(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167816
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】紡績機においてボビンを交換する方法及び紡績機
(51)【国際特許分類】
D01H 9/04 20060101AFI20221027BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20221027BHJP
B65H 67/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
D01H9/04 Z
D01H9/04 J
D01H9/04 F
D01H9/04 E
D01H15/00 Z
B65H67/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066995
(22)【出願日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】10 2021 110 206.5
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】512013754
【氏名又は名称】マスチネンファブリック ライター アーゲー
【氏名又は名称原語表記】MASCHINENFABRIK RIETER AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstr. 20, 8406 Winterthur Swizerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ウェイドナー-ボーネンベルガー
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112BA03
3F112EA02
3F112EB02
3F112EB03
4L056AA14
4L056AA19
4L056BF02
4L056BF08
4L056BF09
4L056BF13
4L056BF14
4L056BF22
4L056CB04
4L056CB14
4L056DA01
4L056EA13
4L056EA15
4L056EA17
4L056EA25
4L056EA28
4L056EB04
4L056EB13
4L056EB16
4L056EB26
4L056EC15
(57)【要約】
【課題】紡績機においてボビンを交換する方法及び対応する紡績機を提供する。
【解決手段】紡績機1は、紡績ステーション2で糸5を製造して回転中のスリーブ15に送ると共に、このスリーブに巻き付けてボビン7を形成する。ボビン7が所定の巻量に達した後、紡績機1に沿って移動可能な自動交換装置17によって、完成したボビン7を新しいスリーブ15と交換し、その後、糸5を当該新しいスリーブ15に巻き付ける。所定の巻量に達したとき、ボビン7への給糸を停止して、自動交換装置17の到着を待機し、かつ自動交換装置17が到着する直前に、ボビン7への給糸を再開する。その後、糸5を走行させながらボビンを交換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機(1)においてボビンを交換する方法であって、
紡績ステーション(2)で糸(5)を製造して回転中のスリーブ(15)に送り、前記糸(5)を前記スリーブ(15)に巻き付けてボビン(7)を形成し、前記ボビン(7)が所定の巻量に達して完成した後、完成したボビン(7)を自動交換装置(17)によって新しいスリーブ(15)と交換し、その後、前記糸(5)を前記新しいスリーブ(15)に巻き付ける方法において、
前記所定の巻量に達したとき、前記交換に必要な全ての構成要素が準備完了しているか否かを検査し、準備完了している場合は、前記完成したボビンを前記新しいスリーブと交換し、
必要な構成要素のうち少なくとも1つが交換に対して準備完了していない場合は、
前記ボビン(7)への給糸を停止し、
交換に必要な全ての構成要素の準備完了を待機し、
交換に必要な全ての構成要素が準備完了したとき、又は交換に必要な全ての構成要素が準備完了する直前に、前記ボビン(7)への給糸を再開し、その後糸(5)を走行させながらボビン交換を行うことを特徴とする紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項2】
前記検査が、前記紡績機(1)に沿って移動可能な自動交換装置(17)の前記紡績ステーション(2)における準備完了もしくは予想される準備完了時点、前記完成したボビン(7)を前記紡績ステーション(2)から搬出するためのボビン搬送装置の準備完了もしくは予想される準備完了時点、前記新しいスリーブ(15)を前記紡績ステーション(2)に搬送するためのスリーブ搬送装置の準備完了もしくは予想される準備完了時点、又は前記紡績ステーション(2)におけるボビン交換のために適切な負圧を提供する負圧装置(24)の準備完了もしくは予想される準備完了時点の検査を含むことを特徴とする請求項1に記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項3】
前記所定の巻量に達する前に、前記必要な構成要素を要求することを特徴とし、前記必要な構成要素は、前記移動可能な自動交換装置(17)、及び/又は前記スリーブ(15)、及び/又は前記ボビン搬送装置の空き、及び/又は必要な負圧、の要求を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項4】
前記自動交換装置(17)の到着時間及び/又は前記スリーブ(15)の到着時間を含む前記交換に必要な構成要素の予想される準備完了時点、及び/又は前記ボビン搬送装置上の空き状況、及び/又は前記要求を出した紡績ステーション(2)に必要な負圧を測定した測定結果を、機械センターを通じて紡績ステーション(2)に伝達することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項5】
給糸を停止するために、糸の製造を停止し、給糸を継続するために、前記糸(5)に対して新たに糸継ぎを行うことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項6】
ボビンを交換する間に、最後の糸継ぎ部を含む糸長を、前記完成したボビン(7)から再び取り去ることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項7】
前記ボビン(7)への給糸を停止している間、及び/又は満杯になったボビン(7)を前記新しいスリーブ(15)と交換する間に、前記走行中の糸(5)を収容部としての吸引装置(10)内に誘導するか、又は一時保管することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項8】
前記新しいスリーブ(15)に同一ロットの糸(5)を巻き付けるとき、前記新たに糸継ぎされた糸(5)を、該新しいスリーブ(15)に続けて巻き付けることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項9】
ボビン交換中にロット切り替えがある場合、前記完成したボビン(7)から所定の糸長を再び取り去り、そして、新ロットの糸(5)の糸継ぎに対し、前記糸長を糸継ぎ糸として前処理して使用することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項10】
旧ロットの糸継ぎ糸を前記新しいスリーブ(15)に巻き付けることにより、その糸継ぎ糸で前記紡績ステーション(2)において新ロットの糸(5)に対する糸継ぎを実現することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項11】
糸継ぎ後、前記自動交換装置(17)によって、前記新しいスリーブ(15)にある旧ロットの糸継ぎ糸を捕捉し、状況に応じて、前記スリーブ(15)上に留まっている旧ロットの糸(5)の残りをスリーブ(15)から巻き戻し、かつ旧ロットの糸継ぎ糸を新ロットの糸(5)から切り離し、前記新ロットの糸(5)のみを空のスリーブ(15)上に巻き付けることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の紡績機においてボビンを交換する方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法を行うための紡績機であって、
複数の紡績ステーション(2)と、各紡績ステーション(2)に対応する巻取ステーションと、完成したボビン(7)を新しいスリーブ(15)と交換するための少なくとも1つの自動交換装置(17)とを有し、前記紡績ステーション(2)の各々は、いずれも糸(5)の糸継ぎに用いられるハンドリング装置を含む紡績機において、
前記紡績ステーション(2)は制御装置(20、22)に対応しており、それによって前記紡績ステーション(2)は前記ボビン(7)への給糸を中断させることができ、かつ所定の時点で、前記完成したボビン(7)を前記新しいスリーブ(15)と交換するために必要な全ての構成要素の予想される準備完了に基づいて、紡績ステーションが給糸を再開できるようにすることを特徴とする紡績機。
【請求項13】
前記完成したボビン(7)を新しいスリーブ(15)と交換するために必要な構成要素が、前記紡績機(1)に沿って移動可能な、又は静止して各紡績ステーション(2)に対応する自動交換装置(17)、前記完成したボビン(7)を前記紡績ステーション(2)から搬出するためのボビン搬送装置、前記新しいスリーブ(15)を前記紡績ステーション(2)まで搬送するためのスリーブ搬送装置、及び/又は前記紡績ステーション(2)におけるボビン交換のために適切な負圧を提供するための負圧装置(24)を含むことを特徴とする請求項12に記載の紡績機。
【請求項14】
前記紡績ステーション(2)が、糸吸引装置(10)又は糸貯留ローラを含む収容部を有し、給糸中断中に糸(5)を該収容部内に吸引又は一時保管できることを特徴とする請求項12又は13に記載の紡績機。
【請求項15】
前記糸(5)の糸継ぎに用いられるハンドリング装置が、糸探索装置、糸保持装置、糸分離装置(11)、糸端前処理装置(9)、糸導入装置及び/又は糸引出装置(6)を含むことを特徴とする請求項12~14のいずれかに記載の紡績機。
【請求項16】
前記制御装置(20)が、要求を出した紡績ステーション(2)への前記自動交換装置(17)の到着予想時間を計算するための計算ユニット(23)を含むことを特徴とする請求項12~15のいずれかに記載の紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績ステーションで糸を製造し、回転中のスリーブに送ると共に巻き付けてボビンを形成し、そして前記ボビンが所定の巻量に達した後、自動交換装置によって、この完成したボビンを新しいスリーブと交換し、その後、糸をその新しいスリーブに巻き付ける、という、紡績機においてボビンを交換する方法に関する。また、本発明は、複数の紡績ステーション及び各紡績ステーションに対応する巻取ステーションを有し、さらに完成したボビンを新しいスリーブと交換するための少なくとも1つの自動交換装置を有する紡績機に関し、特に、そのうち前記紡績ステーションの各々が、いずれも糸の糸継ぎに用いられるハンドリング装置を含む紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許出願公開第2501735号には、紡績機、特にロータ式紡績機械の巻取ボビン交換を自動化する方法及び装置が開示されている。該発明は、所定のボビン充填度に達した際に、関連する作業部が信号をトリガし、この信号が作業部を停止させ且つ紡績機械に沿って移動可能な巻取ボビン交換装置を呼び寄せ、ボビン交換を行うことを開示している。また、糸誘導手段により、該交換装置に同伴されている糸継ぎボビンの糸端を自動的に紡績機に送り、続いて作業部を再び運転させる。その後、糸継ボビンの糸端に新たに糸継ぎされた糸を空のボビンスリーブに固定し、かつ糸継ボビンの糸端を再び切断する。
【0003】
自動紡績機におけるボビン交換については、自動装置によってボビンを交換する前に、糸切れが発生することが想定される。これは、特にさらなる処理において廃棄物に送らなければならない残余量の発生を回避するため、ボビン交換は、ボビン上の目標とする糸長を可能な限り正確に維持するように行うべきであるという前提に基づいている。基準となるボビンのサイズ、例えばボビン径が、梱包に対して定められている場合、又は製造計画で規定されたボビンサイズに関連している場合に限り、多少大きい公差が許容される。このような場合、既知の「デルタ長」、即ちボビンの最小糸長と最大糸長との公称の公差長の関数は、必要なボビン長さの精度が低い場合に、製造ステーションとなる紡績ステーションが自動交換装置を待つ待機時間中の作業停止時間を最小限にするために用いられる。しかし、自動ボビン交換装置は、複数の、しかも一定距離で間隔が空いている可能性のある紡績ステーションに対して操作を行わなければならないため、ボビンがちょうど満杯になった状況で、時間通りに自動ボビン交換装置が到着する確率は低い。したがって、そのような状況では製造がすでに中断していると予想される。
【0004】
また、ロータ式紡績機の現在の機械の概念について言えば、移行可能な自動ボビン交換装置は、ロータを清掃する作業を担っている。その理由は、清掃を行うためにロータに近付く唯一の手段は、清掃装置を用いて外部から紡績ボックスに係入して開くことであるからである。よって、紡績動作を中断しなければならない。それは、通常は自動ボビン交換装置がボビン交換中の待機時間に行われる。
【0005】
そのほか、自動ボビン交換装置は、空のスリーブで糸継ぎを行わなければならない。そのため、補助糸を備えている。現在の方法は、この補助糸をボビンに巻き付けないように設計されている。
【0006】
このタイプの移行可能な自動ボビン交換装置は複雑度が高い。紡績ステーションによって独立して糸継ぎ操作を行うにしても、又は状況に応じて半自動機器で手動により糸継ぎ操作を行うにしても、自動装置で満杯になったボビンを空のスリーブと交換し、新しい糸を空のスリーブに与えるまでの間、自動装置は紡績ステーションで長時間待機しなければならない。後続の操作は、結糸操作の後でなければ行えないからである。この待機時間の割合は、紡績ステーションに滞留する時間の3分の2になることもある。そのため、自動ボビン交換装置の実際の負荷率は低レベルに留まっており、それに応じて、同タイプの多数の自動装置を紡績機械に配置しなければならない。
【0007】
しかしながら、完成したボビンを交換するために必要なのは、自動交換装置の準備を完了することだけではない。紡績機の他の構成要素も、ボビン交換を行いやすいように、特定の状態にしなければならない。他の構成要素とは、例えば空のスリーブを提供するための装置、完成したボビンを搬出する装置、又はボビン交換に必要な十分な負圧を提供する装置等であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第2501735号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術における既知の欠陥を解消するとともに、特にボビン交換に関与する構成要素が確実に準備完了となるよう保証し、さらにボビンの交換に要する時間を、ボビンを即時交換する時間のみとなるまで短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が上述の目的を達成するために用いる解決手段は、独立請求項の特徴を有する紡績機においてボビンを交換する方法及び紡績機である。
【0011】
紡績機においてボビンを交換する方法を提示し、紡績ステーションで糸を製造して回転中のスリーブに送り、このスリーブに巻き付けてボビンを形成する。前記紡績機は、例えばロータ式紡績機又はエアジェット紡績機であり得る。ボビンが所定の巻量に達した後、自動交換装置によってこの完成したボビンを新しいスリーブと交換する。ボビン上の所定の巻量を定義するためには、例えばボビンに巻き付けられた糸長、又は達成したボビン径を用いる。完成したボビンを新しいスリーブと交換した後、その新しいスリーブに糸を巻き付ける。完成したボビンをまず紡績ステーションから、次に紡績機から取り出し、さらなる処理のために送り出す。
【0012】
所定の巻量に達したとき、全ての必要な構成要素の準備が完了していて、完成したボビンを新しいスリーブと交換することができるか否かを検査する。必要な構成要素のうち少なくとも1つが交換に対して準備完了していない場合は、ボビンへの給糸を停止する。この場合、ボビンにそれ以上糸を巻き付けない。これにより、ボビンの所定の巻量を維持する。その後、交換に必要な全ての構成要素の準備完了を待機する。交換に必要な全ての構成要素の準備が完了する直前又は直後、ボビンへの給糸を再開し、その後、糸を走行させながらボビン交換を行う。これにより、例えば該紡績機に沿って移動可能な自動交換装置の到着を待機し、完成したボビンを紡績ステーションから取り出して新しいスリーブと交換する。該新しいスリーブは通常糸が巻き付けられていないが、新しい糸の糸継ぎに適用するための比較的短い糸部を含んでいてもよい。自動交換装置が到着する直前まで、ボビンへの給糸は再開しない。したがって、自動交換装置の紡績ステーションへの到着時、又は自動交換装置によるボビン交換作業の開始時に、自動交換装置は紡績ステーションにおいて走行している糸を見出す。これにより、糸を走行させながらボビン交換を行うことができる。こうして、自動交換装置が紡績ステーションに留まる時間を純粋なボビン交換に限定しており、それはボビン交換中に糸継ぎプロセスが省略されているからである。糸継ぎは、ボビン交換作業の開始直前、待機時間中に、紡績ステーション自身がすでに自ら行っている。対応可能な能力がある場合、ロータを清掃する作業は従前どおり自動交換装置が行ってよい。自動交換装置が、ボビン交換に関してそれ以上の要求がなく、自身に未使用の待機時間がある場合に、対応可能な能力が存在する。特に紡績ステーションが自律的に、即ち自動交換装置も他の外部機器も操作員の補助もない状況で結糸を行うことができるとき、状況に応じて、ボビンの交換操作とは別にロータの清掃も行うことができる。
【0013】
構成要素の準備完了は通常予測可能である。これにより、移動可能な自動交換装置が、要求を出した紡績ステーションにいつ到着するのかを知ることができる。同様に、ボビン搬送ベルトの占用状況に基づいて、ボビン搬送ベルトが紡績ステーションでボビンを受け取って搬出するのがいつであるのかを予測することができる。また、紡績ステーションにおいて空のスリーブをいつ供給できるのか、負圧供給装置がボビン交換のための十分な負圧をいつ提供できるのかということも予測可能である。したがって、可能な限り時間を節約してボビンを交換できるようにするためには、交換に必要なすべての構成要素の準備が完了する直前に、ボビンへの給糸をすでに再開していることが特に好ましい。
【0014】
紡績ステーションの各々に、糸継ぎのためのハンドリング装置を設け、また好ましくは自動交換装置も紡績ステーションで使用される状況によって、本発明が特に優れている点は、糸継ぎ及びボビンへの糸の搬送を独立して行うことができ、複数の紡績ステーションを担当する自動ハンドリング装置を待機する必要がないということである。それに対応して、糸継ぎの時点は、対応する糸継装置の紡績ステーションへの到着とは別である。
【0015】
自動交換装置はボビン交換に必要な構成要素のうちの1つにすぎない。ボビンを交換できるか否かの検査は、特に紡績機に沿って移動可能な、又は静止して各紡績ステーションに対応する自動交換装置の紡績ステーションにおける準備完了もしくは予想される準備完了時点、完成したボビンを紡績ステーションから搬出するためのボビン搬送装置の準備完了もしくは予想される準備完了時点、新しいスリーブを紡績ステーションに搬送するためのスリーブ搬送装置の準備完了もしくは予想される準備完了時点、又は紡績ステーションにおけるボビン交換のために適切な負圧を提供する負圧装置の準備完了もしくは予想される準備完了時点の検査を含む。好ましくは、ボビン交換に必要な構成要素の準備が完了したとき、しかし特に好ましくは準備完了の直前つまり準備完了近くに、新たにボビンへ給糸し、その後ボビンを浮かせて交換できるようにする。
【0016】
所定の巻量に達する前に、必要な構成要素、特に移動可能な自動交換装置及び/又はスリーブ及び/又はボビン搬送装置における空き及び/又は必要な負圧をすでに要求していることが好ましい。特に、紡績ステーションにおいていつ所定の巻量に達するか予見できる場合、時間的に構成要素との協働が可能である。例えば、そのために特定の時点で、移動可能な自動交換装置を対応する紡績ステーションに差し向けることができる。これにより、紡績ステーション又は自動交換装置の作業停止時間を特に短く保持することができる。
【0017】
同様に、交換操作のために必要な構成要素の予想される準備完了時点、特に自動交換装置の要求を出した紡績ステーションへの到着予想時間、及び/又はスリーブの到着予想時間、及び/又はボビン搬送装置上の空き状況、及び/又は必要な負圧を測定した測定結果を、機械センターを通じて紡績ステーションに伝達することが好ましい。これにより、ボビン交換を行う前に、紡績ステーションにおいてロータ清掃などの他のメンテナンス作業が可能か否かを判断することができる。これは、自動交換装置によってボビン交換を行うまでに十分な時間があるからである。
【0018】
そのほか、給糸を停止するために、糸の製造を停止し、そして給糸を継続するために、糸に対して新たに糸継ぎを行うことが好ましい。このようにして、紡績ステーションにおける待機中は、糸を製造しない。自動交換装置が紡績ステーションに到着する直前、又は自動交換装置がボビン交換作業を開始する直前になってから、紡績ステーションによる新たな糸継ぎを行うため、糸の製造を続けながらボビン交換を行うことができる。
【0019】
ボビン交換中に、最後の結糸部を含む糸長を、完成したボビンから再び取り去ることが好ましい。これにより、完成したボビンには、ボビンの自動交換装置待機中の作業停止時間によってのみ生じる余分な結糸部がない。
【0020】
ボビンへの給糸を停止している間、及び/又は満杯になったボビンを新しいスリーブと交換する間に、走行中の糸を収容部、特に吸引装置内に誘導するか、又は一時保管することが好ましい。ボビンへの給糸を停止している間に糸の製造を継続して、糸収容部、例えば吸引装置内に誘導するか、又は糸貯留ローラに誘導した場合、ボビン交換の少し前に新たな結糸を行う必要がない。さらにボビンに糸を巻き付けるのではなく、例えば糸を廃棄物容器に送るか、又は紡績ステーション内に配置された糸貯留装置に充填する。こうすると、満杯になったボビンを新しいスリーブと交換する間も同様に有利である。このような状況でも糸の製造を続けることができ、なおかつ糸が走行している状態で各ハンドリングステップを行って、ボビンを交換することができる。
【0021】
同様に、新しいスリーブに同一ロットの糸を巻き付けるとき、新たに糸継ぎされた糸を、新しいスリーブに続けて巻き付けることが好ましい。ボビン交換後、前と同じタイプの糸を新しいスリーブに巻き付け、ロット切り替えが発生しない場合、さらなる中間ステップを経ることなく、新たに糸継ぎした糸を新しいスリーブに巻き付けることができる。
【0022】
また、ボビン交換中にロット切り替えが発生する場合、完成したボビンから所定の糸長を再び取り去り、そして、新ロットの糸の糸継ぎに対し、その糸長を糸継ぎ糸として前処理して使用することが好ましい。ロットを切り替えると、糸タイプが変わる。すなわち前のスリーブ又はボビンに巻き付けられていた糸と、新しいスリーブに巻き付けられる糸とは異なる。この場合、完成したボビンから、新ロットの糸の糸継ぎに用いるのに十分な長さで糸端を引き出すことが好ましい。この糸端を糸継ぎ糸として前処理して使用し、糸継ぎを行うために用いることができる。これにより、自動交換装置は糸継ぎボビンを備える必要がなくなる。旧ロットの糸で行われる新ロットの糸の糸継ぎに続いてボビン交換を行うことができ、又は代替的に、旧ロットの糸を一時保管し、それを新ロットの新しい糸の糸継ぎに用いることができる。
【0023】
このほか、旧ロットの糸継ぎ糸を新しいスリーブに巻き付けておき、この糸継ぎ糸によって紡績ステーションにおいて新ロットの糸の糸継ぎを実現することが好ましい。これにより、旧ロットの糸を新しいスリーブに一時保管しておき、それを新ロットの糸の糸継ぎに用いることができる。
【0024】
また、糸継ぎ後、新しいスリーブにある旧ロットの糸継ぎ糸を自動交換装置によって捕捉し、状況に応じて、スリーブに留まっている旧ロットの糸の残りをスリーブから巻き戻し、かつ旧ロットの糸継ぎ糸を新ロットの糸から切り離し、かつ新ロットの糸のみを空のスリーブに巻き付けることが好ましい。したがって、旧ロットの糸は新しいスリーブ上には存在しなくなる。新しいスリーブには新ロットの糸のみが巻き付けられる。旧ロットの糸は廃棄物容器に送られることが好ましい。
【0025】
本発明の紡績機は複数の紡績ステーション及びそれらの紡績ステーションに対応する巻取ステーションを有する。前記紡績機は、例えばロータ式紡績機又はエアジェット紡績機である。完成したボビンを新しいスリーブと交換するための少なくとも1つの自動交換装置は、駆動装置によって該紡績機に沿って往復移動可能である。このため、該紡績機には、例えば該自動交換装置を案内するためのレールを設けてもよい。しかし、自動交換装置は静止して各紡績ステーションと対応していてもよい。紡績ステーションの各々はいずれも糸の糸継ぎに用いられるハンドリング装置を含む。したがって、糸切れの場合に、紡績ステーションが自力で糸を新たに糸継ぎすることができる。本発明によれば、前記紡績ステーションは制御装置に対応しており、それによって紡績ステーションはボビンへの給糸を中断させることができる。前記制御装置は、各紡績ステーションにおいて、又は複数の紡績ステーションにおいて、例えば一区分の複数又は全ての紡績ステーションに対応し得る。もしくは紡績機の全ての紡績ステーションに対応し得る。制御装置は、紡績ステーションに対して制御命令を出すことによって、所定の時点で、完成したボビンを新しいスリーブと交換するために必要な全ての構成要素の予想される準備完了に基づいて、給糸を再開するように設計されている。
【0026】
完成したボビンを新しいスリーブと交換するために必要な構成要素は、特に紡績機に沿って移動可能な、又は静止して各紡績ステーションに対応する自動交換装置、完成したボビンを紡績ステーションから搬出するためのボビン搬送装置、新しいスリーブを紡績ステーションに搬送するためのスリーブ搬送装置、及び/又は紡績ステーションにおけるボビン交換のために適切な負圧を提供する負圧装置を含む。ボビン交換に用いられる全ての構成要素の準備が完了した状況、又は構成要素の準備がすぐに完了することが予見できる状況においてのみ、給糸を再開する。給糸を継続する理想的な時点は、ボビン交換に用いられる構成要素の準備が完了した状況において、糸が新たに糸継ぎされた直後であり、かつ走行しているときである。これにより、ボビン交換までにボビンに巻き付けられる糸量を最少にする。
【0027】
また、前記紡績ステーションが収容部、特に糸吸引装置又は糸貯留ローラを有し、該収容部内には、給糸中断中に糸を吸引又は一時保管できることが好ましい。こうすれば、糸の製造は継続されるが、ボビンに巻き付けられなくなる。
【0028】
同様に、前記糸の糸継ぎに用いられるハンドリング装置が、糸探索装置、糸保持装置、糸分離装置、糸端前処理装置、糸導入装置及び/又は糸引出装置を含むことが好ましい。これらのハンドリング装置により、紡績ステーションは自力で、さらには他の装置の補助がない状況で、糸継ぎ操作を行うことができる。これらのハンドリング装置は、一部のみが紡績ステーションに配置されてもよい。これは、低コストで紡績ステーションを製造し、かつ例えば操作員によってハンドリングの一部を行うことができる場合に有利である。
【0029】
前記制御装置が、要求を出した紡績ステーションへの自動交換装置の到着予想時間を計算するための計算ユニットを含むことが好ましい。自動交換装置の到着予想時間を計算することにより、紡績ステーションにおける前処理作業を時間通りに終了することができる。これにより、紡績ステーションが停止している状況で、時間通りに糸の糸継ぎを行うことができ、それによりボビン交換開始時に糸がすでに走行中となるようにすることができ、さらには自動交換装置が紡績ステーション上で保持される時間を、必要な時間のみに限定することができる。
【0030】
本発明の紡績機においてボビンを交換する方法は、紡績工程を実行すると同時に、高速かつ比較的簡単な交換工程を用いている。このため、自動交換装置の到着時、又は遅くともボビン交換の開始時に、紡績工程がすでに実行されていることを確実に保証する。空のスリーブへの糸の巻き付けを再開する状況に対して、独立した結糸プロセス、例えば単一ステーションの自動化又は手動操作を用いた半自動装置によって、自動交換装置の滞留時間及び待機時間なしに、自動交換装置の到着前に紡績工程を実行するため、自動交換装置の到着前に、紡績ステーションに前処理済みの糸端がすでにあることを確実に保証する。同時に、ボビン内容についての目標の長さを、可能な限り正確にしなければならない。そのため、機器のコントローラによって、ボビン交換に用いる自動交換装置の紡績ステーション/巻取ステーションへの到着予想時点を測定する。ボビンが完全に充填された状態で紡績ステーションが停止した場合、新しい結糸操作を開始して、自動交換装置の到着時に、ちょうど紡績操作が再開されるようにすれば、余分に製造される糸長は無視できる程度に少なくなる。このような状況では、自動交換装置は、満杯になったボビンを新しいスリーブと交換する短時間の切り替え中に、走行中の糸を一時保管するよう確実に保証するだけでよい。そのため、従来の方法と比較して、必要な装置はより簡単であり、所要時間がより短い。
【0031】
ここで、ボビン交換の直前に、糸継ぎのために糸に余計に生じた結糸部は、対応してフローを制御することによって、ボビン上の最も外側の巻糸に位置することが好ましく、これにより、紡績機のボビン交換工程において該結糸部を取り出すことができる。又は次の工程、例えば製織もしくは編立工程において、ボビンに対して結糸を行う際、最終的には該結糸部を取り去る必要がある。又は、例えば糸結び工程において、該結糸部は必然的に失われる。自動交換装置の動作の面では、単一の駆動装置及び紡績ステーションに配置されたハンドリング装置を使用する場合、前記の方法は、理想的には、ボビン交換中であっても完成したボビンから設定した糸長を再び取り去るプロセスを含む。これが可能なのは、ボビン交換について言えば、最終的には糸を分離する必要があるためである。
【0032】
新ロットの開始については、上記の案を利用して、空のスリーブに始端を準備することができる。具体的な方法は、外部で、又は旧ロットから、又は自動装置を介して、新しいスリーブに短い糸長を巻き付けることである。この糸長をもとに、前記方法に従って、紡績ステーションの糸継ぎによって紡績工程を開始することができる。続いて、スリーブを交換しない場合は、自動交換装置が走行中の糸を捕捉し、その余剰の少量の糸をスリーブから取り除いた後、走行中の糸を切断して、新ロットの糸のみを空のスリーブに適用させる。
【0033】
ボビン交換中に紡績ステーションによって製造される糸について言えば、紡績ステーションに一時保管してもよいし、自動交換装置に一時保管してもよく、例えば吸引又は中間巻き付けによってそれを行う。
【0034】
前記方法及び前記装置は、前述の説明に基づいて構築されるものであり、言及された特徴は単独で応用することも、任意に組み合わせることも可能である。
【0035】
本発明のさらなる利点は、以下の実施例において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、移動可能な自動交換装置を含む紡績機の側面図である。
【
図2】
図2は、移動可能な自動交換装置を要求する場合のボビン交換工程の主な作業ステップを示す図である。
【
図3】
図3は、静止した自動交換装置を含む紡績機の側面図である。
【
図4】
図4は、構成要素を要求する場合のボビン交換工程の主な作業ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図示した代替的な実施例の説明において、技術的解決手段及び/又は動作原理が前述の技術的解決手段と同一及び/又は少なくとも類似の特徴については、同一の参照符号を使用する。これらの特徴について再度詳細な説明を行わない場合、その技術的解決手段及び/又は動作原理は、前述の部分ですでに説明した特徴の技術的解決手段及び/又は動作原理と同等である。明瞭性の観点から、同一の部品を全て参照符号で示していない場合もあるが、いずれも同一の方式で描いている。
【0038】
図1は本発明の紡績機1の側面図である。紡績機1は複数の紡績ステーション2を含み、それぞれが巻取ステーション3に対応している。ケンスからのスライバー4を各紡績ステーション2に送り込む。紡績ステーション2でスライバー4を用いて糸5を紡出する。糸引出装置6によって紡績ステーション2から糸5を引き出して、ボビン7に巻き付ける。各紡績ステーション2は、糸引出装置6のほかにも、糸切れの場合に自力でボビン7から糸5を探し出し、紡績ステーション2において新たに糸継ぎするためのハンドリング装置の他の装置をさらに有している。ハンドリング装置のそのような装置は、例えば糸処理装置8であって、ボビン7で糸5を探し、その後糸を保持して、前処理及び糸継ぎを行うために、紡績ステーション2又は巻取ステーション3の対応する位置まで糸を移動させる。そのほか、各紡績ステーション2には、いずれも糸端前処理装置9、糸吸引装置10及び糸分離装置11が設けられている。これによって、紡績ステーション2で糸切れが発生した後、ボビン7で糸5の端部を探索して見つけ出し、その後、必要に応じて正確な長さに切断し、そうして得られた糸を糸端前処理装置9で前処理して、糸継ぎに用いることができる。糸吸引装置10では、糸5を一時保管するか、又は必要に応じて不要となった糸部を吸引除去することができる。
【0039】
紡績ステーション2及び巻取ステーション3は2つの端部支持体12と13の間に配置されている。端部支持体12にはスリーブマガジン14が設けられ、複数のスリーブ15が該スリーブマガジン内に配置されている。巻取ステーション3によって新しいスリーブ15が要求されると、スリーブマガジン14からスリーブを取り出し、スリーブ搬送ベルト16に置いて要求を出した巻取ステーション3まで送り込む。そこでは紡績機1に沿って往復移動する自動交換装置17によって、スリーブ15を満杯になったボビン7と交換する。自動交換装置17によって満杯になったボビン7をボビン搬送ベルト18に送り、紡績機1の端部支持体13の領域内に位置する端部まで搬送して、その場所でボビンを紡績機1から取り除く。
【0040】
満杯になったボビン7を空のスリーブ15と交換するため、自動交換装置17はボビン及びスリーブ把持装置19を有している。ボビン及びスリーブ把持装置19は略図で示す。ここで矢印が示すように、ボビン及びスリーブ把持装置19は異なる方向に沿って移動可能であり、それによってスリーブ15を把持し、巻取ステーション3からボビン7を取り除いてボビン搬送ベルト18上に置き、そしてスリーブ15を巻取ステーション3の図示していない2本の巻取アーム間に置くことができる。状況に応じて、自動交換装置17は、ボビン交換又は他の作業、例えば紡績ステーション2の清掃などに用いられるその他のハンドリング装置を有する。
【0041】
交換操作を制御するため、端部支持体12に機器コントローラ20が設けられている。機器コントローラ20は自動交換装置コントローラ21及び紡績ステーションコントローラ22とデータ接続されている。機器コントローラ20内の計算ユニット23は、ボビン交換のために自動交換装置17を要求した巻取ステーション3への自動交換装置17の到着予想時間帯又は時点を計算する。この時点は、主に自動交換装置17と巻取ステーション3の距離及び自動交換装置17がさらに完了する必要のある優先的作業によって決定される。当然ながら、巻取ステーション3がいつボビン7を完成させるかを把握することによって、自動交換装置17に対して要求することもできる。どのような状況でも、計算ユニット23では、巻取ステーション3におけるボビン7の完成と、該巻取ステーション3への自動交換装置17の到着予想との時間差を測定する。巻取ステーション3でボビン7が完成した後は、ボビン7への糸5のさらなる搬送を中断する。この状況では、紡績ステーション2を停止し、糸5をそれ以上製造しないようにするか、又は紡績ステーション2で製造された糸5を糸吸引装置10に吸引して一時保管するか、又は廃棄物容器へ送り込む。
【0042】
時間通りに糸5の新たな糸継ぎを開始できるように、自動交換装置17の到着予想時間を紡績ステーションコントローラ22に通知する。自動交換装置17は、要求を出した巻取ステーション3に到着したとき、又は少なくとも自動交換装置17がボビン7をスリーブ15と交換するための準備を完了する少し前に、糸5を再びボビン7に巻き付ける。したがって、糸5が走行している状態でボビン交換が行われる。これに対応して、ボビン交換を行うために、自動交換装置17は、糸の探索操作、前処理操作又は糸継ぎ操作が完了するまで巻取ステーション3において不必要に長時間待機する必要がない。このようにして、自動交換装置17の作業停止時間は、従来の紡績機1と比較して大幅に短縮される。長い紡績機1に必要な自動交換装置17の数が減るとともに、自動交換装置17の効率が明らかに向上する。
【0043】
端部支持体12に近接して示されている巻取ステーション3について言えば、直前に自動交換装置17によってボビン交換が行われている。ここでは、スリーブ15はほとんど巻き付けされていない。糸処理装置8は休止位置にある。少し前に交換が行われた巻取ステーション3近傍に位置する巻取ステーション3は、ボビン7の糸端を糸処理装置8に収容する。ここで、糸処理装置8は、矢印の表示に従って異なる方向に沿って移動する実施形態を採用しているため、ボビン7から糸5を捕捉して、糸継ぎ操作のために糸の前処理を行うことができる。自動交換装置17が巻取ステーション3に到着する少し前に、紡績ステーション2において、捕捉した糸5の糸継ぎを行い、自動交換装置17が走行中の糸5を見つけ出すことができるようにしているため、非常に短い時間でボビン交換を行うことができ、糸5の結糸を長時間待機する必要がない。
【0044】
図2はボビン交換における主な作業ステップを示している。巻取ステーション3でボビン7の巻量に達したら、直ちに自動交換装置17を要求する。機器コントローラ20又はその計算ユニット23によって、該要求を適切な自動交換装置17に伝達するとともに、自動交換装置が巻取ステーション3に到着する時間を測定する。その後、特に時間が過度に長く、かつその間の時間に製造され、ボビン7に巻き付ける必要がある糸5が多くなり過ぎるときは、ボビン7への給糸を停止する。自動交換装置17が巻取ステーション3に到着する少し前、又は自動交換装置17がボビン交換を開始する直前に、ボビン7への給糸が継続される。したがって、自動交換装置17は常に走行中の糸5を基にしてボビン交換を行うことができる。これにより、自動交換装置17が巻取ステーション3において糸5が糸継ぎされるまでの待機時間を非常に短く保つことができ、ひいてはこの待機時間を完全に回避することができる。
【0045】
前と同じタイプの糸5を新しいスリーブ15に巻き付ける必要がある場合、即ち同一ロット内でボビン交換を行う場合、紡績ステーション2又は巻取ステーション3のハンドリング装置もしくは自動交換装置17のハンドリング装置によって、古い糸5のみを捕捉してそれを新しく配置されたスリーブ15に巻き付ける。必要に応じて、ボビン7をボビン搬送ベルト18に引き渡す前に、待機時間により古いボビン7で生じた最後の結糸部を、ボビン7から巻き戻して取り除くという方法を用いてもよい。
【0046】
ボビン7の交換が必要なだけでなく、前の糸5と比較して変更された糸5を新しいボビン7に巻き付けなければならないと機器コントローラが断定した場合、即ちロット切り替えがある場合には、全ての変更されたボビンを交換する方法を実行する。新ロットに切り替えられたボビンの交換については、前のボビン7から古い糸5を捕捉して糸継ぎ糸とし、新しいスリーブ15に巻き付ける。この間に、完成したボビン7を巻取ステーション3から取り去って、ボビン搬送ベルト18に送り出す。糸継ぎ糸とした古い糸5によって、新ロットの糸5の糸継ぎを行う。その後、新しいボビン7に古い糸部が残ることを防ぐため、古い糸5をスリーブ15から取り除き、例えば糸継ぎ後もスリーブ15にある古い糸5をスリーブ15から巻き戻して、吸引装置10に送り込む。次に、例えば糸分離装置11により、古い糸5を新しい糸5から切断し、ここで新しい糸5のみを新しいスリーブ15に巻き付ける。そして、自動交換装置17は、巻取ステーション3を離れて別の巻取ステーション3に移行することができる。
【0047】
自動交換装置17がボビン7を交換する必要がない場合、例えば自動交換装置17の作業領域内でボビン7が完成していない場合は、自動交換装置は、例えば紡績ステーション2の清掃など、他の作業を担ってもよい。
【0048】
古い糸5で新しい糸5の糸継ぎを行うために、古い糸5を新しいスリーブ15に巻き付けてもよい。しかしこの古い糸は吸引装置10内に一時保管してもよく、図示していない糸貯留ローラに巻き付けてもよい。
【0049】
図3は、静止した自動交換装置17を含む紡績機1の側面図である。ここで、各紡績ステーション2にはいずれも各自が所有する自動交換装置17が設けられている。それに応じて、紡績ステーション2は
図1に示すように移動可能な自動交換装置17を待機することなく、ボビン交換を行うことができる。
【0050】
また、端部支持体12には負圧装置24が示されている。負圧装置24は、紡績機1及び対応する紡績ステーション2において、現在その場所で行われている動作に対して十分な負圧を確実に提供することを保証する。しかしながら、特に非常に長い紡績機1については、負圧装置24の能力が、紡績ステーション2で全ての動作を行うためには不十分である可能性がある。したがって、同様に負圧を必要とするボビン交換を行えるように、負圧装置24の準備完了を確実に保証することが好ましい。
【0051】
負圧装置24のこの準備完了に加えて、同様に、紡績機1のボビン交換に必要な他の構成要素について、その準備完了を照会することが好ましい。これにより、特に、スリーブ搬送ベルト16上で、要求を出した紡績ステーション2にスリーブ15を送り込むことを確実に保証できる。また、スリーブ15を別の紡績ステーション2に供給しているため、又は現在適切なスリーブ15の在庫がないために、スリーブ搬送装置が現在占有されている可能性がある。ボビン交換に関して準備完了を明らかにすべき別の構成要素は、ボビン搬送ベルト18である。ここで同様に、ボビン搬送ベルト18に現在空きがなく、ひいては完成したボビン7を紡績ステーション2から取り出してボビン搬送ベルト18上に置くことができない可能性がある。最後に、同様に、糸処理装置8又は自動交換装置17の故障により、現在紡績ステーション2でボビン交換を行うことができない可能性もある。ボビン交換に必要なこれらの及び他の全ての構成要素が、現在、又は糸継ぎ及び糸5をボビン7へ再び送るためにそれらの構成要素を必要とする時間内に、準備の完了が明らかになったときに限り、ボビン7へ糸5を再び送り込む。
【0052】
図4では、構成要素を要求する場合に、ボビン交換工程における主要な作業ステップを説明している。
図2と同様に、ここでは構成要素への要求と照会、及びボビン交換に必要な構成要素の予想される準備完了時点の指示について概略的に言及しており、移動可能な自動交換装置17のみに言及しているものではない。構成要素の準備が完了したとき、又は準備完了が予見できたときのみ、糸5のボビン7への供給が継続される。その後、全ての構成要素の準備が実際に完了したら、ボビン交換を行う。
【0053】
本発明は図示及び説明した実施例に限定されるものではない。特許請求の範囲内に属する変形、及び特徴の組み合わせは、それらの特徴が別々の実施例の中で明示され説明されていたとしても、用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 紡績機
2 紡績ステーション
3 巻取ステーション
4 スライバー
5 糸
6 糸引出装置
7 ボビン
8 糸処理装置
9 糸端前処理装置
10 糸吸引装置
11 糸分離装置
12 端部支持体
13 端部支持体
14 スリーブマガジン
15 スリーブ
16 スリーブ搬送ベルト
17 自動交換装置
18 ボビン搬送ベルト
19 ボビン及びスリーブ把持装置
20 機器コントローラ
21 自動交換装置コントローラ
22 紡績ステーションコントローラ
23 計算ユニット
24 負圧装置
【外国語明細書】