(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016783
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】エンジン作業機
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20220118BHJP
F02B 63/04 20060101ALI20220118BHJP
F02B 63/00 20060101ALI20220118BHJP
F02B 75/00 20060101ALI20220118BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F02B77/00 E
F02B63/04 B
F02B63/04 C
F02B63/00 B
F02B63/00 C
F02B75/00 A
B66C1/66 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119718
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】東 知世洋
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA40
(57)【要約】
【課題】重心位置の移動に応じた最適な吊り上げ位置を容易に選択して吊り上げることができる可搬式のエンジン作業機を提供する。
【解決手段】エンジン作業機11は、エンジンと作業機と燃料タンク15と還元剤タンク16とを収容したケーシング13の上部に吊り金具装着部材18を備える。吊り金具装着部材18は、燃料タンク15内の燃料の容量と還元剤タンク16内の還元剤の容量とに応じたエンジン作業機11の重心の移動方向に延出し、前記重心の移動方向に沿って、吊り金具を選択的に装着させる複数の吊り金具装着孔を有するとともに、燃料の容量と還元剤の容量とに応じたエンジン作業機の重心位置に基づいて、複数の吊り金具装着部のうちの一つを選択するための報知手段を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンにより駆動する作業機と、前記エンジンに供給する燃料を貯留する燃料タンクと、前記エンジンからの排ガスを還元剤により浄化する排ガス浄化装置とを収容したケーシングの上部に、吊り金具を装着する吊り金具装着部材を備えたエンジン作業機において、
前記吊り金具装着部材は、前記燃料と前記還元剤の残量に応じた前記エンジン作業機の重心の移動方向に延在し、前記重心の移動方向に沿って、前記吊り金具を選択的に装着可能な複数の吊り金具装着部を有し、
前記燃料と前記還元剤の残量に応じた前記エンジン作業機の重心位置に基づいて、前記複数の吊り金具装着部のうちの一つを選択するための報知手段を備えていることを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記ケーシングは、直方体状に形成され、天井板と長手方向の側板とで形成される一対の角部の長手方向中央部に、前記角部からケーシングの内側に向けて凹んだ一対の凹部が形成され、該凹部に前記吊り金具装着部材がそれぞれ取り付けられることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に、発電機やコンプレッサ,ポンプ等の作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを備えたエンジン作業機に関し、詳しくは、ケーシングに設けた吊り金具装着部材に吊り金具を連結し、クレーン等で吊り上げて移動可能な可搬式のエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーシングの上部に、エンジン作業機の重心移動方向に軸線を向けて配置した連結軸と、該連結軸の軸線方向に移動可能に設けた吊り金具とを設け、該吊り金具にクレーンのフックやワイヤロープ等を掛けてエンジン作業機を吊り上げて移動させることができるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のようなエンジン作業機では、エンジンの燃料タンクに貯留されている燃料の容量や、エンジンからの排ガスを浄化する排ガス浄化装置の還元剤タンクに貯留されている還元剤の容量に応じてエンジン作業機の重心位置が移動することから、クレーン等で吊り上げてエンジン作業機を移動させる際には、吊り上げ位置の調整が必要になっていた。しかも、想定した重心位置と実際の重心位置が異なった場合、クレーンの吊り荷重を緩めて吊り位置を調整しなければならないことから、吊り位置を決定するのに手間が掛かっていた。
【0005】
そこで本発明は、重心位置の移動に応じた最適な吊り上げ位置を容易に選択して吊り上げることができる可搬式のエンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、エンジンと、該エンジンにより駆動する作業機と、前記エンジンに供給する燃料を貯留する燃料タンクと、前記エンジンからの排ガスを還元剤により浄化する排ガス浄化装置とを収容したケーシングの上部に、吊り金具を装着する吊り金具装着部材を備えたエンジン作業機において、前記吊り金具装着部材は、前記燃料と前記還元剤の残量に応じた前記エンジン作業機の重心の移動方向に延在し、前記重心の移動方向に沿って、前記吊り金具を選択的に装着可能な複数の吊り金具装着部を有し、前記燃料と前記還元剤の残量に応じた前記エンジン作業機の重心位置に基づいて、前記複数の吊り金具装着部のうちの一つを選択するための報知手段を備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、前記ケーシングは、直方体状に形成され、天井板と長手方向の側板とで形成される一対の角部の長手方向中央部に、前記角部からケーシングの内側に向けて凹んだ一対の凹部が形成され、該凹部に前記吊り金具装着部材がそれぞれ取り付けられると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンジン作業機では、燃料や還元剤の消費によりエンジン作業機の重心位置が移動しても、最適な吊り上げ位置を作業者に報知させることができ、エンジン作業機の重心位置の移動に関わらず、エンジン作業機を常に安全に吊り上げて移動させることができる。
【0009】
また、ケーシングは、直方体状に形成され、天井板と長手方向の側板とで形成される一対の角部の長手方向中央部に、角部からケーシングの内側に向けて凹んだ一対の凹部を形成し、該凹部に吊り金具装着部材をそれぞれ取り付けることにより、大型のエンジン作業機であっても吊り金具装着部材をケーシングに良好に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1形態例を示すエンジン作業機の斜視図である。
【
図4】本発明の第2形態例を示すエンジン作業機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図3は、本発明のエンジン作業機の第1形態例を示す図である。エンジン作業機11は、床台12の上部に一体に設けられた直方体状のケーシング13内に支持フレーム14が設けられ、該支持フレーム14に、図示は省略するが、作業機及び該作業機を駆動するエンジンや、該エンジンからの排ガスを還元剤により浄化する排ガス浄化装置等の機器が搭載されている。また、ケーシング13の長手方向一端の床台12の内部には、エンジンの燃料を貯留する燃料タンク15と、エンジンの排気ガス中に含まれる窒素酸化物を除去するために、排気ガスに噴射する還元剤である、例えば尿素水を貯留する還元剤タンク16とが、ケーシング13の短手方向に横並びに配設されている。
【0012】
燃料タンク15と還元剤タンク16とは、床台12に固定され、燃料タンク15は、上面に給油口15aが設けられている。還元剤タンク16は、燃料タンク15よりも小型に形成され、上面には供給口16aが設けられている。
【0013】
ケーシング13は、長手方向の一方の側板13aに点検扉13b,13bが設けられ、一端側の天井板13cには排気口13dが、他端側には吸気口13e,13eがそれぞれ設けられている。また、天井板13cと長手方向の側板13a,13aとで形成される一対の角部13f,13fの長手方向中央部には、角部13f,13fからケーシング13の内側に向けて凹んだ凹部17,17が形成されている。
【0014】
凹部17は、燃料タンク15内の燃料の残量と還元剤タンク16内の還元剤の容量とに応じて変化するエンジン作業機11の重心に対応する位置、すなわち、満タン時の燃料の容量と還元剤の容量から割り出した、満タン時の燃料と還元剤の合計重量を100%とした時に、合計重量が100%から減少して0%に至るまでに変化するエンジン作業機11の重心に対応する位置に設けられている。
【0015】
各凹部17には、ケーシング長手方向(エンジン作業機11の重心の移動方向)に長尺な吊り金具装着部材18が取り付けられる。吊り金具装着部材18は、金属製の長板で形成され、凹部17の長手方向両端の内壁17a,17aの外端部から、ケーシング13の内側に向けて、漸次、上向きに傾斜させた状態で両端部が内壁17a,17aに固着され、吊り金具装着部材18と凹部17の奥壁17bとの間には、吊り金具(図示せず)が挿入可能となる隙間S1が形成されている。
【0016】
吊り金具装着部材18は、凹部17に取り付けられた状態で、異なった色に着色された着色部19a,19b,19cが長手方向に並設され、着色部19aに第1吊り金具装着孔18a(吊り金具装着部)が、着色部19bに第2吊り金具装着孔18b(吊り金具装着部)が、着色部19cに第3吊り金具装着孔18c(吊り金具装着部)がそれぞれ形成されている。また、第1吊り金具装着孔18aは、燃料と還元剤の合計重量が100%の時にエンジン作業機11の重心を通るケーシング13の短手方向の鉛直面を含む位置に、第2吊り金具装着孔18bは燃料と還元剤の合計重量が50%の時にエンジン作業機11の重心を通るケーシング13の短手方向の鉛直面を含む位置に、第3吊り金具装着孔18cは、燃料と還元剤の合計重量が0%の時にエンジン作業機11の重心を通るケーシング13の短手方向の鉛直面を含む位置にそれぞれ設けられている。
【0017】
また、ケーシング13の側面13aにおける第1吊り金具装着孔18a,第2吊り金具装着孔18b,第3吊り金具装着孔18cの下方位置には、着色部19a,19b,19cに対応させて、着色部19a,19b,19cと同色に設定された報知手段となるランプ20a,20b,20cが設けられている。
【0018】
このように形成されたエンジン作業機11では、例えば、燃料タンク15や還元剤タンク16に、フロート21aにより液面を検知する液面検知器21を取り付け、液面検知器21で燃料タンク15や還元剤タンク16に貯留された燃料や還元剤の液面を検知する。検知した液面から、エンジン作業機11に備えたコントローラ(CPU)によって、燃料や還元剤の残量を求めるとともに、比重の異なる燃料と還元剤の合計重量を割り出す。こうして、エンジン作業機11の重心位置を算出し、算出された重心位置に基づいて、最適な吊り位置に対応するランプ20a,20b,20cのいずれか1つを点灯させる。
【0019】
ランプの点灯は、例えば、燃料と還元剤の合計重量が100%~70%の際には、第1吊り金具装着孔18aが形成されている着色部19aと同色のランプ20aが、燃料と還元剤の合計重量が69%~40%の際には、第2吊り金具装着孔18bが形成されている着色部19bと同色のランプ20bが、燃料と還元剤の合計重量が39%~0%の際には、第3吊り金具装着孔18cが形成されている着色部19cと同色のランプ20cがそれぞれ点灯するように設定されている。
【0020】
本形態例は、上述のように形成されることにより、エンジン作業機11を吊り上げて移動させる際に、報知手段により最適な吊り位置となる第1吊り金具装着孔18a,第2吊り金具装着孔18b,第3吊り金具装着孔18cのいずれか1つの下方に設けられた、ランプ20a,20b,20cのいずれか1つを点灯させることにより、作業者は、最適な吊り金具装着孔を容易に選択して、エンジン作業機11を良好に吊り上げて移動させることができる。また、第1吊り金具装着孔18a,第2吊り金具装着孔18b,第3吊り金具装着孔18cの周囲に設けた着色部19a,19b,19cと、該着色部19a,19b,19cに対応するランプ20a,20b,20cとを同色に着色することにより、最適な吊り金具装着孔を作業者が確実に選択することができる。
【0021】
図4は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0022】
本形態例のエンジン作業機22は、床台23の内部に、床台23の形状に対応する扁平な直方体状に形成された燃料タンク24が固定されている。さらに、該燃料タンク24の長手方向一側部に、縦長の直方体状に形成された還元剤タンク25が、燃料タンク24の上部に並べて固定されている。また、燃料タンク24の上面には給油口24aが、還元剤タンク25の上面には供給口25aがそれぞれ設けられている。さらに、ケーシング13に設けられた凹部17には、吊り金具装着部材18が取り付けられ、吊り金具装着部材18には、第1吊り金具装着孔18a,第2吊り金具装着孔18b,第3吊り金具装着孔18cが形成されている。
【0023】
エンジン作業機22は、第1形態例と同様の報知手段を備え、エンジン作業機22を吊り上げて移動させる際に、報知手段によりランプ20a,20b,20cのいずれか1つを点灯させ、最適な吊り金具装着孔を選択してエンジン作業機22を良好に吊り上げて移動させることができる。
【0024】
なお、本発明は、上述の各形態例に限らず、還元剤タンクを備えていないエンジン作業機にも適用でき、燃料の残量に応じて最適な吊り金具装着部を選択できるようにしてもよい。また、第1吊り金具装着孔,第2吊り金具装着孔,第3吊り金具装着孔の周囲に着色部を設けていなくてもよく、第1吊り金具装着孔,第2吊り金具装着孔,第3吊り金具装着孔に対応するランプを点灯させて、最適な吊り金具装着孔を作業者に報知させるものでもよい。さらに、吊り金具装着部材に形成する吊り金具装着孔の数は任意である。また、報知手段は、モニタの表示によるものや、音声によるものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
11…エンジン作業機、12…床台、13…ケーシング、13a…側板、13b…点検扉、13c…天井板、13d…排気口、13e…吸気口、13f…角部、14…支持フレーム、15…燃料タンク、15a…給油口、16…還元剤タンク、16a…供給口、17…凹部、17a…内壁、17b…奥壁、18…吊り金具装着部材、18a…第1吊り金具装着孔、18b…第2吊り金具装着孔、18c…第3吊り金具装着孔、19a,19b,19c…着色部、20a,20b,20c…ランプ、21…液面検知器、21a…フロート、22…エンジン作業機、23…床台、24…燃料タンク、24a…供給口、25…還元剤タンク、25a…供給口