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特開2022-167901パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)、および少なくとも一つの追加の抗ウイルス薬を使用したB型肝炎ウイルス(HBV)感染者の併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167901
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)、および少なくとも一つの追加の抗ウイルス薬を使用したB型肝炎ウイルス(HBV)感染者の併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20221027BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/39 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20221027BHJP
   C07K 14/065 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K35/76
A61P31/20
A61P43/00 121
A61K31/522
A61K31/513
A61K31/675
A61K31/7072
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/12
C12N15/39 ZNA
C12N15/85 Z
C07K14/065
C12N5/10
C12N7/04
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022123132
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2020513816の分割
【原出願日】2018-09-07
(31)【優先権主張番号】17189890.1
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17196684.9
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514134147
【氏名又は名称】アイクリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ パウルゼン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ウルバン
(72)【発明者】
【氏名】イビロンケ アディ
(72)【発明者】
【氏名】タマラ プファフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン メネ
(72)【発明者】
【氏名】ビレム スロート
(57)【要約】
【課題】HBV感染者の新規併用療法の提供。
【解決手段】本発明は、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)および少なくとも1つの追加の抗ウイルス薬、たとえばヌクレオシド阻害剤、たとえばエンテカビルを使用した、HBV感染者の新規併用療法に関する。本発明による方法および組み合わせ製品(combination product)は、慢性的HBV感染患者への機能的治癒の誘発のために安全かつ好適である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、以下を含む群から選択される、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む組成物:
-必要に応じて不活化されたパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)ビリオン、および/もしくはその活性断片、ならびに/または
-PPVO、および/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、もしくは合成核酸分子、ならびに/または
-PPVOビリオンもしくはその断片、ならびに/またはPPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、および/もしくは合成核酸分子を含む細胞。
【請求項2】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、以下を含む群から選択される、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む組成物であって、ここで異なる抗ウイルス薬は抗HBV抗ウイルス薬である、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む、請求項1に記載の組成物:
-PPVO、および/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、もしくは合成核酸分子、ならびに/または
-PPVOビリオンもしくはその断片、ならびに/またはPPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、および/もしくは合成核酸分子を含む細胞。
【請求項3】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む組成物であって、ここでPPVOは組換えウイルス核酸もしくはその少なくとも一つの活性断片であって、ならびに/またはここでPPVOは組換え生産されたビリオンおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片である、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む組成物であって、ここで前記PPVOはNZ2、NZ7、NZ10、D1701、OV/20、OV/7、OV/C2、OV/mi-90、OV-Torino、SA00、Bo29、orf11、Greek orf系統155、および/またはGreek orf系統176、または分類上関連するパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)orf系統である、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで前記抗ウイルス薬は、有効成分としてのヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、治療的ワクチン接種、トル様受容体(TLR)アゴニストおよびトル様受容体(TLR)アンタゴニスト、エピジェネティック修飾剤、侵入阻害剤または調節剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤、特にインターフェロンおよび他のサイトカイン、ならびに/またはチェックポイント阻害剤、特にPD-1を含む薬物の群から選択される、PPVOを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで有効成分としてヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含む薬物の群は、テノホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビルアラフェナミド(TAF)、エンテカビル、ラミブジン、テルビブジン、アデフォビル、エムトリシタビン、および/またはクレブジンを含む、PPVOを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここでPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、個別投与(separate administration)/逐次的投与(subsequent administration)のために処方され、またはここで請求項1~6のいずれか一項で定義されたPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、同時投与(concomitant administration)/同時投与(simultaneous administration)のために処方される、PPVOを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここでPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、個別投与(separate administration)/逐次的投与(subsequent administration)のために処方され、またはここで請求項1~7のいずれか一項で定義されたPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、同時投与(concomitant administration)/同時投与(simultaneous administration)のために処方される、PPVOを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここでPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、以下を含む群から選択される単剤単位(single drug unit)、または組み合わせ製品(combination product)として提供される、PPVOを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物:
錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、ならびに/またはスプレー。
【請求項10】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで前記個人は、急性HBV感染、慢性HBV感染を有する患者、検出可能なHBsAgを有する患者、検出可能なHBV RNAを有する患者、検出可能なHBV DNAを有する患者、検出可能なcccDNAを有する患者、肝炎患者、脂肪肝患者、肝線維症患者、肝硬変患者、肝がん患者、肝細胞がん患者、急性または無症候性または慢性感染患者、抗ウイルス治療を受けた患者、請求項1~9のいずれの一項に記載の抗ウイルス薬による抗ウイルス治療にも反応しない患者、または少なくとも一つの抗ウイルス薬に対する耐性を獲得した患者、および/またはデルタウイルス、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、パルボウイルス科、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポバウイルス科、ポリオーマウイルス科、ラブドウイルス科、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、およびトガウイルス科を含む群から選択される少なくとも一つの追加の病原性ウイルスと同時感染している患者の群から選択される、PPVOを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここでPPVOの用量は、1×106~1×1010ウイルス粒子の範囲であり、前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬の用量は、製造元の指示に従って選択される、PPVOを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、72週間以内、好ましくは60週間以内、より好ましくは48週間以内、36週間以内、24週間以内、12週間以内、6週間以内、4週間以内、2週間以内、または1週間以内、投与される、PPVOを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記PPVOは不活化されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のHBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬はエンテカビルである、PPVOを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで前記組成物および少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬で治療された前記患者は、HBsAgおよび/もしくはHBeAg陽性であり、ここでHBsAgおよび/もしくはHBeAg負荷は低下する、または請求項1~14のいずれか一項で定義されている治療の過程でHBsAgおよび/もしくはHBeAgの減少が起こる、PPVOを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで前記組成物は静脈内、筋肉内、経口、非経口、局所、皮内、および/または皮下投与のために製剤化される、PPVOを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
有効量のPPVOおよび有効量の少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬による、それを必要とするHBV感染患者の治療方法であって、ここで前記PPVOは以下を含む群から選択される、治療方法:
-必要に応じて不活化されたパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)ビリオンおよび/もしくはその活性断片、ならびに/または
-PPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクターもしくは合成核酸分子、ならびに/または
-PPVOビリオンもしくはその断片、ならびに/またはPPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、および/もしくは合成核酸分子を含む細胞。
【請求項18】
請求項17に記載の治療方法であって、ここで前記PPVOは組換えウイルス核酸もしくはその少なくとも一つの活性断片である、ならびに/またはここで前記PPVOは組換え生産されたビリオンおよび/もしくはその活性断片である、治療方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法であって、ここで前記異なる抗ウイルス薬は、有効成分としてのヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、治療的ワクチン接種、トル様受容体(TLR)アゴニストおよびトル様受容体(TLR)アンタゴニスト、エピジェネティック修飾剤、侵入阻害剤または調節剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤、特にインターフェロンおよび他のサイトカイン、ならびに/またはチェックポイント阻害剤、特にPD-1を含む薬物の群から選択される、方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一項に記載の方法であって、ここで有効成分としてヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含む薬物の群は、テノホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビルアラフェナミド(TAF)、エンテカビル、ラミブジン、テルビブジン、アデフォビル、エムトリシタビン、および/またはクレブジンを含む、方法。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか一項に記載の方法であって、ここで前記抗ウイルス薬はエンテカビルである、方法。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、個別に(separately)/逐次的に(subsequently)投与される、方法。
【請求項23】
請求項17~21のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、同時に(concomitantly)/同時に(simultaneously)投与される、方法。
【請求項24】
請求項17~23のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、以下を含む群から選択される単剤単位(single drug unit)、または組み合わせ製品(combination product)で提供される、方法:
錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、および/またはスプレー。
【請求項25】
請求項17~24のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、静脈内、筋肉内、経口、非経口、局所、皮内、および/または皮下投与のために製剤化される、方法。
【請求項26】
請求項17~25のいずれか一項に記載の方法であって、ここで前記個人は、急性HBV感染、慢性HBV感染を有する患者、検出可能なHBsAgを有する患者、検出可能なHBV RNAを有する患者、検出可能なHBV DNAを有する患者、検出可能なcccDNAを有する患者、肝炎患者、脂肪肝患者、肝線維症患者、肝硬変患者、肝がん患者、肝細胞がん患者、無症候性または急性または慢性感染患者、抗ウイルス治療を受けた患者、請求項1~25のいずれの一項に記載の抗ウイルス薬による抗ウイルス治療にも反応しない患者、または少なくとも一つの抗ウイルス薬に対する耐性を獲得した患者、および/またはデルタウイルス、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、パルボウイルス科、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポバウイルス科、ポリオーマウイルス科、ラブドウイルス科、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、およびトガウイルス科を含む群から選択される少なくとも一つの追加の病原性ウイルスと同時感染している患者の群から選択される、方法。
【請求項27】
請求項17~26のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOの用量は、1×106~1×1010ウイルス粒子の範囲であり、および/または前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬の用量は、製造元の指示に従って選択される、方法。
【請求項28】
請求項17~27のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、72週間以内、好ましくは60週間以内、より好ましくは48週間以内、36週間以内、24週間以内、12週間以内、6週間以内、4週間以内、2週間以内、または1週間以内、投与される、方法。
【請求項29】
それを必要とするHBV感染患者におけるHBVウイルス負荷を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の請求項1~28のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法。
【請求項30】
それを必要とするHBV感染患者におけるHBsAg負荷を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の請求項1~29のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法。
【請求項31】
それを必要とするHBV感染患者における肝障害、肝硬変、および/または肝線維症を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の請求項1~30のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法。
【請求項32】
それを必要とするHBV感染患者において肝組織再生を誘発するための方法であって、有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~31のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法。
【請求項33】
HBV感染患者の治療に関する副作用を低減する方法であって、前記副作用は、有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~32のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、インターフェロン、および/またはヌクレオチド/ヌクレオシドアナログによる治療によって引き起こされ、特に発熱、組織炎症、精神障害(psychological disturbance)、および/または血液学的障害を含む群から選択される副作用の低減の方法。
【請求項34】
HBV感染患者におけるHBeAg負荷を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の請求項1~33のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法。
【請求項35】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~34のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、それを必要とするHBV感染患者における免疫応答の回復および/または再活性化のための方法。
【請求項36】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~35のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBV DNAを低減し、HBV DNAを除去し、および/またはHBV DNAをサイレンシングする方法。
【請求項37】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~36のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるcccDNAのデノボ形成を防止する方法。
【請求項38】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~37のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBVタンパク質の発現を阻害または低減する方法。
【請求項39】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~38のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBVの複製を抑制する方法。
【請求項40】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~39のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBVを根絶する方法。
【請求項41】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~40のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBV感染に対する免疫寛容を破壊する方法。
【請求項42】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~41のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBsAgおよび/またはHBeAgに対する寛容を破壊する方法。
【請求項43】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~42のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBsAg特異抗体を誘発する方法。
【請求項44】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~43のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者におけるHBeAg特異抗体を誘発する方法。
【請求項45】
有効量のPPVOおよび有効量の請求項1~44のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、HBV感染患者における脂肪肝の進行を遅らせ、または阻害する方法。
【請求項46】
請求項17~45のいずれか一項に記載の方法であって、ここでPPVOおよび前記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、72週間以内、好ましくは60週間以内、より好ましくは48週間以内、36週間以内、24週間以内、12週間以内、6週間以内、4週間以内、2週間以内、または1週間以内、投与される、方法。
【請求項47】
PPVO、好ましくは不活化されたPPVOを含む医薬組成物を含む第一の容器、および請求項1~46のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を含む医薬組成物、またはPPVO、好ましくは不活化されたPPVOを含む医薬組成物、および複合製剤の形態の請求項1~46のいずれか一項で定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を含む第二の容器、および任意で使用説明書、再構成のための薬学的に許容される媒体、シリンジ、および/またはマイクロニードルを含む、医薬品キット製品。
【請求項48】
請求項47に記載の医薬品キット製品であって、ここでPPVO、好ましくは不活化されたPPVOを含む組成物、および少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を含む医薬組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、および/またはスプレーとして製剤化される、医薬品キット製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)、および少なくとも一つの追加の抗ウイルス薬、たとえばヌクレオシド阻害剤、たとえばエンテカビルを使用した、HBS感染者の新規な併用療法に関する。本発明による方法および組み合わせ製品(combination product)は、慢性的にHBVに感染した患者の機能的治癒の誘発のために安全かつ好適である。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヘパドナウイルスファミリー(ヘパドナウイルス科)の、エンベロープのある部分的に二重鎖のDNA(dsDNA)ウイルスである。慢性HBV感染症は、重大な世界的健康問題であり、全世界人口の5%以上(全世界で3億5千万人以上、米国では125万人以上)に影響を及ぼしている。
【0003】
HBV予防ワクチンが利用可能であるにもかかわらず、慢性HBV感染症の負荷は、最適化されていない治療オプションおよび開発途上国のほとんどの地域での新たな感染の持続率により、重大な、いまだ満たされていない医学的問題であり続けている。現在の治療法は治癒をもたらさず、薬剤の2つの種類(インターフェロンアルファおよびヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ/ウイルスポリメラーゼの阻害剤)のみに制限されている。薬剤耐性、有効性の低下、および耐性の問題により、それらの効果が制限される。
【0004】
HBVの低い治癒率は、少なくとも部分的には、ウイルス産生の完全な抑制は単一の抗ウイルス薬では困難であるという事実、ならびに感染した肝細胞の核における共有結合閉鎖環状DNA(cccDNA)の存在および持続性に起因する。しかしながら、HBV DNAの持続的な抑制は、肝疾患の進行を妨げ、肝細胞がん(HCC)を防ぐのに役立つ。
【0005】
HBV感染症患者のための現在の治療法の目標は、血清HBV DNAを低レベルまたは検出不可能なレベルまで低減すること、そして最終的には肝硬変およびHCCの発症を低減または防止することである。
【0006】
現在、HBVにおける機能的治癒の最高率は、免疫調節剤インターフェロンアルファ(IFNアルファ)による治療後に生じる。しかし、48~52週間のIFNアルファの治療でさえ、応答者率は、よくても約3~7%の持続性HBsAg損失をもたらす。
【0007】
それにもかかわらず、定量的HBsAg測定は、治療に対する反応性に関連付けられており、反応性を予測することが示されている:ヌクレオシドまたはヌクレオチド阻害剤による治療の終了時の低いHBsAg力価(およそまたは100IU/ml未満)は、反応性または治療を終了した後の再燃の低いリスクに関連付けられていた。さらに、定量的HBsAg測定はまた、IFNアルファ治療に対する反応性も予測することが示されている。
【0008】
その結果として、HBsAgの減少または損失は、機能的治癒の予測因子として用いられ、国際EASL HBV治療ガイドライン(2017年4月のEASL臨床診察ガイドライン)によって実行されている。
【0009】
発明の概要
本明細書では、それを必要とする対象におけるHBV感染の治療のための組み合わせ製品および方法が提供される。本発明の主題は、以下の実施形態において開示される。
【0010】
本発明の主題は、以下を含む群から選択される、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis)を含む組成物である:
-必要に応じて不活化されたパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)ビリオン、および/もしくはその活性断片、ならびに/または
-PPVO、および/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、もしくは合成核酸分子、ならびに/または
-PPVOビリオンもしくはその断片、ならびに/またはPPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、および/もしくは合成核酸分子を含む細胞であって、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のために少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための細胞。
【0011】
本明細書で使用されるように、最初に少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬(たとえば、エンテカビル、テノホビル等のヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ)を使用するか、またはPPVOを最初に使用し、そしてその後に(二番目に)それを必要とする個人を少なくとも一つの追加の抗ウイルス薬と組み合わせたPPVOで治療し、そしてさらにその後に(三番目に)維持療法として、本明細書に開示されているPPVOを用いた治療を短期間(数日から数週間)、または数カ月、さらには数年にわたって無限に継続することが可能である。あるいは、少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を用いて治療を続けてもよい。さらに、本発明による併用療法は、たとえば少なくとも1回、2回、3回等、必要に応じて繰り返してもよい。さらに、併用療法は同時に開始する、および/または同時に終了してもよい。
【0012】
本発明の主題は、前述の実施形態によるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、以下を含む群から選択される、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis)を含む組成物である:
-必要に応じて不活化されたパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)ビリオン、および/もしくはその活性断片、ならびに/または
-PPVO、および/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、もしくは合成核酸分子、ならびに/または
-PPVOビリオンもしくはその断片、ならびに/またはPPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、および/もしくは合成核酸分子を含む細胞、
ここで、異なる抗ウイルス薬は、抗HBV抗ウイルス薬である。
【0013】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む組成物である。ここでPPVOは組換えウイルス核酸、またはその少なくとも一つの活性断片である、ならびに/またはここでPPVOは組換え生産されたビリオン、および/もしくはその少なくとも一つの活性断片である。
【0014】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、パラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)を含む組成物である。ここで、PPVOは、NZ2、NZ7、NZ10、D1701、OV/20、OV/7、OV/C2、OV/mi-90、OV-Torino、SA00、Bo29、orf11、Greek orf系統155、および/またはGreek orf系統176、または分類上関連するパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)orf系統を含むPPVO系統の群から選択される。
【0015】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで、上記抗ウイルス薬は、有効成分としてのヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、治療的ワクチン接種、トル様受容体(TLR)アゴニストおよびトル様受容体(TLR)アンタゴニスト、エピジェネティック修飾剤、侵入阻害剤または調節剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤(インターフェロンおよび他のサイトカイン)、ならびに/またはチェックポイント阻害剤(たとえば、PD-1)を含む薬物の群から選択される。
【0016】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物であって、ここで、有効成分としてヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含む薬物の群は、テノホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビルアラフェナミド(TAF)、エンテカビル、ラミブジン、テルビブジン、アデホビル、エムトリシタビン、および/またはクレブジンを含む。
【0017】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、PPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、個別投与(separate administration)/逐次的投与(subsequent administration)のために処方され、またはここで上記実施形態のいずれか一つで定義されたPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、同時投与(concomitant administration)/同時投与(simultaneous administration)のために処方される。
【0018】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、PPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、個別投与(separate administration)/逐次的投与(subsequent administration)のために処方され、またはここで上記実施形態のいずれか一つで定義されたPPVOおよび少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、同時投与(concomitant administration)/同時投与(simultaneous administration)のために処方される。
【0019】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、上記PPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、以下を含む群から選択される単剤単位(single drug unit)、または組み合わせ製品(combination product)として提供される:
錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、ならびに/またはスプレー。
【0020】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、上記個人は、急性HBV感染症、慢性HBV感染症を有する患者、検出可能なHBsAgを有する患者、検出可能なHBV RNAを有する患者、検出可能なHBV DNAを有する患者、検出可能なcccDNAを有する患者、肝炎患者、脂肪肝患者、肝線維症患者、肝硬変患者、肝がん患者、肝細胞がん患者、急性または無症候性または慢性感染症患者、抗ウイルス治療を受けた患者、上記実施形態のいずれによる抗ウイルス薬による抗ウイルス治療にも反応しない患者、または少なくとも一つの抗ウイルス薬に対する耐性を獲得した患者、および/またはデルタウイルス、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、パルボウイルス科、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポバウイルス科、ポリオーマウイルス科、ラブドウイルス科、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、およびトガウイルス科を含む群から選択される少なくとも一つの追加の病原性ウイルスと同時感染している患者の群から選択される。
【0021】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、PPVOの用量は、1×106~1×1010ウイルス粒子の範囲であり、上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬の用量は、製造元の指示に従って選択される。
【0022】
本発明の主題は、上記の実施形態に定義されている、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、PPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、72週間未満、好ましくは60週間未満、より好ましくは48週間未満、36週間未満、24週間未満、12週間未満、6週間未満、4週間未満、2週間未満、または1週間未満、投与される。
【0023】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、上記の実施形態のいずれか一つによる組成物であり、ここで上記PPVOは不活化されている。
【0024】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、上記少なくとも一つの抗ウイルス薬は、エンテカビルである。
【0025】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、上記組成物および少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬で治療された上記患者は、HBsAgおよび/もしくはHBeAg陽性であり、ここでHBsAgおよび/もしくはHBeAg負荷は低下する、または前述の実施形態のいずれか一つで定義されている治療の過程でHBsAgおよび/もしくはHBeAgの減少が起こる。
【0026】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる、HBV感染症の個人の治療のための少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬と組み合わせて使用するための、PPVOを含む組成物である。ここで、上記組成物は静脈内、筋肉内、経口、非経口、皮内、および/または皮下投与のために製剤化される。
【0027】
本発明の主題は、有効量のPPVOおよび有効量の少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬による、それを必要とするHBV感染症患者の治療方法であって、ここで上記PPVOは以下を含む群から選択される:
-必要に応じて不活化されたパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)ビリオンおよび/もしくはその活性断片、ならびに/または
-PPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクターもしくは合成核酸分子、ならびに/または
-PPVOビリオンもしくはその断片、ならびに/またはPPVOおよび/もしくはその少なくとも一つの活性断片を発現する核酸ベクター、および/もしくは合成核酸分子を含む細胞。本発明の主題は、上記の実施形態による治療方法であって、ここで上記PPVOは、組換えウイルス核酸もしくはその少なくとも一つの活性断片、ならびに/またはここで上記PPVOは、組換え生産されたビリオンおよび/もしくはその活性断片である。
【0028】
本発明の主題は、上記の実施形態による方法であって、ここで上記異なる抗ウイルス薬は、有効成分としてのヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、治療的ワクチン接種、トル様受容体(TLR)アゴニストおよびトル様受容体(TLR)アンタゴニスト、エピジェネティック修飾剤、侵入阻害剤または調節剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤(たとえば、インターフェロンおよび他のサイトカイン)、ならびに/またはチェックポイント阻害剤(たとえば、PD-1)を含む薬物の群から選択される。
【0029】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここで有効成分としてヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含む薬物の群は、テノホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビルアラフェナミド(TAF)、エンテカビル、ラミブジン、テルビブジン、アデホビル、エムトリシタビン、および/またはクレブジンを含む。
【0030】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここで上記抗ウイルス薬はエンテカビルである。
【0031】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここでPPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、個別に(separately)/逐次的に(subsequently)投与される。
【0032】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここでPPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、同時に(concomitantly)/同時に(simultaneously)投与される。
【0033】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここでPPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、以下を含む群から選択される個別の単一単位形態(single unit form)、または組み合わせ製品(combination product)で提供される:錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、および/またはスプレー。
【0034】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここでPPVOおよび/または上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、静脈内、筋肉内、経口、非経口、局所、皮内、および/または皮下投与のために製剤化される。
【0035】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここで上記個人は、急性HBV感染、慢性HBV感染を有する患者、検出可能なHBsAgを有する患者、検出可能なHBV RNAを有する患者、検出可能なHBV DNAを有する患者、検出可能なcccDNAを有する患者、肝炎患者、脂肪肝患者、肝線維症患者、肝硬変患者、肝がん患者、肝細胞がん患者、無症候性または急性または慢性感染症患者、抗ウイルス治療を受けた患者、上記実施形態のいずれによる抗ウイルス薬による抗ウイルス治療にも反応しない患者、または少なくとも一つの抗ウイルス薬に対する耐性を獲得した患者、および/またはデルタウイルス、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、パルボウイルス科、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポバウイルス科、ポリオーマウイルス科、ラブドウイルス科、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、およびトガウイルス科を含む群から選択される少なくとも一つの追加の病原性ウイルスと同時感染している患者の群から選択される。
【0036】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここでPPVOの用量は、1×106~1×1010ウイルス粒子の範囲であり、および/または上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬の用量は、製造元の指示に従って選択される。
【0037】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここで、PPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、72週間未満、好ましくは60週間未満、より好ましくは48週間未満、36週間未満、24週間未満、12週間未満、6週間未満、4週間未満、2週間未満、または1週間未満、投与される。
【0038】
本発明の主題は、それを必要とするHBV感染症患者におけるHBVウイルス負荷を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0039】
本発明の主題は、それを必要とするHBV感染症患者におけるHBsAg負荷を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0040】
本発明の主題は、それを必要とするHBV感染症患者における肝障害、肝硬変、および/または肝線維症を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0041】
本発明の主題は、それを必要とするHBV感染症患者において肝組織再生を誘発するための方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0042】
本発明の主題は、HBV感染症患者の治療に関する副作用を低減する方法であって、ここで上記副作用は、有効量のPPVOおよび有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む、インターフェロン、および/またはヌクレオチド/ヌクレオシドアナログによる治療によって引き起こされ、具体的には副作用の低減は、発熱、組織炎症、精神障害(psychological disturbance)、および/または血液学的障害を含む群から選択される。
【0043】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBeAg負荷を低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0044】
本発明の主題は、それを必要とするHBV感染症患者における免疫応答の回復および/または再活性化のための方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0045】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBV DNAを低減し、HBV DNAを除去し、および/またはHBV DNA、具体的にはcccDNAをサイレンシングする方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0046】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるcccDNAのde novo形成を防止する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0047】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBVタンパク質の発現を阻害または低減する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0048】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBVの複製を抑制する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0049】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBVを根絶する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0050】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBV感染に対する免疫寛容を破壊する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0051】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBsAgおよび/またはHBeAgに対する寛容を破壊する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0052】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBsAg特異抗体を誘発する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0053】
本発明の主題は、HBV感染症患者におけるHBeAg特異抗体を誘発する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0054】
本発明の主題は、HBV感染症患者における脂肪肝の進行を遅らせ、または阻害する方法であって、有効量のPPVO、および有効量の前述の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を投与することを含む方法である。
【0055】
本発明の主題は、上記の実施形態のいずれか一つによる方法であって、ここでPPVOおよび上記少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬は、72週間未満、好ましくは60週間未満、より好ましくは48週間未満、36週間未満、24週間未満、12週間未満、6週間未満、4週間未満、2週間未満、または1週間未満、投与される。
【0056】
本発明の主題は、PPVO、好ましくは不活化されたPPVOを含む医薬組成物を含む第一の容器、および上記の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を含む医薬組成物、またはPPVO、好ましくは不活化されたPPVOを含む医薬組成物、および複合製剤の形態の上記の実施形態のいずれか一つで定義された少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を含む第二の容器、および任意で使用説明書、再構成のための薬学的に許容される媒体、シリンジ、および/またはマイクロニードル等を含む、医薬品キット製品である。
【0057】
本発明の主題は、上記の実施形態による医薬品キット製品であって、ここで組成物はPPVO、好ましくは不活化されたPPVOを含む組成物を含み、そして少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬を含む医薬組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、および/またはスプレー等として製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】研究デザイン処理/組み合わせ(0~12週):AIC649または「AIC媒体」:静注治療(i.v. treatment)、週2回12週間ETVまたは「ETV媒体」:1日1回投与、経口、12週間維持(Maintenance):13~24週:AIC649または「AIC媒体」:筋注治療(i.m. treatment)、週2回12週間25~36週:AIC649または「AIC媒体」:筋注治療(i.m. treatment)、週1回12週間ETV=エンテカビル
図2】AIC649およびエンテカビルの組み合わせにより、慢性的WHVキャリアウッドチャックのウイルス血症レベルが相乗的に低下する。AIC649、ETV、またはAIC媒体、ETV媒体を研究デザインに従って投与した。示された時点でウッドチャックから採血し、血清をWHV DNA負荷の測定に供した。実験開始時、n=5/群(群1の死亡:週21で1匹、群2の死亡:週12、26で1匹ずつ、群3の死亡:週4、14、21、29で1匹ずつ、群4の死亡:なし)。水平の点線は、T0(6.36×1010 ウイルスge/ml)でのすべての群の平均ウイルスゲノム当量(ge/ml)を表す。週0の垂直の点線は、治療の開始または治療レジメンの変更(12週および24週)を示した。(A)群1(媒体)、(B)群2(AIC649のみ)、(C)群3(ETVのみ)、(D)群4(ETV+AIC649)における、個々のウッドチャック(異なる記号で識別)の血清WHV DNA濃度。
図3】AIC649とエンテカビルの組み合わせにより、慢性WHVキャリアウッドチャックの抗原血症レベルが相乗的に低下する。AIC649、ETVまたはAIC媒体、ETV媒体を研究デザインに従って投与した。示された時点でウッドチャックから採血し、血清をWHsAg DNA負荷の測定に供した。実験開始時、n=5/群(群1の死亡:週21で1匹、群2の死亡:週12、26で1匹ずつ、群3の死亡:週4、14、21、29で1匹ずつ、群4の死亡:なし)。水平の点線は、WHsAgの検出限界を示す。週0の垂直の点線は、治療の開始または治療レジメンの変更(12週および24週)を示した。(A)群1(媒体)、(B)群2(AIC649のみ)、(C)群3(ETVのみ)、(D)群4(ETV+AIC649)における、個々のウッドチャック(異なる記号で識別)の血清WHsAg濃度。
図4】AIC649治療のみが慢性WHVキャリアウッドチャックにおいて細胞性免疫を刺激する-ETVとの組み合わせでさらに顕著になる。AIC649、ETV、またはAIC媒体、ETV媒体を研究デザインに従って投与した。示された時点でウッドチャックから採血し、PBMCをWHsAgペプチドで刺激した。値をT0で個々のベースラインに正規化し、ベースラインからの変化倍率として示す。実験開始時、n=5/群(群1の死亡:週21で1匹、群2の死亡:週12、26で1匹ずつ、群3の死亡:週4、14、21、29で1匹ずつ、群4の死亡:なし)。群ごとの幾何平均が与えられる。週0の垂直の点線は、治療の開始または治療レジメンの変更(12週および24週)を示した。(白色○)群1(媒体)、(灰色○)群2(AIC649のみ)、(薄灰色◇)群3(ETVのみ)、(黒色▲)群4(ETV+AIC649)。
図5】AIC649治療のみが慢性WHVキャリアウッドチャックにおいて抗WHsAg抗体の発達を刺激する-ETVとの組み合わせでさらに顕著になる。AIC649、ETV、またはAIC媒体、ETV媒体を研究デザインに従って投与した。示された時点でウッドチャックから採血し、血清中のWHs抗体レベルを定量化した。値をT0で個々のベースラインに正規化し、%で示す。実験開始時、n=5/群(群1の死亡:週21で1匹、群2の死亡:週12、26で1匹ずつ、群3の死亡:週4、14、21、29で1匹ずつ、群4の死亡:なし)。群ごとの幾何平均が与えられる。週0の垂直の点線は、治療の開始または治療レジメンの変更(12週および24週)を示した。(白色○)群1(媒体)、(灰色○)群2(AIC649のみ)、(薄灰色◇)群3(ETVのみ)、(黒色▲)群4(ETV+AIC649)。
図6】AIC649治療は慢性WHVキャリアウッドチャックのGGTの増加を遅らせるように見える。ETV、またはAIC媒体、ETV媒体を研究デザインに従って投与した。示された時点でウッドチャックから採血し、血清中のGGTレベルを定量化した。値をT0で個々のベースラインに正規化し、%で示す。実験開始時、n=5/群(群1の死亡:週21で1匹、群2の死亡:週12、26で1匹ずつ、群3の死亡:週4、14、21、29で1匹ずつ、群4の死亡:なし)。群ごとの幾何平均が与えられる。水平の点線は、ベースライン(100%)を示す。週0の垂直の点線は、治療の開始または治療レジメンの変更(12週および24週)を示した。(白色○)群1(媒体)、(灰色○)群2(AIC649のみ)、(薄灰色◇)群3(ETVのみ)、(黒色▲)群4(ETV+AIC649)。
図7】プラセボ治療ではなく、AIC649治療が慢性WHVキャリアウッドチャックの肝臓においてIFN-γを誘発した。AIC649、ETV、またはAIC媒体、ETV媒体を研究デザインに従って投与した。示された時点でウッドチャックから肝生検を採取し、サイトカイン転写レベルの測定に供した。値を週-1で個々のベースラインに正規化した。実験開始時、n=5/群(群1の死亡:週21で1匹、群2の死亡:週12、26で1匹ずつ、群3の死亡:週4、14、21、29で1匹ずつ、群4の死亡:なし)。結果は、時点ごとに少なくとも3つの値が利用可能な場合にのみプロットした。群2(ETVのみ)では、これは週-1の場合のみであったため、この群の曲線はない。結果を平均倍率変化+/-SEMとして示す。週0の垂直の点線は、治療の開始または治療レジメンの変更(12週および24週)を示した。(白色○)群1(媒体)、(灰色○)群2(AIC649のみ)、(薄灰色◇)群3(ETVのみ)、(黒色▲)群4(ETV+AIC649)。
【0059】
結論
●AIC649治療に関連する毒性学的関連性の所見はなかった。
●AIC649による治療は肝臓中および血液中のETVにより、ウイルス核酸の抑制を亢進および延長し、AIC649はWHV抗原に対する免疫応答を刺激するように見えた:抗WHV抗体およびサイトカイン誘発と同様に、WHV抗原に対する細胞性免疫応答が検出された。
●WHsAgに対する細胞性免疫応答は、循環しているWHsAgの損失または減少と相関していた。
●AIC649のみでは、循環しているWHV DNAレベルの一見してわずかな減少にもかかわらず、WHsAgの減少を誘発した。
●AIC649治療により、肝WHcまたはWHs抗原の発現が持続的に失われ、ETVとの併用でより頻繁かつ顕著であったが、AIC649治療なしでは発生しなかった。
●ウイルス学的パラメータ、たとえばWHV DNAおよびWHsAgは、AIC649およびETVの相乗的相互作用の可能性を示した。
【0060】
観察されたWHsAgの持続的損失、および細胞性免疫応答を伴う抗WHsAg抗体の誘発は、AIC649がWHVに対してWHVに対して生理学的に「協奏的な」、再構成された免疫応答を誘発するという仮説を支持する。ETVの組み合わせパートナーとしてのAIC649は、治療効果を劇的に向上させる。HBV感染症患者において機能的治癒を誘発するAIC649の潜在力は、この前臨床研究によって驚くほどに支持されている。
【実施例0061】
実験
慢性B型肝炎のウッドチャック動物モデルでは、免疫調節剤AIC649による8週間の筋肉内治療(intramuscular treatment)は、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)DNAおよび表面抗原(WHsAg)の減少を伴う、ユニークな二相性反応パターンを誘発することが示されている(Paulsen et al. (2015))。
【0062】
本実施例では、AIC649の抗ウイルス活性を、単独でまたはエンテカビル(ETV)と組み合わせて、ならびに異なる投与経路および長い治療期間とともに、ウッドチャックで研究した。その目的は、AIC649の安全性および潜在力をさらに研究し、慢性B型肝炎ウイルス感染の機能的治癒を誘発することであった。
【0063】
ウッドチャックでは、AIC649が36週間にわたって静脈内投与され、その後、単独で、または直接作用型抗ウイルス薬ETVの最初の12週間と組み合わせて投与された。AIC649単剤治療、ETV単剤治療、またはAIC649+ETV療法の有効性を、プラセボ対照群と比較した。
【0064】
ウイルス血症、抗原血症、免疫学的パラメタの治療誘発性変化、ならびにWHsAg抗体の血清転換の誘発を抗ウイルス効果の決定のために評価した。毎日の観察、体重および体温の変化、血液学および臨床化学の変化、ならびに部検および組織病理学を安全性の決定のために評価した。
【0065】
以前に観察されたAIC649の単剤治療によって誘発された二相性反応パターンを確認した。AIC649のみでの治療は、WHV DNAおよびWHsAgの前治療レベルからの明確な減少をすでにもたらした。AIC649+ETVの組み合わせの群では、有意で、さらに強力かつ持続的な抗ウイルス効果が観察された: WHV DNAおよびWHsAgは数カ月間著しく抑制され、またはより適切に言えば検出不可能であった。細胞性免疫応答、ならびに抗WHsAg抗体応答は、AIC649を投与された2つの群で観察されたが、ETV単剤投与群では観察されなかった。肝疾患マーカーの変化は群間で同等であったが、研究中の脂肪肝の進行は、AIC649単独およびAIC649+ETVの組み合わせの群ではより遅く見えた。観察されたWHsAgの持続的な損失、および細胞性免疫応答を伴う抗WHsAg抗体の誘発は、AIC649が生理学的に「協奏的な」、再構成されたWHVに対する免疫応答を誘発するという仮説を支持する。ETVの組み合わせパートナーとしてのAIC649は、治療効果を劇的に向上させる。HBV感染症患者において機能的治癒を誘発するAIC649の潜在力は、この前臨床研究によって驚くほどに支持されている。
【0066】
実施例1
本研究では、AIC649の抗ウイルス活性を単独で、またはエンテカビル(ETV)と組み合わせて、ならびに異なる投与経路およびより長い治療期間とともに、慢性的にWHVに感染したウッドチャックで研究した。その目的は、AIC649の安全性および潜在力をさらに研究し、慢性B型肝炎ウイルス感染の機能的治癒を誘発することであった。
【0067】
方法
ウッドチャックでは、36週間にわたって、AIC649が静注され、その後、単独で、または経口投与された直接作用型抗ウイルス薬ETVの最初の12週間と組み合わせて筋注された。図1:研究デザインを参照のこと。
【0068】
AIC649の単剤治療、ETVの単剤治療、またはAIC649+ETVの療法の有効性を、プラセボ対照群と比較した(N=5動物/群)。ウイルス血症、抗原血症、免疫学的パラメタの治療誘発性変化、ならびにWHsAg抗体の血清転換の誘発を抗ウイルス効果の決定のために評価した。毎日の観察、体重および体温の変化、血液学および臨床化学の変化、ならびに部検および組織病理学を安全性の決定のために評価した。
【0069】
動物
本研究で用いた20匹のウッドチャック(オス10匹、メス10匹)は、すべて飼育下で生まれ、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)WHV7-11系統(Fletcher et al. (2015): PLOSPath, 11, e1005103)を含むcWHV7P2a接種材料を生後3日目に接種した。cWHV7P2aを接種した。cWHV7P2aを接種した仔ウッドチャックを飼育し、約15~17カ月齢になるまで維持した。ウッドチャックをペアで、または個別に収容し、事前研究および研究の期間を通して食物および水に自由にアクセスさせた。すべてのウッドチャックに毎日50 mg/kgのフェンベンダゾール(パナクール)をジアルジアの起こりうる感染の治療のために、10日間、経口投与した。ウッドチャックを生化学的および血液学的異常についてスクリーニングした。ウッドチャックをWHsAg、WHsAg抗体(抗WHs)、およびWHV DNAについても試験した。すべてのウッドチャックはWHVによる新生仔の実験感染の過去30年間の経験に基づいて開発された受け入れ基準(accepted criteria)に基づいて、樹立されたWHVの慢性キャリアとして確認された(すなわち、生後9~12カ月およびそれ以降において、WHV DNAおよびWHsAg陽性であり、抗WHs陰性であった)。超音波検査により、受けた20匹中16匹のウッドチャックにおいて低血清ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)活性を有するウッドチャックにおいて肝腫瘍がないことが確認された。他の3匹のウッドチャックはわずかから中程度に血清GGT活性が上昇したが、最初の超音波検査では肝腫瘍を示さなかった。すべてのウッドチャックに動物識別番号(DASHost Software, Biomedical Data Systems Inc.)がプログラムされたマイクロチップ(尾部背側(dorsal base of the tail))を移植した。動物を手動で4つの治療群の1つに無作為割付し、性別、体重、前治療血清マーカー(WHsAg、WHV DNAレベル、抗WHsAg抗体価)、全血球数(CBCs)、GGTおよびソルビドールデヒドロゲナーゼ(SDH)の血清レベルによって階層化した。
【0070】
【表1】
【0071】
動物処置手順
手順は、表1に記載されているスケジュールに従って実行された:
【0072】
【表2】
aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間; DNA=デオキシリボ核酸; PT=プロトロンビン時間; WHV=ウッドチャック肝炎ウイルス
a) 肝生検分析に含まれるもの:WHV DNA RI、WHV cccDNA、WHV RNA(サザンおよびノーザンブロット)、組織学、WHcAg、WHsAg、抗WHsAg-Ab
b) DNAおよび血清学に含まれるもの:WHV DNA(スロットブロットおよびPCR)、WHsAg、抗WHsAg-Ab
c) WHsAg、WHcAg、WHVxAg全体をカバーするペプチドによるPBMCの刺激後に決定されたT細胞応答
d) 細胞分化マーカーおよびサイトカインの分析のために-80℃で保存されたサンプル。
【0073】
●すべての動物について死亡率を毎日評価した。
●体重/体温および臨床症状を毎週評価した。
●前治療の期間、無作為割付(T0)から24週まで毎週、および25週から36週まで隔週で血清学のために、血液サンプルを採取した。
●前治療中、T0、および4、8、12、16、21、24、30、および36週に血液学および臨床化学のために、血液サンプルを採取した。
●T0、および12、21、24、30、および36週にaPTTおよびPTの評価のために、血液サンプルを採取した。
●T0、および6、12、21、24、30、および36週にT細胞応答の評価のために、血液サンプルを採取した。
●前治療中、および6、12、21、24、30、および36週に細胞分化マーカーの評価およびサイトカインの測定のために、血液サンプルを採取した。治療期間中の採血は、「ETV媒体」、「AIC媒体」、ETV、および/またはAIC649の投与後、約16時間で行った。
●肝生検は、2週間の前治療期間中、および6、12、16、24、および36週で行った。
【0074】
治療期間中の採血のタイミング
サイトカインおよび細胞マーカーの分析のための血液サンプルは、治療の約16時間後に採取された。
【0075】
同じ麻酔イベント(anesthesia event)中に採血および静注投与を行うことができるように、血清学、ウイルス学、血液学(aPTTおよびPTを含む)または臨床化学、およびT細胞応答の分析のための血液サンプルを、経口投与(ETV/ETV媒体)後約0.5~1.0時間、静注投与前に採取した。AIC649またはAIC媒体の静脈内注射の場合、ケタミン/キシラジンの筋肉内注射、10:1混合物、25~50 mg/kgケタミン/1.0~5.0 mg/kgキシラジン、および/またはイソフルラン吸入(すなわち、ノーズコーンを介して、1~3%)を用いて動物を麻酔した。AIC649またはAIC媒体の筋肉内注射は、麻酔なしで行った。
【0076】
臨床観察および研究室実験
【0077】
臨床観察徴候
【0078】
死亡率
すべての動物について死亡率を毎日評価した。
【0079】
体温および体重
体温および体重の評価は、毎週一緒に行った。動物の識別番号および体温は、尾部背側(dorsal base of the tail)に移植したマイクロチップからハンドヘルドチップリーダーを用いて読み取った(Biomedical Data Systems Inc.)。データは個々の値として報告され、平均±SDとしてグループごとにまとめられた。
【0080】
血液学
凝固していない全血をEDTAチューブに収集した。サンプルを、分析のために研究室に同日配送するために、コールドパックで輸送した。翌日、ウッドチャックのためのプログラム設定を備えた自動セルカウンターシステム(coulter)を用いてサンプルを分析した(Bellezza, C.A., et al., 2002, Elsevier. p. 309-328.)。
【0081】
【表3】
【0082】
臨床化学
血清を収集して冷凍し、サンプル週にドライアイスで輸送した。サンプルを分析のために一度解凍した。aPTTおよびPTをクエン酸血漿で測定した。サンプルをウッドチャック用に確立された臨床化学アッセイを用いて、オートアナライザー(Hitachi)を用いて解析した(Peek, S.F., et al.: Hepatology, 2001. 33(1): p. 254-66)
【0083】
【表4】
【0084】
病理組織学
犠牲にした動物(terminated animal)の組織を10%リン酸緩衝ホルマリンで固定し、組織病理学的評価に送った。
【0085】
収集され、剖検で固定された臓器および組織のサンプルを処理し、ワックスパラフィンで包埋し、約2~4マイクロメートルの呼び厚さに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。スライドを処理し、染色し、光学顕微鏡で観察した。
【0086】
評価された臓器
以下の臓器を組織学的評価のために収集した:
副腎、大動脈、骨(大腿骨)および関節、骨髄を伴う骨(胸骨)、骨髄の塗抹標本(メタノール中で固定し、メイ・グリュンワルド・ギムザ法で染色した)、脳、気管支(主幹部)、盲腸、結腸、十二指腸、精巣上体、眼、胆のう、心臓、回腸、注入部位(サンプルを、注入されたエリアから採取する)、空腸、腎臓および尿管、喉頭、肝臓、肺、リンパ節(下顎)、リンパ節(腸間膜)、乳腺、食道、視神経、卵巣および卵管、膵臓、副甲状腺、パイエル板、脳下垂体、前立腺、直腸、唾液腺(下顎、耳下腺、舌下腺)、坐骨神経、骨格筋、皮膚、脊髄(頸部、胸部、腰部)、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、気管、尿管、膀胱、子宮(子宮角+子宮頸部)、膣、肉眼的病変。
【0087】
有効性/ウイルス学的評価
【0088】
血清中のWHV抗原/抗体
【0089】
血清WHV DNA
血清中のWHV DNAのレベルをニトロセルロース膜上の標準化された32P標識WHV DNA断片プローブとのスロットブロットハイブリダイゼーションを用いて、ゲノム等価物(ge’s)として定量化した。アッセイの定量下限(LLOQ)は、約107 ge/mL血清であった。スロットブロットLLOQの下記のサンプルもLLOQ 約5.0~7.0×102WHV ge/mL血清を用いた定量的リアルタイムPCRアッセイ(Menne, S., et al., Antimicrob Agents Chemother, 2008. 52(10): p. 3617-32)を用いて評価した。
【0090】
血清WHsAg
血清中のWHsAgレベルを、LLOQ 約5 ng WHsAg/mL 血清を用いた確立されたELISAを用いて定量した(Cote, P.J., et al., Viral Immunol, 1993. 6(2): p.161-9)。
【0091】
血清抗WHs抗体
血清中の抗WH抗体レベルを、確立されたELISA技術を、用いて定量化した(Cote, P.J., et al., Viral Immunol, 1993. 6(2): p.161-9)。1:100のサンプル希釈を用いたアッセイのLLOQは、約100 StdU/mL血清であった。サンプルを以下のように段階分けした:
●100~200 StdU/mLを微量レベルと見なした。
●200~300 StdU/mLを非常に低いレベルと見なした。
●300~500 StdU/mLを低レベルと見なした。
●500~2000 StdU/mLを中程度のレベルを見なした。
●>2000 StdU/mLを高レベルと見なした(たとえば、WHsAgアラムワクチンによる、ナイーブウッドチャックの3倍免疫化後に予想されるように)。
【0092】
未処理の慢性乾生動物では、循環しているWHsAgがかなり過剰であり、未結合の抗WHs Abの検出を起こりにくくするため、このアッセイの結果の解釈には注意が必要である。したがって、抗WHsAg検出の陰性結果は、未結合のWHs特異抗体の不足を示しており、WHs特異抗体全体の不足を示しているわけではない。
【0093】
T細胞増殖反応
PBMCを全血から分離し、DMO(ネガティブコントロール)、リポ多糖(LPS、ポジティブコントロール)、組換えヒトIL-2(ポジティブコントロール)、またはそれぞれWHcAg、WHsAg、もしくはWHxAg全体をカバーするペプチドのプールの存在下で5日間培養した。CellTiter-Glo(登録商標)アッセイを使用して、各テストウェル中の生細胞の数を、存在するATPの量、すなわち生細胞の数に比例する発光信号を用いて評価した。培養を5日後に評価し、特異抗原/刺激に対するT細胞応答の一つの指標として、ネガティブコントロールと比較して刺激指数(SI)を導出した。
SI =テスト発光/ネガティブコントロール発光
【0094】
サイトカインおよび細胞マーカー
治療に関連する免疫反応は、PCRを用いて、血液および肝臓におけるIFN-α、IFN-γ、TNF-α、インターロイキン6(IL-6)、CD3、CD4、CD8、CD14、CD56、およびCD79B RNA転写レベルの変化によって決定された。簡潔に言うと、全血を上記の時点でPAXgene血液チューブ(Qiagen, Redwood City, CA)に収集した。サンプルは、使用するまで-70℃で保存した。さらに、RNase-Free DNase (Qiagen)を使用したオンカラムDNase I消化を伴うRNeasy Mini Kit (Qiagen)を用いて、上記のように収集した肝生検サンプルから総DNAをさらに分離した。
【0095】
オリゴ(dT)を使用したHigh Capacity cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)によるmRNAの逆転写に続いて、相補的(c)DNAサンプルを、TaqMan Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)およびウッドチャック特異的プライマーおよびプローブを使用して、7500 Real Time PCR System instrument(Applied Biosystems)で増幅した(表2)。ウッドチャック18S rRNA発現を、標的遺伝子発現を正規化するために使用した。標的遺伝子の転写レベルを式2ΔCtを用いて、-1週(肝臓)またはT0(血液)における前治療レベルに対する変化倍率として計算した。
【0096】
【表5】
【0097】
肝生検
超音波ガイド下の肝臓パンチ生検を、超音波機器に取り付けたイメージングマニホールドに装着した16ゲージの使い捨て生検針キットを使用して、麻酔された動物に対して行った。各サンプリングで、2~3コア、各16ゲージ×1~2cmを取得した。生検を行った後、長時間作用型ベンザチンペニシリンで動物を予防的に筋肉内注射処理した。
【0098】
ウイルス核酸
文献に記載されているように、肝生検をWHV DNA RI、WHV cccDNA、およびWHV RNA(サザンおよびノーザンブロットハイブリダイゼーション)について定量的に分析した(Menne, S., et al., Antimicrob Agents Chemother, 2008. 52(10): p.3617-32.)。
【0099】
疾患の進行
生検は、ウッドチャック肝切片用に開発された基準(Peek, S.F., et al., Hepatology, 2001. 33(1): p.254-66. Tennant, B.C., et al.. Hepatology, 1998. 28(1): p.179-91.)を使用して、ならびにヒト肝臓サンプルをスコアリングするためのMETAVIRスケールを使用して、肝疾患の進行(組織学)について評価した。さらに、H&Eで染色したホルマリン固定パラフィン包埋切片を評価した。
【0100】
免疫組織化学
WHcAgおよびWHsAgの発現(免疫組織化学)を肝生検サンプルで評価した。文献に記載されているように、ホルマリン固定、パラフィン包埋切片を調製して染色し(Peek, S.F., et al., Hepatology, 2001. 33(1): p.254-66. Tennant, B.C., et al.. Hepatology, 1998. 28(1): p.179-91. Cote, P.J., et al. Hepatology, 2000. 31(1): p.190-200)、評価した。
【0101】
統計分析
群間の統計比較は、以下のパラメタに対して実行した:平均体重、体温、ウイルスの血清学的および肝臓のパラメタ、血液学パラメタ、臨床化学、PBMC増殖反応、および肝臓組織学および免疫組織化学スコア。
【0102】
AIC649+ETV(群4)で処理されたウッドチャックの結果は、等分散を備える、対応のないスチューデントのt検定を用いて、T0または前治療での値、また、「AIC媒体」+「ETV媒体」(群1)、AIC649+「ETV媒体」(群2)、および「AIC媒体」+ETVで処理されたウッドチャックの結果と比較した。
【0103】
示されている場合、幾何平均では、血清WHV DNAおよび血清WHsAgの対数変換データが計算され、算術平均され、スチューデントのt検定を用いて検定された。P値<0.05は、統計的に有意であると見なされた。
【0104】
結果
以前に観察されたAIC649の単剤治療によって誘発された二相性反応パターンを確認した(Paulsen et al.(2015):PLOSOne,10,e0144383)。AIC649のみでの治療は、WHV DNAおよびWHsAgの前治療レベルからの明確な減少をすでにもたらした。AIC649+ETVの組み合わせの群では、有意で驚くほど、さらに強力かつ持続的な抗ウイルス効果が観察された: WHV DNAおよびWHsAgは対応動物(responding animal)では数カ月間著しく抑制され、またはより適切に言えば検出不可能であった(図2および3)。細胞性免疫応答(図4)、ならびに抗WHsAg抗体応答(図5)は、AIC649を投与された2つの群で観察されたが、ETV単剤投与群では観察されなかった。ほとんどの肝疾患マーカーの変化は群間で同等であったが、研究中の脂肪肝の進行およびGGTの増加(図6)は、AIC649単独およびAIC649+ETVの組み合わせの群ではより遅く見えた。免疫学的パラメタの分析は、AIC649処理が慢性WHVキャリアウッドチャックの肝臓においてサイトカインおよび細胞マーカーを誘発することを明らかにした(図7)。AIC649治療は忍容性が良好であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022167901000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の個人の治療のために、抗HBV抗ウイルス薬と組み合わせて使用するためのパラポックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis:PPVO)剤を含む組成物であって、
ここで前記PPVO剤が、PPVOビリオン、その活性断片、PPVOビリオンまたはその活性断片を発現することができる核酸、および前記PPVOビリオン、その活性断片または前記核酸を含む細胞からなる群から選択され、
およびここで前記抗HBV抗ウイルス薬が、ヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、トル様受容体(TLR)アゴニストまたはアンタゴニスト、エピジェネティック修飾剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群から選択される、抗HBV抗ウイルス薬と組み合わせて使用するためのパラボックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis)剤を含む組成物。
【請求項2】
前記PPVOビリオンが不活化PPVOビリオンである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記PPVOまたはその活性断片を発現することができる核酸が、核酸ベクターまたは合成核酸分子である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記PPVOが、NZ2、NZ7、NZ10、D1701、OV/20、OV/7、OV/C2、OV/mi-90、OV-Torino、SA00、Bo29、orf11、Greek orf系統155、Greek orf系統176および前述のいずれかに分類学上関連するパラボックスウイルス・オヴィス(Parapoxvirus ovis)orf系統からなる群から選択される系統のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記PPVOが、前記NZ2系統のものである、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記抗HBV抗ウイルス薬が、直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antiviral)(DAA)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記DAAが、ヌクレオチド/ヌクレオシドアナログである、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記ヌクレオチド/ヌクレオシドアナログが、テノホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビルアラフェナミド(TAF)、エンテカビル、ラミブジン、テルビブジン、アデホビル、エムトリシタビン、およびクレブジンからなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記ヌクレオチド/ヌクレオシドアナログが、エンテカビルである、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記組成物が、前記抗HBV抗ウイルス薬を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、前記抗HBV抗ウイルス薬を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記PPVO剤および抗HBV抗ウイルス薬が、錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、およびスプレーからなる群から選択される単剤単位または組み合わせ製品として提供される、請求項10または11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記HBV感染症の個人の治療が、前記個人において、
-HBVウイルス負荷を低減する
-HBsAg負荷を低減する
-HBeAg負荷を低減する
-肝障害、肝硬変、および/または肝線維症を低減する
-肝組織の再生を誘発する
-インターフェロンおよび/またはヌクレオチド/ヌクレオシドアナログによる治療によって引き起こされる副作用を低減する
-免疫応答を回復および/または再活性化する
-HBV DNA量を低減する、HBV DNAを排除する、および/またはHBV DNAをサイレンシングする
-cccDNAのde novo形成を防止する
-HBVタンパク質発現を阻害または低減する
-HBVの複製を抑制する
-HBVを根絶する
-HBV感染に対する免疫寛容を破壊する
-HBsAgおよび/またはHBeAgに対する寛容を破壊する
-HBsAg特異的抗体を誘発する
-HBeAg特異的抗体を誘発する、または
-脂肪肝の進行を遅らせるか、または阻害する
ためのものである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
PPVO剤を含む第一の容器、および少なくとも1つの抗HBV抗ウイルス薬を含む第二の容器を含む、HBV感染症の個人の治療のためのキット製品であって、
ここで、前記PPVO剤が、PPVOビリオン、その活性断片、PPVOビリオンまたはその活性断片を発現することができる核酸、およびPPVOビリオン、その活性断片または前記核酸を含む細胞からなる群から選択され、
およびここで前記抗HBV抗ウイルス薬が、ヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、トル様受容体(TLR)アゴニストまたはアンタゴニスト、エピジェネティック修飾剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群から選択される、前記キット製品。
【請求項15】
PPVO剤および少なくとも一つの抗HBV抗ウイルス薬を含む組成物を含む、HBV感染症の個人の治療のためのキット製品であって、
ここで前記PPVO剤が、PPVOビリオン、その活性断片、PPVOビリオンまたはその活性断片を発現することができる核酸、およびPPVOビリオン、その活性断片または前記核酸を含む細胞からなる群から選択され、
およびここで前記抗HBV抗ウイルス薬が、ヌクレオチド/ヌクレオシドアナログ、キャプシド集合阻害剤または調節剤、キャプシド/コア阻害剤または調節剤、キャプシド形成阻害剤または調節剤、RNAi、トル様受容体(TLR)アゴニストまたはアンタゴニスト、エピジェネティック調節剤、シクロフィリン阻害剤または調節剤、HBsAg分泌阻害剤、HBsAg阻害剤、HBV侵入阻害剤または調節剤、cccDNA阻害剤、免疫調節剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群から選択される、前記キット製品。
【請求項16】
前記PPVO剤および少なくとも一つの異なる抗ウイルス薬が、錠剤、カプセル、ロゼンジ、特に耐酸性カプセル、ドロップ、パッチ、デポ投与形態、溶液、注射用溶液、輸液用溶液、希釈液、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、粉末、再構成用粉末、再構成および輸液用粉末、およびスプレー剤からなる群から選択される、請求項14または15に記載のキット製品。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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【外国語明細書】