(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167812
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】灰汁除去器具、灰汁除去器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 43/28 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A47J43/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064861
(22)【出願日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021073689
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515061949
【氏名又は名称】山崎 友之
(74)【代理人】
【識別番号】230118500
【弁護士】
【氏名又は名称】南部 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 友之
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053AA03
4B053BL01
4B053CA04
4B053CE03
(57)【要約】
【課題】 お玉の後方に浮遊する灰汁を容易且つ効率的に除去できる灰汁除去器具(お玉)を提供する。
【解決手段】 掬い部と柄とからなる灰汁除去器具である。掬い部は、掬い部と柄との接続部分(或いは、柄の最前部)の後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備える。なお、接続部分の後方とは、柄を保持する手または手首の方向を意味する。また、灰汁溜め手段は、そこに留めた灰汁が、掬い部の中心方向に流れ出ることを防止する流出防止壁を備える。
柄の後方に灰汁溜め手段が位置するので、後方に浮遊する灰汁を容易に掬い取ることができる。
また、直線状の柄を用いて灰汁除去器具を製造し、その後に柄の途中部分を、前方に突出させることにより、柄の最前部の後方にも灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を形成する。これにより、製造コストを安価にすることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掬い部と柄とからなる灰汁除去器具において、
前記掬い部は、前記掬い部と前記柄との接続部分の後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備える、
ことを特徴とする灰汁除去器具。
【請求項2】
前記接続部分の後方とは、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する、
ことを特徴とする請求項1記載の灰汁除去器具。
【請求項3】
前記接続部分の後方とは、前記掬い部と前記柄との接続部分を境に形成される前記掬い部の2つの方向のうち、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する、
ことを特徴とする請求項1記載の灰汁除去器具。
【請求項4】
前記灰汁溜め手段は、前記灰汁溜め手段に留めた前記灰汁が、前記掬い部の中心方向に流れ出ることを防止する流出防止手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の灰汁除去器具。
【請求項5】
前記流出防止手段には、前記掬い部の内側方向に設けられた流出防止壁が含まれる、
ことを特徴とする請求項4記載の灰汁除去器具。
【請求項6】
前記柄と前記灰汁溜め手段との間に、灰汁を通過させることができる通過手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の灰汁除去器具。
【請求項7】
掬い部と柄とからなる灰汁除去器具において、
前記掬い部は、前記掬い部と前記柄との接続部分の斜め後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備えることを特徴とする灰汁除去器具。
【請求項8】
掬い部と柄とからなる灰汁除去器具において、
前記掬い部は、前記柄の最前部の後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備える、
ことを特徴とする灰汁除去器具。
【請求項9】
前記最前部の後方とは、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する、
ことを特徴とする請求項8記載の灰汁除去器具。
【請求項10】
直線状に形成された柄と、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を有する掬い部と、を備える器具を加工して灰汁除去器具を製造する方法であり、
前記柄の一部を、前方に突出させることにより、前記柄の最前部の後方に灰汁を前記灰汁溜め手段を形成する、
ことを特徴とする灰汁除去器具の製造方法。
【請求項11】
前記最前部の後方とは、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する
ことを特徴とする請求項10記載の灰汁除去器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物を煮た際等に生じる灰汁を除去するための灰汁除去器具(お玉)に関する。
【背景技術】
【0002】
食物を煮ると灰汁が生じる。灰汁は苦味や渋味を有するため料理を不味くする原因となる。よって、調理の際は適宜灰汁を除去する必要がある。
【0003】
灰汁は、通称「お玉」という調理器具を使って除去することが一般的であり、その方法は以下の通りである。
【0004】
図8の符号60はお玉であり、半球状の器部61と柄62とからなる。柄62は器部61の外縁(外周)に取り付けられている。
鍋30に入っているお湯31の表面には灰汁10が複数浮いている。灰汁10を除去する際はお玉60(器部61)をお湯31の表面で傾け、灰汁10を掬って器部61に溜め、お玉60を別の容器の上に移動させて、その容器に灰汁10を捨てる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アマゾンジャパンホームページ、https://www.amazon.co.jp/dp/B07229C6L5/、2021年3月20日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
お湯31の表面には無数の灰汁10が浮遊しているが、お玉60の前方にある灰汁10aや、お玉60の横にある灰汁10b・10cは比較的除去しやすい。指や手首を曲げ動かして、お玉60を前方や左右に傾斜させることができるからである。
一方、お玉60の後方にある灰汁10dは除去が困難である。なぜなら、柄62は器部61の外縁(外周)の最も後方に取り付けられているため、柄62の後方には灰汁を除去する手段がないからである。すなわち、お玉60の後方にある灰汁10dを除去するためには手首や肘を大きく(角度で言えば90度近く)曲げて、お玉60の向きを変えなければならないため、除去が困難なのである。
【0007】
なお、現在までに、非特許文献に示したような灰汁除去に特化したお玉(例えば
図9)も開発されている。
図9のお玉70は、器部71と柄72とからなり、器部71はその中央部に網73を有するものである。網73の網の目は、液体を通過させることができる一方で、灰汁を通過させない大きさであるため、網73で灰汁を掬い除去できる。しかし、これも柄72の後方に灰汁を除去する手段がないため、お玉70の後方にある灰汁の除去が困難であることに変わりはない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、お玉の後方に浮遊する灰汁を容易且つ効率的に除去できる灰汁除去器具(お玉)を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明では、以下の灰汁除去器具及び灰汁除去方法が提供される。
(1)掬い部と柄とからなる灰汁除去器具において、
前記掬い部は、前記掬い部と前記柄との接続部分の後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備える。
(2)前記接続部分の後方とは、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する。
(3)前記接続部分の後方とは、前記掬い部と前記柄との接続部分を境に形成される前記掬い部の2つの方向のうち、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する。
(4)前記灰汁溜め手段は、前記灰汁溜め手段に留めた前記灰汁が、前記掬い部の中心方向に流れ出ることを防止する流出防止手段を備える。
(5)前記流出防止手段には、前記掬い部の内側方向に設けられた流出防止壁が含まれる。
(6)前記柄と前記灰汁溜め手段との間に、灰汁を通過させることができる通過手段を備える。
(7)掬い部と柄とからなる灰汁除去器具において、前記掬い部は、前記掬い部と前記柄との接続部分の斜め後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備える。
(8)掬い部と柄とからなる灰汁除去器具において、前記掬い部は、前記柄の最前部の後方に、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を備える。
(9)最前部の後方とは、前記柄を保持する手または手首の方向を意味する。
(10)直線状に形成された柄と、灰汁を溜めるための灰汁溜め手段を有する掬い部と、を備える器具を加工して灰汁除去器具を製造する方法であり、前記柄の一部を、前方に突出させることにより、前記柄の最前部の後方に灰汁を前記灰汁溜め手段を形成する。
(11)前記最前部の後方とは、前記柄を保持する手または手首の方向を意味し、前記前方とは、前記柄を保持する手または手首から遠ざかる方向を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明を利用すれば、以下の効果を得ることができる。
(1)灰汁除去器具(お玉)の後方に浮遊する灰汁を容易且つ効率的に除去できる。
(2)灰汁除去器具(お玉)を傾けても、灰汁除去部の内側に流出防止壁部があるので、一度灰汁溜め部に溜めた灰汁が器部の中心方向に溢れ出てしまうことを防止できる。
(3)柄と、柄の後方の灰汁除去部との間にある網は、灰汁を通過させることができるので、器部の内側から灰汁を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る灰汁除去器具を表した図である。
【
図2】灰汁除去器具の側面および断面を表した図である。
【
図3】灰汁除去器具の底面および平面を表した図である。
【
図4】灰汁除去器具により灰汁を除去した際の様子を表した図である。
【
図5】前方の灰汁を除去する方法を表した図である。
【
図6】後方の灰汁を除去する方法を表した図である。
【
図8】実施例2に係る灰汁除去器具を表した図である。
【
図9】第1工程により製造された灰汁除去器具を表した図である。
【
図11】従来の灰汁取りに特化したお玉を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
次に、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の灰汁除去器具1の概略を示した斜視図である。灰汁除去器具1は、器部2と柄3とからなる。
器部2は、灰汁を溜めるための灰汁溜め部21と網22と補強板23とからなる。
【0013】
図2(a)は、灰汁除去器具1の側面図であり、
図2(b)は
図2(a)の断面図である。
図3(a)は灰汁除去器具1の底面図であり、
図3(b)は灰汁除去器具1の平面図(上から見た図)である。
図4(a)は灰汁を掬い取った際の灰汁除去器具1の断面図であり、
図4(b)はその平面図(上から見た図)である。なお、柄3の先端部は省略している。
【0014】
灰汁溜め部21(灰汁溜め手段)は、灰汁を掬うためのもの(そこに灰汁を溜めて灰汁を除去するためのもの)である。灰汁溜め部21はドーナツに類似した形状をもち、内部空間29を有する円形の部材であり、その内部空間29に網22と補強板23を備える。
灰汁溜め部21の断面は
図2(b)に示すように「雨どい」に似た形状をしており、中央に凹み部26を有し、凹み部26の両側に壁部27(灰汁溜め部21の内側に設けられた壁部27aと、灰汁溜め部21の外側に設けられた壁部27b)を有する。なお、本実施例では、この壁部27aが流出防止部(流出防止手段または流出防止壁)としての役割を果たす。
【0015】
網22は、お椀に似た形状をしたものであり、灰汁溜め部21の内部空間29に設けられている。網22は灰汁10を通過させることができるほど粗いものである(ただし、これに限るものではない)。この網22は、例えば、しゃぶしゃぶを食する際に、肉や野菜を掬い取るためのものであり、原則として、灰汁10を掬い取るためのものではない。なお、本実施例では、この網22が通過手段としての役割を果たす。
【0016】
補強板23は、灰汁溜め部21の内部空間29に設けられている。網22の曲線に沿った形状の板状部材であり、灰汁溜め部21の2つの対向する点を結んでいる。なお、本実施例では、灰汁溜め部21と補強板23とが掬い部としての役割を果たす。
【0017】
柄3は、補強板23に斜めに接続されるものであり、その接続位置は灰汁溜め部21の内部空間29内、すなわち補強板23の中央部近辺(すなわち、端部ではない部分)である。これにより柄3の後方にも灰汁溜め部21の一部が形成され、柄3の後方にある灰汁を容易に除去できる。
【0018】
次に、灰汁除去器具1で灰汁10を掬い取る方法を
図5と
図6に基づいて説明する。
図5は、灰汁除去器具1の前方にある灰汁10aを除去する図である。
図5(a)のように灰汁除去器具1を前方に傾け、
図5(b)のように灰汁溜め部21の一部を湯に沈め、灰汁10aを灰汁溜め部21で掬い取る。
図6は、灰汁除去器具1の後方にある灰汁10dを除去する図である。
図6(a)のように灰汁除去器具1を後方に傾け、灰汁溜め部21の一部を湯に沈め、灰汁10dを灰汁溜め部21で掬い取る。なお、この際、灰汁除去器具1を後方に傾けても、壁部27aがあるので、
図5において掬い取った灰汁10aが灰汁溜め部21の内側に溢れてしまうことを防止できる。
【0019】
なお、ここでは灰汁除去器具1の前方の灰汁10aと後方の灰汁10dを掬い取る場合を説明したが、灰汁除去器具1の横にある灰汁10bと灰汁10cを除去する場合は、灰汁除去器具1を左右に傾けて除去する。
【0020】
次に、
図7に基づいて、灰汁溜め部21と柄3の位置関係を説明する。
図7(a)の矢印D1は柄3と器部2(補強板23)の接続部分(接続位置)の前方を表し、符号D2の幅は接続部分の横方向を表し、矢印D3は接続部分の後方(柄3を持つ手32や指・手首の方向)を表している。すなわち、柄3と器部2(補強板23)の接続部分を境にして、柄3の前方(D1の方向)と後方(D3の方向)とに分かれる。
本発明は、この接続部分の後方(矢印D3の方向)に灰汁10を掬い取って除去するための灰汁溜め部21を有する点に特徴がある。なお、接続部分の後方(D3の方向)には、接続部分の斜め後方も含まれる場合がある。
本実施例では、このように器2(補強板23)と柄3の接続部分の後方(或いは、斜め後方)に灰汁溜め部21があるので、灰汁除去器具1の後方にある灰汁10dを容易に、且つ、効率的に除去できるのである。
柄3は、「くの字型」に形成されている。すなわち、柄3は、柄3の上端から柄3の途中部分までは前方(網22の中心方向、柄3を持つ手や指・手首から遠ざかる方向)に延び、途中で後方(柄3を持つ手や指・手首に近づく方向)に折り曲げられ、柄3の下端は外周部41の後方上面に接続されている。なお、途中で折り曲げられた部分が、柄3の最も前方に突出した部分(最前部42)となる。
本実施例の灰汁除去器具1は、柄3の最前部42の後方(または横や斜め後方)に灰汁溜め部21(網22の後方部)を有するので、実施例1と同様、灰汁除去器具1の後方(または横や斜め後方)にある灰汁を容易に掬い取ることができる。なお、原則として、最前部42の後方とは、最前部42から、柄3を保持する手または手首への方向を意味するが、これに限るものではない。