(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167880
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/09 20060101AFI20221027BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20221027BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K31/09
A61K31/4402
A61K31/485
A61K47/04
A61K47/12
A61P43/00 121
A61P3/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070733
(22)【出願日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2021073353
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517129485
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】糸川 昌太
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD41
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC27
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZC21
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA34
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】クロルフェニラミン又はその塩、デキストロメトルファン又はその塩、及びグアイフェネシンを同時配合した際の相互作用による湿潤及び/又は溶解を抑制し、外観品質の劣化を抑制した固形製剤を提供すること。
【解決手段】(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシン、並びに(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、固形製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシン、並びに(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、固形製剤。
【請求項2】
(a)クロルフェニラミン又はその塩の1質量部に対して、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.05質量部以上である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
(b)デキストロメトルファン又はその塩の1質量部に対して、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.01質量部以上である、請求項1または2に記載の固形製剤。
【請求項4】
(c)グアイフェネシンの1質量部に対して、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.005質量部以上である、請求項1~3いずれか記載の固形製剤。
【請求項5】
組成物全体に対する(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の含量が0.05~50質量%である、請求項1~4いずれか記載の固形製剤。
【請求項6】
(a)クロルフェニラミンまたはその塩が、クロルフェニラミンマレイン酸塩、及びd-クロルフェニラミンマレイン酸塩から選択される少なくとも1つである、請求項1~5いずれか記載の固形製剤。
【請求項7】
(b)デキストロメトルファン又はその塩が、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である、請求項1~6いずれか記載の固形製剤。
【請求項8】
(d)ケイ酸化合物が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びシリカからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~7いずれか記載の固形製剤。
【請求項9】
感冒用に用いられる、請求項1~8いずれか記載の固形製剤。
【請求項10】
剤形が、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又は丸剤である、請求項1~9いずれか記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロルフェニラミンを含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、特に総合感冒薬や解熱鎮痛剤などの一般用医薬品では、複数の薬効成分が配合されている。例えば、総合感冒薬においては、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、去痰剤、鼻炎薬など様々な薬効成分が配合された医薬品が広く流通している。このような複数の薬効成分が配合された製剤においては、配合される薬効成分間で相互作用を起こし、性状変化などの物理化学的変化を生じやすい。
【0003】
総合感冒薬の有効成分として使用される薬剤には、例えば、抗ヒスタミン剤のクロルフェニラミン、鎮咳剤のデキストロメトルファン、去痰剤のグアイフェネシンなどが知られている。
【0004】
特許文献1には、医薬有効成分とケイ酸処理結晶セルロース(ケイ化結晶セルロース)を含む安定な医薬組成物が開示されており、医薬有効成分の例として、デキストロメトルファン、グアイフェネシン、クロルフェニラミンなどが列挙されている。
【0005】
また、特許文献2には、ロキソプロフェン又はその塩に起因する消化管障害が軽減又は抑制された医薬組成物が開示されており、その消化管障害の軽減又は抑制は、ロキソプロフェン又はその塩を、トラネキサム酸又はその塩と、デキストロメトルファン若しくはその塩及び/又はクロルフェニラミン若しくはその塩及び/又はグアイフェネシンと組み合わせることにより達成されている。
【0006】
さらに、特許文献3~5には、ロキソプロフェン又はその塩とその相互作用成分との間の相互作用が抑制された医薬組成物が開示されており、ロキソプロフェン又はその塩と相互作用する成分として、クロルフェニラミン又はその塩、グアイフェネシン、デキストロメトルファン又はその塩などが列挙されている。また特許文献3には、医薬組成物が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどの塩基性化合物をさらに含んでもよいことが記載されている。
【0007】
また、特許文献6には、かぜの諸症状に対する治療及び緩和効果をより改善した感冒薬として、ナプロキセン又はその塩と、抗鼻炎作用成分、鎮咳成分及び去痰成分から選ばれる医薬成分とを含有する感冒薬が開示されており、医薬成分の例としてクロルフェニラミンマレイン酸塩、デキストロメトルファン、グアイフェネシンなどが列挙されている。また、該感冒薬が、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸塩を含んでもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008-523044号
【特許文献2】特開2011-225529号
【特許文献3】特開2012-106973号
【特許文献4】国際公開第2012/157752号
【特許文献5】国際公開第2013/047869号
【特許文献6】特開2018-076306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の文献のいずれも、総合感冒薬などの医薬品に複数の有効成分を配合し得ることを示しているが、(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシンを同時に配合すると、これらの薬剤の相互作用により湿潤及び/又は溶解が引き起し、外観品質を損ねる問題については全く記載も示唆もない。
本発明の課題は、上記三成分(a)、(b)及び(c)を同時配合した際の相互作用による湿潤及び/又は溶解を抑制し、外観品質の劣化を抑制した固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、上記三成分(a)、(b)及び(c)に加えて、(d)ケイ酸化合物及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合することで、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] (a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシン、並びに(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、固形製剤。
[2] (a)クロルフェニラミン又はその塩の1質量部に対して、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.05質量部以上である、[1]に記載の固形製剤。
[3] (b)デキストロメトルファン又はその塩の1質量部に対して、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.01質量部以上である、[1]または[2]に記載の固形製剤。
[4] (c)グアイフェネシンの1質量部に対して、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.005質量部以上である、[1]~[3]いずれか記載の固形製剤。
[5] 組成物全体に対する(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の含量が0.05~50質量%である、[1]~[4]いずれか記載の固形製剤。
[6] (a)クロルフェニラミンまたはその塩が、クロルフェニラミンマレイン酸塩、及びd-クロルフェニラミンマレイン酸塩から選択される少なくとも1つである、[1]~[5]いずれか記載の固形製剤。
[7] (b)デキストロメトルファン又はその塩が、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である、[1]~[6]いずれか記載の固形製剤。
[8] (d)ケイ酸化合物が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びシリカからなる群から選択される少なくとも1つである、[1]~[7]いずれか記載の固形製剤。
[9] 感冒用に用いられる、[1]~[8]いずれか記載の固形製剤。
[10] 剤形が、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又は丸剤である、[1]~[9]いずれか記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシンを同時配合した固形製剤において、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに配合することにより、これらの薬剤の相互作用による湿潤及び/又は溶解を抑制し、外観品質の劣化を抑制することができる。したがって、本発明によれば、上記三成分を含み、外観品質の劣化が抑制された固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の固形製剤は、(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシン、並びに(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明における「クロルフェニラミン又はその塩」は、クロルフェニラミン及びその薬学的に許容される塩、並びにクロルフェニラミン及びその薬学的に許容される塩と水やアルコールなどとの溶媒和物を含む。これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
クロルフェニラミンは不斉炭素を有するため、光学異性体が存在するが、本発明においては、単一の光学異性体であっても、各種光学異性体の混合物であってもよい。例えば、そのd-体、dl-体であってもよい。
クロルフェニラミンの薬学的に許容される塩としては、例えば、マレイン酸塩又はフマル酸塩などの有機酸塩、塩酸塩又は硫酸塩などの無機酸塩が挙げられる。
「クロルフェニラミン又はその塩」は、例えば、クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩(dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩)、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩を含み、好ましくは、クロルフェニラミンマレイン酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。
これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、日本薬局方に準拠したクロルフェニラミン又はその塩を用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「クロルフェニラミン又はその塩」の含量は、特に限定されず、上記投与量に基づいて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の0.02~1.5質量%、好ましくは0.04~0.8質量%である。
【0014】
本発明における「デキストロメトルファン又はその塩」は、デキストロメトルファン及びその薬学的に許容される塩、並びにデキストロメトルファン及びその薬学的に許容される塩と水やアルコールなどとの溶媒和物を含む。デキストロメトルファン又はその塩としては、例えば、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩などが挙げられ、好ましくは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である。これらは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、日本薬局方に準拠したデキストロメトルファン又はその塩を用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「デキストロメトルファン又はその塩」の含量は、特に限定されず、上記投与量に基づいて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の0.3~15質量%、好ましくは0.5~8質量%である。
【0015】
本発明における「グアイフェネシン」は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、日本薬局方に準拠したグアイフェネシンを用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれるグアイフェネシンの含量は、特に限定されず、上記投与量に基づいて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の1~60質量%、好ましくは2.5~50質量%、より好ましくは3~30質量%である。
【0016】
本発明における「ケイ酸化合物」は、上記本発明の効果が生じる限り特に限定されないが、例えば、日本薬局方、医薬品添加物規格、医薬部外品原料規格などに掲載された既知のケイ酸化合物などが挙げられる。ケイ酸化合物としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、シリカ(例えば、湿式シリカ、乾式シリカ)、ケイ酸金属塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム)、メタケイ酸金属塩(例えば、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)、ケイ酸類で表面処理した化合物(例えば、ケイ酸処理結晶セルロース)などが挙げられ、好ましくはケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びシリカから選択される少なくとも1種である。
本発明の固形製剤中に含まれるケイ酸化合物の含量は、特に限定されず、クロルフェニラミン又はその塩、デキストロメトルファン又はその塩、及びグアイフェネシン並びに他の薬効成分の含量などに応じて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の0.01~70質量%、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.1~40質量%である。
【0017】
本発明における「ステアリン酸マグネシウム」は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、日本薬局方に準拠したステアリン酸マグネシウムを用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれるステアリン酸マグネシウムの含量は、特に限定されず、クロルフェニラミン又はその塩、デキストロメトルファン又はその塩、及びグアイフェネシン並びに他の薬効成分の含量などに応じて適宜検討して決定すればよいが、例えば、固形製剤全体の0.01~70質量%、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.1~40質量%である。
【0018】
本発明の固形製剤に含まれる(a)クロルフェニラミン又はその塩と、(d)ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムの質量比は、特に限定されないが、例えば、クロルフェニラミン又はその塩の1質量部に対して、ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムが、例えば、その下限として0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であり、その上限として100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0019】
本発明の固形製剤に含まれる(b)デキストロメトルファン又はその塩と、(d)ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムの質量比は、特に限定されないが、例えば、デキストロメトルファン又はその塩の1質量部に対して、ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムが、例えば、その下限として0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、特に0.05質量部以上であり、その上限として100質量部以下、好ましくは20質量部以下である。
【0020】
本発明の固形製剤に含まれる(c)グアイフェネシンと、(d)ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムの質量比は、特に限定されないが、例えば、グアイフェネシンの1質量部に対して、ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムが、例えば、その下限として0.005質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、特に0.02質量部以上であり、その上限として50質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0021】
本発明の固形製剤に含まれる(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩及び(c)グアイフェネシンの組合せと、(d)ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムの質量比は、特に限定されないが、例えば、上記組合せ1質量部に対して、ケイ酸化合物及び/又はステアリン酸マグネシウムが、例えば、その下限として0.0001質量部以上、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.002質量部以上、さらにより好ましくは0.005質量部以上、特に0.01質量部以上であり、その上限として50質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0022】
本発明の課題である(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩及び(c)グアイフェネシンを同時配合した際の湿潤及び/又は溶解、それに基づく外観品質の劣化は、上記三成分が物理的に接触することにより生じていると考えられる。したがって、本発明の固形製剤としては、特に、上記三成分が物理的に分離されておらず、接触し得る状態で含まれる固形製剤が挙げられる。このような固形製剤としては、例えば、これらの成分を、同群で混合・造粒して得られる顆粒、又はこれらの造粒末を打錠して得られる錠剤、あるいはこれらの成分を、別群で造粒後、それらの造粒末を混合して得られる顆粒、又はこれらの混合末を打錠して得られる錠剤などが含まれる。
【0023】
本発明の固形製剤には、本発明の効果を阻害しない限り、クロルフェニラミン又はその塩、デキストロメトルファン又はその塩及びグアイフェネシン以外の有効成分、例えば、解熱鎮痛剤、鼻炎用薬、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミン類、催眠鎮静薬、喀痰溶解剤、抗炎症剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方などを配合してもよい。
【0024】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イブプロフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、ケトプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンナトリウムなどが例示できる。
鼻炎用薬として、塩酸プソイドエフェドリン、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、グリチルリチン酸ジカリウムなどが挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、タンニン酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、トリプロリジン塩酸塩水和物、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、クレマスチンフマル酸塩、メキタジンなどが例示できる。
麻薬性鎮咳剤としては、例えば、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩などが例示できる。
非麻薬性鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド、イソアミニル、エプラジノン、オキセラジン、クロフェダノール、クロブチノール、クロペラスチン、ジブナート、ジメモルファン、チペピジン、ノスカピン、ヒドロコタルニン、ペントキシベリン、ベンプロペリン及びホミノベン、並びにそれらの塩及び水和物が挙げられ、それらの塩及び水和物としては、例えば、塩酸アロクラミド、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、チペピジンクエン酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩及びそれらの水和物が例示できる。
去痰剤としては、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、クエン酸チペピジン、L-カルボシステイン、塩化アンモニウム、l-メントール、アンモニア・ウイキョウ精、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示できる。
気管支拡張剤としては、例えば、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l-塩酸メチルエフェドリン、塩酸プソイドエフェドリン、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。
胃粘膜保護剤としては、例えば、グリシン、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウムなどが例示できる。
カフェイン類としては、例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェインなどが例示できる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1類又はその誘導体若しくはそれらの塩、例えばチアミン硝化物、ビタミンB2類又はその誘導体若しくはそれらの塩、例えばリボフラビン、ビタミンC類又はその誘導体若しくはそれらの塩、例えばアスコルビン酸、ビタミンP(ヘスペリジン)又はその誘導体若しくはそれらの塩などが例示できる。
催眠鎮静薬として、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。
喀痰溶解剤としては、塩化リゾチーム、L-エチルシステイン塩酸塩、塩酸メチルシステインなどが例示できる。
抗炎症剤としては、塩化リゾチーム、セラプターゼ、及びグリチルリチン酸及びその塩などが例示できる。
抗コリン剤としては、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなどが例示できる。
生薬類としては、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタン含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジンなどが例示できる。
漢方処方としては、葛根湯、葛根湯加桔梗、桂皮湯、香蘇散、柴胡桂皮湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯などが例示できる。
【0025】
本発明の固形製剤は、上記有効成分と製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤とともに製剤化された形態であり得る。
上記担体又は添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、矯味剤、香料などが挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0026】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖水和物、精製白糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトールなどの糖又は糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなどが用いられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、カオリン、タルクなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、酸化チタンなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、アミノ酸及びそれらの塩などが挙げられる。
界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
矯味剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、スクラロース、ステビアエキスなどが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
上記した担体又は添加剤は、1種であっても、2種以上を適宜、混合して用いてもよい。
【0027】
本発明の固形製剤の製剤化は、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)、製剤機械技術ハンドブック(第2版、製剤機械技術研究会設立20周年記念出版編集委員会編、製剤機械技術研究会)のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いればよく、特別な制限はない。
【0028】
例えば、本発明の固形製剤を錠剤に製剤化する場合、上記有効成分と慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤を混合・造粒した後、製剤一般に用いられる各種打錠機(例えば、ロータリー式打錠機など)を使用して打錠し、錠剤とすることができる。また、本発明の固形製剤をカプセル剤に製剤化する場合、上記有効成分と慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤を混合・造粒した後、造粒物をカプセルに充填しカプセル剤とすることができる。造粒物の造粒方法は特に限定されず、公知の方法(押し出し造粒、転動造粒、撹拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、溶融造粒等)を用いればよい。
【0029】
本発明の固形製剤としては、例えば、錠剤(素錠、コーティング錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠などを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤などを含む)、顆粒剤、散剤、丸剤が挙げられ、好ましくは、錠剤が挙げられる。
【0030】
上記固形製剤は、通常配合されるコーティング基剤を用いて常法によりコーティングされてもよい。例えば、錠剤を、コーティング基剤を用いてコーティングし、フィルムコーティング錠としてもよい。
コーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴールなどの水溶性基剤、エチルセルロースなどの水不溶性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの腸溶性基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性基剤、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セラック、マクロゴール類、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
また、本発明において、コーティング基剤は、1種であっても2種以上であってもよい。
さらに、コーティングにコーティング添加剤を用いてもよい。コーティング添加剤としては、例えば、遮光剤、流動化剤、着色剤、可塑剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、コポリビドン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、ポリソルベートなどが挙げられる。
【0031】
また、本発明は、(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシンを含む固形製剤の外観劣化を抑制する方法であって、(d)ケイ酸化合物、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合することを特徴とする方法についても提供するものである。この方法における各要件(各成分、その使用量、その使用割合等)は、本発明の固形製剤について記載したとおりである。
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
(実施例1~8および比較例1~4)
表1に示す主薬成分及び添加成分をそれぞれ所定量秤量し、乳鉢にて物理混合することで混合物を得た。
【表1-1】
【表1-2】
【0034】
(試験例)
上記で得られた混合物(実施例1~8および比較例1~4)をガラス瓶に入れ密栓し、60℃条件下で3週間保存した。保存後の混合物の性状について保存開始直後と比較評価を行った。
【表2-1】
【表2-2】
【0035】
表2に示すとおり、ケイ酸カルシウムをはじめとするケイ酸化合物又はステアリン酸マグネシウムの配合群では60℃3週間保存でも混合物の状態が保たれることを確認した(実施例1~8)。その一方で、ケイ酸化合物又はステアリン酸マグネシウムの非配合群では混合物の溶解、並びに湿潤が認められ、混合物として状態の保持が困難であった(比較例1~4)。
以上の結果から、ケイ酸カルシウムをはじめとするケイ酸化合物及びステアリン酸マグネシウムが、クロルフェニラミン又はその塩、デキストロメトルファン又はその塩、及びグアイフェネシンの相互作用を抑制する効果を有することが明らかとなった。
【0036】
(製造例)
下記表3の区分Aに示した処方に従って各成分を混合して造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物を、区分Bに示した処方に従って各成分と混合し、打錠して、素錠を得た。得られた素錠を、区分Cに示した処方に従ってコーティングし、コーティング錠を得た。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、(d)ケイ酸化合物及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種によって、(a)クロルフェニラミン又はその塩、(b)デキストロメトルファン又はその塩、及び(c)グアイフェネシンの相互作用による湿潤及び/又は溶解が抑制され、外観品質の劣化が抑制された固形製剤を提供することができる。