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特開2022-167815光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路、および光導波路の製造方法
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  • 特開-光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路、および光導波路の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167815
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路、および光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221027BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221027BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20221027BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20221027BHJP
   G02B 6/132 20060101ALI20221027BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/038 503
G02B6/12 371
G02B6/122
G02B6/132
C08G59/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066202
(22)【出願日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021073089
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】杉山 広道
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰典
【テーマコード(参考)】
2H147
2H225
4J036
【Fターム(参考)】
2H147BG17
2H147EA10C
2H147EA13C
2H147EA14C
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA16C
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA17C
2H147EA18A
2H147EA18B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147EA22A
2H147EA22B
2H147EA43A
2H147EA43B
2H147FA15
2H147FA16
2H147FA17
2H147FA25
2H147FB01
2H147FC08
2H147FC09
2H225AD06
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AF23P
2H225AF41P
2H225AF79P
2H225AM70P
2H225AM77P
2H225AM93P
2H225AM99P
2H225AN33P
2H225AN39P
2H225BA05P
2H225BA32P
2H225CA30
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC12
2H225CD05
4J036AB02
4J036AF06
4J036DD01
4J036DD02
4J036FB12
4J036HA02
4J036JA09
(57)【要約】
【課題】光線透過率、透明性および高屈折率に優れた硬化物が得られ、さらに埋め込み性やパターニング性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物を提供し、さらに当該硬化物からなるコア層またはクラッド層を備える光導波路を提供する。
【解決手段】本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、光酸発生剤と、を含み、前記光酸発生剤が、トリアリールスルホニウムカチオンとガレートアニオンとを有するオニウムガレート塩を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、
熱可塑性樹脂と、
光酸発生剤と、を含み、
前記光酸発生剤が、トリアリールスルホニウムカチオンとガレートアニオンとを有するオニウムガレート塩を含む、光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記トリアリールスルホニウムカチオンは、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種を含む、請求項1に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)中、R~Rは、互いに独立して、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、結合先のベンゼン環と縮合して縮合多環炭化水素骨格を形成する基、置換または無置換のシリル基及びアミノ基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、a、b、c、dはそれぞれR~Rの個数を表し、aは1~5の整数、c及びdは0~5の整数、bは0~4の整数である。)
【請求項3】
前記ガレートアニオンは、下記一般式(5)で表される化合物を含む、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【化2】
(前記一般式(5)中、R13~R16は、独立して、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アシル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換される、あるいは無置換のフェニル基又はパーフルオロアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記光酸発生剤の含有量は、当該光導波路形成用感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.3質量%以上5.0質量%以下である、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂は、分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含む、請求項5に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂である請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、10,000~100,000である、請求項7に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに密着助剤を含む、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項11】
さらに溶剤を含む、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項12】
以下の条件で測定された波長850nm光に対する硬化膜の屈折率が1.60以上である、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
(条件)
前記光導波路形成用感光性樹脂組成物を230℃2時間硬化して得られた膜厚10μmの硬化膜に対し、波長850nm光に対する屈折率を測定する。
【請求項13】
以下の条件で測定された波長850nm光に対する硬化膜の光線透過率が90%である、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
(条件)
前記光導波路形成用感光性樹脂組成物を230℃2時間硬化して得られた膜厚10μmの硬化膜に対し、波長850nm光に対する透過率を測定する。
【請求項14】
基材と、
前記基材上に形成されたクラッド層と、
前記クラッド層上に形成された、所定の形状を備える光信号伝搬用のコア部とクラッド部を含むコア層と、
を備え、
前記コア部または前記クラッド層は請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物の硬化物からなる、光導波路。
【請求項15】
基材上に、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物からなるクラッド層を形成する工程と、
前記クラッド層上に、コア部形成材料を塗布し、次いで露光現像することにより所定パターンの複数のコア部を形成する工程と、
複数の前記コア部の間に、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物からなるクラッド部を形成し、前記コア部と前記クラッド部とからなるコア層を形成する工程と、
前記コア層上に、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物からなるクラッド層を形成する工程と、
を含む光導波路の製造方法。
【請求項16】
基材上に、クラッド層形成材料からなるクラッド層を形成する工程と、
前記クラッド層上に、請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物を塗布し、次いで露光現像することにより所定パターンの複数のコア部を形成する工程と、
複数の前記コア部の間に、前記クラッド層形成材料からなるクラッド部を形成し、前記コア部と前記クラッド部とからなるコア層を形成する工程と、
前記コア層上に、前記クラッド層形成材料からなるクラッド層を形成する工程と、
を含む光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路、および光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア層は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド層は、コア層より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0003】
これらのクラッド層またはコア層を形成する材料等として、各種感光性樹脂組成物が用いられている。例えば、これを用いてクラッド層やコア層をパターン形成する際には、例えば、フォトマスクを介して紫外線(UV)照射を行なうことにより所望のクラッド層パターンやコア層パターンを作製している。
【0004】
特許文献1には、固形半脂肪族二官能エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂成分および光カチオン重合開始剤を含有する光導波路形成用感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-100357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術においては、得られるクラッド層やコア層の光線透過率が低く、さらに加熱等により着色するため透明性が低い点に課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の光酸発生剤を含むことにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0008】
[1] 熱硬化性樹脂と、
熱可塑性樹脂と、
光酸発生剤と、を含み、
前記光酸発生剤が、トリアリールスルホニウムカチオンとガレートアニオンとを有するオニウムガレート塩を含む、光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[2] 前記トリアリールスルホニウムカチオンは、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種を含む、[1]に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)中、R~Rは、互いに独立して、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、結合先のベンゼン環と縮合して縮合多環炭化水素骨格を形成する基、置換または無置換のシリル基及びアミノ基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、a、b、c、dはそれぞれR~Rの個数を表し、aは1~5の整数、c及びdは0~5の整数、bは0~4の整数である。)
[3] 前記ガレートアニオンは、下記一般式(5)で表される化合物を含む、[1]または[2]に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【化2】
(前記一般式(5)中、R13~R16は、独立して、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アシル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換される、あるいは無置換のフェニル基又はパーフルオロアルキル基を表す。)
[4] 前記光酸発生剤の含有量は、当該光導波路形成用感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.3質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[5] 前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む[1]~[4]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[6] 前記エポキシ樹脂は、分子内に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含む、[5]に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[7] 前記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂である[1]~[6]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[8] 前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、10,000~100,000である、[7]に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[9] さらに界面活性剤を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[10] さらに密着助剤を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[11] さらに溶剤を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
[12] 以下の条件で測定された波長850nm光に対する硬化膜の屈折率が1.60以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
(条件)
前記光導波路形成用感光性樹脂組成物を230℃2時間硬化して得られた膜厚10μmの硬化膜に対し、波長850nm光に対する屈折率を測定する。
[13] 以下の条件で測定された波長850nm光に対する硬化膜の光線透過率が90%である、[1]~[12]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物。
(条件)
前記光導波路形成用感光性樹脂組成物を230℃2時間硬化して得られた膜厚10μmの硬化膜に対し、波長850nm光に対する透過率を測定する。
[14] 基材と、
前記基材上に形成されたクラッド層と、
前記クラッド層上に形成された、所定の形状を備える光信号伝搬用のコア層と、
を備え、
前記コア層または前記クラッド層は[1]~[13]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物の硬化物からなる、光導波路。
[15] 基材上に、[1]~[13]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物からなるクラッド層を形成する工程と、
前記クラッド層上に、コア部形成材料を塗布し、次いで露光現像することにより所定パターンの複数のコア部を形成する工程と、
複数の前記コア部の間に、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物からなるクラッド部を形成し、前記コア部と前記クラッド部とからなるコア層を形成する工程と、
前記コア層上に、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物からなるクラッド層を形成する工程と、
を含む光導波路の製造方法。
[16] 基材上に、クラッド層形成材料からなるクラッド層を形成する工程と、
前記クラッド層上に、[1]~[13]のいずれかに記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物を塗布し、次いで露光現像することにより所定パターンの複数のコア部を形成する工程と、
複数の前記コア部の間に、前記クラッド層形成材料からなるクラッド部を形成し、前記コア部と前記クラッド部とからなるコア層を形成する工程と、
前記コア層上に、前記クラッド層形成材料からなるクラッド層を形成する工程と、
を含む光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光線透過率、透明性および高屈折率に優れた硬化物が得られ、さらに埋め込み性やパターニング性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物を提供することができる。言い換えればこれらの特性のバランスに優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物を提供することができる。さらに当該硬化物からなるコア層またはクラッド層を備える光導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の光導波路の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0012】
本実施形態の光導波路形成用感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」とも記載される)は、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、所定の光酸発生剤と、を含む。
本実施形態の光導波路形成用感光性樹脂組成物によれば、光線透過率、透明性および高屈折率に優れた硬化物が得られ、さらに埋め込み性やパターニング性に優れる。
なお、本実施形態における「埋め込み性」とは、具体的には、凹凸を有する基板や層上に感光性樹脂組成物を塗布してその凹凸を覆い、そして最表面を感光性樹脂膜で平坦にすることを意味する。埋め込み性は平坦性と言い換えることもできる。
以下、光導波路形成用感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ビスマレイミド化合物等のマレイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ジアリルフタレート樹脂;シリコーン系樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のシアネート樹脂等のシアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本実施形態において、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物からなるコア層またはクラッド層における物性や加工性を高めることができる。
【0015】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
【0016】
前記エポキシ樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族多官能エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する固形エポキシ樹脂を含むことができる。前記固形エポキシ樹脂としては、2個以上のエポキシ基を有しており、25℃(室温)において固形であるものを使用することができる。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物からなるコア層またはクラッド層における機械的特性を高めることができる。
【0018】
また、エポキシ樹脂としては、分子内に3官能以上の多官能エポキシ樹脂(つまり、1分子中にエポキシ基が3個以上を有する多官能エポキシ樹脂)を含むことができる。
【0019】
3官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含むことがさらに好ましい。これにより、硬化物の耐熱性を高めつつ、適切な熱膨張係数を実現できる。
【0020】
また、エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂を含むことができる。当該液状エポキシ樹脂は、フィルム化剤として機能し、感光性樹脂組成物の硬化物の脆性を改善することができる。
【0021】
前記液状エポキシ樹脂としては、2個以上のエポキシ基を有しており、室温25℃において液状であるエポキシ化合物を用いることができる。この液状エポキシ樹脂の25℃における粘度は、例えば、1mPa・s~8000mPa・sであり、好ましくは5mPa・s~1500mPa・sであり、より好ましくは10mPa・s~1400mPa・sとすることができる。
【0022】
前記液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、アルキルジグリシジルエーテルおよび脂環式エポキシからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、現像後のクラック低減の観点から、アルキルジグリシジルエーテルを用いることができる。
【0023】
前記液状エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100g/eq以上200g/eq以下であり、好ましくは105g/eq以上180g/eq以下であり、さらに好ましくは110g/eq以上170g/eq以下である。これにより、硬化物の脆性を改善することができる。
【0024】
前記液状エポキシ樹脂を含む場合、当該液状エポキシ樹脂の含有量の下限値は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対して、例えば、5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。これにより、最終的に得られる硬化物の脆性を改善することができる。一方、液状エポキシ樹脂の含有量の上限値は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対して、例えば、40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。これにより、硬化物の特性のバランスを図ることができる。
【0025】
前記エポキシ樹脂の含有量の下限値は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対して、例えば、40質量%以上であり、好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。これにより、最終的に得られる硬化物の耐熱性や機械的強度を向上させることができる。一方、エポキシ樹脂の含有量の上限値は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対して、例えば、90質量%以下であり、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。これにより、パターニング性を向上させることができる。
【0026】
本実施形態において、感光性樹脂組成物の不揮発成分とは、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対する含有量とは、溶媒を含む場合には、感光性樹脂組成物のうちの溶媒を除く不揮発成分全体に対する含有量を指す。
【0027】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂(例えばナイロン等)、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本実施形態において、熱可塑性樹脂はフェノキシ樹脂を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物の可撓性を高めることができる。
【0029】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、10,000~100,000であるのが好ましく、20,000~80,000であるのがより好ましい。このような比較的高分子量のフェノキシ樹脂が用いられることにより、硬化物に対して良好な可撓性を付与するとともに、溶媒への十分な溶解性を付与することができる。
なお、本実施形態において、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法のポリスチレン換算値として測定される。
【0030】
また、フェノキシ樹脂としては、分子鎖両末端または分子鎖内部にエポキシ基等の反応性基を有してもよい。フェノキシ樹脂中の反応性基は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と架橋反応可能なものである。このようなフェノキシ樹脂を使用することにより、硬化物の耐溶剤性や耐熱性を高めることができる。
【0031】
また、フェノキシ樹脂としては、25℃で固形であるものが好ましく用いられる。具体的には、不揮発分が90質量%以上であるフェノキシ樹脂が好ましく用いられる。このようなフェノキシ樹脂を用いることにより、硬化物の機械的特性を良好にすることができる。
【0032】
前記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂とビスフェノールS型フェノキシ樹脂との共重合フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。この中でも、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合フェノキシ樹脂が好ましく用いられ、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂がより好ましく用いられる。
【0033】
前記フェノキシ樹脂の含有量の下限値は、エポキシ樹脂の含有量に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。これにより、可撓性を高めることができる。一方で、前記フェノキシ樹脂の含有量の上限値は、例えば、60質量部以下、好ましくは55質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。これにより、フェノキシ樹脂の溶解性を高め、塗布性に優れた感光性樹脂組成物を実現できる。
【0034】
[光酸発生剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、光酸発生剤を含む。これにより感度や解像度などパターニング時における加工性を高めることができる。
【0035】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、光酸発生剤から発生した酸を触媒として利用する化学増幅型感光性樹脂組成物であり、ネガ型感光性樹脂組成物として用いることができる。
【0036】
前記光酸発生剤は、トリアリールスルホニウムカチオンとガレートアニオンとを有するオニウムガレート塩を含むものである。これにより、絶縁信頼性とともにパターニング性を向上させることができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂とともに、トリアリールスルホニウムカチオンとガレートアニオンとを有するオニウムガレート塩を含む光酸発生剤を含むことから、光線透過率、透明性および高屈折率に優れた硬化物が得られ、さらに埋め込み性(平坦性)やパターニング性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物を提供することができる。言い換えればこれらの特性のバランスに優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物を提供することができる。
すなわち、本発明は、特定の成分の組み合わせ組み合わせて含む感光性樹脂組成物が、光線透過率、透明性および高屈折率に優れた硬化物が得られ、さらに埋め込み性(平坦性)やパターニング性に優れるという未知の属性を発見し、その属性により光導波路形成用に適することを見出した用途発明に該当する。
前記トリアリールスルホニウムカチオンは、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種を含むことができる。
【0037】
【化3】
【0038】
前記一般式(1)中、R~Rは、互いに独立して、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、結合先のベンゼン環と縮合して縮合多環炭化水素骨格を形成する基、置換または無置換のシリル基及びアミノ基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、a、b、c、dはそれぞれR~Rの個数を表し、aは1~5の整数、c及びdは0~5の整数、bは0~4の整数である。
~Rの置換基としては、前記一般式(1)中、R~Rとして、前記に挙げられた基と同様のものが用いられる。
【0039】
前記一般式(1)中、R~Rにおける、アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル及びn-オクタデシル等)、炭素数3~18の分枝鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル及びイソオクタデシル)、及び炭素数3~18のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及び4-デシルシクロヘキシル等)等が挙げられる。
【0040】
前記一般式(1)中、R~Rにおける、アルコキシ基としては、炭素数1~18の直鎖アルコキシ基、又は炭素数3~18の分枝鎖アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ及びオクタデシルオキシ等)等が挙げられる。
【0041】
一般式(1)中、R~Rにおける、アリール基としては、炭素数6~10のアリール基(フェニル、トリル、ジメチルフェニル及びナフチル等)等が挙げられる。
【0042】
一般式(1)中、縮合多環炭化水素骨格としては、2環以上とすることができ、6環以下、好ましくは4環以下、より好ましくは3環以下としてもよい。縮合多環炭化水素骨格は、5員環や6員環などの環数が異なる環状炭化水素が互いに縮合してもよい。このような縮合多環炭化水素骨格の一例として、フルオレン骨格およびフルオレン骨格の誘導体が挙げられる。フェナントレン骨格の9位に、アルキル基等の上述の置換基が1個または2個結合していてもよい。
前記ガレートアニオンは、下記一般式(5)で表される化合物を含むことができる。
【0043】
【化4】
【0044】
前記一般式(5)中、R13~R16には、独立して、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アシル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換されるフェニル基又はパーフルオロアルキル基、あるいはまたは無置換のフェニル基又はパーフルオロアルキル基を表す。
【0045】
前記一般式(5)中、パーフルオロアルキル基の炭素数は1~8、好ましくは1~4である。パーフルオロアルキル基の具体例としてはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロオクチルなどの直鎖パーフルオロアルキル基;ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロイソブチル、ノナフルオロ-sec-ブチル、ノナフルオロ-tert-ブチルなどの分岐パーフルオロアルキル基;さらにパーフルオロシクロプロピル、パーフルオロシクロブチル、パーフルオロシクロペンチル、パーフルオロシクロヘキシルなどのパーフルオロシクロアルキル基などが挙げられる。
【0046】
前記一般式(5)中、パーフルオロアルコキシ基の炭素数は1~8、好ましくは1~4である。パーフルオロアルコキシ基の具体例としてはトリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、ノナフルオロブトキシ、パーフルオロペンチルオキシ、パーフルオロオクチルオキシなどの直鎖パーフルオロアルコキシ基;ヘプタフルオロイソプロポキシ、ノナフルオロイソブトキシ、ノナフルオロ-sec-ブトキシ、ノナフルオロ-tert-ブトキシなどの分岐パーフルオロアルコキシ基などが挙げられる。
【0047】
前記一般式(5)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0048】
前記一般式(5)中、カチオン重合性能の観点から、R13~R16は、パーフルオロアルキル基及びフッ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されたフェニル基が好ましい。
【0049】
前記ガレートアニオンの一例としては、例えば、(CGa-、((CFGa-、(CFGa-、(CGaF-、CGaF-、(CGa-等が挙げられる。これにより、高い熱解離性を実現することができる。
【0050】
前記オニウムガレート塩は、加熱により、ガレートアニオン(Ga-)において熱解離が生じる。具体的な一例としては、感光性樹脂組成物の樹脂膜に対する加熱による硬化処理により、オニウムガレート塩を熱解離可能である。
【0051】
本実施形態に係るオニウムガレート塩は、対アニオンとして、ボレートアニオン、スルホネートアニオン、リン系アニオン、アンチモン系アニオンを用いた場合として、比較的高い熱解離を有するものである。
【0052】
本実施形態の感光性樹脂組成物を用いた製造工程において、露光後における加熱処理(例えば、硬化処理)の温度を、熱解離を生じさせる温度以上に設定することにより、感光性樹脂組成物のプロセス適合性を高めることができる。
【0053】
前記光酸発生剤の含有量は、当該感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、0.3質量%~5.0質量%、好ましくは0.5質量%~4.5質量%、より好ましくは1.0質量%~4.0質量%である。前記下限値以上とすることにより、パターニング性を高めることができる。一方、前記上限値以下とすることにより、絶縁信頼性を高めることができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0054】
前記オニウムガレート塩の含有量は、前記光酸発生剤全体中に対して、例えば、70質量%~100質量%、好ましくは80質量%~100質量%、より好ましくは90質量%~99質量%でもよい。これにより、接続信頼性およびパターニング性を向上させることができる。
【0055】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、前記光酸発生剤の他の感光剤を含有してもよい。他の感光剤としては、例えば、オニウム塩化合物が挙げられる。より具体的には、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等のヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩のようなスルホニウム塩、トリアリールビリリウム塩、ベンジルピリジニウムチオシアネート、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシフェニルホスホニウム塩のようなカチオン型光重合開始剤等が挙げられる。
【0056】
[界面活性剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤を含むことにより、塗工時における濡れ性を向上させ、均一な樹脂膜そして硬化物を得ることができる。界面活性剤は、たとえば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、およびアクリル系界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
前記界面活性剤は、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含む界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、均一な樹脂膜を得られること(塗布性の向上)や、現像性の向上に加え、接着強度の向上にも寄与する。このような界面活性剤としては、例えば、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含むノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤として使用可能な市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「メガファック」シリーズの、F-251、F-253、F-281、F-430、F-477、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-572、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94等の、フッ素を含有するオリゴマー構造の界面活性剤、株式会社ネオス製のフタージェント250、フタージェント251等のフッ素含有ノニオン系界面活性剤、ワッカー・ケミー社製のSILFOAM(登録商標)シリーズ(例えばSD 100 TS、SD 670、SD 850、SD 860、SD 882)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0058】
前記界面活性剤の含有量は、感光性樹脂組成物の不揮発性成分の全量を基準として、例えば、0.001~1質量%、好ましくは0.005~0.5質量%とすることができる。
【0059】
[密着助剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、密着助剤を含むことができる。これにより、無機材料との密着性を一層向上させることができる。
【0060】
前記密着助剤は、とくに限定されないが、たとえばアミノ基含有カップリング剤、エポキシ基含有カップリング剤、アクリル基含有カップリング剤、メルカプト基含有カップリング剤、ビニル基含有カップリング剤、ビニル基含有カップリング剤、ウレイド基含有カップリング剤、スルフィド基含有カップリング剤、酸無水物含有カップリング剤等のカップリング剤を用いることができ、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシシラン(すなわち、1分子中に、エポキシ部位と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)を用いることがより好ましい。
【0061】
アミノ基含有カップリング剤としては、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
エポキシ基含有カップリング剤としては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
アクリル基含有カップリング剤またはメタクリル基含有カップリング剤としては、例えばγ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基含有カップリング剤としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
ビニル基含有カップリング剤としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイド基含有カップリング剤としては、例えば3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
スルフィド基含有カップリング剤としては、例えばビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
【0066】
酸無水物含有カップリング剤としては、例えば3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
なお、ここではシランカップリング剤を列挙したが、チタンカップリング剤やジルコニウムカップリング剤等であってもよい。
【0067】
前記密着助剤の含有量は、感光性樹脂組成物の不揮発性成分の全量を基準として、例えば、好ましくは0.3~5質量%であるのが好ましく、0.4~4%であるのがより好ましく、0.5~3質量%とすることができる。
【0068】
[溶剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。溶剤として、有機溶剤を含むことができる。前記有機溶剤としては、感光性樹脂組成物の各成分を溶解可能なもので、且つ、各構成成分と化学反応しないものであれば特に制限なく用いることができる。
【0069】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロプレングリコールメチルーn-プロピルエーテル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
【0070】
前記溶剤は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分全量の濃度が、例えば、30~75質量%となるように用いられることが好ましい。この範囲とすることで、各成分を十分に溶解させることができ、また、良好な塗布性を担保することができる。また、不揮発成分の含有量を調整することにより、感光性樹脂組成物の粘度を適切に制御できる。
【0071】
ワニス状の感光性樹脂組成物の25℃における粘度は、例えば、10cP~6000cP、好ましくは20cP~5000cP、より好ましくは30cP~4000cPである。粘度を前記数値範囲内とすることにより、塗布膜の厚みを適切に制御できる。例えば、例えば、1μm~100μm、好ましくは3μm~80μm、より好ましくは5μm~50μmの厚みを実現できる。
【0072】
(その他の添加剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物には、前記の成分に加えて、必要に応じて、その他の添加剤が添加されていてもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、シリカ等の充填材、増感剤、フィルム化剤等が挙げられる。
【0073】
<光導波路形成用感光性樹脂組成物>
本実施形態の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上述の成分を混合することにより得ることができる。
【0074】
本実施形態の光導波路形成用感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は光線透過率に優れる。例えば、窒素下で230℃2時間で硬化させた膜厚10μmの硬化膜の波長850nm光に対する光線透過率は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上とすることができる。そのため、光導波路形成用感光性樹脂組成物から得られた硬化膜を、コア層またはクラッド層、特にコア層に好適に用いることができる。
【0075】
本実施形態の光導波路形成用感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は屈折率に優れる。例えば、窒素下で230℃2時間で硬化させた膜厚10μmの硬化膜の波長850nm光に対する屈折率は1.60以上、好ましくは1.62以上、より好ましくは1.64以上とすることができる。そのため、光導波路形成用感光性樹脂組成物から得られた硬化膜を、コア層またはクラッド層、特にコア層に好適に用いることができる。
【0076】
本実施形態の光導波路形成用感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は、耐熱着色性に優れる。例えば、膜厚10μmの前記硬化膜は、230℃2時間保管前後の波長850nm光に対する光線透過率の低下率が、30%以下、好ましくは15%以下とすることができる。そのため、光導波路形成用感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は、コア層またはクラッド層として製品信頼性に優れる。
【0077】
<光導波路>
本実施形態の光導波路10は、図1に示すように、下部基材150上に、下部クラッド層(アンダークラッド層)130と、下部クラッド層130上に設けられたパターン状のコア部112とクラッド部114からなるコア層110と、およびコア層110上に設けられた上部クラッド層(オーバークラッド層)120と、が積層された積層構造を有することができる。この積層構造において、上部クラッド層120の上面側に上部基材が配置されていてもよい。
【0078】
本実施形態の光導波路においては、下部クラッド層130および/または上部クラッド層120、またはコア部112を、前述の感光性樹脂組成物から形成することができ、クラッド層120,130の屈折率がコア部112の屈折率よりも小さくなるように材料を組み合わせて用いることができる。
【0079】
本実施形態における光導波路の製造方法は、例えば、以下のような工程を含む。なお、以下の例においては、感光性樹脂組成物を用いて下部クラッド層130を形成した例により説明する。
【0080】
まず、本実施形態の感光性樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤に溶解させて感光性ワニスを調製する。そして、下部基材150上に感光性ワニスを塗工する。
【0081】
下部基材150としては、例えば、シリコンウェハ、金属製基板、高分子フィルム、ガラス基板等があげられる。そして、前記金属製基板としては、SUS等のステンレス板等があげられる。また、前記高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等があげられる。そして、その厚みは、通常、10μm~3mmの範囲内に設定される。
【0082】
前記有機溶剤としては、例えば、乳酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン等があげられる。これら有機溶剤は、単独でまたは二種類以上併用して、塗布に好適な粘度が得られるように用いられる。
【0083】
前記感光性ワニスの塗工方法としては、例えば、スピンコーター、コーター、円コーター、バーコーター等の塗工による方法や、スクリーン印刷、スペーサを用いてギャップを形成し、そのなかに毛細管現象により注入する方法、マルチコーター等の塗工機によりR-to-Rで連続的に塗工する方法等を用いることができる。また、前記光導波路は、前記基材を剥離除去することにより、フィルム状光導波路とすることもできる。
【0084】
前記感光性ワニスを塗工後、有機溶剤を加熱乾燥して除去する。これにより、下部基材150上に、未硬化の感光性樹脂組成物(塗膜)が形成される。次いで、当該塗膜に光照射を行なって硬化させ、下部クラッド層130を形成することができる。
【0085】
前記光照射としては、具体的には紫外線照射が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等が挙げられる。また、紫外線の照射量は、通常、10~20000mJ/cm2程度である。
【0086】
さらに、前記紫外線照射等の光照射による露光後、加熱処理を施すこともできる。加熱処理条件としては、通常、80~250℃にて、10秒~2時間の範囲内で行なわれる。
【0087】
次いで、下部クラッド層130上に、コア部形成材料(感光性ワニス)を塗工する。
【0088】
コア部形成材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等の各種液状エポキシ樹脂、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂等の各種固形エポキシ樹脂が挙げられ、前記クラッド層形成材料と比較して、高屈折率となるように配合設計が行われる。さらに、必要に応じてコア部形成材料をワニスとして調製し塗工するため、塗工に好適な粘度が得られるように前記有機溶剤、また光導波路としての機能を低下させない程度の各種添加剤(酸化防止剤、密着付与剤、レベリング剤、UV吸収剤)を用いてもよい。
【0089】
前記コア部形成材料(感光性ワニス)を塗工した後、有機溶剤を加熱乾燥して除去することにより未硬化のコア部形成材料(塗膜)を形成する。次いで、当該塗膜上に、所定パターン(光導波路パターン)のフォトマスクを配設し、このフォトマスクを介して紫外線等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なう。その後、未硬化のコア部形成材料(塗膜)の未露光部分を、現像液を用いて溶解除去することにより、所定パターンのコア部112を形成する。
複数のコア部112の間には、本実施形態の感光性樹脂組成物から形成されたクラッド部114を設ける。本実施形態の感光性樹脂組成物は埋め込み性やパターニング性に優れていることからクラッド層形成に好適に用いることができる。
【0090】
さらに、コア層110上に、本実施形態の感光性樹脂組成物を前記有機溶剤に溶解させてなる感光性ワニスを塗工した後、紫外線照射等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なうことにより、上部クラッド層120を形成する。
以上の工程により、本実施形態の光導波路を製造することができる。
【0091】
本実施形態の感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は、耐熱性に優れることから加熱による黄変が抑制されており透明性に優れ、さらに波長850nmの光線透過率に優れることから光導波路形成用材料として好適に用いることができる。さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物は埋め込み性やパターニング性が良好であることからクラッドとしても好適に使用できる。
【0092】
なお、本実施形態の感光性樹脂組成物をコア部形成材料として用い、例えばポリイミド樹脂、脂環式エポキシ樹脂、環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂等を含む感光性樹脂組成物をクラッド層形成材料に用いることができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は、耐熱性に優れることから加熱による黄変が抑制されており透明性に優れ、さらに波長850nmの光線透過率に優れることから光導波路形成用材料、特に光導波路のコア材として好適に用いることができる。さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は高屈折率であることから光導波路のコア材としてさらに好適に用いることができる。
【0093】
上述のようにして得られた光導波路を、例えば、光・電気伝送用混載(光電混載)基板のような光路変換を伴う製品に使用する場合、基板上の光導波路におけるクラッド層表面を、波長248nmのレーザーを用いて45°ミラー加工が施される。
前記ミラーの加工方法としては、例えば、レーザー加工法、ダイシング法、インプリント等の公知の方法があげられる。前記レーザーの照射エネルギーは、光導波路材料に応じて異なり適宜設定される。
【0094】
このようにして得られた光導波路は、例えば、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板用の光導波路として用いることができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0096】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
(光導波路形成用感光性樹脂組成物の調製)
表1に従い配合された各成分の原料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて混合溶液を得た。その後、混合溶液を0.2μmのポリプロピレンフィルターで濾過し、25℃で、粘度が約100cPのワニス状の感光性樹脂組成物を得た。感光性樹脂組成物の粘度は、コーンプレート型粘度計(TV-25、東機産業社製)を用いて回転速度100rpmと設定して測定した。
【0098】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN-1020-55、日本化薬社製、25℃で固形、n=3~6)
【化5】
【0099】
(ポリイミド)
比較例3においては以下のポリイミド樹脂を用いた。
【0100】
下記式で示される、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAFAとも示す)
【0101】
【化6】
【0102】
下記式で示される、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(以下、TFMBとも示す)
【0103】
【化7】
【0104】
下記式で示される、4-[4-(1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-イルカルボニロキシ)-2,3,5-トリメチルフェニル]-2,3,6-トリメチルフェニル 1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート(以下、TMPBP-TMEとも示す)
【0105】
【化8】
【0106】
[合成例1]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、BAFA37.62g(102.7mmol)と、TFMB32.89g(102.7mmol)と、TMPBP-TME151.29g(244.6mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL598.86gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=3/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度120℃で真空乾燥することにより、ポリマー205.55gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは18200、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.82であった。
ポリマーについて、IR測定を行ったところ、1480、1550、1670cm-1付近のアミド基由来のピークが消失しており、イミド化が完結していることを確認した。
また、H-NMR測定を行ったところ、芳香族領域(6.9ppm~8.9ppm)にプロトン数に対応した面積比でピークを確認した。
次いで、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、得られたポリイミド197.16g(水酸基換算182.6mmol)と、2-イソシアナトエチルアクリレート(以下AOIとも示す、昭和電工社製)51.54g(365.22mmol)と、γ-ブチルラクトン(GBL)737.08gを入れた。その後、撹拌しつつ温度120℃まで上げ、6時間反応させた。
得られた反応溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=2/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度40℃で真空乾燥することにより、ポリマー183.99gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは20,400、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.80であった。
H-NMR測定結果から、ポリマーに架橋基が導入されたことを確認した。架橋基が導入されたポリマーは、その一部に以下の繰り返し単位が含まれていた。
また、ガスクロマトグラフィーの測定結果から、架橋基の導入率は60%であった。
【0107】
(フェノキシ樹脂)
・フェノキシ樹脂1:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(jER1256、三菱ケミカル社製、Mw:約50,000)
【0108】
(密着助剤)
・密着助剤1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、KBM-403、信越化学社製)
【化9】
【0109】
(界面活性剤)
・界面活性剤1:含フッ素基・親油性基含有オリゴマー(R-41、DIC社製)
【0110】
(光酸発生剤)
〔合成例1〕リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレートの合成の合成
窒素雰囲気下で十分に乾燥させた125mL4つ口フラスコに超脱水ジエチルエーテル360部及び1-ブロモ-3,4,5-トリフルオロベンゼン25.6部を仕込み、これをドライアイス/アセトン浴を用いて-78℃に冷却した。2.5mol/Lのn-ブチルリチウムヘキサン溶液70部を10分かけて滴下し、その後、-78℃で30分撹拌した。これに、塩化ガリウム(III)5部を溶解させたジエチルエーテル溶液68部を10分かけて滴下し、-78℃で3時間撹拌した。反応液を徐々に室温に戻しながら攪拌し、室温に戻してから更に5時間撹拌した。析出した固体をろ過し、反応液をエバポレーターに移し、溶媒を留去することにより、灰白色の生成物を得た。生成物を超脱水ヘキサン50部で4回洗浄した後、一晩真空乾燥させ、リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレートを得た。生成物は19F-NMRにて同定した。
【0111】
〔合成例2〕リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成
1-ブロモ-3,4,5-トリフルオロベンゼン25.6部をブロモペンタフルオロベンゼン30部に変更した以外、合成例1と同様にして、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを得た。生成物は19F-NMRにて同定した。
【0112】
〔合成例3〕リチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレートの合成
1-ブロモ-3,4,5-トリフルオロベンゼン25.6部を1-ブロモ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン22.5部に変更した以外、合成例1と同様にして、リチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレートを得た。生成物は19F-NMRにて同定した。
【0113】
〔合成例4〕光酸発生剤(A-1)の合成
4-[(2-メチルフェニル)スルフィニル]ビフェニルを51%と4-[(2-メチルフェニル)チオ]ビフェニルを49%含む混合物2.0部、4-[(2-メチルフェニル)チオ]ビフェニル0.24部、無水酢酸1.2部、トリフルオロメタンスルホン酸0.72部及びアセトニトリル6.5部を均一混合し、60℃で2時間反応させた。反応溶液を室温(約25℃)まで冷却し、イオン交換水30部中に投入し、ジクロロメタン30部で抽出し、水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。有機層をロータリーエバポレーターに移し、溶媒を留去し、生成物を得た。これに酢酸エチル10部を加え、60℃の水浴中で溶解させた後、ヘキサン30部を加え撹拌した後、冷蔵庫(約5℃)で30分間静置してから上澄みを除く操作を2回行い、生成物を洗浄した。これをロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン27部中に溶解させ、合成例1で合成したリチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部、イオン交換水20部を投入し、室温で1時間撹拌した。水層を除去し、有機層をイオン交換水20部で3回洗浄した後、有機層をロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、A-1を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0114】
【化10】
【0115】
〔合成例5〕光酸発生剤(A-2)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部を合成例2で合成したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート3.5部に変更したこと以外、合成例4と同様にして、A-2を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0116】
【化11】
【0117】
〔合成例6〕光酸発生剤(A-3)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部を合成例3で合成したリチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレート4.3部に変更したこと以外、合成例4と同様にして、A-3を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0118】
【化12】
【0119】
〔合成例7〕光酸発生剤(A-4)の合成
4-[(2-メチルフェニル)スルフィニル]ビフェニルを51%と4-[(2-メチルフェニル)チオ]ビフェニルを49%含む混合物2.0部を4-[(2-メトキシフェニル)スルフィニル]ビフェニルを51%と4-[(2-メトキシフェニル)チオ]ビフェニルを49%含む混合物2.0部に変更した以外、合成例4と同様にして、A-4を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0120】
【化13】
【0121】
〔合成例8〕光酸発生剤(A-5)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部を合成例2で合成したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート3.5部に変更したこと以外、合成例7と同様にして、A-5を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0122】
【化14】
【0123】
〔合成例9〕光酸発生剤(A-6)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部を合成例3で合成したリチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレート4.3部に変更したこと以外、合成例7と同様にして、A-6を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0124】
【化15】
【0125】
〔合成例10〕光酸発生剤(A-7)の合成
4-[(2-メチルフェニル)スルフィニル]ビフェニルを51%と4-[(2-メチルフェニル)チオ]ビフェニルを49%含む混合物2.0部を4-[(フェニル)スルフィニル]ビフェニルを55%と4-(フェニルチオ)ビフェニルを45%含む混合物2.0部に変更した以外、合成例4と同様にして、A-7を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0126】
【化16】
【0127】
〔合成例11〕光酸発生剤(A-8)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部を合成例2で合成したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート3.5部に変更したこと以外、合成例10と同様にして、A-8を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0128】
【化17】
【0129】
〔合成例12〕光酸発生剤(A-9)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.8部を合成例3で合成したリチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレート4.3部に変更したこと以外、合成例10と同様にして、A-9を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0130】
【化18】
【0131】
〔合成例13〕光酸発生剤(B-1)の合成
2-(フェニルスルフィニル)-フルオレンを48%と2-(フェニルチオ)-フルオレンを52%含む混合物2.0部、無水酢酸3.1部及びメタンスルホン酸1.6部を均一混合し、65℃で3時間反応させた。反応溶液を室温(約25℃)まで冷却し、イオン交換水5.0部中に投入し、ジクロロメタン5.0部で抽出し、水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。これにシクロヘキサン15部を加え、撹拌した後、30分間静置してから上澄みを除く操作を2回行い、生成物を洗浄した。残渣をジクロロメタン15.0部に溶解させ、合成例1で合成したリチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部、イオン交換水10部を投入し、室温で1時間撹拌した。水層を除去し、有機層をイオン交換水10部で3回洗浄した後、有機層をロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、B-1を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0132】
【化19】
【0133】
〔合成例14〕光酸発生剤(B-2)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部を合成例2で合成したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート2.4部に変更したこと以外、合成例13と同様にして、B-2を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0134】
【化20】
【0135】
〔合成例15〕光酸発生剤(B-3)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部を合成例3で合成したリチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレート3.0部に変更したこと以外、合成例13と同様にして、B-3を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0136】
【化21】
【0137】
〔合成例16〕光酸発生剤(B-4)の合成
2-(フェニルスルフィニル)-フルオレンを48%と2-(フェニルチオ)-フルオレンを52%含む混合物2.0部を2-(フェニルスルフィニル)-9,9-ジメチルフルオレンを48%と2-(フェニルチオ)-9,9-ジメチルフルオレンを52%含む混合物2.0部に変更したこと以外、合成例13と同様にして、B-4を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0138】
【化22】
【0139】
〔合成例17〕光酸発生剤(B-5)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部を合成例2で合成したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート2.4部に変更したこと以外、合成例16と同様にして、B-5を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0140】
【化23】
【0141】
〔合成例18〕光酸発生剤(B-6)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部を合成例3で合成したリチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレート3.0部に変更したこと以外、合成例16と同様にして、B-6を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0142】
【化24】
【0143】
〔合成例19〕光酸発生剤(B-7)の合成
2-(フェニルスルフィニル)-フルオレンを48%と2-(フェニルチオ)-フルオレンを52%含む混合物2.0部を2-(フェニルスルフィニル)-9,9-ジエチルフルオレンを48%と2-(フェニルチオ)-9,9-ジエチルフルオレンを52%含む混合物2.0部に変更したこと以外、合成例13と同様にして、B-7を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0144】
【化25】
【0145】
〔合成例20〕光酸発生剤(B-8)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部を合成例2で合成したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート2.4部に変更したこと以外、合成例19と同様にして、B-8を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0146】
【化26】
【0147】
〔合成例21〕光酸発生剤(B-9)の合成
リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート2.0部を合成例3で合成したリチウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガレート3.0部に変更したこと以外、合成例19と同様にして、B-9を得た。生成物は1H-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0148】
【化27】
【0149】
・光酸発生剤(C-1):トリアリールスルホニウムボレート塩(サンアプロ社製、CPI-310B)
・光ラジカル発生剤:Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
【0150】
実施例または比較例で得られた感光性樹脂組成物について、以下の評価項目に基づいて評価を実施した。
【0151】
[耐熱着色性]
感光性樹脂組成物を230℃2時間硬化して得られた膜厚10μmの硬化膜を、大気下240℃/15分間で加熱処理したときの膜の着色を以下の基準で評価した。
◎:着色なし
×:黄変
【0152】
[屈折率]
前記のようにして得られた硬化膜の波長850nm光に対する屈折率を分光エリプソメータ MASS-104(ファイブラボ株式会社製)を用いて測定した。
【0153】
[透過率]
前記のようにして得られた硬化膜の波長850nm光に対する透過率を分光光度計 V670(日本分光製)を用いて測定した。
【0154】
[段差埋め込み性(平坦性の評価)]
実施例または比較例の感光性樹脂組成物を用いて、以下の手順で硬化膜付きウェハを得た。
(1)基板として、高さ3~4μm、幅10μmの、Cuにより形成された段差(凸状の部分)が、20μmピッチで設けられた、直径8インチのシリコンウェハを準備した。
(2)前記基板の段差がある面に、スピンコートにより感光性樹脂組成物を塗布後Si表面から4μm厚で塗布し、その後、大気中で100℃、6分乾燥させた。これにより基板上に感光性樹脂膜を形成した。
(3)前記(2)で形成された感光性樹脂膜に対して、手動露光機(オーク製作所製・HMW-201GX、g線、i線、h線などの混合光)を用いて、800mJ/cmの露光量で全面露光した。
(4)前記(3)の露光の後、窒素雰囲気下、170℃で120分の加熱処理により感光性樹脂膜を硬化させた。感光性樹脂組成物の段差埋め込み性を得られた硬化膜の平坦性から以下の基準で評価した。
◎:Cu上部の硬化膜のSi表面からの厚み(硬化膜+Cu厚み)とSi上部の硬化膜のSi表面からの厚みの差がCuの厚みの10%以下
×:Cu上部の硬化膜のSi表面からの厚み(硬化膜+Cu厚み)とSi上の硬化膜のSi表面からの厚みの差がCuの厚みの10%より大きい
【0155】
<パターニング性の評価>
得られた感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した。塗布後、大気中でホットプレートにて120℃で3分間プリベークし、膜厚約9.0μmの塗膜を得た。
この塗膜に、凸版印刷社製マスク(幅1.0~100μmの残しパターンおよび抜きパターンが描かれている)を通して、i線を照射した。照射には、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いた。
露光後、ウエハーをホットプレートに置き、大気中で80℃、5分間のベーク処理を行った。
その後、現像液としてPGMEAを用い、30秒間スプレー現像を行うことによって未露光部を溶解除去した。
その後、得られた塗膜サンプル上の幅100μmのビアパターンの断面を、卓上SEM(日立ハイテクノロジーズ)を用いて観察し、アンダーカットの発生の有無を確認した。評価結果を表1に示す。
パターニング性の評価基準:
〇:アンダーカットが未発生
×:アンダーカットが発生
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
表1に記載の結果から、本実施形態の感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は耐熱性に優れることから加熱による黄変が抑制されており透明性に優れ、さらに波長850nmの光線透過率に優れることから光導波路形成用材料、特に光導波路のコア材として好適に用いられることが明らかとなった。さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は高屈折率であることから光導波路のコア材としてさらに好適に使用できることが推定された。また、本実施形態の感光性樹脂組成物は埋め込み性やパターニング性が良好であることからクラッドとしても好適に使用できることが推定された。
【符号の説明】
【0159】
10 光導波路シート
100 光導波路フィルム
101 導波路端面
110 コア層
112 コア部
114 クラッド部
120 上部クラッド層
130 下部クラッド層
150 下部基材層
図1