(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167825
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20221027BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221027BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20221027BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622B
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068327
(22)【出願日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】63/178,046
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チャンザイ・チー
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED21
3C158ED26
5F057AA28
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA22
5F057EA23
5F057EA25
5F057EA26
5F057EA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基材のケミカルメカニカルポリッシングのための改善されたコロイダルシリカ粒子を提供する。
【解決手段】変性シラン化コロイダルシリカ粒子は、エポキシ基を有するシラン化コロイダルシリカ粒子とアミン類の窒素との反応生成物であって、安定かつ調整可能な変性シラン化コロイダルシリカ粒子を形成する。変性シラン化コロイダルシリカ粒子は、各種基材のケミカルメカニカルポリッシングにおける研磨剤として使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含む、
シラン化コロイダルシリカ粒子。
【請求項2】
アミンが、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、(2-アミノエチル)塩化トリメチルアンモニウム塩酸塩、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、グアニジン、酢酸グアニジン及び1,1,3,3-テトラメチルグアニジンからなる群より選択される、請求項1記載のシラン化コロイダルシリカ粒子。
【請求項3】
シラン化コロイダルシリカ粒子が、下記構造:
【化5】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立に、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有する、請求項1記載のシラン化コロイダルシリカ粒子。
【請求項4】
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に、酸化剤、
任意選択的に、錯化剤、
任意選択的に、鉄(III)イオン源、
任意選択的に、腐食防止剤、
任意選択的に、界面活性剤、
任意選択的に、消泡剤、
任意選択的に、殺生物剤、及び
任意選択的に、pH調整剤
を含む、ケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項5】
シラン化コロイダルシリカ粒子が、下記構造:
【化6】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、置換アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、置換グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立に、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有する、請求項4記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項6】
金属及び誘電体を含む基材を提供することと、
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に、酸化剤、
任意選択的に、錯化剤、
任意選択的に、鉄(III)イオン源、
任意選択的に、腐食防止剤、
任意選択的に、界面活性剤、
任意選択的に、消泡剤、
任意選択的に、殺生物剤、及び
任意選択的に、pH調整剤
を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供することと、
研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供することと、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成することと、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は近傍のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上にケミカルメカニカルポリッシング組成物を分散させることとを含み、
ここで、金属の一部もしくは誘電体の一部又は金属及び誘電体の一部を基材から研磨除去する、
ケミカルメカニカルポリッシング方法。
【請求項7】
シラン化コロイダルシリカ粒子が、下記構造:
【化7】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、置換アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、置換グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立に、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有する、請求項6記載のケミカルメカニカルポリッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。より具体的には、本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ部分とアミン化合物の窒素との反応生成物である表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子に関し、基材のケミカルメカニカルポリッシングのための安定かつ調整可能な表面改質シラン化コロイドシリカ粒子を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
水性コロイダルシリカ粒子分散液は、例えば、耐摩耗性を改善するための被覆材料及び砥粒としてのケミカルメカニカルポリッシング(CMP)スラリーのような多くの用途に長い間使用されてきた。シリカは、CMP産業において最も広く使用されている砥粒である。水溶液中では、未処理のシリカ粒子の表面は、シラノール基で覆われ、未改質シリカの等電点は、約pH=2である。この理由のために、未改質シリカ粒子は、一般的には、多くの用途についてのpH範囲である約2~11のpH範囲で、負の表面電荷を有する。10以上の高いpHでは、シリカ粒子は、高度に負に荷電し、分散液は、粒子間の電荷反発により安定化される。pHが低下するのにつれて、分散液は、表面電荷の減少により、安定性が低下する。粒子分散液は、5~7のpH範囲で非常に不安定であり、通常、急速に凝集体を形成してしまう。加えて、多くの用途において配合物中に電解質が存在すると、粒子間の静電反発及びコロイド安定性が低下する。CMPスラリー及び被覆配合物を含む多くの用途では、pHが8以下である場合、配合物中のシリカ粒子の安定性を改善することが非常に望ましい。
【0003】
シラン改質は、シリカ粒子の表面特性を変化させ、種々の条件下での安定性を改善するのに広く使用されている。2つの最も一般的に使用されるタイプのシランは、エポキシシラン及びアミノシランである。エポキシ基は、ジオールに加水分解され、立体的安定性を提供することができると考えられている。立体的に安定化されたコロイドは、静電気的に安定化されたコロイドより電解質に対して感受性が低い。しかしながら、エポキシシラン改質粒子は、pHが低下すると不安定になる場合がある。
【0004】
アミノシランは、シリカ粒子を改質するのに広く使用されてきた別のグループのシランである。アミノ基の存在により、酸性pHで粒子の正電荷が増加する。米国特許第9,028,572号では、シリカ粒子の表面を改質するために、アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)が使用された。そのとき、粒子が、CMPスラリーのための砥粒として使用された。実施例からのデータから、アミノシラン改質シリカ粒子は、酸性pHで正に荷電していることが示された。しかしながら、表面改質アミノシランは、自己触媒性であり、多くの場合、粒子凝集をもたらす場合がある反応速度論を制御するのが困難である。加えて、アミノシラン分子間のオリゴマー種の形成により、粒子表面に付着したアミノシランの一部のみでの低い改質効力しかもたらされない場合がある。例えば、米国特許第9,028,572号の実施例9で計算されたデータから、シリカに付着したシランの割合は、50%程度に低くなる場合があることが示された。溶液中の遊離シランは、このような粒子の安定性及び研磨性能に有害な影響を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、基材のケミカルメカニカルポリッシングのための改善されたシラン化コロイダルシリカ粒子が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含む、シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。
【0007】
また、本発明は、下記構造:
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、置換アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、置換グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立に、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有する、シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。
【0008】
さらに、本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に、酸化剤、
任意選択的に、錯化剤、
任意選択的に、鉄(III)イオン源、
任意選択的に、腐食防止剤、
任意選択的に、界面活性剤、
任意選択的に、消泡剤、
任意選択的に、殺生物剤、及び
任意選択的に、pH調整剤
を含む、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に関する。
【0009】
さらに、本発明は、金属もしくは誘電体又は金属及び誘電体の組み合わせを含む基材を提供することと、
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に、酸化剤、
任意選択的に、錯化剤、
任意選択的に、鉄(III)イオン源、
任意選択的に、腐食防止剤、
任意選択的に、界面活性剤、
任意選択的に、消泡剤、
任意選択的に、殺生物剤、及び
任意選択的に、pH調整剤
を含む、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供することと、
研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供することと、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成することと、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は近傍のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上にケミカルメカニカルポリッシング組成物を分散させることとを含み、ここで、金属の一部もしくは誘電体の一部又は金属及び誘電体の一部を基材から研磨除去する、ケミカルメカニカルポリッシング方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、金属もしくは誘電体又は金属及び誘電体の組み合わせを含む基材を提供することと、
下記構造:
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、置換アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、置換グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立に、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有するシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に、酸化剤、
任意選択的に、錯化剤、
任意選択的に、鉄(III)イオン源、
任意選択的に、腐食防止剤、
任意選択的に、界面活性剤、
任意選択的に、消泡剤、
任意選択的に、殺生物剤、及び
任意選択的に、pH調整剤を含む、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供することと、
研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供することと、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成することと、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は近傍のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上にケミカルメカニカルポリッシング組成物を分散させることとを含み、ここで、金属の一部もしくは誘電体の一部又は金属及び誘電体の一部を基材から研磨除去する、ケミカルメカニカルポリッシング方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシラン化コロイダルシリカ粒子は、金属部又は層及び誘電体構造を含有する基材にケミカルメカニカルポリッシングを行う場合の砥粒として使用することができる。本発明のシラン化コロイダルシリカ粒子を、コロイダルシリカ粒子に結合したエポキシシランを改質し、かつエポキシシランに共有結合したアミンを改質することにより、研磨性能を制御するように調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して使用する場合、下記略語は、特に断りない限り、下記意味を有する。℃=セ氏、g=グラム、kPa=キロパスカル、Å=オングストローム、DI=脱イオン、ppm=百万分の一、m=メートル、mm=ミリメートル、nm=ナノメートル、mA=ミリアンペア、mM=ミリモル、μL=マイクロリットル、min=分、hr=時、rpm=回転数毎分、lb=ポンド、H=水素、Cu=銅、Mn=マンガン、Fe=鉄、N=窒素、O=酸素、W=タングステン、Ti=チタン、TiN=窒化チタン、Co=コバルト、HNO3=硝酸、KOH=水酸化カリウム、HO=ヒドロキシル、SiN=窒化ケイ素、Si-OH=シラノール基、IC=イオンクロマトグラフィー、wt%=重量%、IEP=等電点、BET=Bunauer-Emmett-Teller、RR=除去速度、Ex=実施例。
【0013】
「ケミカルメカニカルポリッシング」又は「CMP」という用語は、基材が化学力及び機械力のみにより研磨されるプロセスを指し、電気バイアスが基材に印加される電気化学メカニカルポリッシング(ECMP)とは区別される。「組成物」、「分散液」及び「スラリー」という用語は、本明細書全体を通して互換的に使用される。「シラン」及び「エポキシシラン」という用語は、本明細書全体を通して互換的に使用される。「官能基」という用語は、分子の反応性に決定的な影響を及ぼす分子の部分を意味する。「TEOS」という用語は、テトラエチルオルトシリカート(Si(OC2H5)4)から形成される二酸化ケイ素を意味する。「アルキレン」という用語は、エチレン:-CH2-CH2-のように二重結合の開裂によりアルケンから、又は異なる炭素原子から2個の水素原子を取り除くことによりアルカンから誘導されると見なされる二価の飽和脂肪族基又は部分を意味する。「メチレン基」という用語は、式:-CH2-を有するメチレン架橋又はメタンジイル基を意味する。ここで、1つの炭素原子が2つの水素原子に結合され、分子中の2つの別個の原子に単結合により連結される。「アルキル」という用語は、一般式:CnH2n+1(式中、「n」は、整数であり、「イル」の語尾は、水素を除去することにより形成されるアルカンの断片を意味する)を有する有機基を意味する。「部分」という用語は、分子の一部又は官能基を意味する。「a」及び「an」という用語は、単数形及び複数形の両方を指す。全ての%は、特に断りない限り、重量基準である。全ての数値範囲は、このような数値範囲が合計で100%になるように制約されることが論理的である場合を除いて、閾値を含み、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0014】
本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンの窒素との反応生成物を含む(好ましくは、これからなる)、シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。エポキシシラン化合物は、コロイダルシリカ粒子の表面上のシラノール基と反応して、シラノール基と共有シロキサン結合(Si-O-Si)を形成するか、又は代替的には、エポキシシラン化合物は、例えば、水素結合によりシラノール基に連結される。第2工程では、遊離エポキシ官能基を含む第1反応生成物を付加反応においてアミン化合物と反応させる。水素原子が、アミンの窒素原子から除去され、アミンからの窒素原子が、エポキシ官能基と反応して、最終的な改質コロイダルシリカ粒子を形成する。実質的に全てのアミン試薬が、エポキシ官能基と反応して、共有結合を形成する。
【0015】
本発明のコロイダルシラン化シリカ粒子は、好ましくは、所望の重量比のエポキシシランとDI水とを約0.5~2時間混合することにより、30~60%の予備加水分解シラン水溶液を調製することにより調製することができる。シラン表面改質を、30~60%の予備加水分解エポキシシラン水溶液をコロイダルシリカ粒子の分散液中に約1~10分間かけてゆっくり加えることにより行う。ついで、DI水をシラン改質コロイダルシリカ粒子と混合して、分散液を調製する。ついで、分散液を室温で少なくとも1時間さらにエージングすることができる。
【0016】
ついで、アミン溶液を室温で混合しながらシラン改質コロイダルシリカ粒子分散液に加える。この分散液を室温で約1~10日間又は50~60℃で約1~24時間エージングする。ついで、この分散液をDI水で希釈し、pHを酸、例えば、硝酸、塩酸、硫酸もしくはリン酸から選択される無機酸又は有機酸で、4~7の範囲のpHに調整する。
【0017】
表面改質粒子の特性及び性能は、改質により生成される表面積当たりの官能基の数により決まる場合がある。異なるサイズ又は形状を有する粒子は、異なる比表面積を有し、このため、それらは、同じ程度の官能化を達成するために、異なる量のエポキシシラン及びアミンを必要とする。この理由で、表面官能化の程度は、表面改質の間に加えられるエポキシシラン及びアミンの量と、表面反応に利用可能な総粒子表面積との両方に依存する。異なる比表面積を有する粒子間の比較を容易にするために、粒子の表面積1nm2当たりのエポキシシラン又はアミン分子の数は、加えられたエポキシシラン及びアミンの量から計算される。これを、下記式:
Ns=(Ws/Mw×NA)/(SSA×Wp×1018) 式(1)
Ns:粒子の表面積1nm2当たりのエポキシシラン又はアミンの数(分子数/nm2)
Ws:加えられたエポキシシラン又はアミンの重量(g)
Mw:エポキシシラン又はアミンの分子量(g/モル)
NA:アボガドロ数、6.022×1023mol-1
SSA:粒子の比表面積(m2/g)
Wp:溶液中の粒子の総重量
を使用して行うことができる。
【0018】
SSAは、BET表面積測定又はシアーズ滴定(determination of specific surface area of colloidal silica by titration with sodium hydroxide,G.W.Sears,Anal.Chem.1956,28,12,1981-1983.)により得ることができ、両方法とも、当技術分野において周知である。
【0019】
好ましくは、エポキシシラン化合物を混合し、コロイダルシリカ粒子と反応させて、表面積1nm2当たりシラン0.05~1分子、より好ましくは、表面積1nm2当たりシラン0.1~0.8分子、さらにより好ましくは、表面積1nm2当たりシラン0.15~0.6分子の、シラン粒子表面上エポキシシラン化合物分子数を提供する。
【0020】
エポキシシラン/シリカの重量比は、約0.0005~0.05、より好ましくは、0.001~0.025、さらにより好ましくは、0.002~0.02の範囲である。
【0021】
好ましくは、アミン化合物は、アミン1分子が粒子表面積1nm2当たりアミン0.05~1分子を含むような量、より好ましくは、粒子表面積1nm2当たりアミン0.1~0.8分子からの量で含まれる。アミンは、エポキシシランの方法と同じ方法で計算される。
【0022】
アミン/シリカの重量比は、約0.0001~0.05、より好ましくは、0.0002~0.02、さらにより好ましくは、0.0005~0.01の範囲にある。
【0023】
エポキシシラン又はアミンの重量(グラム)を、下記式
Ws=(Ns×SSA×Wp×1018/NA)×Mw 式(2)
Ns:粒子の表面積1nm2当たりのエポキシシラン又はアミンの数(分子数/nm2)
Ws:加えられたエポキシシラン又はアミンの重量(グラム)
Mw:エポキシシラン又はアミンの分子量(g/モル)
NA:アボガドロ数、6.022×1023mol-1
SSA:粒子の比表面積(m2/g)
Wp:溶液中の粒子の総重量
を使用して計算することができる。
【0024】
エポキシシランは、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びグリシドキシシランを含むが、これらに限定されない。好ましくは、エポキシシランは、グリシドキシシランである。例示的なグリシドキシシラン化合物は、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシランである。
【0025】
アミンは、付加反応において窒素から除去することができる少なくとも1つの水素原子を有するアミン化合物を含み、窒素がエポキシシランのエポキシ官能基と反応できるようにする。このようなアミンは、第一級又は第二級アミン官能基を有するアミン化合物を含む。好ましくは、アミンは、第一級アミン官能基を有する。例示的なアミンは、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、(2-アミノエチル)塩化トリメチルアンモニウム塩酸塩、トリエチレンテトラミン、テレエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、グアニジン、酢酸グアニジン及び1,1,3,3-テトラメチルグアニジンである。
【0026】
好ましくは、本発明のシラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミンとの反応生成物は、下記一般構造:
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、置換アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、置換グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立に、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有する改質シラン化コロイダルシリカ粒子である。
【0027】
好ましくは、R1及びR2は、直鎖C1~C5アルキレン基、例えば、-(CH2)t-(式中、tは、1~5の整数である)から独立に選択され、より好ましくは、R1は、C3アルキレン又はプロピレン、例えば、-(CH2)t-(式中、t=3である)であり、R2は、C1アルキレン又はメチレン、例えば、-(CH2)t-(式中、t=1である)である。好ましくは、R及びR’は、水素、ヒドロキシC1~C3アルキル、直鎖又は分岐鎖C1~C4アルキル、アルコキシC1~C4アルキル、置換又は無置換アミノC1~C4アルキルから独立に選択され、ここで、アミンの窒素が置換されている場合、好ましくは、この窒素は、1つ又は2つのC1~C2アルキル基により置換されており、R及びR’は、独立して、式:
H2N-[-(CH2)n-NH-]m-(CH2)n- (II)
[式中、n及びmは、独立して、2~4の整数である]
を有する部分とすることができる。より好ましくは、R及びR’は、水素、ヒドロキシC2~C3アルキル、無置換アミノC1~C4アルキル及び式:
H2N-[-(CH2)n-NH-]m-(CH2)n- (II)
[式中、nは、2であり、mは、2~4の整数である]
を有する部分から独立に選択される。
【0028】
本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子を種々の産業で使用することができることが想定されるが、好ましくは、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子は、金属、誘電体又は金属と誘電体との組み合わせを含む基材のケミカルメカニカルポリッシングにおける砥粒として使用される。本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、上記したように、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能性とアミンの窒素との反応生成物を含む(好ましくは、これからなる)シラン化コロイダルシリカ粒子を含む。
【0029】
好ましくは、エポキシ官能基とアミンとの反応生成物は、下記一般構造:
【化4】
[式中、R
1及びR
2は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
5アルキレンから独立に選択され、R及びR’は、水素、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖ヒドロキシC
1~C
4アルキル、直鎖又は分岐鎖アルコキシC
1~C
4アルキル、第四級アミノC
1~C
4アルキル、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖アミノC
1~C
4アルキル{ここで、置換アミノC
1~C
4アルキルの置換基は、置換アミノC
1~C
4アルキルの窒素上の直鎖又は分岐鎖C
1~C
4アルキル、置換又は無置換グアニジル基(ここで、置換グアニジル基の置換基は、置換グアニジル基の窒素上のC
1~C
2アルキルから選択される)を含む}から独立に選択され、R’及びRは、独立して、式:
H
2N-[-(CH
2)
n-NH-]
m-(CH
2)
n- (II)
{式中、n及びmは、独立に、2~4の整数であり、R及びR’は、それらの原子と共に、置換又は無置換の複素環式窒素及び炭素6員環(ここで、置換基は、C
1~C
2アルキル基から選択される)を形成することができる}を有する部分とすることができる]
を有する。
【0030】
好ましくは、R1及びR2は、直鎖C1~C5アルキレン基、例えば、-(CH2)t-(式中、tは、1~5の整数である)から独立に選択され、より好ましくは、R1は、C3アルキレン又はプロピレン、例えば、-(CH2)t-(式中、t=3である)であり、R2は、C1アルキレン又はメチレン、例えば、-(CH2)t-(式中、t=1である)である。好ましくは、R及びR’は、水素、ヒドロキシC1~C3アルキル、直鎖又は分岐鎖C1~C4アルキル、アルコキシC1~C4アルキル、置換又は無置換アミノC1~C4アルキルから独立に選択され、ここで、アミンの窒素が置換されている場合、好ましくは、この窒素は、1つ又は2つのC1~C2アルキル基により置換されており、R及びR’は、独立して、式:
H2N-[-(CH2)n-NH-]m-(CH2)n- (II)
[式中、n及びmは、独立して、2~4の整数である]
を有する部分とすることができる。より好ましくは、R及びR’は、水素、ヒドロキシC2~C3アルキル、無置換アミノC1~C3アルキル及び式:
H2N-[-(CH2)n-NH-]m-(CH2)n- (II)
[式中、nは、2であり、mは、2~4の整数である]
を有する部分から独立に選択される。
【0031】
改質シラン化コロイダルシリカ砥粒粒子は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物中に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物の0重量%超であるが、5重量%以下、好ましくは、0重量%超であるが、3重量%以下、より好ましくは、0重量%超であるが、2重量%以下、さらにより好ましくは、1~3重量%、最も好ましくは、1~2重量%の量で含まれる。
【0032】
好ましくは、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子は、動的光(DL)散乱技術により測定されたとき、10nm~150nm、より好ましくは、20nm~100nm、さらにより好ましくは、30nm~80nmの範囲の平均直径を有する。適切な粒径測定機器は、例えば、Malvern Instruments(Malvern, UK)から入手可能である。
【0033】
本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子のIEPは、酸性pHを有するスラリー中での凝集に抵抗する水性組成物中に十分に分散された改質シラン化コロイダルシリカ粒子を提供するために、pH4~8.5、好ましくは、pH5.5~8の範囲である。IEPを慣用の方法及び装置により測定することができる。粒子のIEPを決定するための方法の一例は、Mass Applied SciencesによるZetaAcoustic(ZA500)を使用する滴定によるものである。
【0034】
本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子を調製するのに使用されるコロイダルシリカ粒子は、球状、こぶ状、屈曲状、細長い又は繭状のコロイダルシリカ粒子とすることができる。好ましくは、コロイダルシリカ粒子の表面積は、20m2/g以上、より好ましくは、20m2/g~200m2/g、最も好ましくは、30m2/g~150m2/gである。このようなコロイダルシリカ粒子は市販されている。市販のコロイダルシリカ粒子の例は、両方ともFuso Chemical Co., LTDから入手可能なFuso BS-3及びFuso SH-3である。
【0035】
水もまた、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる。好ましくは、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に含有される水は、偶発的な不純物を制限するために、脱イオン水及び蒸留水のうちの少なくとも一方である。
【0036】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、1種以上の酸化剤を含む。ここで、酸化剤は、過酸化水素(H2O2)、モノ過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過フタル酸マグネシウム、過酢酸及び他の過酸、過硫酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硫酸塩、過酢酸、過ヨウ素酸塩、硝酸塩、鉄塩、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、ハロゲン、次亜塩素酸塩並びにそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、酸化剤は、過酸化水素、過塩素酸塩、過臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩及び過酢酸からなる群より選択される。最も好ましくは、酸化剤は、過酸化水素である。
【0037】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、0.01~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%、より好ましくは、1~3重量%の酸化剤を含有することができる。
【0038】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、1種以上の腐食防止剤を含むことができる。慣用の腐食防止剤を使用することができる。腐食防止剤の選択は、研磨される基材における金属による。腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1,6-ジメチル-1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリゾール又は1-(ヒドロキシルメチル)ベンゾトリアゾールを含むが、これらに限定されない。
【0039】
腐食防止剤を慣用の量でケミカルメカニカルポリッシング組成物に含ませることができる。好ましくは、腐食防止剤は、0.1~1000ppm、より好ましくは、50~500ppm、さらにより好ましくは、100~450ppmの量で含まれる。
【0040】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、鉄(III)イオン源を含むことができ、ここで、鉄(III)イオン源は、鉄(III)塩からなる群より選択される。最も好ましくは、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、鉄(III)イオン源を含有し、ここで、鉄(III)イオン源は、硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)である。
【0041】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に1~200ppm、好ましくは、5~150ppm、より好ましくは、7.5~125ppm、最も好ましくは、10~100ppmの鉄(III)イオンを導入するのに十分な鉄(III)イオン源を含有することができる。特に好ましいケミカルメカニカルポリッシング組成物において、鉄(III)イオン源は、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に10~150ppmを導入するのに十分な量で含まれる。
【0042】
任意選択的に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pH調整剤を含有する。好ましくは、pH調整剤は、無機及び有機のpH調整剤からなる群より選択される。より好ましくは、pH調整剤は、無機酸及び無機塩基からなる群より選択される。無機酸は、硝酸、硫酸、塩酸及びリン酸を含むが、これらに限らない。無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化アンモニウムを含むが、これらに限定されない。さらに好ましくは、pH調整剤は、硝酸及び水酸化カリウムからなる群より選択される。最も好ましくは、pH調整剤は、硝酸である。所望のpH又は4~7のpH範囲を維持するのに十分な量のpH調整剤をケミカルメカニカルポリッシング組成物に加える。
【0043】
好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物において、ケミカルメカニカルポリッシング組成物のpHは、基材のケミカルメカニカルポリッシング中の粒子安定性を維持するために、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子の水性組成物又は水性分散液のIEP未満である。さらに、改質シラン化コロイドシリカ粒子の水性分散液のIEP未満のpH値を有する本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物により、誘電体基材、例えば、TEOS及びSiNとの良好な物理的接触及び良好な研磨相互作用が可能となる。
【0044】
任意選択的に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、殺生物剤、例えば、Dow Chemical Companyによりそれぞれ製造された、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの有効成分を含有するKORDEK(商標)MLX(9.5~9.9%のメチル-4-イソチアゾリン-3-オン、89.1~89.5%の水及び≦1.0%の関連反応生成物)又はKATHON(商標)ICP III(KATHON及びKORDEKは、Dupont de Nemours Inc.の商標である)を含有する。
【0045】
殺生物剤が、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる場合、殺生物剤は、0.001重量%~0.1重量%、好ましくは、0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは、0.001重量%~0.01重量%、さらにより好ましくは、0.001重量%~0.005重量%の量で含まれる。
【0046】
任意選択的に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。慣用の界面活性剤をケミカルメカニカルポリッシング組成物に使用することができる。このような界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。このような界面活性剤の混合物も、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に使用することができる。わずかな実験を用いて界面活性剤の種類又は組み合わせを決定し、ケミカルメカニカルポリッシング組成物の所望の粘度を達成することができる。
【0047】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、消泡剤、例えば、エステル、エチレンオキシド、アルコール、エトキシラート、ケイ素化合物、フッ素化合物、エーテル、グリコシド及びそれらの誘導体を含む非イオン性界面活性剤、アニオン性エーテルサルファート、例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)並びにカリウム塩及びアンモニウム塩も含むことができる。
【0048】
界面活性剤及び消泡剤を本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に、慣用の量又は所望の性能を提供するように調整された量で含ませることができる。例えば、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、0.0001重量%~0.1重量%、好ましくは、0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは、0.01重量%~0.05重量%、さらにより好ましくは、0.01重量%~0.025重量%の界面活性剤、消泡剤又はそれらの混合物を含有することができる。
【0049】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物を種々の基材を研磨するのに使用することができる。本発明の改質シラン化コロイダルシリカ砥粒粒子は、所定の基材又は材料、例えば、誘電体について調整可能である。このような誘電体材料は、TEOS及びSiNを含むが、これらに限定されない。以下の実施例に例示されるように、改質シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシシランもしくはアミン又はエポキシシランとアミンとアミンとの組み合わせを変化させることにより又はケミカルメカニカルポリッシング組成物のpHを変化させることにより、改質シラン化コロイダルシリカ粒子を、研磨選択性、例えば、TEOS、SiN又はSiN上のTEOSあるいはTEOS上のSiNの研磨又はRRの改善を達成するように調整することができる。わずかな実験を行い、所望の誘電体についての所望の研磨性能が、エポキシシランとアミンとの組み合わせ並びにそれぞれの量及びpHのいずれにより達成できるかを決定することができる。
【0050】
好ましくは、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ砥粒は、TEOS、SiN又はTEOS及びSiNの両方を含む基材を研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる。しかしながら、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を金属材料、例えば、Cu、W、Ti、TiN、Ta、TaN、Co及び他の金属を研磨するのに使用することができることが想定される。
【0051】
本発明の研磨方法は、研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供することと、ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成することと、ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は近傍のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上に本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物を分散させることとを含み、ここで、誘電体材料の少なくとも一部を基材から研磨除去する。
【0052】
好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物により基材を研磨する方法において、基材は、金属及び誘電体を含む。より好ましくは、提供される基材は、金属及び誘電体、例えば、TEOS、SiN又は2つの誘電体材料の組み合わせを含む半導体基材である。最も好ましくは、提供される基材は、誘電体、例えば、TEOSに形成された少なくとも1つの孔及びトレンチに堆積された金属を含む半導体基材である。
【0053】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、当技術分野において公知の任意の適切な研磨パッドによることができる。当業者であれば、本発明の方法で使用するのに適したケミカルメカニカルポリッシングパッドを選択することができる。より好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、織布及び不織布研磨パッドから選択される。さらにより好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリウレタン研磨層を含む。最も好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。好ましくは、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨表面上に少なくとも1つの溝を有する。
【0054】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は近傍に提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上に分散される。
【0055】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面において、研磨される基材の表面に垂直な0.69~34.5kPaのダウンフォースで動的接触が生成される。
【0056】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、≧400Å/分、好ましくは、≧1000Å/分、最も好ましくは、≧3000Å/分のTEOS除去速度を有する。好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、≧100Å/分、好ましくは、≧500Å/分、より好ましくは、≧700Å/分のSiN除去速度を有する。好ましくは、研磨は、CETR研磨ツールにおいて、223回転/分のプラテン速度、221回転/分のキャリア速度、40mL/分のケミカルメカニカルポリッシング組成物流速、27.6kPaの見掛けのダウンフォースで行われる。ここで、ケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。
【実施例0057】
下記実施例は、本発明をさらに例証することを意図しており、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0058】
実施例1
本発明の組成物のTEOS除去速度の調整性
50重量%の予備加水分解シラン水溶液を、等重量のシラン及びDI水を1時間混合することにより調製した。各スラリーについて、GPTMSを含有する所望量の50%予備加水分解シラン水溶液をFuso BS-3粒子の分散液に5分間かけてゆっくり加えることにより、シラン表面改質を行った。ついで、DI水をシラン改質Fuso BS-3コロイダルシリカ粒子と混合して、18重量%の粒子分散液を調製した。ついで、この分散液を室温で少なくとも1時間さらにエージングした。
【0059】
エタノールアミン又はブチルアミンを含有するアミン水溶液を、混合しながら、上記調製された粒子分散液に加えた。この分散液を室温で5日間エージングし、ついで、55℃で24時間さらにエージングした。ついで、この分散液をDI水で希釈し、pHを5質量%のHNO3溶液でpH4.5に調整した。スラリー中の最終粒子濃度は2重量%であった。この分散液のpHは、数日間にわたってより高いpH値に向かって変動した。研磨時の分散液の最終pH値を測定した。pH値を以下の表1に示す。
【0060】
平均粒径を、さらに希釈することなく、Malvern Zetasizer Nano ZSを使用して測定した。IEPを、Mass Applied SciencesによるZetaAcoustic(ZA500)を使用する滴定により得た。
【0061】
粒子調製中のシラン及びアミンの量の単位は、表に列記されたように、FUSO Chemical Co.,Ltd.により提供されたFuso BS-3シリカ粒子の表面積(78m2/g)に基づく1nm2当たりの分子数である。シラン及びアミンについての1nm2当たりの分子を下記式:
Ns=(Ws/Mw×NA)/(SSA×Wp×1018)
Ns:粒子の表面積1nm2当たりのGPTMS、エタノールアミン又はブチルアミンの数(分子数/nm2)
NA:アボガドロ数、6.022×1023mol-1
GPTMSのMw=236.34g/mol
エタノールアミンのMw=61.08g/mol
ブチルアミンのMw=73.14g/mol
SSA=78m2/g
Wp=2重量%
Ws=表1に示されたとおり
を使用して決定した。
【0062】
TEOS研磨速度を、27.6kPaのダウンフォース、223/221rpmのプラテン/キャリア速度及び40mL/分のスラリー流速で、VP6000-1010パッドを有するCETR研磨ツールを使用して、TEOSウェハ(Pure Wafer,San Jose,CA)を研磨することにより得た。研磨パッドは、各研磨ウェハについて、7lbのダウンフォースでSaesol AK45 Diskを使用し、ならし運転中に3分間及び装着外で30秒調整した。TEOS研磨除去速度をポリッシング組成物の物性と共に表1に列記する。
【0063】
【0064】
IEP及び粒径データから、全ての組成物は、64~71nmの範囲の平均粒径で十分に分散されていたことが示された。
【0065】
研磨データから、本発明の組成物のTEOS除去速度は、表1に示されたように、GPTMS及びアミンの量を独立に変化させることにより高度に調整可能であることが示された。
【0066】
データから、TEOS除去速度は最初に、GPTMSのエポキシ部分のエポキシ官能基と反応したアミンの量に伴って向上したことが示された。TEOS除去速度は、加えられるアミンの量が増加するのにつれて低下し始めた。
【0067】
理論に束縛されるものではないが、ポリッシング組成物中の過剰の遊離アミンは、エポキシ官能基と反応せず、代わりに、TEOS基材上に吸着され、正に荷電した粒子と負に荷電したTEOS基材との間の引力を低下させ、このため、除去速度を低下させたと考えられる。
【0068】
実施例2
本発明のポリッシング組成物のTEOS及びSiN除去速度の調整性
複数の50重量%の予備加水分解シラン水溶液を、等量のシラン及びDI水を1時間混合することにより調製した。GPTMSを含有する50%の予備加水分解シラン水溶液をFuso BS-3粒子の分散液に5分間かけてゆっくり加えることにより、シラン表面改質を行った。ついで、DI水をシラン改質Fuso BS-3コロイダルシリカ粒子と混合して、18重量%の分散液を調製した。ついで、この分散液を室温で1時間さらにエージングした。
【0069】
10重量%のアミン溶液を、混合しながら、上記調製された粒子分散液に加えた。この分散液を室温で1時間エージングし、ついで、55℃で24時間さらにエージングした。
【0070】
粒子調製中のシランの量は、1nm2当たりに0.6分子であった。粒子調製中のアミンの量は、1nm2当たりに0.5分子であった。1nm2当たりの分子数は、Fuso BS-3シリカ粒子の表面積(78m2/g)に基づいた。
【0071】
ついで、改質粒子の分散液をDI水で希釈し、pHを5%のHNO3液でIEPを下回るように調整して、粒子の荷電を負から正に反転させた。IEPは、Mass Applied SciencesによるZetaAcoustic(ZA500)を使用する滴定により得た。
【0072】
スラリー中の最終粒子濃度は2重量%であった。スラリーのpHをIEP未満に維持するための追加のpH調整を、5重量%のHNO3又は5重量%のKOHを用いて行った。研磨時のスラリーの最終pH値を測定した。pH値を表2に示す。
【0073】
TEOS及びSiN研磨速度を、27.6kPaのダウンフォース、223/221rpmのプラテン/キャリア速度及び40mL/分のスラリー流速で、VP6000-1010パッドを有するCETR研磨ツールを使用して、ウェハを研磨することにより得た。研磨パッドを各研磨ウェハについて、7lbのダウンフォースでSaesol AK45 Diskを使用し、ならし運転中に3分間及び装着外で30秒調整した。TEOS及びSiN研磨除去速度並びにTEOS/SiN選択性を表2に列記する。
【0074】
【0075】
研磨データから、本発明の組成物のSiN及びTEOS両方の除去速度は、GPTMSアミンの種類及びスラリーのpHを変化させることにより調整可能であることが示された。
【0076】
データから、pH=6.55でのEx2-8についてはTEOS/SiN選択性がわずかに上昇したものの、GPTMSとジアミンであるEDA及びDMAPAとの組み合わせを使用したポリッシング組成物がpH値の上昇に伴ってSiN除去速度の向上を示したことが示された。多くの場合、CMPプロセス中に層間誘電体を除去する際には、より低いTEOS/SiN選択性が望ましい。
【0077】
実施例3
グリシドキシシラン被覆シリカ粒子とのエチレンジアミン反応
複数の50重量%の予備加水分解シラン水溶液を、等量のシラン及びDI水(wt/wt)を1時間混合することにより調製した。ついで、50%の予備加水分解シラン水溶液をコロイダルシリカ粒子分散液に5分間かけてゆっくり加えることにより、コロイダルシリカ粒子のシラン表面改質を行った。ついで、DI水をシラン改質コロイダルシリカ粒子と混合して、18重量%の粒子濃縮物を調製した。ついで、この分散液を室温で30分~1時間さらにエージングした後、アミンを加えた。
【0078】
アミン水溶液を、混合しながら、上記調製されたシラン表面改質コロイドシリカ粒子分散液に加えた。
【0079】
粒子調製中に溶液に加えられたシラン及びアミンの総量を、実施例1と同様の式を使用して、シリカ粒子上の表面被覆率に変換した。表面被覆率の単位は、FUSO Chemical Co., Ltd.により提供されたFuso BS-3又はSH-3シリカ粒子の表面積(78m2/g)に基づいて、1nm2当たりの分子数である。
【0080】
ついで、この分散液を55℃で20時間さらにエージングした。ついで、改質シリカ粒子を、Sorvall MTX 150 Ultra-Centrifuge、90Krpm、45分、25℃での超遠心分離を使用して分離した。
【0081】
上清中の遊離アミンを、イオンクロマトグラフィーを使用して、下記プロセス詳細で分析した。
機器:Dionex ICS 5000+システム
カラム:Dionex IonPac(登録商標) CS-17 2×250mm、CG-17 2×50mm
カラム温度:30℃
検出:サプレッション伝導率
サプレッサー電流:CERS 2mmサプレッサー(5mA)
注入容量:10μL
溶出液:Dionex EGシステムを介して送られる6mMのメタンスルホン酸
【0082】
3つの標準及び0.99以上の相関係数を有するブランクからなる較正曲線を確立した後、サンプル又は一連のサンプルを処理した。各サンプルを2回処理し、2回の処理間の差は10%未満であった。最終アミン濃度を2回の処理の平均とした。
【0083】
結果を表3に示す。
【0084】
【0085】
結果から、アミンをGPTMS改質粒子と反応させた後、比較的少量のアミンが分散液中に遊離のままであることが示された。実質的に全てのアミンが、GPTMS改質粒子のエポキシ官能基と反応した。