが判定される。検出器が使用可能である場合、残りの計数テストがあれば制御はステップ320Cに戻る。残りの計数テストがなければ制御は終了する。
【0034】
ステップ330Cで計数テストに不合格と判定されると、制御はステップ340Cに移り、システムは欠陥検出器内の不良画素を分離してその不良画素を補正する。さらにシステムはステップ340Cで、不良画素を分離した別のキャリブレーション用ファントム計数画像を生成して、補正により得られた画質(IQ)をテストする。画質が十分に良好であれば、システムは、ステップ360Sで、システムが後続の計数画像の処理の際に利用可能な、不良計数画素のテーブル(例えば、
図5A、5Bに示したテーブル)を更新する。次いで、制御は、次の計数処理のテストに備えてステップ320Cに戻る。
【0035】
ステップ350Cで画質が不十分と判定されると、処理の基準は調整を必要とする可能性があり、制御はステップ370Cに移る。その後、残りの計数テストに備えてステップ320Cに戻る。
【0036】
ステップ310で不良画素のキャリブレーションスキャンを実行すると、システムは好適には、一連のキャリブレーションスキャンであって、画素毎に異常な検出器応答を識別するのに必要な操作スキャン設定を含むキャリブレーションスキャンを実行する。kVp、mA、ボウタイの形状、コリメーション、回転速度、積分時間などの構成を含む、異なるプロトコルでの複数のスキャンセットであり得る。それらスキャンは下記(1)~(4)の1つ以上の任意の組合せを含むことができる。
【0037】
(1)検出器の計数特性をテストするための異なる強度(例えば、低mAから高mAにかけて(
図6)または高mAから低mAにかけての強度)の一群の空気スキャン。検出視野でのX線束被ばくをより均一にしておくために、これらスキャンではボウタイフィルタを除去することができる。
【0038】
(2)検出器のスペクトル応答特性をテストするための異なる強度(例えば、低mAから高mAにかけて、またはその逆)による異なる材料および厚さ(
図8に示したような材料および厚さ)のスラブを用いた一群のスキャン。すなわち、異なる減弱路長での複数のスキャン。正規化されたビン計数を本解析に用いて異常なスペクトル応答を示す画素を除去する。
【0039】
(3)ノイズ評価のための検出器の計数のバックグラウンドをテストするダークスキャン(X線なし)。すなわち、計数バックグラウンドを測定するためのX線を用いないダークスキャン。
【0040】
(4)数時間または数日にわたる、秒から分にかけての複数の強度設定での一群の空気スキャン。
【0041】
ステップ330Cとステップ330Sとの基準に基づいて不良画素があるか否かをテストすることに加えて、システム全体の基準をテストすることも可能である。システム全体の(計数またはスペクトルの)複数の基準例を以下に述べる。ただし、本記載のテスト方法はそれら明瞭な説明による基準に限定されない。
【0042】
(基準1)
例えば、基準例1によれば、いずれのビン計数においてもバックグラウンドの計数率が高すぎる(過剰である)、すなわちNbi>Noffsetとなる画素は不良とみなすことができる。
【0043】
(基準2)
ステップ330Cで用いられる基準例2においては、システムは、下記(a)と(b)との1つ以上の任意の組合せに基づいて計数性能を評価することができる。
【0044】
(a)あるX線束での計数率が低すぎるかまたは高すぎる(Ni>Nhigh(mA)またはNi<Nlow(mA))、
(b)Ni(mA)/Ni(mA0)>rhigh(mA)またはNi(mA)/Ni(mA0)<rlow(mA)。式中Ni(mA)はある特定のmAのX線束での測定計数であり、Ni(mA0)は、パルスパイルアップ効果が最小である場合の、同一画素の最低のmAのX線束での測定計数である。
【0045】
(基準3)
ステップ330Sで用いられる例示的基準3においては、システムは、Nbi/Ntot >Thigh(mA,μj,Lj)であるかまたはNbi/Ntot >Tlow(mA,μj,Lj)であるかを判定することによってスペクトル応答が異常であるか否かを判定することにより、スペクトル性能を評価することができる。上記式中、NbiはスラブまたはフィルタまたはmA測定における個々のビン計数、Ntotは合計計数,ThighとTlowとは、減弱μj,Ljを伴うスラブまたはフィルタまたはmA測定における正規化されたビン計数についての2つのビン応答閾値である。このビン応答閾値は、システム全体の基準と計数基準とをパスした全画素の平均値よりも5~10%低くまたは高くなるように決定することができる。すなわち、計数の平均値に対する計数変動の割合が、第1閾値より大きい場合、当該画素を、不良計数画素テーブルに保存する。
【0046】
(基準4)
ステップ330Cとステップ330Sとにおけるさらなるテストとして、フォワードモデルを較正した後の異常画素を選択するために残差最小二乗誤差を実施した後に、計数モードとスペクトルモードでの計測の実行を含むことができる。典型的な基準は較正されたフォワードモデルS=Σ(N
bi
j-f
bi
j(μ
jL
j))
2を用いて導くことができる。jはスラブの路長指標、iは画素指標、bは個々のエネルギビンの指標である。Sの平均値および標準偏差は隣接画素群について算出することができ、標準偏差がxより大きいSとなる画素はいずれも不良画素としてマークすることができる(xは例えば3以上で5以下である)。すなわち、計数平均からの偏差が第2閾値より大きい場合、当該画素を、不良計数画素テーブルに保存する。フォワードモデルのキャリブレーションに使用されるスキャンを、異なるmA設定での既知の材料と厚さとを用いた複数のスラブスキャンと組合せた数回の空気スキャンにすることができる(これについては
図6に関連して詳細に後述する)。このスキャンにより、選択されたフォワードモデルを用いてフォワードモデルが正確に較正できるか否かがテストされる。このスキャンは単独で、または前述の不良画素スクリーニングの基準1~3のいずれかと組合せて用いることができる。一例では、画素が最小二乗誤差テストに通らなかった場合、その画素は、例え基準1~3を満たしたとしても不良画素に分類されることがある。最小二乗誤差テストに通ったが、基準1~3を明らかに満たさなかった場合、その画素はやはり不良画素とされることがある。最小二乗誤差テストに通って、基準1~3はわずかに満たさなかっただけである場合、その画素は、均一ファントムを用いた最初のIQテストに先立って、やはり良好画素とされる場合がある(ステップ4)。すなわち、実施形態に係る画素判定方法においては、複数のスキャンが較正されたフォワードモデルに一致しているか否かを判定することにより、劣っている画素を判定してもよい。
【0047】
(基準5)
パイルアップ効果が顕著でない低線束条件(ノイズテストの一部)では、検出器の計数性能はポアソン分布で近似することができる。理想的なポアソン分布の場合、計数の分散は計数の平均値に等しい。計数の分散と平均値との比を用いて顕著なノイズを有する画素を識別することができる。基準の一例を以下の式(5)のように定義することができる。
【0048】
【0049】
式中、Niは、主操作スキャンの典型的な積分時間と、このような評価に対して十分大きいサンプルサイズとを有する、視野iにおける画素の合計計数である。テストプロトコルは低X線束条件nπ<yを満足する必要がある。nは1画素当たりの入射計数率であり、τは有効計数不感時間である。yは0.01~0.1の間で選択することができ、パイルアップ事象が総入射計数の1%または10%より少ないことを示している。Rは値yに応じて1.5~2の間で選択することができる。
【0050】
(基準6)
全ての検出X線束関連の基準において、縁部(隅部)の画素のサイズが中心部の画素のサイズと異なっている場合、閾値は縁部(隅部)と中心部とで別々に定義することができる。ある方法例では画素面積を正規化した値、Noffset,Nhigh,Nlowが用いられる。
【0051】
(基準7)
不良画素の判定に用いたキャリブレーションスキャンが種々異なるのに応じて、異なるスキャンプロトコルの基準もまた異なっていることがある。1つの例は高X線束プロトコル用であり、ある画素が最初に計数性能テストに合格しないが、低X線束の計数性能テストには合格する場合、低X線束を用いたオペレーショナルスキャンでは良好画素として扱われることがある。
【0052】
(基準8)
X線束の経時的変動を(有効な参照検出器での読取値を用いて)補正した後、検出器の画素は、スキャン時の統計ノイズによって生じる変動を含みながら安定な計数出力を示す必要がある。検出器が検出した計数値はこの一定値から経時的にドリフトしており、この計数値を測定可能な任意の測定基準を用いることで時間的な安定性の問題を有する画素を識別することができる。例えば、再現性または信頼性テストの一部として、平均値または中央値からの最大計数偏差の評価、かつ/またはホワイトノイズテストを行うことができる。すなわち、実施形態で実行される複数のスキャンは、複数の再現性スキャンおよび/または信頼性スキャンであってもよい。測定基準がプリセット範囲を超えている場合、当該画素は不良画素と識別される。さらに、ある取得時での検出計数と日時を挟んだ別の取得時での検出計数とは統計誤差内で一致している必要がある。いずれの取得時における検出計数値も顕著にプリセット範囲から外れている場合、当該画素は不良画素と識別される。
【0053】
ステップ340Cと340Sとにおいて、あらかじめ規定された基準に基づいて不良画素が識別された後、それら不良画素の読取値が補間される。補間は、各ビン計数が複数の隣接画素から補間される生カウント測定ドメインで行われるように設計することができる(ステップ340C)。補間は、これらの画素の推定路長が隣接画素から補間される、素地サイノグラムドメインで行われるように設計することもできる(ステップ340S)。
【0054】
ステップ340Cと370C並びにステップ340Sと370Sでは、水または影響力が共通している他の組織模擬物質を用いた均一なファントムを用いて不良画素の基準をテストして調整することができる。すなわち、実施形態に係る画素判定方法に用いられる複数のスキャンは、キャリブレーション用ファントムを用いたスキャンであってもよい。初期の基準が設定されて不良画素が補間された後、較正されたフォワードモデルに基づいてファントム画像を作成することができる。ファントム画像に初期基準によるリング(
図2に示すようなリング)が現れている場合は、初期基準を厳しくして(例えば、基準4でより小さいx値を用いる)次の反復が行われる。すなわち、実施形態に係る画素判定方法においては、第1の判定基準に基づいて画像の再構成を行い、再構成された画像に、劣っている画素によって形成されたリングを含んでいるか否かに基づいて、劣っている画素を判定する。これはリングアーチファクトが最小限になるまで繰り返される。基準値は最終反復での値に固定される。
【0055】
図示されていないが、画像中にリングが現れない場合は基準を緩めることも可能である。現在の基準が画質の要求を満たしているとき、(例えば、基準4でより大きいx値を用いることによって)1つ以上の基準のパラメータを緩和する余地が残っている可能性があり、スクリーニングと、補間と、ファントム画像プロセスとの繰り返しを、リングが出現するまで反復することができ、その後基準のパラメータがリング出現の1つ前の反復での値に固定される。
【0056】
ステップ360Sおよび360Cでは、最終の不良画素基準が少なくとも1つのソフトウェアテーブルとしてセーブされ、被検体のスキャンまたは処理に使用される。すなわち、実施形態に係る画素判定方法においては、不良スペクトル画素テーブルまたは不良計数画素テーブルに劣っていると判定された画素の情報を記憶する。換言すると、記憶部としての記憶装置1162が、判定された画素の情報を記憶する。キャリブレーションスキャンの解析結果の変動に応じて、異なるスキャンプロトコル用の複数の不良画素のマップまたはテーブルがあり得る。
【0057】
図4A、4Bに、プロトコルS1用に保存された不良画素が既に存在していた場合の、既存のスペクトル不良画素テーブルを、プロトコルS2用の追加の不良画素で更新した結果を示す。同様に、
図5A、5Bに、プロトコルC1、C2用に保存された2つの不良画素が既に存在していた場合の、既存の計数不良画素テーブルをプロトコルC1用の追加の不良画素で更新した結果を示す。不良画素のキャリブレーションと生成とは周期的に行うことができ、確実に、劣化した画素の取り込みを可能にする。すなわち、実施形態に係る画素判定方法においては、時間領域での検出器性能の不一致を判定するために、複数のスキャンを周期的に行ってもよい。不良画素のマップまたはテーブルは、新しい不良画素が識別されると更新される。一実施形態では、不良画素テーブルが、不良画素を動作不能にする処理(例えば、補間)を実行するシステム内にのみ保存される。あるいは、システム内の並列処理を増すために、検出器基板および/またはモジュールにプロセッサが取り付けられて基板特有またはモジュール特有の不良画素テーブルを保存することができる。この構成では、検出器基板および/またはモジュールをスキャンの開始時にプログラムして、どのプロトコルが使用されているかがわかるようにされると共に、局所的にプロトコルに基づいてデータ補正(例えば、補間)を実行するようにされている。すなわち、実施形態に係る画素判定方法においては、劣っている画素の性能を判定するためのプロトコルを保存する。さらにこの構成では、検出器基板および/またはモジュールにおいて任意の加算(例えば、
図9B~9Dに係る加算)を実行して、検出器基板および/またはモジュールからシステムに送る必要のあるデータの量を減らすようになっている。同様に、対応するモジュールまたは検出器基板内に保存された類似のテーブルを用いて、画素特有、モジュール特有、および検出器基板特有の減弱補正を行うこともできる。
【0058】
検出器アレイは通常モジュール状またはタイル状のデザインを用いて小さい単位で構成されている。全てのスクリーニング基準を適用すると、検出器モジュール内の不良画素の総数を得ることができる。不良画素の数が所定の値を超えている場合、または不良画素がクラスタを形成し、そのクラスタが補正してもなお画質に影響を与える場合、検出器モジュールは不良とみなされ、交換が必要になる。例えば、
図5Bに示したとおり、計数不良画素テーブルは、検出器基板3内のモジュール16の交換を必要とする可能性のあるクラスタの始まりを示している。
【0059】
細かく画素分割されたPCD構成の場合、異なる加算方式を用いて
図9A~9Dに示したような標準分解能の画像と高分解能の画像とを生成することが可能である。異なる加算方式として、限定はしないが、N×N副画素構成の場合、処理の基本画素単位として1×1、1×N、N×1、およびN×N(それぞれ
図9A~9Dに示す)がある。次いでこれらの加算方式に対応する不良画素解析が行われ、各方式についての不良画素マップが生成される。スキャン処理から除外する画素を決定するためにある特定の不良画素マップが被検体のスキャン処理に用いられる。
【0060】
さらに、各不良ミクロ画素は、加算技法に用いられるときに、自身が属するマクロ画素との関連で識別可能であり、各合算マクロ画素において、加算処理時に不良ミクロ画素は除外可能である。この構成では、システムはさらに、各マクロ画素内の不良ミクロ画素の数に基づいて、不良マクロ画素のマップを維持して対応するマクロ画素を以降のスキャンから除外することができる。例えば、同じ3×3のマクロ画素内の9つのミクロ画素の内に5つ以上の不良がある場合、(システムが構成される方法に応じて、特定種類のスキャンにおいてまたはマクロ画素レベルでの他の基準のテスト結果に係わりなく、のいずれかで)そのマクロ画素は不良マクロ画素に分類される。
【0061】
第3世代CTでの典型的なファンビームカバレッジでは、
図7に示したとおりわずかに異なる実路長が検出器アレイと交差する状態で、フラットスラブをステップ310のキャリブレーションスキャンの一部として用いることができる。これらのキャリブレーションスキャンの検出器画素毎の実路長L
iは以下の式(6)により算出することができる。
【0062】
【0063】
式中、Tはキャリブレーションスラブの厚さ、θiは、複数の行とチャネルとからなる検出器モジュールブレード(Detector Module Blade:DMB)上の検出器画素iの投影ファン角である。
【0064】
さらに、異なる厚さの異なるスラブを用いたキャリブレーションを、回転のない静的スキャン設定を用いて行うことができる。これらスラブは検出器アレイ全体をカバーするのに十分な大きさを有し、かつ全データを取得する間良好に水平に保たれる。厚いスラブの場合、CTガントリの口径は1つのスラブの位置で検出器表面全体をカバーすることができないが、スラブ位置は調整可能であり、検出器表面全体をカバーするために複数スキャンを用いることができる。別の実施形態では、異なる厚さの異なるスラブを用いたキャリブレーションを、回転を伴うスキャン形態で行ってもよい。
【0065】
異なる回転速度に伴うさらなるシステムの変動(例えば、管束、散乱線除去グリッド(Anti-Scatter Grid;ASG)の影など)が空気スキャンと参照検出器とにより取り込まれ、それに応じてフォワードモデルの空気流量項N0で補正することができる。例えば、各回転速度での空気スキャンを患者(被検体)のスキャンの前に行い、ASG偏向、並びに様々な視野での検出器と交差する入射X線束の変動を誘起する回転時の他のビーム路の変動を較正してもよい。
【0066】
図8を参照する。種々のキャリブレーションスラブを、寝台の長さの少なくとも一部に沿う方向に互いに組合せることができ、細長の「くさび状」ファントムをなしている。これにより寝台の位置を動かすことで(どのような輸送機構がそれらスラブを搬送しているにしても)各キャリブレーション路長はファントムを再調整することなく検出することができ、キャリブレーションプロセスが促進される。
【0067】
スラブ形態毎のキャリブレーション路長の組合せを増すために、
図10に示したとおり、スラブをX―Y平面に水平に固定した状態でX線管を種々の位置に設置することができる。
図10は、どのようにして複数の管位置によって本キャリブレーションでのスラブスキャンにおいて様々な路長が生じ得るかを示す模式図である。一例として、ある所定のスラブ厚さTの場合に、ファン角φ
iを有して位置した検出器画素iにおいて、X線管が異なる位置(-θ,0,θ)に置かれると、測定路長は以下の式(7)―(9)により求まる。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
式中、x1=θ-φ、x2=θ+φである。一実施形態において、典型的なφの範囲は0~25度であり、θはスラブの厚さ間隔に応じて20~60度の間で選択することができる。このパークアンドシュート方式を用いることにより、ほとんどの検出器チャネルにおける路長サンプルの数を3倍にすることができ、そのために同一またはより広い路長範囲を網羅するのに必要なキャリブレーションスラブの数を著しく減らすことができる。X線管もまた、4以上の位置に置くことで、上記と同じ計算方法にしたがってキャリブレーションサンプルの数を増やすことができる。広コーンカバレッジシステムの場合は、キャリブレーション路長は、チャネル方向と行方向との両方で投影角に基づいて算出する必要がある。
【0072】
一実施形態では、スラブは平坦でかつキャリブレーションの間水平に保たれる。理由は、それによって路長の不確実性を低減(抑制)できるためである。別の実施形態では、路長が既知でかつ調整されている限り、スラブは必ずしも平坦でも水平でもある必要はない。またある実施形態では、各スラブは1つの材料でできている。また別の実施形態では、必ずしも1つの材料でできている必要はない。例えば、スラブは複数の材料でできていてもよい。スラブ材料の例として、ポリプロピレン、水、アルミニウム、チタンまたは銅、代用組織、その他のポリマ、ステンレス鋼または他の金属、kエッジ(k-edge)材料、および種々の組織模擬物質を含むことができる。
【0073】
少なくとも1つのスラブを様々な具合に平置きして1つまたは複数の材料から複数の路長を得ることもできる。例えば、複数のスラブを寝台装置沿いに近接して一列に並べて、寝台装置がラジオグラフィガントリ内で動くにつれてスキャンすることもできる。複数のスラブは、複数の材料で同一高さのもの、同じ材料で複数の高さのもの、または複数の材料で複数の高さのものであり得る。別の実施形態例では、スラブを(例えば、ロボットアームを用いて)CT装置の視野内で保持して懸垂することができる。別の実施形態例では、複数のスラブを、隣接した2つのスラブ間でZ方向にずれた状態で並べることができる。スラブがスキャン視野の内外に動くにつれて、多段状の路長データを連続して得ることができる。
【0074】
言うまでもなく、一実施形態において、上述の技術をCT装置やCTスキャナに適用することができる。
図11に、CT装置またはCTスキャナに設けられた水平ラジオグラフィガントリの一実施例を示す。
図11に示したとおり、(側面視で示した)ラジオグラフィガントリ1150が、X線管1151と、環状フレーム1152と、多列すなわち2次元アレイ方式X線検出器1153とを備えている。X線管1151とX線検出器1153とは、回転軸RAの周囲で回転可能に支持された、環状フレーム1152上の被検体OBJ(例えば、患者)を挟んで反対位置に搭載されている。被検体OBJ(例えば、患者)が図示の頁に対して垂直方向に軸RAに沿って移動させられる間に、回転ユニット1157が環状フレーム1152を1回転当たり0.4秒といった高速で回転させる。
【0075】
本発明に係るX線CT装置の一実施形態を、添付図面を参照して以下に述べる。なお、X線CT装置として様々な種類の装置があり、例えば、回転/回転型装置であって、X線管とX線検出器とが検査対象の被検体の周囲を同時に回転する装置、および固定/回転型装置であって、多数の検出素子がリング状または平面状に並んで、X線管だけが検査対象の被検体の周囲を回転する装置がある。本発明はいずれの種類にも適用可能である。ここでは、現在主流である回転/回転型装置を例に挙げて説明する。
【0076】
このマルチスライス型X線CT装置はさらに高電圧発生器1159であって、X線管1151がX線を発生するようにスリップリング1158を介してX線管1151に印加される管電圧を発生する高電圧発生器1159を備えている。X線検出器1153は被検体OBJを挟んでX線管1151の反対側に位置して被検体OBJ(例えば、患者)を透過した放出X線を検出する。X線検出器1153はさらに個々の検出器素子またはユニットを備えており、光子計数型検出器であってもよい。第4世代の形状システムでは、X線検出器1153は、被検体OBJ(例えば、患者)の周囲に360度配置で配列された複数の検出器の内の一つであってもよい。
【0077】
さらにCT装置はX線検出器1153からの検出信号を処理する装置を備えている。データ取得回路すなわちデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)1154がチャネル毎にX線検出器1153から出力された信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を増幅し、さらに増幅された信号をデジタル信号に変換する。X線検出器1153とDAS1154とは、所定の1回転当たりの投影総数(Total Number of Projections per Rotation:TPPR)を処理するように構成される。
【0078】
前述のデータは、非接触式データ送信機1155を介して、ラジオグラフィガントリ1150の外部のコンソールに収容された前処理装置1156に送られる。前処理装置1156は、感度補正などの補正を未処理データに施す。メモリ1162が、これにより得られたデータ(再構成処理の直前の段階では投影データとも呼ばれる)を保存する。メモリ1162は、再構成装置1164、入力装置1165、およびディスプレイ1166と共に、データおよび/または制御バス1161を介してシステムコントローラ1160に接続されている。システムコントローラ1160は電流調整器1163を制御して、電流をCTシステムの駆動に十分なレベルに制限する。一実施形態において、システムコントローラ1160は、前述した最適スキャン取得パラメータを実装している。再構成装置1164は、方法600などの、前述の方法を実行するように構成された回路を含むことができる。
【0079】
本記載の方法とシステムとは複数の技法で実施可能であるが、概ね本記載の手法を実行するイメージング装置および/または処理回路に関するものである。一実施形態では、処理回路は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、ジェネリック論理アレイ(Generic Array of Logic:GAL)、プログラマブル論理アレイ(Programmable Array of Logic:PAL)、ワンタイムプログラマブルロジックゲートになり得る回路(例えば、ヒューズを用いた回路など)またはリプログラマブルロジックゲートになり得る回路、のいずれかまたはそれらの組合せとして実現される。さらに、この処理回路は、埋め込みおよび/または外部の不揮発性コンピュータ読取り可能なメモリ(例えば、RAM、SRAM、FRAM(登録商標)、PROM、EPROM、および/またはEEPROMなど)であって、本記載の処理を実行するようにコンピュータのプロセッサを制御するコンピュータの命令(バイナリ実行可能命令および/または解釈済コンピュータ命令)を保存するメモリを備えることができる。コンピュータ処理回路は、それぞれが1つまたは複数のスレッドをサポートし、かつそれぞれが1つまたは複数のコアを有する1つまたは複数のプロセッサを実装してもよい。
【0080】
さらに本開示の諸実施形態を以下の挿入節に示す。
【0081】
(1)細かく画素分割された光子計数型検出器によるコンピュータ断層撮影(CT)システムで性能の劣る画素を判定する方法であって、限定はしないが、(a)前記CTシステムを用いて複数のその場キャリブレーションスキャンを行うことと、(b)いずれも前記複数のキャリブレーションスキャンによって作成された計数画像とスペクトル画像とに基づく第1基準セットに基づき前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の性能が劣っていると判定することと、(c)性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の示度を性能の劣る画素のマップに保存することと、を含む方法。
【0082】
(2)(1)の方法であって、前記CTシステムを用いて複数のその場キャリブレーションスキャンを行うことは、限定はしないが、(a)異なる強度での複数の空気スキャンと、(b)異なる減弱路長での複数のスキャンと、(c)計数バックグラウンドを測定するためのX線を用いないダークスキャンと、(d)ノイズスキャンと、(e)複数の再現性および/または信頼性スキャンとの少なくとも1つを実行することを含む方法。
【0083】
(3)(1)と(2)とのいずれか1つの方法であって、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の性能が劣っていると判定することは、限定はしないが、前記複数のスキャンが較正されたフォワードモデルに一致しているか否かを判定することを含む方法。
【0084】
(4)(1)~(3)のいずれか1つの方法であって、前記第1基準セットに基づき前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の性能が劣っていると判定することは、限定はしないが、(b1)前記複数のキャリブレーションスキャンが、前記第1基準セットに基づき前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の性能が劣っていることを示していると判定することと、(b2)前記第1基準セットと異なる第2基準セットを作成することと、(b3)前記複数のキャリブレーションスキャンが、前記第2基準セットに基づき前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の性能が劣っていることを示していると判定することと、を含む方法。
【0085】
(5)(1)~(4)のいずれか1つの方法であって、前記CTシステムを用いて複数のその場キャリブレーションスキャンを行うことは、限定はしないが、キャリブレーション用ファントムを用いてスキャンを行うことを含む方法。
【0086】
(6)(1)~(5)のいずれか1つの方法であって、前記複数のキャリブレーションスキャンが、前記第1基準セットに基づき前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の性能が劣っていることを示しているか否かを判定することは、限定はしないが、前記第1基準セットを用いて画像を再構成することと、再構成された画像が、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの性能が劣っている画素によって形成されたリングを含んでいるか否かを判定することと、を含む方法。
【0087】
(7)(1)~(6)のいずれか1つの方法であって、性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の示度を保存することは、限定はしないが、不良スペクトル画素テーブルと不良計数画素テーブルとの対応する一方に前記示度を保存することを含む方法。
【0088】
(8)(7)の方法であって、性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の示度を保存することは、性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素が、(1)過剰なバックグラウンドの計数率と、(2)あるX線束での高すぎる計数率と、(3)あるX線束での低すぎる計数率と、(4)第1閾値より大きい計数の平均値に対する計数変動の割合と、(5)第2閾値より大きい計数平均からの偏差と、の少なくとも1つの任意の組合せを経験したことを、不良計数画素テーブルに保存することを含む方法。
【0089】
(9)(1)~(8)のいずれか1つの方法であって、性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の示度を保存することは、限定はしないが、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を性能が劣っていると判定するためのプロトコルを保存することを含む方法。
【0090】
(10)(1)~(9)のいずれか1つの方法であって、前記CTシステムを用いて複数のその場キャリブレーションスキャンを行うことは、限定はしないが、時間領域での検出器性能の不一致を判定するためにその場キャリブレーションスキャンを周期的に行うことを含む方法。
【0091】
(11)(1)~(10)のいずれか1つの方法がさらに、限定はしないが、前記少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を用いることなく前記CTシステムを用いて計数ベースの被検体のスキャンを行うことを含む方法。
【0092】
(12)(1)~(10)のいずれか1つの方法がさらに、限定はしないが、前記少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を用いることなく前記CTシステムを用いてスペクトルベースの被検体のスキャンを行うことを含む方法。
【0093】
(13)(9)の方法がさらに、限定はしないが、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を性能が劣っていると判定するためのプロトコルのために、前記少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を用いることなく、前記CTシステムを用いて被検体のスキャンを行うことと、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を性能が劣っていると判定するためのプロトコル以外のプロトコルのために、前記少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を用いて前記CTシステムを用いた被検体のスキャンを行うことと、を含む方法。すなわち、実施形態に係る画素判定方法は、劣っている画素の性能を判定するためのプロトコルのために、劣っている画素を用いることなく被検体のスキャンを行い、前記プロトコル以外のプロトコルのために、前記劣っている画素を用いて前記被検体のスキャンを行う。
【0094】
(14)(1)~(13)のいずれか1つの方法がさらに、限定はしないが、前記少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を前記加算の結果の一部として用いることなく、前記少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素を含むマクロブロックからの値を加算することによって前記CTシステムを用いた被検体のスキャンを行うことを含む方法。
【0095】
(15)(7)の方法であって、性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素の示度を保存することは、性能が劣っていると判定された、前記CTシステムの少なくとも1つの検出器の少なくとも1つの画素が、(1)最大閾値を上回る、対応する正規化ビン計数と、(2)最小閾値を下回る、対応する正規化ビン計数と、の少なくとも1つの任意の組合せを経験したことを、不良スペクトル画素テーブルに保存することを含む方法。
【0096】
(16)コンピュータ断層撮影(CT)システムであって、限定はしないが、(1)~(15)のいずれか1つの方法を実行するように構成された処理回路を含むシステム。
【0097】
(17)コンピュータが実行可能な命令を保存するコンピュータ読取り可能な媒体を含むコンピュータシステムであって、保存された前記コンピュータ実行可能命令の制御の下でコンピュータプロセッサを制御して(1)~(15)のいずれか1つの方法を実行するシステム。
【0098】
本提示のいくつかの実施形態について多くの修正および変更を以上の知見を踏まえて行うことができる。したがって、本記載の複数の請求項の範囲内で、本明細書で具体的に述べた手段以外の手段で本開示を実施可能なことは明らかである。
【0099】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、劣っている画素を判定することができる。
【0100】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1156 前処理装置
1160 システムコントローラ
1162 記憶装置
1164 再構成装置
1165 入力装置
1166 表示装置