(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167848
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】窒化ガリウムデバイス、スイッチングパワートランジスタ、駆動回路、及び窒化ガリウムデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/80 20060101AFI20221027BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20221027BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L29/80 Z
H01L29/80 H
H01L29/80 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022070166
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202110436275.X
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】バオ,チイローン
(72)【発明者】
【氏名】ジアーン,チイムオン
(72)【発明者】
【氏名】ターン,ガオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,ハンシーン
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン,ボーニーン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジャオジュヨン
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD04
5F102GJ03
5F102GL04
5F102GM04
5F102GN04
5F102GQ01
5F102HC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】窒化ガリウムデバイス、スイッチングパワートランジスタ、駆動回路及び窒化ガリウムデバイス製造方法を提供する。
【解決手段】窒化ガリウムデバイスのドレインは、P-GaN層500及びドレインメタルを含む。P-GaN層は、AlGaN層上に形成され、ゲート幅方向のストリップ構造である。ドレインメタルは、複数の第1の構造区間と複数の第2の構造区間とを含み、ゲート幅方向に交互に分布し、第1の構造区間610においてP-GaN層と接触し、第2の構造区間620においてP-GaN層と接触し、且つ、AlGaN層とオーミックコンタクトを形成し、第1の構造区間で局所的な正孔注入を実現するとともに、第2の構造区間でオーミックコンタクトを形成する。従って、P-GaNにおける正孔注入の効率が確保されながら、過大な固有オン抵抗を持たず、デバイスのスイッチング速度を高め、駆動損失を低減させ、信頼性を向上させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムデバイスであって、
基板と、
前記基板の上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層の上に形成された窒化ガリウムGaN層と、
前記窒化ガリウムGaN層の上に形成されたAlGaN層と、
前記AlGaN層上に形成されたソース、ドレイン、及びゲートと、
を有し、
前記ドレインは、P-GaN層及びドレインメタルを有し、
前記P-GaN層は、前記AlGaN層上に形成され、且つ当該窒化ガリウムデバイスのゲート幅方向のストリップ構造をしたものであり、
前記ドレインメタルは、前記ゲート幅方向に交互に分布した複数の第1の構造区間と複数の第2の構造区間とを有し、前記第1の構造区間において、前記ドレインメタルは前記P-GaN層と接触し、前記第2の構造区間において、前記ドレインメタルは、前記P-GaN層と接触し且つ前記AlGaN層とオーミックコンタクトを形成する、
窒化ガリウムデバイス。
【請求項2】
前記第1の構造区間において、
前記ドレインメタルは、前記P-GaN層上に形成され、
前記ドレインメタルの幅は、前記P-GaN層の幅以下である、
請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項3】
前記第1の構造区間において、
前記ドレインメタルは、前記P-GaN層上に形成され、
前記ドレインメタルの幅は、前記P-GaN層の幅より大きく、
前記ドレインメタルは、前記P-GaN層の両側に位置する延長部を有し、
前記延長部は、パッシベーション層によって前記AlGaN層から絶縁される、
請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項4】
前記第2の構造区間において、
前記ドレインメタルは、前記P-GaN層及び前記AlGaN層上に形成され、
前記ドレインメタルの幅は、前記P-GaN層の幅より大きく、
前記ドレインメタルは、前記P-GaN層の両側に位置する延長部を有し、
前記延長部が、前記AlGaN層とオーミックコンタクトを形成する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項5】
前記P-GaN層は、前記ゲート幅方向における全ての位置で同じ幅を持つ、請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項6】
前記ドレインメタルは、前記ゲート幅方向における全ての位置で同じ幅を持つ、請求項4に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項7】
前記複数の第1の構造区間及び前記複数の第2の構造区間は一体化された構造である、請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項8】
前記複数の第1の構造区間及び前記複数の第2の構造区間は、前記ゲート幅方向において交互に分布し、隣接する第1の構造区間と第2の構造区間との間に特定の間隔が存在する、請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の窒化ガリウムデバイスを製造するのに使用される窒化ガリウムデバイス製造方法であって、
基板上に、下から上に順に、バッファ層、GaN層、及びAlGaN層をエピタキシャル成長させ、
前記AlGaN層上のP-GaN層をエッチングし、該P-GaN層は、ゲート幅方向のストリップ構造をしたものにされ、
前記P-GaN層上及び前記P-GaN層の両側に位置する前記AlGaN層上に、前記ゲート幅方向に交互に分布した複数の第1の構造区間と複数の第2の構造区間とを持つようにドレインメタルを作製する、
ことを有する方法。
【請求項10】
前記第1の構造区間は、
前記P-GaN層上で前記ドレインメタルをエッチングすることで、前記ドレインメタルの幅が前記P-GaN層の幅以下であるようにして、前記第1の構造区間を形成する、
という方法を用いることによって得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の構造区間は、
前記P-GaN層上及び前記P-GaN層の前記両側に位置する前記AlGaN層上で前記ドレインメタルをエッチングすることで、前記ドレインメタルが、前記P-GaN層の前記両側に位置する延長部を有し、且つ該延長部が、前記AlGaN層とオーミックコンタクトを形成するようにして、前記第2の構造区間を形成する、
という方法を用いることによって得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の構造区間及び前記第2の構造区間は、
前記P-GaN層の前記両側の領域にあるパッシベーション層上で、前記ゲート幅方向の複数の区間で、エッチング除去を実行し、
前記P-GaN層上及び前記P-GaN層の前記両側に位置する前記AlGaN層上で前記ドレインメタルをエッチングすることで、前記ドレインメタルが、前記P-GaN層の前記両側に位置する延長部を有し、前記パッシベーション層がエッチングによって除去されていない領域で前記延長部が前記パッシベーション層によって前記AlGaN層から絶縁されるようにして、前記第1の構造区間を形成し、且つ、前記パッシベーション層がエッチングによって除去された領域で前記延長部が前記AlGaN層と接触するようにして、前記第2の構造区間を形成する、
という方法を用いることによって得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス又は請求項9に記載の製造方法を用いることによって製造された窒化ガリウムデバイスを有するスイッチングパワートランジスタ。
【請求項14】
ゲートドライバと、請求項1に記載の窒化ガリウムデバイスとを有し、
前記窒化ガリウムデバイスのゲートが、前記ゲートドライバの信号出力端子に結合され、
前記窒化ガリウムデバイスのソース及びドレインが、負荷回路に結合され、
前記ゲートドライバは、前記窒化ガリウムデバイスをターンオンさせるために第1の電位を出力し、前記窒化ガリウムデバイスをターンオフさせるために第2の電位を出力するように構成され、前記第1の電位は、前記窒化ガリウムデバイスのターンオン電位より高く、前記第2の電位は、前記窒化ガリウムデバイスの前記ターンオン電位より低い、
駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、半導体技術の分野に関し、特に、窒化ガリウムデバイス、スイッチングパワートランジスタ、駆動回路、及び窒化ガリウムデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの低エネルギー消費、高効率、及び高電力密度に対する要求が、現在、産業界においてますます明白になるのにつれて、窒化ガリウムに基づいて製造される窒化ガリウムデバイス(例えば、電界効果トランジスタなどのスイッチングデバイス)がますます注目を集めている。
【0003】
現在、窒化ガリウムデバイスは、主に、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/GaN)横型ヘテロ構造に基づくデバイスを含む。AlGaN/GaNヘテロ構造は、AlGaN/GaNヘテロ構造の界面に高い二次元電子ガス2DEGチャネルを持つので、高い電子移動度を有する二次元電子ガス(two-dimensional electron gas,2DEG)チャネルをAlGaN/GaNヘテロ構造の界面に自然形成することができる。従って、半導体シリコンデバイスと比較して、窒化ガリウムデバイスは、より低いエネルギー消費、より高い効率、及びより高い電力密度を持つ。
【0004】
しかしながら、現行の製造プロセスに基づいて製造される窒化ガリウムデバイスは、通常、幾つかの欠陥を有する。それらの欠陥は、窒化ガリウムデバイスにおける“電流コラプス”効果につながり得る。“電流コラプス”効果は、ここでは、窒化ガリウムデバイスのオン抵抗における上昇を意味し、それが、窒化ガリウムデバイスのスイッチング速度を低下させ、駆動損失を増加させ、デバイスの信頼性を低下させる。
【発明の概要】
【0005】
この出願の実施形態は、P-GaNにおける正孔注入の効率を確保しながら、デバイスに固有のオン抵抗における増加を回避し、それによって、デバイスのスイッチング速度を高め、デバイスの駆動損失を低減させ、デバイスの信頼性を向上させるような、窒化ガリウムデバイス、スイッチングパワートランジスタ、駆動回路、及び窒化ガリウムデバイスの製造方法を提供する。
【0006】
第1の態様によれば、この出願の一実施形態は窒化ガリウムデバイスを提供する。当該窒化ガリウムデバイスは、基板と、該基板の上に形成されたバッファ層と、該バッファ層の上に形成された窒化ガリウムGaN層と、該窒化ガリウムGaN層の上に形成されたAlGaN層と、該AlGaN層上に形成されたソース、ドレイン、及びゲートと、を含む。ドレインは、P-GaN層及びドレインメタルを含む。P-GaN層は、AlGaN層上に形成され、当該デバイスのゲート幅方向のストリップ構造をしたものである。ドレインメタルは、複数の第1の構造区間と複数の第2の構造区間とを含む。該複数の第1の構造区間及び第複数の第2の構造区間は、ゲート幅方向に交互に分布する。第1の構造区間において、ドレインメタルはP-GaN層と接触し、第2の構造区間において、ドレインメタルは、P-GaN層と接触し且つAlGaN層とオーミックコンタクトを形成する。
【0007】
上述の技術的ソリューションによれば、第1の構造区間で、ドレインメタルがP-GaN層と接触して局所的な正孔注入を実現するとともに、第2の構造区間でドレインメタルがAlGaN層とオーミックコンタクトを形成して、当該デバイスのドレインからソースへの電流導通を実現する。従って、P-GaNにおける正孔注入の効率が確保されながら、当該デバイスは過大な固有オン抵抗を持たず、それにより、デバイスのスイッチング速度を高め、デバイスの駆動損失を低減させ、デバイスの信頼性を向上させる。また、当該窒化ガリウムデバイスが製造されるとき、P-GaN層を不連続構造へとエッチングする必要がなく、それにより、デバイスの性能に対するエッチング精度の影響を回避し、より単純なプロセスを可能にする。
【0008】
第1の態様を参照するに、第1の態様の第1の取り得る実装において、第1の構造区間において、ドレインメタルは、P-GaN層上に形成され、ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルの幅は、P-GaN層の幅以下である。斯くして、ドレインメタルがAlGaN層と接触しないように、P-GaN層がドレインメタルをAlGaN層から絶縁することができる。従って、ドレインメタルの電子は、ドレインメタルの下にあるAlGaN層に注入されず、当該デバイスでは、ドレインメタルの下に局所的な正孔が形成され、当該デバイスに対する局所的な正孔注入を実現する。これらの局所的な正孔は負の電子トラップを補償することができ、その結果、電子トラップによって捕獲される電子が解放され、“電流コラプス”効果が回避される。
【0009】
第1の態様を参照するに、第1の態様の第2の取り得る実装において、第1の構造区間において、ドレインメタルは、P-GaN層上に形成され、ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルの幅は、P-GaN層の幅より大きく、ドレインメタルは、P-GaN層の両側に位置する延長部を含み、該延長部は、パッシベーション層によってAlGaN層から絶縁される。斯くして、ドレインメタルの幅はP-GaN層の幅より大きいが、ドレインメタルは、パッシベーション層により、AlGaN層と接触しない。従って、ドレインメタルの電子は、ドレインメタルの下にあるAlGaN層に注入されず、当該デバイスでは、ドレインメタルの下に局所的な正孔が形成され、当該デバイスに対する局所的な正孔注入を実現する。これらの局所的な正孔は負の電子トラップを補償することができ、その結果、電子トラップによって捕獲される電子が解放され、“電流コラプス”効果が回避される。
【0010】
第1の態様並びに第1の態様の第1及び第2の取り得る実装を参照するに、第1の態様の第3の取り得る実装において、第2の構造区間において、ドレインメタルは、P-GaN層及びAlGaN層上に形成され、ドレインメタルの幅は、P-GaN層の幅より大きく、ドレインメタルは、P-GaN層の両側に位置する延長部を有し、該延長部が、AlGaN層とオーミックコンタクトを形成する。斯くして、ドレインメタルの幅がP-GaN層の幅より大きいので、P-GaN層の幅範囲の外側に位置するドレインメタルが、AlGaN層とオーミックコンタクトを形成して、当該デバイスのドレインからソースへの電流導通を実現することができる。
【0011】
第1の態様並びに第1の態様の第1乃至第3の取り得る実装を参照するに、第1の態様の第4の取り得る実装において、P-GaN層は、ゲート幅方向における全ての位置で同じ幅を持つ。斯くして、P-GaN層がエッチングされるときに、異なる幅のためにP-GaN層の各位置におけるエッチング精度を制御する必要がなく、それによりプロセスの難しさが減る。
【0012】
第1の態様の第3の取り得る実装を参照するに、第1の態様の第5の取り得る実装において、ドレインメタルは、ゲート幅方向における全ての位置で同じ幅を持つ。斯くして、ドレインメタルがエッチングされるときに、異なる幅のためにP-GaN層の各位置におけるエッチング精度を制御する必要がなく、それによりプロセスの難しさが減る。
【0013】
第1の態様並びに第1の態様の第1乃至第5の取り得る実装を参照するに、第1の態様の第6の取り得る実装において、上記複数の第1の構造区間及び上記複数の第2の構造区間は一体化された構造である。斯くして、ドレインメタルがエッチングされるときに、第1の構造区間と第2の構造区間との間のエッチング間隔を制御する必要がなく、プロセスの難しさが減る。
【0014】
第1の態様並びに第1の態様の第1乃至第5の取り得る実装を参照するに、第1の態様の第7の取り得る実装において、上記複数の第1の構造区間及び上記複数の第2の構造区間は、ゲート幅方向において交互に分布し、隣接する第1の構造区間と第2の構造区間との間に特定の間隔が存在する。
【0015】
第2の態様によれば、この出願の一実施形態は、窒化ガリウムデバイス製造方法を提供する。当該方法は、この出願の第1の実施形態及び第1の実施形態の実装に従った窒化ガリウムデバイスを製造するのに使用される。当該方法は、基板上に、下から上に順に、バッファ層、GaN層、及びAlGaN層をエピタキシャル成長させ、AlGaN層上のP-GaN層をエッチングし、該P-GaN層は、ゲート幅方向の、連続したストリップ構造をしたものにされ、P-GaN層上及びP-GaN層の両側に位置するAlGaN層上に、ゲート幅方向に交互に分布した複数の第1の構造区間と複数の第2の構造区間とを持つようにドレインメタルを作製する、ことを含む。
【0016】
上述の技術的ソリューションによれば、第1の構造区間で、ドレインメタルがP-GaN層と接触して局所的な正孔注入を実現するとともに、第2の構造区間でドレインメタルがAlGaN層とオーミックコンタクトを形成して、当該デバイスのドレインからソースへの電流導通を実現する。従って、P-GaNにおける正孔注入の効率が確保されながら、当該デバイスは過大な固有オン抵抗を持たず、それにより、デバイスのスイッチング速度を高め、デバイスの駆動損失を低減させ、デバイスの信頼性を向上させる。また、当該窒化ガリウムデバイスが製造されるとき、P-GaN層を不連続構造へとエッチングする必要がなく、それにより、デバイスの性能に対するエッチング精度の影響を回避し、より単純なプロセスを可能にする。
【0017】
第2の態様を参照するに、第2の態様の第1の取り得る実装において、第1の構造区間は、P-GaN層上でドレインメタルをエッチングすることで、ドレインメタルの幅がP-GaN層の幅以下であるようにして、第1の構造区間を形成する、という方法を用いることによって得られる。斯くして、ドレインメタルがAlGaN層と接触しないように、P-GaN層がドレインメタルをAlGaN層から絶縁することができる。従って、ドレインメタルの電子は、ドレインメタルの下にあるAlGaN層に注入されず、当該デバイスでは、ドレインメタルの下に局所的な正孔が形成され、当該デバイスに対する局所的な正孔注入を実現する。これらの局所的な正孔は負の電子トラップを補償することができ、その結果、電子トラップによって捕獲される電子が解放され、“電流コラプス”効果が回避される。
【0018】
第2の態様を参照するに、第2の態様の第2の取り得る実装において、第2の構造区間は、P-GaN層上及びP-GaN層の両側に位置するAlGaN層上でドレインメタルをエッチングすることで、ドレインメタルが、P-GaN層の両側に位置する延長部を含み、且つ該延長部が、AlGaN層とオーミックコンタクトを形成するようにして、第2の構造区間を形成する、という方法を用いることによって得られる。斯くして、ドレインメタルの幅がP-GaN層の幅より大きいので、P-GaN層の幅範囲の外側に位置するドレインメタルが、AlGaN層とオーミックコンタクトを形成して、当該デバイスのドレインからソースへの電流導通を実現することができる。
【0019】
第2の態様を参照するに、第2の態様の第3の取り得る実装において、第1の構造区間及び第2の構造区間は、P-GaN層の両側の領域にあるパッシベーション層上で、ゲート幅方向の複数の区間で、エッチング除去を実行し、P-GaN層上及びP-GaN層の両側に位置するAlGaN層上でドレインメタルをエッチングすることで、ドレインメタルが、P-GaN層の両側に位置する延長部を含み、パッシベーション層がエッチングによって除去されていない領域で延長部がパッシベーション層によってAlGaN層から絶縁されるようにして、第1の構造区間を形成し、且つ、パッシベーション層がエッチングによって除去された領域で延長部がAlGaN層と接触するようにして、第2の構造区間を形成する、という方法を用いることによって得られる。斯くして、第1の構造区間において、ドレインメタルがAlGaN層と接触しないように、P-GaN層がドレインメタルをAlGaN層から絶縁することができる。従って、ドレインメタルの電子は、ドレインメタルの下にあるAlGaN層に注入されず、当該デバイスでは、ドレインメタルの下に局所的な正孔が形成され、当該デバイスに対する局所的な正孔注入を実現する。これらの局所的な正孔は負の電子トラップを補償することができ、その結果、電子トラップによって捕獲される電子が解放され、“電流コラプス”効果が回避される。第2の構造区間では、ドレインメタルの幅がP-GaN層の幅より大きいので、P-GaN層の幅範囲の外側に位置するドレインメタルが、AlGaN層とオーミックコンタクトを形成して、当該デバイスのドレインからソースへの電流導通を実現することができる。
【0020】
第3の態様によれば、この出願の一実施形態は駆動回路を提供する。当該駆動回路は、ゲートドライバと、この出願の実施形態における第1の態様及び第1の態様の実装に従った窒化ガリウムデバイスとを含む。窒化ガリウムデバイスのゲートが、ゲートドライバの信号出力端子に結合され、窒化ガリウムデバイスのソース及びドレインが、負荷回路に結合される。ゲートドライバは、窒化ガリウムデバイスをターンオンさせるために第1の電位を出力し、窒化ガリウムデバイスをターンオフさせるために第2の電位を出力するように構成され、第1の電位は、窒化ガリウムデバイスのターンオン電位より高く、第2の電位は、窒化ガリウムデバイスのターンオン電位より低い。斯くして、この窒化ガリウムデバイスを、負荷回路内のスイッチングデバイスとして使用することができ、ゲートドライバによってオン及びオフに制御される。この窒化ガリウムデバイスは、“電流コラプス”効果を克服して、小さい固有オン抵抗及び小さいデバイス損失を持つので、負荷回路の全体的な動作効率を向上させることができ、負荷回路によって発生する熱の総量を減らすことができ、負荷回路の動作安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一般的な窒化ガリウムデバイスの一断面の概略図である。
【
図2】“電流コラプス”効果を抑圧するために用いられる窒化ガリウムデバイスの一断面の概略図である。
【
図3】“電流コラプス”効果を抑圧するために用いられる窒化ガリウムデバイスの三次元図である。
【
図4】この出願の実施形態1に従った窒化ガリウムデバイスの三次元図である。
【
図5】この出願の実施形態1に従った、方向Aにおける第1の構造区間の部分断面図である。
【
図6】この出願の実施形態1に従った、方向Aにおける第2の構造区間の部分断面図である。
【
図7A】
図7A、
図7B、及び
図7Cは、この出願の実施形態2に従った窒化ガリウムデバイス製造方法のフローチャートである。
【
図7B】
図7A、
図7B、及び
図7Cは、この出願の実施形態2に従った窒化ガリウムデバイス製造方法のフローチャートである。
【
図7C】
図7A、
図7B、及び
図7Cは、この出願の実施形態2に従った窒化ガリウムデバイス製造方法のフローチャートである。
【
図8】この出願の実施形態3に従った窒化ガリウムデバイスの三次元図である。
【
図9】この出願の実施形態3に従った第1の構造区間の部分断面図である。
【
図10】この出願の実施形態3に従った第2の構造区間の部分断面図である。
【
図12】この出願の実施形態5に従った窒化ガリウムデバイスの構造の三次元図である。
【0022】
説明:
100:基板、200:バッファ層、300:GaN層、400:AlGaN層、410:パッシベーション層、500:P-GaN層、610:第1の構造区間、620:第2の構造区間、及び621:延長部。
【発明を実施するための形態】
【0023】
窒化ガリウム(GaN,gallium nitride)は、窒素とガリウムとの化合物であり、III族(ホウ素族元素)とV族(窒素族元素)との直接バンドギャップ半導体である。現在最も一般的に使用されている半導体材料であるシリコンが1.12eV(エレクトロンボルト)のバンドギャップを持つのに対し、窒化ガリウムは3.4eVという広いバンドギャップを持つ。従って、窒化ガリウムは、ハイパワーの高速デバイスにおいてシリコンデバイスよりも良好な性能を持つ。
【0024】
半導体デバイスの低エネルギー消費、高効率、及び高電力密度に対する要求が、現在、産業界においてますます明白になるのにつれて、窒化ガリウムに基づいて製造される窒化ガリウムデバイス(例えば、電界効果トランジスタ及びスイッチングパワートランジスタなどのスイッチングデバイス)がますます注目を集めている。現在、窒化ガリウムデバイスは、主に、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/GaN)横型ヘテロ構造に基づくデバイスを含む。AlGaN/GaNヘテロ構造は、AlGaN/GaNヘテロ構造の界面に高い二次元電子ガス2DEGチャネルを持つので、高い電子移動度を有する2DEGチャネルをAlGaN/GaNヘテロ構造の界面に自然形成することができる。従って、半導体シリコンデバイスと比較して、窒化ガリウムデバイスは、より低いエネルギー消費、より高い効率、及びより高い電力密度を持つ。さらに、窒化ガリウムは、広バンドギャップ半導体であり、通常は少なくとも500℃に達することができるものである高い動作温度を持つ。従って、窒化ガリウムデバイスは、高温条件下で動作することができる。加えて、窒化ガリウムは更に、高い破壊電界を持つ。従って、窒化ガリウムデバイスは、高いゲート-ドレイン破壊電圧を持ち、高電圧条件下で動作することができる。
【0025】
窒化ガリウムデバイスは、半導体デバイスの低エネルギー消費、高効率、及び高電力密度に対する産業界の要求を満たすが、現行の製造プロセスに基づいて製造される窒化ガリウムデバイスは、通常、幾つかの欠陥を有する。それらの欠陥は、窒化ガリウムデバイスにおける“電流コラプス”効果につながり得る。“電流コラプス”効果は、ここでは、窒化ガリウムデバイスのオン抵抗における上昇を意味し、これはシステムの動作安定性に影響を及ぼすものである。
【0026】
図1は、一般的な窒化ガリウムデバイスの一断面の概略図である。以下にて、
図1を参照して、窒化ガリウムデバイスにおける欠陥の原因を具体的に説明する。
図1に示すように、窒化ガリウムデバイスは自己支持基板を欠くため、窒化ガリウムデバイスは通常、エピタキシャル成長法を用いて製造される必要がある。具体的には、先ず、基板100(通常はシリコンSiである)の上にバッファ層200(buffer layer)がエピタキシャル成長され、次いで、バッファ層200の上にGaN層300がエピタキシャル成長され、次いで、GaN層300の上に窒化アルミニウムガリウムAlGaN層400がエピタキシャル成長されることで、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/GaN)横型ヘテロ構造を得ることができ、そして最後に、AlGaN層400上に、ソース(source,S)、ドレイン(drain,D)、及びゲート(gate,G)を作製することができる。斯くして、窒化ガリウムデバイスは製造される。
【0027】
しかしながら、基板とGaNは異なる材料のものであり、異なる格子定数及び異なる熱膨張係数を持つので、エピタキシャル層は、例えば基板とGaNとの間の格子ミスマッチ及び熱膨張ミスマッチなどの問題のためにクラックを有し、GaNエピタキシャル材料内に多量の欠陥を生じさせる。これらの欠陥は電子を捕獲し、動作状態においてデバイス内にあるキャリアの濃度の減少、ひいては、デバイスにおける“電流コラプス”効果をもたらす。
【0028】
図2は、“電流コラプス”効果を抑圧するために用いられる窒化ガリウムデバイスの一断面の概略図である。
図2に示すように、現在、“電流コラプス”効果を抑圧する方法は、GaNデバイスのドレインDに、P型ドープされた窒化ガリウムP-GaNアイランド構造を導入するものである。P-GaNアイランド構造は局所領域での正孔注入を実現することができる。正電荷の正孔は負の電子トラップを補償することができ、その結果、電子トラップによって捕獲される電子が解放される。
【0029】
図3は、“電流コラプス”効果を抑圧するために用いられる窒化ガリウムデバイスの三次元図である。
図3に示すように、ゲート幅方向において、P-GaNアイランド構造は、ドレインメタルD2と、島のように分布した複数のP-GaNアイランドとを含み得る。該複数のP-GaNアイランドは、ゲート幅方向に間隔を置いて分布し、ドレインメタルD2は、ゲート幅方向に連続して分布する。P-GaNアイランドが分布する領域でドレインメタルD2がP-GaNアイランド上に成長して、局所的な正孔注入を実現する。P-GaNアイランドが分布しない領域では、ドレインメタルD2はAlGaN層上に成長する。斯くして、複数のP-GaNアイランドが間隔を置いて分布する場合、チップ性能の実質的な損失を引き起こすことなく、デバイスの固有オン抵抗の実質的な上昇を回避することができる。
【0030】
しかしながら、実際の製造において、P-GaNアイランドの不連続構造はエッチングを介して得る必要があり、離隔距離の設計とエッチング精度との両方が、作製されるP-GaNアイランド間の離隔距離に影響を及ぼす。従って、P-GaNアイランド間の離隔距離は、制御するのがかなり難しい。過大な離隔距離はP-GaNアイランド構造における正孔注入の効率の低下をもたらすとともに、さらに、及び電子トラップの補償効果の低下をもたらす。過小な離隔距離は、デバイスの固有オン抵抗の上昇、デバイスの性能の低下、及びデバイスの使用コストの増加をもたらす。
【0031】
実施形態1
この出願の実施形態1は、P-GaNにおける正孔注入の効率を確保しながら装置の固有オン抵抗の上昇のリスクを低減させるための窒化ガリウムデバイスを提供する。
【0032】
図4は、この出願の実施形態1に従った窒化ガリウムデバイスの三次元図である。
図4に示すように、当該窒化ガリウムデバイスは、基板(substrate)100と、基板100の上に形成されたバッファ層(buffer layer)200と、バッファ層200の上に形成された窒化ガリウムGaN層300と、窒化ガリウムGaN層300の上に形成された窒化アルミニウムガリウムAlGaN層400と、AlGaN層400上に形成されたソース(source,S)、ドレイン(drain、D)、及びゲート(gate,G)とを含む。ドレイン(D)は、AlGaN層400上に形成されたP-GaN層500と、P-GaN層500上及びP-GaN層500の両側のAlGaN層400上に配置されたドレインメタルMとを含む。ドレインメタルMは、オーミック金属とし得る。
【0033】
特定の実装において、P-GaN層500は、ストリップ構造のものである。好ましくは、P-GaN層500は、ゲート幅方向における全ての位置で同じ幅を持つ。ドレインメタルMは、ゲート幅方向において複数の第1の構造区間610と複数の第2の構造区間620とを含み得る。複数の第1の構造区間610及び複数の第2の構造区間620は、ゲート幅方向において交互に分布している。複数の第1の構造区間610及び複数の第2の構造区間620は、ゲート幅方向において一体化された構造である。
図5は、この出願の実施形態1に従った、方向Aにおける第1の構造区間610の部分断面図である。
図5に示すように、第1の構造区間610において、ドレインメタルMはP-GaN層500上に形成される。好ましくは、ドレインメタルMがP-GaN層500のみと接触してAlGaN層400とは接触しないように、ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルMの幅H1は、P-GaN層500の幅H2以下である。斯くして、第1の構造区間610は、正孔の局所的な注入を実現することができる。
【0034】
図6は、この出願の実施形態1に従った、方向Aにおける第2の構造区間620の部分断面図である。
図6に示すように、第2の構造区間620においては、ドレインメタルMが、P-GaN層500上と、P-GaN層500の両側にあるAlGaN層400上とに形成される。ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルMの幅H3は、P-GaN層500の幅H2より大きい。この場合、P-GaN層500の各側で、ドレインメタルMは、P-GaN層500の幅範囲の外側にあって延長部621を形成する部分を有する。P-GaN層500上に位置するドレインメタルMの部分は、P-GaN層500と接触し、ドレインメタルMの延長部621は、AlGaN層400上に直接形成されて、AlGaN層400とオーミックコンタクト(Ohmic contact)を形成する。斯くして、第2の構造区間620は、動作状態にある当該デバイスのドレインDからソースSへの電流導通を実現することができる。
【0035】
さらに、
図6を参照して分かることには、第2の構造区間620において、ドレインメタルMの断面は、P-GaN層500上に留まった凹状構造を呈し得る。ドレインメタルMは、該凹状構造を用いることによって、ドレインメタルMとAlGaN層400との間にP-GaN層500を囲む。両側の凹状構造の部分が延長部621であり、凹状構造の中央部は、P-GaN層500上に形成された部分である。
【0036】
この出願のこの実施形態において、第1の構造区間610及び第2の構造区間620がゲート幅方向において交互に分布するということが意味するのは、ゲート幅方向において、1つの第2の構造区間620がいずれか2つの隣接する第1の構造区間610の間に配置され、1つの第1の構造区間610がいずれか2つの隣接する第2の構造区間620の間に配置されて、複数の第1の構造区間610と複数の第2の構造区間620とがゲート幅方向において均等に分布され得るようにするということである。斯くして、当該窒化ガリウムデバイスは、ゲート幅方向において正孔注入領域と電流導通領域とを均等に交互に形成することができ、ゲート幅方向における全ての位置でのデバイスの性能の一貫性を改善することができる。
【0037】
この出願のこの実施形態において、第1の構造区間610の数及び第2の構造区間620の数は、複数の形態をとり得る。例えば、第1の構造区間610の数及び第2の構造区間620の数は、ゲートの幅に関係し得る。より大きい幅のゲートは、より多数の第1の構造区間610及びより多数の第2の構造区間620に対応する。より小さい幅のゲートは、より少数の第1の構造区間610及びより少数の第2の構造区間620に対応する。斯くして、ゲートの幅にかかわらず、第1の構造区間610の数及び第2の構造区間620の数を調節することによって、ゲート幅方向における全ての位置でデバイスの性能に高い一貫性がある。
【0038】
この出願のこの実施形態において、ゲート幅方向における第2の構造区間620の長さに対する第2の構造区間620の長さの比は、複数の形態をとり得る。当業者は、実際に必要とされるデバイス性能に基づいてこの比を決定し得る。例えば、高濃度のキャリアを有する窒化ガリウムデバイスを得るために、第1の構造区間610の長さを増やしてもよいし、窒化ガリウムデバイスのドレインDからソースSへの電流導通の能力を高めるために、第2の構造区間620の長さを増やしてもよい。
【0039】
この出願のこの実施形態において、第1の構造区間610及び第2の構造区間620の形状は、複数の形態をとり得る。例えば、第1の構造区間610及び第2の構造区間620は、矩形、多角形、円形、楕円形、又はこれらに類するものとし得る。
【0040】
上述の構造によれば、第1の構造区間610で、ドレインメタルMはP-GaN層500のみと接触して局所的な正孔注入を実現するとともに、第2の構造区間620でドレインメタルMがAlGaN層400とオーミックコンタクト(Ohmic contact)を形成して、動作状態にある当該デバイスのドレインDからソースSへの電流導通を実現する。従って、P-GaNにおける正孔注入の効率を確保しながら、デバイスの固有オン抵抗の上昇のリスクを低減させることができる。また、この出願の実施形態1で提供される窒化ガリウムデバイスが製造されるとき、P-GaN層500を不連続構造へとエッチングする必要がなく、それにより、デバイスの性能に対するエッチング精度の影響を回避し、より単純なプロセスを可能にする。
【0041】
実施形態2
この出願の実施形態2は窒化ガリウムデバイス製造方法を提供する。当該方法は、この出願の実施形態1で提供される窒化ガリウムデバイス又は他の窒化ガリウムデバイスを得るために使用される。
【0042】
図7A、
図7B、及び
図7Cは、この出願の実施形態2に従った窒化ガリウムデバイス製造方法のフローチャートである。
図7A、
図7B、及び
図7Cに示すように、当該方法は以下の工程を含み得る。
【0043】
工程S101:基板100上に、下から上に順に、バッファ層200、GaN層300、及びAlGaN層400をエピタキシャル成長させる。
【0044】
工程S101は、窒化ガリウムデバイスを製造する従来からの工程であり、この出願のこの実施形態において更に詳述することはしない。
【0045】
工程S102:AlGaN層400上のドレインDのP-GaN層500をエッチングし、P-GaN層500は、ゲート幅方向の連続したストリップ構造をしたものにされる。
【0046】
工程S102において、AlGaN層400上のゲートGのP-GaN層600をエッチングするステップも実行され得る。AlGaN層400上のゲートGのP-GaN層600をエッチングすることは、窒化ガリウムデバイスを製造する従来からの工程であり、この出願のこの実施形態において更に詳述することはしない。
【0047】
工程S103:P-GaN層500上及びP-GaN層500の両側に位置するAlGaN層400上に、ドレインメタルMを作製する。
【0048】
ドレインメタルMは、ゲート幅方向に、複数の第1の構造区間610と複数の第2の構造区間620とを含み得る。第1の構造区間610及び第2の構造区間620は、ゲート幅方向において連続して交互に分布される。
【0049】
第1の構造区間610において、ドレインメタルMは、P-GaN層500上にのみあるようにエッチングされる。好ましくは、ドレインメタルMがP-GaN層500のみと接触してAlGaN層400とは接触しないように、ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルMの幅は、P-GaN層500の幅以下である。
【0050】
第2の構造区間620では、P-GaN層500の各側で、ドレインメタルMは、P-GaN層500の幅範囲の外側に位置して延長部621を形成する部分を有する。ドレインメタルMの延長部621は、AlGaN層400上に直接形成されて、AlGaN層400とオーミックコンタクト(Ohmic contact)を形成する。
【0051】
さらに、AlGaN層400上にソースメタルS-ohmを成長させる工程、及びゲートGのP-GaN層600上にゲートメタルG-Mを成長させる工程も、工程S103で実行され得る。AlGaN層400上にソースメタルS-ohmを成長させること及びゲートGのP-GaN層600上にゲートメタルG-Mを成長させることはどちらも、窒化ガリウムデバイスを製造する従来からの工程であり、この出願のこの実施形態において更に詳述することはしない。
【0052】
図7A、
図7B、及び
図7Cを参照して分かることには、この出願の実施形態1で提供される窒化ガリウムデバイスが製造されるとき、AlGaN層400上でエッチングを行うことによって連続したストリップP-GaN層500を生成すればよくて、P-GaN層500を複数のP-GaNアイランドへと精密にエッチングする必要はなく、それにより、単純なプロセスを可能に、デバイスの良品率及び生産効率を改善する助けとなる。
【0053】
実施形態3
この出願の実施形態3は、P-GaNにおける正孔注入の効率を確保しながら装置の固有オン抵抗の上昇のリスクを低減させるための窒化ガリウムデバイスを提供する。
【0054】
図8は、この出願の実施形態3に従った窒化ガリウムデバイスの三次元図である。
図8に示すように、当該窒化ガリウムデバイスは、基板(substrate)100と、基板100の上に形成されたバッファ層200と、バッファ層200の上に形成された窒化ガリウムGaN層300と、窒化ガリウムGaN層300の上に形成された窒化アルミニウムガリウムAlGaN層400と、AlGaN層400上に形成されたソース(source,S)、ドレイン(drain、D)、及びゲート(gate,G)とを含む。ドレイン(D)は、AlGaN層400上に形成されたP-GaN層500と、P-GaN層500上及びP-GaN層500の両側のAlGaN層400上に配置されたドレインメタルMとを含む。
【0055】
特定の実装において、P-GaN層500は、ストリップ構造のものである。好ましくは、P-GaN層500は、ゲート幅方向における全ての位置で同じ幅を持つ。ドレインメタルMは、ゲート幅方向において複数の第1の構造区間610と複数の第2の構造区間620とを含み得る。複数の第1の構造区間610及び複数の第2の構造区間620は、ゲート幅方向において交互に分布している。
【0056】
図9は、この出願の実施形態3に従った第1の構造区間610の部分断面図である。
図9に示すように、第1の構造区間610においては、ドレインメタルMが、P-GaN層500上と、P-GaN層500の両側にあるAlGaN層400上とに形成される。ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルMの幅H1は、P-GaN層500の幅H2より大きい。この場合、P-GaN層500の各側で、ドレインメタルMは、P-GaN層500の幅範囲の外側にあって延長部621を形成する部分を有する。P-GaN層500上に位置するドレインメタルMの部分は、P-GaN層500と接触している。AlGaN層400の表面上且つ延長部621の下の領域には、パッシベーション層410が保持される。ドレインメタルMの延長部621は、パッシベーション層410上に形成され、パッシベーション層410のみと接触してAlGaN層400とは接触せず、ドレインメタルMをAlGaN層400から絶縁する。斯くして、第1の構造区間610は、正孔の局所的な注入を実現することができる。また、第1の構造区間610内のP-GaN層500は更に、ドレインフィールドプレートとして機能し得る。この場合、正孔の局所注入を実現しながら、第1の構造区間610は、ドレインにおける高電圧電界をバランスさせる能力を持ち、デバイスの性能を向上させる。
【0057】
図10は、この出願の実施形態3に従った第2の構造区間620の部分断面図である。
図10に示すように、第2の構造区間620においては、第1の構造区間610におけるものと同様に、ドレインメタルMが、P-GaN層500上と、P-GaN層500の両側にあるAlGaN層400上とに形成される。ゲート幅方向に対して垂直な方向におけるドレインメタルMの幅H1は、P-GaN層500の幅H2より大きい。この場合、P-GaN層500の各側で、ドレインメタルMは、P-GaN層500の幅範囲の外側にあって延長部621を形成する部分を有する。P-GaN層500上に位置するドレインメタルMの部分は、P-GaN層500と接触する。AlGaN層400の表面上且つ延長部621の下の領域には、パッシベーション層410が保持されておらず、すなわち、パッシベーション層410がエッチングによって除去される。この場合、ドレインメタルMの延長部621は、AlGaN層400上に直接形成されて、AlGaN層400とオーミックコンタクト(Ohmic contact)を形成する。斯くして、第2の構造区間620は、動作状態にある当該デバイスのドレインDからソースSへの電流導通を実現することができる。
【0058】
好適な一実装において、第1の構造区間610におけるドレインメタルMの幅は、第2の構造区間620におけるドレインメタルMの幅H1と同じであり、プロセスの難しさを減らして製造を容易にする。
【0059】
さらに、
図9及び
図10を参照して分かることには、第1の構造区間610及び第2の構造区間620の両方において、ドレインメタルMの断面は、P-GaN層500上に留まった凹状構造を呈し得る。ドレインメタルMは、該凹状構造を用いることによってP-GaN層500を囲む。両側の凹状構造の部分が延長部621であり、凹状構造の中央部は、P-GaN層500と接触した部分である。
【0060】
上述の構造によれば、第1の構造区間610で、ドレインメタルMはP-GaN層500のみと接触して局所的な正孔注入を実現するとともに、第2の構造区間620でドレインメタルMがAlGaN層400とオーミックコンタクト(Ohmic contact)を形成して、動作状態にある当該デバイスのドレインDからソースSへの電流導通を実現する。従って、P-GaNにおける正孔注入の効率を確保しながら、デバイスの固有オン抵抗の上昇のリスクを低減させることができる。また、この出願の実施形態1で提供される窒化ガリウムデバイスが製造されるとき、P-GaN層500を不連続構造へとエッチングする必要がなく、それにより、デバイスの性能に対するエッチング精度の影響を回避し、より単純なプロセスを可能にする。さらに、第1の構造区間610内のP-GaN層500が更に、ドレインフィールドプレートとして機能し得る。この場合、正孔の局所注入を実現しながら、第1の構造区間610は、ドレインにおける高電圧電界をバランスさせる能力を持ち、デバイスの性能を向上させる。
【0061】
実施形態4
この出願の実施形態4は窒化ガリウムデバイス製造方法を提供する。当該方法は、この出願の実施形態3で提供される窒化ガリウムデバイス又は他の窒化ガリウムデバイスを得るために使用される。
【0062】
【0063】
工程S201:基板100上に、下から上に順に、バッファ層200、GaN層300、及びAlGaN層400をエピタキシャル成長させる。
【0064】
工程S201は、窒化ガリウムデバイスを製造する従来からの工程であり、この出願のこの実施形態において更に詳述することはしない。
【0065】
工程S202:AlGaN層400上のドレインDのP-GaN層500をエッチングし、ドレインDのP-GaN層500は、ゲート幅方向の連続して生成されたストリップ構造のものにされ得る。
【0066】
P-GaN層500がエッチングされるとき、P-GaN層500の両側の領域のパッシベーション層410は、ゲート幅方向に特定の間隔で保持されていることができ、すなわち、パッシベーション層410は、間隔を置いてエッチングすることによって除去され得る。
【0067】
加えて、工程S202において、AlGaN層400上のゲートGのP-GaN層600をエッチングするステップも実行され得る。AlGaN層400上のゲートGのP-GaN層600をエッチングすることは、窒化ガリウムデバイスを製造する従来からの工程であり、この出願のこの実施形態において更に詳述することはしない。
【0068】
工程S203:P-GaN層500上及びP-GaN層500の両側に位置するAlGaN層400上に、ドレインメタルMを作製する。
【0069】
ドレインメタルMは、ゲート幅方向に連続して分布し得る。
【0070】
ドレインメタルMの幅は、P-GaN層500の幅より大きい。この場合、P-GaN層500の各側で、ドレインメタルMは、P-GaN層500の幅範囲の外側に位置して延長部621を形成する部分を有する。P-GaN層500の両側の領域のパッシベーション層410が異なるエッチング状態にあるので、ドレインメタルMは、ゲート幅方向に、複数の第1の構造区間610と複数の第2の構造区間620とを含み得る。第1の構造区間610及び第2の構造区間620は、ゲート幅方向において連続して交互に分布される。
【0071】
パッシベーション層410が保持される領域(すなわち、パッシベーション層410がエッチングによって除去されない領域)において、ドレインメタルMは第1の構造区間610を形成する。第1の構造区間610では、P-GaN層500上に位置するドレインメタルMの部分がP-GaN層500と接触するとともに、ドレインメタルMの延長部621が、パッシベーション層410上に形成され、パッシベーション層410のみと接触してAlGaN層400とは接触しない。
【0072】
パッシベーション層410がエッチングされる領域(すなわち、パッシベーション層410が除去される領域)において、ドレインメタルMは第2の構造区間620を形成する。第2の構造区間620では、P-GaN層500上に位置するドレインメタルMの部分がP-GaN層500と接触するとともに、ドレインメタルMの延長部621が、AlGaN層400上に直接形成されてAlGaN層400とオーミックコンタクト(Ohmic contact)を形成する。
【0073】
さらに、AlGaN層400上にソースメタルS-ohmを成長させる工程、及びゲートGのP-GaN層600上にゲートメタルG-Mを成長させる工程も、工程S203で実行され得る。AlGaN層400上にソースメタルS-ohmを成長させること及びゲートGのP-GaN層600上にゲートメタルG-Mを成長させることはどちらも、窒化ガリウムデバイスを製造する従来からの工程であり、この出願のこの実施形態において更に詳述することはしない。
【0074】
図11A、
図11B、及び
図11Cを参照して分かることには、この出願の実施形態3で提供される窒化ガリウムデバイスが製造されるとき、AlGaN層400上でエッチングを行うことによって連続したストリップP-GaN層500を生成すればよくて、P-GaN層500を複数のP-GaNアイランドへと精密にエッチングする必要はなく、それにより、単純なプロセスを可能に、デバイスの良品率及び生産効率を改善する助けとなる。
【0075】
実施形態5
この出願の実施形態5は窒化ガリウムデバイスを提供する。
【0076】
図12は、この出願の実施形態5に従った窒化ガリウムデバイスの構造の三次元図である。
この出願の実施形態5による窒化ガリウムデバイスの構造の三次元図である。
図4と比較して、
図12から分かることには、この出願の実施形態5で提供される窒化ガリウムデバイスと実施形態1で提供される窒化ガリウムデバイスとの間の違いは、ドレインメタルMにおける第1の構造区間610及び第2の構造区間620が、ゲート幅方向に連続して分布するのではなく交互に分布しており、隣接する第1の構造区間610と第2の構造区間620との間に特定の間隔が存在することにある。この出願の実施形態5で具体的に説明されない残りの機構については、この出願の実施形態1の実装を参照されたい。詳細をここで再び説明することはしない。
【0077】
この出願の一実施形態は更にエレクトロニクス装置を提供する。当該エレクトロニクス装置は、例えば、電力アダプタ、整流器、インバータ、周波数変換器、サーバ、遠隔無線ユニット(remote radio unit,RRU)、又はスイッチング電源とし得る。当該エレクトロニクス装置は、この出願の実施形態で提供される窒化ガリウムデバイスを1つ以上含み得る。
【0078】
この出願の一実施形態は更に、ゲートドライバと、この出願の実施形態における第1の態様及び第1の態様の実装に従った窒化ガリウムデバイスと、を含む駆動回路を提供する。窒化ガリウムデバイスのゲートが、ゲートドライバの信号出力端子に結合され、窒化ガリウムデバイスのソース及びドレインが、負荷回路に結合される。ゲートドライバは、窒化ガリウムデバイスをターンオンさせるために第1の電位を出力し、窒化ガリウムデバイスをターンオフさせるために第2の電位を出力するように構成され、第1の電位は、窒化ガリウムデバイスのターンオン電位より高く、第2の電位は、窒化ガリウムデバイスのターンオン電位より低い。
【0079】
通常、窒化ガリウムデバイスは、制御のためにゲートを使用し、窒化ガリウムデバイスのオン/オフ状態を制御するために異なる電位の電気信号がゲートに入力される。ゲートに入力される電気信号が臨界電位よりも高いとき、窒化ガリウムデバイスはターンオンされる。ゲートに入力される電気信号が上記電位よりも低いとき、窒化ガリウムデバイスはターンオフされる。臨界電位は、窒化ガリウムデバイスのターンオン電位と称されることもある。この出願のこの実施形態において、ゲートドライバによって出力される第1の電位は高電位とも称され得る。第1の電位はターンオン電位よりも高いので、窒化ガリウムデバイスはターンオンされることができる。ゲートドライバによって出力される第2の電位は低電位とも称され得る。第2の電位はターンオン電位よりも低いので、窒化ガリウムデバイスはターンオフされることができ、それにより窒化ガリウムデバイスの状態制御を実現し得る。
【0080】
斯くして、この窒化ガリウムデバイスを、負荷回路内のスイッチングデバイスとして使用することができ、ゲートドライバによってオン及びオフに制御される。この窒化ガリウムデバイスは、“電流コラプス”効果を克服して、小さい固有オン抵抗及び小さいデバイス損失を持つので、負荷回路の全体的な動作効率を向上させることができ、負荷回路によって発生する熱の総量を減らすことができ、負荷回路の動作安定性を向上させることができる。
【0081】
容易に理解することには、当業者は、この出願で提供されたこれら幾つか実施形態に基づいて、この出願の実施形態を組み合わせ、分割し、又は組み立て直すことにより、他の実施形態を得ることができ、それらの実施形態はこの出願の保護の範囲を超えるものではない。本発明の目的、技術的ソリューション、及び利益は、以上の特定の実施形態において更に詳細に説明されている。理解されるべきことには、以上の説明は、単に本発明の特定の実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。本発明の技術的ソリューションに基づいてなされる如何なる変更、均等置換、又は改良も、本発明の保護範囲に入るものである。
【外国語明細書】