IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 華廣生技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特開2022-167894マイクロバイオセンサー及びそれを使用して測定干渉を低減するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167894
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】マイクロバイオセンサー及びそれを使用して測定干渉を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B5/1473
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109556
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020131579の分割
【原出願日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】62/882,162
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/988,549
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518115285
【氏名又は名称】華廣生技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BIONIME CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】フアン,チュン-ム
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チー-シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヘン-チア
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チ-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ピ-スアン
(57)【要約】
【課題】本発明は、生体液中の標的分析物を測定する際の測定干渉を低減するためのマイクロバイオセンサーを提供する。
【解決手段】前記マイクロバイオセンサーは、基板と、前記表面に配置され、第一感知部分を含む第一作用電極と、前記表面に配置され、前記第一感知部分の少なくとも一つの側面に隣接して配置される第二感知部分を含む第二作用電極と、前記標的分析物と反応して結果物を生成するための、前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、を含む。前記第一作用電極は、第一作用電圧によって駆動されるとき、前記第一感知部分は、前記標的分析物に対応する生理信号を測定する。前記第二作用電極は、第二作用電圧によって駆動されるとき、前記第二導電性材料は、前記生理信号の測定干渉を継続的に低減するように、干渉物を直接消耗することができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液中のグルコース濃度の測定を実行し、前記測定における前記生体液中の少なくとも一つの干渉物の干渉を低減するために、皮膚の下に埋め込むためのマイクロバイオセンサーであって、
反対に配置されている第一表面及び第二表面を有する基板と、
前記基板の前記第一表面に配置される第一感知部分を含む第一作用電極であって、前記第一感知部分が第一導電性材料を含む前記第一作用電極と、
前記生体液中のグルコースと反応して過酸化水素を生成するための、前記第一感知部分の前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、
前記基板の前記第一表面に配置され、第二感知部分を含む少なくとも一つの第二作用電極であって、前記第二感知部分が前記第一感知部分の少なくとも一つの側に隣接して配置され、前記第二感知部分が前記第一導電性材料と異なる第二導電性材料を含む前記第二作用電極と、を備え、
前記第一作用電極が第一作用電圧によって駆動されて、前記第一感知部分が前記過酸化水素に対して第一感度を有し、測定範囲を生成するとき、前記第一導電性材料が前記過酸化水素と反応して電流信号を生成し、前記電流信号の値が前記グルコース濃度に対応するとき、生理信号が得られ、
前記第一作用電極が前記第一作用電圧によって駆動されて前記第一導電性材料が前記干渉物と反応して干渉電流信号を生成するとき、前記干渉電流信号と前記電流信号が共に出力されて前記生理信号を干渉し、
前記第二作用電極が第二作用電圧によって駆動されるとき、前記第二感知部分は、前記過酸化水素に対する前記第一感度よりも小さい第二感度を有し、前記第二感知部分は、前記干渉物を消耗して前記干渉電流信号の生成を低減するように、前記第一作用電極の周囲に接触する干渉除去範囲を生成し、前記測定範囲と少なくとも部分的に重ねることを特徴とするマイクロバイオセンサー。
【請求項2】
前記第二感度がゼロに近い又はゼロに等しく、
前記第二作用電極が前記第二作用電圧によって駆動されて前記第二導電性材料に前記干渉物を消耗させるとき、前記生理信号への前記干渉物の前記干渉は、特定の許容範囲以下になるように低減される、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項3】
前記第一導電性材料は、白金、イリジウム、パラジウム、金、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項4】
前記第一導電性材料が、0.2~0.8ボルトの前記第一作用電圧を有する白金である場合、前記第二導電性材料は、0.2~0.8ボルトの前記第二作用電圧を有する炭素である、ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項5】
前記化学試薬が、前記第二作用電極の前記第二感知部分の前記第二導電性材料の一部を更に覆う、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項6】
前記第二感知部分は、前記第一感知部分の前記少なくとも一つの側に間隙を隣接して配置され、
前記間隙は、0.2mm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項7】
前記第二感知部分は、前記第一感知部分の周辺の少なくとも一部に沿って延在し、前記第一感知部分の前記周辺の前記少なくとも一部から離間されており、
前記第一感知部分の前記周辺の全体に対する前記第一感知部分の前記周辺の前記一部の比率は、30%~100%の範囲である、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項8】
前記第二作用電極の第二感知部分は、前記第一作用電極の前記第一感知部分の少なくとも三つの側を囲む、ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項9】
前記基板の前記第一表面及び前記第二表面の一つに配置され、前記第一作用電極及び前記第二作用電極の少なくとも一つに結合される少なくとも一つの対電極を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項10】
少なくとも一つの対電極及び少なくとも一つの参照電極を更に備え、
前記対電極及び前記参照電極は、前記基板の前記第一表面及び前記第二表面の一つにそれぞれ配置される、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項11】
生体液中の標的分析物の生理パラメータの測定を実行し、前記測定における前記生体液中の少なくとも一つの干渉物の干渉を低減するために、皮膚の下に埋め込むためのマイクロバイオセンサーであって、
表面を有する基板と、
前記表面に配置される第一感知部分を含む第一作用電極であって、前記第一感知部分が第一導電性材料を含む前記第一作用電極と、
前記表面に配置され、前記第一感知部分の少なくとも一つの側に隣接して配置される第二感知部分を含む少なくとも一つの第二作用電極であって、前記第二感知部分が第二導電性材料を含む前記少なくとも一つの第二作用電極と、
前記生体液中の前記標的分析物と反応して結果物を生成するための、前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、を備え、
前記第一作用電極は、第一作用電圧によって駆動され、前記第一導電性材料を前記結果物と反応させて、前記標的分析物の前記生理パラメータに対応する生理信号を出力し、
前記第二作用電極は、第二作用電圧によって駆動され、前記第二導電性材料が前記干渉物を消耗して、前記干渉物によって引き起こされる前記生理信号への前記干渉を低減する、ことを特徴とするマイクロバイオセンサー。
【請求項12】
前記第二導電性材料は、前記第一導電性材料と異なり、
前記第一作用電極は、前記第一作動電圧によって駆動されるとき、前記第一導電性材料は、前記結果物に対して第一感度を有し、
前記第二作用電極は、前記第二作用電圧によって駆動されるとき、前記第二導電性材料は、前記結果物に対して前記第一感度よりも小さい第二感度を有する、ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項13】
前記第一作用電圧の値は、前記第二作用電圧の値と同じである、ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項14】
前記第二感知部分は、前記第一感知部分の前記少なくとも一つの側に間隙を隣接して配置され、
前記間隙は、0.2mm以下である、ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項15】
前記第二作用電極の数は二つであり、
二つの前記第二作用電極の二つの前記第二感知部分は、それぞれ、前記第一作用電極の前記第一感知部分の二つの反対側に隣接して配置される、ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項16】
前記第一感知部分と前記第二感知部分は、前記表面を介してのみそれらの間の位置関係を維持する、ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロバイオセンサー。
【請求項17】
標的分析物の測定干渉を低減するための方法であって、
生体液中の前記標的分析物の生理パラメータを測定するために使用されるマイクロバイオセンサーを提供するステップであって、前記マイクロバイオセンサーは、表面を有する基板と、前記表面に配置される第一感知部分を含む第一作用電極であって、前記第一感知部分が第一導電性材料を含む前記第一作用電極と、前記表面に配置され、第二感知部分を含む少なくとも一つの第二作用電極であって、前記第二感知部分が第二導電性材料を含む前記少なくとも一つの第二作用電極と、前記生体液中の前記標的分析物と反応して結果物を生成するための、前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、を備える前記ステップと、
干渉除去動作を実行するステップであって、前記干渉除去動作は、前記第二作用電極を第二作用電圧で駆動して、前記第二導電性材料に前記生体液中の干渉物を消耗させ、前記干渉物によって引き起こされる前記測定干渉を低減する前記ステップと、
測定動作を実行するステップであって、前記測定動作は、前記第一作用電極を第一作用電圧によって駆動して、前記第一導電性材料を前記結果物と反応させて、前記標的分析物の前記生理パラメータに対応する生理信号を出力する前記ステップと、を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記干渉除去動作及び前記測定動作は、同時に又は交互に実行される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
複数の前記測定動作が存在するとき、前記干渉除去動作が少なくとも一回実行され、前記干渉除去動作の開始が、複数の前記測定動作の第一測定動作の開始までにする、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記干渉除去動作が一回だけ実行されるとき、前記干渉除去動作の開始は、少なくとも単一の前記測定動作の測定期間よりも早い、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第二感知部分は、前記第一感知部分の前記少なくとも一つの側に間隙を隣接して配置され、
前記間隙は、0.2mm以下である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記マイクロバイオセンサーは、前記第一作用電極及び前記第二作用電極のうちの少なくとも一つに結合される少なくとも一つの対電極を更に備え、
前記測定動作を実行するステップは、前記第一作用電極及び前記対電極によって完成する、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願と優先権主張の相互参照
この出願は、2019年8月2日に提出された米国仮特許出願番号62/882,162及び2020年3月12日に提出された米国仮特許出願番号62/988,549の出願日の利益を主張し、これらの開示は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本発明は、マイクロバイオセンサーに関し、特に、生体液中の標的分析物を測定する際の測定干渉を低減するためのマイクロバイオセンサー及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性患者の人口の急速な増加によると、生体内の生体液中の分析物の検出は、患者の診断と監視にとって非常に重要である。特に、体内のブドウ糖濃度を効果的に監視することは、糖尿病の治療の鍵となる。そのため、近年、持続血糖モニタリング(CGM)システムが注目されている。このシステムには、指の血液をサンプリングすることによる痛みがなく、生体液中の1つ以上の標的分析物の生理パラメータを継続的に監視するなどは、従来のバイオセンサーに比べて多くの利点がある。
【0004】
持続血糖モニタリングシステムは、体内のグルコース濃度に対応する生理信号を測定するために使用される酵素に基づくバイオセンサーを含む。具体的には、グルコースオキシダーゼ(GOx)は、グルコース反応を触媒して、グルコノラクトンと還元酵素を生成する。還元酵素は、体内の生体液中の酸素の電子を伝達して副産物の過酸化水素(H2O2)を生成し、副産物のH2O2の酸化反応を触媒することによってグルコース濃度を定量化する。ただし、ビタミンCの主成分であるアスコルビン酸(AA)、鎮痛剤の一般的な成分であるアセトアミノフェン(AM)、尿酸(UA)、血液又は組織液中のタンパク質及びグルコース類似体などの干渉物質がある場合、干渉物質の酸化電位はH2O2の酸化電位に近く、対象化合物とは関係のない電気化学信号が生成される。生理パラメータの測定が信頼できるように、そのような干渉信号を低減する必要がある。
【0005】
したがって、出願人は、先行技術で遭遇する上記の状況に対処しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のマイクロバイオセンサーは、生体液中の分析物の生理パラメータを測定するために、生体の皮膚の下に埋め込むことができる。本発明のマイクロバイオセンサーは、異なる導電性材料から構成される二つの作用電極を含み、一方の作用電極は、生体流体の測定に影響を与える干渉物を消耗することができ、その結果、他方の作用電極は、測定時に、より正確な測定結果を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の別の態様によれば、生体液中のグルコース濃度の測定を実行するために皮膚の下に埋め込むためのマイクロバイオセンサーが開示される。マイクロバイオセンサーは、測定における生体液中の少なくとも一つの干渉物の干渉を低減する。マイクロバイオセンサーは、反対に配置されている第一表面及び第二表面を有する基板と、前記基板の前記第一表面に配置される第一感知部分を含む第一作用電極であって、前記第一感知部分が第一導電性材料を含む前記第一作用電極と、前記生体液中のグルコースと反応して過酸化水素を生成するための、前記第一感知部分の前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、前記基板の前記第一表面に配置され、第二感知部分を含む少なくとも一つの第二作用電極であって、前記第二感知部分が前記第一感知部分の少なくとも一つの側に隣接して配置され、前記第二感知部分が前記第一導電性材料と異なる第二導電性材料を含む前記第二作用電極と、を含む。前記第一作用電極が第一作用電圧によって駆動されて、前記第一感知部分が前記過酸化水素に対して第一感度を有し、測定範囲を生成するとき、前記第一導電性材料が前記過酸化水素と反応して電流信号を生成し、前記電流信号の値が前記グルコース濃度に対応するとき、生理信号が得られ、前記第一作用電極が前記第一作用電圧によって駆動されて前記第一導電性材料が前記干渉物と反応して干渉電流信号を生成するとき、前記干渉電流信号と前記電流信号が共に出力されて前記生理信号を干渉し、前記第二作用電極が第二作用電圧によって駆動されるとき、前記第二感知部分は、前記過酸化水素に対する前記第一感度よりも小さい第二感度を有し、前記第二感知部分は、前記干渉物を消耗して前記干渉電流信号の生成を低減するように、前記第一作用電極の周囲に接触する干渉除去範囲を生成し、前記測定範囲と少なくとも部分的に重ねる。
【0008】
本開示のもう一つの態様によれば、生体液中の標的分析物の生理パラメータの測定を実行するために、皮膚の下に埋め込むためのマイクロバイオセンサーが開示され、マイクロバイオセンサーは、前記測定における前記生体液中の少なくとも一つの干渉物の干渉を低減する。マイクロバイオセンサーは、表面を有する基板と、前記表面に配置される第一感知部分を含む第一作用電極であって、前記第一感知部分が第一導電性材料を含む前記第一作用電極と、前記表面に配置され、前記第一感知部分の少なくとも一つの側面に隣接して配置される第二感知部分を含む少なくとも一つの第二作用電極であって、前記第二感知部分が第二導電性材料を含む前記少なくとも一つの第二作用電極と、前記生体液中の前記標的分析物と反応して結果物を生成するための、前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、を含む。前記第一作用電極は、第一作用電圧によって駆動され、前記第一導電性材料を前記結果物と反応させて、前記標的分析物の前記生理パラメータに対応する生理信号を出力し、前記第二作用電極は、第二作用電圧によって駆動され、前記第二導電性材料が前記干渉物を消耗して、前記干渉物によって引き起こされる前記生理信号への前記干渉を低減する。
【0009】
本開示のもう一つの態様によれば、標的分析物の測定干渉を低減するための方法が提供される。前記方法は、生体液中の前記標的分析物の生理パラメータを測定するために使用されるマイクロバイオセンサーを提供するステップであって、前記マイクロバイオセンサーは、表面を有する基板と、前記表面に配置される第一感知部分を含む第一作用電極であって、前記第一感知部分が第一導電性材料を含む前記第一作用電極と、前記表面に配置され、第二感知部分を含む少なくとも一つの第二作用電極であって、前記第二感知部分が第二導電性材料を含む前記少なくとも一つの第二作用電極と、前記生体液中の前記標的分析物と反応して結果物を生成するための、前記第一導電性材料の少なくとも一部を覆う化学試薬と、を備える前記ステップと、干渉除去動作を実行するステップであって、前記干渉除去動作は、前記第二作用電極を第二作用電圧で駆動して、前記第二導電性材料に前記生体液中の干渉物を消耗させ、前記干渉物によって引き起こされる前記測定干渉を低減する前記ステップと、測定動作を実行するステップであって、前記測定動作は、前記第一作用電極を第一作用電圧によって駆動して、前記第一導電性材料を前記結果物と反応させて、前記標的分析物の前記生理パラメータに対応する生理信号を出力する前記ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の上記の実施形態及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討した後に、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
図1A】本発明のマイクロバイオセンサーの第一実施形態の正面概略図を示す。
図1B】本発明のマイクロバイオセンサーの第一実施形態の第一作用電極及び第二作用電極の構成の概略図を示す。
図2A図1(A)の断面線A~A ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図を示す。
図2B図1(A)の断面線B-B ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図を示す。
図2C図1(A)の断面線C~C ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図を示す。
図2D】別の製造プロセスによって得られたマイクロバイオセンサーの感知領域の断面概略図を示す。
図3A】本発明のマイクロバイオセンサーの第二実施形態の正面概略図を示す。
図3B】本発明のマイクロバイオセンサーの第二実施形態の第一作用電極及び第二作用電極の構成の概略図を示す。
図4図3(A)の断面線A~A ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図を示す。
図5A】本発明のマイクロバイオセンサーの第三実施形態の正面概略図を示す。
図5B図5(A)の断面線A~A ’に沿ったマイクロバイオセンサーの切断視野の断面概略図を示す。
図6A-6C】本発明の第一感知部分及び第二感知部分の他の構成の概略図を示す。
図6D図6(C)の断面線I~I ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図を示す。
図7】本発明の第一感知部分及び第二感知部分の他の構成の概略図を示す。
図8A-8C】本発明の第一感知部分及び第二感知部分の他の構成の概略図を示す。
図9A】本発明のマイクロバイオセンサーの感知領域の断面概略図を示す。
図9B】本発明のマイクロバイオセンサーの感知領域の断面概略図を示す。
図10】本発明のマイクロバイオセンサーが駆動された後の、第一感知部分の測定範囲及び第二感知部分の干渉除去範囲の概略図を示す。
図11】本発明のマイクロバイオセンサーの電圧を制御し、電流を測定する回路の一例の概略図を示す。
図12】本発明のマイクロバイオセンサーの測定中に生じる干渉を低減するための方法のフローチャートを示す。
図13A-13C】本発明のマイクロバイオセンサーを用いた測定中の干渉除去動作と測定動作との間の時間関係の概略図を示し、図13(A)は、干渉除去動作と測定動作が部分的に重なっていることを示し、図13(B)は、干渉除去動作と測定動作が重ならないことを示しており、図13(C)は、干渉除去動作と測定動作が完全に重なっていることを示す。
図14】本発明のマイクロバイオセンサーを用いた測定中の干渉除去動作と測定動作との間の時間関係の概略図を示す。
図15】本発明のマイクロバイオセンサーを用いた測定中の干渉除去動作と測定動作との間の時間関係の概略図を示す。
図16】本発明のマイクロバイオセンサーの第一感知部分のみが駆動された後の第一感知部分の測定範囲の概略図を示す。
図17】本発明の試験例と比較試験例との生体外の干渉除去試験への適用を示す測定曲線図であり、第二作用電極の干渉除去機能が作動すると、第一感知部分が曲線C1として示し、第二感知部分から測定された電流信号は曲線C2として示し、第二作用電極の干渉除去機能が作動されていない場合、第一感知部分によって測定された電流信号は、曲線C3として示す。
図18A-18B】生体内の干渉除去試験の結果を示し、図18(A)は、干渉除去メカニズムのない測定曲線であり、図18(B)は、干渉除去メカニズムを備えた測定曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を以下の実施形態を参照してより具体的に説明する。好ましい実施形態の以下の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されたい。それらは網羅的であること、又は開示された正確な形式に限定されることを意図していない。好ましい実施形態において、同じ参照番号は、各実施形態の同じ要素を表す。
【0012】
本発明のマイクロバイオセンサーは、生体液中の標的分析物の生理パラメータを連続的に測定するために、生体の皮膚の下に埋め込まれるために使用される持続血糖モニタリングシステムのセンサーであり得る。さらに、本明細書で言及される「標的分析物」という用語は、一般に、グルコース、ラクトース、尿酸などであるが、これらに限定されなく、生体内に存在する任意の試験物質を指す。「生体液」という用語は、血液又は間質液(ISF)であるが、これらに限定されなく、「生理パラメータ」という用語は、濃度であるが、これに限定されない。
【0013】
図1(A)を参照し、図1(A)は、本発明のマイクロバイオセンサーの第一実施形態の正面概略図である。本発明のマイクロバイオセンサー10は、基板110を含み、基板110は、表面111と、表面111に配置される第一作用電極120、第二作用電極130と、表面111、第一作用電極120及び第二作用電極130の一部を覆う絶縁層140とを有する。図1(B)を参照し、基板110の表面111上の第一作用電極120及び第二作用電極130の構成を明確に示すために、絶縁層140が除去されている。基板110は、表面111、反対側の表面112(図2(A)、図9(A)と図9(B)に示される)、第一端部113、第二端部114を含み、さらに信号出力領域115、感知領域116及びその上の絶縁領域117を限定する。信号出力領域115は、第一端部113に近い領域に配置され、感知領域116は、第二端部114に近い領域に配置され、絶縁領域117は、絶縁層140によってコーティングされ、信号出力領域115と感知領域116との間の領域に配置される。第一作用電極120及び第二作用電極130は、基板110の第一端部113から第二端部114まで延びる。第一作用電極120は、感知領域116に第一導電性材料1Cを有する第一感知部分121と、信号出力領域115にある第一信号出力部分122(図1(A)に示される)と、絶縁領域117の少なくとも一部によって部分的に覆われるように、第一感知部分121と第一信号出力部分122との間に配置される第一信号接続部分123(図1(B)に示される)とを含む。第二作用電極130は、感知領域116に第二導電性材料2Cを有する第二感知部分131と、信号出力領域115に第二信号出力部分132(図1(A)に示される)と、絶縁領域117の少なくとも一部によって覆われるように、第二感知部分131と第二信号出力部分132との間に配置される第二信号接続部分133(図1(B)に示される)とを含む。本発明の第二感知部分131は、第一感知部分121の少なくとも一つの側に隣接し、第二感知部分131の側は、第一感知部分121の少なくとも1つの側に沿って延びる。第一実施形態において、第二感知部分131は、第一感知部分121の三つの側に沿って延在して、U字形の感知部分を形成する。したがって、本発明の第一感知部分121及び第二感知部分131は、表面111を介してのみそれらの間の位置関係を維持する。本発明の第一感知部分121と第二感知部分131は互いに直接隣接しているため、電極や接続線などの中間体は存在しない。
【0014】
これらの構造を得るために、製造工程において、第二導電性材料2Cを、最初に基板110の表面111に形成し、図1(B)に示すようなパターンにパターン化することができる。具体的には、第二導電性材料2Cは二つの分離された領域に分割される。基板110の第一端部113から第二端部114で延在し、第二端部114で曲げられてU字形構造を形成する二つの領域のうちの一つは、第二作用電極130として事前設定され、基板110の第一端部113から第二端部114まで延在してU字形の構造によって囲まれる他の領域は、第一作用電極120として事前設定される。絶縁層140が基板110上に覆われ、信号出力領域115及び感知領域116を露光した後、第一導電性材料1Cは、感知領域116において第一作用電極120の第二導電性材料2C上に形成され、第一作用電極120の第一感知部分121の製造を終了する。しかしながら、図示していないが、第一導電性材料1Cは、感知領域116において第一作用電極120の第二導電性材料2Cの一部のみに形成することができる。したがって、図1の断面線A-A '、B-B'及びC-C 'に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図は、それぞれ図2(A)、 図2(B)、 図2(C)に示す。図2(A)に示すように、本発明の第一実施形態の第一感知部分121は、基板の表面111に形成され、第一導電性材料1Cの上に配置される第二導電性材料2Cを有し、第二感知部分131は、第二導電性材料2Cを有する。図2(B)は、U字型の第二感知部分131の下部領域を示しており、したがって、基板110の表面111には第二導電性材料2Cのみが存在する。図2(C)に示されるように、第一導電性材料1Cは感知領域116のみに形成されるので、絶縁領域117に位置する第一作用電極120の部分は、第二導電性材料2Cのみを有し、絶縁層140によって覆われる。
【0015】
別の実施形態において、絶縁層140を形成するステップは、第一導電性材料1Cを形成した後に実行することができ、したがって、第一導電性材料1Cは、第一作用電極120のすべての第二導電性材料2Cに実質的に形成することができる。更に、パターニングステップの後の第二導電性材料2Cの位置、サイズ及び形状は、本発明の要求に応じて変更することができる。したがって、他の実施形態において、第二導電性材料2Cは、パターニングステップで定義されて、図1(B)に示されるようなパターンを表すことができるが、第一感知部分121が形成されると予想される領域で省略される。具体的には、第一作用電極120の第二導電性材料2Cは、信号出力領域115及び絶縁領域117においてのみ形成されるか、或いは、せいぜい部分的に感知領域116まで延びる。次に、第一導電性材料1Cが、第一感知部分121が形成されると予想される領域の表面111に直接形成される。第一導電性材料1Cは、第一作用電極120の他の部分(すなわち、第二導電性材料2C)に電気的に接続されて、第一作用電極120の配置を完成させる。この実施形態のマイクロバイオセンサー10の感知領域116の断面概略図は、図2(D)として示される。他の実施形態において、第一作用電極120が形成されると予想される領域内の第二導電性材料2Cは、パターニングステップで除去することができる。そのため、絶縁層140をコーティングする前に、第一導電性材料1Cを第一作用電極120に直接形成して、第一作用電極120を形成することができる。
【0016】
本発明のマイクロバイオセンサー10において、感知領域116内の第二感知部分131と第一感知部分121との間の間隙は、0.2mm以下である。好ましくは、間隙は、0.01mm~0.2mmの範囲である。より好ましくは、間隙は、0.01mm~0.1mmの範囲である。更に好ましくは、間隙は、0.02mm~0.05mmの範囲である。具体的には、 図2(A)に示すように、第一実施形態において、第一感知部分121と第二感知部分131との間の間隙S3とS5は両方とも0.04mmである。
【0017】
本発明において、第一導電性材料1Cは、炭素、白金、アルミニウム、ガリウム、金、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、マグネシウム、ニッケル、モリブデン、オスミウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、チタン、 亜鉛、シリコン、ジルコニウムのうちの1つ、それらの誘導体(合金、酸化物又は金属化合物など)、又はそれらの組み合わせであり得る。第二導電性材料2Cは、第一導電性材料1Cに例示された要素又はその誘導体であり得る。本発明の絶縁層140の材料は、絶縁効果を達成することができる任意の材料であり得る、例えばパリレン、ポリイミド、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、液晶ポリマー材料(LCP)又はMicroChem, etc.のSU-8フォトレジストなどであるが、これらに限定されない。
【0018】
図3(A)と図3(B)を参照し、図3(A)は、本発明のマイクロバイオセンサー10の第二実施形態の正面概略図であり、図3(B)は、絶縁層14が除去され、基板110の表面111上の第一作用電極120及び第二作用電極130の配置を明確に示している。第二実施形態において、第一作用電極120及び第二作用電極130は、基板110の第一端部113から第二端部114まで延びる。感知領域116内に配置され、第一導電性材料1Cによって覆われる第一作用電極120の一部は、第一感知部分121であり、感知領域116内に配置され、第二導電性材料2Cを有する第二作用電極130の一部は、第二感知部分131である(図3(A)に示す)。第二実施形態において、第二感知部分131は、第一感知部分121の片側に沿って曲がることなく延在し、その結果、第二感知部分131は、第一感知部分121の片側にのみ隣接している。したがって、図3(A)の断面線A~A 'に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図は、図4に示されている。本発明の第二実施形態の第一感知部分121は、第二導電性材料2Cで覆われた第一導電性材料1Cを有し、第二感知部分131は、第二導電性材料2Cを有し、第一感知部分121の片側にのみ隣接している。
【0019】
図5(A)を参照し、図5(A)は、本発明のマイクロバイオセンサーの第三実施形態の正面概略図である。第三実施形態において、マイクロバイオセンサー10は、二つの第二作用電極130を有する。第一作用電極120及び二つの第二作用電極130は、基板110の第一端部113から第二端部114まで延在し、二つの第二作用電極130は、それぞれ、第一作用電極120の二つの反対側に沿って延在する。感知領域116に配置され、第一導電性材料1Cによって覆われる第一作用電極120の部分は、第一感知部分121であり、感知領域116に配置され、第二導電性材料2Cを有する二つの第二作用電極130の部分は、第二感知部分131である。第三実施形態において、二つの第二感知部分131は、それぞれ、第一感知部分121の二つの反対側に隣接して配置される。したがって、図5(A)の断面線A~A 'に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図は、図5(B)を示す。本発明の第三実施形態の第一感知部分121は、第二導電性材料2Cで覆われた第一導電層1Cを有し、二つの第二感知部分131は、第二導電性材料2Cを有し、それぞれ、第一感知部分121の二つの反対側にのみ隣接している。
【0020】
本発明の第一感知部分121及び第二感知部分131の構成は、第一から第三実施形態に記載されているが、他の構成もあり得る。例えば、第一実施形態において、第二感知部分131は、第一感知部分121の互いに接続された三つの側に沿って延在し、U字型の感知部分を形成する。しかしながら、変更された実施形態において、第二感知部分131の長さは、図6(A)に示すように、第一感知部分121の三つの側に沿って延びるように調整でき、或いは、第二感知部分131は、図6(B)に示すように、L字形の感知部分を形成するように、第一感知部分121の二つの隣接する側に沿って延びる。第一実施形態の別の変更された実施形態において、第一作用電極120の第一信号接続部分123は、基板110の貫通穴118を介して基板110の反対側の表面112に配置と延長され得る。したがって、第二感知部分131は、図6(C)~6(D)に示すように、第一感知部分121の四つの側を囲むことができる。第二実施形態であろうと第三実施形態であろうと、第二感知部分131の長さは、図7~8(C)に示すように変更され得る。したがって、前述の「第二感知部分131は、第一感知部分121の少なくとも一方の側に隣接する」という句は、具体的には、第一感知部分121の周辺の全体に対する、第二感知部分131に隣接する第一感知部分121の周辺部分の比率は、30%~100%の範囲であることを指す。
【0021】
更に、図1(A)、2(A)、3(A)、4、5(A)と5(B)に示すように、本発明のマイクロバイオセンサー10は、化学試薬層150を更に含む。化学試薬層150は、少なくとも、第一感知部分121の第一導電性材料1Cを覆う。具体的には、本発明のマイクロバイオセンサー10の製造工程において、既に表面111及び/又は反対側の表面112に電極が配置されている基板110は、化学試薬を含む溶液に浸漬することができる。基板110の浸漬深さは、化学試薬層150が少なくとも一回にマイクロバイオセンサー10の感知領域116を覆うことができるように調整する。すなわち、化学試薬層150は、第一感知部分121の第一導電性材料1C及び第二感知部分131の第二導電性材料2Cの両方で覆うことができる。他の実施形態において、化学試薬層150は、図1(A)に示すように、絶縁領域117を更に覆うことができる。第一導電性材料1Cで覆われる化学試薬層150は、生体液中の標的分析物と反応して結果物を生成することができ、第一導電性材料1Cは、結果物と反応して、標的分析物に対応する生理信号を更に出力する。
【0022】
本発明に開示される二つの作用電極の構成は、二電極システム及び三電極システムに適用することができる。二電極システムにおいて、本発明のマイクロバイオセンサー10は、図9(A)に示されるように、基板110の反対側の表面112に配置される少なくとも一つの対電極160を更に含む。図9(A)は、マイクロバイオセンサーの感知領域の断面概略図である。対電極160は、第一作用電極120又は第二作用電極130と協働することができる。二電極システムにおける対電極160は、使用した材料に基づいて参照電極としても機能することができる。対電極160は、第一作用電極120及び/又は第二作用電極130に結合されている。他の実施形態において、対電極160は、基板110の表面111に配置され得る(図示されていない)。三電極システムにおいて、本発明のマイクロバイオセンサー10は、対電極160を除いて、図9(B)に示しように、参照電位を提供するために使用される参照電極170を更に含む。図9(B)は、マイクロバイオセンサー10の感知領域116の断面概略図である。具体的には、対電極160及び参照電極170は分離されており、電気的に接続されておらず、対電極160は、第一作用電極120及び/又は第二作用電極130に結合されている。対電極160及び参照電極170は、両方とも、基板110の表面111上に配置され得るか(図示されていない)、またはそれぞれ基板110の異なる表面に配置され得る。また、 図9(A)~9(B)に示すように、化学試薬層150は、対電極160及び/又は参照電極170上に実質的に覆われている。
【0023】
本発明における「駆動」という用語は、一方の電極の電位を他方の電極の電位よりも高くする電圧を印加することを意味し、その結果、より高い電位を有する電極が酸化反応を開始することに留意されたい。したがって、第一作用電極120と対電極160との間の電位差が第一作用電極120を駆動させるものは第一作用電圧であり、第二作用電極130と対電極160との間の電位差が第二作用電極130を駆動させるものは第二作用電圧である。
【0024】
図10を参照し、本発明のマイクロバイオセンサー10の第一作用電極120は、生体液中の標的分析物の生理パラメータを測定するために使用される。マイクロバイオセンサー10の第一作用電極120が第一作用電圧によって駆動されると、第一感知部分は、測定範囲1Sを生成し、結果物に対して第一感度を有するので、第一導電性材料1Cは結果物と反応して電流信号を生成する。次に、電流信号は、信号接続部分123を介して第一作用電極120の信号出力部分122に送信され、電流信号の値は、結果物の濃度と比例関係を有し、結果として、生理パラメータに対応する生理信号が得られる。したがって、第一作用電極120が第一作用電圧によって駆動されると、結果物と反応して標的分析物の生理パラメータに対応する生理信号を出力する第一導電性材料1Cの動作が測定動作として定義される。しかしながら、生体液中には干渉物があり、第一導電性材料1Cが干渉物と反応して干渉電流信号を生成し、干渉電流信号と電流信号が一緒に出力されて生理信号が干渉される。
【0025】
したがって、本発明のマイクロバイオセンサー10の第二作用電極130は、干渉物を消耗するために適用することができる。マイクロバイオセンサー10の第二作用電極130が第二作動電圧によって駆動されると、第二感知部分131の第二導電性材料2Cは、結果物に対して第二感度を有し、第二感知部分131のそれぞれは、干渉除去範囲2Sを生成する。第二感知部分131は第一感知部分121の非常に近くに配置されているため、干渉除去範囲2Sは、それぞれ、第一感知部分121の周辺に接触し、第一感知部分121の測定範囲1Sと少なくとも部分的に重なることができる。その結果、第二導電性材料2Cは、干渉物との酸化反応を受けることによって干渉物を直接且つ連続的に消耗し、干渉電流信号の生成を低減する。これにより、測定動作に対する干渉物の影響を低減することができる。したがって、第二作用電極130が第二作用電圧によって駆動されると、第二導電性材料2Cに生体内の干渉物を消耗させる動作は、干渉除去動作として定義される。
【0026】
更に、第二作用電極130が第二作用電圧によって駆動されると、第二導電性材料2Cは、結果物と反応して別の電流信号を生成する。これは、標的分析物の生理パラメータを得るために第一作用電極120によって測定されるべき結果物を消耗する。そのため、実際に測定された生理パラメータが影響を受ける。したがって、一つの実施形態において、標的分析物がグルコースである場合、結果物は過酸化水素であり、生理パラメータはグルコース濃度であり、第一導電性材料1Cは、好ましくは、第一動作電圧によって駆動された後、過酸化水素に対して第一感度を有する材料であるべきだ。より好ましくは、第一導電性材料1Cは、金、白金、パラジウム、イリジウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。第二導電性材料2Cは、第一導電性材料1Cとは異なる。具体的には、第二導電性材料2Cは、好ましくは、第二作用電圧によって駆動された後、第一感度よりも低い過酸化水素に対する第二感度を有する材料であるべきだ。特に、第二導電性材料2Cは、第二作用電圧によって駆動された後、過酸化水素に対してほとんど感度がない、すなわち、第二感度がゼロに近いかゼロに等しい材料である。より具体的には、本発明の一つの実施形態において、第一導電性材料1Cは白金であり、第一作用電圧は、0.2ボルト(V)~0.8ボルト(V)の範囲であり、好ましくは、0.4ボルト(V)~0.7ボルト(V)の範囲であり、第二導電性材料2Cは炭素であり、第二作用電圧は、0.2ボルト(V)~0.8ボルト(V)の範囲であり、好ましくは、0.4ボルト(V)~0.7ボルト(V)の範囲である。本発明の別の実施形態において、第一導電性材料1Cは白金であり、第二導電性材料2Cは金である。前述の白金の形態は、白金金属、白金黒、白金ペースト、他の白金含有材料、又はそれらの組み合わせであり得ることに留意されたい。また、第一作用電圧の値は、第二作用電圧の値と同じであり得るが、本発明はそれに限定されない。
【0027】
図11図12を参照し、本発明のマイクロバイオセンサー10を操作する方法を更に説明する。 図11は、本発明の図9(A)に示すように、マイクロバイオセンサー10の電圧を制御し、電流を測定する回路の例である。図12は、本発明のマイクロバイオセンサー10の測定中に生じる干渉を低減するための方法のフローチャートである。図11において、電流感知ユニット201は、マイクロバイオセンサー10の第一作用電極120に接続され、別の電流感知ユニット202は、対電極160に接続される。電流感知ユニット201と202は、それぞれ、第一作用電極120及び対電極160からの電流信号i1とi3を測定し、i2は、第二作用電極130からの電流信号であり、別の電流感知ユニット(図示していない)によって測定することができる。この例において、第一作用電圧は、第一作用電極120の電位V1と対電極160の電位V3との間の差であり、第二作用電圧は、第二作用電極130の電位V2と対電極160の電位V3との間の差である。スイッチS1とS2は、それぞれ、第一作用電極120及び第二作用電極130をフローティングに設定することを可能にする。本発明の測定干渉を低減するための方法は、図12に示され、マイクロバイオセンサーを提供するステップS101と、干渉除去動作を実行するステップS102、測定動作を実行するステップS103を含む。干渉除去動作と測定動作の間には時間関係があり、可能な時系列はそれぞれ次のとおりである。
【0028】
第一時間関係:本発明のマイクロバイオセンサーは、例えば二週間の期間Tの間に測定を実行し、期間Tは、複数の第一サブタイム(T1)ゾーン及び/又は複数の第二サブタイム(T2)ゾーンを含む。干渉除去動作は各T1ゾーンで実行され、測定動作は各T2ゾーンで実行される。干渉除去動作と測定動作を交互に行う。即ち、第一時間関係は、順次に、第一T1ゾーンで第一干渉除去動作を実行して干渉物を消耗する。第一T2ゾーンで第一測定動作を実行して、当時の生理パラメータに対応する第一生理信号を出力する。第二T1ゾーンで第二干渉除去動作を実行して干渉物を消耗する。第二T2ゾーンで第二測定動作を実行して、当時の生理パラメータに対応する第二生理信号を出力する。以下同様に、期間T中の各T2ゾーンにおける生理パラメータの値データを取得する。図13(A)~13(C)に示すように、図の水平軸と垂直軸はそれぞれ時間と電流を表している。ここで、測定動作の線は、第一作用電圧の印加と除去を示し、干渉除去作用のもう一方の線は、第二作用電圧の印加と除去を示す。第一時間関係において、T1ゾーンとT2ゾーンは少なくとも部分的に重ねることができ(図13(A)に示す)、T1ゾーンとT2ゾーンを互いに分離することができ(図13(B)に示す)、又はT1ゾーンとT2ゾーンが完全に重なっている。すなわち、測定動作と干渉除去動作を同時に実行することができる(図13(C)に示す)。期間Tにおいて、第二作用電圧を任意の二つのT1ゾーン間で除去して、干渉除去動作を停止し、二つのT1ゾーンを分離することができ、第一作用電圧を任意の二つのT2ゾーン間で除去して、測定動作を停止し、二つのT1ゾーンを分離することができる。第一時間関係において、T1ゾーンの期間は、電流信号が結果物の濃度に対応し、生理パラメータと比例関係を持つように調整される。効果的な干渉消耗を達成するために、T1ゾーンの期間は、T2ゾーンの期間と同じにする、又はT2ゾーンの期間より長くなる。
【0029】
更に、図13(A)~13(B)に示すように、第一干渉除去動作は、好ましくは、第一測定動作よりも早く、又は同時に実行される。具体的には、複数の測定動作がある場合、干渉除去動作は少なくとも1回実行され、好ましくは、干渉除去動作の開始は、複数の測定動作の第一測定動作の開始までに行われる。
【0030】
第二時間関係:本発明のマイクロバイオセンサーは、例えば二週間の期間Tの間に測定を実行し、期間Tは、複数のサブタイムゾーンを含む。干渉除去動作は期間T全体で実行され、測定動作は各サブタイムゾーンで実行される。測定動作は間隔を置いて実行される。即ち、図14を参照し、第二時間関係は、期間T全体で第一干渉除去動作を継続的に実行して、期間Tの終わりまで干渉物を消耗する。干渉除去動作を実行し、第一サブタイムゾーンで第一測定動作を実行して、当時の生理パラメータに対応する第一生理信号を出力する。第二サブタイムゾーンで第二測定動作を実行して、当時の生理パラメータに対応する第二生理信号を出力する。以下同様に、期間T中のすべての異なるサブタイムゾーンにおける生理パラメータの値データを取得する。二つの隣接するサブタイムゾーンの間には時間間隔がある。期間Tにおいて、第一作用電圧を任意の二つのサブタイムゾーン間で除去して、測定動作を停止し、二つのサブタイムゾーンを分離することができる。第二時間関係において、各サブタイムゾーンの期間は同じでも異なっていてもかまわない。各サブタイムゾーンの期間は、電流信号が結果物の濃度に対応し、生理パラメータと比例関係を持つように調整される。
【0031】
第三時間関係:図示していないが、第三時間関係と第二時間関係との違いは、第三時間関係が期間T全体で測定動作を継続し、各サブタイムゾーンで干渉除去動作を実行することである。即ち、 干渉除去動作を交互に実行する。
【0032】
第四時間関係:図15を参照し、本発明のマイクロバイオセンサーは、例えば二週間の期間Tの間に測定を実行する。干渉除去動作は、期間T全体にわたって継続的に実行され、同時に、測定動作も、期間Tの終わりまで継続的に実行されて、干渉物を継続的に消耗し、生理パラメータを測定する。
【0033】
[生体外での干渉除去試験]
試験例
この試験例では、二つの作用電極を有する第一実施形態のマイクロバイオセンサーが使用され、第一感知部分はプラチナブラックでコーティングされた炭素電極であり、第二感知部分は炭素電極であり、第一作用電圧は0.5Vであり、第二作用電圧は0.5Vであり、干渉物はアセトアミノフェンである。
【0034】
比較試験例
この比較試験例では、比較試験例で使用されるマイクロバイオセンサーは、試験例と同じであるが、第二作用電圧は提供されていない。第二作用電圧が提供されないので、第二感知部分131は駆動されず、したがって、図16に示されるように、第一感知部分の測定範囲1Sのみが存在する。
【0035】
本発明のマイクロバイオセンサーを用いた生体外での干渉除去試験の方法は以下の通りである。試験例及び比較試験例のマイクロバイオセンサーを、異なる期間で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、100mg/dLのグルコース溶液、40mg/dLのグルコース溶液、100mg/dLのグルコース溶液、300mg/dLのグルコース、500mg/dLのグルコース、100mg/dLグルコース、2.5mg/dLのアセトアミノフェンを含む100mg/dLのグルコース、100mg/dLのグルコース、5.0mg/dLのアセトアミノフェンを含む100mg/dLのグルコースに順次浸漬する(P1からP9)。結果を図17に示す。第一感知部分121から測定された電流信号は、曲線C1として示され、第二感知部分131から測定された電流信号は、試験例において曲線C2として示され、第一感知部分121から測定された電流信号は、比較試験例において曲線C3として示される。
【0036】
図16の時間期間P1~P5から見ることができる。試験例又は比較試験例に関係なく、第一感知部分は、異なる期間における異なるグルコース濃度に従って、異なる強度の電流信号を生成する。つまり、第一感知部分の電流信号と生理パラメータの間には比例関係がある。ただし、第二感知部分から生成される電流信号はない。これは、酵素によって触媒されるグルコースに由来する副産物である過酸化水素に対する第二感知部分の活性又は感度が非常に低く、ゼロに近いかゼロに等しいことを表す。更に、曲線C3から、比較試験例のマイクロバイオセンサーを、期間P7で2.5mg/dLのアセトアミノフェンを含む100mg/dLのグルコース溶液に浸漬すると、期間P3で測定された現在の信号と比較して、期間P7で第一感知部分121によって測定された電流信号は、明らかに干渉物の影響を受けて高く浮き、測定干渉のレベルは、マイクロバイオセンサーが期間P9で5mg/dLのアセトアミノフェンを含む100mg/dLのグルコース溶液に浸されたときに更に明確になる。逆に、曲線C1及び曲線C2から、試験例のマイクロバイオセンサーを、期間P7で2.5mg/dLのアセトアミノフェンを含む100mg/dLのグルコース溶液に浸漬すると、期間P7での電流信号は、期間P3の電流信号と一致している。具体的には、第二作用電極130を第二作用電圧で駆動して干渉除去動作を行うと、アセトアミノフェンの濃度を上げても、第一感知部分121がアセトアミノフェンの影響を受けるレベルを下げることができる。他方、第二作用電極130の第二感知部分131はアセトアミノフェンを消耗するために使用されるので、PBS溶液及びグルコース溶液で電流信号が生成されないが、アセトアミノフェンがある場合には電流信号が生成される。したがって、測定環境(すなわち、測定範囲)にアセトアミノフェンが存在する場合、第二感知部分131は、アセトアミノフェンを消耗して、アセトアミノフェンによって干渉される第一感知部分の測定を減らすことができ、これにより、マイクロバイオセンサーは、より正確な生理パラメータを測定することができる。
【0037】
生体内での干渉除去試験
生体内での干渉除去試験では、本発明の二つの作用電極を有する第一実施形態のマイクロバイオセンサーが使用され、第一感知部分は白金黒でコーティングされた炭素電極であり、第二感知部分は炭素電極であり、第一作用電圧は0.5Vであり、第二作用電圧は0.5Vである。マイクロバイオセンサーを人の皮膚の下に埋め込んで間質液中のグルコース濃度を継続的に監視し、86時間目にアセトアミノフェンを主成分とするパナドール1gを投与する。干渉物除去メカニズムがある場合とない場合のデータが測定され、従来の血糖値計で測定されたデータと比較される。結果を図18(A)~18(B)に示す。図18(A)は、干渉物除去メカニズムのない測定曲線であり、図18(A)は、干渉物除去メカニズムを有しない測定曲線であり、図18(B)は、干渉物除去メカニズムを有する測定曲線である。
【0038】
図18(A)~18(B)において、黒い点は従来の血糖値計によって測定された値であり、点線は本発明のマイクロバイオセンサーの第一作用電極の測定曲線であり、実線は本発明のマイクロバイオセンサーの第二作用電極の測定曲線である。図18(A)から見ることができる。図18(A)において、干渉除去動作が活性化されない場合、本発明のマイクロバイオセンサーの第一作用電極によって測定される値が、約90~96時間(すなわち、1gのパナドールが投与された4~6時間後)に増加することを示す。それどころか、図18(B)から見ることができる。図18(B)において、干渉除去動作が活性化されると、本発明のマイクロバイオセンサーの第二感知部分は、対応する電流信号を測定し、第一作用電極によって測定された値は増加せず、従来の血糖値計を使用して測定値と一致させることができる。
【0039】
また、マイクロバイオセンサーの干渉除去機能を作動させた場合、薬物干渉のない期間の平均誤差値は0.1mg/dLとなり、薬物干渉のある期間の平均誤差値は-2.1mg/dLであり、合計誤差値は-1.1mg/dLであり、薬物干渉のある期間中の平均絶対相対差(MARD)は4.6である。マイクロバイオセンサーの干渉除去機能が作動していない場合、薬物干渉がない期間の平均誤差値は-0.2mg/dL、薬物干渉がある期間の平均誤差値は12.6mg/dL、合計誤差値は6.7mg/dLであり、薬物干渉のある期間の平均絶対相対差(MARD)は10.6である。第二作用電極130の第二感知部分131の干渉除去動作は、実際に、第一感知部分121によって測定された生理信号に対する干渉物の干渉を特定の許容範囲(20%、より具体的には10%など)以下に低減できることが分かる。要約すると、第二感知部分が第一感知部分の少なくとも一つの側に隣接して配置されるマイクロバイオセンサーを使用する本発明は、第二感知部分が第一感知部分の周りの干渉物を直接且つ継続的に消耗し、第一感知部分での干渉物の測定干渉を低減して、より正確なデータを取得する。
【0040】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
第一導電性材料1C
測定範囲1S
第二導電性材料2C
干渉除去範囲2S
マイクロバイオセンサー10
基板110
表面111、112
第一端部113
第二端部114
信号出力領域115
感知領域116
絶縁領域117
第一作用電極120
第一感知部分121
第一信号出力部分122
第一信号接続部分123
第二作用電極130
第二感知部分131
第二信号出力部分132
絶縁層140
化学試薬層150
対電極160
参照電極170
電流感知ユニット201、202
電流信号i1、i3
スイッチS1、S2
間隙S3、S5
電位V1、V2、V3
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
【外国語明細書】