(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167918
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】中空円管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20221027BHJP
F16L 59/147 20060101ALI20221027BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20221027BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20221027BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F16L11/04
F16L59/147
B32B1/08 B
B32B5/18
B32B27/30 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127061
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2019155133の分割
【原出願日】2014-07-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 琢真
(72)【発明者】
【氏名】和田 周也
(57)【要約】
【課題】本発明は、軽量化および多機能性を満たすことができる中空円管、中空円管の製造装置および中空円管の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の中空円管100は、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有する外層220と、内層210と、被覆層230とを含む。中空円管100の傾斜構造は、外層220の軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が低い。これによって、本発明の中空管100は、少なくとも軽量性と機械的物性とを兼ね備えた多機能性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層と非発泡層とが積層されて構成される中空管であって、
前記発泡層が、塩化ビニル系樹脂を含み、
前記非発泡層が、硬質塩化ビニル系樹脂を含み、
前記非発泡層は前記発泡層の内周側に積層される内層と、前記発泡層の外周側に積層される被覆層と、を備え、
前記内層の肉厚は、0.3mm以上10mm以下であり、
前記被覆層の肉厚は、0.1mm以上1.5mm以下であり、かつ、
前記内層の肉厚は前記被覆層の肉厚よりも厚いことを特徴とする中空管。
【請求項2】
発泡層と非発泡層とが積層されて構成される中空管であって、
前記発泡層が、塩化ビニル系樹脂を含み、
前記非発泡層が、硬質塩化ビニル系樹脂を含み、
前記非発泡層は前記発泡層の内周側に積層される内層と、前記発泡層の外周側に積層される被覆層と、を備え、
前記内層の肉厚は、前記発泡層の肉厚の10%以上70%以下であり、
前記被覆層の肉厚は、前記発泡層の肉厚の5%以上30%以下であり、かつ、
前記内層の肉厚は前記被覆層の肉厚よりも厚いことを特徴とする中空管。
【請求項3】
前記発泡層は、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有し、
前記傾斜構造は、
(a)前記発泡層の軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が高い構造、
(b)前記発泡層の軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が低い構造、
(c)前記発泡層の内周側および外周側よりも前記発泡層の肉厚の中央において空隙率が高い構造、または
(d)前記発泡層の内周側および外周側よりも前記発泡層の肉厚の中央において空隙率が低い構造である、請求項1または2に記載の中空管。
【請求項4】
前記傾斜構造は、前記発泡層の肉厚方向に空隙率が漸次変化する構造である、請求項3に記載の中空管。
【請求項5】
前記発泡層は、独立気泡型の発泡セルを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の中空管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空管、中空管の製造装置および中空管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンションまたはビルディングの排水管として、発泡性樹脂を用いたパイプ(発泡パイプ)が使用される例が増加している。発泡パイプは、パイプ全体の軽量化を図る目的で、発泡倍率を適当に選定し、発泡体の比重を小さくしている。発泡パイプは、発泡体による防音作用によって流水音を低減できるという利点も有している。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2007-283733号公報)には、連続気泡が少なく、均質な気泡を有する塩化ビニル系樹脂発泡層と実質的に非発泡構造の塩化ビニル系樹脂が積層されており、継手等との接合の際に両層の間に水が入り込まない、断熱効果、結露防止効果等に優れた塩化ビニル系樹脂発泡管について開示されている。
【0004】
特許文献1(特開2007-283733号公報)記載の塩化ビニル系樹脂発泡管は、内面スキン層と外面スキン層の間に発泡層が形成されてなる、押出成形された塩化ビニル系樹脂発泡管であって、内面スキン層は厚さ0.05~0.6mmで実質的に非発泡構造であり、外面スキン層は厚さ0.2~1.5mmで実質的に非発泡構造であり、又、発泡層の気泡は押出方向に平行な方向に実質的に連通しておらず、押出方向に垂直方向断面の平均セル径が30~150μmであり、発泡層の発泡倍率は2~5倍であることを特徴とするものである。
【0005】
また、特許文献2(特開平11-257548号公報)には、作業性や生産性に優れ、充分な消音効果を有する消音性パイプを提供することを目的としてなされた消音性パイプについて開示されている。
【0006】
特許文献2(特開平11-257548号公報)記載の消音性パイプは、給水管、排水管に適用する消音性パイプであって、塩化ビニル系樹脂組成物から形成され、発泡倍率1.2~5倍の発泡体からなる中間管と、軟質塩化ビニル系樹脂組成物から形成された外管と内管とにより構成されたことを特徴とするものである。
【0007】
特許文献3(特開2002-234066号公報)には、非発泡の発泡熱可塑性樹脂組成物で形成される内層および外層と、発泡熱可塑性樹脂組成物で形成される中間層とで構成される樹脂管の製品仕上がり時での肉厚が常に均一となるように樹脂管を製造する三層構造の樹脂管の製造方法について開示されている。
【0008】
特許文献3(特開2002-234066号公報)記載の三層構造の樹脂管の製造方法は、内層および外層となる非発泡熱可塑性樹脂組成物との間に中間層となる発泡熱可塑性樹脂組成物を介在させた状態の三層構造の未固化管状体を金型から共押出し、共押出された未固化管状体中の発泡熱可塑性樹脂組成物を発泡させるとともに、熱可塑性樹脂を冷却固化する三層構造の樹脂管の製造方法において、中間層を形成する熱可塑性樹脂に添加する発泡剤の添加量を、樹脂管の径方向への広がりを規制せずに成形した場合における所定製品寸法の発泡倍率を得るための理論添加量以上の添加量とするとともに、管外面成形用チューブと管内面成形用コアを用いて発泡圧に抗して所定の仕上がり寸法にサイジングを行って樹脂管を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
特許文献4(特開平9-222185号公報)には、高温で使用しても被覆層の熱変形や表面からの吸水も無く、断熱・保温機能に優れた複合パイプ及びその製造方法について開示されている。
【0010】
特許文献4(特開平9-222185号公報)記載の複合パイプは、塩化ビニル系樹脂からなるパイプ本体の外周面に、塩化ビニル系樹脂発泡体からなる被覆層が設けられた複合パイプであって、該被覆層が、発泡された内層部とその外周に形成された実質的に非発泡の表層部とからなり、且つ内層部と表層部とが一体的に形成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
特許文献5(特開平7-217934号公報)には、表面の結露を確実に防止できて施工が容易な空調機の排水のための排水管について開示されている。
【0012】
特許文献5(特開平7-217934号公報)記載の排水管は、平均発泡倍率が2~7倍の独立気泡型の発泡塩化ビニル樹脂によって構成されており、この発泡塩化ビニル樹脂の内周面に、0.2~0.5mmの厚さのスキン層が設けられているとともに、該発泡塩化ビニル樹脂の外周面に0.2~1.0mmの厚さのスキン層が設けられていることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-283733号公報
【特許文献2】特開平11-257548号公報
【特許文献3】特開2002-234066号公報
【特許文献4】特開平9-222185号公報
【特許文献5】特開平7-217934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、種々の発泡パイプについて多くの開発が行なわれている。いずれの発泡パイプも、寸法安定性等の観点から発泡体の発泡倍率を均一にして気泡を均質化することを目的に製造されていることが通常である。
発泡パイプにおける発泡層の発泡倍率は、パイプ全体の強度および重量を考慮して設定されている。たとえば、発泡倍率を大きくすると、パイプの曲げ強度および耐衝撃度などの機械的物性が低下するため、発泡層の内外両面を、非発泡樹脂で積層することにより全体の強度を確保する必要がある。強度の確保のためには、非発泡樹脂の層の厚みは大きい必要がある。したがって、必然的にパイプ全体の重量が増加し、所望の軽量化を図ることが困難である。
【0015】
本発明の目的は、少なくとも軽量性および機械的物性を兼ね備える多機能性を満たすことができる中空管、中空管の製造装置および中空管の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)
一局面に従う中空管は、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有する管状発泡体を含む。
【0017】
本発明の中空管は、発泡体を含むため、軽量性に優れる。さらに、発泡体の肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有するため、機械的物性に優れる。
このように、本発明の中空管は、少なくとも軽量性と機械的物性とを兼ね備えた多機能性を有する。
【0018】
なお、多機能性は、少なくとも軽量性と機械的物性とを兼ね備える特性をいい、その他、中空管の使用態様等によって、消音性、保温性、断熱性、結露防止性、および耐候性等を発揮する特性をいうこともある。なお、機械的物性には、曲げ物性(柔軟性)、耐内圧特性、および扁平性(クッション性)の少なくともいずれかが含まれる。
【0019】
なお、本発明において、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造とは、肉厚方向に空隙率の勾配を示す構造をいい、より具体的には、肉厚方向に空隙率が漸次変化する態様と、肉厚方向に空隙率が段階的に変化する態様、およびそれらの混在態様とを含む。
【0020】
(2)
傾斜構造は、管状発泡体の軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が高い構造を含んでよい。
【0021】
これによって、中空管の機械的物性(たとえば、耐内圧特性)がより優れる。
【0022】
(3)
傾斜構造は、管状発泡体の軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が低い構造を含んでよい。
【0023】
これによって、中空管の機械的物性(たとえば、曲げ物性)がより優れる。
【0024】
(4)
傾斜構造は、空隙率が異なる複数の層の積層構造を含んでよい。
これによって、空隙率の勾配を多様にすることができる。
【0025】
(5)
本発明の中空管は、管状発泡体の内周面に非発泡体の内層を含み、非発泡体の内層管の肉厚が、管状発泡体の肉厚の10%以上70%以下であってよい。
【0026】
本発明は、管状発泡体が軽量性とともに機械的物性も有するため、このように、内層管の肉厚を薄くすることができる。
【0027】
(6)
本発明の中空管は、管状発泡体の外周面に、非発泡体の被覆層を含んでよい。
【0028】
これによって、管状発泡体の外層を、被覆層によって被覆することができる。
被覆層の肉厚は、管状発泡体の肉厚の10%以上30%以下であってよい。本発明は、管状発泡体が軽量性を機械的物性とを有するため、このように、外層の被覆層の肉厚を薄くすることもできる。
【0029】
(7)
管状発泡体は、無機発泡体および有機発泡体の少なくともいずれかであってよい。
【0030】
このように、本発明の中空管は、無機発泡体および有機発泡体のいずれでも体現可能であり、無機発泡体および有機発泡体の混合体でも体現可能である。
【0031】
(8)
管状発泡体は、塩化ビニル系樹脂およびアクリロニトリル-スチレン系樹脂の少なくともいずれかであってよい。
【0032】
このように、本発明の中空管は、汎用樹脂で体現可能である。
【0033】
(9)
他の局面に従う中空管の製造方法は、積層工程と発泡工程とを含む。積層工程においては、少なくとも、所定量の発泡剤を含む第1発泡性材料と、当該所定量とは異なる量の発泡剤を含む第2発泡性材料とを管状に積層することによって、少なくとも第1発泡性材料と第2発泡性材料とを含む発泡性材料の管状積層体を得る。発泡工程においては、発泡性材料の管状積層体を発泡することによって管状発泡体を得る。
【0034】
これによって、肉厚方向に空隙率が異なる管状発泡体を含む中空管が製造される。
【0035】
(10)
本発明の中空管の製造方法において、発泡性材料の管状積層体の積層数は3以上であってよい。
これによって、空隙率の勾配が多様な管状発泡体を含む中空管が製造される。
【0036】
(11)
本発明の中空管の製造方法において、発泡性材料の管状積層体の積層数は4以上10以下であり、各層を構成する発泡性材料が、管状積層体の軸心に近い側より遠い側の層における方が発泡剤の含有量が多くなるように調製されてよい。
【0037】
これによって、軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が高い構造を有する管状発泡体を含む中空管が製造される。
【0038】
(12)
本発明の中空管の製造方法において、発泡性材料の管状積層体の積層数は4以上10以下であり、各層を構成する発泡性材料が、管状積層体の軸心に近い側より遠い側の層における方が発泡剤の含有量が少なくなるように調製されてよい。
【0039】
これによって、軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が低い構造を有する管状発泡体を含む中空管が製造される。
【0040】
(13)
本発明の中空管の製造方法においては、管状積層体または管状発泡体に、非発泡性材料を積層する工程をさらに含んでよい。
【0041】
これによって、管状発泡体が非発泡体で積層された中空管が製造される。
非発泡体の層は、管状発泡体の内側および外側の少なくともいずれかに積層されてよい。
【0042】
(14)
本発明の中空管の製造方法において、発泡剤は固体の熱分解性発泡剤であってよい。
この場合、発泡剤の量の調整を容易に行うことができる。
【0043】
(15)
本発明の中空管の製造方法において、発泡剤は無機ガスであってよい。
この場合、ロングラン性を良好に保つことができる。
【0044】
(16)
さらに他の局面に従う中空管は、上記(9)から(15)のいずれかに記載の中空管の製造方法によって得られる構造を有する。
したがって、本発明の中空管は、少なくとも軽量性と機械的物性とを兼ね備えた多機能性を有する。
【0045】
(17)
さらに他の局面に従う中空管の製造装置は、第1の発泡性材料を押出す第1押出機、第1の発泡性材料に発泡用ガスを供給する第1ガス供給部、および第1の発泡性材料を管状に成形する第1成形部と、第2の発泡性材料を押出す第2押出機、第2の発泡性材料に発泡用ガスを供給する第2ガス供給部、および管状の第1発泡性材料に積層されるように管状に成形する第2成形部と、を少なくとも含む。さらに、第1ガス供給部と第2ガス供給部とは、互いにガス圧を独立制御可能であるように構成される。
【0046】
これによって、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有する管状発泡体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】第1実施形態にかかる中空円管の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】第1実施形態にかかる中空円管の発泡層の傾斜構造を示すグラフである。
【
図3】第2実施形態にかかる中空円管の一例を示す模式的断面図である。
【
図4】第2実施形態にかかる中空円管の発泡層の傾斜構造を示すグラフである。
【
図5】第3実施形態にかかる中空円管の一例を示す模式的断面図である。
【
図6】第3実施形態にかかる中空円管の発泡層の傾斜構造を示すグラフである。
【
図7】第4実施形態にかかる中空円管の一例を示す模式的断面図である。
【
図8】第4実施形態にかかる中空円管の発泡層の傾斜構造を示すグラフである。
【
図9】第5実施形態にかかる中空円管の一例を示す模式的断面図である。
【
図10】他の例における中空円管の発泡層の傾斜構造を示すグラフである。
【
図11】中空円管の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図12】中空円管の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図13】中空円管の金型の模式的拡大断面図である。
【
図14】中空円管の製造装置の他の例を示す模式図である。
【
図15】中空円管の金型の他の例を示す模式的拡大断面図である。
【
図16】中空円管の金型の他の例を示す模式的拡大断面図である。
【
図17】中空円管の金型の他の例を示す模式的拡大断面図である。
【
図18】中空円管の製造装置の他の例を示す模式図である。
【
図19】中空円管の金型の他の例を示す模式的拡大断面図である。
【
図20】実施例で製造された中空円管の断面のX線CT画像である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0049】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる中空円管100の一例を示す模式的断面図(軸心に垂直な面で切断した場合の断面図)である。
【0050】
(中空円管の概略)
図1に示すように、中空円管100は、主に内層210、外層220および被覆層230からなる。このうち、内層210および被覆層230は必須の構成ではない。
【0051】
(内層)
図1に示す内層210は、非発泡の硬質樹脂からなる。具体的には、硬質樹脂は、硬質塩化ビニル系樹脂(PVC)であってよい。硬質塩化ビニル系樹脂は、より具体的には、塩化ビニル単量体の単独重合体の他、例えば、塩素化塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。硬質塩化ビニル系樹脂には、超微粒子のゴム成分が含有されていてもよい。この場合、耐衝撃性を向上させることができる。超微粒子のゴム成分は、塩化ビニル系樹脂に物理的または化学的に結合していてよい。
【0052】
なお、内層210を形成する非発泡性樹脂は、上述した塩化ビニル系樹脂に限定されず、その他任意の樹脂であってよい。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ナイロン-6、ナイロン-6/6、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。上述の樹脂は、単独で、または2種以上が組み合わされて用いられてよい。
【0053】
内層210の積層方向の厚み(肉厚)は、後述の外層220の肉厚の10%以上70%以下であってよい。また、内層210の積層方向の厚みは、外層220の肉厚の10%、20%、30%、40%、50%、60%、および70%のいずれか2つの割合値を上下限とする範囲を占める厚みであってもよい。より具体的には、たとえば、0.3mm以上10mm以下であってよい。しかしながら、内層210の積層方向の厚み(肉厚)は、強度面に支障が生じない場合には、0.3mm未満であってもよく、施工面に支障が生じない場合には、10mm超過であってもよい。
【0054】
(外層および被覆層)
図1に示す外層220は、内層210の外周に積層して形成される。外層220は、多数の空隙(気泡)を有する発泡樹脂からなる。外層220を構成する樹脂は、内層210を構成する樹脂として例示した樹脂から選択することができる。外層220を構成する樹脂は、空隙が含まれることを除いて内層210を構成する樹脂と同じであってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
【0055】
図2は、外層220について、中空円管100の軸心からの距離と空隙率との関係を模式的に示したグラフである。
図2に示すように、外層220を構成する発泡樹脂は、肉厚方向に空隙率が漸次変化する傾斜構造を有する。具体的には、軸心から離れる(外周に近い)ほど空隙率が小(より密)であり、軸心に近い(内周に近い)ほど空隙率が大(より疎)である。空隙率とは、発泡体の体積に対して空隙が占める体積をいう。したがって、発泡率が高いほど空隙率が高く、発泡率が低いほど空隙率が低い。
【0056】
外層220における空隙率の変化の態様は任意である。たとえば、
図2(A)に示すように、肉厚全体において空隙率の変化率が一定であってもよいし、
図2(B)および
図2(C)に示すように、空隙率が変動してもよい。
図2(B)に示す場合、内周に近いほど空隙率の変動が大きく、
図2(C)に示す場合、外周に近いほど空隙率の変動が大きい。
【0057】
外層220の平均空隙率は、たとえば50%以上80%以下、一例として75%である。外層220の空隙率が50%以上であることによって軽量性が良好であり、本実施形態のように内層210を保護している場合は、例えば断熱性能または結露防止性能も良好となる。外層220の空隙率が80%以下であることにより、外層220の機械的強度(たとえば、扁平試験において、割れまたはヒビが発生する場合の扁平率として測定することができる。)が担保されやすい。このように、傾斜構造によって、平均空隙率の割に優れた機械的強度を確保できる。
【0058】
外層220の肉厚は任意であり、たとえば、2mm以上、好ましくは4mm以上である。2mm以上であることにより、傾斜構造を有効に確保することができる。また、4mm以上の肉厚であることにより上述の傾斜構造をより容易に具備させることができる。外層220の肉厚の上限値は限定されないが、一例として、軽量性等の観点から15mmである。
【0059】
なお、外層220の空隙は、隣接する空隙と連通しない独立気泡型の発泡セルとなるように形成される。また、空隙のサイズとしては、平均セル径が30μm以上150μm以下の範囲であることが好ましい。ここで、平均セル径とは、軸心方向に垂直となる断面におけるセル径を小さい方から累積した場合において、累積セル径分率が50%である時のセル径をいう。なお、図示されている空隙のセル径は、空隙率を表現するために模式的に表すため、全て同様の大きさで表示されているが、このような態様に限定されるものではない。たとえば、空隙率が高い部分ほどセル径が大きく、空隙率が低い部分ほどセル径が小さいように構成されていてもよい。
【0060】
さらに、外層220を成形する発泡樹脂には、更に必要に応じて、熱安定剤、加工助剤、滑剤、衝撃改質剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料等が適宜含まれていてもよい。
【0061】
また、本実施の形態において、被覆層230の肉厚は、外層220の肉厚の5%以上30%以下であってよい。また、被覆層230の肉厚は、外層220の肉厚の5%、10%、15%、20%、25%および30%のいずれか2つの割合値を上下限とする範囲を占める厚みであってもよい。具体的には、たとえば0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、一例として、0.5mmである。
被覆層230の厚みは、0.1mm以上であることにより、中空円管100自体の強度を担保しやすく、1.5mm以下であることにより、中空円管100の肉厚内での被覆層230の占有部分を小さくすることができ、空隙率を好ましく確保して中空円管100の軽量性を良好にすることができる。
【0062】
被覆層230は、非発泡であることを除いて外層220と同一の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
【0063】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態にかかる中空円管100aの一例を示す模式的断面図である。
図3に示すように、中空円管100aは、主に内層210、外層220aおよび被覆層230からなる。中空円管100aは、外層220aの発泡態様が異なることを除いて第1実施形態の中空円管100と同じである。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0064】
図4は、外層220aについて、中空円管100aの軸心からの距離と空隙率との関係を模式的に示したグラフである。
図4に示すように、外層220aを構成する発泡樹脂は、軸心から離れる(外周に近い)ほど空隙率が大(より疎)であり、軸心に近い(内周に近い)ほど空隙率が小(より密)となる傾斜構造を有する。
【0065】
外層220aにおける空隙率の変化の態様は任意である。たとえば、
図4(A)に示すように、肉厚全体において空隙率の変化率が一定であってもよいし、
図4(B)および
図4(C)に示すように、空隙率が変動してもよい。
図4(B)に示す場合、外周に近いほど空隙率の変動が大きく、
図4(C)に示す場合、内周に近いほど空隙率の変動が大きい。
【0066】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態にかかる中空円管100bの一例を示す模式的断面図である。
図5に示すように、中空円管100bは、主に内層210、外層220bおよび被覆層230からなる。中空円管100bは、外層220bの発泡態様が異なることを除いて第1実施形態の中空円管100と同じである。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0067】
図5に示すように、外層220bは、空隙率がそれぞれ異なる発泡層221b,222b,223cの積層構造を有する。発泡層221b,222b,223cは、それぞれ発泡率が異なることを除いて同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。発泡層221b,222b,223cそれぞれが互いに異なる樹脂で構成される場合の例として、それぞれの発泡層において機能性樹脂の配合量が異なる態様が挙げられる。この場合、特定の機能を発揮する機能性樹脂または添加剤の配合量が発泡層221b,222b,223cの順に増加または減少するように構成することによって、当該特定の機能についても傾斜構造(傾斜機能性)を具備させることができる。特定の機能としては特に限定されるものではないが、たとえば耐候性の機能が挙げられる。
【0068】
図6は、外層220bについて、中空円管100bの軸心からの距離と空隙率との関係を模式的に示したグラフである。
図6に示すように、外層220bを構成する樹脂は、発泡層221b,222b,223bの順で、内周から外周へ、空隙率が段階的に小さくなるように変化する傾斜構造を有する。
【0069】
本実施形態のように発泡率が異なる複数の発泡層の積層態様である場合、
図6(A)で示されるように、隣り合う発泡層の境界が空隙率の違いによって比較的明確である例が挙げられるが、この態様に限定されるものではない。隣り合う発泡層の境界は、必ずしも明確ではなく、
図6(B)で示されるように、空隙率が段階的に遷移する傾斜構造を維持しつつも、発泡層間の境界付近における空隙率の変化がより緩やかであってもよい。
【0070】
本実施形態では、空隙率が異なる発泡層が3層積層された態様を挙げたが、積層数はこの態様に限定されるものではなく、積層数は2以上であればよい。
【0071】
発泡層が多層(たとえば4、5、6、7、8、9、10のいずれか2つの層数を上下限値とする範囲の層数)、内周から外周へ空隙率が順次小さくなるように積層される場合、発泡層管の境界が明確でなくなることによって、
図6(C)で示すように、見かけ上、第1実施形態で示したような、空隙率が漸次連続的に変化する傾斜構造のような構造となる場合もある。
【0072】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態にかかる中空円管100cの一例を示す模式的断面図である。
図7に示すように、中空円管100cは、主に内層210、外層220cおよび被覆層230からなる。中空円管100cは、外層220cの発泡態様が異なることを除いて第1実施形態の中空円管100と同じである。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0073】
外層220cは、第1実施形態の外層220を2層積層させた構造を有する。
図7に示すように、外層220cを構成する発泡樹脂は、平均空隙率が異なる発泡層221c,222cの積層構造を有する。
図8は、外層220cについて、中空円管100cの軸心からの距離と空隙率との関係を模式的に示したグラフである。発泡層221c,222cは、それぞれにおいて、内周側から外周側へ漸次空隙率が小さくなるように構成されている。したがって、外層220cの肉厚全体においては、内周側から外周側へ空隙率が漸次小さくなる傾斜構造が2つ含まれる。
【0074】
本実施形態では、発泡層221c,222cがそれぞれ平均空隙率が異なる(
図8(A)参照)例を挙げたが、この態様に限定されるものではない。発泡層221c,222cの平均空隙率は同じ(
図8(B)参照)であってもよい。この場合であっても、外層220cの肉厚全体において、内周側から外周側へ空隙率が漸次小さくなる傾斜構造が2つ含まれる。
【0075】
本実施形態では、発泡層221c,222cは、それぞれ平均空隙率が異なることを除いて同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。発泡層221c,222cそれぞれが互いに異なる樹脂で構成される場合の例として、それぞれの発泡層において機能性樹脂の配合量が異なる態様が挙げられる。この場合、特定の機能を発揮する機能性樹脂の配合量が発泡層221c,222cの順に増加または減少するように構成することによって、当該特定の機能についても傾斜構造(傾斜機能性)を具備させることができる。
【0076】
本実施形態では、それぞれに空隙率の傾斜構造を有する2層の発泡層221c,222cが積層された態様を挙げたが、積層数はこの態様に限定されず、より多くの発泡層が積層されていてもよい。積層数は、2以上であればよく、たとえば、3、4、または5であってもよい。
【0077】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態にかかる中空円管100dの一例を示す模式的断面図である。
図9に示すように、中空円管100dは、主に内層210d、外層220aおよび被覆層230からなる。中空円管100dは、内層210のかわりに内層210dを有することを除いて第2実施形態の中空円管100aと同じである。以下、第2実施形態との相違点について説明する。
【0078】
中空円管100dは、比較的薄厚の非発泡の内層210dを有する。内層210dは、被覆層230と同様の厚み(外層220aの肉厚の5%以上30%以下、または、5%、10%、15%、20%、25%および30%のいずれか2つの割合値を上下限とする範囲、具体的には、たとえば0.1mm以上1.5mm以下、一例として、0.5mm)で設けられる。内層210dと被覆層230とは、同じ樹脂で構成されてもよいし、異なる樹脂で構成されてもよい。
【0079】
中空円管100dは、薄厚の非発泡層である内層210dと被覆層230との間に、内周から外周へ空隙率が漸次大きくなる外層220aを有するため、軸心に垂直な面で切断した場合の断面が竹と類似する。したがって、中空円管100dは、空隙を有することに関して竹と類似の機能を有する。
【0080】
本発明には、上述の各実施形態の他、各実施形態を適宜組み合わせた任意の態様が含まれる。たとえば、
図10は、第1実施形態の外層220と第2実施形態の外層220aとを組み合わせた場合の、中空円管の軸心からの距離と空隙率との関係を模式的に示したグラフである。
図10(A)は、内周側に第2実施形態の外層220a、外周側に第1実施形態の外層220が配置されるように積層された態様を示し、
図10(B)は、内周側に第1実施形態の外層220、外周側に第2実施形態の外層220aが配置されるように積層された態様を示す。
【0081】
[第1実施形態にかかる中空円管の製造]
(中空円管の製造装置の概略)
図11および
図12は、中空円管100の製造装置500の一例を示す模式図である。
図11は中空円管100の製造装置500を上から下方向に見た場合の平面視であり、
図12は中空円管100の製造装置500の側面視である。
【0082】
図11および
図12に示すように、製造装置500は、炭酸ガスボンベ510、定量ポンプ520、非発泡性樹脂組成物用押出機530、発泡性樹脂組成物用押出機540、金型550、管外面調整装置560、冷却水槽570、引き取り機580および切断機590を含む。
【0083】
図13は、製造装置500における金型550の、図中点線で示した楕円部分の模式的拡大断面図である。
【0084】
(中空円管の製造方法)
中空円管100の製造方法の一例について説明する。
図11および
図12に示すように、非発泡性樹脂組成物用押出機530においては、非発泡性樹脂組成物210’(
図13参照)が溶融混練され、ストレートダイを介して管状に押し出される。非発泡性樹脂組成物210’は、具体的には非発泡性の熱可塑性樹脂組成物であり、たとえば、塩化ビニル系樹脂組成物である。非発泡性樹脂組成物210’は、後述するように、金型550内で後述の発泡性樹脂組成物220’とともに積層された後、金型550外へ送り出され、冷却水槽570内で固化されて内層210(
図1参照)となる。
【0085】
塩化ビニル系樹脂組成物の一例としては、塩化ビニル系樹脂100重量部、鉛系熱安定剤2.0重量部、ポリエチレン系ワックス0.5重量部、アクリル系加工助剤2.0重量部、エステル系ワックス0.7重量部、炭酸カルシウム3.0重量部および顔料0.5重量部をヘンシェルミキサー等に供給し、混合して得られた樹脂組成物が挙げられる。さらに、非発泡性樹脂組成物には、超微粒子のゴム成分が含有されていてもよい。超微粒子のゴム成分は、塩化ビニル系樹脂に物理的または化学的に結合していてよい。
【0086】
上述の塩化ビニル系樹脂組成物の他、形成すべき非発泡樹脂を形成するため、任意の樹脂組成物が当業者によって適宜選択される。
【0087】
一方、炭酸ガスボンベ510から発泡剤としての炭酸ガスが、定量ポンプ520を介して、ベント孔を通して発泡性樹脂組成物用押出機540内に供給される。発泡性樹脂組成物用押出機540では、熱可塑性樹脂組成物と、熱可塑性樹脂組成物中に圧入された炭酸ガスとが溶融混練され、発泡性樹脂組成物220’(
図13参照)が調製される。発泡性樹脂組成物220’は、後述するように、金型550内で非発泡性樹脂組成物210’とともに積層された後、金型550外へ送り出されて発泡され、冷却水槽570内で固化されて外層220(
図1参照)を形成する。
【0088】
発泡性樹脂組成物220’としては、上述の内層210の形成に用いることができる非発泡性樹脂組成物210’に発泡剤をさらに添加して調製することができる。発泡性樹脂組成物220’に含まれる樹脂は、非発泡性樹脂組成物210’に含まれる樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
本実施形態では、発泡剤として発泡用ガスである炭酸ガスを用いる態様を示したが、これに限定されるものではない。発泡用ガスとしては、炭酸ガスの他、窒素ガスなどの無機ガス、およびブタンガス、フロン系ガスなどの有機ガスが挙げられる。これらの発泡用ガスは、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。なお、無機ガスは、回収の必要がなく、副分解物も出ないため、ロングラン性に優れる点で好ましい。
【0090】
また、発泡剤の他の例として、熱分解型発泡剤も挙げられる。熱分解型発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の熱分解型無機発泡剤、およびN,N′:ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物等の熱分解型有機発泡剤等が挙げられる。これらの熱分解型発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。この場合、発泡剤の熱分解反応によって生じるガスを利用して樹脂を発泡させる。なお、固体の熱分解型発泡剤は、樹脂組成物中の含有量の調整が容易である点で好ましい。
【0091】
さらに、発泡剤の他の例として、溶剤型発泡剤も挙げられる。この場合、熱または圧力解放による気化によって生じるガスを利用して樹脂を発泡させる。溶剤型発泡剤としては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールおよびペンタン、ヘキサン等の低級アルカン等、沸点が低い溶剤が挙げられる。これらの溶剤型発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0092】
発泡剤は、発泡用ガス、熱分解型発泡剤および溶剤型発泡剤を任意の組み合わせで併用することもできる。発泡用ガスを用いない場合は、製造装置500は、炭酸ガスボンベ510および定量ポンプ520を必要としない。
【0093】
発泡剤の量は、所望の発泡倍率に応じて調整することができる。発泡倍率または空隙率がより大きい発泡体を得る場合は、発泡剤をより多い量で用いることができ、発泡倍率または空隙率がより小さい発泡体を得る場合は、発泡剤をより少ない量で用いることができる。
【0094】
図13に示すように、金型550は、ストレートダイ551およびクロスヘッドダイ552からなる。クロスヘッドダイ552には、バキュームスリットVS2が形成される。金型550において、非発泡性樹脂組成物用押出機530で溶融混練された非発泡性樹脂組成物210’はストレートダイ551を介して管状に成形され、発泡性樹脂組成物用押出機540で溶融混練された発泡性樹脂組成物220’はクロスヘッドダイ552を介して、管状の非発泡性樹脂組成物210’の外周に積層されるように管状に成形される。このように、金型550内で非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物220’とを含む積層管が調製される。
【0095】
積層管には、図示されない非発泡性樹脂組成物がさらに積層されることによって、被覆層230(
図1参照)が形成される。被覆層230を形成するための非発泡性樹脂組成物の積層は、金型550内で行われてもよいし、後述する発泡性樹脂組成物220’の発泡が行われた後に積層してもよい。
【0096】
被覆層230(
図1参照)は、上述のように非発泡性樹脂組成物の積層によって形成することができるが、この方法に限定されるものではない。たとえば、クロスヘッドダイ552が発泡性樹脂組成物220’と接する面が冷却面S2として構成されている場合に、冷却面S2で発泡性樹脂組成物220’の外周面を冷やすことにより、当該外周面付近を発泡に先だって固化させることによって形成してもよい。
【0097】
非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物220’を含む積層管は、金型550外へ送り出されることで圧力が低下し、発泡性樹脂組成物220’が発泡する。発泡された積層管は、冷却水槽570に取り付けられた管外面調整装置560によって、外層表面に適度な圧力がかけられサイジングされる。管外面調整装置560は、管の外面に接して成形するためのチューブを含む。
【0098】
発泡時、管外面調整装置560が有する温度調整部(図示せず)が発泡性樹脂組成物220’の層表面を冷やすことによって、外周側がより低温、内周側がより高温となるよう、発泡性樹脂組成物220’の層に温度勾配を生じさせる。これにより、発泡後の外層220(
図1参照)における空隙率の傾斜構造(
図2参照)を調整することができる。
【0099】
管外面調整装置560から送り出された積層管は、冷却水槽570内で十分に冷却されて固化し、中空円管100となる。本実施形態において、冷却水槽570に用いられる冷媒は水であるが、冷媒としては、製造物に対して腐食性がなく、且つ流動性および熱交換性の良好なものであれば液体および気体を問わない。たとえば、空気、油、ポリエチレングリコール等も挙げられる。
中空円管100は、引き取り機580によって引き取られ、切断機590によって適当な長さに切断される。
【0100】
上述においては、中空円管100における外層220の傾斜構造を温度制御によって肉厚方向に発泡倍率を異ならしめる方法によって形成する例を挙げたが、外層220の形成方法は、この方法に限定されるものではない。温度制御による方法の他、発泡剤の量が異なる層を多数積層することによって肉厚方向に発泡倍率を異ならしめる方法によって形成することもできる。多層とは、形成すべき外層220の肉厚等によって異なりうるが、たとえば4、5、6、7、8、9、10のいずれか2つの層数を上下限値とする範囲の層数で積層されることをいう。
【0101】
発泡剤の量が異なる層を多数積層することによって肉厚方向に発泡倍率を異ならしめる方法については、後述する第2実施形態にかかる中空円管の製造において詳述するが、この方法によって外層220を形成する場合、積層された各層に含ませた発泡剤の量を、軸心に近い層よりも遠い層の方が少なくなるように制御する。これによって、軸心に近い方から遠い方に向かって発泡剤の量が漸次少なくなるように各層が積層された状態で発泡され、全体の見かけ上、内周側から外周側へ漸次連続的に空隙率が小さくなる態様となる。
【0102】
[第2実施形態にかかる中空円管の製造]
図14は、中空円管100aの製造装置500aの一例を示す模式図(製造装置500aを上から下方向に見た場合の平面視による模式図)である。
図15は、製造装置500aにおける金型550aの、図中点線で示した楕円部分の模式的拡大断面図である。なお、以下においては、主に第1実施形態にかかる中空円管の製造と異なる点について説明し、同一点については説明を省略する。
【0103】
図14に示すように、中空円管100aの製造装置500aは、非発泡性樹脂組成物210’を溶融混練する非発泡性樹脂組成物用押出機530と、発泡性樹脂組成物を溶融混練する複数の押出機を複数含む。
図14では、発泡性樹脂組成物を溶融混練する複数の押出機のうち、第1押出機540a1および第2押出機540a2の2個のみ表示し、その他の押出機は表示を省略する。発泡性樹脂組成物を溶融混練する複数の押出機それぞれには、炭酸ガスボンベ510および定量ポンプ520が接続されており、複数の発泡性樹脂組成物用押出機540それぞれに、異なる量の炭酸ガスを分散可能となるように、ガス圧が独立制御可能であるように構成される。
【0104】
非発泡性樹脂組成物用押出機530においては、非発泡性樹脂組成物210’(
図15参照)が溶融混練される。第1押出機540a1においては発泡性樹脂組成物221a’が、第2押出機540a2においては発泡性樹脂組成物222a’が溶融混練される。同様に、図示しない押出機において発泡性樹脂組成物223a’がそれぞれ溶融混練される。発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’は、この順に、発泡用ガスの含有量が漸次多くなるように調製される。さらに他の図示されない押出機において、同様に、発泡用ガスの含有量が漸次異なるように発泡性樹脂組成物が溶融混練される。
【0105】
図15に示すように、金型550aは、ストレートダイ551、クロスヘッドダイ552,553,554を含む。クロスヘッドダイ552,553,554は、それぞれ、バキュームスリットVS2,VS3,VS4が設けられている。金型550aは、同様に、図示されない同様の他のクロスヘッドダイも有する。
【0106】
押出された非発泡性樹脂組成物210’および発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’・・・は、金型550a内で、それぞれストレートダイ551、クロスヘッドダイ552,553,554・・・によって管状に成形され、内側から非発泡性樹脂組成物210’、発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’・・・の順で積層されるように案内される。このように、金型550a内で非発泡性樹脂組成物210’、発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’・・・とを含む多層構造の積層管が調製される。多層とは、形成すべき外層220aの肉厚等によって異なりうるが、たとえば4、5、6、7、8、9、10のいずれか2つの層数を上下限値とする範囲の層数で積層されることをいう。
【0107】
積層管には、図示されない非発泡性樹脂組成物がさらに積層されることによって、被覆層230(
図3参照)が形成される。被覆層230を形成するための非発泡性樹脂組成物の積層は、金型550内で行われてもよいし、後述する発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’・・・の発泡が行われた後に積層してもよい。
【0108】
被覆層230(
図3参照)は、上述のように非発泡性樹脂組成物の積層によって形成することができるが、この方法に限定されるものではない。たとえば、発泡性樹脂組成物の最外層を成形するクロスヘッドダイが最外層の発泡性樹脂組成物と接する面が冷却面として構成されている場合に、当該冷却面で最外層の発泡性樹脂組成物の外周面を冷やすことにより、当該外周面付近を発泡に先だって固化させることによって形成してもよい。
【0109】
非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’・・・とを含む積層管は、金型550a外へ送り出されることで圧力が低下し、発泡性樹脂組成物221a’,222a’,223a’・・・が発泡する。
このように発泡性樹脂組成物が多数積層された状態で発泡するため、それぞれの層が境目付近で互いに馴染むことにより、全体の見かけ上、内周側から外周側へ漸次連続的に空隙率が大きくなる態様となる。
【0110】
これにより、発泡後の外層220a(
図3参照)における空隙率の傾斜構造(
図4参照)を形成することができる。なお、各層の層厚を、発泡剤の量から予想される発泡倍率を考慮して設定することで、
図4(A)、
図4(b)および
図4(c)の傾斜構造を形成し分けることができる。
【0111】
[第3実施形態にかかる中空円管の製造]
図16は、中空円管100bの製造装置における金型550bの模式的拡大断面図である。中空円管100bの製造装置の一例は、
図15に記載の製造装置500aに準じており、発泡性樹脂組成物を溶融混練する押出機の数が3つであること、および当該3つの押出機にそれぞれクロスヘッドダイ552,553,554が連設されることを除いて、製造装置500aと同様である。
【0112】
発泡性樹脂組成物を溶融混練する3つの押出機においては、それぞれ、発泡用ガスの量がことなる発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’が調製される。発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’は、この順に、発泡用ガスの含有量が漸次少なくなるように調製される。
【0113】
押出された非発泡性樹脂組成物210’および発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’は、金型550b内で、それぞれストレートダイ551、クロスヘッドダイ552,553,554によって管状に成形され、内側から非発泡性樹脂組成物210’、発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’の順で積層されるように案内される。このように、金型550b内で非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’とを含む積層管が調製される。
【0114】
積層管には、図示されない非発泡性樹脂組成物がさらに積層されることによって、被覆層230(
図5参照)が形成される。被覆層230を形成するための非発泡性樹脂組成物の積層は、金型550内で行われてもよいし、後述する発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’の発泡が行われた後に積層してもよい。
【0115】
被覆層230(
図5参照)は、上述のように非発泡性樹脂組成物の積層によって形成することができるが、この方法に限定されるものではない。たとえば、発泡性樹脂組成物223b’を成形するクロスヘッドダイ554が発泡性樹脂組成物223b’と接する面が冷却面S4として構成されている場合に、当該冷却面S4で最外層の発泡性樹脂組成物223b’の外周面を冷やすことにより、当該外周面付近を発泡に先だって固化させることによって形成してもよい。
【0116】
非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’とを含む積層管は、金型550b外へ送り出されることで、圧力が低下し、発泡性樹脂組成物221b’,222b’,223b’が発泡する。
このように発泡性樹脂組成物が3層積層された状態で発泡することで、内周側から外周側へ段階的に空隙率が小さくなる態様となる。
これにより、発泡後の外層220b(
図5)における空隙率の傾斜構造(
図6参照)を形成することができる。
【0117】
[第4実施形態にかかる中空円管の製造]
図17は、中空円管100cの製造装置における金型550cの模式的拡大断面図である。中空円管100cの製造装置の一例は、
図14に記載の製造装置500aに準じており、発泡性樹脂組成物を溶融混練する押出機の数が2つであることと、当該2つの押出機にそれぞれクロスヘッドダイ552,553が連設されることと、クロスヘッドダイ552およびクロスヘッドダイ553がそれぞれ発泡性樹脂組成物の外周面に接触する面がいずれも冷却面S2,S3として構成されていることを除いて、製造装置500aと同様である。
【0118】
発泡性樹脂組成物を溶融混練する2つの押出機においては、それぞれ、発泡用ガスの量がことなる発泡性樹脂組成物221c’,222c’が調製される。具体的には、発泡性樹脂組成物221c’の方が発泡性樹脂組成物222c’より発泡用ガスの含有量が少なくなるように調製される。
【0119】
押出された非発泡性樹脂組成物210’および発泡性樹脂組成物221c’,222c’は、金型550c内で、それぞれストレートダイ551、クロスヘッドダイ552,553によって管状に成形され、内側から非発泡性樹脂組成物210’、発泡性樹脂組成物221c’,222c’の順で積層されるように案内される。このように、金型550c内で非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物221c’,222c’とを含む積層管が調製される。
【0120】
さらに、金型550c内においては、クロスヘッドダイ552が発泡性樹脂組成物221c’と接する面およびクロスヘッドダイ553が発泡性樹脂組成物222c’と接する面がそれぞれ冷却面S2及び冷却面S3として構成されている。発泡性樹脂組成物221c’,222c’がそれぞれ冷却面S2,S3で冷やされることにより、発泡性樹脂組成物221c’,222c’の層それぞれにおいて、外周側がより低温、内周側がより高温となる温度勾配を生じる。さらに、冷却面S3で冷却された発泡性樹脂組成物222c’の外周面は発泡に先だって固化することにより、被覆層230(
図7参照)が形成される。
【0121】
非発泡性樹脂組成物210’と発泡性樹脂組成物221c’,222c’とを含む積層管は、金型550c外へ送りだされることで、圧力が低下し、発泡性樹脂組成物221c’,222c’が発泡する。これにより、発泡後の外層220b(
図7)における空隙率の傾斜構造(
図8参照)を形成することができる。
【0122】
[第5実施形態にかかる中空円管の製造]
図18は、中空円管100dの製造装置500dの一例を示す模式図である。
図19は、製造装置500dにおける金型550dの、図中点線で示した楕円部分の模式的拡大断面図である。
【0123】
図18に示すように、中空円管100dの製造装置500dは、発泡性樹脂組成物を溶融混練するための押出機を複数含む。
図18では、複数の押出機のうち、第1押出機540d1、第2押出機540d2および第3押出機540d3の3個のみ表示し、その他の押出機は表示を省略する。
【0124】
第1押出機540d1においては発泡性樹脂組成物221d’が、第2押出機540d2においては発泡性樹脂組成物222d’が、第3押出機540d3においては発泡性樹脂組成物223d’が溶融混練される。同様に、図示しない押出機において発泡性樹脂組成物224d’がそれぞれ溶融混練される。発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’は、この順に、発泡用ガスの含有量が漸次多くなるように調製される。さらに図示されない他の押出機において、同様に、発泡用ガスの含有量が漸次異なるように発泡性樹脂組成物が溶融混練される。
【0125】
図19に示すように、金型550dは、ストレートダイ551d1、クロスヘッドダイ552d,553d,554dを含む。クロスヘッドダイ552d,553d,554dは、それぞれ、バキュームスリットVS2,VS3,VS4が設けられている。金型550dは、同様に、図示されない同様の他のクロスヘッドダイも有する。
【0126】
金型550d内では、押出された発泡性樹脂組成物221d’がストレートダイ551d1によって、発泡性樹脂組成物222d’,223d’,224d’・・・がそれぞれクロスヘッドダイ552d,553d,554d・・・によって管状に成形され、内側から、発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・の順で積層されるように案内される。このように、金型550d内で発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・を含む積層管が調製される。
【0127】
積層管には、図示されない非発泡性樹脂組成物がさらに積層されることによって、内層210dおよび被覆層230(
図9参照)が形成される。内層210dを形成するための非発泡性樹脂組成物の積層は、金型550内で行われてもよいし、後述する発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・の発泡が完了した後に積層してもよい。被覆層230を形成するための非発泡性樹脂組成物の積層も、金型550内で行われてもよいし、後述する発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・の発泡が完了した後に積層してもよい。内層210dおよび/または被覆層230を形成するための非発泡性樹脂組成物の積層が金型550内で行われる場合は、製造装置500dは、さらに、非発泡性樹脂組成物を押し出すための押出機と、後述する発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・と積層するように管状に成形するダイとをさらに含む。
【0128】
内層210dおよび被覆層230(
図9参照)は、上述のように非発泡性樹脂組成物の積層によって形成することができるが、この方法に限定されるものではない。たとえば、内層210dおよび被覆層230の少なくともいずれかが、発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・の発泡前に冷却されることで固化させることにより形成してもよい。具体的には、金型550aに設けられる内面規制部551d2の、発泡性樹脂組成物221d’の内周面と接する面が冷却面S1として構成されている場合に、発泡性樹脂組成物221d’の内周面を冷却面S1で冷やすことにより、当該内周面付近を発泡に先だって固化させることで、内層210dを形成してもよい。また、発泡性樹脂組成物の最外層を成形するクロスヘッドダイが最外層の発泡性樹脂組成物と接する面が冷却面として構成されている場合に、当該冷却面で最外層の発泡性樹脂組成物の外周面を冷やすことにより、当該外周面付近を発泡に先だって固化させることによって被覆層230を形成してもよい。
【0129】
発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・を含む積層管は、金型550d外へ送り出されることで圧力が低下し、発泡性樹脂組成物221d’,222d’,223d’,224d’・・・が発泡する。
このように発泡性樹脂組成物が多数積層された状態で発泡するため、それぞれの層が境目付近で互いに馴染み、全体の見かけ上、内周側から外周側へ漸次連続的に空隙率が大きくなる態様となる。
これにより、発泡後の外層220a(
図9参照)における空隙率の傾斜構造(
図4参照)を形成することができる。
【0130】
[他の例]
すでに述べたように、本発明は、たとえば
図10に示したように各実施形態を適宜組み合わせた任意の態様を含む。当該態様の中空管は、当業者が上述の製造方法を適宜組み合わせて製造することができる。
【0131】
本発明は、上述の円状の断面形状を有する中空円管の他、楕円、矩形状その他の多角形等、任意の断面形状を有する中空管を含む。当該中空管の製造には、上述のストレートダイおよびクロスヘッドダイの代わりに、所望の断面形状に成形可能な形状を有する成形ダイを用いて製造することができる。
【0132】
本発明は、上述のように、管状に押出し成形された発泡性樹脂組成物を、肉厚方向に温度勾配を生じさせると同時または当該温度勾配を生じさせた後に発泡する製造方法、および、発泡剤含有量が異なる複数の発泡性樹脂組成物が管状に積層するように押出し成形した後に発泡する製造法のいずれか一方の方法で中空管を製造してもよいし、両方の方法を組み合わせて中空管を製造してもよい。
【0133】
本発明は、上述のような、内層210,210dと、外層220,220a,220b,220cと、との3層から構成される中空管に限られない。本発明の中空管は、内層210,210dおよび被覆層230を有していなくてもよいし、反対に、さらなる他の層が設けられたものであってもよい。
【0134】
本発明は、上述のような、外層220,220a,220b,220cが有機発泡体である発泡性樹脂で構成される態様に限定されるものではない。発泡層である外層220は、無機発泡体であってもよく、有機発泡体と無機発泡体との混合体であってもよい。無機発泡体は当業者によって適宜選択されてよいものであり、一例としてセメントを含む発泡体が挙げられる。いずれの場合も、中空管が非発泡層を含む場合、非発泡層の材質は、非発泡であることを除いて発泡層と同様のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0135】
[実施形態および他の例によって奏される効果]
中空円管100,100a,~,100dは、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有する外層220,220a,220b,220cを含むため、少なくとも軽量性と機械的物性とを兼ね備えた多機能性を有する。
【0136】
中空円管100a,100c,100dは、外層220a,220cの軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が高い傾斜構造を含んでいるため、軽量性により優れる。
中空円管100,100b,100cは、外層220,220b,220cの軸心に近い側よりも遠い側において空隙率が低い傾斜構造を含んでいるため、機械的物性により優れる。
【0137】
中空円管100,100a,~,100dは、外層220,220a,220b,220cの内周面に非発泡体の内層210,210dを含むが、外層220,220a,220b,220cが軽量性とともに機械的物性も有するため、内層の肉厚を内層210dのように薄くすることができる。
【0138】
中空円管100,100a,~,100dの外層220,220a,220b,220cは、異なる量の発泡剤を含む複数の発泡性樹脂組成物を積層し、その後発泡させることによって形成可能であるため、肉厚方向に空隙率が異なる態様で製造することができる。
【0139】
本発明の中空円管100,100a,100b,100dは、異なる量の発泡剤を含む3種以上の発泡性樹脂組成物を積層して製造することができるため、外層220,220a,200bのように、空隙率の勾配が多様である。
【0140】
中空円管100は、発泡剤の量が異なる樹脂組成物を、軸心に近い側より遠い側の層における方が発泡剤の含有量が少なくなるように、4以上10以下の積層数で積層して発泡することにより、外層220が、軸心に近い側より遠い側に向かって漸次空隙率が低くなる態様で形成することができる。
中空空間100a,100dは、発泡剤の量が異なる樹脂組成物を、軸心に近い側より遠い側の層における方が発泡剤の含有量が多くなるように、4以上10以下の積層数で積層して発泡することにより、外層220が、軸心に近い側より遠い側に向かって漸次空隙率が高くなる態様で形成することができる。
【0141】
製造装置500,500a,500dを用いた中空円管の製造方法は、発泡剤は炭酸ガスであるため、発泡剤の回収が不要であり、発泡に伴う副生成物も発生しないため、ロングラン性を良好に保つことができる。
【0142】
製造装置500aは、発泡性樹脂組成物221a’,221b’,221c’を押し出す第1押出機540a1と発泡性樹脂組成物222a’,222b’,222c’を押し出す第2押出機540a2とが、それぞれ別個に炭酸ガスボンベ510および定量ポンプ520に接続されているため、発泡性樹脂組成物221a’,221b’,221c’と発泡性樹脂組成物222a’,222b’,222c’との炭酸ガス含有量を異ならしめることができ、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有する外層220a,220b,220cを形成することができる。
【0143】
製造装置500dは、発泡性樹脂組成物221d’を押し出す第1押出機540d1と発泡性樹脂組成物222d’を押し出す第2押出機540d2と発泡性樹脂組成物223d’を押し出す第3押出機540d3が、それぞれ別個に炭酸ガスボンベ510および定量ポンプ520に接続されているため、発泡性樹脂組成物221d’と発泡性樹脂組成物222d’と発泡性樹脂組成物223d’の炭酸ガス含有量を異ならしめることができ、肉厚方向に空隙率が異なる傾斜構造を有する外層220dを形成することができる。
【実施例0144】
[実施例1]
本実施例においては、硬質非発泡樹脂からなる内層と、内層に積層された発泡樹脂からなる外層と、外層に積層された硬質非発泡樹脂からなる被覆層とから構成される中空円管を製造した。発泡剤としては重曹を用い、外層は、重曹の量が異なる4種の樹脂組成物を、軸心から遠ざかるほど重曹含有量が多くなるように共押出し積層させる方法により形成した。
【0145】
(重曹量の決定)
予め、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して重曹2.20重量部含む樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を発泡させて得られた発泡体の発泡倍率は5倍であった。さらに、用いた重曹の量およびポリ塩化ビニル樹脂の密度(1.44g/cm3)に基づき、得られた発泡体の密度から算出した樹脂組成物の発泡効率は53%(体積基準)であった。
以上の結果に基づく比例計算により、発泡倍率2倍を達成するための重曹量は0.88重量部、発泡倍率3倍を達成するための重曹量は1.32重量部、発泡倍率4倍を達成するための重曹量は1.76重量部、発泡倍率5倍を達成するための重曹量は2.20重量部、発泡倍率7倍を達成するための重曹量は3.08重量部と算出された。
【0146】
(中空円管の作成)
ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、重曹を0.88重量部含む2倍発泡用樹脂組成物(i)、重曹を1.32重量部含む3倍発泡用樹脂組成物(ii)、重曹を1.76重量部含む4倍発泡用樹脂組成物(iii)、重曹を2.20重量部含む5倍発泡用樹脂組成物(iv)および重曹を3.08重量部含む7倍発泡用樹脂組成物(v)を調製し、40mmφの押出成形機を用いて、それぞれペレット化を行った。さらに、重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)も調製した。
【0147】
樹脂組成物それぞれについて個別の40mmφ押出成形機を用い、押出成形機の回転数およびシリンダ温度を同一設定にして、軸心から樹脂組成物(I),(i),(ii),(iii),(iv),(v),(I)の順で積層されるよう金型内への共押出を行った後、金型外で発泡を行った。得られた中空円管壁を、軸心を含む面で切断した断面のX線CT画像を
図20に示す。
図20においては、白く表示される部分が樹脂である。
図20に示すように、本実施例で製造された中空円管は、複数の樹脂組成物の積層境界が明確でない態様で得られ、非発泡樹脂層に挟まれた発泡層は、軸心から遠いほうが空隙率が高くなるように形成された。
【0148】
[実施例2]
軸心から、7倍発泡用樹脂組成物(v)5倍発泡用樹脂組成物(iv)、および3倍発泡用樹脂組成物(ii)がこの順で積層されるように、それぞれの樹脂組成物について個別の押出成形機を用い、樹脂温度がそれぞれ同等となるように温度条件を調整しながら共通の金型内に共押出した。
【0149】
なお、それぞれの発泡用樹脂組成物の押出量比は、発泡倍率の逆数比(つまり、7倍発泡用樹脂組成物(v):5倍発泡用樹脂組成物(iv):3倍発泡用樹脂組成物(ii)=1/7:1/3:1/5(体積基準))となるように設定し、金型外での発泡後の全体肉厚が6.5mmとなるように引取速度を調整した。
【0150】
本実施例で製造された中空円管は、複数の樹脂組成物の積層境界が明確でない態様で得られた。
また、単位長さ当りの重量は、0.15kg/mであった。
【0151】
[比較例1]
5倍発泡用樹脂組成物(iv)を3層積層することによって、中空円管を作成した。
得られた中空円管の単位長さ当りの重量は、0.10kg/mであった。
【0152】
<曲げ配管試験>
実施例2比較例1で得られた中空円管を、下記の曲げ配管試験に供し曲げ配管施工が可能なひずみを測定した。曲げ配管試験においては、4mのサンプル管を3つの配管止め金具により、サンプル管の一方の端面から50cmの位置(位置A)、サンプル管の軸方向中点の位置(位置B)、およびサンプル管の他方の端面から50cmの位置(位置C)の三点で止め、位置A,Cを基準線上に固定するとともに位置Bを基準線からの距離が5cm刻みで離れるように移動させ、配管施工が可能な基準線からの離間距離の限度を確認した。なお、曲げ配管試験においては、基準線からの離間距離が限度を超えた場合に割れが発生するものとした。表1に、当該離間距離の限度を測定した試験結果(3回実施の平均値)を示す。なお、表1において可動率とは、比較例1における離間距離の限度を基準(100%)とした相対量である。
【0153】
【0154】
表1に示すように、曲げ配管試験の結果は、軸心側が疎、外周面側が密となる発泡率傾斜を有する実施例2のサンプル管において良好であった。
【0155】
[実施例3]
軸心から、重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)、2倍発泡用樹脂組成物(i)、3倍発泡用樹脂組成物(ii)、5倍発泡用樹脂組成物(iv)および重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)がこの順で積層されるように、それぞれの樹脂組成物について個別の押出成形機を用い、樹脂温度がそれぞれ同等となるように温度条件を調整しながら共通の金型内に共押出した。
【0156】
なお、それぞれの発泡用樹脂組成物の押出量比は、発泡倍率の逆数比(つまり、2倍発泡用樹脂組成物(i):3倍発泡用樹脂組成物(ii):5倍発泡用樹脂組成物(iv)=1/2:1/3:1/5(体積基準))となるように設定し、金型外での発泡後の全体肉厚が6.5mmとなるように引取速度を調整した。重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)から生じた軸心側の硬質層と外周側の硬質層とは、それぞれ、2mmと0.5mmであった。
【0157】
本実施例で製造された中空円管は、複数の樹脂組成物の積層境界が明確でない態様で得られた。
また、単位長さ当りの重量は、0.45kg/mであった。
【0158】
[比較例2]
軸心からの積層順を、重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)、3倍発泡用樹脂組成物(ii)、3倍発泡用樹脂組成物(ii)、3倍発泡用樹脂組成物(ii)および重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)とし、3倍発泡用樹脂組成物(ii)の押出量比を同じにしたことを除いて、実施例3と同様に中空円管を製造した。
【0159】
また、発泡後の全体肉厚は6.5mm、重曹を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物(I)から生じた軸心側の硬質層と外周側の硬質層とは、それぞれ、2mmと0.5mmであった。さらに、単位長さ当りの重量は、0.46kg/mであった。
【0160】
<各種物性評価>
上述のように、実施例3および比較例2のサンプル管の発泡層の肉厚はいずれも4mmである。この場合、熱伝導率が同等程度(0.09W/(m K))である旨の計算結果が得られた。さらに、それぞれのサンプル管を結露性能試験に供した結果、結露性能も同等であることが確認された。
【0161】
さらにそれぞれのサンプル管について内圧試験を行った。内圧試験においては、サンプル管の一本の端面を封止し、内部に水圧を掛け、サンプル管を破壊する内圧(耐水圧)を測定した。
内圧試験(3回実施)の結果を、下記表2に示す。
【0162】
【0163】
表2に示されるように、サンプル管の重量及び結露性能がほぼ同じにも関わらず、耐水圧は、発泡層が、軸心側が密、外周側が疎になる発泡率傾斜を有する実施例3のサンプル管が良好であった。
【0164】
[実施形態および他の例における各部と請求項の各構成要素との対応関係]
中空円管100,100a,~,100dが「中空管」に相当し、外層220,220a,220b,220cが「管状発泡体」に相当し、内層210,210dが「内層」に相当し、被覆層230が「被覆層」に相当し、製造装置500a,500dが「中空管の製造装置」に相当し、発泡性樹脂組成物221a’,221b’,221c’,221d’が「第1の発泡性材料」に相当し、発泡性樹脂組成物222a’,222b’,222c’,222d’が「第2の発泡性材料」に相当し、第1押出機540a1,540d1が「第1押出機」に相当し、第2押出機540a2,540d2が「第2押出機」に相当し、炭酸ガスボンベ510および定量ポンプ520が「第1ガス供給部」「第2ガス供給部」に相当し、クロスヘッドダイ552、ストレートダイ551d1が「第1形成部」に相当し、クロスヘッドダイ553,552dが「第2形成部」に相当する。
【0165】
本発明のいくつかの実施形態は上記の通りであるが、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な実施形態が他にもなされる。そのため、これら実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内のものである。