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特開2022-167827表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167827
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20221027BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221027BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221027BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622B
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068329
(22)【出願日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】63/178,061
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チャンザイ・チー
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ・ガンス・ティヴァナヤガム
(72)【発明者】
【氏名】クワド・テッテイ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED21
3C158ED26
5F057AA28
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA22
5F057EA23
5F057EA25
5F057EA26
5F057EA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中性~アルカリ性pHまでで安定性が改善され、基材のケミカルメカニカルポリッシングが改善されるコロイダルシリカ粒子を提供する。
【解決手段】改質シラン化コロイダルシリカ粒子は、エポキシ部分を有するシラン化コロイダルシリカ粒子とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物であり、安定な改質シラン化コロイダルシリカ粒子を形成する。改質シラン化コロイダルシリカ粒子を、種々の基材のケミカルメカニカルポリッシングにおける砥粒として使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含む、シラン化コロイダルシリカ粒子。
【請求項2】
アミノ酸が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、シスチン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、リシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、スレオニン及びバリンからなる群より選択される、請求項1記載のシラン化コロイダルシリカ粒子。
【請求項3】
シラン化コロイダルシリカ粒子が、下記構造:
【化5】

[式中、R及びRが、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rが、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有する、請求項1記載のシラン化コロイダルシリカ粒子。
【請求項4】
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に酸化剤、
任意選択的に錯化剤、
任意選択的に鉄(III)イオン源、
任意選択的に腐食防止剤、
任意選択的に界面活性剤、
任意選択的に消泡剤、
任意選択的に殺生物剤、及び
任意選択的にpH調整剤を含む、ケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項5】
シラン化コロイダルシリカ粒子が、下記構造:
【化6】

[式中、R及びRが、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rが、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有する、請求項4記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項6】
金属及び誘電体を含む基材を提供する工程と;
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に酸化剤、
任意選択的に錯化剤、
任意選択的に鉄(III)イオン源、
任意選択的に腐食防止剤、
任意選択的に界面活性剤、
任意選択的に消泡剤、
任意選択的に殺生物剤、及び
任意選択的にpH調整剤、を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供する工程と;
研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供する工程と;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成する工程と;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は同界面付近のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上にケミカルメカニカルポリッシング組成物を分注する工程とを含み、
ここで、金属の一部もしくは誘電体の一部、又は金属及び誘電体の一部を基材から研磨除去する、ケミカルメカニカルポリッシング方法。
【請求項7】
シラン化コロイダルシリカ粒子が、下記構造:
【化7】

[式中、R及びRが、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rが、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有する、請求項6記載のケミカルメカニカルポリッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。より具体的には、本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ部分とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物である表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子に関し、中性からアルカリ性pHまで安定であり、基材のケミカルメカニカルポリッシングに使用することができる表面改質シラン化コロイダルシリカ粒子を提供する。
【0002】
発明の背景
水溶液中では、シリカ粒子の表面は、シラノール基で覆われ、未改質シリカの等電点は、pH=2である。10以上の高いpHでは、シリカ粒子は、高度に負に荷電し、分散液は、粒子間の電荷反発により安定化される。pHが低下するのにつれて、分散液は、表面電荷の減少により、安定性が低下する。非改質コロイダルシリカについて、5.0~8.5のpH範囲で最も不安定である。加えて、多くの用途において分散液中に電解質が存在すると、粒子間の静電反発及びコロイド安定性が低下し、安定性が低下する。ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)スラリーを含む多くの用途では、pHが8.5以下である場合、配合物中のシリカ粒子の安定性を改善することが非常に望ましい。
【0003】
シラン改質は、コロイダルシリカ粒子の表面特性を変化させ、種々の条件下での安定性を改善するのに広く使用されている。2つの一般的に使用されるタイプのシランは、エポキシシラン及びアミノシランである。米国特許第7,544,726号明細書に、エポキシシランを含む水性シラン化コロイダルシリカ粒子分散液を製造する方法が開示されている。このようなエポキシ基は、最終的には、立体的に安定化されたコロイダルシリカ粒子を提供するジオールに加水分解される場合がある。立体的に安定化されたコロイダルシリカ粒子は、静電気的に安定化されたコロイドより電解質に対して感受性が低い。しかしながら、エポキシシラン改質粒子は、pHが低下し始めると不安定になる場合がある。
【0004】
中性から酸性のpHで、コロイダルシリカ粒子を安定化させるための別のアプローチは、粒子をカチオン性部分で改質して、粒子を正に荷電させること、例えば、米国特許第9,028,572号明細書に開示されているものである。しかしながら、このアプローチは、pHが7未満である場合に最も良く機能するにすぎない。
【0005】
中性~穏和なアルカリ性pHでの、コロイダルシリカ粒子の安定性を改善するための更なるアプローチは、チオール官能基を有するシランから誘導されるスルホン酸官能化、例えば、Fuso PL-2L-Dコロイダルシリカ粒子を使用することである。しかしながら、このアプローチにより、少量の硫黄を導入され、一部のCMP用途に望ましくない場合がある。
【0006】
したがって、中性~アルカリ性pHまでで安定性が改善され、基材のケミカルメカニカルポリッシングが改善されるコロイダルシリカ粒子が必要とされている。
【0007】
発明の概要
本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含む、シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。
【0008】
また、本発明は、下記構造:
【化1】

[式中、R及びRは、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rは、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有する、シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。
【0009】
さらに、本発明は、
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に酸化剤、
任意選択的に錯化剤、
任意選択的に鉄(III)イオン源、
任意選択的に腐食防止剤、
任意選択的に界面活性剤、
任意選択的に消泡剤、
任意選択的に殺生物剤、及び
任意選択的にpH調整剤を含む、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に関する。
【0010】
さらに、本発明は、
金属もしくは誘電体、又は金属及び誘電体の組み合わせを含む基材を提供する工程と;
シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含むシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に酸化剤、
任意選択的に錯化剤、
任意選択的に鉄(III)イオン源、
任意選択的に腐食防止剤、
任意選択的に界面活性剤、
任意選択的に消泡剤、
任意選択的に殺生物剤、及び
任意選択的にpH調整剤、を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供する工程と;
研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供する工程と;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成する工程と;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は同界面付近のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上にケミカルメカニカルポリッシング組成物を分注する工程とを含み、ここで、金属の一部もしくは誘電体の一部、又は金属及び誘電体の一部を基材から研磨除去する、ケミカルメカニカルポリッシング方法に関する。
【0011】
さらに、本発明は、
金属もしくは誘電体、又は金属及び誘電体の組み合わせを含む基材を提供する工程と;
下記構造:
【化2】

[式中、R及びRは、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rは、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有するシラン化コロイダルシリカ粒子、
水、
任意選択的に酸化剤、
任意選択的に錯化剤、
任意選択的に鉄(III)イオン源、
任意選択的に腐食防止剤、
任意選択的に界面活性剤、
任意選択的に消泡剤、
任意選択的に殺生物剤、及び
任意選択的にpH調整剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供する工程と、
研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供する工程と、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成する工程と、
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は同界面付近のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上にケミカルメカニカルポリッシング組成物を分注する工程とを含み、ここで、金属の一部もしくは誘電体の一部、又は金属及び誘電体の一部を基材から研磨除去する、ケミカルメカニカルポリッシング方法に関する。
【0012】
本発明のシラン化コロイダルシリカ粒子は、金属機構又は層及び誘電体構造を含有する基材をケミカルメカニカルポリッシングする際の砥粒として使用することができる。本発明のシラン化コロイダルシリカ粒子は、中性~アルカリ性pHで安定である。
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して使用する場合、下記略語は、特に断りない限り、下記意味を有する。℃=セ氏、g=グラム、kPa=キロパスカル、Å=オングストローム、DI=脱イオン化、ppm=百万分の一、m=メートル、mm=ミリメートル、nm=ナノメートル、mA=ミリアンペア、mM=ミリモル(millimole)、μL=マイクロリットル、μS=マイクロシーメンス、min=分、hr=時、rpm=1分当たりの回転数、lbs=ポンド、H=水素、Cu=銅、Mn=マンガン、Fe=鉄、N=窒素、O=酸素、W=タングステン、Ti=チタン、TiN=窒化チタン、Co=コバルト、HNO=硝酸、KOH=水酸化カリウム、HO=ヒドロキシル、Si-OH=シラノール基、GPTMS=3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、IC=イオンクロマトグラフィー、wt%=重量%、BET=Bunauer-Emmett-Teller、RR=除去速度、Ex=実施例、及びDF=下向きの力。
【0014】
「ケミカルメカニカルポリッシング」又は「CMP」という用語は、基材が化学力及び機械力のみにより研磨されるプロセスを指し、電気バイアスが基材に印加される電気化学メカニカルポリッシング(ECMP)とは区別される。「組成物」、「分散液」及び「スラリー」という用語は、本明細書全体を通して互換的に使用される。「シラン」及び「エポキシシラン」という用語は、本明細書全体を通して互換的に使用される。「部分」という用語は、分子の一部を意味し、官能基である必要はない。「官能基」という用語は、分子の反応性に決定的な影響を及ぼす分子の部分を意味する。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、特に断りない限り、D異性体及びL異性体の両方を指し、特に断りない限り、αアミノ酸及びβアミノ酸を指す。「TEOS」という用語は、テトラエチルオルトシリケート(Si(OC)から形成される二酸化ケイ素を意味する。「アルキレン」という用語は、二重結合例えばエチレン:-CH-CH-のように、二重結合を開くことによりアルケンから誘導されると看做される二価の飽和脂肪族基又は部分、又はアルカンの異なる炭素原子から2個の水素原子を取り除くことによりアルカンから誘導されると看做される二価の飽和脂肪族基又は部分を意味する。「メチレン基」という用語は、式:-CH-を有するメチレン架橋又はメタンジイル基を意味し、ここで、炭素原子は、2つの水素原子と結合し、分子中の2つの別個の原子に単結合により連結される。「アルキル」という用語は、一般式:C2n+1(式中、「n」は、整数であり、「イル」の語尾は、水素を除去することにより形成されるアルカンの断片を意味する)を有する有機基を意味する。「部分」という用語は、分子の一部又は官能基を意味する。「a」及び「an」という用語は、単数形及び複数形の両方を指す。全ての%は、特に断りない限り、重量による。全ての数値範囲は、このような数値範囲が合計で100%になるように制約されることが論理的である場合を除いて、数値範囲の末端を含み、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0015】
本発明は、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基における窒素との反応生成物を含む(好ましくは、これからなる)、シラン化コロイダルシリカ粒子に関する。エポキシシラン化合物は、コロイダルシリカ粒子の表面上のシラノール基と反応して、シラノール基と共有シロキサン結合(Si-O-Si)を形成するか、又は代替的には、エポキシシラン化合物は、水素結合などによりシラノール基に連結される。第2の工程では、遊離エポキシ官能基を含む第1の反応生成物を、付加反応においてアミノ酸化合物と反応させる。水素原子がアミノ酸のアミノ基における窒素原子から除去され、アミノ酸からの窒素原子がエポキシ官能基と反応して、最終的な改質コロイダルシリカ粒子を形成する。実質的に全てのアミノ酸試薬が、エポキシ官能基と反応して、共有結合を形成する。
【0016】
本発明のコロイダルシラン化シリカ粒子は、好ましくは、望ましい重量%量のエポキシシランとDI水とを約0.5~2時間混合することにより、30~60% 予備加水分解シラン水溶液を調製することにより調製することができる。シラン表面改質を、30~60%予備加水分解エポキシシラン水溶液をコロイダルシリカ粒子の分散液中に約1~10分間かけてゆっくり加えることにより行う。ついで、DI水をシラン改質コロイダルシリカ粒子と混合して、分散液を調製する。ついで、分散液を室温で少なくとも30分間さらに熟成することができる。
【0017】
ついで、アミノ酸水溶液を、室温で混合しながらシラン改質コロイダルシリカ粒子分散液に加える。この分散液を室温で約1~10日間、又は50~60℃で約1~24時間、熟成する。ついで、この分散液をDI水で希釈し、pHを塩基、例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムから選択される無機塩基で、7以上の範囲のpHに調整する。
【0018】
表面改質粒子の特性及び性能は、改質により生成される表面積当たりの官能基の数により決まり得る。異なるサイズ又は形状を有する粒子は、異なる比表面積を有し、このため、それらは、同じ程度の官能化を達成するために、異なる量のエポキシシラン及びアミノ酸を必要とする。この理由で、表面官能化の程度は、表面改質の間に加えられるエポキシシラン及びアミノ酸の量と、表面反応に利用可能な総粒子表面積との両方により決まる。異なる比表面積を有する粒子間の比較を容易にするために、粒子の表面積1nm2当たりのエポキシシラン又はアミノ酸分子の数は、加えられたエポキシシラン及びアミノ酸の量から計算される。これを、下記等式:
Ns=(Ws/Mw×NA)/(SSA×Wp×1018) 等式(1)
Ns:粒子の表面積1nm2当たりのエポキシシラン又はアミノ酸の数(分子数/nm2
Ws:加えられたエポキシシラン又はアミノ酸の重量(g)
Mw:エポキシシラン又はアミノ酸の分子量(g/モル)
NA:アボガドロ数、6.022×1023mol-1
SSA:粒子の比表面積(m2/g)
Wp:溶液中の粒子の総重量
を使用して行うことができる。
【0019】
SSAは、BET表面積測定又はシアーズ滴定(determination of specific surface area of colloidal silica by titration with sodium hydroxide, G. W. Sears, Anal. Chem. 1956, 28, 12, 1981-1983.)により得ることができ、両方法とも当技術分野において周知である。
【0020】
好ましくは、エポキシシラン化合物をコロイダルシリカ粒子と混合し反応させて、表面積1nm2当たりに0.05~3分子のシラン、より好ましくは、表面積1nm2当たりに0.1~2.4分子のシラン、さらにより好ましくは、表面積1nm2当たりに0.6~1.2分子のシランの粒子表面上に1分子のエポキシシラン化合物を提供する。
【0021】
エポキシシラン/シリカの重量比は、約0.0005~0.13、より好ましくは、0.004~0.1、さらにより好ましくは、0.02~0.06の範囲にある。
【0022】
好ましくは、アミノ酸は、1分子のアミノ酸が粒子表面積1nm2当たりに0.05~3分子のアミノ酸、より好ましくは、粒子表面積1nm2当たりに0.1~2.4分子のアミノ酸の範囲にあるような量で含まれる。アミノ酸は、エポキシシランの方法と同じ方法で計算される。
【0023】
アミノ酸/シリカの重量比は、約0.0001~0.1、より好ましくは、0.001~0.1、さらにより好ましくは、0.008~0.04の範囲にある。
【0024】
ここで特定されたアミノ酸の量は、シリカ粒子を改質するためのものである。同じか又は異なるタイプのいずれかの追加のアミノ酸を、このような改質シリカ粒子を使用する化学成分として、ケミカルメカニカルポリッシングスラリーに加えることができる。
【0025】
エポキシシラン又はアミノ酸の重量(グラム)を、下記等式
Ws=(Ns×SSA×Wp×1018/NA)×Mw 等式(2)
Ns:粒子の表面積1nm2当たりのエポキシシラン又はアミノ酸の数(分子数/nm2
Ws:加えられたエポキシシラン又はアミノ酸の重量(グラム)
Mw:エポキシシラン又はアミノ酸の分子量(g/モル)
NA:アボガドロ数、6.022×1023mol-1
SSA:粒子の比表面積(m2/g)
Wp:溶液中の粒子の総重量
を使用して計算することができる。
【0026】
エポキシシランは、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びグリシドキシシランを含むが、これらに限定されない。好ましくは、エポキシシランは、グリシドキシシランである。例示的なグリシドキシシラン化合物は、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシランである。
【0027】
アミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、シスチン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、リシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、スレオニン及びバリンを含むが、これらに限定されない。好ましくは、アミノ酸は、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、リシン、アスパラギン、グルタミン、メチオニン、フェニルアラニン及びチロシンからなる群より選択される。より好ましくは、アミノ酸は、β-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸及びグリシンからなる群より選択される。
【0028】
好ましくは、本発明のシラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸との反応生成物は、下記一般構造:
【化3】

[式中、R及びRは、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rは、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有する改質シラン化コロイダルシリカ粒子である。
【0029】
好ましくは、R及びRは、直鎖C~Cアルキレン基、例えば、-(CH-(式中、tは、1~5の整数である)から独立に選択され、より好ましくは、Rは、Cアルキレン又はプロピレン、例えば、-(CH-(式中、t=3である)であり、Rは、Cアルキレン又はメチレン、例えば、-(CH-(式中、t=1である)である。好ましくは、Rは、CH-、HNH-及びカルボキシ(C~C)アルキルからなる群より選択される部分である。
【0030】
本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子を種々の産業で使用することができることが想定されるが、好ましくは、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子は、金属、誘電体、又は金属と誘電体との組み合わせを含む基材のケミカルメカニカルポリッシングにおける砥粒として使用される。本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、前記のように、シラン化コロイダルシリカ粒子のエポキシ官能基とアミノ酸のアミノ基の窒素との反応生成物を含む(好ましくは、これからなる)シラン化コロイダルシリカ粒子を含む。
【0031】
好ましくは、エポキシ官能基とアミノ酸との反応生成物は、下記一般構造:
【化4】

[式中、R及びRは、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキレンから独立して選択され、Rは、CH-、NH-C(O)-CH-、NH-C(O)-(CH-、グアニジル、HN-CH-、N-(CH-、HO-CH-、HS-CH-、CH-S-(CH-、カルボキシ(C~C)アルキル、ベンジル及びヒドロキシベンジルからなる群より選択される部分である]
を有する。
【0032】
好ましくは、R及びRは、直鎖C~Cアルキレン基、例えば、-(CH-(式中、tは、1~5の整数)から独立に選択され、より好ましくは、Rは、直鎖Cアルキレン又はプロピレン、例えば、-(CH-(式中、t=3である)であり、Rは、Cアルキレン又はメチレン、例えば、-(CH-(式中、t=1)である。好ましくは、Rは、CH-、HNH-及びカルボキシ(C~C)アルキルからなる群より選択される部分である。
【0033】
改質シラン化コロイダルシリカ砥粒粒子は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物中に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物の0重量%超、ただし、20重量%以下、好ましくは、1重量%以上、ただし、20重量%以下、より好ましくは、2重量%、ただし、18重量%以下、さらにより好ましくは、2~15重量%、最も好ましくは、2~10重量%の量で含まれる。
【0034】
好ましくは、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子は、動的光(DL)散乱技術により測定された場合、10nm~100nm、より好ましくは、20nm~80nm、さらにより好ましくは、30nm~60nmの範囲の平均直径を有する。適切な粒径測定機器は、例えば、Malvern Instruments(Malvern, UK)から入手可能である。
【0035】
本発明の改質シラン化コロイダルシリカ粒子を調製するのに使用されるコロイダルシリカ粒子は、球状、こぶ状、屈曲状、細長い又は繭状のコロイダルシリカ粒子であることができる。好ましくは、コロイダルシリカ粒子の表面積は、20m2/g以上、より好ましくは、20m2/g~200m2/g、最も好ましくは、30m2/g~150m2/gである。このようなコロイダルシリカ粒子は市販されている。市販のコロイダルシリカ粒子の例は、Fuso Chemical Co., LTDから入手可能なFuso BS-3、Fuso SH-3及びFuso PL-2Lである。
【0036】
また、水も、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる。好ましくは、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に含有される水は、偶発的な不純物を制限するために、脱イオン水及び蒸留水のうちの少なくとも一方である。
【0037】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、1種以上の酸化剤を含み、ここで、酸化剤は、過酸化水素(H)、モノ過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過フタル酸マグネシウム、過酢酸及び他の過酸、過硫酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硫酸塩、過酢酸、過ヨウ素酸塩、硝酸塩、鉄塩、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、ハロゲン、次亜塩素酸塩並びにそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、酸化剤は、過酸化水素、過塩素酸塩、過臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩及び過酢酸からなる群より選択される。最も好ましくは、酸化剤は、過酸化水素である。
【0038】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、0.01~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%、より好ましくは、1~3重量% 酸化剤を含有することができる。
【0039】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、1種以上の腐食防止剤を含むことができる。従来の腐食防止剤を使用することができる。腐食防止剤の選択を、研磨される基材における金属により決めることができる。腐食防止剤は、アデニン、ベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1,6-ジメチル-1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリゾール又は1-(ヒドロキシルメチル)ベンゾトリアゾールを含むが、これらに限定されない。
【0040】
腐食防止剤を、従来の量でケミカルメカニカルポリッシング組成物に含ませることができる。好ましくは、腐食防止剤は、0.1~1000ppm、より好ましくは、50~500ppm、さらにより好ましくは、100~450ppmの量で含まれる。
【0041】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、鉄(III)イオン源を含むことができ、ここで、鉄(III)イオン源は、鉄(III)塩からなる群より選択される。最も好ましくは、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、鉄(III)イオン源を含有し、ここで、鉄(III)イオン源は、硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)である。
【0042】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に1~200ppm、好ましくは、5~150ppm、より好ましくは、7.5~120ppm、最も好ましくは、10~100ppm 鉄(III)イオンを導入するのに十分な鉄(III)イオン源を含有することができる。特に好ましいケミカルメカニカルポリッシング組成物において、鉄(III)イオン源は、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に10~150ppmを導入するのに十分な量で含まれる。
【0043】
任意選択的に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pH調整剤を含有する。好ましくは、pH調整剤は、無機及び有機のpH調整剤からなる群より選択される。より好ましくは、pH調整剤は、無機酸及び無機塩基からなる群より選択される。無機酸は、硝酸、硫酸、塩酸及びリン酸を含むが、これらに限らない。無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化アンモニウムを含むが、これらに限定されない。さらに好ましくは、pH調整剤は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される。最も好ましくは、pH調整剤は、水酸化カリウムである。7以上の所望のpH、好ましくは、7.5~12、最も好ましくは、7.5~8.5の所望のpHを維持するのに十分な量のpH調整剤をケミカルメカニカルポリッシング組成物に加える。
【0044】
任意選択的に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、殺生物剤、例えば、International Flavors & Fragrances, Inc.によりそれぞれ製造された、KORDEK(商標)MLX(9.5~9.9% メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、89.1~89.5% 水及び≦1.0% 関連反応生成物)又はKATHON(商標)ICP III(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの有効成分含有)(KATHON及びKORDEKは、International Flavors & Fragrances, Inc.の商標である)を含有する。
【0045】
殺生物剤が、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる場合、殺生物剤は、0.001重量%~0.1重量%、好ましくは、0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは、0.001重量%~0.01重量%、さらにより好ましくは、0.001重量%~0.005重量%の量で含まれる。
【0046】
任意選択的に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。従来の界面活性剤をケミカルメカニカルポリッシング組成物に使用することができる。このような界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。このような界面活性剤の混合物も、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に使用することができる。ケミカルメカニカルポリッシング組成物の所望の粘度を達成するために、わずかな実験を使用して、界面活性剤の種類又は組み合わせを決定することができる。
【0047】
任意選択的に、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、消泡剤、例えば、エステル、エチレンオキシド、アルコール、エトキシレート、ケイ素化合物、フッ素化合物、エーテル、グリコシド及びそれらの誘導体を含む非イオン性界面活性剤やアニオン性エーテルサルフェート、例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)並びにそのカリウム塩及びアンモニウム塩も含むことができる。
【0048】
界面活性剤及び消泡剤を本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に、従来の量又は所望の性能を提供するように調整された量で含ませることができる。例えば、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、0.0001重量%~0.1重量%、好ましくは、0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは、0.01重量%~0.05重量%、さらにより好ましくは、0.01重量%~0.025重量%の界面活性剤、消泡剤又はそれらの混合物を含有することができる。
【0049】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物を、種々の基材を研磨するのに使用することができる。好ましくは、本発明の改質シラン化コロイダルシリカ砥粒は、Co及びTEOSを研磨するためのケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる。ただし、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を、Cu、W、Ti、TiN、Ta、TaN等の材料及びその他の材料を研磨するのに使用することができることが想定される。
【0050】
本発明の研磨方法は、研磨表面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供する工程と;ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に動的接触を生成する工程と;ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は同界面付近のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上に本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物を分注する工程とを含み、ここで、誘電体材料の少なくとも一部を基材から研磨除去する。
【0051】
好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物により基材を研磨する方法において、基材は、金属及び誘電体を含む。より好ましくは、提供される基材は、金属及び誘電体、例えば、Co及びTEOS又はそれらの組み合わせを含む半導体基材である。
【0052】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、当技術分野において公知の任意の適切な研磨パッドであることができる。当業者であれば、本発明の方法で使用するのに適したケミカルメカニカルポリッシングパッドを選択することを知っている。より好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、織布及び不織布研磨パッドから選択される。さらにより好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリウレタン研磨層を含む。最も好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層、及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。好ましくは、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨表面上に少なくとも1つの溝を有する。
【0053】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面又は同界面付近に提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨表面上に分注される。
【0054】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、研磨される基材の表面に垂直な0.69~34.5kPaの下向きの力で、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドと基材との間の界面に、動的接触が生成される。
【0055】
好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、調整可能なTEOS除去速度を有する。改質コロイダルシリカ粒子の調製において、シラン、アミノ酸又はその両方を変化させることにより、TEOS及びCoのRRを調整することができる。好ましくは、本発明の基材を研磨する方法において、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、≧800Å/分、好ましくは、≧1000Å/分のCo除去速度を有する。好ましくは、Co及びTEOSを含有する基材を研磨する方法において、Coは、TEOSより選択的に研磨される。好ましくは、研磨が、AMAT Reflexion研磨ツールにおいて、90回転/分のプラテン速度、91回転/分のキャリア速度、300mL/分のケミカルメカニカルポリッシング組成物流速、27.6kPaの見掛けの下向きの力で行われる。ここで、ケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層、及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。
【0056】
下記実施例は、本発明をさらに例証することを意図しており、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0057】
実施例1
表面改質コロイダルシリカ粒子の調製
アミノ酸粉末をDI水と室温で混合することにより、アミノ酸水溶液を調製した。アミノ酸の種類及び量を以下の表1に開示する。この混合物を2重量% KOH水溶液で中和した。この溶液中の最終固形分重量%は5重量%であり、pHは、12以上であった。
【0058】
50%予備加水分解GPTMS(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)水溶液を、等量の前記シラン及びDI水を室温で30分間混合することにより調製した。50%予備加水分解シラン水溶液を粒子分散液中に2~5分間かけてゆっくり加えることにより、シラン改質を行った。GPTMSによる表面改質後に、所定量の水をコロイダルシリカ粒子と混合し、粒子濃度を15重量%とした。ついで、この混合物を、中和アミノ酸溶液を加える前に、室温で30分間~1時間さらに熟成した。
【0059】
中和アミノ酸溶液を混合しながら、上記調製された粒子分散液に加えた。ついで、この混合物を55℃のオーブン中で20時間さらに加熱して、最終改質コロイダルシリカ粒子を得た。
【0060】
【表1】
【0061】
表1中の実施例の全ての組成物には、FUSO Chemical Co., Ltd.により提供されるような15重量% Fuso PL-2Lコロイダルシリカ粒子を含有させた。表中に列記されたシラン及びアミノ酸の量の単位は、Fuso PL-2Lコロイダルシリカ粒子の表面積(109m2/g)に基づく1nm当たりの分子数である。
【0062】
シラン及びアミノ酸についての1nm当たりの分子数は、下記等式:
Ns=(Ws/Mw×NA)/(SSA×Wp×1018
Ns:粒子の表面積1nm2当たりのGPTMS又はアミノ酸の数(分子数/nm2
NA:アボガドロ数、6.022×1023mol-1
GPTMSのMw=236.34g/mol
β-アラニンのMw=89.09g/mol
L-アスパラギン酸のMw=133.11g/mol
L-グルタミン酸のMw=147.13g/mol
グリシンのMw=75.07g/mol
SSA=109m2/g
Wp=15重量%
Ws=表1に示されたとおり(g/Lに換算可能)
を使用して決定した。
【0063】
実施例2
ケミカルメカニカルポリッシング組成物の導電性及び安定性
改質コロイダルシリカ粒子を、未改質Fuso PL-2L粒子を含ませた比較例Ex2Aを除いて、上記実施例1に記載された方法に従って調製した。
【0064】
【表2】
【0065】
表2中の全ての実施例に、5.85重量% Fuso PL-2L粒子を含有させた。合計[-COOH]濃度(粒子上に付着+遊離の合計)が各スラリーについて同じ(150.3mM)となるようにスラリーを配合し、もって、表2中の各組成物が同様の導電性及びイオン強度を有するようにした。表中に列記されたシラン及びアミンの量の単位は、Fuso PL-2Lコロイダルシリカ粒子の表面積(109m2/g)に基づく1nm当たりの分子数である。
【0066】
シリカ粒子分散液、DI水、アスパラギン酸、0.1重量% アデニン及び0.02重量% KORDEK(商標)MLX殺生物剤を室温で混合することにより、CMPスラリー組成物を調製した。2重量% KOH水溶液で、スラリーのpHを約8のターゲットpH値に調整した。
【0067】
スラリーを55℃のオーブン内で4週間熟成して、それらの熟成特性を促進し、室温でのスラリー貯蔵寿命を推定した。表3から分かるように、GPTMS改質コロイダルシリカ粒子又はGPTMS及びアミノ酸改質コロイダルシリカ粒子を含有するスラリーは、高温での28日間の熟成後に、100nmを十分下回る平均粒径[Disc Centrifuge(CPS Instruments, Inc., Prairieville, LA)により測定]で分散したままであった。GPTMS及びアミノ酸改質コロイダルシリカ粒子を含有するスラリーは、対応する量のGPTMS改質コロイダルシリカ粒子を含有するスラリーと比較して、さらに改善された安定性を有していた。表2及び表3に示されたように、比較例Ex2Bに、0.6 GPTMS/nmを含有させた。一方、GPTMS及びアミノ酸の両方で改質させたシリカ粒子を含有するEx2-1及びEx2-2は、比較例Ex2Bの粒形より、28日目に顕著に小さい粒子を有していた。1.2分子のGPTMS/nm及び1.2分子のアミノ酸/nm改質コロイダルシリカ粒子を含むスラリーEx2-3~Ex2-6においても、同じ効果が観察された。これらのスラリーは、1.2分子のGPTMS/nm改質コロイダルシリカ粒子を含む比較例Ex2Cスラリーより、28日目に小さい平均粒径を有していた。未改質コロイダルシリカPL-2L粒子を含有するスラリーは、高温で28日間熟成した後にゲル化した。
【0068】
粒子導電性(YSI model 3200、プローブYSI 3235により測定)は、GPTMS改質コロイダルシリカ並びにGPTMS及びアミノ酸改質コロイダルシリカ含有スラリーについて実質的に同じであった。それにもかかわらず、本発明のスラリーは、28日後でも良好な導電性を有していた。
【0069】
【表3】
【0070】
実施例3
コバルトとTEOSのケミカルメカニカルポリッシング
改質コロイダルシリカ粒子を上記実施例1に記載されたように調製した。
【0071】
【表4】
【0072】
スラリーを実質的に実施例2におけるのと同じ方法に従って調製し、スラリー:DI水重量比 1:1のDI水で希釈した。改質及び非改質コロイダルシリカ粒子濃度は、2.925重量%とし、アデニンは、0.05重量%の濃度とし、Hを0.3重量%の濃度でスラリーに加え、KORDEK(商標)MLX殺生物剤は、0.01重量%の濃度とした。アスパラギン酸をキレート剤又は錯化剤としてスラリーに加え、pHを7.5~8.1に維持した。合計[-COOH]濃度(粒子上に付着+遊離の合計)が各スラリーについて同じ(75.1mM)となるように、スラリーを配合した。
【0073】
CMP研磨条件
研磨ツール:AMAT Reflexion
スラリー:種々のスラリー
パッド:VisionpadTM 6000パッド(1010個の溝)
コンディショナー:Saesol AK45
ブレイクイン:7.5lb 20分+5lb 10分
コンディショニング:5lb DFでの完全なin situコンディショニング
研磨プロセス:6.89kPa、90/91rpm、300mL/分
研磨の詳細
PVD Co(DKNano)、TEOS(Pure Wafer)ウェハ
20s Co研磨、60s TEOS研磨
ダミー研磨:パッドのブレイクイン後に15枚のTEOSダミー研磨、ついで、ウェハを評価し、複数のスラリー間の4枚のTEOSダミー研磨
【0074】
【表5】
【0075】
研磨結果から、本発明の改質コロイダルシリカ粒子を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物が全体として、比較例より高いCo:TEOS選択比を有することが示された。
【外国語明細書】