(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167797
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
G01T1/161 A
G01T1/161 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048679
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】17/237,975
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペン ペン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウエンユエン チー
(72)【発明者】
【氏名】シャオリ リ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヤン
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188GG19
4C188JJ02
4C188KK09
4C188KK15
4C188KK24
4C188KK33
4C188KK35
(57)【要約】
【課題】画質を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る画像処理装置は、処理回路を備える。処理回路は、ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された生データから、対消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出し、抽出された前記エネルギーデータおよび抽出された前記タイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類し、前記分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を決定し、消滅イベントごとに、前記消滅イベントの前記タイミング分解能に基づいて、TOF(Time Of Flight)カーネルの幅を決定し、前記生データ、および前記TOFカーネルの前記決定された幅に基づいてPET(Positron Emission Tomography)画像を再構成する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された生データから、対消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出し、
抽出された前記エネルギーデータおよび抽出された前記タイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類し、
前記分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を決定し、
消滅イベントごとに、前記消滅イベントの前記タイミング分解能に基づいて、TOF(Time Of Flight)カーネルの幅を決定し、
前記生データ、および前記TOFカーネルの前記決定された幅に基づいてPET(Positron Emission Tomography)画像を再構成する、処理回路
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記処理回路は、
前記エネルギーデータおよび前記タイミングデータから、前記消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれによって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の量を決定すること、
によって、各消滅イベントを分類する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記処理回路は、前記量に基づいて、シングル結晶イベント、マルチ結晶イベント、またはハイブリッド結晶イベントとして、前記消滅イベントを分類する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記シングル結晶イベントは光電イベントであり、前記マルチ結晶イベントは散乱イベントであり、前記ハイブリッド結晶イベントはこれらの組み合わせである、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記消滅イベントがハイブリッド結晶イベントであることを前記分類が示すときに、シングル結晶イベントに関連するタイミング分解能と、マルチ結晶イベントに関連するタイミング分解能との畳み込みによって前記タイミング分解能を計算する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
各消滅イベントは、所定の期間中の、ガンマ線と1つまたは複数のガンマ線検出器との相互作用を含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
処理回路により、ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された生データから、対消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出し、
抽出された前記エネルギーデータおよび抽出された前記タイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類し、
前記分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を決定し、
消滅イベントごとに、前記消滅イベントの前記タイミング分解能に基づいて、TOF(Time Of Flight)カーネルの幅を決定し、
前記生データ、および前記TOFカーネルの前記決定された幅に基づいてPET(Positron Emission Tomography)画像を再構成する、画像処理方法。
【請求項8】
ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された生データから、対消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出し、
抽出された前記エネルギーデータおよび抽出された前記タイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類し、
前記分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を決定し、
消滅イベントごとに、前記消滅イベントの前記タイミング分解能に基づいて、TOF(Time Of Flight)カーネルの幅を決定し、
前記生データ、および前記TOFカーネルの前記決定された幅に基づいてPET(Positron Emission Tomography)画像を再構成する処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)イメージングは、放射性医薬品の患者への投与(例えば、経口摂取または吸入を通して)によって開始される。適時に、人体内の特定の場所に放射性医薬品が集中し、それにより、関心領域に蓄積する放射性医薬品の物理的特性および生体分子特性を利用する。投与されてから捕捉され排出されるまでの、実際の空間分布、蓄積ポイントまたは領域の濃度、およびPETイメージングプロセスの動態は、臨床的な重要性を持つ可能性がある全ての要素である。
【0003】
PETイメージングプロセス中、医薬品に付着されているポジトロン放射体は、同位元素の物理的性質に従ってポジトロンを放射する。放射したポジトロンは、イメージング対象物または患者の電子と衝突し、結果として、ポジトロンおよび電子の消滅と、反対方向への511keVの2つのガンマ線の発生をもたらす。発生したガンマ線を検出するためにいくつかのPET検出器リングを備えるPET装置は、典型的には、該いくつかのPET検出器リングを支持する円形ボアタイプハウジングを備える。2つの発生したガンマ線のそれぞれは、いくつかのPET検出器リングのPET検出器と相互作用し、信号が記録される。
【0004】
従来より、衝突を受けたPET検出器間で2つのガンマ線が発生した場所を推定するために、PETシステム画像再構成技法は、「消滅イベント」の場所が、2つの衝突を受けたPET検出器間の任意の所与のポイントで等確率で起こったという仮定に頼っていた。しかし、より高いタイミング精度を伴うPETイメージングシステムは、2つの発生した同時発生ガンマ線または消滅光子間の飛行時間(Time-Of-Flight:TOF)差異を測定することが可能である。したがって、画像再構成技法は、TOFカーネルの統合化によって消滅イベントが起こった場所の改善した空間推定に頼ることができる。多くの場合、このTOFカーネルは、PETシステムのタイミング分解能が、全ての消滅イベントに対して一定であると仮定し、全てのケースで用いられる平均時間分解能を可能にする。
【0005】
各消滅イベントがそれぞれ1つのPET検出器内にそれらのエネルギーを完全に蓄積する2つのガンマ線となる理想的な条件下では、平均TOFカーネルを使用することは許容される。しかし、消滅イベントの30%以上が、「シングル結晶」イベントにはならない。したがって、従来の技法は、非理想の状況下で最適な画像再構成を行うことはできないため、新しい手法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】SurtiSuleman、"Update on Time-Of-Flight PET Imaging"、J. Nucl. Med.、2015年、Vol.56、No.1
【非特許文献2】Vandenbergheら、"Recent developments in time-of-flight PET", EJNMMI Physics、2016年、3:3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る画像処理装置は、処理回路を備える。処理回路は、ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された生データから、対消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出し、抽出された前記エネルギーデータおよび抽出された前記タイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類し、前記分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を決定し、消滅イベントごとに、前記消滅イベントの前記タイミング分解能に基づいて、TOF(Time Of Flight)カーネルの幅を決定し、前記生データ、および前記TOFカーネルの前記決定された幅に基づいてPET(Positron Emission Tomography)画像を再構成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、ポジトロン放射断層撮影(PET)イメージングシステムの内部及び真の消滅ポイントを示す図である。
【
図1B】
図1Bは、従来のPET方法論による消滅イベントの推定を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、飛行時間(TOF)PET方法論による消滅イベントの推定を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、TOFカーネル幅を変化させることによって実施されるPET画像再構成を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、エネルギー蓄積に依存するタイミング分解能を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、各発生したガンマ線が、1つのガンマ線検出器のみと相互作用する消滅イベントを示す図である。
【
図3B】
図3Bは、発生したガンマ線の少なくとも1つが、2つ以上のガンマ線検出器と相互作用する消滅イベントを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の例示的実施形態による、PET画像を再構成するための方法のフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、本開示の例示的実施形態による、PET画像を再構成するための方法のサブプロセスのフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、本開示の例示的実施形態による、PET画像を再構成するための方法のサブプロセスのフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の例示的実施形態による、検出されたガンマ線のエネルギーヒストグラムおよびエネルギーウィンドウを示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の例示的実施形態による、全ての消滅イベントに対する、単一のガンマ線によって衝突を受けたガンマ線検出器の数を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本開示の例示的実施形態による、全ての消滅イベントに対する、シングル結晶イベントまたはマルチ結晶イベントに関与するガンマ線のパーセンテージを示した表である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態による、PET装置の斜視図である。
【
図10】
図10は、本開示の例示的実施形態による、PET装置および関連するハードウェアの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本明細書で使用するとき、単数形は、1つまたは複数であると定義するものとする。本明細書で使用するとき、複数形は、2つまたはそれ以上であると定義するものとする。本明細書で使用するとき、用語「別の」は、少なくとも2つ目のもの、またはそれ以外のものであると定義するものとする。本明細書で使用するとき、用語「含む」および/または「有する」は、「備える、含む、包括する」と同様であると定義する(すなわち、オープンランゲージである)。本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「実施形態」、「実装形態」、「例」または類似の用語に対する言及は、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれる実施形態に関連して記載されている特定の特性、構造、または特徴を意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所で出現する上記フレーズが、必ずしも同じ実施形態を指しているというわけではない。さらに、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で、特定の特性、構造、または特徴は限定されることなく、組み合わされる場合がある。
【0012】
用語「検出器結晶」、および「結晶」は、同じ意味で用いられ、
図9および
図10を参照して後述するようなイメージングシステムの類似のコンポーネントを説明するためのものである。
【0013】
ポジトロン放射断層撮影(PET)は、対向する511keVの光子が、放射されたポジトロンと近くの電子との消滅から生じるという原理に基づくものである。従来のPETでは、同時計数電子機器を使用して、どの応答線(Line Of Response:LOR)に沿って消滅が起こったかを決定する。先に概説したように、消滅の位置を特定するために、従来の手法は、LORに沿った任意の所与のポイントで等確率で消滅が起こったという仮定に頼っている。飛行時間(TOF)PETはさらに一歩進み、それぞれのPET検出器を用いて各光子の到着時間の差を測定することによって、LORに沿った消滅の適当な位置を決定する。
【0014】
上記の概説について、図面の
図1Aから
図1Cに示す。
図1Aでは、t
1およびt
2は、PET検出器リングのそれぞれの検出器に到達する真の消滅ポイント109で発生した2つの光子のそれぞれの時間量を反映しており、ここで、Dは、患者に占める距離または直径を示している。上記で概説した従来のPETシステムは、充分な分解能t
1およびt
2の値を弁別することができないので、LORに沿って各場所で生じた消滅イベントが等確率と仮定して消滅イベント(対消滅イベント)の場所を概算する画像再構成に頼らなければならない。この等確率を、
図1Bに示す。ここで、消滅イベント109´の概算の場所は、患者の身長Dのいずれかの位置に等確率である。当然、
図1Aを鑑みて、特に患者のサイズが大幅に変わる可能性があるので、全てのPETシステムおよび全ての患者にとって適切なものとするためには、
図1Bの従来の手法は好ましくない。
図1CのようなTOF PETは、充分なタイミング分解能でt
1およびt
2の測定を可能にするので、画像再構成中のTOFカーネルの使用によって消滅ポイント109"の概算が可能になる。当業者によって理解されるように、非TOF PETと比較してTOF PETの効果的な信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)利得が、スキャナのタイミング分解能Δtと、スキャンされる対象のサイズDとの両方に関連することが理解できる。このために、式(1)が成り立つ。
【0015】
【0016】
ここで、式中、cは光の速度である。Surtiは、本明細書に関連するTOF PETおよび非TOF PETの有益なレビューを提示している(非特許文献1)。
【0017】
SNR利得は、患者のサイズDと共に増加する。これは、非TOF PETでは、患者のサイズDが大きくなると、消滅イベントが起こり得る場所の数が増え、それにより画像品質が低下する可能性があることを考えると、有益である。
【0018】
TOF情報が入手できる場合、ガウス分布が、
図1Cに示すような消滅イベントの場所を予測するために使用される場合がある。当然、PETシステムの時間分解能が、全LORにわたって概して一定であると従来より考えられており、画像再構成に適用されるTOFカーネルは、典型的には全LORに対する単一の平均化された時間分解能値である。
【0019】
この一般化は、よくあることだが、システムをモデル化するために正確なTOF情報を使用する重要性を単純化しすぎる。不正確なTOFカーネルまたはTOFカーネル幅は、とりわけその再構成済み画像内のアーチファクトをもたらす可能性がある。例えば、TOFカーネル幅が狭すぎると、コントラストが低下し、エッジが回復しない再構成をもたらす可能性があり、その一方で、TOFカーネル幅が広すぎると、バックグラウンドの均一性の低下をもたらす可能性がある。
図2Aに示されるように、400psのタイミング分解能でシミュレートしたデータが提示されている。より狭いカーネル幅(例えば、200ps)は、再構成済み画像の中央にアクティビティを集中させ、その一方で、より広いカーネル幅(例えば、800ps)は、再構成済み画像のエッジにアクティビティを集中させる。タイミング分解能の平均とは等しくない場合がある正確に選択されたTOFカーネル幅(例えば、400ps)のみが、正確なアクティビティ分布を生成する。
図2Aは、非特許文献2から改変して適合させたものである。
【0020】
上記のことに鑑みて、
図2Bのように、PET計測装置のタイミング分解能は検出された信号の振幅によって決まることをさらに考慮すべきである。したがって、タイミング分解能は、各PET検出器にヒットするガンマ線のエネルギーによって決まる。ガンマ線エネルギーが高くなるほど、タイミング分解能がより良く(すなわち、より小さく)なる。PETイメージングシステムのケースにおいては、この理想的なシナリオは、
図3Aに示すような各ガンマ線が単一のPET検出器内にそのエネルギーの全てを蓄積するケースである場合がある。このイベントは、光電(PhotoElectric:PE)イベントとして知られている。しかし、ガンマ線とPET検出器のシンチレータとの相互作用の全てが、光電イベントであるわけではない。実際には、エネルギーの511keV未満が最初の相互作用の際に蓄積されるケースでは、最初の相互作用は、コンプトン散乱(Compton Scattering:CS)イベントと見なされる。
図3Bに示すように、CSイベントの結果、511keVの各ガンマ線の一部のみが散乱ポイントに蓄積し、エネルギーが低下したガンマ線は、再びシンチレータと相互作用するか、またはシンチレータから離れるまで、シンチレータの内部を移動し続ける。2番目の相互作用は、CSイベント、またはPEイベントである場合がある。
【0021】
図3Aに示されているような同時計数イベントでは、両方のガンマ線により最大信号が生成されるので最良のタイミング分解能が生成される。しかし、
図3Bのケースでは、ガンマ線との相互作用の結果として、4つの光検出器がシンチレーション光子を検出し、また全ての信号は、
図3Aのものよりも小さい振幅を有する。それにより、各発生したガンマ線はまずCSイベントで、次いで、CSイベントまたはPEイベントのどちらかで相互作用するので、
図3Bの相互作用のタイミング分解能は低下する。上記に関して、
図3Bの各ガンマ線について記載したイベントは、2つの発生したガンマ線の1つのみに関するケースである場合がある。ある光子が単一のイベントをもたらし、その他の光子が複数の相互作用イベントをもたらすこのような混合したイベントのシナリオも考慮する必要がある。
【0022】
非TOFシステムおよびTOFシステムを含むPETシステム設計は、
図3Aおよび
図3Bに関して上述した光子の相互作用の種々のシナリオを切り離さない。論じるように、イベントの全ての種類を反映する全体的なタイミング分解能が、代わりに計算(決定)される。しかし、ガンマ線の1つまたは両方が、PET検出器のシンチレータと複数の相互作用を有する
図3Aおよび
図3Bに示されているイベントの場合、一定のタイミング分解能、ゆえにTOFカーネル幅は、オーバーシュートまたはアンダーシュートする場合があり、その結果、画像再構成におけるアーチファクトをもたらす。
【0023】
したがって、PET画像収集において起こり得る無数のイベントの正確な画像再構成および考慮事項に対して、本開示の実施形態による動的TOFカーネルを有するPETシステムが必要とされる。このために、同時計数イベントに関連する検出器相互作用(すなわち、消滅イベントから発生する2つのガンマ線)は、それぞれがPET検出器と相互作用する回数およびそのエネルギーに基づいて評価される必要がある。
【0024】
とりわけ、この手法は、PET検出器モジュール設計において最近の進歩を利用し、これにより、PET検出器の結晶アレイ内の各結晶ピクセルからのシンチレーション光のエネルギーおよびタイミングの測定が可能になる。この方法で、CSイベントとPEイベントが異なる結晶で起こる場合の異なる相互作用シナリオ間の弁別が可能である。
【0025】
一実施形態による消滅イベントまたは相互作用シナリオは、概して、3つのタイプのイベントとして定義することができる。本明細書においてシングル結晶グループと称する第1グループは、PEイベントとして両方のガンマ線(または両方のシングルガンマ線)がPET検出器と(すなわち1回のみ)相互作用し、1つの場所にそれらのエネルギーの全てが蓄積される消滅イベントを含む。本明細書においてマルチ結晶グループと称する第2グループは、少なくとも1つのCSイベントおよびPEイベントとしてあるいは少なくとも2つのCSイベントとして2つのガンマ線(または2つのシングルガンマ線)の両方がPET検出器と(すなわち少なくとも2回)相互作用する消滅イベントを含む。本明細書において混合結晶グループと称する第3グループは、PEイベントとして2つのガンマ線(または2つのシングルガンマ線)のうち1つのみがPET検出器と(すなわち1回のみ)相互作用し、少なくとも1つのCSイベントおよびPEイベントとしてあるいは少なくとも2つのCSイベントとして2つのガンマ線(または2つのシングルガンマ線)のその他のものがPET検出器と(すなわち少なくとも2回)相互作用する消滅イベントを含む。したがって、各グループの定義におけるイベントに対して、異なるTOFカーネル幅が、画像再構成中に使用される場合がある。
【0026】
一例では、第1グループのタイミング分解能はΔt1と定義することができる。第2グループおよび第3グループのタイミング分解能は、ガンマ線とPET検出器のシンチレータとの相互作用の数に基づく場合がある。第2グループに関して、ガンマ線対の各散乱したもののみがPET検出器と2回相互作用することを仮定すると、タイミング分解能は、Δt2と定義することができる。第3グループに関して、PEイベントでガンマ線対の1つのガンマ線がエネルギーを蓄積し、かつガンマ線対のその他のガンマ線のみが散乱してPET検出器と2回相互作用することを仮定すると、タイミング分解能は、第1タイミング分解能Δt1と、第2タイミング分解能Δt2との畳み込みとして、以下の式(2)で定義することができる。
【0027】
【0028】
当然、散乱したガンマ線の間の結晶相互作用の数は変化し、それにより、蓄積されたエネルギーの変化がPETシステムのタイミング分解能を変化させるので、タイミング分解能はこれらの定義に限定されない。例えば、マルチ結晶イベント(すなわち、少なくとも3つの相互作用がガンマ線対間で起こった)では、エネルギーの可変量は、CSイベント運動学に基づいて各結晶に蓄積される場合がある。タイミング分解能はエネルギー蓄積に関連することを理解した上で、蓄積されたエネルギーレベルに従って、Δt2およびΔt3は、より細かいサブグループに分割できることが理解できる。一例では、対応するタイミング分解能は、エネルギー蓄積、光子相互作用の数、タイミング分解能などに基づいて拡張されたルックアップテーブルに従って決定される場合がある。別の例では、対応するタイミング分解能は、エネルギー蓄積、光子相互作用の数、タイミング分解能などの関係性を定義する関数の評価に従って決定される場合がある。
【0029】
一般的な形式では、画像再構成向けのTOFカーネルは、以下の式(3)で表される関数を用いて、イベントごとに決定することができる。
【0030】
【0031】
式中、Δta
2=f(E1,E2,E 3,…,Ei,…,EM)及びΔtb
2=f(E1,E2,E 3,…,Ej,…,EN)であり、ここで、Δtaは、PET検出器にヒットする対のガンマ線の第1のタイミング分解能であり、Eiは、各結晶に蓄積する第1ガンマ線の測定されたエネルギーであり、Mは、第1ガンマ線がヒットした結晶の総数であり、Δtbは、PET検出器にヒットする対のガンマ線の第2のタイミング分解能であり、Ejは、各結晶に蓄積する第2ガンマ線の測定されたエネルギーであり、Nは、第2ガンマ線がヒットした結晶の総数である。ΔtaおよびΔtbを計算する関数は、較正プロセスによって決定することができ、これは、経験的式、またはルックアップテーブルである場合がある。
【0032】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、以前のPETシステムのような、全ての同時計数イベントに対する単一のタイミング分解能の抽出の不正確さを排除する。本明細書の方法は、PETシステムによって観察されるイベントごとのタイミング分解能を定義する際の正確さを向上させる。これにより、タイミング分解能情報が正確になると、いっそう画像再構成中のアーチファクトが低減され、それによって、より良い画像品質が実現される。
【0033】
本明細書のシステムおよび方法は、異なるタイミング分解能を伴う同時計数イベントに対して、異なるTOFカーネル(すなわち、異なるTOFカーネル幅)を利用する。TOFカーネル幅を対応するタイミング分解能に一致させることで、単一のTOFカーネルを使用することにより生じるアーチファクトを低減することによって、PET画像を向上させる。
【0034】
一実施形態によって、本開示は、PET画像再構成において動的に調整可能なTOFカーネル幅の使用の方法について記載する。全てのデータはリストモード形式で得られるので、タイミング分解能は、イベントごとに決定されるか、またはLORごとに決定される場合がある。動的TOFカーネルは、イベントごとにタイミング分解能が決定される場合、リストモードPET画像再構成で使用することができる。LORごとにタイミング分解能が決定される場合、動的TOFカーネルは、リストモード画像再構成で、または、サイノグラムを形成するためにLORによるリストモードデータの分類に続くサイノグラムベース画像再構成で使用されてよい。
【0035】
一実施形態では、本開示は、イベントごとにPET装置のタイミング分解能を決定する方法について記載する。タイミング分解能は、同時計数イベントごとのガンマ線対のエネルギーによって決定されてよい。このことは、ガンマ線相互作用の場所などの他の要因によってもタイミング分解能の変化は起こる場合があるという理解を伴って決定される場合があり、これにより、LOR依存タイミング分解能が提供される。
【0036】
一実施形態では、本明細書に記載の動的TOFカーネル方法は、画像品質を向上させるために、他のイメージングモダリティにも適用することができる。
【0037】
一実施形態では、方法は、異なるTOFカーネル幅を伴うグループにデータを分割することと、グループごとに画像を再構成することと、次いで、その後、再構成済み画像を組み合わせることと、によって実装される場合がある。
【0038】
ここで、上記の概説および説明について、
図4のフロー図を参照して説明する。
図4のフロー図は、方法410を説明するものである。方法410は、PET画像を再構成するために、動的に調整されるTOFカーネルを使用して抽出されたエネルギーデータおよび抽出されたタイミングデータを処理するステップおよびサブプロセスを含む。
【0039】
まず、方法410のステップ415で、消滅イベントに関連して内在するエネルギーデータおよびタイミングデータは、PET収集によって取得されたデータから抽出される場合がある。一実施形態では、PET収集から取得されたデータは、経時的に並べられ、イベントデータに従って前処理されない。より一般的に実装される場合がある別の実施形態では、PET収集から取得されたデータは、関連するエネルギーデータおよびタイミングデータに従ってイベントごとに並べられたリストモードデータである場合がある。
【0040】
方法410のサブプロセス420で、データはリストモードデータとして得られると仮定して、抽出されたエネルギーデータおよび抽出されたタイミングデータは処理されて、消滅イベントごとに関連するPEイベントおよびCSイベントが識別されて、消滅イベントによって発生した2つのガンマ線のそれぞれの結晶相互作用の数に基づいて消滅イベントが分類される場合がある。サブプロセス420については、
図5Aを参照してより詳細に後述する。
【0041】
方法410のサブプロセス420で生成された分類された消滅イベントは、分類された消滅イベントのそれぞれのタイミング分解能を計算するために、方法410のサブプロセス430で使用される場合がある。方法410のサブプロセス430については、
図5Bを参照してより詳細に後述するが、計算されたタイミング分解能は、少なくともイベント分類と、表形式構造、タイミング分解能モデルなどとの比較に基づくものであると理解できる。
【0042】
方法410のサブプロセス430で計算されたタイミング分解能は、消滅イベントごとにTOFカーネルを決定するために、方法410のステップ435で使用される場合がある。一実施形態では、消滅イベントごとのTOFカーネルの幅は、消滅イベントごとの計算されたタイミング分解能と同等であるように決定される。別の実施形態では、消滅イベントごとのTOFカーネルの幅は、消滅イベントごとの計算されたタイミング分解能およびシステム依存ハードウェア要因に従って決定される場合がある。
【0043】
方法410のステップ440で、決定されたTOFカーネルは、抽出されたエネルギーデータおよびタイミングデータ由来のPET収集データの画像再構成に使用される場合がある。画像再構成は、リストモードベース画像再構成であるか、またはサイノグラムを生成するためにLORによるリストモードデータの分類に続くサイノグラムベース画像再構成であってよい。画像再構成は、解析再構成技法、反復再構成技法などによって実施されてよい。反復再構成技法としては、最尤推定期待値最大化(Maximum Likelihood Expectation Maximization:MLEM)、逐次サブセット期待値最大化(Ordered Subsets Expectation Maximization:OSEM)、代数的再構成技法(Algebraic Reconstruction Technique:ART)、および最大帰納的(Maximum A Posteriori:MAP)再構成などが挙げられる。
【0044】
方法410のサブプロセス420について、ここで、
図5Aを参照してより詳細に説明する。まず、サブプロセス420は、PET収集データに対応する抽出されたエネルギーデータおよび抽出されたタイミングデータを受信することを含む。
【0045】
一実施形態によれば、リストモードデータとしてPET収集データが得られず、サブプロセス420は、消滅イベントに関連する時間の既知のウィンドウに対応する所定の時間セグメントに基づいてデータエントリがクラスタ化されるステップ521に進む。言い換えると、単一の消滅イベントから起こるガンマ線およびそれらの検出器相互作用は、解析向けに一緒にグループ化される必要がある。一実施形態では、この手法は、LORごとの評価を可能にする。
【0046】
一実施形態では、時間のウィンドウまたは所定の時間セグメントは、全体の得られたデータセットの解析に対して単一の値である場合がある。所定の時間セグメントは、2ナノ秒(ns)、3ns、4nsなどであってもよい。一例では、所定の時間セグメントは、3nsである。データの各所定の時間セグメントは、1対のガンマ線とPETシステムのガンマ線検出器との検出された相互作用に対応する2つ以上のエネルギーデータエントリを有する場合がある。これらの検出された相互作用またはカウントは、エネルギーレベルの範囲とは無関係のカウントおよびデータエントリを含む場合がある。サブプロセス420のステップ521でクラスタ化された抽出されたエネルギーデータは、サブプロセス420のステップ522に提供されてよい。
【0047】
PET収集データがリストモードで得られる一実施形態によれば、イベントごとに既に記録されたエネルギーデータおよびタイミングデータは、直接抽出されて、次いでサブプロセス420のステップ522に提供される場合がある。
【0048】
上述したプロセスのいずれかによって、サブプロセス420のステップ522は、消滅イベントデータの各クラスタまたは対内のガンマ線またはシングルガンマ線(以下、単にシングルと呼ぶ)ごとに、抽出されたエネルギーデータの好ましいエネルギーウィンドウを分離することを含む。好ましいエネルギーウィンドウは、シングルごとに抽出されたエネルギーデータの合計に適用されてよい。好ましいエネルギーウィンドウに分離することは、消滅イベントに関連しそうな相互作用に設定されるデータを低減するために、
図6に示されているようなエネルギーフィルタの適用を含んでもよい。一例では、エネルギーウィンドウまたはエネルギーフィルタは、ポジトロン消滅は2つの同時発生511keVガンマ線を引き起こすことを理解した上で、425keVから650keVの間のウィンドウであってもよい。
【0049】
サブプロセス420のステップ523で、フィルタ処理されたエネルギーデータは、各消滅イベントに関連する各シングルによる検出器結晶相互作用の数を決定するために評価される場合がある。このような評価は、フィルタ処理されたエネルギーデータ内の関連するガンマ線の各「対」のシングルごとのカウントの数を算定することによって決定される場合がある。例外を除いて、「対」データは、少なくとも2つのカウントを含む場合があり、ここで、PEイベントとしてヒットした単一の結晶に各シングルはそのエネルギーの全てを蓄積する。「対」データは、3つ以上のカウントを含む場合があり、同様に、CSイベント、および各シングルと検出器結晶との相互作用に依存する。実際には、個々に、または累積的に、425から650keVウィンドウを通った全てのシングルによってヒットされた検出器結晶の数のヒストグラムを提示する
図7に示すように、シングルまたはガンマ線の大多数(62.8%)は、検出器結晶と1回のみ相互作用する。しかし、
図7から理解できるように、40%近くのガンマ線は、結果としてマルチ結晶イベントとなり、この際、少なくとも1つのCSイベントが観察される。
【0050】
上述したように、一実施形態によれば、消滅イベントは、概して、異なるタイプのイベントとして定義することができる。この事例では、イベントの3つのタイプまたはグループのみがあるが、以下のように定義することもできる。第1グループは、シングル結晶グループであり、ここで、PEイベントとして両方のガンマ線がPET検出器の結晶のそれぞれ1つと(すなわち1回のみ)相互作用する。第2グループは、マルチ結晶グループであり、ここで、少なくとも1つのCSイベントおよびPEイベントとしてまたは少なくとも2つのCSイベントとして2つのガンマ線の両方が複数の結晶と(すなわち少なくとも2回)相互作用する。第3グループは、混合結晶グループであり、ここで、PEイベントとして2つのガンマ線のうち1つのみが、PET検出器の単一の結晶と(すなわち1回のみ)相互作用し、一方で、少なくとも1つのCSイベントおよびPEイベントとしてまたは少なくとも2つのCSイベントとして2つのガンマ線のその他のものがPET検出器の複数の結晶と(すなわち少なくとも2回)相互作用する。
【0051】
サブプロセス420のステップ523での抽出されたエネルギーデータの各クラスタ内の結晶相互作用の数が決定されて、それに応じて、サブプロセス420のステップ524で、各クラスタまたは消滅イベントは、いくつかの結晶相互作用(すなわち、ヒットした各ガンマ線検出器の結晶アレイ内の検出器結晶またはシンチレータ結晶の数)に従って分類することができる。
【0052】
一実施形態では、2つのみのカウントが消滅イベント内に記録される場合、消滅イベントは、シングル結晶イベントとして分類される場合がある。一実施形態では、3つ以上のカウントが記録される場合、カウントの抽出されたエネルギーデータは、消滅イベントによって発生した2つのガンマ線からどのようにエネルギーが蓄積されたかを決定するために算定される場合がある。例えば、4つのカウントが記録される場合、内在するエネルギーデータは、ガンマ線の1つのPEイベントに対応する1つの511keVヒットがあったこと、および、他の3つのカウントが複数の検出器結晶と相互作用する単一のガンマ線と関連することを示す場合がある。別の例では、4つのカウントが記録される場合があり、かつ、CSイベントとして、およびそれに続くCSイベントまたはPEイベントのいずれかとして、消滅イベントの各ガンマ線がガンマ線検出器の複数の検出器結晶と相互作用したことを示す場合がある。上述の事例のいずれかにおいて、イベントは、記録されたカウントの数、およびそれらに関連するエネルギーデータに基づいて、シングル結晶グループ、混合結晶グループ、およびマルチ結晶グループのうち1つとして分類される場合がある。
【0053】
当然、一実施形態による相互作用の分類は、上述のような、3つのグループまたはタイプのイベントのみに限定されない。その他の場合、第1グループは、シングル結晶グループ(すなわち、PEイベントとしてのみ各ガンマ線は単一の結晶内に蓄積する)として定義される場合があるが、第2グループおよび第3グループは、ヒットした検出器結晶の数に基づいてさらに細分化される場合がある。例えば、「混合結晶イベント」のタイプでは、PEイベントで1つのガンマ線が単一の検出器結晶内に蓄積され、その一方で、2つのCSイベントおよび最終的なPEイベントとして、その他のガンマ線が複数の検出器結晶と相互作用する場合がある。混合結晶イベントおよびマルチ結晶イベントの変形形態を認知することによって、またそれらに従って、後述するように改善された画像再構成が可能である。
【0054】
各イベントが分類されて、タイミング分解能は、方法410のサブプロセス430に従ってイベントごとに計算される場合があるが、
図5Bに関して、および
図8に鑑みてさらに詳しく記載する。
【0055】
サブプロセス430のステップ531で、ステップ415から取得された消滅イベント分類が、消滅イベントのタイミング分解能を決定するために使用される場合がある。このために、分類は、ルックアップテーブル(Look Up Table:LUT)、タイミング分解能モデルなどのうち1つを問い合わせて、消滅イベントに割り当てられて、画像再構成中に使用される必要があるタイミング分解能を決定するために使用される場合がある。
【0056】
上述のように、第1グループのタイミング分解能は、Δt1と定義することができる。一例では、適切なように、Δt1は、100ピコ秒(ps)、200ps、および300psであってよい。第2グループおよび第3グループのタイミング分解能は、光子とPET検出器の検出器結晶との相互作用の数に基づく場合がある。第2グループに関して、ガンマ線対の各散乱した光子がPET検出器の2つの検出器結晶のみと相互作用することを仮定すると、タイミング分解能は、Δt2と定義することができる。Δt2は、600ps、700ps、または800psであってよい。第3グループに関して、PEイベントでガンマ線対の1つのガンマ線が単一の検出器結晶内にエネルギーを蓄積し、かつガンマ線対のその他のガンマ線が散乱してPET検出器の2つの検出器結晶と相互作用すると仮定すると、タイミング分解能は、第1タイミング分解能Δt1と、第2タイミング分解能Δt2との畳み込みとして、以下の式(4)で定義することができる。
【0057】
【0058】
LUT、タイミング分解能モデルなどが評価されて、次いで、サブプロセス430のステップ532で、タイミング分解能に関連する分類が、消滅イベントデータに割り当てられる場合がある。したがって、方法410のステップ440の画像再構成の前に、TOFカーネル幅を決定するために、タイミング分解能は、方法410のステップ435で使用される場合がある。
【0059】
一実施形態によれば、上記で説明したように、相互作用の分類は3つのグループのみに限定されない。第1グループは、シングル結晶グループとして定義される場合があり、一方で、第2グループおよび第3グループは、ヒットした結晶の数に基づいてさらに細分化される場合がある。例えば、「混合結晶イベント」のタイプでは、PEイベントで1対のシングルの1つのガンマ線またはシングルが、単一の検出器結晶内に蓄積され(シングル結晶シングル)、その一方で、2つのCSイベントおよび最終的なPEイベントとして1対のシングルのその他のガンマ線またはシングルが、複数の検出器結晶と相互作用する場合がある(マルチ結晶シングル)。他のシングルが3つの結晶と相互作用することを認知することによって、イベントに対する所定のタイミング分解能は、特定の相互作用およびその蓄積されたエネルギーに調整される場合がある。3つの結晶と相互作用するマルチ結晶シングルのタイミング分解能は、最後のヒットがPEイベントであると仮定すると、各ヒットのエネルギーが低い可能性があるので、2つの結晶と相互作用するマルチ結晶シングルより高くなる(すなわち、より劣る)ことが理解できる。したがって、イベントのタイミング分解能は、これらの複雑性を反映したものとなる。
【0060】
一実施形態では、イベントを分類する際のエネルギーデータのより深い粒度は、その適切なタイミング分解能の決定のために拡張される場合がある。例えば、3つの分類グループに基づいて3つのタイミング分解能のみを識別する代わりに、無数のタイミング分解能が可能であり、かつガンマ線および各ヒットによる結晶に蓄積されたエネルギーによってヒットの数を伴って変化する異なるイベント分類に対応する場合がある。LUTまたは他のタイミング分解能モデルは、モデルを占有する追加の情報を含む場合があり、それにより、より正確なタイミング分解能が得られる。
【0061】
図9および
図10に示すように、上述の方法は、PET装置の範囲内で実装される場合がある。したがって、
図9および
図10は、矩形の検出器モジュールとしてそれぞれが構成される、いくつかのガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)901(例えば、GRD1、GRD2からGRDN)を備えている、PET装置900を示す。一実装形態によれば、ガントリ904の周りに円形ボア902を形成する各PET検出器リングは、40個のGRDを備える。別の実装形態では、48個のGRDがあり、より多くの数のGRDが使用されると、より大きな内径寸法のPET装置900が作られる。GRDはガンマ線を(例えば、可視の、赤外のおよび紫外の波長での)シンチレーション光子に変換するためのシンチレータ結晶アレイを含み、それらシンチレーション光子は、光検出器によって検出される。各GRDは、ガンマ線を吸収して、シンチレーション光子を放射する個々の検出器結晶の2次元アレイを備える場合がある。シンチレーション光子は、GRDに配設されているシリコン光電子増倍管(Silicon PhotoMultiplier:SiPM)の2次元アレイによっても検出される場合がある。結晶と光検出器との間で1対1の対応関係が存在する。ライトガイドが、検出器結晶アレイとSiPMとの間に配置可能である。さらに、各GRDは、種々のサイズのいくつかのSiPMを備え、そのそれぞれが、複数の検出器結晶からシンチレーション光子を受信するように配設される。各SiPMは、シンチレーションイベントが発生したタイミングおよび検出イベントを起こすガンマ線のエネルギーを示すアナログ信号を作成できる。
【0062】
図10は、対象物OBJから放射されるガンマ線を検出するように配設されたGRDを有するPET装置システムの概略図を示す。GRDは、各ガンマ線検出器に対応するタイミング、位置、およびエネルギーを測定することができる。一実装形態では、
図9および10に示され、本明細書に記載されるように、ガンマ線検出器は、PET検出器リング内に配設される。
図10の単一のPET検出器リングは、PET装置の軸方向に沿って任意の数のPET検出器リングを備えるように挿入される場合がある。検出器結晶は、シンチレータ結晶とすることができ、そのシンチレータ結晶は、2次元アレイに配設された個々のシンチレータ素子を有し、該シンチレータ素子は、任意の既知のシンチレーション物質とすることができる。
【0063】
図10は、撮像される対象物OBJが台1006上に置かれ、GRD1からGRDNのGRDモジュールが、対象物OBJおよび台1006の周りに周囲方向に配設される、PET装置1000の構造の例を示す。GRDは、PET検出器リングを備える場合があり、また架台装置1004に固定して接続されている円形ボア1002に固定して接続される場合がある。架台装置1004は、PET装置の多数の部品を収容する。PET装置の架台装置1004はまた、対象物OBJおよび台1006がそれを通って通過できる、円形ボア1002によって画定された開口を含み、また、消滅イベントにより対象物OBJから反対方向に放射されるガンマ線は、GRDにより検出可能であり、かつ、タイミング情報およびエネルギー情報は、ガンマ線対の同時計数を決定するために使用される場合がある。
【0064】
図10では、ガンマ線検出データを収集、記憶、処理、および分配するための回路およびハードウェアも示されている。回路およびハードウェアは、処理回路1007、ネットワークコントローラ1003、メモリ1005、およびデータ収集システム(Data Acquisition System:DAS)1008、を備える。PET撮像装置はまた、GRDからの検出測定結果をDAS1008、処理回路1007、メモリ1005、およびネットワークコントローラ1003に送出するデータチャンネルを備える。DAS1008は、検出器からの検出データの収集、デジタル化、および送出を制御することができる。一実装形態では、DAS1008は、台1006の動きを制御する。処理回路1007は、適切に、検出データの再構成前処理、画像再構成、および画像データの再構成後処理を含む機能を実施する。
【0065】
一実施形態によれば、
図9および
図10のPET装置900、1000の処理回路1007は、本明細書に記載するように、方法410を実施するように構成される場合がある。処理回路1007は、個別論理ゲート、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として実装されることがあるCPUを含む場合がある。FPGAまたはCPLDの実装形態は、VHDL、Verilog、または任意のその他のハードウェア記述言語で符号化されてもよく、かつ、その符号は、FPGAまたはCPLD内部の電子メモリに直接記憶されるか、または別個の電子メモリとして記憶されてよい。さらに、メモリ1005は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、FLASH(登録商標)ドライブ、RAM、ROMまたは当該技術分野において既知の任意のその他の電子記憶装置とすることができる。メモリ1005は、ROM、EPROM、EEPROMまたはFLASH(登録商標)メモリのような不揮発性のものであってもよい。メモリ1005は、静的または動的RAMなどの揮発性のものとすることができ、電子メモリ、ならびにFPGAまたはCPLDとメモリとの間の相互作用を管理するために、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが設けられてもよい。
【0066】
あるいは、処理回路1007のCPUは、本明細書に記載の方法410を実施するコンピュータ可読命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することができ、このプログラムは、上述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、FLASH(登録商標)ドライブまたは任意のその他の既知の記憶媒体のいずれかに記憶される。さらに、このコンピュータ可読命令は、実用アプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムのコンポーネント、もしくはそれらの組み合わせとして提供されてもよく、米国インテル社のXenon(登録商標)プロセッサ、または米国AMD社のOpteron(登録商標)プロセッサなどのプロセッサ、ならびに、Microsoft VISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple(登録商標)、MAC-OS(登録商標)および当業者に既知の他のオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムと連動して実行される。さらに、CPUは、命令を実施するために並行して協動する複数のプロセッサとして実装されることがある。
【0067】
一実装形態では、PET装置は、再構成済み画像を表示するためのディスプレイなどを含む場合がある。ディスプレイは、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LEDまたは当該技術分野において既知の任意の他のディスプレイとすることができる。
【0068】
米国インテル社のインテルイーサーネットPROネットワークインターフェースカードなどのネットワークコントローラ1003が、PET撮像装置の種々の部品間をインターフェースすることができる。追加として、ネットワークコントローラ1003は、外部のネットワークともインターフェースすることができる。理解されるように、この外部ネットワークは、インターネットなどの公共ネットワーク、またはLANもしくはWANネットワークなどの私的ネットワーク、あるいはそれらの組み合わせとすることができ、かつ、PSTNまたはISDNサブネットワークを含むこともできる。この外部ネットワークは、イーサネット(登録商標)ネットワークのような有線方式、またはEDGE、3G、4Gおよび5G無線セルラーシステムを含むセルラーネットワークのような無線方式とすることもできる。無線ネットワークは、WiFi、Bluetooth(登録商標)、または既知である通信の任意のその他の無線形態とすることができる。
【0069】
非常に多くの変更および変形形態が、上記の教示に照らし可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲で、具体的に本明細書に記載されているのとは別の方法で、本発明が実践されてもよいことを理解されよう。
【0070】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0071】
本開示の実施形態は、以下のように付加的に述べることもできる。
【0072】
(1)ポジトロン放射断層撮影画像を再構成するための装置であって、ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された未処理データ(生データ)から、複数の消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出し、消滅イベントごとの該抽出されたエネルギーデータおよび該抽出されたタイミングデータは、各消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれと、ポジトロン放射断層撮影スキャナの1つまたは複数のガンマ線検出器との相互作用に対応し、それぞれの抽出されたエネルギーデータおよびそれぞれの抽出されたタイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類し、分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を計算し、消滅イベントごとに、消滅イベントの計算されたタイミング分解能に基づいて、飛行時間カーネルの幅を決定し、処理回路によって、ポジトロン放射断層撮影スキャナからの取得された未処理データ、および各消滅イベントに関連する飛行時間カーネルの決定された幅に基づいてポジトロン放射断層撮影画像を再構成する、ように構成された処理回路を備える、装置。
【0073】
(2)処理回路は、それぞれの抽出されたエネルギーデータおよびそれぞれの抽出されたタイミングデータから、消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれによって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の量を決定することによって、各消滅イベントを分類するようにさらに構成される、(1)に記載の装置。
【0074】
(3)処理回路は、消滅イベントによって発生した1対のガンマ線の各ガンマ線によって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の決定された量に基づいて、シングル結晶イベント、マルチ結晶イベント、またはハイブリッド結晶イベントとして、消滅イベントを分類するようにさらに構成される、(1)または(2)のいずれかに記載の装置。
【0075】
(4)シングル結晶イベントは光電イベントであり、マルチ結晶イベントは散乱イベントであり、ハイブリッド結晶イベントはこれらの組み合わせである、(1)から(3)のいずれか1つに記載の装置。
【0076】
(5)処理回路は、消滅イベントがハイブリッド結晶イベントであることを分類が示すときに、シングル結晶イベントに関連するタイミング分解能と、マルチ結晶イベントに関連するタイミング分解能との畳み込みによってタイミング分解能を計算するようにさらに構成される、(1)から(4)のいずれか1つに記載の装置。
【0077】
(6)各消滅イベントは、所定の期間中の、ガンマ線と1つまたは複数のガンマ線検出器との相互作用を含む、(1)から(5)のいずれか1つに記載の装置。
【0078】
(7)ポジトロン放射断層撮影画像を再構成するための方法であって、処理回路によって、ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された未処理データから、複数の消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出することであって、消滅イベントごとの該抽出されたエネルギーデータおよび該抽出されたタイミングデータは、各消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれと、ポジトロン放射断層撮影スキャナの1つまたは複数のガンマ線検出器との相互作用に対応する、抽出することと、処理回路によって、それぞれの抽出されたエネルギーデータおよびそれぞれの抽出されたタイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類することと、処理回路によって、分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を計算することと、処理回路によって、消滅イベントごとに、飛行時間カーネルの幅を決定することと、処理回路によって、ポジトロン放射断層撮影スキャナからの取得された未処理データ、および各消滅イベントに関連する飛行時間カーネルの決定された幅に基づいてポジトロン放射断層撮影画像を再構成することと、を含む、方法。
【0079】
(8)分類することは、消滅イベントごとに、処理回路によって、それぞれの抽出されたエネルギーデータおよびそれぞれの抽出されたタイミングデータから、消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれのガンマ線によって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の量を決定することを含む、(7)に記載の方法。
【0080】
(9)分類することは、消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれによって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の決定された量に基づいて、シングル結晶イベント、マルチ結晶イベント、またはハイブリッド結晶イベントとして、消滅イベントを分類する、(7)または(8)のいずれかに記載の方法。
【0081】
(10)シングル結晶イベントは光電イベントであり、マルチ結晶イベントは散乱イベントであり、ハイブリッド結晶イベントはこれらの組み合わせである、(7)から(9)のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
(11)計算することは、消滅イベントがハイブリッド結晶イベントであることを分類が示すときに、シングル結晶イベントに関連するタイミング分解能と、マルチ結晶イベントに関連するタイミング分解能との畳み込みによってタイミング分解能を計算することを含む、(7)から(10)のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
(12)コンピュータ可読命令を記憶している非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、該コンピュータ可読命令は、コンピュータによって実行されると、該コンピュータに、ポジトロン放射断層撮影画像を再構成するための方法を実施させ、該方法は、ポジトロン放射断層撮影スキャナから取得された未処理データから、複数の消滅イベントに関連するエネルギーデータおよびタイミングデータを抽出することであって、消滅イベントごとの該抽出されたエネルギーデータおよび該抽出されたタイミングデータは、各消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれと、ポジトロン放射断層撮影スキャナの1つまたは複数のガンマ線検出器との相互作用に対応する、抽出することと、それぞれの抽出されたエネルギーデータおよびそれぞれの抽出されたタイミングデータに基づいて各消滅イベントを分類することと、分類に基づいて、消滅イベントごとのタイミング分解能を計算することと、消滅イベントごとに、消滅イベントの計算されたタイミング分解能に基づいて、飛行時間カーネルの幅を決定することと、ポジトロン放射断層撮影スキャナからの取得された未処理データ、および各消滅イベントに関連する飛行時間カーネルの決定された幅に基づいてポジトロン放射断層撮影画像を再構成することと、を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0084】
(13)分類することは、消滅イベントごとに、それぞれの抽出されたエネルギーデータおよびそれぞれの抽出されたタイミングデータから、消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれによって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の量を決定することを含む、(12)に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0085】
(14)分類することは、消滅イベントによって発生した1対のガンマ線のそれぞれによって衝突を受けた1つまたは複数のガンマ線検出器の決定された量に基づいて、シングル結晶イベント、マルチ結晶イベント、またはハイブリッド結晶イベントとして、消滅イベントを分類する、(12)または(13)のいずれかに記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0086】
(15)計算することは、消滅イベントがハイブリッド結晶イベントであることを分類が示すときに、シングル結晶イベントに関連するタイミング分解能と、マルチ結晶イベントに関連するタイミング分解能との畳み込みによってタイミング分解能を計算することを含む、(12)から(14)のいずれか1つに記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0087】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1000 PET装置
1004 架台装置
1007 処理回路
1008 データ収集システム