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特開2022-167891リエントリ回路を引き起こす心室頻脈の擬似興奮マップによる視覚化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167891
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】リエントリ回路を引き起こす心室頻脈の擬似興奮マップによる視覚化
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20221027BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20221027BHJP
   A61B 5/339 20210101ALI20221027BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20221027BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B18/14
A61B5/339
A61B5/33 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022071656
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】63/179,054
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/724,146
(32)【優先日】2022-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
3.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】522166644
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・メディカル・エスエイエス
(71)【出願人】
【識別番号】522166655
【氏名又は名称】ユニヴェルシティ・ドゥ・ロレーヌ
(71)【出願人】
【識別番号】522166666
【氏名又は名称】テ・セントレ・ホスピタリエ・レジオナル・ユニヴェルシテール・ドゥ・ナンシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ホイランド
(72)【発明者】
【氏名】フレディー・オディール
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・デュ・シュー・デュ・シュレット
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG01
4C127GG02
4C127GG05
4C127HH13
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK18
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するためのシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】開示する技術は、ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することを含む。セットの各々は、ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される。開示する技術は、ペーシング部位のそれぞれの隣接部位のECGデータのセットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することを更に含む。計算された相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域が特定される。次いで、特定されたコア領域に関して、1つ以上の擬似興奮マップが生成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するためのシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を格納するメモリであって、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記システムに、
ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することであって、前記セットの各々は、前記ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される、ことと、
前記ペーシング部位のそれぞれの隣接部位の前記ECGデータの前記セットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することと、
前記相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定することと、
前記特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成することと、
を実行させる、メモリと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記命令は、前記システムに、
前記受信されたペーシング部位に基づいて3D表面メッシュを生成することであって、前記ペーシング部位はグラフのノードを形成し、前記ペーシング部位の対が前記グラフのエッジによって連結されている、ことを更に実行させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記相関勾配の前記計算は、
前記エッジによって連結されたそれぞれのペーシング部位のECGデータのセット間の形態学的変化に基づいて、前記3D表面メッシュのエッジに関して、前記相関勾配のうちの1つの相関勾配を計算することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記3D表面メッシュは、閾値を下回るそれぞれの相関勾配を有するエッジを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記特定されたコア領域に関する前記擬似興奮マップの前記生成は、
前記ペーシング部位に関して擬似興奮値を計算することであって、前記擬似興奮値の各々は、経路に沿った進行遅延を表し、前記経路は、前記特定されたコア領域に関連するペーシング部位から、前記3D表面メッシュのエッジを通って前記ペーシング部位のそれぞれの部位まで延在する、ことを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記進行遅延は、前記経路に沿った前記3D表面メッシュのそれぞれのエッジの興奮遅延の推定値を含む累積遅延を表す、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記興奮遅延の推定値は、それぞれのsQRS遅延を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記興奮遅延の推定値は、それぞれの洞調律伝導遅延を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記経路は、前記経路に沿ったエッジに関連する重みの合計が最小となるように、最短経路を表す、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記重みの各々は、それぞれのエッジによって連結されたペーシング部位間の興奮遅延の推定値を表し、前記興奮遅延はsQRS遅延又は洞調律伝導遅延のうちの1つである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化する方法を実行するために少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することであって、前記セットの各々は、前記ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される、ことと、
前記ペーシング部位のそれぞれの隣接部位の前記ECGデータの前記セットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することと、
前記相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定することと、
前記特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成することと、
を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するためにプロセッサによって用いられる方法であって、
ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することであって、前記セットの各々は、前記ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される、ことと、
前記ペーシング部位のそれぞれの隣接部位の前記ECGデータの前記セットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することと、
前記相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定することと、
前記特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記受信されたペーシング部位に基づいて3D表面メッシュを生成することであって、前記ペーシング部位はグラフのノードを形成し、前記ペーシング部位の対が前記グラフのエッジによって連結されている、ことを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記相関勾配の前記計算は、
前記エッジによって連結されたそれぞれのペーシング部位のECGデータのセット間の形態学的変化に基づいて、前記3D表面メッシュのエッジに関して、前記相関勾配のうちの1つの相関勾配を計算することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記3D表面メッシュは、閾値を下回るそれぞれの相関勾配を有するエッジを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記特定されたコア領域に関する前記擬似興奮マップの前記生成は、
前記ペーシング部位に関して擬似興奮値を計算することであって、前記擬似興奮値の各々は、経路に沿った進行遅延を表し、前記経路は、前記特定されたコア領域に関連するペーシング部位から、前記3D表面メッシュのエッジを通って前記ペーシング部位のそれぞれの部位まで延在する、ことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記進行遅延は、前記経路に沿った前記3D表面メッシュのそれぞれのエッジの興奮遅延の推定値を含む累積遅延を表す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記興奮遅延の推定値は、それぞれの刺激対QRS(sQRS)遅延を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記興奮遅延の推定値は、それぞれの洞調律伝導遅延を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記経路は、前記経路に沿ったエッジに関連する重みの合計が最小となるように、最短経路を表す、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記重みの各々は、それぞれのエッジによって連結されたペーシング部位間の興奮遅延の推定値を表し、前記興奮遅延はsQRS遅延又は洞調律伝導遅延のうちの1つである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記特定されたコア領域に関する前記擬似興奮マップの前記生成は、
それぞれが前記特定されたコア領域に関連するペーシング部位に関する、複数の擬似興奮マップを生成することと、
前記複数の擬似興奮マップを組み合わせることと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/179,054号の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
正常な心律動では、電気パルスが心房で発生して心室に伝播し、心室を同期して収縮させる。このような収縮は、心房から受け取った血液を心室から肺及び体内の他の器官に押し出す。不整脈の一種である心室頻脈(ventricular tachycardia:VT)は、心室自体で発生する電気パルスによって起こり得る。VT状態は、心悸亢進(例えば、毎分180拍超)を引き起こし、空の(又はまだ血液で満たされていない)心室の収縮をもたらすために、心室の正常な収縮リズムを妨げる。VT状態は、心停止につながり得る心室細動(ventricular fibrillation:VF)へと悪化する可能性があるため、治療しなければ致死性となるおそれがある。
【0003】
VTは、しばしば、心室組織に1つ以上のリエントリ回路が存在することによって引き起こされる。リエントリ回路は、心室内の電気パルスの供給源である。VTを治療するために、高周波エネルギーがリエントリ回路の組織に印加されてそれらの間の電気信号の流れを遮断するアブレーション処置が用いられる。アブレーションが効果的であるためには、リエントリ回路の構造及び配向を視覚化する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面と共に例として与えられる以下の説明から、より詳細な理解が可能になる。
図1】心臓ペーシング及び診断のための例示的な装置の図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。
図2】心臓ペーシング及び診断のための例示的なシステムの機能ブロック図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。
図3】心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するための例示的な方法のフロー図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。
図4】三次元表面メッシュの例示的なグラフであり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。
図5】重み付けされた三次元表面メッシュの図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。
図6】本開示の1つ以上の実施形態による、擬似興奮値と興奮値とを比較した例示的なチャートを示す。
図7】本開示の1つ以上の実施形態による、擬似興奮マップ及び興奮マップの例示的な視覚的表現を示す。
図8】本開示の1つ以上の実施形態による、擬似興奮値と興奮値とを比較した例示的なチャートを示す。
図9】本開示の1つ以上の実施形態による、擬似興奮マップ及び逆の興奮マップの例示的な視覚的表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
心筋梗塞は、致死性のVTにつながる可能性がある。心臓の梗塞部位は、損傷した心筋組織が線維症に置き換わる過程を経て、瘢痕に進展し得る。そのような過程は、電流の流れに影響を与える可能性があり、瘢痕化された領域は電気伝導を遮断し、生存している心筋線維を含む領域の電気伝導は減少する。この不均一な導電率は、VTの一般的な原因であることが判明している、いわゆるリエントリ回路を作り出す。リエントリ回路では、電流が筋細胞の不応期よりも大きな遅延で低伝導領域から出て、健康な筋細胞の反復励起を引き起こす。
【0006】
VT治療処置は、典型的には、リエントリ回路の起点が特定される診断段階で始まり、その後のアブレーション段階で、リエントリ回路によって引き起こされる励起を妨害するために、高周波加熱がリエントリ回路のコアに適用される。診断段階の間、リエントリ回路を正確に視覚化することは、リエントリ回路を効果的にアブレーションする上で重要である。リエントリ回路を視覚化する最も直接的な技術は、興奮マップによるものである。興奮マッピングは、持続性VT中に心室組織の異なる部位にカテーテルを配置することによって、電位図と呼ばれる心臓内電気信号を取得することを含む。次いで、VTの興奮経路を表す電位図間の伝播遅延の三次元(3D)マップを再構成することができる。残念ながら、興奮マッピングは、マッピングの全期間にわたって持続性VTに耐えることができる少数の患者においてのみ実行することができる。
【0007】
ペースマッピングは、直接興奮マッピングの優れた代替物であることが示された別の技術である。ペースマッピングは、心室組織の異なる部位でカテーテルを用いて心臓を刺激して、これらの部位を起点とする興奮経路を生成することを含む。リエントリ回路の出口部位は、興奮経路がその患者の誘発性VT中に以前に記録された興奮経路と最も良く一致する場合、すなわち、ペーシング中に記録された心電図(electrocardiogram:ECG)データが誘発性VT中に記録されたECGデータと最も良く一致するペーシング部位で特定される。したがって、類似性メトリックを使用して、ペーシング中に記録されたECGデータ及び誘発性VT中に記録されたECGデータから、QRS群の形態を相関させる(比較する)ことができる。この従来のペースマッピング技術は、1)VTの短いECGデータ記録しか必要せず、2)実際のリエントリ回路を再構成及び視覚化することができ、3)高周波アブレーションの後、回路の入口で組織を刺激して、電流がこの回路にそれ以上入ることができないことを実証することによって、適用されたアブレーションの効率に関するフィードバックを得ることができるという点で有利である。しかしながら、この技術は、誘発性VT中に基準記録が必要であるが、一部の患者ではVTを誘発することができないため、限定的である。
【0008】
レファレンスレスペースマッピングは、リエントリ回路を視覚化することでアブレーションの標的(コア)領域を特定するための別の技術である。レファレンスレスペースマッピングは、ペースマッピング処置中に記録されたECGデータのみに依存し、誘発性VT中の基準記録を必要としない。リエントリ回路のコアは、興奮経路の急激な変化を示すことが示されているため、この技術では、興奮経路の急激な変化に対応する領域が強調される。これは、ペーシング部位で生成されたECGデータと誘発性VT中に生成されたECGデータとを比較するのではなく、隣接するペーシング部位で生成されたECGデータを比較することによって行われる。本明細書に示すように、レファレンスレスペースマッピングは、従来のペースマッピングと同じコア領域を正確に特定する。
【0009】
レファレンスレスペースマッピングでは、ペーシング部位のネットワークのECGデータの形態学的変化に基づいて相関勾配が計算される。相関勾配は、ペーシングカテーテルが心室組織に沿って隣接部位間を移動する時に、ペーシングによって生成されたECGデータにおける急激な空間的変動の領域を示すことができる。相関勾配は、それぞれの隣接するペーシング部位でのペーシング中に記録されたECGデータから2つのQRS群間の形態学的類似性を測定する類似性メトリックに基づいて計算することができる。ペーシングされたECGデータの形態学的変化は、興奮経路の変化の指標として役立ち得る。リエントリ回路を含むコア領域が興奮経路の急激な変化を示すため、前者を検出することによって、リエントリ回路を含むコア領域の位置を特定することができる。
【0010】
しかしながら、相関勾配はコア領域を強調することはできるが、リエントリ回路の完全な視覚化は提供せず、現在のシステムは、ペースマッピングによって収集されたデータに含まれる情報をリエントリ回路の構造及び配向の判定に活用していない。更に、リエントリ回路の入口は、ペーシングと結果として生じるQRS群との間の長い(又はより長い)間隔に関連することが示されている。これらの間隔は、刺激対QRS(stimulus-to-QRS:sQRS)遅延と呼ばれる。ペースマッピング中に収集されたsQRS遅延は、現在のところ、リエントリ回路の特性評価において十分に活用されていない。例えば、瘢痕領域の深部に位置するペーシング点は、健康な領域のペーシング点よりも長いsQRS遅延を有する。本明細書に開示するように、擬似興奮マップは、相関マップ、相関勾配マップ、又はsQRS遅延などのペースマッピング処置中に収集されたデータに基づいて、及び場合によっては伝導速度などの洞律動中に収集された補完的データに基づいて生成される。擬似興奮マップは、VT治療におけるアブレーションのために組織を効果的に標的化するために使用することができる。
【0011】
本開示の態様は、プロセッサによって用いられる擬似興奮マップによって心臓内のリエントリ回路を視覚化する方法を説明する。方法は、ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することを含み、セットの各々は、ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される。方法は、ペーシング部位のそれぞれの隣接部位のECGデータのセットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することを更に含む。次いで、相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定し、特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成する。
【0012】
本開示の態様はまた、擬似興奮マップによって心臓内のリエントリ回路を視覚化するためのシステムを説明する。システムは、少なくとも1つのプロセッサ及び命令を格納するメモリを含む。命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、システムにECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信させ、セットの各々は、ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される。命令は更に、システムに、ペーシング部位のそれぞれの隣接部位のECGデータのセットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算させ、相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定させ、特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成させる。
【0013】
更に、本開示の態様は、心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化する方法を実行するために少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体を記載する。方法は、ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することを含み、セットの各々は、ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される。方法は、ペーシング部位のそれぞれの隣接部位のECGデータのセットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することを更に含む。次いで、相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定し、特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成する。
【0014】
図1は、心臓ペーシング及び診断のための例示的な装置100の図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。装置100は、一般に医療デバイス機器と呼ぶことができる。装置100の全て又は一部を、ユニバーサルペーシング動作によって生体情報データを収集するため、及び/又は本明細書に記載の心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを実装するために使用してもよい。装置100は、ペースマッピングから収集されたデータから得られる情報を使用して擬似興奮マップを生成するための動作を実行するように構成することができる。装置100は、ペースマッピングデータを収集して擬似興奮マップを生成するか、又は装置100によって処理されたペースマッピングデータに基づいて擬似興奮マップを生成するように構成することができる。
【0015】
心臓ペーシング及び診断装置100は、医師又は医療専門家115がベッド(又はテーブル)130上に横たわっている患者125の心臓120などの身体部分の中にナビゲートすることができる(差し込み図139を参照)プローブ110を含む。プローブ110は、実施形態によれば、複数のプローブを表すことができる。簡潔にするため、本明細書には単一のプローブ110が記載されている。差し込み図140は、心臓120の心室内のプローブ110の遠位端の拡大図を示している。差し込み図140に示すように、プローブ110は、カテーテル141、シャフト143、及びシース146を含む。カテーテル141は、1つ以上の要素を含む。カテーテルの要素は、電極151であってもよい。
【0016】
プローブ110は、プローブ100によって取得されたデータを記憶し、その中の心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを実行するように構成されたコンソール160に接続されている(及び/又はこれと通信を行う)。実施形態によれば、医療専門家115は、プローブ110の近位端に接続されたマニピュレータ148を使用してシャフト143の遠位端を操作しながら、シース146を通してシャフト143を挿入することができる。例えば、医療専門家115は、マニピュレータ148を使用してシャフト143の遠位端をシース146から偏向させることができる。(差し込み図140に示すように、シャフト143の遠位端に取り付けられている)カテーテル141は、折り畳まれた状態でシース146を通して挿入されてもよく、次いで心臓120内で拡張されてもよい。
【0017】
1つ以上の実施形態によれば、カテーテル141は、いかなる形状又は種類のものであってもよく、1つ以上のカテーテルを表してもよい。カテーテル141は、本明細書に開示する実施形態を実装するために使用される1つ以上の要素を含むことができる。1つ以上の要素は、生体情報データをペーシング、アブレーション、及び/又は測定するように構成することができるいかなる要素であってもよい。例えば、一実施形態では、1つ以上の要素は、電極(例えば、電極151)、トランスデューサ、他の要素、又はそれらの組み合わせであってもよい。カテーテル141は、カテーテル141の形状を形成するスプラインを介して複数の要素を接続することができる複数の要素を含んでもよい。例えば、カテーテル141は、複数の電極を有するPicassoカテーテルであってもよい。Picassoカテーテルは、例えば48個以上の電極を有することができる。カテーテル141の他の例としては、線形に配設された電極を有する線形カテーテル、バルーンを成形する複数のスプライン上に分散した電極を含むバルーンカテーテル、円形に配設された電極を有するラッソーカテーテル若しくはループカテーテル、又は他の任意の適用可能な形状が挙げられる。カテーテル14は、受信信号に基づいて、かつ/又は(例えば、心臓組織によって加えられる)カテーテルへの外力の印加に基づいて、ねじれるか、屈曲するか、又は他の方法でその形状を変化させることができるように、完全に又は部分的に弾性であってもよい。
【0018】
カテーテル141は、心臓120の心室の組織領域をアブレーションすることなどによって、体内器官の組織領域を損傷させるように構成されてもよい。カテーテル141は、パルスを使用してペーシングを行うように更に構成されてもよく、次いで、それらのパルスに応答して生体情報データが取得されてもよい。これに関して、カテーテル141は、患者の125の身体の中(例えば、心臓120の中)に配置されてもよい。カテーテル141の位置は、例えば、患者125の身体に近接して配置されたトランスデューサ及びカテーテル141に取り付けられた位置電極に基づいて、コンソール160によって決定されてもよい。カテーテル141はまた、患者125の身体(例えば、心臓120)内から得られた生体情報データ(例えば、洞律動などの心臓の電気信号)を測定するように構成されてもよい。得られた生体情報データは、判定されたカテーテルの位置に関連付けることができ、その結果、患者の身体部分(例えば、心臓120)のレンダリングが表示され、身体の形状上に重ね合わされた生体情報データを示すことができる。洞律動は、心筋の脱分極が洞結節で始まるいかなる心律動であってもよいことに留意されたい。例えば、洞律動は、心拍数及びリズムが正常である心拍を含むことができる(例えば、人間の心拍数は一般に、毎分60~100拍である)。
【0019】
心臓ペーシング及び診断装置100は、心臓の状態を検出、診断、及び治療するために利用することができる。心不整脈などの心臓状態は、特に老年人口において一般的かつ危険な内科疾患である。正常な洞律動を有する患者では、(心房、心室、及び興奮伝導組織から構成される)心臓は、電気的に興奮して、同期的な、パターン化した形で拍動する。心不整脈を有する患者では、心臓組織の異常な領域は、正常な洞律動を有する患者で観察されるように、正常に伝導性である組織に関連する同期拍動周期に従わない。これに対して、心臓組織の異常領域では隣接組織への異常な伝導が行われ、これにより心臓周期が乱れて非同期的な心律動となる。こうした異常伝導は、例えば、房室(AV)結節の伝導経路に沿った洞房(SA)結節の領域、又は心室及び心房の壁を形成する心筋組織など、心臓の様々な領域で生じることがこれまでに知られている。
【0020】
VTは、心臓の心室のうちの1つから発生する速い心律動を特徴とする不整脈の一種である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、潜在的に致死性の不整脈である。VTは、心房の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレット・リエントリ型となる場合がある心不整脈である。マルチウェーブレット・リエントリ型に代わって、又はそれに加えて、心不整脈はまた、組織の孤立領域が急速かつ反復する形で自律的に興奮する場合などの、(例えば、心臓ペーシング及び診断装置100の関心病巣であり得る)巣状興奮源を有する場合もある。
【0021】
本明細書に記載するように、心臓ペーシング及び診断装置100は、心臓組織の特定の病巣がペーシングにどのように応答するかを観察する方法を心臓医及び医療従事者に提供する。したがって、心臓ペーシング及び診断装置100は、特にカテーテル141及びコンソール160を利用してペーシング処置を可能にし、心臓医及び医療従事者が現在利用できない、又は現在実行していない信号分析を実施する。より具体的には、プローブ110及びカテーテル141に接続され、これらと通信を行うコンソール160は、心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを格納及び実行することができる。一実施形態によれば、コンソール160は、少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを含み、プロセッサは、(本明細書に記載される心臓ペーシング及び診断ソフトウェアに関する)コンピュータ命令を実行し、メモリは、プロセッサで実行するための命令を格納する。
【0022】
コンソール160は、汎用コンピュータなどの、ソフトウェア及び/又はハードウェアを含む任意のコンピューティングデバイスとすることができ、カテーテル141との間で信号を送信及び受信するため、並びに装置100の他の構成要素を制御するための適切なフロントエンド及びインターフェース回路を備える。フロントエンド回路及びインターフェース回路は、コンソール160が信号をカテーテルの電極151から受信及び/又はカテーテルの電極151に転送することを可能にする入出力(I/O)通信インターフェースを含む。いくつかの実施形態では、コンソール160は、所与の組織領域が電気を伝導するかどうかを判定することを可能にする電気活動などの生体情報データを受信するように更に構成されてもよい。一実施形態によれば、コンソール160の一部又は全てが、例えば、カテーテル151内、外部デバイス内、モバイルデバイス内、クラウドベースのデバイス内に配置されてもよく、又はスタンドアロン型プロセッサ/コンピュータであってもよい。
【0023】
上述のように、コンソール160は汎用コンピュータを含んでもよく、この汎用コンピュータは、本明細書に記載の心臓ペーシング及び診断装置100の機能を実行するためにソフトウェア(例えば、心臓ペーシング及び診断ソフトウェア)でプログラムすることができる。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、電子形式で汎用コンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的有形媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の適切な揮発性及び/又は不揮発性メモリ)上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、ディスプレイがコンソール160に接続されてもよい。処置中、コンソール160は、医療専門家115に対して身体部分をディスプレイ上にレンダリングして提示することを容易にし、身体部分を表現するデータをメモリに格納することができる。いくつかの実施形態では、医療専門家115は、タッチパッド、マウス、キーボード、ジェスチャ認識装置などの1つ以上の入力デバイスを使用して、身体部分のレンダリング表現を操作することが可能であってもよい。例えば、入力デバイスを使用して、レンダリングが更新されるようにカテーテル141の位置を変更してもよい。代替的な実施形態では、ディスプレイは、レンダリングされた身体部分を提示することに加えて、医療専門家115からの入力を受け取るように構成することのできるタッチスクリーンを含んでもよい。ディスプレイは、コンソール160に対してローカルであってもリモートであってもよく、同じ場所に設置されてもよいが、別の病院、又は別のヘルスケア提供業者ネットワーク内などの遠隔の場所に設置されてもよいことに留意されたい。
【0025】
コンソール160は、患者125に貼り付けられる粘着性皮膚パッチを含むことができる身体表面電極にケーブルによって接続されてもよい。コンソール160のプロセッサは、電流追跡モジュールと共に、患者125の身体部分(例えば、心臓120)内のカテーテル141の位置座標を決定することができる。位置座標は、体表面電極と電極151又はカテーテル141の他の電磁構成要素との間で測定されたインピーダンス又は電磁場に基づいたものであってもよい。追加的に、又は代替的に、位置パッドが、ベッド130の表面上に配置されてもよく、またベッド130から分離されてもよい。
【0026】
心臓ペーシング及び診断装置100は、超音波、コンピュータ断層撮影法(computed tomography:CT)、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging:MRI)、又は当技術分野において既知の他の医療撮像モダリティを使用して、心臓120の解剖学的測定値を取得することができる。心臓ペーシング及び診断装置100は、心臓120の電気的特性を測定するカテーテル141又は他のセンサを使用して、ECGなどの電気的測定値を取得することができる。したがって、電気的及び解剖学的測定値を含んでもよい生体情報データが、その後コンソール160の非一時的有形媒体内に格納されてもよい。生体情報データは、本明細書で更に説明されるように、ネットワークを使用して、非一時的有形媒体からローカルであってもリモートであってもよいサーバに送信することができる。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、位置センサを含むカテーテル141を使用して、心臓表面上の点の軌跡を決定することができる。これらの軌跡を使用して、組織の収縮力などの運動特性を推測することができる。このような運動特性を示すマップは、好適には、軌跡情報が心臓内の十分な数の位置点でサンプリングされる時に構築され得る。
【0028】
図1に示される心臓ペーシング及び診断装置100は、本明細書に開示される実施形態を実装するように改変されてもよい。本開示の実施形態は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用することができる。図1に示す装置100は、電気的活動を感知するための他の要素、有線又は無線コネクタ、処理、記憶及びディスプレイデバイスなどの、更なる構成要素を含んでもよい。心臓ペーシング及び診断装置100は、心臓120の解剖学的及び電気的測定値を取得し、心臓アブレーション処置を実行するように構成された外科手術システムの一部であってもよい。かかる外科用システムの一例は、Biosense Websterにより販売されているCarto(登録商標)システムである。
【0029】
図2は、心臓ペーシング及び診断のための例示的なシステム200の機能ブロック図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。システム200は、患者201(例えば、図1の患者125)、ローカルコンピューティングデバイス206、リモートコンピューティングシステム208、第1のネットワーク210、及び第2のネットワーク211を含む。更に、システム200は、心臓ペーシング及び診断デバイス220(例えば、図1のコンソール160)に通信可能に接続された患者生体情報センサ221(例えば、図1のカテーテル141)を含む。心臓ペーシング及び診断デバイス220は、プロセッサ222、ユーザ入力センサ223、メモリ224、及び送信-受信機(すなわち、送受信機)225を含むことができる。
【0030】
ローカルコンピューティングデバイス206及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、心臓ペーシング及び診断デバイス220と共に、心臓ペーシング及び診断ソフトウェア及びその機能を個別に若しくは集合的に記憶、実行、及び実装するソフトウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアの任意の組み合わせであり得る。更に、本明細書に記載されるように、ローカルコンピューティングデバイス206及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、心臓ペーシング及び診断デバイス220と共に、様々な通信技術を利用するコンピューティングデバイス及びネットワークの任意の数及び組み合わせを備え、かつ/又は使用する電子的なコンピュータの枠組みであり得る。ローカルコンピューティングデバイス206及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、心臓ペーシング及び診断デバイス220と共に、拡大縮小可能、拡張可能であることができ、またモジュール式であることができ、異なるサービスに変更する能力、又は他の特徴とは独立に一部の特徴を再構成する能力を有する。一実施形態によれば、ローカルコンピューティングデバイス206及びリモートコンピューティングシステム208は、心臓ペーシング及び診断デバイス220と共に、少なくともプロセッサ(例えば図2のプロセッサ222)及びメモリ(例えば図2のメモリ224)を含んでもよく、プロセッサは、(心臓ペーシング及び診断ソフトウェアに関する)コンピュータ命令を実行し、メモリは、プロセッサで実行するためのコンピュータ命令を格納する。
【0031】
心臓ペーシング及び診断システム200のローカルコンピューティングデバイス206は、心臓ペーシング及び診断デバイス220と通信し、第2のネットワーク211を通じてリモートコンピューティングシステム208へのゲートウェイとして機能するように構成されてもよい。ローカルコンピューティングデバイス206はまた、患者の取得された生体情報データを表示するように構成されてもよい。ローカルコンピューティングデバイス206は、例えばネットワーク211を介して他のデバイスと通信するように構成された、例えばスマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、又は他のポータブルスマートデバイスであってもよい。あるいは、ローカルコンピューティングデバイス206は、例えば、モデム、ルータ、無線モジュール、及び/又はUSBドングルを介して、心臓ペーシング及び診断デバイス220とリモートコンピューティングシステム208との間で情報を通信するための実行可能プログラムを使用する固定基地局、デスクトップ又はラップトップコンピュータなどの固定式の又はスタンドアロン型のデバイスであってもよい。生体情報データは、ローカルエリアネットワーク(local area network:LAN)(例えば、パーソナルエリアネットワーク(personal area network:PAN))などの短距離無線ネットワーク210を介した短距離無線技術標準規格を使用して、ローカルコンピューティングデバイス206と心臓ペーシング及び診断デバイス220との間で通信されてもよい。情報は、Bluetooth、Wi-Fi、Zigbee、Z-Wave、近接場通信(near field communications:NFC)、ウルトラバンド、又は赤外線(infrared:IR)などの様々な近距離無線通信プロトコルのうちのいずれか1つを使用して、心臓ペーシング及び診断デバイス220とローカルコンピューティングデバイス206との間でネットワーク210を介して送信されてもよい。
【0032】
リモートコンピューティングシステム208は、患者125の(視覚的及び/又は聴覚的)生体情報データを提供し、データを医療専門家、医師、又はヘルスケア専門家に提示するように構成されてもよい。したがって、リモートコンピューティングシステム208は、長距離ネットワークであり得るネットワーク211を介して監視対象の患者125の生体情報データを受信するように構成されてもよい。例えば、ローカルコンピューティングデバイス206が携帯電話である場合、ネットワーク211は、無線セルラーネットワークであってもよく、情報は、上記の無線技術のいずれかなどの無線技術標準規格を介して、ローカルコンピューティングデバイス206とリモートコンピューティングシステム208との間で通信されてもよい。ネットワーク211は、例えばイントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(wide area network、WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network、MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラー電話ネットワーク、若しくはローカルコンピューティングデバイス206とリモートコンピューティングシステム208との間の通信を容易にすることが可能な任意の他のネットワーク若しくは媒体などの、有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はこれらの組み合わせであってもよい。情報は、様々な長距離無線通信プロトコル(例えば、TCP/IP、HTTP、3G、4G/LTE、又は5G/New Radio)のいずれか1つを使用するネットワーク211を介して送信され得る。有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ-11、又は当該技術分野において一般的に知られている任意の他の有線接続を使用して実装することができる。無線接続は、Wi-Fi、WiMAX、ブルートゥース、赤外線、セルラー式ネットワーク、衛星、又は任意の他の無線接続技法を使用して実装することができる。更に、いくつかのネットワークは、ネットワーク211内の通信を容易にするために、単独で又は互いに通信して動作することができる。いくつかの事例では、リモートコンピューティングシステム208は、ネットワーク211上の物理的なサーバとして、実装することができる。他の事例では、リモートコンピューティングシステム208は、ネットワーク211のパブリッククラウドコンピューティングプロバイダ(例えば、Amazon Web Services(AWS)(登録商標))の仮想サーバとして実装することができる。
【0033】
動作中、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを利用して、患者生体情報センサ221によって取得された患者201の生体情報データ(例えば、電気信号、血圧、温度、血糖値、又は他の生体情報データ)を取得してもよい。一態様では、取得された生体情報データの少なくとも一部分が、1つ以上の他の患者生体情報診断デバイスから受信されてもよい。心臓ペーシング及び診断ソフトウェアは、ペーシング処置に応答して心臓組織の特定の領域又は病巣を分析する方法を提供するための、心臓ペーシング及び診断デバイス220による処理動作及びその処理ハードウェアに必然的に根ざしたプロセッサ実行可能コードである。一実施形態によれば、心臓ペーシング及び診断デバイス220の心臓ペーシング及び診断ソフトウェアは、心臓組織の電気生理のより正確な理解を容易にする、心臓組織に関する電気信号の多工程操作を伴う特定のペーシング及び捕捉動作を提供する。心臓ペーシング及び診断デバイス220は、心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを使用して、取得された生体情報データ及び1つ以上の他の患者生体情報診断デバイスから受信された任意の生体情報データを含むデータを処理することができる。例えば、これに関してデータを処理する場合、心臓ペーシング及び診断ソフトウェアは、生体情報データから教師なし方法で潜在表現(又はデータ符号化)を学習するために使用されるニューラルネットワークを含んでもよい。更に、心臓ペーシング及び診断ソフトウェアは、ニューラルネットワークを訓練することによって特定のデータを検出するように学習することができる。
【0034】
心臓ペーシング及び診断デバイス220は、ネットワーク210を介して、任意の数の様々な患者の生体情報(例えば、取得された生体情報データ)を継続的又は定期的に監視、記憶、処理、及び伝達することができる。本明細書に記載されるように、患者の生体情報の例には、電気信号(例えば、ECG信号及び脳生体情報)、血圧データ、血糖データ、及び温度データが含まれる。患者の生体情報は、心臓血管疾患(例えば、不整脈、心筋症、及び冠動脈疾患)及び自己免疫疾患(例えば、I型及びII型糖尿病)などの任意の数の様々な疾患にわたって治療するために監視及び伝達され得る。
【0035】
生体情報センサ221は、例えば、1つ以上の環境条件を電気信号に変換するように構成された1つ以上のトランスデューサを含むことができ、その結果、異なる種類の生体情報データを観察、取得、又は入手することができる。例えば、患者生体情報センサ221は、1つ以上電極(例えば、図1の電極151)、1つ以上のトランスデューサ、温度センサ(例えば、熱電対)、血圧センサ、血糖センサ、血中酸素センサ、pHセンサ、加速度計、及びマイクロフォンを含むことができる。
【0036】
プロセッサ222は、心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを実行する際に、患者生体情報センサ221によって取得された生体情報データを受信、処理、及び管理して、生体情報データをメモリ224に格納し、及び/又は送受信機225を介してネットワーク210全体に生体情報データを送信するように構成されてもよい。本明細書に更に詳細に説明されるように、1つ以上の他の心臓ペーシング及び診断デバイス220からのデータはまた、送受信機225を通じてプロセッサ222によって受信されてもよい。また、本明細書に説明されるように、プロセッサ222は、ユーザ入力センサ223(例えば、内部の静電容量センサ)から受信した異なるタッピングパターン(例えば、シングルタップ又はダブルタップ)に選択的に応答するように構成することができ、その結果、異なるタスク(例えば、データの取得、記憶、又は送信)が、検出されたパターンに基づいて起動されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ222は、ジェスチャの検出に応答して可聴フィードバックを生成することができる。
【0037】
ユーザ入力センサ223は、例えば、タップ又はタッチなどのユーザ入力を受信するように構成された圧電センサ又は静電容量センサを含む。例えば、ユーザ入力センサ223は、患者201が心臓ペーシング及び診断デバイス220の表面をタップ又はタッチすることに応答して、容量性結合を実装するように制御されてもよい。ジェスチャ認識は、抵抗容量性、表面容量性、投影容量性、表面超音波、圧電及び赤外線タッチなどの、様々な容量型のうちのいずれか1つを介して実装することができる。静電容量センサは、表面のタップ又はタッチが監視デバイスを起動させるように、表面の小さい領域又は長さにわたって配置されてもよい。
【0038】
メモリ224は、磁気メモリユニット、光学メモリユニット、又は電子メモリユニットなどのいかなる非一時的な有形の媒体であってもよい。メモリ224は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどのいかなる好適な揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを含んでもよい。メモリ224は、プロセッサ222で実行するための心臓ペーシング及び診断ソフトウェアを格納する。
【0039】
送受信機225は、1つ以上の送受信機を表してもよく、各々が別個の送信機及び別個の受信機を含んでもよい。あるいは、送受信機225は、単一のデバイスに一体化された送信機及び受信機を含んでもよい。
【0040】
一実施形態によれば、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、患者201の身体の内部にある(例えば、皮下に埋め込み可能な)装置であってもよい。そのような場合、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、経口注入、静脈若しくは動脈を介した外科手術挿入、内視鏡手技、又は腹腔鏡手技を含む任意の適用可能な方法によって患者201に挿入されてもよい。一実施形態によれば、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、患者201の外部にある装置であってもよい。例えば、本明細書で更に詳細に説明するように、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、(例えば患者の皮膚に取り付けられる)取り付け可能なパッチを含んでもよい。一実施形態によれば、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、患者の内部にある構成要素及び患者の外部にある構成要素の両方を含んでもよい。図2のシステム200には単一の心臓ペーシング及び診断デバイス220が示されているが、一態様では、システム200は複数の患者生体情報診断デバイスを含んでもよい。そのような場合、心臓ペーシング及び診断デバイス220は、1つ以上の他の患者生体情報診断デバイスと通信を行ってもよい。更に、1つ以上の他の患者生体情報診断デバイスは、ネットワーク210及び心臓ペーシング及び診断システム200の他の構成要素と通信を行ってもよい。
【0041】
上記のように、本明細書では、ペースマッピング処置から収集されたデータを使用して擬似興奮マップを生成する方法が開示される。一態様では、収集されたデータは、ペースマッピング処置中に記録された表面ECGデータ(本明細書ではECGデータとも呼ばれる)を含む。ECGデータは、各々が複数のリード(それぞれの電極対で測定された信号)を含むことができるセットを含んでもよく、各セットは、それぞれのペーシング部位で心臓組織を刺激することによって生成される。標準的なECGは、3つの標準リード(I、II、III)、3つの単極肢リード(aVR、aVL、aVF)、及びV1からV6までの6つの前胸部リードを含む12個のリードを使用して心臓活動を記録する。12リードECGのセットは、例えばP波の山又はQRS群の急激な変動(約0.08秒間続く)などの特定の形状をそれぞれが有する12個の信号のセットである。QRS群は、ペーシング部位での組織刺激によって続く心室の脱分極に対応する。本開示は、ペースマッピング処置から収集されたECGデータを収集することを記載するが、他のVT関連データが他の技術を使用して収集される場合にも、本明細書に記載の教示を適用できることを理解されたい。
【0042】
図3は、心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するための例示的な方法300のフロー図であり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。方法300は、プロセッサ(例えば、図2に示すシステム200の心臓ペーシング及び診断デバイス220のプロセッサ222)によって用いられてもよい。方法300は、ステップ310で、ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することによって開始する。受信されたECGデータのセットの各々は、受信されたペーシング部位のそれぞれのペーシング部位で(例えば、図1に示す装置100のカテーテル141を使用して)心臓組織をペーシングすることによって生成されてもよい。ECGデータのセットは、それぞれのペーシング部位で心臓組織を刺激することによって生成された12リードECG信号を含んでもよい。典型的には、ペーシング部位の位置は、これらのペーシング部位でペーシングを実行するカテーテルの3D位置を追跡することによって得られる。ステップ320で、それぞれの隣接するペーシング部位のECGデータのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算してもよい。ステップ330で、相関勾配に基づいて、心臓のリエントリ回路に関連するコア領域を特定してもよい。次いで、ステップ340において、特定されたコア領域に関して擬似興奮マップが生成される。
【0043】
方法300は、受信されたペーシング部位に基づいて3D表面メッシュを生成することを更に含み、ペーシング部位はグラフのノードを形成し、ペーシング部位の対がグラフのエッジによって連結されている。したがって、エッジによって連結されたそれぞれのペーシング部位のECGデータの2つのセット間の形態学的変化に基づいて、3D表面メッシュのエッジに関して相関勾配を計算してもよい。一態様では、3D表面メッシュは、閾値を下回るそれぞれの相関勾配を有するエッジを含む。3D表面メッシュを、図4を参照して更に説明する。
【0044】
(ステップ340で)特定されたコア領域に関する擬似興奮マップの生成は、ペーシング部位に関する擬似興奮値の計算を含む。擬似興奮値の各々は、特定されたコア領域に関連する一ペーシング部位と上記のペーシング部位のうちの一部位との間の、3D表面メッシュのエッジを通る経路に沿った進行遅延を表してもよい。経路に沿った進行遅延は、経路に沿った3D表面メッシュのそれぞれのエッジの興奮遅延の推定値を含む累積遅延であってもよい。一態様では、興奮遅延の推定値は、それぞれのsQRS遅延を含む。別の一態様では、興奮遅延の推定値は、それぞれの洞調律伝導遅延を含む。経路は、エッジに関連する重みの合計が最小となるように、3D表面メッシュのエッジを通る最短経路を表してもよい。以下に詳細に説明するように、エッジに関連する重みは、エッジによって連結されたペーシング部位間のsQRS遅延(又は洞調律伝導遅延)を表してもよい。擬似興奮マップの生成を、図5図9を参照して更に説明する。
【0045】
図4は、三次元表面メッシュ400の例示的なグラフであり、これに基づいて本開示の1つ以上の特徴を実装することができる。3D表面メッシュ400は表面の低解像度表現であり、例えば図4に示すように、ペースマッピング処置で収集されたペーシング部位に基づいて再構成された心臓の左心室の表面の低解像度表現である。したがって、グラフ400のノードは、例えば、N個のペーシング部位の重心を中心とする座標系で定義された、本明細書ではP又はP(x,y,z):n=1-Nで表されるN個のペーシング部位に対応する。ペーシング部位が位置する表面を近似するために、隣接するペーシング部位(グラフノードによって表される)がグラフエッジによって接続される。
【0046】
グラフ400のペーシング部位(ノード)を接続する1つの方法は、ドローネ三角形分割を使用することによるものである。例えば、ペーシング部位Pの座標[x,y,z]は極座標[r,θ,φ]に変換することができる。次いで、隣接するペーシング部位間の接続を確立するために、(θ,φ)平面に二次元ドローネ三角形分割を適用することができる。得られた三角形のリストを使用して、3D空間内のペーシング部位Pを接続し、3D表面メッシュ400を形成することができる。一態様では、隣接するペーシング部位は、それらが閾値未満の距離だけ互いから離間している場合に、3D表面メッシュ内で接続されてもよい。
【0047】
上述のように、心室組織に沿った興奮経路は、ペーシングされたECGデータの形態学的変化から分かるように、異常領域、すなわち潜在的なリエントリ回路のコア領域で急激に変化する。異常領域は、ペーシングされたECGデータの急激な形態学的変化を検出することによって、すなわち、カテーテルが隣接するペーシング部位間を移動する際に取得されたECGデータのQRS群のパターンの空間的変動を検出することによって特定することができる。したがって、それぞれのペーシング部位を刺激することによって生成される一対のQRS群のパターンの空間的変動は、それらのQRS群に適用される類似性メトリック(又は距離メトリック)によって測定することができる。例えば、類似性メトリックが相関係数であってもよい。したがって、2つの接続されたペーシング部位PとPとの間(例えば、図4のペーシング部位P43とペーシング部位P28との間)の類似性メトリックは、以下のように定義することができる:
【0048】
【数1】
式中、Mijは、ペーシング部位PとPとの間類似性メトリック表し、これは、記録されたECGデータのL個のリード(信号)にわたる類似度関数Mの平均である。したがって、リードlについて、それぞれのペーシング部位P及びPの対応するQRSパターン
【0049】
【数2】
が位置合わせされ、それらの形態学的類似性がメトリック
【0050】
【数3】
によって測定される。一対のペーシング部位P及びPに関連付けられた類似性値Mijは、同じペーシング点PとPとの間の類似性Miiが100%になるようにスケーリングされ、パーセンテージで表すことができる。
【0051】
2つの接続されたペーシング部位間の類似性メトリックが与えられると、そのような類似性メトリックの勾配(空間的変化)、すなわち相関勾配を計算することができる。一態様では、
【0052】
【数4】
で表される相関勾配は、以下のように近似することができる:
【0053】
【数5】
これはF.Odille et al.,Catheter treatment of ventricular tachycardia:a reference-less pace-mapping method to identify ablation targets,IEEE Transactions on Biomedical Engineering,66(11),pp.3278-3287,2019に記載されている。
【0054】
接続されたペーシング部位の対に関して(又は3D表面メッシュ400のエッジに関して)計算された相関勾配値を使用して、1つ以上のコア領域を特定してもよい。コア領域を特定するために、それぞれの高相関勾配(すなわち、高Gij)を有する1つ以上のペーシング部位によって包含される領域を検出することができる。例えば、図4では、コア領域410は、高相関勾配値G18,40及びG42,43に基づいて、P18、P40、P42及びP43によって包含される領域内で特定することができる。したがって、特定されたコア領域410は、CZ={18,40,42,43}として表すことができる。
【0055】
次に、特定されたコア領域を使用して、それぞれの擬似興奮マップの生成を容易にすることができる。この目的のために、ペーシングされたECG信号の心室組織上の経路に沿った伝播遅延を、コア領域を特定するペーシング部位のうちの1つ以上、例えば、図4のコア領域410を特定するペーシング部位P18、P40、P42及びP43のうちの1つ以上に関して計算することができる。伝播遅延を求めるために、グラフ(3D表面メッシュ400)の隣接するペーシング部位を連結するエッジに関して重みを計算することができる。エッジEabの重みw(Eab)は、このエッジによって連結された2つのペーシング部位PとPとの間の伝播遅延に対応してもよい。一態様では、連結されたペーシング部位P及びPに関連する伝播遅延w(Ea,b)は、それぞれのsQRSパターン間の遅延によって推定されてもよい。別の一態様では、伝播遅延w(Ea,b)は、連結されたペーシング部位における洞律動興奮時間の差によって推定されてもよい。例えば、連結されたペーシング部位P及びPの重みw(Ea,b)は、以下のように計算することができる:
【0056】
【数6】
式中、sQRSa,bは、部位PとPとの間のsQRS遅延の差の絶対値を表す。
【0057】
次に、それぞれのエッジの重みを使用して、コア領域
【0058】
【数7】
を特定するペーシング部位(例えば、コア領域410を特定するペーシング部位P18、P40、P42及びP43のうちの1つ)と別のペーシング部位P(例えば、P)との間の3D表面メッシュ400に沿った最短経路、すなわち、
【0059】
【数8】
を計算することができる。最短経路は、それに沿った重みの総計が最小となる、グラフ400上の2つのペーシング点を接続する経路として定義されてもよい。そのような最短経路は、グラフ内のノード間の最短経路を見出すための任意のアルゴリズム(例えば、ダイクストラのアルゴリズム)を使用して計算することができる。図5は、重み付けされた三次元表面メッシュ500を示す。ここで、エッジに関連する重みは、遅延に比例するサイズを有する長方形の形状で表される。いくつかの最短経路が図5に示されている。例えば、ペーシング部位
【0060】
【数9】
とペーシング部位Pとの間の最短経路、すなわち、
【0061】
【数10】
は、エッジE40,38、E38,26、E26,21、E21,30、E30,2、及びE2,6を含むことが示されている。
【0062】
3D表面メッシュ400上の各ペーシング部位Pに関連する進行遅延、すなわち、擬似興奮値PAVは、以下のように、各ペーシング部位Pに関連する最短経路SPに沿って遅延を加算することによって計算することができる:
【0063】
【数11】
式中、
【0064】
【数12】
は、コア領域Pのペーシング部位とペーシング部位
【0065】
【数13】
との間の最短経路に沿ったエッジを表す。
【0066】
擬似興奮値PAVj=1:Nが、例えばペーシング部位
【0067】
【数14】
に関して計算されると、擬似興奮マップが生成され得る。この目的のために、それぞれのペーシング部位の擬似興奮値PAVj=1:Nを色分けしてもよく、次いで、これらの色値を補間して、隣接するペーシング部位によって囲まれた3D表面メッシュ400上の他の表面点を表すことができる。一態様では、3D表面メッシュ400は、心室チャンバの表面をより良好に表す高解像度メッシュに投影(空間的にマッピング)されてもよく、次いで、高解像度メッシュの頂点の値が、投影された3D表面メッシュ400の隣接するノードの色分けされた擬似興奮値を補間することによって計算されてもよい。色分けされた擬似興奮マップを、図7A及び図9Aに示す。そのような擬似興奮マップは、特定されたコア領域内の潜在的なリエントリ回路の構造及び配向を視覚化した表現を提供する。
【0068】
一態様では、擬似興奮値
【0069】
【数15】
に基づいて、コア領域を特定する(又はそれに関連する)各ペーシング部位
【0070】
【数16】
に対して1つの擬似興奮マップを上述のように生成することができる。あるいは、複数の擬似興奮マップをコア領域に関連するそれぞれのペーシング部位に関して生成することができ、これらのような擬似興奮マップを(例えば平均化するなど)組み合わせて、コア領域に関連する合成擬似興奮マップを形成することができる。典型的には、同じコア領域に関連するペーシング部位に関して生成された擬似興奮マップは、同じリエントリ回路を表すことから、同様であってもよい。2つ以上の別個のコア領域が特定された場合に、各コア領域に関して擬似興奮マップ(又は合成擬似興奮マップ)を生成してもよく、したがって、各マップは別個のリエントリ回路を視覚化してもよい。
【0071】
本明細書に記載の擬似興奮マップを使用して、特定されたコア領域内のリエントリ回路の構造及び配向を視覚化することができる。したがって、組織破壊(アブレーション)を適用すべき最小領域を決定することが可能である。一実施形態では、擬似興奮マップは、その上で実行可能なソフトウェアによって実施される方法300の態様を使用して、装置100及びシステム200を介して心臓医に表示される。上述のように、擬似興奮マップは、処置の開始時の誘発性VT中に記録されたECGデータを参照することなく、アブレーションすべき潜在的なリエントリ回路の迅速な視覚化を可能にする。
【0072】
次に、本明細書に開示する擬似興奮マップを興奮マップと比較した実験を説明する。実験は、CARTO3(登録商標)システム(Biosense Webster,Inc.、アーバイン、米国)、及びNiobe(登録商標)システム(Stereotaxis Inc.、セントルイス、米国)を使用して実施した。匿名化されたデータをCARTO3(登録商標)ワークステーションからエクスポートし、次いで、MATLAB言語(Mathworks、ネイティック、米国)、バージョンR2020aに記載のインハウスソフトウェアを使用して処理した。この実験では、最初に、カテーテル位置、各ペーシング部位について取得された2.5秒間の12リードECGデータ、及び心臓の心室腔の高解像度ベンダー生成3Dメッシュを含む電気解剖学的データをソフトウェアにロードした。実験で使用された他の全てのデータ(例えば、3D表面メッシュ、3D相関勾配マップ、擬似興奮マップ、及び興奮マップ)は、MATLABソフトウェアでオフラインで生成した。この実験では、心室全体に沿って興奮をマッピングするのに十分な長さの頻脈は持続せず、医師は、興奮マッピングを行う際にリエントリ回路の主要素のマッピングに集中する時間しかなかった。ペーシング部位の局所興奮値を、最近傍補間を使用して提供した。所与のペーシング部位について、最も近い興奮点までの距離が20mm未満である場合にのみ、局所興奮値が定義されたとみなした。30個のペーシング部位を選択した。
【0073】
頻脈は回路であり、頻拍の各ペーシング部位iの局所興奮時間
【0074】
【数17】
は、サイクル長を法として定義することができる。特定されたコア領域PMcoreの所与のペーシング部位について、0の興奮時間
【0075】
【数18】
を使用した。更に、
【0076】
【数19】
については正の値のみを使用した。したがって、局所興奮値は0とサイクル長の値との間であった。所与のPMcore部位について、逆の興奮時間
【0077】
【数20】
に0の値を与え、他の全ての点に
【0078】
【数21】
の値を与えることによって、逆の興奮時間
【0079】
【数22】
を求めた。したがって、逆の局所興奮値は、0とサイクル長の値との間で変化し、頻脈の逆の興奮パターンを表した。
【0080】
上記のように、特定されたコア領域内のペーシング点を、それぞれの擬似興奮マップを生成するための開始点として使用して、擬似興奮マップを生成した。次いで、これらの擬似興奮マップを、頻脈の興奮パターン又は経路と比較した。開始点がリエントリ回路の出口領域に位置する時に、擬似興奮マップを興奮マップと比較した。開始点がリエントリ回路の入口領域に位置する時に、擬似興奮マップは逆の興奮パターンを有し、逆の興奮マップと比較された。したがって、リエントリ回路の入口でのペーシング及びリエントリ回路の出口でのペーシングは、2つの逆方向の興奮パターンをもたらす。頻脈のリエントリ回路に関する更なる情報は、参照によりその全体が本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる米国特許第10,891,728号に見出すことができる。
【0081】
実験からの擬似興奮マップ、興奮マップ、及び逆の興奮マップを、より良好な視覚化のために、CARTO3(登録商標)プラットフォームなどの外科手術システムに統合した。擬似興奮マップ、興奮マップ、及び逆の興奮マップ間の一致は、平均、標準偏差、中央値、平均絶対誤差、並びにスピアマン相関係数及びLinの相関係数の両方(図6及び図8のグラフの左上を参照)などの様々なメトリックによって評価した。
【0082】
図6は、本開示の1つ以上の実施形態による、擬似興奮値と興奮値とを比較した例示的なチャート600を示す。比較された擬似興奮値及び興奮値を、ペーシング部位40、すなわち
【0083】
【数23】
に関して計算した。このペーシング部位は、リエントリ回路の出口に位置する。結果は、擬似興奮値と興奮値とが類似していること、すなわち擬似興奮値が興奮値と一致する(チャート600の左上のメトリックを参照)ことを示している。図7は、ペーシング部位40に関して計算された、擬似興奮マップ(Aと表示されている)及び興奮マップ(Bと表示されている)の視覚的表現を示す。擬似興奮マップと興奮マップとは同様である。いずれのマップも、関心領域の迅速な特定を可能にし、リエントリ回路の全体的な興奮パターンを示す。全体的な興奮パターンは、パターン配列によって特定される。パターンバー(図7の右下を参照)は、パターン配列1~6を示す。パターン-1の領域はパターン-2の領域の前に興奮し、パターン-2の領域はパターン-3の領域の前に興奮し、以下同様である。ペーシング部位40の興奮時間、すなわち
【0084】
【数24】
は、両方のマップにおいて0である。したがって、ペーシング部位40は、図7の両方のマップ上のパターン-1に対応する。
【0085】
図8は、本開示の1つ以上の実施形態による、擬似興奮値と興奮値とを比較した例示的なチャート800を示す。比較された擬似興奮値及び興奮値を、ペーシング部位42、すなわち
【0086】
【数25】
に関して計算した。このペーシング部位は、リエントリ回路の入口に位置する。結果として、得られた擬似興奮マップは、興奮マップとは逆の興奮パターンを有する。図8に示す結果は、擬似興奮値と逆の興奮値との間の一致を示す(チャート800の左上のメトリックを参照)。図9は、ペーシング部位42に関して計算された擬似興奮マップ(Aと表示されている)及び逆の興奮マップ(Bと表示されている)の視覚的表現を示す。ここでも、擬似興奮マップと興奮マップとは同様である。いずれのマップも、関心領域の迅速な特定を可能にし、リエントリ回路の全体的な興奮パターンを示す。全体的な興奮パターンは、パターン配列によって特定される。パターンバー(図9の右下を参照)は、パターン配列1~6を示す。パターン-1の領域はパターン-2の領域の前に興奮し、パターン-2の領域はパターン-3の領域の前に興奮し、以下同様である。ペーシング部位40の興奮時間、すなわち
【0087】
【数26】
は、両方のマップにおいて0である。したがって、ペーシング部位40は、図9の両方のマップ上のパターン-1領域に対応する。
【0088】
図中のフロー図及びブロック図は、本開示の様々な実施形態によるシステム、方法及びコンピュータプログラム製品の考えられる実装形態の構造、機能性、及び動作を示すものである。この点に関して、フロー図又はブロック図における各ブロックは、示された論理機能を実装するための1つ以上の実行可能な命令を含むモジュール、セグメント、又は命令の部分を表してもよい。いくつかの代替的な実装形態において、ブロックに示される機能は、図に示される順序以外の順序で行われてもよい。例えば、連続して示す2つのブロックは、実際に、実質的に同時に実行されてもよく、あるいはそれらのブロックは、時には、関連する機能性に応じて、逆の順序で実行されてもよい。また留意されたい点として、ブロック図及び/又はフロー図の各ブロック、並びにブロック図及び/又はフロー図のブロックの組み合わせは、特定の機能又は動作を実行する専用のハードウェアベースシステムによって実施されてもよく、あるいは、専用のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを動作させるか又は実行することもできる。
【0089】
特徴及び要素が特定の組み合わせで上に記載されるが、当業者であれば、特徴又は要素の各々を単独で又は他の特徴及び要素と組み合わせて使用することができることを理解するであろう。加えて、本明細書に記載される方法は、コンピュータ又はプロセッサで実行するために、コンピュータ可読媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装され得る。本明細書で使用するコンピュータ可読媒体とは、電波又は他の自由に伝搬する電磁波、導波管若しくは他の伝送媒体を通って伝搬する電磁波(例えば、光ファイバーケーブルを通過する光パルス)、又は動線を通って伝送される電気信号などの、それ自体が一過性の信号であるものとして解釈されるべきではない。
【0090】
コンピュータ可読媒体の例としては、電気信号(有線又は無線接続を介して送信される)及びコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、これらに限定されるものではないが、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気媒体、光磁気媒体、コンパクトディスク(compact disk、CD)及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)などの光学媒体、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(static random access memory、SRAM)、及びメモリスティックなどが挙げられる。プロセッサをソフトウェアと共に使用して、端末、基地局、又は任意のホストコンピュータで使用するための無線周波数送受信機を実装することができる。
【0091】
本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、限定を目的としたものではない。本明細書で使用する時、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の形態をも含むものとする。用語「含む(comprise)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成部品の存在を示すものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在若しくは追加を除外するものではない点を理解されたい。
【0092】
1つ以上のコンピュータのシステムは、動作時にシステムに特定の動作を実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせをシステムにインストールすることによって、その動作を実行するように構成することができる。1つ以上のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されるとその装置に特定の動作を実行させる命令を含むことによって、その動作を実行するように構成することができる。一般的な一態様は、カテーテルの複数の電極によって、複数のマッピング点で複数のパルスを使用して心臓組織をペーシングすることでデータを測定することを含む。本方法はまた、測定されたデータを使用して擬似興奮マップを生成することを含み、擬似興奮マップはリエントリ回路を特定するために使用される。本態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は2つ以上のコンピュータ記憶デバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれは方法の動作を実行するように構成される。
【0093】
本明細書の異なる実施形態の説明は例示の目的で示されたものであるが、網羅的であることも開示される実施形態に限定されることも意図していない。多くの改変及び変形が、記載される実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実用的な用途、又は市場に見られる技術と比較した技術的改良点を最も良く説明するため、又は当業者による本明細書に開示される実施形態の理解を可能とするために選択されたものである。
【0094】
本明細書で引用される全ての特許出願、特許、及び印刷された刊行物は、あらゆる主題の放棄又は否認を除いて、及び組み込まれた資料が本明細書の明示的な開示と矛盾する程度を除いて、全体が参照により本明細書に組み込まれ、その場合、本開示の文言が支配する。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) 心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するためにプロセッサによって用いられる方法であって、
ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することであって、前記セットの各々は、前記ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される、ことと、
前記ペーシング部位のそれぞれの隣接部位の前記ECGデータの前記セットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することと、
前記相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定することと、
前記特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成することと、
を含む、方法。
(2) 前記受信されたペーシング部位に基づいて3D表面メッシュを生成することであって、前記ペーシング部位はグラフのノードを形成し、前記ペーシング部位の対が前記グラフのエッジによって連結されている、ことを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記相関勾配の前記計算は、
前記エッジによって連結されたそれぞれのペーシング部位のECGデータのセット間の形態学的変化に基づいて、前記3D表面メッシュのエッジに関して、前記相関勾配のうちの1つの相関勾配を計算することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記3D表面メッシュは、閾値を下回るそれぞれの相関勾配を有するエッジを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記特定されたコア領域に関する前記擬似興奮マップの前記生成は、
前記ペーシング部位に関して擬似興奮値を計算することであって、前記擬似興奮値の各々は、経路に沿った進行遅延を表し、前記経路は、前記特定されたコア領域に関連するペーシング部位から、前記3D表面メッシュのエッジを通って前記ペーシング部位のそれぞれの部位まで延在する、ことを含む、実施態様2に記載の方法。
【0096】
(6) 前記進行遅延は、前記経路に沿った前記3D表面メッシュのそれぞれのエッジの興奮遅延の推定値を含む累積遅延を表す、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記興奮遅延の推定値は、それぞれの刺激対QRS(sQRS)遅延を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記興奮遅延の推定値は、それぞれの洞調律伝導遅延を含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記経路は、前記経路に沿ったエッジに関連する重みの合計が最小となるように、最短経路を表す、実施態様5に記載の方法。
(10) 前記重みの各々は、それぞれのエッジによって連結されたペーシング部位間の興奮遅延の推定値を表し、前記興奮遅延はsQRS遅延又は洞調律伝導遅延のうちの1つである、実施態様9に記載の方法。
【0097】
(11) 前記特定されたコア領域に関する前記擬似興奮マップの前記生成は、
それぞれが前記特定されたコア領域に関連するペーシング部位に関する、複数の擬似興奮マップを生成することと、
前記複数の擬似興奮マップを組み合わせることと、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(12) 心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化するためのシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を格納するメモリであって、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記システムに、
ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することであって、前記セットの各々は、前記ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される、ことと、
前記ペーシング部位のそれぞれの隣接部位の前記ECGデータの前記セットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することと、
前記相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定することと、
前記特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成することと、
を実行させる、メモリと、
を備える、システム。
(13) 前記命令は、前記システムに、
前記受信されたペーシング部位に基づいて3D表面メッシュを生成することであって、前記ペーシング部位はグラフのノードを形成し、前記ペーシング部位の対が前記グラフのエッジによって連結されている、ことを更に実行させる、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記相関勾配の前記計算は、
前記エッジによって連結されたそれぞれのペーシング部位のECGデータのセット間の形態学的変化に基づいて、前記3D表面メッシュのエッジに関して、前記相関勾配のうちの1つの相関勾配を計算することを含む、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記3D表面メッシュは、閾値を下回るそれぞれの相関勾配を有するエッジを含む、実施態様14に記載のシステム。
【0098】
(16) 前記特定されたコア領域に関する前記擬似興奮マップの前記生成は、
前記ペーシング部位に関して擬似興奮値を計算することであって、前記擬似興奮値の各々は、経路に沿った進行遅延を表し、前記経路は、前記特定されたコア領域に関連するペーシング部位から、前記3D表面メッシュのエッジを通って前記ペーシング部位のそれぞれの部位まで延在する、ことを含む、実施態様12に記載のシステム。
(17) 前記進行遅延は、前記経路に沿った前記3D表面メッシュのそれぞれのエッジの興奮遅延の推定値を含む累積遅延を表す、実施態様16に記載のシステム。
(18) 前記興奮遅延の推定値は、それぞれのsQRS遅延を含む、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記興奮遅延の推定値は、それぞれの洞調律伝導遅延を含む、実施態様17に記載のシステム。
(20) 前記経路は、前記経路に沿ったエッジに関連する重みの合計が最小となるように、最短経路を表す、実施態様16に記載のシステム。
【0099】
(21) 前記重みの各々は、それぞれのエッジによって連結されたペーシング部位間の興奮遅延の推定値を表し、前記興奮遅延はsQRS遅延又は洞調律伝導遅延のうちの1つである、実施態様20に記載のシステム。
(22) 心臓内のリエントリ回路を擬似興奮マップによって視覚化する方法を実行するために少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
ECGデータのセット及びそれぞれのペーシング部位を受信することであって、前記セットの各々は、前記ペーシング部位のそれぞれの部位で心臓組織をペーシングすることによって生成される、ことと、
前記ペーシング部位のそれぞれの隣接部位の前記ECGデータの前記セットのセット間の形態学的変化を表す相関勾配を計算することと、
前記相関勾配に基づいて、リエントリ回路に関連するコア領域を特定することと、
前記特定されたコア領域に関して擬似興奮マップを生成することと、
を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】