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特開2022-167889ポリイミドフィルム及び電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167889
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221027BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20221027BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022071427
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】63/178,718
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミン-シャオ シャオ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE02
4F071AE09
4F071AE19
4F071AE22
4F071AF15
4F071AF21
4F071AF62
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4F071AH12
4F071AH13
4F071AH16
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4F071BC01
4F071BC12
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA34
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA31
4J043SA35
4J043SA36
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4J043SA47
4J043SB01
4J043SB03
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4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
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4J043UA381
4J043UA511
4J043UB401
4J043UB402
4J043ZA12
4J043ZA32
4J043ZA35
4J043ZB11
4J043ZB21
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】ポリイミドフィルム及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】第1の態様では、ポリイミドフィルムは、二無水物及びジアミンに由来するポリイミドを含む。二酸無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み、ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み、ポリイミドを形成する二酸無水物対ジアミンのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり、及びポリイミドフィルムは、400℃以上のTg、6.0GPa以上の引張弾性率及び50~500℃の温度範囲にわたる15ppm/℃以下の熱膨張係数を有する。第2の態様では、電子デバイスは、第1の態様のポリイミドフィルムを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物及びジアミンに由来するポリイミドを含むポリイミドフィルムであって、
前記二無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み;
前記ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み;
前記ポリイミドを形成する二無水物対ジアミンのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり;及び
前記ポリイミドフィルムは、400℃以上のTg、6.0GPa以上の引張弾性率及び50~500℃の温度範囲にわたる15ppm/℃以下の熱膨張係数を有する、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記二無水物は、前記ポリイミドの全二無水物含有量を基準として最大で70モルパーセントの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物を更に含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ベンズイミダゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、6,6’-ビス[2-(4-アミノベンゼン)ベンズイミダゾール]、[2,2’-ビ-1H-ベンズイミダゾール]-6,6’-ジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記ジアミンは、ベンゾオキサゾールを更に含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記ベンゾオキサゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス[5-アミノベンゾオキサゾール]、[2,2’-ビベンゾオキサゾール]-5,5’-ジアミン、2,6-(4,4’-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記ジアミンは、前記ポリイミドの全ジアミン含有量を基準として最大で50モルパーセントのp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、m-トリジン又はそれらの混合物を更に含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
架橋剤、着色剤、艶消剤、サブミクロン粒子又はそれらの混合物を更に含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
4~150μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
請求項1に記載のポリイミドフィルムを含む電子デバイス。
【請求項10】
前記ポリイミドフィルムは、薄膜トランジスタ基板、カラーフィルターシートのための基材、カバーフィルム及び金属張積層板からなる群から選択されるデバイスコンポーネントに使用される、請求項9に記載の電子デバイス。
【請求項11】
二無水物及びジアミンを含むポリアミド酸溶液であって、
前記二無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み;
前記ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み;
二無水物モノマー対ジアミンモノマーのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり;及び
前記ポリアミド酸溶液は、10~25重量パーセントの範囲の固形分及び300~3000ポアズの範囲の粘度を有する、ポリアミド酸溶液。
【請求項12】
前記二無水物は、ポリイミドの全二無水物含有量を基準として最大で70モルパーセントの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物を更に含む、請求項11に記載のポリアミド酸溶液。
【請求項13】
前記ベンズイミダゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、6,6’-ビス[2-(4-アミノベンゼン)ベンズイミダゾール]、[2,2’-ビ-1H-ベンズイミダゾール]-6,6’-ジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載のポリアミド酸溶液。
【請求項14】
前記ジアミンは、ベンゾオキサゾールを更に含む、請求項11に記載のポリアミド酸溶液。
【請求項15】
前記ベンゾオキサゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス[5-アミノベンゾオキサゾール]、[2,2’-ビベンゾオキサゾール]-5,5’-ジアミン、2,6-(4,4’-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載のポリアミド酸溶液。
【請求項16】
前記ジアミンは、ポリイミドの全ジアミン含有量を基準として最大で50モルパーセントのp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、m-トリジン又はそれらの混合物を更に含む、請求項11に記載のポリアミド酸溶液。
【請求項17】
架橋剤、着色剤、艶消剤、サブミクロン粒子又はそれらの混合物を更に含む、請求項11に記載のポリアミド酸溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、ポリイミドフィルム、電子デバイス及びポリアミド酸溶液である。
【背景技術】
【0002】
高温安定性、高い引張弾性率及び低い熱膨張係数(CTE)を有するポリイミドフィルムは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイにおける薄膜トランジスタ(TFT)基板、電子ペーパー(E-ペーパー)及びディスプレイのためのタッチセンサーパネル(TSP)のためなど、フレキシブルディスプレイ用途のために必要とされる。例えば、芳香族ポリイミドは、典型的には、320℃を超えるガラス転移温度(Tg)で非常に熱的に安定であり、それらをタッチセンサーパネル及びカバーウィンドウなどのフレキシブルディスプレイデバイスの様々な層での使用のための理想的な候補にする優れた折り畳み性及び巻取り性を有する。しかし、フレキシブルTFT基板について、良好な曲げ特性に加えて、TFT製造プロセスは、低いCTEも有し、且つ高い引張弾性率を維持しながら、長時間にわたって400℃以上の温度で安定であるフィルムを必要とする。
【0003】
ベンズイミダゾールを含有するポリマー繊維は、繊維中に高配向の秩序立った密詰め分子構造を形成する、ポリマー主鎖での分子内水素結合の導入により、高い強度、高いガラス転移温度(Tg)及び低いCTEを示すことができる。ポリベンズイミダゾール(PBI)は、極めて耐熱性の複素環ポリマーである。約430℃のTgにより、それは、400℃超の温度において優れた寸法安定性、剛性及び靱性の保持を示し、航空宇宙/軍需産業において、消火機器において且つ繊維又は樹脂の形態での燃料電池における膜として広く使用されている。PBIは、典型的なポリイミドより高い弾性率も有し、強度がある。5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール(DAPBI)など、ベンズイミダゾールベースのジアミンを含有するポリイミドフィルムは、良好な機械的特性を維持しながら、極限条件下で優れた熱及び酸化安定性を有することができる。しかしながら、ベンズイミダゾールによって導入される強い水素結合相互作用は、ポリイミドフィルムを製造するために使用されるポリアミド酸溶液の処理に課題も提示し得る。例えば、ポリイミドフィルムのための頑丈なロールトゥロールフィルム製造プロセスは、商業的に持続可能なプロセスを可能にするために、液体ポリアミド酸溶液の粘度及び固形分の良好な制御を必要とする。(特許文献1)は、ポリイミドのために使用される二酸無水物がピロメリット酸二無水物(PMDA)と3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)との組合せである、ベンズイミダゾールを有するフィルム形成可能なポリイミドコポリマーを記載している。しかしながら、ポリマーのための唯一の二酸無水物として、いかなるBTDAもなしにPMDAを使用することを試みる場合、フィルムを形成することは、不可能である。頑丈なポリイミドフィルムを製造するための類似の取り組み(非特許文献1)は、二酸無水物及びジアミンモノマーとしてのPMDA及びDAPBIのみの使用が、ポリマー主鎖の硬直性のため、問題があることを示している。PMDA//DAPBIポリイミドフィルムを製造するためのより最近の取り組み((特許文献2)及び(特許文献3))は、高いTg(400℃超)を有するポリイミドフィルムを製造するために低固形分、低粘度ポリアミド酸溶液を慎重に取り扱うためのプロセスを記載しているが、これらのポリイミドフィルムは、壊れやすく且つ脆く、本発明者らがこれらのサンプルに関して機械的試験を行うことを妨げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,770,733 B2号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第106928481 A号明細書
【特許文献3】特開2018-104525号公報
【特許文献4】米国特許第5,298,331号明細書
【特許文献5】米国特許第2,801,185号明細書
【特許文献6】米国特許第4,522,958号明細書
【特許文献7】米国特許第5,648,407号明細書
【特許文献8】日本特許第4406921B2号公報
【特許文献9】日本特許第4031624B2号公報
【特許文献10】米国特許第4,742,099号明細書
【特許文献11】米国特許第5,227,244号明細書
【特許文献12】米国特許第5,218,034号明細書
【特許文献13】米国特許第5,543,222号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Wang et al,J.Polym.Sci.Polym.Chem.(2009),47(8),2024-2031
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フレキシブルデバイス用途に使用することができる高いTg、低いCTE及び高い引張弾性率の頑丈なポリイミドフィルムが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、ポリイミドフィルムは、二酸無水物及びジアミンに由来するポリイミドを含む。二酸無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み、ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み、ポリイミドを形成する二酸無水物対ジアミンのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり、及びポリイミドフィルムは、400℃以上のTg、6.0GPa以上の引張弾性率及び50~500℃の温度範囲にわたる15ppm/℃以下の熱膨張係数を有する。
【0008】
第2の態様では、電子デバイスは、第1の態様のポリイミドフィルムを含む。
【0009】
第3の態様では、ポリアミド酸溶液は、二酸無水物及びジアミンを含む。二酸無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み、ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み、二酸無水物モノマー対ジアミンモノマーのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり、及びポリアミド酸溶液は、10~25重量パーセントの範囲の固形分及び300~3000ポアズの範囲の粘度を有する。
【0010】
前述の概要及び以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的であるにすぎず、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様では、ポリイミドフィルムは、二酸無水物及びジアミンに由来するポリイミドを含む。二酸無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み、ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み、ポリイミドを形成する二酸無水物対ジアミンのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり、及びポリイミドフィルムは、400℃以上のTg、6.0GPa以上の引張弾性率及び50~500℃の温度範囲にわたる15ppm/℃以下の熱膨張係数を有する。
【0012】
第1の態様の一実施形態では、二酸無水物は、ポリイミドの全二酸無水物含有量を基準として最大で70モルパーセントの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物を更に含む。
【0013】
第1の態様の別の実施形態では、ベンズイミダゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、6,6’-ビス[2-(4-アミノベンゼン)ベンズイミダゾール]、[2,2’-ビ-1H-ベンズイミダゾール]-6,6’-ジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
第1の態様の更に別の実施形態では、ジアミンは、ベンゾオキサゾールを更に含む。具体的な実施形態では、ベンゾオキサゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス[5-アミノベンゾオキサゾール]、[2,2’-ビベンゾオキサゾール]-5,5’-ジアミン、2,6-(4,4’-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0015】
第1の態様の更に別の実施形態では、ジアミンは、ポリイミドの全ジアミン含有量を基準として最大で50モルパーセントのp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、m-トリジン又はそれらの混合物を更に含む。
【0016】
第1の態様の更になおも別の実施形態では、ポリイミドフィルムは、架橋剤、着色剤、艶消剤、サブミクロン粒子又はそれらの混合物を更に含む。
【0017】
第1の態様の更なる実施形態では、ポリイミドフィルムは、4~150μmの範囲の厚さを有する。
【0018】
第2の態様では、電子デバイスは、第1の態様のポリイミドフィルムを含む。具体的な実施形態では、ポリイミドフィルムは、薄膜トランジスタ基板、カラーフィルターシートのための基材、カバーフィルム及び金属張積層板からなる群から選択されるデバイスコンポーネントに使用される。
【0019】
第3の態様では、ポリアミド酸溶液は、二酸無水物及びジアミンを含む。二酸無水物は、ピロメリット酸二無水物を含み、ジアミンは、ベンズイミダゾールを含み、二酸無水物モノマー対ジアミンモノマーのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲であり、及びポリアミド酸溶液は、10~25重量パーセントの範囲の固形分及び300~3000ポアズの範囲の粘度を有する。
【0020】
第3の態様の一実施形態では、二酸無水物は、ポリイミドの全二酸無水物含有量を基準として最大で70モルパーセントの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物を更に含む。
【0021】
第3の態様の別の実施形態では、ベンズイミダゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)ベンズイミダゾール、6,6’-ビス[2-(4-アミノベンゼン)ベンズイミダゾール]、[2,2’-ビ-1H-ベンズイミダゾール]-6,6’-ジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
第3の態様の更に別の実施形態では、ジアミンは、ベンゾオキサゾールを更に含む。具体的な実施形態では、ベンゾオキサゾールは、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス[5-アミノベンゾオキサゾール]、[2,2’-ビベンゾオキサゾール]-5,5’-ジアミン、2,6-(4,4’-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
第3の態様の更に別の実施形態では、ジアミンは、ポリイミドの全ジアミン含有量を基準として最大で50モルパーセントのp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、m-トリジン又はそれらの混合物を更に含む。
【0024】
第3の態様の更になおも別の実施形態では、ポリアミド酸溶液は、架橋剤、着色剤、艶消剤、サブミクロン粒子又はそれらの混合物を更に含む。
【0025】
多くの態様及び実施形態が上で記載されてきたが、それらは、例示的であるにすぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後、当業者は、他の態様及び実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを理解する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0026】
一実施形態では、ピロメリット酸二無水物及びベンズイミダゾール-ベースのジアミンの両方を有するポリアミド酸(PAA)溶液は、高いTg、低いCTE及び高い引張弾性率のポリイミドフィルムを形成するために使用することができる。PAA溶液は、高い固形分及び高い粘度を有することができる。PAAにおける二酸無水物対ジアミンモノマーの分子比を調整することにより、フィルム形成プロセスにわたる良好な制御は、頑丈なポリイミドフィルムの製造を可能にし、ロールトゥロール加工を用いて連続的な自立するポリイミドフィルムを形成することを可能にする。一実施形態では、PAA溶液は、銅箔上にキャストして銅張積層板を形成することができる。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、400℃以上のTg、6.0GPa以上の引張弾性率及び50~500℃の温度範囲にわたる15ppm/℃以下の熱膨張係数を有する。一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、10~25重量%の固形分及び300~3000ポアズの範囲の粘度を有する。一実施形態では、二酸無水物モノマー対ジアミンモノマーのモル比は、0.85:1~0.99:1の範囲である。これらのフレキシブルポリイミドフィルムは、例えば、TFT基板及びE-ペーパーのため並びにフレキシブル回路及び銅張積層板の製造において且つカバーウィンドウ、タッチセンサーパネル及び他の電子デバイス層のためになどのディスプレイデバイスにおいてなど、それらの高いTg(ガラス転移温度)、高い引張弾性率及び低いCTE(熱膨張係数)の利益が望まれるエレクトロニクス産業において多数の用途に使用することができる。
【0027】
文脈に応じて、「ジアミン」は、本明細書で用いる場合、(i)未反応の形態(すなわちジアミンモノマー)、(ii)部分的に反応した形態(すなわちジアミンモノマーに由来するか若しくは他にそれに起因するオリゴマー若しくは他のポリマー前駆体の1つ若しくは複数の部分)、又は(iii)完全に反応した形態(ジアミンモノマーに由来するか若しくは他にそれに起因するポリマーの1つ若しくは複数の部分)を意味することを意図する。ジアミンは、本発明の実施において選択される特定の実施形態に応じて、1つ以上の部分で官能化することができる。
【0028】
実際に、用語「ジアミン」は、ジアミン成分中のアミン部分の数に関して制限する(又は文字通り解釈される)ことを意図しない。例えば、上の(ii)及び(iii)には、2個、1個又は0個のアミン部分を有し得るポリマー材料が含まれる。代わりに、ジアミンは、(二酸無水物と反応してポリマー鎖を成長させるモノマーの末端のアミン部分に加えて)追加のアミン部分で官能化され得る。そのような追加のアミン部分は、ポリマーを架橋するか又は他の官能基をポリマーに与えるために用いることができよう。
【0029】
同様に、用語「二酸無水物」は、本明細書で用いる場合、ジアミンと反応し(ジアミンに対して相補的であり)、且つ組み合わせて反応して中間体(それは、その後、ポリマーに硬化し得る)を形成することができる成分を意味することを意図する。文脈に応じて、「酸無水物」は、本明細書で用いる場合、酸無水物部分自体のみならず、(i)カルボン酸基の対(それは、脱水又は同様のタイプの反応によって酸無水物に変換することができる);又は(ii)酸無水物官能基に変換することができる酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)エステル官能基(又は現在知られているか若しくは将来開発される任意の他の官能基)など、無水物部分の前駆体も意味することができる。
【0030】
文脈に応じて、「二酸無水物」は、(i)未反応の形態(すなわち酸無水物官能基が真の酸無水物形態であるか、若しくは先行する上の段落で考察されたような前駆体酸無水物形態であるかにかかわらず、二酸無水物モノマー);(ii)部分的に反応した形態(すなわち二酸無水物モノマーから反応したか若しくは他にそれに起因するオリゴマー若しくは他の部分的に反応した前駆体ポリマー組成物の1つ若しくは複数の部分)、又は(iii)完全に反応した形態(二酸無水物モノマー由来する若しくは他にそれに起因するポリマーの1つ若しくは複数の部分)を意味することができる。
【0031】
二酸無水物は、本発明の実施において選択される特定の実施形態に応じて、1つ以上の部分で官能化することができる。実際に、用語「二酸無水物」は、二酸無水物成分中の酸無水物部分の数に関して制限する(又は文字通り解釈される)ことを意図しない。例えば、(上の段落における)(i)、(ii)及び(iii)には、酸無水物が前駆体状態にあるか又は反応した状態にあるかに応じて、2個、1個又は0個の酸無水物部分を有し得る有機物質が含まれる。代わりに、二酸無水物成分は、(ジアミンと反応してポリマーを与える酸無水物部分に加えて)追加の酸無水物型部分で官能化され得る。このような追加の酸無水物部分は、ポリマーを架橋するか又は他の官能基をポリマーに与えるために使用することができよう。
【0032】
本明細書に記載されるものと類似の又は均等な方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料が本明細書に記載される。
【0033】
量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが範囲、好ましい範囲又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値のリストのいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上限範囲又は好ましい値と、任意の下限範囲又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書に列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、それの終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に列挙された具体的な値に限定されることを意図しない。
【0034】
特定のポリマーを記載するとき、それらを製造するために使用されるモノマー又はそれらを製造するために使用されるモノマーの量により、本出願人は、ポリマーに言及する場合があることが理解されるべきである。そのような記載は、最終的なポリマーを記述するために用いられる特定の命名法を含まなくてもよいか、又はプロダクトバイプロセス用語を含まなくてもよいが、モノマー及び量へのいかなるそのような言及も、ポリマーがそれらのモノマー又はその量のモノマーから製造されていること並びに対応するポリマー及びそれらの組成を意味すると解釈されるべきである。
【0035】
本明細書での材料、方法及び実施例は、例示的であるにすぎず、具体的に述べられる場合を除き、限定的であることを意図しない。本明細書で用いる場合、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的包含に及ぶことを意図する。例えば、要素のリストを含む方法、プロセス、物品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか、又はそのような方法、プロセス、物品又は装置に固有の他の要素を包含し得る。更に、それとは反対を明確に述べない限り、「又は」は、包括的な又はを意味し、排他的な又はを意味しない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aは、真であり(又は存在し)、及びBは、偽である(又は存在しない)、Aは、偽であり(又は存在せず)、及びBは、真である(又は存在する)、並びにA及びBは、両方とも真である(又は存在する)。
【0036】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用も本発明の要素及び成分を記載するために用いられる。これは、便宜上及び本発明の一般的な意味を示すために行われるにすぎない。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、そうでないことを意することが明らかでない限り、複数形も包含する。
【0037】
有機溶媒
本発明のポリマーの合成のための有用な有機溶媒は、好ましくは、ポリマー前駆体材料を溶解させることができる。そのような溶媒は、ポリマーを適度な(すなわちより便利でよりコストがかからない)温度で乾燥させることができるように、225℃未満などの比較的低い沸点も有するべきである。210、205、200、195、190又は180℃未満の沸点が好ましい。
【0038】
有用な有機溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メチルエチルケトン(MEK)、N,N’-ジメチル-ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、グリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,2-ビス-(2-メトキシエトキシ)エタン(トリグリム)、ガンマ-ブチロラクトン及びビス-(2-メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、ヒドロキシエチルアセテートグリコールモノアセテート、アセトン並びにそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、好ましい溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)が挙げられる。
【0039】
ジアミン
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するための好適なジアミンは、ベンズイミダゾールを含む。好適なベンズイミダゾールの例としては、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール(DAPBI)、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)ベンズイミダゾール(i-DAPBI)、6,6’-ビス[2-(4-アミノベンゼン)ベンズイミダゾール]及び[2,2’-ビ-1H-ベンズイミダゾール]-6,6’-ジアミンが挙げられる。一実施形態では、好適なジアミンとしては、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAPBO)、2,2’-p-フェニレンビス[5-アミノベンゾオキサゾール]、[2,2’-ビベンゾオキサゾール]-5,5’-ジアミン及び2,6-(4,4’-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾールなどのベンゾオキサゾールが更に挙げられる。
【0040】
一実施形態では、(ポリアミド酸溶液又はポリイミドの全ジアミン含有量を基準として)最大で50モルパーセントの1種以上の追加のジアミンを使用することもできる。
【0041】
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するための好適な追加のジアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン(DMD)、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン(DDD)、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン及びそれらの組合せなどの脂肪族ジアミンを挙げることができる。本発明を実施するための好適な他の脂肪族ジアミンとしては、6~12個の炭素原子を有するもの又は発展性及び柔軟性の両方が維持される限り、長鎖ジアミンと短鎖ジアミンとの組合せが挙げられる。長鎖脂肪族ジアミンは、柔軟性を高め得る。
【0042】
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するための好適な追加のジアミンとしては、シクロブタンジアミン(例えば、シス-及びトランス-1,3-ジアミノシクロブタン、6-アミノ-3-アザスピロ[3.3]ヘプタン及び3,6-ジアミノスピロ[3.3]ヘプタン)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミン、イソホロンジアミン並びにビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4ジアミンなどの脂環式ジアミン(完全に又は部分的に飽和であり得る)を挙げることができる。他の脂環式ジアミンとしては、シス-1,4-シクロヘキサンジアミン、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチル-シクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナンを挙げることができる。
【0043】
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するための好適な追加のジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、トリフルオロメチル-2,4-ジアミノベンゼン、トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、2,2’-ビス-(4-アミノフェニル)-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、3,3’-ジアミノ-5,5’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、9.9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-トリフルオロメチル-2,2’-ジアミノビフェニル、4,4’-オキシ-ビス-[2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン](1,2,4-OBABTF)、4,4’-オキシ-ビス-[3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-チオ-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼン-アミン]、4,4’-チオビス[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-スルホキシル-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン、4,4’-スルホキシル-ビス-[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-ケト-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、1,1-ビス[4’-(4’’-アミノ-2’’-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロペンタン、1,1-ビス[4’-(4’’-アミノ-2’’-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、2-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル;1,4-(2’-トリフルオロメチル-4’,4’’-ジアミノジフェノキシ)-ベンゼン、1,4-ビス(4’-アミノフェノキシ)-2-[(3’,5’-ジトリフルオロメチル)フェニル]ベンゼン、1,4-ビス[2’-シアノ-3’(4’’-アミノフェノキシ)フェノキシ]-2-[(3’,5’-ジトリフルオロ-メチル)フェニル]ベンゼン(6FC-ジアミン)、3,5-ジアミノ-4-メチル-2’,3’,5’,6’-テトラフルオロ-4’-トリ-フルオロメチルジフェニルオキシド、2,2-ビス[4’(4’’-アミノフェノキシ)フェニル]フタレイン-3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)アニリド(6FADAP)及び3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノ-ジフェニルメタン(TFDAM)などのフッ素化芳香族ジアミンを更に挙げることができる。特定の実施形態では、フッ素化ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)である。
【0044】
一実施形態では、p-フェニレンジアミン(PPD)、m-フェニレンジアミン(MPD)、m-トリジン(m-TB)、2,5-ジメチル-1,4-ジアミノベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン(DPX)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’’-ジアミノターフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルホン(BAPS)、4,4’-ビス-(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-イソプロピリデンジアニリン、2,2’-ビス-(3-アミノフェニル)プロパン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)-n-ブチルアミン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、m-アミノベンゾイル-p-アミノアニリド、4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)アニリン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミン-5-クロロトルエン、2,4-ジアミン-6-クロロトルエン、2,4-ビス-(ベータ-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス-(p-ベータ-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、p-ビス-2-(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、m-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンなど、任意の数の追加のジアミンをポリイミドフィルムの形成に使用することができる。
【0045】
他の有用なジアミンとしては、1,2-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-3-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス-(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)プロパン(BAPP)、2,2’-ビス-(4-フェノキシアニリン)イソプロピリデン、2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼン及び2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼンが挙げられる。
【0046】
二酸無水物
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するための好適な二酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)が挙げられる。一実施形態では、(ポリアミド酸溶液又はポリイミドの全二酸無水物含有量を基準として)最大で70モルパーセントの1種以上の追加の二酸無水物を使用することもできる。例えば、任意の数の好適な追加の二酸無水物をポリイミドフィルムの形成において使用することができる。二酸無水物は、それらのテトラ酸形態において(若しくはテトラ酸のモノ、ジ、トリ若しくはテトラエステルとして)又はそれらのジエステル酸ハロゲン化物(塩化物)として使用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、二酸無水物形態は、一般に酸又はエステルよりも反応性が高いため、好ましいものであり得る。
【0047】
好適な追加の二酸無水物の例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクテン-(7)-2,3,5,6-テトラカルボン酸-2,3,5,6-二無水物、4,4’-チオ-ジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニルオキサジアゾール-1,3,4)p-フェニレン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)2,5-オキサジアゾール1,3,4-二無水物、ビス2,5-(3’,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4-オキサジアゾール二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、ビスフェノールA二無水物(BPADA)、ビスフェノールS二無水物、ビス-1,3-イソベンゾフランジオン、1,4-ビス(4,4’-オキシフタル酸無水物)ベンゼン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、シクロペンタジエニルテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレン3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス-(4,4’-オキシジフタル酸無水物)ベンゼン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物及びチオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0048】
一実施形態では、好適な追加の二無水物としては、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ヘキサヒドロ-4,8-エタノ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン(BODA)、3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物(TCA)及びメソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などの脂環式二酸無水物を挙げることができる。一実施形態では、脂環式二酸無水物は、ポリイミドの全二酸無水物含有量を基準として約70モルパーセント以下の量で存在することができる。
【0049】
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するための好適な追加の二酸無水物としては、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボン酸二無水物などのフッ素化二酸無水物を挙げることができる。特定の実施形態では、フッ素化二酸無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)である。
【0050】
架橋剤
一実施形態では、架橋剤がポリマーフィルムを製造するために使用される。ポリイミドを架橋することにより、ポリマーフィルムは、改善された機械的特性及び改善された耐薬品性を有し得る。架橋剤としては、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-2010、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine(登録商標)ED-900、Jeffamine(登録商標)D-2003、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)THF-100、Jeffamine(登録商標)THF-170、Jeffamine(登録商標)SD-2001、Jeffamine(登録商標)D-205及びJeffamine(登録商標)RFD-270などのポリエーテルアミン、ピペラジン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン及びN,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミンなどの第二級アミン並びに2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)、メラミン、ジエチレントリアミン、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000などのトリアミンを挙げることができる。加えて、上記のような、ポリイミドのためのジアミンモノマーとして使用され得る多くのジアミンも架橋剤として有用であり得る。一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、100モルパーセントのジアミン及び85~99モルパーセントの二酸無水物の組成物を基準として最大で10モルパーセントの架橋剤を含有する。ポリイミドフィルムを形成するためのポリアミド酸のイミド化後、架橋剤のいくらか又は全ては、ポリイミドフィルム中に依然として残り得る。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、100モルパーセントのジアミン及び85~99モルパーセントの二酸無水物の組成物を基準として最大で10モルパーセントの架橋剤を含有する。
【0051】
着色剤
一実施形態では、ポリイミドフィルムは、1~40重量%の、顔料又は染料などの着色剤を含有する。いくつかの実施形態では、ポリイミドフィルムは、1~40重量%の、顔料と染料との混合物を含有する。いくつかの実施形態では、ポリイミドフィルムは、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含めて含有する:1、5、10、15、20、25、30、35及び40重量%の着色剤。
【0052】
実質的に、いずれの顔料(又は顔料の組合せ)も本発明の実施に使用することができる。いくつかの実施形態では、有用な顔料としては、以下のもの:バリウムレモンイエロー、カドミウムイエローレモン、カドミウムイエローライト、カドミウムイエローミドル、カドミウムイエローオレンジ、スカーレットレーキ、カドミウムレッド、カドミウムバーミリオン、アリザリンクリムゾン、パーマネントマゼンタ、バンダイクブラウン、ローアンバーグリーン又はバーントアンバーが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、有用な黒色顔料としては、酸化コバルト、Fe-Mn-Biブラック、Fe-Mn酸化物スピネルブラック、(Fe,Mn)23ブラック、亜クロム酸銅ブラックスピネル、ランプブラック、ボーンブラック、ボーンアッシュ、ボーンチャー、赤鉄鉱、ブラック酸化鉄、雲母酸化鉄、ブラック錯体無機色顔料(CICP)、(Ni,Mn,Co)(Cr,Fe)24ブラック、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、クロムグリーンブラック赤鉄鉱、クロム鉄酸化物、ピグメントグリーン17、ピグメントブラック26、ピグメントブラック27、ピグメントブラック28、ピグメントブラウン29、ピグメントブラウン35、ピグメントブラック30、ピグメントブラック32、ピグメントブラック33又はそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、顔料は、リトポン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化コバルト、イエロー酸化鉄、オレンジ酸化鉄、レッド酸化鉄、ブラウン酸化鉄、赤鉄鉱、ブラック酸化鉄、雲母酸化鉄、クロム(III)グリーン、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリンバイオレット、ウルトラマリンピンク、シアン化鉄ブルー、カドミウム顔料又はクロム酸鉛顔料である。
【0054】
いくつかの実施形態では、顔料は、スピネル顔料、ルチル顔料、ジルコン顔料又はバナジウム酸ビスマスイエローなどの錯体無機色顔料(CICP)である。いくつかの実施形態では、有用なスピネル顔料としては、Zn(Fe,Cr)24ブラウン、CoAl24ブルー、Co(AlCr)24ブルーグリーン、Co2TiO4グリーン、CuCr24ブラック又は(Ni,Mn,Co)(Cr,Fe)24ブラックが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、有用なルチル顔料としては、Ti-Ni-Sbイエロー、Ti-Mn-Sbブラウン、Ti-Cr-Sbバフ、ジルコン顔料又はバナジウム酸ビスマスイエローが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
別の実施形態では、顔料は、有機顔料である。いくつかの実施形態では、有用な有機顔料としては、アニリンブラック(ピグメントブラック1)、アントラキノンブラック、モノアゾタイプ、ジアゾタイプ、ベンズイミダゾロン、ジアリライドイエロー、モノアゾイエロー塩、ジニタニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、アゾレッド、ナフトールレッド、アゾ縮合顔料、レーキ顔料、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、キナクリドン、ジアリールピロロピロール、アミノアントラキノン顔料、ジオキサジン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、フタロシアニン顔料、イダントロン顔料、ピグメントバイオレット1、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19又はピグメントバイオレット23が挙げられるが、それらに限定されない。更に別の実施形態では、有機顔料は、ペリレン、ペリレンブラック、ペリノン又はチオインジゴなどの、しかしそれらに限定されない建染染料顔料である。単離された個々の顔料粒子(凝集体)の一様な分散系は、一様な色強度をもたらす傾向がある。いくつかの実施形態では、顔料は、粉砕される。いくつかの実施形態では、顔料の平均粒径は、以下のサイズの任意の2つの間(及び任意の2つを任意選択的に含めて)である:0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9及び1.0μm。いくつかの実施形態では、発光性(蛍光性若しくはリン光性)又は真珠光沢性顔料を単独で又は他の顔料若しくは染料と組み合わせて使用することができる。
【0056】
一実施形態では、着色剤としては、低導電率カーボンブラックが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、着色剤は、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含めて含有する:1、5、10、15及び20重量%の低導電率カーボンブラック。更に別の実施形態では、着色剤には、2~9重量%の低導電率カーボンブラックが含まれる。
【0057】
低導電率カーボンブラックは、チャネルタイプブラック、ファーネスブラック又はランプブラックを意味することを意図する。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、表面酸化カーボンブラックである。(カーボンブラックの)表面酸化の程度を評価するための1つの方法は、カーボンブラックの揮発分を測定することである。揮発分は、950℃で7分間焼成したときの重量損失を計算することによって測定することができる。一般的に言えば、高度に表面酸化されたカーボンブラック(高揮発分)は、ポリマー前駆体溶液に容易に分散させることができ、それは、次に、本開示の(十分に分散した)フィラー入りポリマーにイミド化することができる。カーボンブラック粒子(凝集体)が互いに接触しない場合、電子トンネル現象、電子ホッピング又は他の電子流機構は、一般に抑制され、より低い導電率をもたらすと考えられる。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、1%以上の揮発分を有する。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、5、9又は13%以上の揮発分を有する。いくつかの実施形態では、ファーネスブラックは、揮発分を増加させるために表面処理され得る。典型的には、低導電率カーボンブラックは、6未満のpHを有する。
【0058】
単離されたカーボンブラック粒子(凝集体)の一様な分散系は、導電率を減少させるのみならず、追加的に、一様な色の濃さをもたらす傾向がある。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、粉砕される。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックの平均粒径は、以下のサイズの任意の2つの間(及び任意の2つを任意選択的に含めて)である:0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9及び1.0μm。
【0059】
艶消剤
一実施形態では、ポリイミドフィルムは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、窒化ホウ素、硫酸バリウム、ポリイミド粒子、リン酸カルシウム、タルク又はそれらの混合物からなる群から選択される0.5~20重量%の艶消剤を含有する。いくつかの実施形態では、ポリイミドフィルムは、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含めて含有する:0.5、1、5、10、15及び20重量%の艶消剤。一実施形態では、艶消剤は、2~10μm、又は3~9μm、又は5~7μmの範囲の粒径を有する。
【0060】
サブミクロン粒子
一実施形態では、ポリイミドフィルムは、サブミクロンヒュームド金属酸化物(発熱性金属酸化物としても知られる)若しくはサブミクロンのコロイド状金属酸化物又はそれらの混合物など、最大で約39重量%の少なくとも1つのサブミクロン粒子を含有する。いくつかの実施形態では、サブミクロンヒュームド金属酸化物は、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ又はそれらの混合物である。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、最大で20重量%又は最大で10重量%の少なくとも1種のサブミクロン粒子を含む。一実施形態では、サブミクロン粒子は、約1μm未満の粒径を有する。一実施形態では、サブミクロン粒子は、0.01~1μm又は0.05~0.5μmの範囲の粒径を有する。
【0061】
サブミクロン粒子、カーボンブラック及び艶消剤の粒径は、LA-930(Horiba,Instruments,Inc.,Irvine CA)、Mastersizer 3000(Malvern Instruments,Inc.,Westborough,MA)又はLS-230(Beckman Coulter,Inc.,Indianapolis,IN)などの粒径分析装置を用いて、レーザー回折によってスラリーにおいて測定することができる。しかしながら、サブミクロン粒子の凝集する傾向のために、光学顕微鏡で観察することによってこれらの粉砕スラリーの粒径を測定することがより正確である場合がある。
【0062】
ポリイミドフィルム
一実施形態では、ポリイミドフィルムは、ジアミン及び二酸無水物(モノマー又は他のポリイミド前駆体形態)を溶媒と一緒に組み合わせてポリアミド酸溶液を形成することによって製造することができる。二酸無水物及びジアミンは、0.85:1~0.99:1、又は0.90:1~0.99:1、又は0.95:1~0.985:1、又は0.965:1~0.985:1のモル比で組み合わせることができる。それらから形成されるポリアミド酸の分子量は、二酸無水物とジアミンとのモル比、溶液粘度及び固形分を調整することによって調節することができる。1:1又は1:1超の二酸無水物対ジアミン比を標的とする代わりに、ポリイミドにおいて小不足量(1:1比未満)の二酸無水物を有することは、アミン鎖末端を含有するポリイミド鎖をもたらし、より高い湿度及びより多い酸環境下でのフィルム安定性を増加させることができる。これらのモル比において、高い粘度及び高い固形分のポリアミド酸溶液は、容易に処理して、高いTg、低いCTE及び高い引張弾性率の頑丈なフレキシブルフィルムを形成することができる。一実施形態では、PMDA及びDAPBIモノマーを有するポリアミド酸溶液は、10~25%の範囲の固形分を有しながら、300~3000ポアズの範囲の粘度で調製することができ、ポリイミドフィルムを形成するための大規模ロールトゥロール処理を可能にする。一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、500~2600、又は1000~2400、又は1300~2200ポアズの範囲の粘度を有することができる。一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、13~25%又は16~22%の範囲の固形分を有することができる。
【0063】
本発明に従ってポリアミド酸溶液を製造するための有用な方法は、その中の全ての教示について本明細書に参照により援用される(特許文献4)に見出すことができる。以下のような多数の変形形態も可能である:
(a)ジアミンのみが溶媒中に溶解され、次いで反応速度を制御することを可能にするような比率で二酸無水物がそれに添加される方法。
(b)二酸無水物成分のみが溶媒中に溶解され、次いで反応速度の制御を可能にするような比率でアミン成分がそれに添加される方法。
(c)ジアミン成分が過剰のポリアミド酸及び二酸無水物成分が過剰の別のポリアミド酸が事前に形成され、次いで特に非ランダム又はブロックコポリマーをもたらすような方法で反応器中において互いに反応される方法。
(d)ジアミン成分及び二酸無水物成分の特定の部分が最初に反応され、次いで残りのジアミン成分が反応されるか又はその逆の方法。
(e)成分が部分的に又は全体として、任意の順序で溶媒の一部又は全部のいずれかに添加され、また任意の成分の一部又は全部を溶媒の一部又は全部中の溶液として添加することができる方法。
(f)二酸無水物成分の1つをジアミン成分の1つと最初に反応させて第1のポリアミド酸を得る方法。次いで、別の二酸無水物成分を別のジアミン成分と反応させて第2のポリアミド酸を得る方法。次いで、イミド化の前に多数の方法のいずれか1つでアミド酸を結合させる方法。
【0064】
一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、(i)脂肪族酸無水物及び/又は芳香族酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水n-酪酸、無水安息香酸、無水トリフルオロ酢酸等)などの1種以上の脱水剤;並びに(ii)脂肪族第三級アミン(トリエチルアミン等)、芳香族第三級アミン(ジメチルアニリン等)及びヘテロ環第三級アミン(ピリジン、アルファ、ベータ及びガンマピコリン(2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン)、イソキノリン等)などの1種以上の触媒のような変換化学物質と組み合わせることができる。
【0065】
一実施形態では、変換化学物質は、イミド化温度を低下させる及びイミド化時間を短縮するのに役立つことができるイミド化触媒(「イミド化促進剤」と呼ばれる場合もある)であり得る。典型的なイミド化触媒は、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、メチルピリジン、ルチジンなどの置換ピリジン及びトリアルキルアミンなどの塩基から並びにヒドロキシ安息香酸の異性体などのヒドロキシ酸に及ぶことができる。ポリアミド酸層中のこれらの触媒の比率及びそれらの濃度は、イミド化反応速度及びフィルム特性に影響を与えるであろう。
【0066】
一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸を部分的に又は完全にイミド化し、それをポリイミドに変換するために、任意選択的にイミド化触媒の存在下で加熱することができる。温度、時間並びにイミド化触媒の濃度及び選択は、ポリアミド酸溶液のイミド化の程度に影響を及ぼすことができる。好ましくは、溶液は、実質的にイミド化されるべきである。一実施形態では、実質的にポリイミド溶液について、赤外分光法により測定されるように、アミド酸基の85%超、90%超又は95%超がポリイミドに変換される。
【0067】
一実施形態では、ポリイミドフィルムを形成するために溶媒和混合物(実質的にイミド化された溶液)をキャストすることができる。別の実施形態では、溶媒和混合物(第1の実質的にイミド化された溶液)は、水又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)などの貧溶媒で析出させることができ、固体ポリイミド樹脂を単離することができる。例えば、単離は、濾過、デカンテーション、遠心分離及び上澄み液のデカンテーション、蒸留若しくは気相での溶媒除去又はスラリーから固体析出物を分離するための他の公知の方法によって達成することができる。一実施形態では、触媒を除去するために析出物を洗浄することができる。洗浄後、析出物は、実質的に乾燥され得るが、完全に乾燥する必要はない。ポリイミド析出物は、第2の実質的にイミド化された溶液(キャスティング溶液)を形成するために、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸メチル、テトラヒドロフラン、アセトン、DMAc、NMP及びそれらの混合物などの第2の溶媒中に再溶解させることができ、それは、キャストされてポリイミドフィルムを形成することができる。
【0068】
キャスティング溶液は、加工助剤(例えば、オリゴマー)、酸化防止剤、光安定剤、難燃性添加剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、無機フィラー又は様々な強化剤などの多数の添加剤のいずれか1つを更に含むことができる。無機フィラーとしては、熱伝導性フィラー、金属酸化物、無機窒化物及び金属炭化物を挙げることができる。一般的な無機フィラーは、アルミナ、シリカ、ダイヤモンド、粘土、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸二カルシウム及びヒュームド金属酸化物である。ポリジアルキルフルオレンなどの低着色有機フィラーを使用することもできる。
【0069】
一実施形態では、ポリイミドフィルムの弾性率は、サブミクロンフィラーの存在によって増加させることができる。サブミクロンフィラーは、無機物又は有機物であり得、以下の百分率の任意の2つの間及び任意の2つを任意選択的に含む量で存在することができる:ポリイミドフィルムの5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55及び60重量パーセント。
【0070】
一実施形態では、サブミクロンフィラーは、少なくとも1つの次元で550nm未満のサイズを有することができる。他の実施形態では、フィラーは、少なくとも1つの次元で500未満、450未満、400未満、350未満、300未満、250未満、200nm未満又は100nm未満のサイズを有することができる(フィラーは、任意の次元で様々な形状を有することができ、及びフィラー形状は、任意の次元に沿って変わることができるため、「少なくとも1つの次元」は、その次元に沿った数値平均であることを意図する)。フィラーの平均アスペクト比は、球状粒子について1又は非球状粒子について1超であり得る。いくつかの実施形態では、サブミクロンフィラーは、針状フィラー(アシキュラー)、繊維状フィラー、板状フィラー、ポリマー繊維及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、サブミクロンフィラーは、実質的に凝集していない。サブミクロンフィラーは、中空、多孔質若しくは中実であり得るか、又は1つの組成物がコアにあり、第2の組成物がシェルにあるコア-シェル構造を有することができる。一実施形態では、本開示のサブミクロンフィラーは、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも4:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも12:1又は少なくとも15:1のアスペクト比を示す。
【0071】
いくつかの実施形態では、サブミクロンフィラーは、少なくとも1つの次元でサイズが100nm以下である。いくつかの実施形態では、フィラーは、形状が球形、レンズ状又は楕円形であり、ナノ粒子である。一実施形態では、サブミクロンフィラーとしては、ケイ素、アルミニウム及びチタンの酸化物、中空(多孔質)酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、混合チタン/スズ/ジルコニウム酸化物並びにケイ素、チタン、アルミニウム、アンチモン、ジルコニウム、インジウム、スズ、亜鉛、ニオブ及びタンタルから選択される1種以上のカチオンの二元、三元、四元及びより高次の複合酸化物などの無機酸化物を挙げることができる。一実施形態では、1種の酸化物が1つの粒子中で別の酸化物を封入している、ナノ粒子複合材料(例えば、単一又は複数のコア/シェル構造物)を使用することができる。
【0072】
一実施形態では、サブミクロンフィラーとしては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ホウ素とアルミニウムと窒素とを含有する三元以上の化合物、窒化ガリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化亜鉛及びそれらの組合せ又は複数のカチオンと複数のアニオンとを含有するより高次の化合物などの他のセラミック化合物を挙げることができる。
【0073】
一実施形態では、固体酸化ケイ素ナノ粒子は、酸化ケイ素のゾル(例えば、液体媒体中の固体酸化ケイ素ナノ粒子のコロイド分散系)、とりわけ非晶性、半結晶性及び/又は結晶性シリカのゾルから製造することができる。そのようなゾルは、様々な技法により且つヒドロゾル(すなわち水が液体媒体として機能する)、オルガノゾル(すなわち有機液体が液体媒体として機能する)及び混合ゾル(すなわち液体媒体が水及び有機液体の両方を含む)を含む様々な形態で調製することができる。例えば、(特許文献5)、(特許文献6)及び(特許文献7)に開示されている技法及び形態の説明を参照されたい。一実施形態では、ナノ粒子は、DMAc又はポリアミド酸若しくはポリイミド酸溶液と相溶性のある他の溶媒など、極性の非プロトン性溶媒中に懸濁される。別の実施形態では、固体酸化ケイ素ナノ粒子は、例えば、DMAC-ST(Nissan Chemical America Corporation,Houston TX)、約20nmのメジアンナノシリカ粒子径d50の、20~21重量%のSiO2の、1重量%未満の水を含有するジメチルアセトアミド中の固体シリカコロイドなど、極性の非プロトン性溶媒中に分散されたコロイド分散系又はゾルとして商業的に入手することができる。
【0074】
一実施形態では、サブミクロンフィラーは、多孔質であり得、任意の形状の細孔を有することができる。1つの例は、細孔が、酸化ケイ素などの酸化物のシェル内に形成されたより低い密度及び低い屈折率の空隙(例えば、空気を含有する空隙)を含む場合、すなわち中空酸化ケイ素ナノ粒子である。サブミクロンフィラーのシェルの厚さは、サブミクロンフィラーの強度に影響を与える。中空酸化ケイ素粒子は、低下した屈折率及び増加した空隙率を有する状態にされるため、シェルの厚さが減少し、サブミクロンフィラーの強度(すなわち耐破壊性)の低下をもたらす。そのような中空酸化ケイ素ナノ粒子の製造方法は、例えば、(特許文献8)及び(特許文献9)に記載されているように公知である。中空酸化ケイ素ナノ粒子は、日揮触媒化成株式会社、日本から入手することができる。
【0075】
一実施形態では、サブミクロンフィラーは、カップリング剤でコーティングすることができる。例えば、ナノ粒子は、アミノシラン、フェニルシラン、対応するアルコキシシランから誘導されるアクリル又はメタクリルカップリング剤でコーティングすることができる。トリメチルシリル表面キャッピング剤は、サブミクロンフィラーとヘキサメチルジシラザンとの反応により、ナノ粒子表面に導入することができる。一実施形態では、サブミクロンフィラーは、分散剤でコーティングすることができる。一実施形態では、サブミクロンフィラーは、カップリング剤と分散剤との組合せでコーティングすることができる。代わりに、カップリング剤、分散剤又はそれらの組合せは、ポリイミドフィルム中に直接組み込むことができ、必ずしもサブミクロンフィラー上にコーティングされる必要はない。
【0076】
いくつかの実施形態では、サブミクロンフィラーは、それ自体が所望の処理温度で分解しないか又はオフガスを生成しないように選択される。同様に、いくつかの実施形態では、サブミクロンフィラーは、ポリマーの分解に寄与しないように選択される。
【0077】
一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、部分的にポリアミド酸及び部分的にポリイミドであり、且つ熱変換プロセスにおいて形成され得る「グリーンフィルム」を形成することができる。グリーンフィルムは、一般に、約50~75重量%のポリマーと25~50重量%の溶媒とを含有する。一般に、それは、実質的に自立するのに十分に強いものであるべきである。グリーンフィルムは、キャスティングドラム又はベルトなどの好適な支持体上にフィルム形態へとポリアミド酸溶液をキャストすることにより、且つ最大で150℃において穏やかに加熱することによって溶媒を除去することにより調製することができる。ポリマー中の低い割合の例えば最大で25%のアミド酸単位がイミド単位に変換され得る。一実施形態では、ポリアミド酸溶液は、グリーンフィルムを形成するために、エンドレスベルト又は回転ドラムなどの支持体上にキャスト又は塗布することができる。代わりに、それは、PET、他の形態のKapton(登録商標)ポリイミドフィルム(例えば、Kapton(登録商標)HN若しくはKapton(登録商標)OLフィルム)又は他のポリマー担体などのポリマー担体上にキャストすることができる。次に、溶媒含有フィルムは、溶媒を部分的に又は完全に除去するために加熱することによってポリイミドフィルムに変換することができる。本発明のいくつかの態様では、グリーンフィルムは、完全に乾燥させる前に担体から分離される。最終的な乾燥工程は、フィルムの寸法支持又は安定化と共に行うことができる。他の態様では、湿潤フィルムは、担体上で直接加熱される。
【0078】
一実施形態では、実質的にイミド化されたポリイミド溶液は、フィルムを形成するために、エンドレスベルト又は回転ドラムなどの支持体上にキャスト又は塗布することができる。代わりに、それは、PET、他の形態のKapton(登録商標)ポリイミドフィルム(例えば、Kapton(登録商標)HN若しくはKapton(登録商標)OLフィルム)又は他のポリマー担体などのポリマー支持体上にキャストすることができる。次に、溶媒含有フィルムは、溶媒を部分的に又は完全に除去するために加熱することによってフィルムに変換することができる。本発明のいくつかの態様では、フィルムは、完全に乾燥させる前に担体から分離される。最終的な乾燥工程は、フィルムの寸法支持又は安定化と共に行うことができる。他の態様では、フィルムは、担体上で直接加熱される。
【0079】
ポリイミドフィルムの厚さは、フィルムの意図される目的又は最終用途仕様に応じて、調整され得る。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、4~150μm、又は5~100μm、又は10~80μmの範囲の全厚さを有する。
【0080】
ポリイミドフィルムがフレキシブルOLEDディスプレイ、E-ペーパー若しくはセンサーなどの電子デバイスのためのフレキシブルTFT基板として使用される場合、基板フィルムの引張弾性率は、ガラス基板によって支持される、ポリイミドフィルムがTFT形成プロセスを通過し、その後、フィルム変形なしに円滑にガラス基板から剥離(デボンディング)する必要があるであろうため、高い弾性率(6.0GPa超)を有さなければならない。典型的には、フィルム-ガラス積層板は、450℃で長時間の高温TFT(薄膜トランジスタ)加工を受け、したがって、ポリイミドフィルムのTgは、少なくともTFT製造プロセスの全体にわたってフィルムの良好な機械的特性を維持するために400℃超でなければならない。ポリイミドフィルムとガラス基板との間のCTEマッチは、ポリマー/ガラス接合部分での熱応力を限定し、且つTFT加工中の層間剥離、カール及びフィルム亀裂を避けるためにも良好でなければならない。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、6.0GPa以上、又は7.0GPa以上、又は8.0GPa以上の引張弾性率を有する。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、400℃以上、又は425℃以上、又は450℃以上のTgを有する。一実施形態では、ポリイミドフィルムは、50~500℃の温度範囲にわたって15ppm/℃以下、又は10ppm/℃以下、又は5ppm/℃以下の熱膨張係数を有する。
【0081】
金属張積層板
一実施形態では、本発明の導電層は、
i.金属スパッタリング(任意選択的に、次いで電気めっき);
ii.箔積層;及び/又は
iii.薄い金属層を基材に適用するための任意の従来法又は非従来法
によってもたらすことができる。
【0082】
金属張積層板は、任意の数の周知のプロセスによって片面積層板又は両面積層板として形成することができる。一実施形態では、積層プロセスを用いて、ポリマーフィルム又は多層ポリイミドフィルムを有する金属張積層板を形成し得る。一実施形態では、第1の熱可塑性ポリイミドを含む第1の外層が第1の導電層とコア層との間に置かれ、第2の熱可塑性ポリイミドを含む第2の外層がコア層の反対側に置かれる。一実施形態では、第2の導電層が、コア層の反対側上の第2の外層と接触して置かれる。このタイプの構築物の1つの利点は、多層フィルムの積層温度が、外層の熱可塑性ポリイミドが導電層に接合するために必要な積層温度まで下げられることである。一実施形態では、導電層は、金属層である。
【0083】
例えば、ポリマーフィルムを金属箔上に適用する工程前にポリマーフィルムを前処理工程に供することができる。前処理工程としては、熱処理、コロナ処理、大気圧下でのプラズマ処理、減圧下でのプラズマ処理、シラン及びチタネートのようなカップリング剤での処理、サンドブラスティング、アルカリ処理、酸処理並びにポリアミド酸のコーティングを挙げることができる。接着強度を向上させるために、参照により本明細書に援用される(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)及び(特許文献13)に開示されているような様々な金属化合物を添加することも一般に可能である。
【0084】
加えて、(接着性を向上させる目的のために)導電性金属表面は、様々な有機及び無機処理剤で処理され得る。これらの処理としては、シラン、イミダゾール、トリアゾールの使用、酸化物処理及び還元酸化物処理、酸化スズ処理並びに酸又はアルカリ性試薬による表面クリーニング/粗化(マイクロエッチングと呼ばれる)が挙げられる。
【0085】
更なる実施形態では、(本発明のポリイミドフィルムの)ポリアミド酸前駆体は、完全硬化ポリイミドベースフィルム上に又は直接金属基材上にコーティングされ、その後、熱処理によってイミド化され得る。ポリイミドベースフィルムは、化学的変換プロセス又は熱的変換プロセスのいずれかによって調製され得、接着性を向上させるために例えば化学エッチング、コロナ処理、レーザーエッチング等によって表面処理され得る。
【0086】
本明細書で用いる場合、用語「導電層」及び「導電箔」は、金属層又は金属箔(高品位銅の導電率の少なくとも50%を有する薄い組成物)を意味する。導電箔は、典型的には、金属箔である。金属箔は、純粋な形態での元素として使用される必要はなく;それらは、ニッケル、クロム、鉄及び他の金属を含有する銅合金などの金属箔合金としても使用され得る。導電層は、金属の合金でもあり得、典型的にはスパッタリング工程、引き続く電気めっき工程によって本発明のポリイミドに適用される。これらのタイプのプロセスにおいて、金属シードコート層が最初にポリイミドフィルム上にスパッタリングされる。最後に、金属のより厚いコーティングが電気めっき又は電着によってシードコートに適用される。そのようなスパッタリングされた金属層は、高められた剥離強度のためにポリマーのガラス転移温度を超えてもホットプレスされ得る。
【0087】
特に好適な金属基材は、圧延なまし銅又は圧延なまし銅合金の箔である。多くの場合、コーティングの前に金属基材を前処理することが有利であることが分かった。この前処理としては、銅、亜鉛、クロム、スズ、ニッケル、コバルト、他の金属及びこれらの金属の合金の薄層の金属上への電着又は浸漬堆積が挙げられ得るが、それらに限定されない。前処理は、化学的処理又は機械的粗化処理からなり得る。この前処理は、ポリイミド層の接着性、したがって剥離強度が更に増加することを可能にすることが分かった。表面の粗化を別として、化学的前処理は、金属酸化物基の形成をもたらし、ポリイミド層への金属の接着性が更に増加することも可能にする。この前処理は、金属の両面に適用され得、両面上で基材への高められた接着を可能にする。
【0088】
一実施形態では、金属張積層板は、単層フィルム又は多層フィルムであるポリマーフィルムと、多層フィルムの第1の外層の外面に接着された第1の金属層とを含み得る。一実施形態では、金属張積層板は、多層フィルムの第2の外層の外面に接着された第2の金属層を含むことができる。一実施形態では、第1の金属層、第2の金属層又は両方の金属層は、銅であり得る。一実施形態では、両面銅クラッドを含む本発明の金属張積層板は、単層又は多層フィルムの両面に銅箔を積層することによって調製することができる。
【0089】
用途
一実施形態では、高いTg、高い引張強度及び低いCTEのポリイミドフィルムは、電子デバイスのためのフレキシブルデバイス層又はプリント回路基板のためのカバーレイ又は電子デバイスにおける他の電子部品などの電子デバイス用途に使用することができ、電子部品の機能に悪影響を与え得る物理的損傷、酸化及び他の汚染物質からの保護を提供する。
【0090】
一実施形態では、フレキシブルデバイス層であるポリイミドフィルムは、良好な高温抵抗安定性と優れた機械的特性との組合せが望まれる、有機電子デバイスにおいてなどの電子デバイス用途において任意の数の層のために使用することができる。そのような層の非限定的な例としては、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、電子ペーパー(E-ペーパー)及びタッチセンサーパネル(TSP)などのフレキシブルディスプレイのための薄膜トランジスタ(TFT)基板、カラーフィルターシートのための基材、カバーフィルム及び他のデバイス層が挙げられる。各用途向けの特定の材料の特性要件は、独特であり、本明細書に開示されるポリイミドフィルムについての適切な組成及び加工条件によって対処され得る。ポリイミドフィルムを有することから恩恵を受け得る有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、照明デバイス、照明器具又はダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクスプロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスター、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外検出器、バイオセンサー)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電デバイス又は太陽電池)、(4)1つの波長の光をより長い波長の光に変換するデバイス(例えば、ダウンコンバート蛍光体デバイス);及び(5)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスタ又はダイオード)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0091】
一実施形態では、ポリイミドフィルムを有する金属張積層板は、フレキシブルプリント接続盤若しくは半導体デバイスのダイパッドボンディング又はCSP(チップスケールパッケージ)、チップオンフィルム(COF)、COL(チップオンリード)、LOC(リードオンチップ)、マルチチップモジュール(「MCM」)、ボールグリッドアレイ(「BGA」若しくはマイクロボールグリッドアレイ)及び/又はテープ自動ボンディング(「TAB」)のためのパッケージング材料に特に有用である。
【0092】
別の実施形態では、ポリイミドフィルムは、複合材料が、100μm未満の厚さを有する導電層(典型的には金属)と、複数の集積回路ダイを含むウェハーとの間に置かれたポリイミドフィルムを使用して製造される、ウェハーレベル集積回路パッケージングに有用である。1つの(ウェハーレベル集積回路パッケージング)実施形態では、導電性通路は、ワイヤボンド、導電性金属、はんだバンプ等などの導電性通路によってダイに接続される。
【0093】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するが、それを限定しない以下の実施例を参照することによって見ることができる。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り、重量による。
【実施例0094】
試験方法
ガラス転移温度及び貯蔵弾性率
ガラス転移温度(Tg)並びに50℃及び400℃での貯蔵弾性率は、動的機械分析(Q800 DMA,TA Instruments,New Castle,DE)を用いて測定した。フィルムのこれらのDMAプロファイルは、5℃/分の加熱速度で25℃~520℃の温度範囲にわたって集めた。
【0095】
熱膨張係数
フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方における熱膨張係数(CTE)は、熱機械分析(Q400 TMA,TA Instruments)によって測定した。
【0096】
引張弾性率、引張強度及び破断伸び
フィルムの引張特性(弾性率、強度及び破断伸び)は、0.5×4インチフィルムサンプル及び2インチ/分のクロスヘッド速度を使用してASTM D882試験方法に従って室温で測定した。
【0097】
厚さ
接触式FISCHERSCOPE MMS PC2モジュラー測定システム厚さ計(Fisher Technology Inc.,Windsor,CT)を用いて、フィルムのTD方向と交差して10つの位置で、コーティングされたサンプル及びコーティングされていないサンプルを測定することによってコーティング厚さを決定した。
【0098】
剥離強度
剥離強度は、0.5×3インチフィルムサンプルを使用して測定した。クロスヘッド剥離速度は、ダイカット検体に関するIPC試験方法2.4.9Dに従って90°Germanホイール構造を用いて2インチ/分であった。銅クラッドにおけるポリイミドフィルムのCTE、誘電率(Dk)及び散逸率(Df)値は、各サンプルの全体Cu箔をエッチオフした後に集める。
【0099】
比較例1
比較例1(CE1)について、PMDA 1.0//PPD 0.7/ODA 0.3のモノマー組成のポリアミド酸(PAA)を調製するために、6.497gのp-フェニレンジアミン(PPD)及び5.156gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を、150rpmで撹拌しながら、25℃で120gのジメチルアセトアミド(DMAc)に混ぜ込んだ。次いで、18.347gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を添加し、混合物を3時間撹拌した。50rpmで撹拌しながら、DMAc中の6重量%PMDA溶液の小さい添加を用いてプレポリマー溶液を約2000ポアズに調整した(仕上げた)。
【0100】
フィルムを調製するために、遠心遊星ミキサー(THINKY USA,Laguna Hills,CA)においてPAA溶液を2分間混合して溶液を得た。2000rpmで20分間ポリマーからガスを追放するために遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気し、次いで金属棒を用いて25℃でガラス板上にキャストして約1.5ミルの乾燥フィルムを生成した。ガラス基板上のフィルムをホットプレート上で120℃に80分間加熱し、65~70%固形分のグリーンフィルムをもたらし、その後、ガラス表面から持ち上げ、10×10インチのピンフレーム上に取り付けた。取り付けられたフィルムを炉中に入れ、120℃から340℃まで加熱し(10℃/分)、400℃の炉に移し、8分間保持した。フィルムをオーブンから「高温」で取り出し、空気中で放冷した。
【0101】
比較例2
比較例2(CE2)について、PMDA 1.0//MPD 0.35/PPD 0.35/ODA 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って3.249gのPPD、3.249gのm-フェニレンジアミン(MPD)及び5.156gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに18.347gのPMDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0102】
比較例3
比較例3(CE3)について、PMDA 1.0//MPD 0.7/ODA 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って6.497gのMPD及び5.156gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに18.347gのPMDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0103】
比較例4
比較例4(CE4)について、PMDA 1.0//DAPBI 0.35/PPD 0.35/ODA 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って6.035gの5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンズイミダゾール(DAPBI)、2.910gのPPD及び4.619gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに16.436gのPMDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0104】
比較例5
比較例5(CE5)について、PMDA 1.0//DAPBI 0.35/MPD 0.35/ODA 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って6.035gのDAPBI、2.910gのMPD及び4.619gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに16.436gのPMDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0105】
比較例6
比較例6(CE6)について、PMDA 0.7/BPDA 0.3//PPD 0.7/ODA 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って6.099gのPPD及び4.840gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに11.950gのPMDA及び7.111gの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)の添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0106】
比較例7
比較例7(CE7)について、PMDA 0.3/BPDA 0.7//PPD 0.7/ODA 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って5.638gのPPD及び4.474gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに4.549gのPMDA及び15.339gのs-BPDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0107】
比較例8
比較例8(CE8)について、PMDA 0.7/BPDA 0.3//PPD 0.7/DAPBI 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って5.983gのPPD及び5.318gのDAPBIを120gのDMAcに混ぜ込み、これに11.723gのPMDA及び6.976gのs-BPDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0108】
比較例9
比較例9(CE9)について、PMDA 0.3/BPDA 0.7//PPD 0.7/DAPBI 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って5.539gのPPD及び4.923gのDAPBIを120gのDMAcに混ぜ込み、これに4.469gのPMDA及び15.070gのs-BPDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0109】
比較例10
比較例10(CE10)について、BPDA 1.0//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って13.086gのDAPBIを120gのDMAcに混ぜ込み、これに17.168gのs-BPDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0110】
比較例11
比較例11(CE11)について、PMDA 1.0//PPD 0.3/ODA 0.7のモノマー組成のPAAを調製するために、全てCE1の手順に従って2.519gのPPD及び10.884gのODAを120gのDMAcに混ぜ込み、これに16.597gのPMDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従っても調製した。
【0111】
実施例1
実施例1(E1)について、PMDA 1.0//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、150rpmで撹拌しながら、25℃で12.411gのDAPBIを126gのDMAcに混ぜ込み、不透明な溶液を形成した。次いで、11.589gのPMDAを添加し、混合物は透明になり、混合物を3時間撹拌した。50rpmで撹拌しながら、DMAc中の6重量%のPMDA溶液の小さい添加を用いてプレポリマー溶液を2048ポアズに調整し(仕上げ)、0.97:1の二酸無水物対ジアミンの最終化学量論に達した。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0112】
実施例2
実施例2(E2)について、PMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って12.197gのDAPBIを126gのDMAcに混ぜ込み、これに10.202gのPMDA及び1.600gのs-BPDAの添加、次いで2377ポアズへの仕上げが続いた。最終化学量論は、0.981:1の二酸無水物対ジアミンであった。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0113】
実施例3
実施例3(E)について、PMDA 0.85/BPDA 0.15//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って15.987gのDAPBIを168gのDMAcに混ぜ込み、これに11.818gのPMDA及び4.195gのs-BPDAの添加、次いで2208ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0114】
実施例4
実施例4(E4)について、PMDA 0.8/BPDA 0.2//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って12.093gのDAPBIを126gのDMAcに混ぜ込み、これに9.527gのPMDA及び2.380gのs-BPDAの添加、次いで2250ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、それらが400℃で8分の代わりに7分間保持されたことを除いて、CE1の手順に従って調製した。
【0115】
実施例5
実施例5(E5)について、PMDA 0.7/BPDA 0.3//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って15.721gのDAPBIを168gのDMAcに混ぜ込み、これに10.092gのPMDA及び6.188gのs-BPDAの添加、次いで2180ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0116】
実施例6
実施例6(E6)について、PMDA 1.0//DAPBI 0.9/PPD 0.1のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って11.478gのDAPBI及び0.615gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに11.907gのPMDAの添加、次いで1934ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0117】
実施例7
実施例7(E7)について、PMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 0.9/PPD 0.1のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って11.274gのDAPBI及び0.604gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに10.478gのPMDA及び1.643gのs-BPDAの添加、次いで1820ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0118】
実施例8
実施例8(E8)について、PMDA 1.0//DAPBI 0.8/PPD 0.2のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って10.491gのDAPBI及び1.265gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに12.244gのPMDAの添加、次いで2231ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0119】
実施例9
実施例9(E9)について、PMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 0.8/PPD 0.2のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って10.300gのDAPBI及び1.242gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに10.769gのPMDA及び1.689gのs-BPDAの添加、次いで2341ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0120】
実施例10
実施例10(E10)について、PMDA 1.0//DAPBI 0.9/MPD 0.1のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って11.478gのDAPBI及び0.615gのMPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに11.907gのPMDAの添加、次いで2011ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0121】
実施例11
実施例11(E11)について、PMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 0.9/MPD 0.1のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って11.274gのDAPBI及び0.604gのMPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに10.478gのPMDA及び1.643gのs-BPDAの添加、次いで2194ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0122】
実施例12
実施例12(E12)について、PMDA 1.0//DAPBI 0.8/MPD 0.2のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って10.491gのDAPBI及び1.265gのMPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに12.244gのPMDAの添加、次いで1280ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0123】
実施例13
実施例13(E13)について、PMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 0.8/MPD 0.2のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って10.300gのDAPBI及び1.242gのMPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに10.769gのPMDA及び1.689gのs-BPDAの添加、次いで1331ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0124】
実施例14
実施例14(E14)について、PMDA 0.7/BPDA 0.3//DAPBI 0.7/PPD 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って8.935gのDAPBI及び1.847gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに8.194gのPMDA及び5.024gのs-BPDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0125】
実施例15
実施例15(E15)について、PMDA 0.3/BPDA 0.7//DAPBI 0.7/PPD 0.3のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って8.334gのDAPBI及び1.722gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに3.011gのPMDA及び10.933gのs-BPDAの添加、次いで約2000ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0126】
実施例16
実施例16(E16)について、PMDA 0.3/BPDA 0.7//DAPBI 0.5/PPD 0.5のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE1の手順に従って6.275gのDAPBI及び3.026gのPPDを126gのDMAcに混ぜ込み、これに3.174gのPMDA及び11.526gのs-BPDAの添加、次いで1200ポアズへの仕上げが続いた。フィルムは、CE1の手順に従って調製した。
【0127】
実施例17
実施例17(E17)について、PMDA 1.0//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、150rpmで撹拌しながら、12.411gのDAPBIを126gのDMAcに混ぜ込み、不透明な溶液を形成した。次いで、11.589gのPMDAを添加し、混合物は透明になり、混合物を3時間撹拌した。50rpmで撹拌しながら、DMAc中の6重量%のPMDA溶液の小さい添加を用いてプレポリマー溶液を3000ポアズに調整し(仕上げ)、0.981:1の二酸無水物対ジアミンの最終化学量論に達した。
【0128】
可溶なポリイミド溶液を調製するために、103gのDMAcを添加し、PAA溶液を1時間撹拌することによって固形分を16重量%から9.5重量%まで低下させた。溶液を40℃に保ちながら、1.289gのベータ-ピコリン及び1.413gの無水酢酸をPAA溶液に徐々に添加し、溶液の粘度が安定であることを確実にした。溶液を100rpm及び80℃で7時間撹拌し、次いで室温に冷却した。
【0129】
フィルムを調製するために、金属棒を用いて25℃でポリイミド溶液をガラス板上にキャストして約1.5ミルの乾燥フィルムを製造した。ガラス基板上のフィルムをホットプレート上で80℃に20分間加熱し、その後、ガラス表面から持ち上げ、10×10インチのピンフレームに取り付けた。取り付けられたフィルムを炉中に入れ、120℃から250℃まで加熱し(10℃/分)、250℃で20分間保持した。フィルムをオーブンから「高温」で取り出し、空気中で放冷した。
【0130】
実施例18
実施例18(E18)について、PMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 1.0のモノマー組成のPAAを調製するために、全てE17の手順に従って12.197gのDAPBIを126gのDMAcに混ぜ込み、これに10.202gのPMDA及び1.600gのs-BPDAの添加、次いで3000ポアズへの仕上げが続いた。最終化学量論は、0.985:1の二酸無水物対ジアミンであった。
【0131】
可溶なポリイミド溶液を調製するために、103gのDMAcを添加し、PAA溶液を1時間撹拌することによって固形分を16重量%から9.5重量%まで低下させた。溶液を40℃に保ちながら、1.266gのベータ-ピコリン及び1.388gの無水酢酸をPAA溶液に徐々に添加し、溶液の粘度が安定であることを確実にした。溶液を100rpm及び80℃で7時間撹拌し、次いで室温に冷却した。フィルムは、E17の手順に従って調製した。
【0132】
表1は、CE1~CE11及びE1~E18の熱的及び機械的特性をまとめる。CE7、E15及びE16のCTE値は、それらのTgが450℃未満であるため、50~450℃にわたって測定した。E1~E14のCTE値は、50~450℃にわたって測定される場合ゼロに近い。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
ポリイミド/銅張積層板
4つのポリイミド/銅張積層板(CCL)を、以下の手順を用いて、異なるポリアミド酸調合物(E1、E2、CE10及びE16)を12μmのCu箔(BHM-102F-HA-V2、JX金属株式会社、日本)上にキャストし、引き続きCCLを形成するための熱イミド化によって調製した。
【0136】
PAA溶液を10分間脱ガスし、次いで金属棒を用いて25℃でCu箔の艶消側(シラン処理側)上にキャストして約1ミルの乾燥フィルムを生成した(銅箔は、溶液のキャスティング前にガラス板に固着されていた)。ガラス基板上の湿潤PAA/Cuクラッドをホットプレート上で、E16について120℃に30分間加熱することを除いて120℃に80分間加熱し、グリーンフィルム(65~70%固形分)/Cuクラッド多層をもたらした。次いで、ガラス上の多層を、窒素パージ炉中に入れ、室温から50℃まで(1.25℃/分)、引き続き50℃から400℃まで(10℃/分)加熱し、400℃で5分間保持した。フィルムを、N2保護中で60分にわたって400℃から50℃まで冷却し、次いで空気中で室温まで放冷した。CCLをガラスから取り外し、表2に示されるような機械的及び電気的特性について試験した。
【0137】
【表3】
【0138】
実施例E19及びE20
実施例19及び20(E19及びE20)について、組成物PMDA 1.0//DAPBI 1.0(E19)及びPMDA 0.9/BPDA 0.1//DAPBI 1.0(E20)を、E1の手順に従い、しかし16重量%の固形分を維持しながら二酸無水物対ジアミンの比を変えて調製した。表3は、二酸無水物対ジアミンのモル比が0.80:1から0.985:1まで変わるときにPAA溶液の粘度の変化を示す。
【0139】
【表4】
【0140】
ポリイミドフィルムを形成するために使用されるPAA溶液及びワニスの粘度及び固形分を制御することにより、高いTg、低いCTE及び高い引張弾性率のフレキシブルフィルムを、二酸無水物対ジアミンモノマーモル比が0.85:1~0.99:1の範囲であった場合に容易に製造することができた。
【0141】
一般的な記載において上記の活動の全てが必要とされるわけではないこと、特定の活動の一部が必要とされなくてもよいこと及び更なる活動が、記載されたものに加えて行われ得ることに留意されたい。なおも更に、活動のそれぞれが列挙される順番は、必ずしもそれらが行われる順番であるわけではない。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの具体的な必要性又は要望のためにどのような活動を用いることができるかを決定することができるであろう。
【0142】
前述の本明細書において、本発明は、具体的な実施形態に関連して説明されてきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変更形態がなされ得ることを理解する。本明細書で開示される全ての特徴は、同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代わりの特徴によって置き換えられ得る。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味よりもむしろ例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような修正形態が本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0143】
利益、他の利点及び問題の解決策が特定の実施形態に関して上で記載されてきた。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決策並びに何らかの利益、利点又は解決策を生じさせ得るか又はより顕著にし得るいずれの要素も、特許請求の範囲のいずれか又は全ての決定的に重要であるか、必要とされるか又は本質的な特徴又は要素として解釈されるべきではない。
【外国語明細書】