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特開2022-167805基材、光学フィルター、固体撮像装置およびカメラモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167805
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】基材、光学フィルター、固体撮像装置およびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20221027BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20221027BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/28
G02B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061996
(22)【出願日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2021073600
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長屋 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大崎 仁視
(72)【発明者】
【氏名】長尾 敦記
(72)【発明者】
【氏名】川部 泰典
(72)【発明者】
【氏名】坪内 孝史
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA23
2H148CA29
2H148FA05
2H148FA13
2H148FA22
2H148FA24
2H148GA04
2H148GA19
2H148GA24
2H148GA32
2H148GA48
(57)【要約】
【課題】可視光線と一部の近赤外線の透過特性に優れ、かつ、ゴーストを抑制可能な光学フィルターに利用可能な基材を提供する。
【解決手段】樹脂と色素とを含む樹脂層を有する基材であって、
前記基材が、下記(a)、および(b)の要件を満たし、
前記樹脂層が、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物(S)、および波長761~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含み、
可視領域の光線と近赤外線領域の光線の少なくとも一方を透過させる基材。
(a)波長600~950nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%超から2%以下になる最も長い波長(Xa)と、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%未満から2%以上になる最も短い波長(Xb)の差が80nm以上。
(b)波長450~570nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が70%以上。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と色素とを含む樹脂層を有する基材であって、
前記基材が、下記(a)、および(b)の要件を満たし、
前記樹脂層が、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物(S)、および波長761~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含み、
可視領域の光線と近赤外線領域の光線の少なくとも一方を透過させる基材。
(a)波長600~950nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%超から2%以下になる最も長い波長(Xa)と、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%未満から2%以上になる最も短い波長(Xb)の差が80nm以上。
(b)波長450~570nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が70%以上。
【請求項2】
前記化合物(Z)がスクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物、およびポリメチン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
化合物(S)が2種以上、前記樹脂層に含まれてなる、請求項1に記載の基材。
【請求項4】
前記樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の基材。
【請求項5】
支持体として樹脂製基板またはガラス基板に、前記樹脂層を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項6】
さらに、前記Xb+50nm~Xb+250nmの波長域に吸収極大を有する化合物(N)を含む、請求項1に記載の基材。
【請求項7】
請求項1に記載の基材を有し、下記要件(c)を満たす、光学フィルター。
(c)波長600nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記Zaにおける基材の垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ1%以下であり、前記Zbにおける基材の垂直方向から測定した場合の最大透過率(Tb)が45%以上であり、Zcにおける基材の垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下である。
【請求項8】
前記光学フィルターが、さらに下記要件(d)を満たすことを特徴とする、請求項7に記載の光学フィルター。
(d)光線透過帯域Zbの長波長側において、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Ye)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Yf)との差の絶対値|Ye―Yf|が35nm未満である。
【請求項9】
前記基材の少なくとも一方の面側に誘電体多層膜を有する、請求項7に記載の光学フィルター。
【請求項10】
前記誘電体多層膜は、異なる材料層が交互に積層されてなり、その材料層の屈折率の差が0.8以下であることを特徴とする、請求項9に記載の光学フィルター。
【請求項11】
請求項7に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
【請求項12】
請求項7に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、光学フィルターおよび光学フィルターを用いた装置に関する。詳しくは、特定の吸収を有する化合物を含む可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる基材、該基材から構成される光学フィルター、ならびに該光学フィルターを用いた固体撮像装置およびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話、スマートフォンなどの固体撮像装置にはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されているが、これら固体撮像素子は、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過もしくはカットする光学基材(光学フィルター、例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
【0003】
一方、近年、近赤外線を利用したモーションキャプチャーや距離認識(空間認識)などのセンシング機能をカメラモジュールに付与する試みが行われている。このような用途では、可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させることが必要となるため、従来のような近赤外線を一律に遮蔽する基材を用いることはできない。
【0004】
そこで可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる基材としては、例えば、特許文献1、2のように近赤外吸収色素を用いて可視透過帯の入射角依存を低減した光学フィルターが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5884953号公報
【特許文献2】特許6642578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる基材を用いることで、たとえば光学フィルターとして可視透過帯の入射角依存が小さく、一般的な誘電体多層膜のみを用いた光学フィルター対比でカメラ画像の色シェーディングを低減できるが、一方で光源の周辺に発生する「ゴースト」と呼ばれる画像不良の問題が有る。スマートフォンなどのモバイル機器においてもカメラの高画質化ニーズが非常に高まってきており、ゴーストを抑制可能であり、可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる基材の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、吸収特性の異なる2種の色素を含み、可視領域と近赤外線透過帯域の中間にあたる波長域に幅広い吸収帯を有する基材を用いることで、可視光線と一部の近赤外線の透過特性に優れ、かつ、ゴーストを抑制可能な光学フィルターが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の態様例を以下に示す。
【0008】
本発明の態様は以下の通りである。
[1]樹脂と色素とを含む樹脂層を有する基材であって、
前記基材が、下記(a)、および(b)の要件を満たし、
前記樹脂層が、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物(S)、および波長761~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含み、
可視領域の光線と近赤外線領域の光線の少なくとも一方を透過させる基材。
(a)波長600~950nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%超から2%以下になる最も長い波長(Xa)と、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%未満から2%以上になる最も短い波長(Xb)の差が80nm以上。
(b)波長450~570nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が70%以上。
[2]前記化合物(Z)がスクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物、およびポリメチン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]の基材。
[3]化合物(S)が2種以上、前記樹脂層に含まれてなる、[1]の基材。
[4]前記樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]の基材。
[5]支持体として樹脂製基板またはガラス基板に、前記樹脂層を有する、[1]の基材。
[6]さらに、前記Xb+50nm~Xb+250nmの波長域に吸収極大を有する化合物(N)を含む、[1]の基材。
[7][1]の基材を有し、下記要件(c)を満たす、光学フィルター。
(c)波長600nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記Zaにおける基材の垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ1%以下であり、前記Zbにおける基材の垂直方向から測定した場合の最大透過率(Tb)が45%以上であり、Zcにおける基材の垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下である。
[8]前記光学フィルターが、さらに下記要件(d)を満たすことを特徴とする、請求項7に記載の光学フィルター。
(d)光線透過帯域Zbの長波長側において、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Ye)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Yf)との差の絶対値|Ye―Yf|が35nm未満である。
[9]前記基材の少なくとも一方の面側に誘電体多層膜を有する、[7]の光学フィルター。
[10]前記誘電体多層膜は、異なる材料層が交互に積層されてなり、その材料層の屈折率の差が0.8以下である[9]の光学フィルター。
[11][7]の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
[12][7]の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光線と一部の近赤外線の透過特性に優れ、かつ、ゴーストを抑制可能な光学フィルターに利用可能な基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、基材の垂直方向から測定した場合の透過率を測定する方法を示す概略図である。図1(b)は、誘電体多層膜を設けた基材の垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率を測定する方法を示す概略図である。図1(c)は、実施例および比較例で行ったカメラ画像の色シェーディング評価を説明するための模式図である。
図2図2は、実施例1で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図3図3は、実施例1で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図4図4は、実施例2で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図5図5は、実施例2で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図6図6は、実施例4で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図7図7は、実施例4で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図8図8は、実施例5で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図9図9は、実施例5で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図10図10は、実施例6で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図11図11は、実施例8で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図12図12は、比較例1で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図13図13は、比較例1で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図14図14は、比較例2で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図15図15は、比較例3で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図16図16は、比較例3で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図17図17は、比較例4で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図18図18は、比較例5で得られた基材の分光透過スペクトルである。
図19図19は、比較例5で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図20図20は、比較例6で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図21図21は、実施例15で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図22図22、実施例16で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図23図23は、実施例17で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
図24図24は、実施例18で得られた誘電体多層膜を設けた基材の分光透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
[基材]
本発明の基材は、樹脂とともに、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物(S)、および波長761~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含む。このような基材は、可視領域における高い透過率と波長600~950nmの領域における幅広い吸収を併せ持ち、可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルターとして機能しうる。
【0013】
このため、本発明の基材は、光学フィルターに適用すると、従来の可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させるフィルターとは異なり、透過させる近赤外線と可視領域との間の波長領域を誘電体多層膜により光線カットする必要がない。これにより、誘電体多層膜の反射光に由来するカメラ画像のゴーストを抑制することができ、従来にはない優れた画質を達成することが可能となる。
このように、本発明の基材はそのまま光学フィルターとすることは可能であり、かならずしも誘電体多層膜を設ける必要ない。さらに、必要に応じて、誘電体多層膜を設け、誘電体多層膜付き基材を光学フィルターとすることも可能である。
【0014】
本発明の基材を、光学フィルターとして固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率は高い方が好ましい。このような基材を固体撮像素子用途として使用した場合、優れた撮像感度を達成することができる。
本発明の基材は、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物(S)、および波長761~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)をそれぞれ1種以上含有する樹脂層を有すれば、単層基材(i)であっても多層の積層基材(ii)であってもよい。
【0015】
単層基材(i)の場合は、例えば、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層から構成される単層基材を挙げることができ、このような単層基材を透明樹脂製基板ということがある。
【0016】
基材が多層の積層場合(ii)は、支持体などの表面に化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層が積層されていればよく、例えば、
ガラス支持体に、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層が積層された積層基材(ii-1)、
化合物(S)および化合物(Z)を含まない透明樹脂製支持体に、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層が積層された積層基材(ii-2)、
化合物(S)または(Z)の一方を含む樹脂層と、他方または両方を含む樹脂層が積層された積層基材(ii-3)、
単層基材(i)に、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層が積層された積層基材(ii-4)、
などをあげることができ、
さらには、以上の単層基材(i)や前記積層基材(ii-1)~(ii-4)の上に、さらにオーバーコート層などが積層された積層基材を挙げることができる。
【0017】
本発明の一つの好ましい態様では、単層基材でも積層基材でも、基材がすべて樹脂材料から構成される。基材が全て樹脂材料から構成される場合、樹脂層表面に、耐傷つき性向上等の点から、オーバーコート層などが積層された積層基材がより好ましい。
また、本発明では、ガラス基板を有することも好ましい一態様であり、この場合、製造コストの観点から透明ガラス基板の片面に化合物(S)および化合物(Z)を含有する樹脂層を有する基材がより好ましい。
【0018】
本発明の基材は、下記要件(a)および要件(b)を満たす。
【0019】
(a)波長600~950nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%超から2%以下になる最も長い波長(Xa)と、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が2%未満から2%以上になる最も短い波長(Xb)の差が80nm以上。
【0020】
XbとXaの差は好ましくは90nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは130nm以上、特に好ましくは150nm以上である。XbとXaの差が上記範囲にあると、可視波長域と近赤外透過帯の間を基材の吸収のみで十分に光線カットすることができ、従来の光学フィルターとは異なり誘電体多層膜によるこの波長域の光線カットが不要となる。このため、カメラモジュール内部での誘電体多層膜の反射に由来するゴーストを低減することができ、極めて良好なカメラ画像を得る事ができる。
【0021】
(b)波長450~570nmの領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が70%以上。
【0022】
基材の波長450~570nmにおける平均透過率は好ましくは72%以上、さらに好ましくは74%以上、特に好ましくは76%以上である。このような透過特性を有する基材を用いると、可視域と目的とする近赤外域において高い光線透過特性を達成でき、カメラ機能と近赤外センシング機能を良好なレベルで両立することができる。
なお平均透過率は、基材が積層基材の場合、化合物(S)および化合物(Z)を含有する樹脂層の面側から測定しても、反対の面側から測定してもよく、透過率は変化しない。
【0023】
化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、用いる光学フィルターの入射角依存性を低減するように適宜選択することが好ましく、好ましくは10~200μm、さらに好ましくは20~180μm、特に好ましくは30~150μmである。
基材が複数の樹脂層を有する場合、合計厚さが前記範囲にあることが好ましい。
【0024】
樹脂層の厚みが前記範囲にあると、該基材を有する光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。特に、カメラモジュール等のレンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化、軽量化を実現することができるため好ましい。
【0025】
<化合物(S)>
化合物(S)は、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物であれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。本発明では、これらの中でも、優れた可視光透過特性、急峻な吸収特性および高いモル吸光係数を有することから、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物およびポリメチン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、スクアリリウム系化合物を少なくとも1種と、フタロシアニン系化合物およびポリメチン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を併用する形態が特に好ましい。
【0026】
なお、スクアリリウム系化合物およびシアニン系化合物は、広義のポリメチン系化合物に包含されるが、本明細書では、スクアリリウム系化合物およびシアニン系化合物以外のポリメチン系化合物を「ポリメチン系化合物」と定義する。
【0027】
本発明において、化合物の吸収極大波長は、例えば、ジクロロメタンなどの適当な溶媒に化合物を溶解させた後、得られた溶液を、分光光度計を用いて測定すればよい。
【0028】
化合物(S)は2種以上の複数の化合物を樹脂層に含んでいてもよい。
複数の化合物である場合、これらの化合物は、同一の樹脂層に含まれていても別々の樹脂層に含まれていてもよい。
同一の層に含まれる場合は、例えば、2種以上の化合物(S)とがともに同一の樹脂層、すなわち単層基材や、ガラス支持体等の支持体上に2種以上の化合物(S)とが含まれる樹脂層が積層されている積層基材を挙げることができる。また、別々の樹脂層に含まれる場合は、例えば、化合物(S)が含まれる単層基材の上に他の化合物(S)が含まれる樹脂層が積層されている積層基材や、異なる化合物(S)とがそれぞれ含まれる樹脂層2層以上が支持体に積層された積層基材などを挙げることができる。
【0029】
2種以上の化合物(S)とは、同一の樹脂層に含まれている方がより好ましく、このような場合、別々の樹脂層に含まれる場合よりも含有量比率を制御することがより容易となる。
【0030】
化合物(S)の含有量は、例えば、基材が単層基材やその表面にオーバーコート層などが積層された積層基材の場合には、樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部、より好ましくは0.02~1.5質量部、特に好ましくは0.03~1.0質量部である。
【0031】
また、ガラス支持体や樹脂製支持体などの支持体に化合物(S)を含有する樹脂組成物からなる樹脂層が積層された積層基材の場合には、樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5.0質量部、より好ましくは0.2~4.0質量部、特に好ましくは0.3~3.0質量部である。
化合物(S)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収、透過特性と高い可視光透過率とを両立した光学フィルターを得ることができる。
【0032】
<化合物(Z)>
化合物(Z)は、波長761~850nmに吸収極大を有する化合物であれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物、およびこれら以外のポリメチン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、優れた可視光透過特性を達成できる観点からスクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、ポリメチン系化合物が特に好ましい。
【0033】
化合物(Z)は、化合物(S)と同一の層に含まれていても別々の層に含まれていてもよい。同一の層に含まれる場合は、例えば、化合物(Z)と化合物(S)がともに樹脂層に含まれる単層基材や、ガラス支持体等の支持体上に化合物(Z)と化合物(S)がともに含まれる樹脂層が積層されている積層基材を挙げることができ、別々の層に含まれる場合は、例えば、化合物(S)が含まれる樹脂層と化合物(Z)が含まれる樹脂層とが積層されている積層基材を挙げることができる。
【0034】
化合物(Z)と化合物(S)は、同一の層に含まれている方がより好ましく、このような場合、別々の層に含まれる場合よりも含有量比率を制御することがより容易となる。
化合物(Z)は2種以上の複数を樹脂層に含んでいてもよい。複数の化合物である場合、これらの化合物は、同一の樹脂層に含まれていても別々の樹脂層に含まれていてもよいが、好ましくは同一の樹脂層に含まれることが望ましい。
【0035】
化合物(Z)の含有量は、基材が単層基材やその表面にオーバーコート層などが積層された積層基材の場合には、化合物(Z)を含む樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05~2.5質量部、より好ましくは0.08~1.8質量部、特に好ましくは0.10~1.5質量部である。
【0036】
ガラス支持体や樹脂製支持体などの支持体に化合物(Z)を含有する樹脂組成物からなる樹脂層が積層された積層基材の場合には、化合物(Z)を含む樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5~25.0質量部、より好ましくは0.8~18.0質量部、特に好ましくは1.0~15.0質量部である。
化合物(Z)の含有量が前記範囲内にあると、高い可視光透過率と良好な近赤外線吸収、透過特性とを両立することができ、前記XbとXaの差を大きくすることができるため好ましい。
【0037】
<化合物(N)>
前記基材には、さらに、前記Xb+50nm~Xb+250nmの波長域に吸収極大を有する化合物(N)が含まれていてもよい。化合物(N)は前記波長域に吸収極大を有すれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物、金属ジチオレン錯体系化合物、およびポリメチン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、スクアリリウム系化合物、金属ジチオレン錯体系化合物、ポリメチン系化合物であることが特に好ましい。
【0038】
前記Xbは化合物(N)が入っていてもいなくとも実質的な変化しないので、化合物(N)を含まない基材での測定結果から、化合物(N)は選定可能である。
【0039】
化合物(N)は、化合物(S)および(Z)と同一の層に含まれていても別々の層に含まれていてもよい。同一の層に含まれる場合は、例えば、化合物(N)と化合物(S)および(Z)がともに同一の樹脂層に含まれる単層基材や、ガラス支持体等の支持体上に化合物(N)と化合物(S)および(Z)がともに含まれる樹脂層が積層されている積層基材を挙げることができ、別々の層に含まれる場合は、例えば、化合物(S)および(Z)が含まれる樹脂層上に化合物(N)が含まれる樹脂層が積層されている基材を挙げることができる。
【0040】
化合物(N)の含有量は、例えば、化合物(N)を含有する単層基材や、単層基材にオーバーコート層などが積層された積層基材を用いる場合には、樹脂層を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.010~1.5質量部、より好ましくは0.015~1.0質量部、特に好ましくは0.020~0.8質量部である。
【0041】
ガラス支持体や樹脂製支持体上に、化合物(N)を含む樹脂層が積層された積層基材の場合には、化合物(N)を含む樹脂層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.10~10.0質量部、より好ましくは0.15~8.0質量部、特に好ましくは0.20~5.0質量部である。
【0042】
化合物(N)の含有量が前記範囲内にあると、高い可視光透過率を保ちつつ不要な近赤外線を効率的に吸収することができ、特にセンシング機能を有するカメラモジュールなどの用途に使用した場合、近赤外透過帯の長波長側の入射角依存性を小さくできるため好ましい。これにより、誘電体多層膜の層数を大幅に低減することが可能となり、求められる特性によっては誘電体多層膜なしでも可視域-近赤外選択透過フィルターとして用いることができる。
【0043】
<樹脂>
樹脂層を構成する樹脂としては、透明樹脂を含む。透明樹脂としては、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
【0044】
透明樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性やフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうる基材とするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、さらに好ましくは120~360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のガラス転移温度が140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため、特に好ましい。
Tgは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0045】
透明樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂製支持体を形成した場合に、この樹脂製支持体の全光線透過率(JIS K7375)が、好ましくは75%以上、さらに好ましくは78%以上、特に好ましくは80%以上となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基材(i)は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
【0046】
透明樹脂として、溶媒可溶性の樹脂を用いる場合、該透明樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、通常15,000~350,000、好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000~150,000、好ましくは20,000~100,000である。
MwおよびMnは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0047】
透明樹脂としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、アクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂を挙げることができる。
【0048】
これらの樹脂の具体例としては、国際公開第2019/168090号に記載の樹脂等が挙げられる。
【0049】
なお、基材におけるオーバーコート層などは、化合物(S)、(Z)、(N)を含まない樹脂層のことをいう。該化合物を含まない樹脂層は、樹脂を含めば特に制限されず、該樹脂としては、上記透明樹脂等が挙げられる。また、その他成分を含む機能膜であってもよい。
【0050】
<支持体>
積層基材(i-2)で使用される、化合物(Z)を含まない透明樹脂製支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルムなどが挙げられる。積層基材(i-3)で使用される支持体としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムなどが挙げられる。
【0051】
支持体としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムおよび透明樹脂(例えば、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)製支持体が挙げられる。
【0052】
<その他成分>
前記基材は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、近紫外線吸収剤、蛍光消光剤等の添加剤を含有してもよい。また、後述するキャスト成形により基材を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで基材の製造を容易にすることができる。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらは樹脂層に含まれていても、オーバーコート層に含まれていてもよい。
【0053】
前記近紫外線吸収剤としては、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0054】
前記酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-ジオキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0055】
なお、これら添加剤は、基材を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100質量部に対して、通常0.01~5.0質量部、好ましくは0.05~2.0質量部である。
【0056】
<基材の製造方法>
前記基材が化合物(S)および(Z)を含有する単層基材である場合は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、さらに、必要により、オーバーコート層を溶融成形またはキャスト成形などによって積層してもよい。
【0057】
前記基材が、ガラス支持体や樹脂製支持体や、前記単層基材上に化合物(S)と化合物(Z)、必要に応じて化合物(N)を含有する樹脂層を積層する場合、例えば、ガラス支持体や樹脂製支持体、単層基材に、化合物(S)と化合物(Z)、必要に応じて化合物(N)を含む樹脂溶液を溶融成形またはキャスト成形したり、スピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工したりした後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、樹脂層が形成された積層基材を製造することができる。
【0058】
≪溶融成形≫
前記溶融成形としては、具体的には、樹脂、化合物(S)、化合物(Z)等を溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂、化合物(S)、化合物(Z)を含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;または、化合物(S)、化合物(Z)、樹脂、溶剤を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0059】
≪キャスト成形≫
前記キャスト成形としては、化合物(S)、化合物(Z)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;または化合物(S)、化合物(Z)と透明樹脂を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、透明樹脂が硬化性樹脂の場合は、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などにより製造することもできる。
【0060】
前記基材が、化合物(S)と化合物(Z)を含有する単層基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、支持体から塗膜を剥離し、塗膜自体を単層基材として得ることができる。また、前記基材が、ガラス支持体や樹脂製支持体等の支持体または単層基材上に化合物(S)と化合物(Z)を含有する樹脂層が積層された積層基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、塗膜を剥離することなく得ることができる。
別の異なる樹脂層に化合物(S)および(Z)、必要に応じて含まれる(N)が含まれる場合、前記成形方法を繰り返したり、樹脂層同士を接合させればよい。
【0061】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルムなどの透明樹脂製支持体、ガラス板などのガラス支持体、スチールベルト、スチールドラムなどが挙げられる。
【0062】
さらに、ガラス板、石英または透明プラスチック製等の光学部品を支持体として、前記樹脂組成物をコーティングして溶剤を乾燥させる方法、または、硬化性樹脂の場合は適宜硬化させる方法などにより、光学部品上に樹脂層を形成することもできる。
【0063】
前記方法で得られた樹脂層中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、前記残留溶剤量は、樹脂層の重さに対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂層が得られる。
【0064】
<光学フィルター>
本発明の光学フィルターは、前記基材を有し、下記要件(c)を満たす。
(c)波長600nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記Zaにおける基材の垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ1%以下であり、前記Zbにおける基材の垂直方向から測定した場合の最大透過率(Tb)が45%以上であり、Zcにおける基材の垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下である。
【0065】
Zbは波長750nm以上1050nm以下において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、30%以下から30%超になる最も短い波の長Zb1から、30%超から30%以下となる最も長い波長Zb2までの波長帯域を指す。
Zcは波長850nm以上1200nm以下において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、20%超から20%以下になる最も短い波長Zc1から、20%未満から20%以上となる最も長い波長Zc2までの波長帯域を指す。
【0066】
本発明の光学フィルターを、近赤外センシング機能を併せ持つ固体撮像素子などに使用する場合、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の光線(近赤外線)透過帯域Zbの最大透過率は高い方が好ましく、光線阻止帯域ZaおよびZcの最小透過率は低い方が好ましい。このような場合、優れた近赤外センシング機能を達成可能であるとともに、不要な波長の光線を効率的にカットすることができ、カメラ画像の色再現性を向上させることができる。
【0067】
光線阻止帯域Zaにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率は1%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.6%以下である。光線阻止帯域Zcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率は15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下である。光線透過帯域Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率は45%以上、好ましくは48%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは53%以上である。Zbにおける最大透過率やZaおよびZcにおける最小透過率が前記範囲にあると、高い近赤外センシング機能を達成しつつノイズが少なく色再現性に優れたカメラ画像を得ることができる。
【0068】
本発明の光学フィルターは、波長620~760nmに吸収極大を有する化合物(S)、および波長761~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含む基材を有するため、分光特性の入射角依存性が小さい。
【0069】
前記光学フィルターが、さらに下記要件(d)を満たすことが好ましい。
(d)光線透過帯域Zbの長波長側において、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Ye)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Yf)との差の絶対値|Ye―Yf|が35nm未満である。
【0070】
本発明の光学フィルターは、光線透過帯域Zbの長波長側においても入射角依存性を小さくすることがさらに好ましい。具体的には、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Ye)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Yf)との差の絶対値|Ye―Yf|は小さい方が好ましく、好ましくは35nm未満、より好ましくは30nm未満、さらに好ましくは25nm未満、特に好ましくは20nm未満である。|Ye―Yf|が上記範囲にあると、特にセンシング機能を有するカメラモジュールなどの用途に使用した場合、垂直入射時と斜め入射時の近赤外線S/N比の差が小さくなり、センシング時のノイズをさらに低減することができる。
【0071】
前記基材の少なくとも一方の面側 本発明の光学フィルターは、波長580nm以上の領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が20%となる最も短い波長の値(Ya)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が20%となる最も短い波長の値(Yb)との差の絶対値|Ya―Yb|は小さい方が好ましく、好ましくは10nm未満、より好ましくは8nm未満、特に好ましくは5nm未満である。
【0072】
本発明の光学フィルターは、光線透過帯域Zbにおいて、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Yc)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が前記Tbの半分となる最も短い波長の値(Yd)との差の絶対値|Yc―Yd|は小さい方が好ましく、好ましくは15nm未満、より好ましくは12nm未満、特に好ましくは10nm未満である。
【0073】
|Ya―Yb|や|Yc―Yd|が上記範囲にあると、視野角の広い光学フィルターを得ることができ、特にセンシング機能を有するカメラモジュールなどの用途に使用した場合、ゴーストが少ないカメラ画質や画像端部における色再現性を達成できる(色シェーディングが少ない)とともに、ノイズが少ない良好なセンシング機能を得る事ができる。
【0074】
本発明の光学フィルターの厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、近年の固体撮像装置の薄型化、軽量化等の流れによれば、本発明の光学フィルターの厚みも薄いことが好ましい。本発明の光学フィルターは、前記基材を含むため、薄型化が可能である。
【0075】
本発明の光学フィルターの厚みは、例えば、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm以下であり、下限は特に制限されないが、例えば、20μmであることが望ましい。
本発明の光学フィルターは、上記基材のみから構成されていてもよく、他の機能膜を有していてもよく、例えば以下に示す誘電体多層膜を前記基材の少なくとも一方の面側に誘電体多層膜を有していてもよい。
【0076】
[誘電体多層膜]
誘電体多層膜は、基材と直接接触していても接触していなくともよい。誘電体多層膜は、不要な近赤外線を反射によりカットするとともに必要となる近赤外線を透過させる能力を有する膜、もしくは可視領域と一部の近赤外波長領域の反射防止機能を有する膜である。本発明では、誘電体多層膜は基材の一方の面側に設けてもよいし、両面側に設けてもよい。一方の面側に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面側に設ける場合、高い強度を有し、反りの生じにくい光学フィルターを得ることができる。
【0077】
本発明の光学フィルターを固体撮像素子などの用途に適用する場合、光学フィルターの反りが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を基材の両面に設けることが好ましく、両面に設けた誘電体多層膜は分光特性が同じでも異なっていてもよい。両面に設けた誘電体多層膜の分光特性が同じ場合では近赤外波長域において光線阻止帯域ZaおよびZcの透過率を効率よく低減することができ、両面に設けた誘電体多層膜の分光特性が異なる場合では光線阻止帯域Zcをより長波長側まで広げることが容易になる傾向がある。
【0078】
前記誘電体多層膜は、2種類以上の材料層が積層される。
多厚膜を構成する材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたもの、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。
【0079】
これらの材料より、所定の屈折率差となるように2種以上の材料を選択する。また所定の屈折率差を構成すれば、2種の材料層が交互に、3層以上の場合、規則的に積層されるものに限らず、同じ材料層が積層しないように、積層されていればよく、また適宜他の材料層が積層されていてもよい。
多層膜を構成する材料の屈折率としては、1.2~2.5程度のものであれば特に制限されない。
【0080】
多層膜を構成する材料層間屈折率差が小さいほど、絶対値|Ye―Yf|を小さくできるため好ましい。屈折率差は0.8以下が好ましく、0.5以下がさらに好ましい。なお、3種以上の材料で構成する場合、隣り合う材料層の屈折率差が前記範囲にあるものが好ましい。
【0081】
所定の屈折率差を有する材料層を積層する方法については、誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、所定の屈折率差を有する材料層を交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
【0082】
多層膜を構成する材料層各層の物理膜厚は、それぞれ層の屈折率にもよるが、通常、5~500nmであることが好ましく、誘電体多層膜の物理膜厚の合計値は光学フィルター全体として1.0~8.0μmであることが好ましい。
【0083】
誘電体多層膜の合計の積層数は、光学フィルター全体として2~60層であることが好ましく、4~56層であることがさらに好ましく、6~50層であることが特に好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができ、幅広い光線阻止帯域や光線透過帯域を有する光学フィルターを得ることができる。
【0084】
[その他の機能膜]
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材と誘電体多層膜との間、基材の誘電体多層膜が設けられた面側と反対の面側、または誘電体多層膜の基材が設けられた面側と反対の面側に、基材や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
【0085】
本発明の光学フィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
【0086】
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
【0087】
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
【0088】
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0089】
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
【0091】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは0.7~5μmである。
【0093】
また、基材と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、基材、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0094】
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、視野角が広く、可視光と一部の近赤外線を選択的に透過させることができる。したがって、カメラ機能と近赤外センシング機能を併せ持つCCDやCMOSイメージセンサーなどの固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、暗視カメラ、モーションキャプチャー、レーザー距離計、バーチャル試着、ナンバープレート認識装置、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に有用である。
【0095】
[固体撮像装置]
本発明の固体撮像装置は、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、カメラ機能と近赤外センシング機能を併せ持つCCDやCMOSイメージセンサー等といった固体撮像素子を備えたイメージセンサーであり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。例えば、本発明のカメラモジュールは、本発明の光学フィルターを具備する。
【実施例0096】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「質量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
【0097】
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
【0098】
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー(株)製Hタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0099】
(b)東ソー(株)製GPC装置(HLC-8220型、カラム:TSKgelα-M、展開溶剤:テトラヒドロフラン)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0100】
なお、後述する樹脂合成例3で合成した樹脂については、前記方法による分子量の測定ではなく、下記方法(c)による対数粘度の測定を行った。
(c)ポリイミド樹脂溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミド樹脂を析出させ、ろ過して未反応単量体を分離した。80℃で12時間真空乾燥して得られたポリイミド0.1gをN-メチル-2-ピロリドン20mLに溶解し、キャノン-フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求めた。
【0101】
μ={ln(ts/t0)}/C
0:溶媒の流下時間
s:希薄高分子溶液の流下時間
C:0.5g/dL
【0102】
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ(株)製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0103】
<分光透過率>
基材ならびに、光学フィルターの各波長領域における透過率は、(株)日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U-4100)を用いて測定した。
【0104】
ここで、基材および光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率は、図1(a)のようにフィルターに対して垂直に透過した光を測定した。また、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率では、図1(b)のようにフィルターの垂直方向に対して30°の角度で透過した光を測定した。
【0105】
なお、前記透過率のうち、光学フィルターのYb、Yd、およびYfを測定する場合を除き、光が基材および光学フィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。Yb、Yd、およびYfを測定する場合には、光が光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度で入射する条件で該分光光度計を使用して測定したものである。
【0106】
<色シェーディング評価>
光学フィルターをカメラモジュールに組み込んだ際の色シェーディング評価は下記の方法で行った。特開2016-110067号公報と同様の方法でカメラモジュールを作成し、作成したカメラモジュールを用いて300mm×400mmサイズの白色板をD65光源(X-Rite社製標準光源装置「マクベスジャッジII」)下で撮影し、カメラ画像における白色板の中央部と端部における色目の違いを以下の基準で評価した。
【0107】
全く問題がなく許容可能なレベルを「〇」、若干色目の違いは認められるが高画質カメラモジュールとして実用上問題がなく許容可能なレベルを「△」、色目の違いが有り高画質カメラモジュール用途としては許容不可能なレベルを「×」と判定した。
【0108】
なお、図1(c)1に示すように、撮影を行う際はカメラ画像111の中で白色板112が面積の90%以上を占めるように白色板112とカメラモジュールの位置関係を調節した。
【0109】
<ゴースト評価>
光学フィルターをカメラモジュールに組み込んだ際のゴースト評価は下記の方法で行った。特開2016-110067号公報と同様の方法でカメラモジュールを作成し、作成したカメラモジュールを用いて暗室中ハロゲンランプ光源(林時計工業社製「ルミナーエースLA-150TX」)下で撮影し、カメラ画像における光源周辺のゴースト発生具合を以下の基準で評価した。
【0110】
全く問題がなく許容可能なレベルを「〇」、若干のゴーストは認められるが高画質カメラモジュールとして実用上問題がなく許容可能なレベルを「△」、ゴーストが発生しており高画質カメラモジュール用途としては許容不可能なレベルを「×」と判定した。
【0111】
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(S)、化合物(Z)および化合物(N)は、一般的に知られている方法で合成することができ、例えば、特許第3366697号、特許第2846091号、特許第2864475号、特許第3094037号、特許第3703869号、特開昭60-228448号公報、特開平1-146846号公報、特開平1-228960号公報、特許第4081149号、特開昭63-124054号公報、「フタロシアニン -化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007-169315号公報、特開2009-108267号公報、特開2010-241873号公報、特許第3699464号、特許第4740631号などに記載されている方法を参照して合成することができる。
【0112】
<樹脂合成例1>
下記式(a)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン100部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(濃度0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、得られた溶液を80℃で3時間加熱撹拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0113】
【化1】
【0114】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、質量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
【0115】
<樹脂合成例2>
3Lの4つ口フラスコに2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌器、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75,000、質量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
【0116】
<樹脂合成例3>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン27.66g(0.08モル)および4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル7.38g(0.02モル)を入れて、γ-ブチロラクトン68.65g及びN,N-ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷した後、N,N-ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、撹拌しながら冷却し、固形分濃度20質量%のポリイミド樹脂溶液264.16gを得た。このポリイミド樹脂溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎいれてポリイミドを沈殿させた。濾別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥させて白色粉末(以下「樹脂C」ともいう。)を得た。得られた樹脂CのIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm-1、1770cm-1の吸収が見られた。樹脂Cはガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
【0117】
[実施例1]
実施例1では、透明樹脂製基板からなる単層基材を用いて、光学フィルターを作成した。
容器に、合成例1で得られた樹脂A 100部、化合物(S)として下記式(s-1)で表される化合物(s-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長711nm)0.04質量部および下記式(s-2)で表される化合物(s-2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長736nm)0.08質量部、化合物(Z)として下記式(z-1)で表される化合物(z-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長770nm)0.14質量部、ならびに塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの透明樹脂製基板からなる単層基材を得た。
【0118】
【化2】
【0119】
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図2および表1示す。
【0120】
続いて、得られた単層基材の片面に誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.105mmの光学フィルターを得た。
【0121】
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。誘電体多層膜(II)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0122】
誘電体多層膜(I)および(II)の設計は、以下のようにして行った。
各層の厚さと層数については、可視域の反射防止効果と近赤外域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう基材屈折率の波長依存特性や、使用した化合物(S)や化合物(Z)の吸収特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例1においてはソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表1の通りとした。
【0123】
【表1】
【0124】
膜構成最適化の結果、実施例1では、誘電体多層膜(I)および(II)はいずれも、膜厚40~196nmのシリカ層と膜厚12~120nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数18の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
この光学フィルターの垂直方向ならびに垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を図3および表17に示す。
【0127】
また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。得られたカメラ画像は色シェーディングおよびゴーストにおいて良好な結果であった。
【0128】
[実施例2]
実施例2では、透明樹脂製基板からなる単層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0129】
実施例1において、化合物(N)として、下記式(n-1)で表される化合物(n-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長882nm)0.02質量部を追加で用いたこと以外は実施例1と同様の手順・条件で化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板からなる単層基材を得た。
【化3】
【0130】
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図4および表17に示す。
【0131】
続いて、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、実施例1と同様、18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を両面に形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図5および表17に示す。
【0132】
[実施例3]
実施例3では、透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する積層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0133】
実施例2と同様にして透明樹脂製基板を作成したのち、得られた透明樹脂製基板の片面に、下記組成のオーバーコート用樹脂組成物(1)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、オーバーコート用樹脂組成物(1)を硬化させ、透明樹脂製基板上にオーバーコート層を形成した。同様に、透明樹脂製基板のもう一方の面にもオーバーコート用樹脂組成物(1)からなるオーバーコート層を形成し、化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する積層基材を得た。
【0134】
オーバーコート用樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5質量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度(TSC):30%)
【0135】
この積層基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を表17に示す。
【0136】
続いて、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、実施例1と同様、両面に18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。
【0137】
[実施例4]
実施例4では、両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる積層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0138】
実施例1において、化合物(Z)として、下記式(z-2)で表される化合物(z-2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長825nm)0.15質量部を追加で用いたこと以外は実施例1と同様の手順・条件で化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板を得た。
【0139】
【化4】
【0140】
続いて、実施例3と同様に樹脂組成物(1)を用いたオーバーコート層を形成し、化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する積層基材を得た。この積層基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図6および表17に示す。
【0141】
続いて、得られた積層基材の片面に誘電体多層膜(III)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(IV)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(III)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。誘電体多層膜(IV)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。
【0142】
誘電体多層膜(III)および(IV)の設計は、実施例1においてソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表3のように変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0143】
【表3】
【0144】
膜構成最適化の結果、実施例1では、誘電体多層膜(III)および(IV)はいずれも、膜厚33~213nmのシリカ層と膜厚24~133nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数18の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表4に示す。
【0145】
【表4】
【0146】
この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図7および表17に示す。
【0147】
[実施例5]
実施例5では、透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
【0148】
実施例4において、化合物(N)として、下記式(n-2)で表される化合物(n-2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1000nm)0.02質量部を追加で用いたこと以外は、実施例4と同様の手順・条件で、化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する、積層基材を得た。
【0149】
【化5】
【0150】
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図8および表17に示す。
【0151】
続いて、実施例4と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、実施例4と同様、両面に18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。
【0152】
この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図9および表17に示す。
【0153】
[実施例6]
実施例6では、透明樹脂製基板両面にオーバーコート層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
【0154】
実施例5と同様の手順・条件で、化合物(S)、化合物(Z)、および化合物(N)を含む透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する、積層基材を得た。
【0155】
続いて、得られた基材の片面に誘電体多層膜(V)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(VI)を形成し、厚さ約0.105mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(V)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計8層)。誘電体多層膜(VI)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計8層)。
【0156】
誘電体多層膜(V)および(VI)の設計は、実施例1においてソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表5のように変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0157】
【表5】
【0158】
膜構成最適化の結果、実施例1では、誘電体多層膜(V)および(VI)はいずれも、膜厚12~107nmのシリカ層と膜厚12~78nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数18の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表6に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図10および表17に示す。
【0161】
[実施例7]
実施例7では、透明樹脂製基板両面にオーバーコート層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
【0162】
実施例5と同様の手順・条件で、化合物(S)、化合物(Z)、および化合物(N)を含む透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を備えた基材を得た。実施例7においては、この基材をそのまま光学フィルターとして用い、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。
【0163】
[実施例8]
実施例8では、透明樹脂製基板両面にオーバーコート層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
【0164】
化合物(S)として化合物(s-2)に代えて下記式(s-3)で表される化合物(s-3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長739nm)0.04質量部を、化合物(Z)として化合物(z-2)に代えて下記式(z-3)で表される化合物(z-3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長825nm)0.02質量部を用い、化合物(z-1)の添加量を0.12質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様の手順・条件で、化合物(S)、化合物(Z)、および化合物(N)を含む透明樹脂製基板の両面にオーバーコート層を有する、積層基材を得た。実施例8においては、この基材をそのまま光学フィルターとして用い、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図11および表17に示す。
【0165】
【化6】
【0166】
[実施例9]
実施例9では、樹脂製支持体両面に、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
【0167】
容器に、合成例1で得られた樹脂Aおよび塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を得た(つまり、化合物(S)、化合物(Z)を含まない)。この溶液を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂製支持体を作成した。
【0168】
得られた樹脂製支持体の両面に、実施例3と同様の手法で下記組成の樹脂組成物(A)からなる樹脂層を形成し、両面に化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層を形成して積層基材を得た。
【0169】
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を表17に示す。
【0170】
樹脂組成物(A):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部、化合物(s-1) 1.0質量部、化合物(s-2) 2.0質量部、化合物(z-1) 2.75質量部、化合物(z-2) 3.75質量部、化合物(n-2) 3.75質量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:25%)
【0171】
続いて、実施例6と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、実施例6と同様、両面に8層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。
【0172】
[実施例10]
実施例10では、ガラス支持体片面に化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
縦60mm、横60mmの大きさにカットしたガラス支持体「OA-10G(厚み200μm)」(日本電気硝子(株)製)上に下記組成の樹脂組成物(B)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上80℃で2分間加熱し溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが4μmとなるように、スピンコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、樹脂組成物(B)を硬化させ、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層を有するガラス支持体の片面に形成した積層基材を得た。
【0173】
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を表17に示す。
【0174】
樹脂組成物(B):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 20質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部、化合物(s-1) 1.0質量部、化合物(s-2) 2.0質量部、化合物(z-1) 3.5質量部、化合物(n-1) 0.50質量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:35%)
【0175】
続いて、得られた基材の片面に誘電体多層膜(VII)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(VIII)を形成し、厚さ約0.105mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(VII)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計8層)。誘電体多層膜(VIII)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計8層)。
【0176】
誘電体多層膜(VII)および(VIII)の設計は、実施例1においてソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表7のように変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0177】
【表7】
【0178】
膜構成最適化の結果、実施例10では、誘電体多層膜(VII)および(VIII)はいずれも、膜厚12~104nmのシリカ層と膜厚12~76nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数8の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表8に示す。
【0179】
【表8】
【0180】
この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。
【0181】
[実施例11]
実施例11では、ガラス支持体片面に化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
実施例10において樹脂組成物(B)に代えて樹脂組成物(A)を用いたこと以外は実施例10と同様の手順・条件で、化合物(S)および化合物(Z)を含む樹脂層を有するガラス支持体からなる基材を得た。
【0182】
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を表17に示す。
【0183】
続いて、実施例6と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、実施例6と同様、両面に8層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。
【0184】
[実施例12~14]
実施例12~14では、透明樹脂製基板両面にオーバーコート層を有する積層基材を備える光学フィルターを作成した。
【0185】
実施例6において、透明樹脂種、溶剤、乾燥条件を表17記載のように変更したこと以外は実施例6と同様の手順・条件で、両面にオーバーコート層を有する、化合物(S)、化合物(Z)、および化合物(N)を含む透明樹脂製基板の基材を得た。
【0186】
続いて、実施例6と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、実施例6と同様、両面に8層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を表17に示す。
【0187】
[比較例1]
比較例1では両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを作成した。
【0188】
実施例3において、化合物(Z)および化合物(N)を用いなかったこと以外は実施例3と同様にして両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を作成した。この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図12および表17に示す。
【0189】
続いて、得られた基材の片面に誘電体多層膜(IX)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(X)を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(IX)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。誘電体多層膜(X)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計28層)。
【0190】
誘電体多層膜(IX)および(X)の設計は、実施例1においてソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表9のように変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0191】
【表9】
【0192】
膜構成最適化の結果、比較例1では、誘電体多層膜(IX)は、膜厚40~196nmのシリカ層と膜厚12~120nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数18の多層蒸着膜、誘電体多層膜(X)は、膜厚15~534nmのシリカ層と膜厚12~111nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数28の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表10に示す。
【0193】
【表10】
【0194】
この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図13および表17に示す。得られた光学フィルターは、入射角依存が大きくゴーストや色シェーディングに劣る結果であった。
【0195】
[比較例2]
比較例2では両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを作成した。
【0196】
比較例1と同様の手順・条件で、両面にオーバーコート層を有する、化合物(S)を含む透明樹脂製基板からなる基材を得た。
【0197】
続いて、得られた基材の片面に誘電体多層膜(XI)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(XII)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(XI)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。誘電体多層膜(XII)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)。
【0198】
誘電体多層膜(XI)および(XII)の設計は、実施例1においてソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表11のように変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0199】
【表11】
【0200】
膜構成最適化の結果、比較例2では、誘電体多層膜(XI)は、膜厚33~213nmのシリカ層と膜厚24~133nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数18の多層蒸着膜、誘電体多層膜(XII)は、膜厚12~228nmのシリカ層と膜厚4~106nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数26の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表12に示す。
【0201】
【表12】
【0202】
この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図14および表17に示す。得られた光学フィルターは、入射角依存が大きくゴーストや色シェーディングに劣る結果であった。
【0203】
[比較例3]
比較例3では両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを作成した。
【0204】
実施例3において、化合物(z-1)の添加量を0.03質量部とし、化合物(N)を用いなかったこと以外は実施例3と同様にして両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を作成した。この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図15および表17に示す。
【0205】
続いて、比較例1と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、比較例1と同様、18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層と28層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図16および表17に示す。
【0206】
[比較例4]
比較例4では両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを作成した。
【0207】
比較例3と同様の手順・条件で、両面にオーバーコート層を有する、化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板からなる基材を得た。
【0208】
続いて、比較例2と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、比較例2と同様、18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層と26層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図17および表17に示す。
【0209】
[比較例5]
比較例5では両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを作成した。
【0210】
実施例3において、化合物(S)および化合物(N)を用いなかったこと以外は実施例3と同様にして両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を作成した。この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を図18および表17に示す。
【0211】
続いて、比較例1と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、比較例1と同様、18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層と28層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図19および表17に示す。
【0212】
[比較例6]
比較例6では両面にオーバーコート層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを作成した。
【0213】
比較例5と同様の手順・条件で、両面にオーバーコート層を有する、化合物(Z)を含む透明樹脂製基板からなる基材を得た。
【0214】
続いて、比較例2と同じ設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、比較例2と同様、18層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層と26層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜を形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図20および表17に示す。
【0215】
[実施例15]
実施例15では、透明樹脂製基板からなる単層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0216】
実施例1と同様の手順・条件で化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板を得た。
この基材の分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)、および波長450~570nmでの透過率の平均値を求めた。結果を表17に示す。
【0217】
続いて、以下表13に示す設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、得られた基材の両面にそれぞれ、シリカ(SiO2)層および、チタニア(TiO2)層とAl23層とが交互に積層された合計18層の誘電体多層膜(XIII)および誘電体多層膜(XIV)を上記実施例と同様の蒸着条件で形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図21および表17に示す。
【0218】
【表13】
【0219】
[実施例16]
実施例16では、透明樹脂製基板からなる単層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0220】
実施例15と同様の手順・条件で化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板を得た。
続いて、以下表14の設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、得られた基材の両面に、シリカ(SiO2)層および、Ta25層と層Al23層とが交互に積層された合計22層の誘電体多層膜(XV)および誘電体多層膜(XVI)を上記実施例と同様の蒸着条件で形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図22および表17に示す。
【0221】
【表14】
【0222】
[実施例17]
実施例17では、透明樹脂製基板からなる単層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0223】
実施例15と同様の手順・条件で化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板を得た。
続いて、以下表15の設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、下記表15に示すそれぞれ50層のシリカ(SiO2)層・Ta25層・チタニア(TiO2)層からなる誘電体多層膜(XVII)および誘電体多層膜(XVIII)を上記実施例と同様の蒸着条件で形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図23および表17に示す。
【表15】
【0224】
[実施例18]
実施例18では、透明樹脂製基板からなる単層基材を有する光学フィルターを作成した。
【0225】
実施例16と同様の手順・条件で化合物(S)および化合物(Z)を含む透明樹脂製基板を得た。
続いて、表16の設計パラメーターを用いて誘電体多層膜の設計を行い、表16に示すそれぞれ22層のシリカ(SiO2)層・チタニア(TiO2)層・Al23層・Ta25層からなる誘電体多層膜(XIX)および(XX)を同様の蒸着条件で、両面に形成した。この光学フィルターについて、実施例1と同様に各波長領域における光学特性、および、カメラ画像のゴーストおよび色シェーディングの評価を行った。結果を図24および表17に示す。
誘電体多層膜(XIX)は、シリカ(SiO2)層および、チタニア(TiO2)層とAl23層とが交互に積層されて合計22層となる。誘電体多層膜(XX)は、シリカ(SiO2)層および、Ta25層とAl23層とが交互に積層されて合計22層となる。
【0226】
【表16】
【0227】
【表17】
【0228】
実施例および比較例で適用した基材の構成、各種化合物などは下記の通りである。
【0229】
<基材の形態>
・形態(1):化合物(S)と化合物(Z)を含む透明樹脂製基板
・形態(2):化合物(S)と化合物(Z)を含む透明樹脂製基板の両面に樹脂層を有する
・形態(3):樹脂製支持体の両面に化合物(S)と化合物(Z)を含む樹脂層を有する
・形態(4):ガラス支持体の片方の面に化合物(S)と化合物(Z)を含む樹脂層を有する
・形態(5):化合物(S)のみを含む透明樹脂製基板の両面に樹脂層を有する(比較例)
・形態(6):化合物(Z)のみを含む透明樹脂製基板の両面に樹脂層を有する(比較例)
【0230】
<透明樹脂>
・樹脂A:環状オレフィン系樹脂(樹脂合成例1)
・樹脂B:芳香族ポリエーテル系樹脂(樹脂合成例2)
・樹脂C:ポリイミド系樹脂(樹脂合成例3)
・樹脂D:環状オレフィン系樹脂「ゼオノア 1420R」(日本ゼオン(株)製)
【0231】
<ガラス支持体>
・ガラス支持体(1): 縦60mm、横60mmの大きさにカットした透明ガラス支持体「OA-10G(厚み200μm)」(日本電気硝子(株)製)
【0232】
≪化合物(S)≫
・化合物(s-1):前記式(s-1)で表されるスクアリリウム系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長711nm)
・化合物(s-2):前記式(s-2)で表されるフタロシアニン系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長736nm)
・化合物(s-3):前記式(s-3)で表されるポリメチン系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長739nm)
【0233】
≪化合物(Z)≫
・化合物(z-1):前記式(z-1)で表されるポリメチン系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長770nm)
・化合物(z-2):前記式(z-2)で表されるポリメチン系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長825nm)
・化合物(z-3):前記式(z-3)で表されるポリメチン系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長825nm)
【0234】
≪化合物(N)≫
・化合物(n-1):前記式(n-1)で表されるスクアリリウム系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長882nm)
・化合物(n-2):前記式(n-2)で表される金属ジチオレン錯体系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長1000nm)
【0235】
<溶媒>
・溶媒(1):塩化メチレン
・溶媒(2):N,N-ジメチルアセトアミド
・溶媒(3):シクロヘキサン/キシレン(質量比:7/3)
【0236】
<透明樹脂製基板および樹脂製支持体の乾燥条件>
表17における、実施例および比較例の透明樹脂製基板および樹脂製支持体の乾燥条件は以下の通りである。なお、減圧乾燥前に、塗膜をガラス板から剥離した。
・条件(1):20℃/8hr(時間)→減圧下 100℃/8hr
・条件(2):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下 140℃/8hr
・条件(3):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下 100℃/24hr
【0237】
<樹脂層形成用組成物>
表17の実施例における、樹脂層を形成する樹脂組成物は、以下の通りである。
・樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5質量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:30%)
・樹脂組成物(A):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部、化合物(s-1) 1.0質量部、化合物(s-2) 2.0質量部、化合物(z-1) 2.75質量部、化合物(z-2) 3.75質量部、化合物(n-2) 3.75質量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:25%)
・樹脂組成物(B):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 20質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部、化合物(s-1) 1.0質量部、化合物(s-2) 2.0質量部、化合物(z-1) 3.5質量部、化合物(n-1) 0.50質量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:35%)
【産業上の利用可能性】
【0238】
本発明の光学フィルターは、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、暗視カメラ、モーションキャプチャー、レーザー距離計、バーチャル試着、ナンバープレート認識装置、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0239】
1:光学フィルターまたは基材
2:分光光度計
3:光
111:カメラ画像
112:白色板
113:白色板の中央部の例
114:白色板の端部の例
図1
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