(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167846
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】硬質物品用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/72 20060101AFI20221027BHJP
C11D 1/52 20060101ALI20221027BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20221027BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20221027BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C11D1/72
C11D1/52
C11D1/68
C11D17/04
C11D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070096
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021072742
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】李 冬瑶
(72)【発明者】
【氏名】大谷 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝典
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC05
4H003AC08
4H003AC13
4H003BA12
4H003DA05
4H003DB02
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB08
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】変性油汚れなどの油汚れに対する洗浄力に優れた硬質物品用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(a)成分と下記(b)成分を含有する硬質物品用洗浄剤組成物であって、組成物全体の親水親油指数が9以上14.2以下である、硬質物品用洗浄剤組成物。
(a)成分:炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上5以下である、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン
(b)成分:非イオン界面活性剤(但し、(a)成分及びアミド型非イオン界面活性剤を除く)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分と下記(b)成分を含有する硬質物品用洗浄剤組成物であって、組成物全体の親水親油指数が9以上14.2以下である、硬質物品用洗浄剤組成物。
(a)成分:炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上5以下である、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン
(b)成分:非イオン界面活性剤(但し、(a)成分及びアミド型非イオン界面活性剤を除く)
【請求項2】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である(a)/(b)が0.01以上30以下である、請求項1に記載の硬質物品洗浄剤組成物。
【請求項3】
20℃のpHが5以上11以下である、請求項1又2に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
【請求項4】
任意に下記(c)成分を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
(c)成分:陰イオン界面活性剤
【請求項5】
(c)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して50質量%以下である、請求項4に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
【請求項6】
任意に下記(d)成分を含有し、(d)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して10質量%未満である、請求項1~5の何れか1項に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
(d)成分:アミド型非イオン界面活性剤
【請求項7】
任意に下記(e)成分を含有し、(e)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して50質量%未満である、請求項1~6の何れか1項に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
(e)成分:炭素数9以下の炭化水素基を有する水への溶解度が25℃で5g/100g以上の親水性溶剤
【請求項8】
(b)成分が、(b1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、(b2)アルキル(ポリ)グリコシド、(b3)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、(b4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(b5)(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤である、請求項1~7の何れか1項に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
【請求項9】
(b)成分が、アルコキシレート型非イオン界面活性剤及びアルキルグリコシド型界面活性剤から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の非イオン界面活性剤である、請求項1~8の何れか1項に記載の硬質物品用洗浄剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項記載の硬質物品用洗浄剤組成物を汚れの付着している硬質物品に接触させる、硬質物品の洗浄方法。
【請求項11】
前記硬質物品用洗浄剤組成物を起泡させて硬質物品に接触させる、請求項10に記載の硬質物品の洗浄方法。
【請求項12】
前記硬質物品用洗浄剤組成物を、スポンジで起泡させて又は泡形成機構を備えたスプレイヤーで起泡させて、硬質物品に接触させる、請求項11に記載硬質物品の洗浄方法。
【請求項13】
硬質物品が食器である、請求項10~12の何れか1項記載の硬質物品の洗浄方法。
【請求項14】
汚れが油汚れである、請求項10~13の何れか1項記載の硬質物品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質物品用洗浄剤組成物、及び硬質物品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レンジ、オーブン、レンジまわりの壁や床、換気扇といった台所まわりに用いられる台所まわり用洗浄剤や食品加工設備に用いる洗浄剤としては、食品由来の汚れ、調理に用いる成分由来の汚れなどの種々の汚れを除去するため、界面活性剤、溶剤及びアルカリ剤等を含む洗浄剤が用いられている。
【0003】
特許文献1には、(a)炭素数7以上18以下の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤、(b)HLBが1以上10以下の非イオン界面活性剤、及び(c)炭素数1以上5以下のアルキル基を有する特定の一般式(c1)で表される化合物を所定条件で含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献2には、(A)アニオン界面活性剤と、(B)非イオン界面活性剤と、(C)ジヒドロキシエチルグリシン及びその塩のうち少なくとも一種と、を含む洗浄剤組成物であって、(A)アニオン界面活性剤と、(B)非イオン界面活性剤と、の合計100質量部に対して、(C)ジヒドロキシエチルグリシン及びその塩のうち少なくとも一種が、0.1~50質量部である洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、(a)HLBが10.5以下の非イオン界面活性剤(ただし(b)を除く)、(b)炭素数8以上18以下の炭化水素基と平均縮合度が0.5以上3以下のグリコシド基を有するグリコシド、及び(c)logPowが0以上1.5以下の有機溶剤を含有し、全界面活性剤中の(a)含有量が30質量%以上95質量%以下であり、(a)の含有量に対する(c)の含有量の質量比である(c)/(a)が2以上8以下であり、20℃における粘度が20mPa・s以下である、食器及び/又は台所周りの硬質物品用液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献4には、界面活性剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物であって、界面活性剤として、(A)非イオン界面活性剤、及び任意に(B)両性界面活性剤を含有し、界面活性剤中、(A)の割合が60質量%以上であり、(A)として、(A1)アルキル基の炭素数が10以上18以下であり、アルカノール基の炭素数が2又は3であるアルキルモノ又はジアルカノールアミン又はそのアルキレンオキシド付加物(アルキレンオキシドの炭素数は2又は3である)を含有し、(A)及び(B)の合計中、(A1)の割合が、0.5質量%以上20質量%以下である、硬質表面用液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献5には、(A)陰イオン界面活性剤、(B)長鎖アルキルジ短鎖アルキルハイドロキシエチルアンモニウム塩、(C)特定の構造を有する非イオン界面活性剤化合物、(D)(C)を除く非イオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種、(E)溶剤、(F)水を含有する液体殺菌洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-97711号公報
【特許文献2】特開2020-90606号公報
【特許文献3】特開2019-210475号公報
【特許文献4】特開2020-15863号公報
【特許文献5】特開2020-200420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食器や調理器具に付着する汚れのうち、油汚れは、熱、光、空気中の酸素などの作用により変性し、非常に除去しにくい汚れ(変性油汚れ)となる。また、食器や調理器具の洗浄剤には、変性油汚れに対する高い洗浄力に優れることが求められる。
【0006】
本発明は、変性油汚れなどの油汚れに対する洗浄力に優れた硬質物品用洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分と下記(b)成分を含有する硬質物品用洗浄剤組成物であって、組成物全体の親水親油指数が9以上14.2以下である、硬質物品用洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上5以下である、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン
(b)成分:非イオン界面活性剤(但し、(a)成分及びアミド型非イオン界面活性剤を除く)
【0008】
また、本発明は、前記本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を汚れの付着している硬質物品に接触させる、硬質物品の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変性油汚れなどの油汚れに対する洗浄力に優れた、硬質物品用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の効果発現の作用機作は、必ずしもすべてが解明されたわけではないが、出願人は以下のように考えている。
変性油汚れのうち、調理器具や調理設備などに付着する変性油汚れは、熱履歴などから変性度が高くなり、洗浄時に対象物から剥離するためには、比較的疎水性が高い洗浄剤を用いることが有利と考えられる。しかし、そのような洗浄剤は、一般に泡立ち性が低い上に、食器等の比較的変性度が低い油汚れの洗浄では低変性油汚れが破泡性を示すため、起泡性が足りず、洗浄できる食器の量が低下し効率が下がる。又、比較的親水性で変性度合いの少ない汚れである食器の洗浄を優先するために起泡性を考慮すれば、高変性の汚れが多い調理台やレンジ等の洗浄性の低下が起こる。
本発明の(a)成分及び(b)成分が、例えば、変性油汚れ等に疎水性基であるアルキル基等を介して吸着する場合、(a)成分は、親水基であるオキシアルキレン基部分の付加モル数が小さい為、吸着界面の近傍で吸着する、或いは、吸着界面から離れた箇所で吸着界面に対して水平方向に広がって吸着し、(b)成分は、親水基部分、例えばオキシアルキレン基部分が、吸着界面に対して垂直方向に比較的自由度をもって吸着しているものと考えられる。このような吸着特性を持つ(a)成分及び(b)成分は、それぞれ単独の構造物で親水疎水性の調整を行っても高変性油と低変性油に対する要求性能を満足させることはできない。(a)成分と(b)成分が共存する場合、疎水基に近い部分での親水性基の密度が高く、更に、親水性領域が汚れ界面から離れた広い領域を持つ分子集合体を作ることが予想される。このような界面活性剤の分子集合が洗浄系全体で特定の親水親油指数をもつ場合、比較的疎水性が高い高変性油汚れに対して吸着は効果的に起こり、親水基部分の構造も強固なため、発泡性を落とすことなく難洗浄性である高変性油汚れの剥離、分散を促進できるものと考えられる。又、親水基領域が広い為、発泡性の低下も起こさないものと考えられる。
尚、本発明の効果発現はここに示す作用機作に限定されるものではない。
【0011】
<硬質物品用洗浄剤組成物>
(a)成分は、炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上5以下である、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミンである。
【0012】
(a)成分が有するアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、高変性油に対する洗浄性(以下、「洗浄性」という)の観点から、8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下である。
(a)成分が有する基はアルキル基が好ましい。
オキシアルキレン基は、炭素数2のオキシアルキレン基及び/又は炭素数3のオキシアルキレン基、すなわちオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。(a)成分は、オキシアルキレン基として、オキシエチレン基を含むことが好ましい。
(a)成分は、オキシアルキレン基の平均付加モル数が、洗浄性の観点から、1以上5以下であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは4.5以下、より好ましくは3以下である。
【0013】
(a)成分としては、例えば、炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上5以下である、モノアミンのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0014】
(a)成分としては、例えば、下記一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【0015】
【0016】
〔式中、Rは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、EOはエチレンオキシ基であり、m及びnは平均付加モル数であって、独立して0以上5以下の数であり、mとnの合計は1以上5以下である。〕
【0017】
式(a1)中、Rは炭素数8以上、更に10以上、そして、18以下、更に16以下であってよい。Rはアルキル基が好ましい。mとnの合計は好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは4.5以下、より好ましくは3以下である。
【0018】
(a)成分のHLBは、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物全体の親水親油指数の範囲を逸脱させなければ特に限定されるものではないが、入手容易性及び変性油洗浄性の観点から、例えば、好ましくは9以上、より好ましくは9.5以上、そして、好ましくは14.2以下、より好ましくは13.0以下であってよい。(a)成分のHLBは、グリフィンによるものである。なお、本発明では、本明細書に記載の<硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数の測定方法>の方法で、ただし、硬質物品用洗浄剤組成物を測定対象の界面活性剤を5質量%の濃度で含み残部が水である混合物に置き換えて測定した親水親油指数を、グリフィン法によるHLBとみなすことができる。これは、(b)成分など他の界面活性剤のHLBについても同様である。
【0019】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(a)成分を、例えば、0.01質量%以上、更に0.05質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、50質量%以下、更に30質量%以下、更に15質量%以下含有することができる。
【0020】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、組成物中の界面活性剤総量に対して、(a)成分を、例えば、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下含有することができる。界面活性剤総量は、組成物が含有する(a)成分、(b)成分、任意の(c)成分、及びこれら以外の任意の界面活性剤、例えば任意の(d)成分、任意の(d’)成分の含有量の総量である。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有する組成物であって、界面活性剤として(a)成分及び(b)成分を含有する組成物であってよい。
【0021】
(b)成分は、非イオン界面活性剤(但し、(a)成分及びアミド型非イオン界面活性剤を除く)である。
【0022】
また、本発明の(b)成分は、好ましくは炭素数10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは18以下、好ましくは16以下の炭化水素基を有する非イオン界面活性剤である。
【0023】
なお、本発明では、炭素数10以上の炭化水素基を有するものを非イオン界面活性剤とすることができる。従って、組成物中の界面活性剤総量に算入する非イオン界面活性剤、例えば(b)成分、後述する(d)成分などの含有量は、炭素数10以上の炭化水素基を有する非イオン界面活性剤の組成物中の含有量であってよい。例えば、炭素数9以下の炭化水素基を有する非イオン性の化合物は、非イオン界面活性剤には該当しないものとして、組成物中の界面活性剤総量は算入しなくてもよい。
【0024】
(b)成分としては、(b1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル〔以下、(b1)成分という〕、(b2)アルキル(ポリ)グリコシド〔以下、(b2)成分という〕、(b3)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル〔以下、(b3)成分という〕、(b4)ポリグリセリン脂肪酸エステル〔以下、(b4)成分という〕、及び(b5)(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル〔以下、(b5)成分という〕から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤が挙げられる。
(b)成分は、アルコキシレート型非イオン界面活性剤及びアルキルグリコシド型界面活性剤から選ばれる非イオン界面活性剤であってよい。(b1)成分は、アルコキシレート型非イオン界面活性剤の一例である。また、(b2)成分は、アルキルグリコシド型界面活性剤の一例である。
【0025】
(b1)成分のオキシアルキレン基は、炭素数2のオキシアルキレン基及び/又は炭素数3のオキシアルキレン基、すなわちオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。(b1)成分は、オキシアルキレン基の平均付加モル数が、洗浄性の観点から、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、そして、好ましくは25以下、より好ましくは23以下である。
(b1)成分は、洗浄性の観点から、オキシアルキレン基として、オキシエチレン基を含むことが好ましい。(b1)成分のアルキル基の炭素数は、洗浄性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは16以下である。(b1)成分のアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよいが直鎖が好ましい。(b1)成分のアルキル基は、飽和でも不飽和でもよいが飽和が好ましい。
【0026】
(b2)成分は、洗浄性の観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは16以下である。また、(b2)成分は、洗浄性の観点から、グルコース等の糖の平均縮合度は、1以上、そして、10以下、更に5以下が好ましい。(b2)成分は、洗浄性の観点から、構成糖がグルコースであるアルキル(ポリ)グリコシドが好ましい。
【0027】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、(b)成分として、(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤、更に(b1)成分から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0028】
(b)成分のHLBは、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物全体の親水親油指数の範囲を逸脱させなければ特に限定されるものではないが、入手容易性及び変性油洗浄性の観点から、例えば、好ましくは9以上、より好ましくは9.5以上、そして、好ましくは17.4以下、より好ましくは16.9以下であってよい。(b)成分のHLBは、グリフィン法によるものであり、前記の通り、所定の方法で測定された親水親油指数を(b)成分のグリフィン法によるHLBとみなすことができる。
【0029】
(b)成分は、洗浄性の観点から、アルコキシレート型非イオン界面活性剤及びアルキルグリコシド型界面活性剤から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の非イオン界面活性剤が好ましく、(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の非イオン界面活性剤がより好ましく、(b1)成分から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の非イオン界面活性剤がより好ましい。
【0030】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(b)成分を、例えば、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有することができる。
【0031】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、組成物中の界面活性剤総量に対して、(b)成分、更にHLB9以上17.4以下の(b)成分、更にアルコキシレート型非イオン界面活性剤及びアルキルグリコシド型界面活性剤から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の、非イオン界面活性剤、更に(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の非イオン界面活性剤、更に(b1)成分から選ばれる一種以上の、HLB9以上17.4以下の非イオン界面活性剤を、例えば、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは68質量%以下含有することができる。
【0032】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である(a)/(b)が、例えば、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは13以下、より更に好ましくは10以下、であってよい。
【0033】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤、溶剤、酵素(タンパク質分解酵素、油脂分解酵素、糖質分解酵素等)、ハイドロトロープ剤、pH調整剤、増粘剤、分散剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤などの成分を配合することができる。
【0034】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、任意に下記(c)成分を含有することができる。
(c)成分:陰イオン界面活性剤
【0035】
(c)成分としては、脂肪酸塩(好ましくは炭素数8以上24以下)、アルキル(好ましくは炭素数8以上24以下)スルホン酸塩、アルキル(好ましくは炭素数8以上18以下)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(好ましくは炭素数8以上24以下)硫酸エステル塩、アルキル(好ましくは炭素数2以上24以下)リン酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(好ましくはポリオキシエチレン)アルキル(好ましくは炭素数8以上18以下)硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(好ましくはポリオキシエチレン)アルキル(好ましくは炭素数8以上18以下)カルボン酸塩、アルキル(好ましくは炭素数6以上18以下)スルホコハク酸塩等が挙げられる。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0036】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、(c)成分を、洗浄性の観点から、例えば、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.4質量%以下含有することができる。
【0037】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(c)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して、例えば、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは22質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは18.5質量%以下であってよい。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、(c)成分の含有量が組成物中0質量%であってもよい。
【0038】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、任意に下記(d)成分を含有することができるが、洗浄性の観点から、(d)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して10質量%未満、更に2質量%以下、更に1質量%以下、更に0.5質量%以下であることが好ましく、下限値は0質量%以上であってよい。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、(d)成分の含有量が組成物中0質量%であってもよい。
(d)成分:アミド型非イオン界面活性剤
【0039】
(d)成分としては、炭素数が8以上、更に11以上18以下の脂肪酸とヒドロキシ基を1つ以上6つ以下有するアルキルアミンとのアミド化合物が挙げられる。アルキルアミンとしては、炭素数1以上、更に2以上、8以下のアルキルアミンが好ましく、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、N-メチルエタノールアミンを挙げることができる。本発明では、(d)成分として、脂肪酸(炭素数8以上、更に11以上18以下)ジエタノールアミド、脂肪酸(炭素数8以上、更に11以上18以下)N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸(炭素数8以上、更に11以上18以下)N-メチルグルカミドを含有することができる。本発明では、(d)成分の含有量は、脂肪酸(炭素数8以上、更に11以上18以下)ジエタノールアミド、脂肪酸(炭素数8以上、更に11以上18以下)N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸(炭素数8以上、更に11以上18以下)N-メチルグルカミドから選ばれるアミド型非イオン界面活性剤の、組成物中の合計の含有量であってよい。
【0040】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、任意に下記(d’)成分を含有することができるが、洗浄性の観点から、(d’)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して10質量%未満、更に5質量%以下、更に3質量%以下であることが好ましく、更に1.5質量%以下であることが好ましく、下限値は0質量%以上であってよい。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、(d’)成分の含有量が組成物中0質量%であってもよい。
(d’)成分:ベタイン型界面活性剤
【0041】
(d’)成分は、ベタイン構造を有する界面活性剤である。(d’)成分としては、アルキル(例えば炭素数8以上18以下)ジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキル(例えば炭素数8以上18以下)アミドプロピルベタイン、アルキル(例えば炭素数8以上18以下)ヒドロキシスルホベタイン、アルキル(好ましくは炭素数8以上18以下)カルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。本発明では、(d’)成分の含有量は、アルキル(炭素数8以上18以下)ジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキル(炭素数8以上18以下)アミドプロピルベタイン、アルキル(炭素数8以上18以下)ヒドロキシスルホベタイン、及びアルキル(炭素数8以上18以下)カルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインから選ばれるベタイン型界面活性剤の、組成物中の合計の含有量であってよい。
【0042】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性及び作業性の観点から、組成物中の界面活性剤総量が、例えば、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは8質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下であってよい。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有する組成物であって、界面活性剤として(a)成分及び(b)成分を含有し、界面活性剤総量が前記範囲にある組成物であってよい。
【0043】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、任意に下記(e)成分を含有することができるが、(e)成分は組成物の親水性疎水性指数を高める傾向にあり、洗浄性に影響を及ぼすおそれがあるため、含有する場合には注意が必要である。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(e)成分の含有量が、組成物中の界面活性剤総量に対して、50質量%未満、更に10質量%以下、更に5質量%以下、更に3質量%以下、更に2質量%以下であることが好ましく、そして、下限値は0質量%以上であってよいが、組成物の粘度などの性状を調整する目的から、0.5質量%以上、更に0.1質量%以上であってよい。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、(e)成分の含有量が組成物中0質量%であってもよい。
(e)成分:炭素数9以下の炭化水素基を有する水への溶解度が25℃で5g/100g以上の親水性溶剤
【0044】
(e)成分としては、1価のアルコール、ジオール、トリオール、モノ-、ジ-又はトリ-アルキレングリコールモノエーテル、及びモノ-、ジ-又はトリ-アルキレングリコールジエーテルなどから選ばれる1種以上の親水性溶剤が挙げられる。(e)成分はアルキル基を有するものが挙げられる。アルキル基は、種々の炭素数のアルキル基から選択できる。アルキル基の炭素数は1以上が好ましく、3以上がより好ましく、そして、10未満が好ましく、8以下がより好ましい。(e)成分としては、配合安定性と洗浄力の観点から、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,2-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノ-メチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-メチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-メチルエーテル、エチレングリコールモノ-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-ブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノ-ブチルエーテル、から選ばれる1種以上の親水性溶剤が好ましく、エタノール、エチレングリコールモノ-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-ブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノ-ブチルエーテルから選ばれる1種以上の親水性溶剤がより好ましく、ジエチレングリコールモノ-ブチルエーテルが更に好ましい。
【0045】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、組成物の安定性及び作業性の観点から、水を含有することが好ましい。水は、特に限定するものではないが、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。本発明では、水は、組成物の残部の量(合計が100質量%となる量)で用いられることが好ましい。水の含有量は、例えば、組成物中、50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上とすることができる。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、液体の組成物であってよい。
【0046】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、組成物全体の親水親油指数が、9以上14.2以下である。本発明の硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数は、洗浄性の観点から、例えば、9以上、好ましくは9.5以上、より好ましくは9.6以上、更に好ましくは9.7以上、より更に好ましくは9.8以上、より更に好ましくは9.9以上、より好ましくは10以上、より更に好ましくは10.0以上、そして、14.2以下、好ましくは14.0以下、より好ましくは13.9以下、より更に好ましくは13.8以下、より更に好ましくは13.7以下、より更に好ましくは13.6以下、より更に好ましくは13.5以下、より更に好ましくは13.4以下、より更に好ましくは13.3以下、より更に好ましくは13.2以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは12.0以下、より更に好ましくは11以下、より更に好ましくは11.0以下であってよい。
本発明では、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数は、次の方法で測定されたものである。この測定方法は、特開2020-38061号公報に記載されている、界面活性剤と水とを含有する水性試料の物性を、水性試料に、油成分と、相変化用プローブを添加して、当該混合物の相構造が変化したときの相変化用プローブの量により見積もることができるという知見に基づくものである。
【0047】
<硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数の測定方法>
(1)検量線の作成
グリフィンのHLB値が異なる複数のポリオキシエチレンラウリルエーテルを用意する。
測定対象となる硬質物品用洗浄剤組成物中の界面活性剤の濃度(mmol/kg、以下同様)が未知の場合は、その濃度を測定しておく。
水とポリオキシエチレンラウリルエーテル(所定のHLBのもの)とを混合し、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの濃度が硬質物品用洗浄剤組成物中の界面活性剤の濃度と同じである前駆試料を調製する。
前駆試料に、油(平均炭素数16のイソパラフィン)2g及び溶剤(ブチルジグリコール)5gを添加して標準試料とし、標準試料に、相変化プローブ(2-エチルヘキシルジグリコール)を添加して標準試料の相構造が変化するまでに必要な相変化用プローブの量を定量する。この定量を、HLB値が異なる複数のポリオキシエチレンラウリルエーテルについて同一条件下で行い、複数の定量値を取得し、当該定量値と、当該定量値を与える標準試料が含む界面活性剤のHLB値とから検量線を作成する。
(2)親水親油指数の算出
硬質物品用洗浄剤組成物に、油(平均炭素数16のイソパラフィン)2g及び溶剤(ブチルジグリコール)5gを加えて測定試料とする。
測定試料に、相変化プローブ(2-エチルヘキシルジグリコール)を添加し、測定試料の相構造が変化するまでに必要な相変化用プローブの量を定量する。
測定試料についての相変化用プローブの定量値を検量線にあてはめ、対応する検量線のHLBの値を、硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数とする。
なお、前記(1)及び(2)の各操作において、各試料の温度はそれぞれ25℃とする。
【0048】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数は、例えば、(a)成分、(b)成分、任意成分の種類や配合量などを調整することで所定範囲とすることができる。本発明では親水性指数を所定の範囲にするために、例えば、以下の方法を、単独であるいは組み合わせて、採用することが好適である。
1:(a)/(b)成分の質量比を調整する。
(a)/(b)成分の質量比を、例えば、前記の通り、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは13以下、より更に好ましくは10以下とする。
2:親水性の界面活性剤である、(c)成分の含有量を調整する。
(c)成分の含有量を、例えば、前記の通り、組成物中の界面活性剤総量に対して、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは22質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは18.5質量%以下とする。
3:親水性の界面活性剤である、(d’)成分の含有量を調整する。
(d’)成分の含有量を、例えば、前記の通り、組成物中の界面活性剤総量に対して10質量%未満、更に5質量%以下、更に3質量%以下、更に1.5質量%以下、そして、0質量%以上とする、又は(d’)成分の組成物中の含有量を0質量%とする。
4:疎水性の界面活性剤、例えば、(d)成分などの含有量を調整する。
(d)成分の含有量を、例えば、前記の通り、組成物中の界面活性剤総量に対して10質量%未満、更に2質量%以下、更に1質量%以下、更に0.5質量%以下、そして、0質量%以上とする、又は(d)成分の組成物中の含有量を0質量%とする。
5:(e)成分の含有量を調整する。
(e)成分の含有量を、前記の通り、組成物中の界面活性剤総量に対して50質量%未満、更に10質量%以下、更に5質量%以下、更に3質量%以下、更に2質量%以下、そして、0質量%以上、更に0.1質量%以上、更に0.5質量%以上とする、又は(e)成分の組成物中の含有量を0質量%とする。
【0049】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、20℃のpHが、例えば、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、更に好ましくは6以上、そして、好ましくは11以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8.5以下であってよい。
【0050】
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、種々の硬質物品を対象とすることができるが、好ましくは食器及び/又は台所周りの硬質物品用であり、より好ましくは食器用である。
【0051】
台所周りの硬質物品は、台所の周辺で使用される物品であり、具体的には、
(1)冷蔵庫、食器棚などの食品、食器、調理器具の保存場所、
(2)排水溝、調理台、レンジフード、シンク、ガスレンジ、電子レンジなどの食品の調理場所、及び
(3)前記保存場所や前記調理場所の周辺の床や壁等
である。本発明では、これらを便宜上「台所周りの硬質物品」とする。
また、食器としては、具体的には、
(i)皿、椀等のいわゆる食器、
(ii)タッパー、瓶等の保存容器、
(iii)包丁やまな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具、
(iv)フードプロセッサー、ミキサー等の調理家電等
の食材が接触する部材や器具が挙げられる。本発明では、これらを便宜上「食器」とする。
また、本発明は、食器、保存容器、調理器具、及び調理家電から選ばれる物品を対象とすることが好ましく、更に皿、椀、タッパー、ビン、包丁、まな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル、フードプロセッサー、及びミキサーから選ばれる物品を対象とすることがより好ましい。
【0052】
本発明の対象とする硬質物品の材質は、プラスチック(シリコーン樹脂などを含む)、金属、陶器、木、及びそれらの組み合わせが挙げられる。そして、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物は、これら硬質物品に付着した油汚れを効果的に洗浄することができる。
【0053】
前述の通り、プラスチックなどの疎水性材料に付着した変性油汚れは落とし難い汚れであるが、本発明では、プラスチック製の硬質物品に付着した変性油汚れに対しても、優れた洗浄効果を示す。本発明は、プラスチック製の硬質物品の洗浄にも好適である。プラスチックは、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタラートなどが挙げられる。
【0054】
<硬質物品の洗浄方法>
本発明は、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を汚れの付着している硬質物品に接触させる、硬質物品の洗浄方法を提供する。本発明の硬質物品の洗浄方法には、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0055】
本発明の硬質物品の洗浄方法では、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を起泡させて硬質物品に接触させることができる。例えば、本発明の前記硬質物品用洗浄剤組成物を、例えば、スポンジで起泡させて又は泡形成機構を備えたスプレイヤーで起泡させて、硬質物品に接触させることができる。また、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を、噴霧、塗布、浸漬などにより硬質物品に接触させることができる。
【0056】
本発明の硬質物品の洗浄方法の対象とする硬質物品は、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物で述べたものが挙げられる。食器は、好適な硬質物品のひとつである。
【0057】
本発明の硬質物品の洗浄方法では、硬質物品に付着した汚れは、変性油汚れなどの油汚れであってよく、更に変性油汚れであってよい。
【0058】
本発明の硬質物品の洗浄方法では、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を、変性油、特に熱変性油を含む油汚れ等が付着した硬質物品を、前記組成物中に浸漬させて接触させてもよいが、効率的に洗浄力を高める観点から、前記組成物を噴霧又は塗布して、変性油、特に熱変性油を含む油汚れ等が付着した硬質物品に接触させる方法が好ましい。
本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を油汚れ等が付着した硬質物品に接触させる方法は、噴霧又は塗布が好ましく、液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する方法がより好ましい。本発明の組成物の硬質物品への接触には、具体的には、例えば、スプレー手段を用いる。すなわち本発明では、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる硬質物品用洗浄剤を用いるのが好ましい。
【0059】
泡状にして塗布する方法としては、例えば、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物に対しスプレイヤーのノズル部分で空気を巻き込ませて起泡する方法、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物をスポンジ或いは洗浄用繊維物品等に含ませた後、数回揉むことによって起泡させる方法を挙げることができる。
【0060】
本発明は、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り本発明の硬質物品用洗浄剤を提供する。
【0061】
本発明のスプレー容器入り硬質物品用洗浄剤における前記スプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0062】
本発明のスプレー容器入り硬質物品用洗浄剤において、液滴状に本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記組成物を入れるスプレー容器の噴射ノズルの噴口径は、スプレーのし易さや、噴射された液滴が荒くなく、直線状にスプレーされず、スプレーできる面積が極端に狭くならないために、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲である。
液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明のスプレー容器入り硬質物品用洗浄剤は、1回の操作で、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.3mL以上、そして、好ましくは5mL以下、より好ましくは2mL以下の組成物を噴霧する。
【0063】
泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明のスプレー容器入り硬質物品用洗浄剤は、1回の操作で、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、そして、好ましくは30mL以下、より好ましくは15mL以下、更に好ましくは5mL以下の組成物を噴霧する。
【0064】
本発明の硬質物品の洗浄方法では、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物を硬質物品に接触させて洗浄する。本発明の洗浄方法では、例えば、本発明の硬質物品用洗浄剤組成物中につけ置きする、塗布した状態で放置する、スポンジや繊維製品で擦る、流水により流す、等によって汚れを硬質物品から剥離し洗浄することができる。更にその後、流水等によりすすぎを行うことができる。本発明の洗浄方法は、手洗いによる洗浄方法であってよく、公知の手法に準じて、食器等の硬質物品を手洗い洗浄することができる。
【実施例0065】
下記配合成分を用いて表1~3の硬質物品用洗浄剤組成物を調製し、以下の方法で変性油汚れに対する洗浄性を評価した。結果を表1~3に示す。表中の親水親油指数は、前記方法により25℃で測定された組成物全体の値である。また、表中の調整量は、組成物のpHを表中の値に調整するために用いた量の意味である。
【0066】
<配合成分>
(a)成分
・アミート102:ポリオキシエチレンラウリルアミン、オキシエチレン基の平均付加モル数2.1、HLB9.1(グリフィン法相当実測値*1)、花王株式会社、アミート102
【0067】
(b)成分
・E102-KG:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数2、HLB6.42(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン102KG・E105:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数3.8、HLB9.7(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン105
・E108:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数5.6、HLB12.1(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン108
・E120:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数13.2、HLB15.3(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン120
・E121:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数21、HLB16.65(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン121
・E705:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数5、アルキル基は炭素数11~15の第2級アルキル基、HLB10.5(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン705
・E707:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数7、アルキル基は炭素数11~15の第2級アルキル基、HLB12.1(グリフィン法*2)、花王株式会社、エマルゲン707
・AG-124:アルキルポリグルコシド、アルキル基は炭素数12~16の第1級アルキル基、平均糖縮合度1~2、HLB11.5(グリフィン法相当実測値*1)、花王株式会社、AG-124
【0068】
(c)成分
・エマール20C:ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、オキシエチレン基の平均付加モル数3、HLB13.4(グリフィン法相当実測値*1)、花王株式会社、エマール20C
【0069】
(d)成分
・アミド型非イオン界面活性剤:花王株式会社、アミノーンPK-02S、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド
【0070】
(d’)成分
・ベタイン型界面活性剤:花王株式会社、アンヒトール20HD、ラウリルヒドロキシスルホベタイン
【0071】
(e)成分
・ブチルジグリコール:水に易溶(水への溶解度が25℃で5g/100g以上)
【0072】
*1 グリフィン法相当実測値は、各界面活性剤について本明細書に記載の<硬質物品用洗浄剤組成物の親水親油指数の測定方法>で測定された親水親油指数であり、その測定は、測定対象の界面活性剤を5質量%の濃度で含み残部が水である混合物を硬質物品用洗浄剤組成物として、25℃で行った。
*2 グリフィン法に基づくHLBは、オキシエチレン基の平均付加モル数を用いた計算値である。
【0073】
<変性油汚れに対する洗浄力>
(株)エンジニアリングテストサービス製SUS304テストピース(1.0mm×25mm×70mm)の保護フィルムをはがし、中性食器用洗剤を用いてスポンジ洗浄及びすすぎ(水道水1回、イオン交換水2回)を行い、電気乾燥機にて80℃で乾燥し、前処理済SUS板とした。前処理済SUS板の質量を下4桁の天秤にて秤量し、初期質量(X)とした。
変性油20g/クロロホルム60mlの割合で混合し、変性油/クロロホルム溶液を調製した。ここで、変性油は、ナタネ油(富士フイルム和光純薬株式会社)を180℃で8時間静置して加熱することで調製したものであった。
前処理済SUS板の片面25mm×50mmの面積に変性油/クロロホルム溶液を1mg/cm2になるようにスポイトを用いて1回かけ流した。油付着面を上向きにして一晩、平置きで乾燥させて、洗浄用SUS板とした。洗浄用SUS板の質量を下4桁の天秤にて秤量し、洗浄前質量(Y)とした。
表の硬質物品用洗浄剤組成物1種類につき洗浄用SUS板を3枚用いて評価した。洗浄用SUS板をバランスディッシュBD-3(140×140×25mm)に3枚並べ、40mlの硬質物品用洗浄剤組成物に浸漬し、25℃で20分放置した。その後、リーナッツ試験機を用いて300rpmの機械力で、1分間水道水ですすいだ後、一晩、平置きで乾燥させた。乾燥後の洗浄用SUS板の質量を下4桁の天秤にて秤量し、洗浄後質量(Z)とした。
初期質量(X)、洗浄前質量(Y)及び洗浄後質量(Z)から、以下の式で洗浄率を算出した。
洗浄率(%)=[洗浄前質量(Y)-洗浄後質量(Z)]/[洗浄前質量(Y)-初期質量(X)]×100
【0074】
【0075】
【0076】