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特開2022-167922外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体および外観検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167922
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体および外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221027BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20221027BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20221027BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
G01N21/89 T
G01N21/84 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127709
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019062929の分割
【原出願日】2019-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前澤 那月
(72)【発明者】
【氏名】中野 大輝
(57)【要約】
【課題】所定以上の強度を確保しつつ、検査対象物の吸着力を向上させる。
【解決手段】検査対象物の外観検査装置に用いられる静電誘導吸着式搬送体1は、絶縁性材料からなる第1透明部を有し、検査対象物が上側に載置される第1層11と、第1層11の下側に位置し、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層12と、第2層12の下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層13とを備える。第1透明部110、透明電極部120、および、第2透明部130は、所定の一方向に並んでいる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の外観検査装置に用いられる静電誘導吸着式搬送体であって、
絶縁性材料からなる第1透明部を有し、前記検査対象物が上側に載置される第1層と、
前記第1層の下側に位置し、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層と、
前記第2層の下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層と、
を備え、
前記第1透明部、前記透明電極部、および、前記第2透明部は、所定の一方向に並んでいることを特徴とする外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項2】
前記第1層は、絶縁被膜からなる絶縁被膜層であることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項3】
前記透明電極部の少なくとも一部は、その上に前記第1層が形成されておらず、表面が露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項4】
前記透明電極部は、前記第3層の上面のうちの一部に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項5】
前記第2層には、複数の前記透明電極部が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項6】
複数の前記透明電極部には、通電時に正極となる第1の透明電極部と、通電時に負極となる第2の透明電極部とが含まれることを特徴とする請求項5に記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項7】
前記第1層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項8】
前記第2層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項9】
前記第2層の前記積層方向における厚みは、前記第1層の前記積層方向における厚みよりも薄く、かつ、前記第1層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項10】
前記第1層、前記第2層、および、前記3層の前記積層方向における厚みの合計は、1mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項11】
折り曲げ可能なフィルム状の形状を有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体と、
前記透明電極部に電圧を印加する電圧供給部と、
前記電圧供給部により電圧を供給された前記静電誘導吸着式搬送体の上に前記検査対象物を供給する検査対象物供給部と、
前記静電誘導吸着式搬送体を駆動する駆動部と、
前記駆動部によって駆動される前記静電誘導吸着式搬送体の上の前記検査対象物を撮像する撮像部と、
を備える外観検査装置。
【請求項13】
前記検査対象物を光で照らす照明部をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の外観検査装置。
【請求項14】
前記照明部には、前記静電誘導吸着式搬送体の前記第3層側から前記第1層の上に載置されている前記検査対象物を照明するものが含まれることを特徴とする請求項13に記載の外観検査装置。
【請求項15】
前記撮像部には、前記静電誘導吸着式搬送体の前記第3層側から前記第1層の上に載置されている前記検査対象物を撮像するものが含まれることを特徴とする請求項12~14のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項16】
光路を変更するための反射体をさらに備え、
前記撮像部には、前記反射体で光路が変更された光を受光することによって前記検査対象物を撮像するものが含まれることを特徴とする請求項12~15のいずれかに記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の外観検査装置に用いられる静電誘導吸着式搬送体、および、そのような静電誘導吸着式搬送体を備えた外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物を搬送テーブルなどの搬送体上に載置して搬送しながら、撮像装置で検査対象物を撮像して、検査対象物の外観を検査する装置が知られている。
【0003】
そのような外観検査装置の1つとして、特許文献1には、透明なガラス体からなる円形搬送テーブル上に検査対象物を載置し、円形搬送テーブルを回転させて検査対象物を搬送しながら、撮像装置で検査対象物の各面を撮像する外観検査装置が記載されている。この外観検査装置では、静電誘導用電源で円形搬送テーブルの下面を帯電させ、静電誘導により、検査対象物である電子部品を円形搬送テーブルに吸着させて電子部品の位置ずれを防ぎ、精度良く外観検査を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-187535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の外観検査装置において、静電誘導による電子部品の吸着力を向上させるために、搬送体である円形搬送テーブルの厚さを薄くすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、搬送体は検査対象物を搬送するという性質上、所定以上の強度が必要である。このため、吸着力を向上させるために、搬送体の厚さを薄くするには限界がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、所定以上の強度を確保しつつ、検査対象物の吸着力を向上させることができる外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体、および、そのような静電誘導吸着式搬送体を備えた外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体は、
検査対象物の外観検査装置に用いられる静電誘導吸着式搬送体であって、
絶縁性材料からなる第1透明部を有し、前記検査対象物が上側に載置される第1層と、
前記第1層の下側に位置し、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層と、
前記第2層の下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層と、
を備え、
前記第1透明部、前記透明電極部、および、前記第2透明部は、所定の一方向に並んでいることを特徴とする。
【0009】
前記第1層は、絶縁被膜からなる絶縁被膜層であってもよい。
【0010】
前記透明電極部の少なくとも一部は、その上に前記第1層が形成されておらず、表面が露出していてもよい。
【0011】
前記透明電極部は、前記第3層の上面のうちの一部に設けられていてもよい。
前記第2層には、複数の前記透明電極部が設けられていてもよい。
【0012】
前記複数の透明電極部には、通電時に正極となる第1の透明電極部と、通電時に負極となる第2の透明電極部とが含まれていてもよい。
【0013】
前記第1層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄くてもよい。
【0014】
前記第2層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄くてもよい。
【0015】
前記第2層の前記積層方向における厚みは、前記第1層の前記積層方向における厚みよりも薄く、かつ、前記第1層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄くてもよい。
【0016】
前記第1層、前記第2層、および、前記3層の前記積層方向における厚みの合計は、1mm以上20mm以下であってもよい。
【0017】
上述した静電誘導吸着式搬送体は、折り曲げ可能なフィルム状の形状を有していてもよい。
【0018】
本発明による外観検査装置は、
上述したいずれかの外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体と、
前記透明電極部に電圧を印加する電圧供給部と、
前記電圧供給部により電圧を供給された前記静電誘導吸着式搬送体の上に前記検査対象物を供給する検査対象物供給部と、
前記静電誘導吸着式搬送体を駆動する駆動部と、
前記駆動部によって駆動される前記静電誘導吸着式搬送体の上の前記検査対象物を撮像する撮像部と
を備えることを特徴とする。
【0019】
上述した外観検査装置は、前記検査対象物を光で照らす照明部をさらに備えていてもよい。
【0020】
前記照明部には、前記静電誘導吸着式搬送体の前記第3層側から前記第1層の上に載置されている前記検査対象物を照明するものが含まれていてもよい。
【0021】
前記撮像部には、前記静電誘導吸着式搬送体の前記第3層側から前記第1層の上に載置されている前記検査対象物を撮像するものが含まれていてもよい。
【0022】
上述した外観検査装置は、光路を変更するための反射体をさらに備え、
前記撮像部には、前記反射体で光路が変更された光を受光することによって前記検査対象物を撮像するものが含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体によれば、絶縁性材料からなる第1透明部を有する第1層と、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層と、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層とを備えた少なくとも3層以上の構造であるため、所定以上の強度を確保することができる。また、検査対象物が載置される第1層を薄くすることができるので、検査対象物の吸着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施の形態における外観検査装置の構成を模式的に示す図である。
図2】検査対象物の一例である積層セラミックコンデンサの外観形状を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態における静電誘導吸着式搬送体の構成を模式的に示す断面図である。
図4】第2の実施形態における静電誘導吸着式搬送体の構成を模式的に示す断面図である。
図5】第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体の構成を模式的に示す断面図である。
図6】第4の実施形態における静電誘導吸着式搬送体の構成を模式的に示す断面図である。
図7】第4の実施形態における静電誘導吸着式搬送体において、第3層の上に設けられている複数の透明電極部を示す平面図である。
図8】(a)は、第1の透明電極部と第2の透明電極部に同電位の電圧を印加して、積層セラミックコンデンサを吸着させた状態を示す図であり、(b)は、第1の透明電極部と第2の透明電極部のうちの一方に正電荷を帯電させ、他方に負電荷を帯電させるように電圧を印加して、積層セラミックコンデンサを吸着させた状態を示す図である。
図9】第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体の構成を模式的に示す断面図である。
図10】積層セラミックコンデンサの第1の端面を撮像するための第1のCCDカメラ、および、第2の端面を撮像するための第2のCCDカメラの配置位置を示す図である。
図11】(a)は、第1の照明部の詳細な構成を示す正面図であり、(b)は、(a)に示す第1の照明部をXIB-XIB線で切断したときの断面図である。
図12】積層セラミックコンデンサの第1の主面を撮像するための第3のCCDカメラ、および第2の主面を撮像するための第4のCCDカメラの配置位置を示す図である。
図13】積層セラミックコンデンサの第1の側面を撮像するための第5のCCDカメラ、および、第2の側面を撮像するための第6のCCDカメラの配置位置を示す図である。
図14】第1のCCDカメラの撮像面が鉛直下方ではなく、斜め下を向いて配設された状態を示す図である。
図15】フィルム状の静電誘導吸着式搬送体を用いた外観検査装置の全体構成を示す模式図である。
図16】回転方向に沿った表面が検査対象物の載置面である静電誘導吸着式搬送体の外観形状を示す図である。
図17】直動テーブルやパレットのような有端状の形状を有する静電誘導吸着式搬送体の外観形状を示す図である。
図18図5に示す静電誘導吸着式搬送体の変形構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0026】
図1は、一実施の形態における外観検査装置10の構成を模式的に示す図である。外観検査装置10は、検査対象物20の外観を検査する装置であって、静電誘導吸着式搬送体1と、検査対象物供給部2と、電圧供給部3と、撮像部4と、整列部5と、検査部6と、排出部7と、除電部8と、駆動部9とを備える。
【0027】
検査対象物20は、例えば、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、サーミスタ、モジュール基板などの電子部品や、電子部品の製造途中にある半製品である。ただし、検査対象物20が電子部品や半製品に限定されることはない。
【0028】
図2は、検査対象物20の一例である積層セラミックコンデンサ20Xの外観形状を示す斜視図である。図2に示すように、積層セラミックコンデンサ20Xは、セラミック素体21と、第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bとを有する。
【0029】
積層セラミックコンデンサ20Xは、6面体の形状を有する。すなわち、積層セラミックコンデンサ20Xは、互いに対向する第1の端面23aおよび第2の端面23bと、互いに対向する第1の主面24aおよび第2の主面24bと、互いに対向する第1の側面25aおよび第2の側面25bとを有する。
【0030】
以下では、初めに、静電誘導吸着式搬送体1の構成について詳しく説明し、その後に、外観検査装置10の全体構成について説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
本実施形態において、静電誘導吸着式搬送体1は、回転可能な円形テーブル状の形状を有する。静電誘導吸着式搬送体1の直径は、例えば100mm以上1000mm以下である。
【0032】
図3は、静電誘導吸着式搬送体1の構成を模式的に示す断面図である。静電誘導吸着式搬送体1は、第1層11と、第2層12と、第3層13とを備える。
【0033】
第1層11は、その上に検査対象物20が載置される層であり、絶縁性材料からなる第1透明部110を有する。本実施形態では、第1層11の全てが第1透明部110により構成されている。ただし、第1層11の全てが第1透明部110により構成されている必要はなく、第1透明部110以外の部分が、材質の異なる材料により構成されていてもよい。
【0034】
絶縁性材料として、例えば石英ガラスやフロートガラスなどの透明ガラス材料や、アクリルなどの透明樹脂材料を用いることができる。後述する第1層11を介した検査対象物20の吸着力を向上させるため、第1層11の積層方向における厚みは薄い方が好ましく、例えば0.001mm以上5mm以下である。一例として、第1層11は、石英ガラスからなり、その厚みは0.05mmである。
【0035】
後述するように、静電誘導吸着式搬送体1上に載置された検査対象物20は、載置面とは反対側から撮像部4によって撮像される。したがって、第1透明部110は、撮像光を透過し得る透明度を有する。外観検査の精度向上のため、透明度は高い方が好ましい。可視光を用いる場合、および、検査光を用いる場合のいずれの場合も、透明度は40%以上100%以下であることが好ましい。
【0036】
第2層12は、第1層11の下側に位置し、透明な導電性材料からなる透明電極部120を有する。本実施形態では、第2層12の全てが透明電極部120により構成されている。ただし、第2層12の全てが透明電極部120により構成されている必要はなく、透明電極部120以外の部分が、材質の異なる材料により構成されていてもよい。
【0037】
透明電極部120は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化チタン、グラフェンなどからなる。検査対象物20の外観検査の精度向上のため、第2層12の積層方向における厚みは薄い方が好ましく、例えば1nm以上100μm以下である。一例として、透明電極部120は、ITOからなり、その厚みは5nm以上1μm以下である。
【0038】
透明電極部120は、撮像光を透過し得る透明度を有する。外観検査の精度向上のため、透明度は高い方が好ましい。
【0039】
透明電極部120には、後述する電圧供給部3から電圧が供給される。電圧が供給されると、透明電極部120に電荷が帯電し、静電誘導により、第1層11の上に載置される検査対象物20の導電体に逆の極性の電荷が引き寄せられる。これにより、検査対象物20が静電誘導吸着式搬送体1に吸着する。
【0040】
第3層13は、第2層12の下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部130を有する。本実施形態では、第3層13の全てが第2透明部130により構成されている。ただし、第3層13の全てが第2透明部130により構成されている必要はなく、第2透明部130以外の部分が、材質の異なる材料により構成されていてもよい。
【0041】
第3層13を構成する絶縁性材料として、例えば石英ガラスやフロートガラスなどの透明ガラス材料や、アクリルなどの透明樹脂材料を用いることができる。第3層13の積層方向における厚みは、例えば1mm以上20mm以下である。一例として、第3層13は、石英ガラスからなり、その厚みは2mmである。
【0042】
第2透明部130は、撮像光を透過し得る透明度を有する。外観検査の精度向上のため、透明度は高い方が好ましい。
【0043】
第1層11の積層方向における厚みは、第3層13の積層方向における厚みよりも薄いことが好ましい。第1層11の積層方向における厚みを第3層13の積層方向における厚みよりも薄くすることにより、第1層11を介した検査対象物20と第2層12の透明電極部120との間の静電誘導による吸着力をより向上させることができる。また、第3層13の積層方向における厚みを第1層11の積層方向における厚みよりも厚くすることにより、検査対象物20の吸着力を低下させることなく、静電誘導吸着式搬送体1の強度をより向上させて、所定以上の強度を確保することができる。これにより、検査対象物20をより安定的に搬送することができる。
【0044】
また、第2層12の積層方向における厚みは、第3層13の積層方向における厚みよりも薄いことが好ましい。第2層12は透明電極部120を含んでいるため、第2層12の透明度は、第1層11および第3層13の透明度よりも低くなりやすい。しかしながら、第2層12の積層方向における厚みを第3層13の積層方向における厚みよりも薄くすることにより、外観検査時の撮像光の透過率をより向上させることができる。これにより、検査対象物20の外観検査の精度をより向上させることができる。
【0045】
また、第2層12の積層方向における厚みは、第1層11の積層方向における厚みよりも薄く、かつ、第1層11の積層方向における厚みは、第3層13の積層方向における厚みよりも薄いことが好ましい。そのような構成により、上述した効果、すなわち、第1層11を介した検査対象物20と第2層12の透明電極部120との間の吸着力をより向上させることができるという効果、静電誘導吸着式搬送体1の強度をより向上させることができるという効果、および、外観検査時の撮像光の透過率をより向上させて、検査対象物20の外観検査の精度をより向上させることができるという効果を全て得ることができる。
【0046】
第1層11、第2層12、および、3層13の積層方向における厚みの合計、すなわち、静電誘導吸着式搬送体1の厚みは、例えば、1mm以上20mm以下である。なお、第1層11の積層方向における厚み、第2層12の積層方向における厚み、第3層13の積層方向における厚み、および、静電誘導吸着式搬送体1の積層方向における厚みの上記数値は、あくまで一例であって、それぞれの厚みが上記数値に限定されることはない。
【0047】
また、本実施形態では、静電誘導吸着式搬送体1を構成する第1層11、第2層12および第3層13の積層方向に見たときの第1層11の面積、第2層12の面積、および、第3層13の面積は略同一である。
【0048】
静電誘導吸着式搬送体1は、検査対象物20の載置位置において、少なくとも撮像光を透過し得る透明度を有する。検査対象物20の外観検査時に検査光を用いる場合には、検査光が透過し得る透明度を有する。検査光の透過率は、例えば75%以上である。
【0049】
第1層11の第1透明部110、第2層12の透明電極部120、および、第3層13の第2透明部130は、所定の一方向に並んでいる。そのような構成により、後述する撮像部4により、第3層13側から、第1層11の上に載置されている検査対象物20を撮像することができる。
【0050】
なお、第1層11、第2層12、および、第3層13の積層方向が鉛直方向に限定されることはない。積層方向が鉛直方向でない場合も、本明細書では、第1層11に対して検査対象物20が載置される側を上側、第1層11に対して第2層12が位置する側を下側と呼ぶ。
【0051】
本実施形態では、検査対象物20の載置位置において、第1層11、第2層12および第3層13の積層方向に、第1層11の第1透明部110、第2層12の透明電極部120、および、第3層13の第2透明部130が位置する。検査対象物20の載置位置とは、外観検査が行われるときの検査対象物20の載置位置である。本実施形態では、第1層11の全てが第1透明部110により構成され、第2層12の全てが透明電極部120で構成され、第3層13の全てが第2透明部130により構成されているので、検査対象物20の載置位置には、第1透明部110、透明電極部120、および、第2透明部130が必ず位置する。そのような構成により、後述するように、検査対象物20の表面のうち、静電誘導吸着式搬送体1の第1層11と対向する表面を、第1透明部110、透明電極部120、および、第2透明部130を介して、撮像部4により撮像することができる。
【0052】
上述したように、本実施形態における静電誘導吸着式搬送体1は、第1層11、第2層12、および、第3層13を備えた3層構造であるため、1層や2層で構成された従来の構成と比べると、強度が向上し、検査対象物20の搬送に耐えうる所定以上の強度を確保することができる。また、第3層13を設けて所定以上の強度を確保するように構成されているので、第1層11を薄くすることができ、第1層11を介した検査対象物20と第2層12の透明電極部120との間の静電誘導による吸着力を向上させることができる
【0053】
また、第1層11が第3層13よりも薄いため、第2層12の透明電極部120を、検査対象物20と近い位置とすることができ、通電時に発生する電気力線が放射線上に広がる前に、静電誘導による吸着力を発生させることができる。これにより、電気力線の周囲への影響を抑制することができる。
【0054】
また、上述した特許文献1には、検査板の下面に補助静電誘導層を設ける構成が記載されているが、そのような構成では、補助静電誘導層が露出しているので、外部環境の影響で電位が安定しない可能性や、酸化等の劣化の可能性、また、導電性のゴミ等の混入によりショートする可能性がある。
【0055】
これに対して、本実施形態における静電誘導吸着式搬送体1では、透明電極部120を有する第2層12は、第1層11と第3層13とにより挟まれているので、透明電極部120の露出を抑制することができる。これにより、従来の搬送体で生じ得る上記不具合の発生を抑制することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
第1の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1では、積層方向に見たときの第1層11の面積、第2層12の面積、および、第3層13の面積は略同一である。すなわち、第2層12を構成している透明電極部120の上面は全て、第1層11によって覆われている。
【0057】
これに対して、第2の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Aでは、第2層12の透明電極部120の少なくとも一部は、その上に第1層11Aが形成されておらず、表面が露出している。
【0058】
図4は、第2の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Aの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態でも、第1層11Aの全てが第1透明部110により構成され、第2層12の全てが透明電極部120により構成され、第3層13の全てが第2透明部130により構成されている。
【0059】
図4に示すように、第2の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Aにおいて、第1層11Aは、円環状の形状を有する。すなわち、第1層11Aを構成する第1透明部110が中心部には形成されていない。このため、第2層12の透明電極部120の中心部は、その上に第1層11Aが形成されておらず、表面が露出している。第1層11Aの上には検査対象物20が載置されるため、透明電極部120の表面が露出しているのは、検査対象物20の載置位置ではない位置である。
【0060】
第2の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Aによれば、第2層12の透明電極部120の少なくとも一部は、その上に第1層11Aが形成されておらず、表面が露出しているので、透明電極部120の引き出しが容易となり、電圧供給部3(図1参照)との接続が容易となる。
【0061】
<第3の実施形態>
第2の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Aにおいて、第2層12の透明電極部120の少なくとも一部は、その上に第1層11Aが形成されておらず、表面が露出している。
【0062】
これに対して、第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Bでは、第3層13の少なくとも一部は、その上に第1層11Aおよび第2層12Bが形成されておらず、表面が露出している。すなわち、第2層12Bの透明電極部120は、第3層13の上面のうちの一部に設けられている。
【0063】
図5は、第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Bの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態でも、第1層11Aの全てが第1透明部110により構成され、第2層12Bの全てが透明電極部120で構成され、第3層13の全てが第2透明部130により構成されている。積層方向に見たときの第1層11Aの面積と第2層12Bの面積は、略同一である。
【0064】
図5に示すように、第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Bにおいて、第1層11Aおよび第2層12Bは、円環状の形状を有する。すなわち、第1層11Aを構成する第1透明部110は中心部に形成されておらず、第2層12Bを構成する透明電極部120は中心部に形成されていない。このため、第3層13の中心部は、その上に第1層11Aおよび第2層12Bが形成されておらず、表面が露出している。また、第2層12Bの透明電極部120の内周側側面120aが露出しているので、透明電極部120の引き出しが容易となる。
【0065】
第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Bによれば、第2層12Bの透明電極部120は、第3層13の上面のうちの一部に設けられているので、静電誘導により吸着される検査対象物20の位置ばらつきを低減することができる。本実施形態では、静電誘導吸着式搬送体1Bの径方向外側に透明電極部120が設けられているので、検査対象物20の吸着位置も径方向外側に制限することができる。検査対象物20の位置ばらつきを低減することにより、後述する撮像部4による外観撮像を確実に行うことができ、外観検査の精度を向上させることができる。
【0066】
<第4の実施形態>
第1~第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体では、第2層に1つの透明電極部120が設けられている。
【0067】
これに対して、第4の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Cでは、第2層に複数の透明電極部が設けられている。
【0068】
図6は、第4の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Cの構成を模式的に示す断面図である。また、図7は、第3層13の上に設けられている複数の透明電極部121、122を示す平面図である。図6および図7に示すように、第4の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Cでは、第2層12Cに、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122が設けられている。
【0069】
図7に示すように、検査対象物20の載置位置において、第1の透明電極部121および第2の透明電極部122は、櫛歯状に交互に配設されている。
【0070】
図8(a)は、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122に同電位の電圧を印加して、検査対象物20である積層セラミックコンデンサ20Xを吸着させた状態を示す図である。ここでは、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122に正電荷が帯電するように電圧を印加するものとして説明するが、負電荷が帯電するように電圧を印加した場合も同様である。
【0071】
後述する整列部5によって整列された積層セラミックコンデンサ20Xは、第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bのうちの一方が第1の透明電極部121の鉛直上方に位置し、他方が第2の透明電極部122の鉛直上方に位置する。このとき、第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bの第1層11に近い部分はそれぞれ、第1の透明電極部121および第2の透明電極部122とは逆の電荷で帯電する。
【0072】
図8(a)では、第1の外部電極22aが第1の透明電極部121の鉛直上方に位置し、第2の外部電極22bが第2の透明電極部122に位置しており、第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bの第1層11に近い部分に負電荷が帯電した状態を示している。なお、図8(a)において、第1の外部電極22aと第2の外部電極22bとが対向する方向が積層セラミックコンデンサ20Xの搬送方向である。
【0073】
すなわち、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122に正電荷を帯電させると、静電誘導により、検査対象物20である積層セラミックコンデンサ20Xの第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bの表面のうちの第1層11に近い部分に、負電荷が引き寄せられる。これにより、積層セラミックコンデンサ20Xが静電誘導吸着式搬送体1Cに吸着する。
【0074】
図8(b)は、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122のうちの一方に正電荷を帯電させ、他方に負電荷を帯電させるように電圧を印加して、検査対象物20である積層セラミックコンデンサ20Xを吸着させた状態を示す図である。ここでは、第1の透明電極部121に正電荷が帯電し、第2の透明電極部122に負電荷が帯電するように電圧を印加するものとして説明する。すなわち、通電時に第1の透明電極部121は、正極として機能し、第2の透明電極部122は、負極として機能する。ただし、第1の透明電極部121が負極として機能し、第2の透明電極部122が正極として機能するように電圧を印加してもよい。
【0075】
上述したように、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bの第1層11に近い部分はそれぞれ、第1の透明電極部121および第2の透明電極部122とは逆の電荷で帯電する。図8(b)では、第1の外部電極22aの表面のうちの第1層11に近い部分に負電荷が引き寄せられ、第2の外部電極22bの表面のうちの第1層11に近い部分に正電荷が引き寄せられた状態を示している。第1の透明電極部121と第2の透明電極部122のうちの一方を正極とし、他方を負極とすることにより、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122との間の電位差を大きくすることができ、吸着力を増大させることができる。
【0076】
このように、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122に同一の電荷が帯電するように電圧を印加した場合も、異符号の電荷が帯電するように電圧を印加した場合も、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の外部電極22aおよび第2の外部電極22bの位置を、第1の透明電極部121および第2の透明電極部122の配置位置に揃えることができるので、積層セラミックコンデンサ20Xの向きを揃えることができる。また、周方向における第1の透明電極部121と第2の透明電極部122との間隔を一定にしておくことにより、静電誘導吸着式搬送体1C上において隣り合う積層セラミックコンデンサ20Xの間隔を一定にすることができる。
【0077】
また、第1の透明電極部121と第2の透明電極部122に異符号の異なる電荷が帯電するように電圧を印加した場合には、異符号の電気力線が相互に作用して周囲への帯電を打ち消し合うため、周囲への影響を抑制することができる。
【0078】
<第5の実施形態>
透明電極部を有する第2層、第2層より上に位置する第1層、および、第2層より下に位置する第3層はそれぞれ、複数の板材やシート材を組合せた複数層からなる構成であってもよい。
【0079】
第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体は、第1層が2層構造である。
【0080】
図9は、第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Dの構成を模式的に示す断面図である。第1層11Dは、積層された上層111と下層112の2層により構成されている。検査対象物20は、第1層11Dの上層111の表面に載置される。
【0081】
第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Dによれば、第1層11Dのうち、検査対象物20が載置される上層111に汚れが付着したり、傷が付いたときに、上層111を取り替えることができる。これにより、第1層11Dの汚れや傷に起因して、検査対象物20の外観検査の精度が低下することを抑制することができる。
【0082】
なお、第1層11Dは2層により構成されているものとして説明したが、3層以上で構成されていてもよい。また、第2層12および第3層13についても、2層以上の複数層により構成されていてもよい。
【0083】
[外観検査装置]
続いて、外観検査装置10の全体構成について説明する。以下では、静電誘導吸着式搬送体が第1の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1であるものとして説明するが、上述した第2~第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1A~1Dであってもよいし、それらの変形構成による静電誘導吸着式搬送体でもよい。
【0084】
検査対象物供給部2は、静電誘導吸着式搬送体1の上に検査対象物20を供給する。検査対象物供給部2として、例えば、振動により検査対象物20を供給する振動式パーツフィーダ、回転しながら検査対象物20を供給する回転式パーツフィーダ、エアの力により検査対象物20を供給するエア式パーツフィーダ、ベルトコンベアによって検査対象物20を供給するベルトコンベア式パーツフィーダ、1つずつ検査対象物20を供給するワン・バイ・ワン式搭載機構などを用いることができる。
【0085】
検査対象物供給部2は、一定の時間間隔で検査対象物20を静電誘導吸着式搬送体1の上に供給する。検査対象物供給部2による供給量は、例えば1分間に50個~30000個である。
【0086】
静電誘導吸着式搬送体1の上には、一定の間隔で列状に検査対象物20が供給される。検査対象物20は1列になるように供給してもよいし、2列以上の複数列になるように供給してもよい。
【0087】
静電誘導吸着式搬送体1の上に供給された検査対象物20は、静電誘導により静電誘導吸着式搬送体1に吸着されながら、図1に示すように、整列部5によって一列に整列させられる。上述したように、検査対象物20は、静電誘導により静電誘導吸着式搬送体1に吸着されるため、検査対象物20が整列部5によって弾かれることや、整列部5との間の摩擦により停滞することを低減することができる。また、整列部5によって検査対象物20が一列に整列させられるので、検査対象物20が傾いた姿勢のまま静電誘導吸着式搬送体1に吸着されることを抑制することができる。
【0088】
静電誘導吸着式搬送体1は、静電誘導により検査対象物20を吸着し、吸着した状態で検査対象物20を搬送する。ここでは、図1に示すように、静電誘導吸着式搬送体1が円形テーブル状の形状を有しており、回転することによって、検査対象物20を搬送する。
【0089】
なお、静電誘導吸着式搬送体1が回転することによって、検査対象物20には遠心力が加わる。しかしながら、検査対象物20は、静電誘導により吸着した状態で搬送されるため、搬送時の検査対象物20の位置ずれを抑制することができる。
【0090】
また、検査対象物20を静電誘導により吸着した状態で搬送するため、静電誘導吸着式搬送体1を水平な状態ではなく、水平面に対して傾斜した状態で使用することもできる。
【0091】
駆動部9は、静電誘導吸着式搬送体1を駆動する。駆動部9は、例えば、DCモータ、サーボモータ、ステッピングモータ、リニアモータなどの電磁モータや、超音波モータ、圧縮空気などである。静電誘導吸着式搬送体1は、連続的に駆動してもよいし、間欠的に駆動してもよい。連続的に駆動する場合の速度は、例えば10mm/s以上2400mm/s以下であり、間欠的に駆動する場合の速度は、例えば300mm/s以上1200mm/s以下である。なお、駆動部9は、任意の位置に設けることができる。
【0092】
電圧供給部3は、静電誘導吸着式搬送体1の第2層12の透明電極部120に電圧を印加する。電圧の供給は、電線を介した接触給電により行ってもよいし、電磁結合や電界結合による非接触給電により行ってもよい。
【0093】
撮像部4は、静電誘導吸着式搬送体1の上の検査対象物20を撮像する。撮像部4は、検査対象物20を撮像できるものであれば特に制約はなく、例えばCCDカメラやCMOSカメラを用いることができる。
【0094】
ここでは、検査対象物20が上述した積層セラミックコンデンサ20Xであり、撮像部4としてCCDカメラを用いるものとして説明する。積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23a、第2の端面23b、第1の主面24a、第2の主面24b、第1の側面25a、および、第2の側面25bをそれぞれ撮像するために、撮像部4として、6つのCCDカメラが配置されている。なお、図1では、撮像部4として、静電誘導吸着式搬送体1とほぼ同じ高さか、上方に位置する5つのCCDカメラを示しており、静電誘導吸着式搬送体1よりも下方に位置する1つのCCDカメラは示していない。
【0095】
図1において、第1の撮像エリアSA1は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の側面25aおよび第2の側面25bを撮像するエリアである。第2の撮像エリアSA2は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aおよび第2の端面23bを撮像するエリアである。第3の撮像エリアSA3は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の主面24aおよび第2の主面24bを撮像するエリアである。
【0096】
図10は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを撮像するための第1のCCDカメラ41、および、第2の端面23bを撮像するための第2のCCDカメラ42の配置位置を示す図である。第1のCCDカメラ41および第2のCCDカメラ42は、静電誘導吸着式搬送体1の検査対象物20の載置面と直交する方向であって、上記載置面側に設けられている。本実施形態では、図10に示すように、静電誘導吸着式搬送体1が水平に配設されているため、第1のCCDカメラ41および第2のCCDカメラ42は、静電誘導吸着式搬送体1の上方に設けられている。
【0097】
検査対象物20の外観検査を精度良く行うため、検査対象物20を光で照らす照明部を備えていることが好ましい。本実施形態では、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを光で照らすための第1の照明部51、および、第2の端面23bを光で照らすための第2の照明部52が設けられている。
【0098】
照明部には、静電誘導吸着式搬送体の第3層13側から、第1層11の上に載置されている検査対象物20を照明するものが含まれることが好ましい。本実施形態では、第1の照明部51は、第1層11より上側、および、第3層13より下側から、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを照明する。これにより、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aに暗い領域が生じることを効果的に抑制することができる。また、第2の照明部52は、第1層11より上側、および、第3層13より下側から、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の端面23bを照明する。これにより、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の端面23bに暗い領域が生じることを効果的に抑制することができる。
【0099】
図11(a)は、第1の照明部51の詳細な構成を示す正面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す第1の照明部51をXIB-XIB線で切断したときの断面図である。図11に示すように、第1の照明部51は、半球型のドーム照明であり、複数のLED510を有する。図示は省略するが、第2の照明部52も第1の照明部51と同じ構造を有する。
【0100】
複数のLED510は、同じ種類の光を発するものでもよいし、波長のピークが異なる複数種類の光を発するものでもよい。複数種類の光は、例えば、特定の波長のピークを有する青色光、緑色光および赤色光である。この場合、青色光、緑色光および赤色光が検査光となる。また、その場合には、CCDカメラとして、青色光、緑色光および赤色光に感度を有する3CCDカメラを用いることができる。波長のピークが異なる複数種類の光を用いることにより、外観検査時の欠陥の抽出、特に検査対象物20の凹凸の欠陥の抽出の精度が向上する。
【0101】
ただし、第1の照明部51および第2の照明部52から発せられる光に特に制約はなく、白色光、赤外光、紫外光などであってもよい。また、特定の波長のピークを有する検査光は、必要に応じて使用すればよく、そのような検査光を用いなくてもよい。さらに、第1の照明部51および第2の照明部52による光照射の方法についても特に制約はなく、連続的に照射してもよいし、画像の取り込みに応じて、間欠的に照射してもよい。
【0102】
図10に示すように、第1のCCDカメラ41の撮像面は、鉛直下方を向いている。第1のCCDカメラ41の撮像面の鉛直下方には、光路を変更するための第1の反射体61が設けられている。第1の反射体61は、例えばプリズムまたはミラーである。
【0103】
図11に示すように、第1の照明部51には、中心付近に孔511が設けられており、撮像光が第1の照明部51の孔511を通るように、第1の照明部51や第1の反射体61の位置が調整されている。第1のCCDカメラ41は、第1の反射体61で光路が変更された光を受光することによって、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを撮像する。
【0104】
また、図10に示すように、第2のCCDカメラ42の撮像面は、鉛直下方を向いている。第2のCCDカメラ42の撮像面の鉛直下方には、光路を変更するための第2の反射体62が設けられている。第2の反射体62は、例えばプリズムまたはミラーである。第1のCCDカメラ41と同様に、第2のCCDカメラ42は、第2の反射体62で光路が変更された光を受光することによって、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の端面23bを撮像する。
【0105】
図12は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の主面24aを撮像するための第3のCCDカメラ43、および第2の主面24bを撮像するための第4のCCDカメラ44の配置位置を示す図である。第3のCCDカメラ43は、静電誘導吸着式搬送体1の検査対象物20の載置面と直交する方向であって、上記載置面側に設けられている。また、第4のCCDカメラ44は、静電誘導吸着式搬送体1の検査対象物20の載置面と直交する方向であって、上記載置面とは反対側に設けられている。本実施形態では、図12に示すように、静電誘導吸着式搬送体1が水平に配設されているため、第3のCCDカメラ43は、静電誘導吸着式搬送体1の上方に設けられており、第4のCCDカメラ44は、静電誘導吸着式搬送体1の下方に設けられている。
【0106】
また、本実施形態では、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の主面24aを光で照らすために、第3の照明部53が設けられ、第2の主面24bを光で照らすために、第4の照明部54が設けられている。第3の照明部53および第4の照明部54の構成は、図11に示す第1の照明部51の構成と同じである。
【0107】
第3のCCDカメラ43は、上方から、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の主面24aを撮像する。また、第4のCCDカメラ44は、下方から、すなわち、静電誘導吸着式搬送体1の第3層13側から、第1層11の上に載置されている積層セラミックコンデンサ20Xの第2の主面24bを撮像する。
【0108】
上述したように、第1層11の第1透明部110、第2層12の透明電極部120、および、第3層13の第2透明部130は、所定の一方向に並んでいる。本実施形態では、静電誘導吸着式搬送体1の検査対象物20の載置位置の鉛直下方に、第1層11の第1透明部110、第2層12の透明電極部120、および、第3層13の第2透明部130が位置する。したがって、第4のCCDカメラ44は、第1層11の第1透明部110、第2層12の透明電極部120、および、第3層13の第2透明部130を介して、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の主面24bを撮像する。
【0109】
図13は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の側面25aを撮像するための第5のCCDカメラ45、および、第2の側面25bを撮像するための第6のCCDカメラ46の配置位置を示す図である。第5のCCDカメラ45は、静電誘導吸着式搬送体1の検査対象物20の載置面と直交する方向であって、上記載置面側に設けられている。本実施形態では、図13に示すように、静電誘導吸着式搬送体1が水平に配設されているため、第5のCCDカメラ45は、静電誘導吸着式搬送体1の上方に設けられている。また、第6のCCDカメラ46は、静電誘導吸着式搬送体1の径方向外側であって、かつ、積層セラミックコンデンサ20Xと略同じ高さの位置に設けられている。
【0110】
また、本実施形態では、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の側面25aを光で照らすために、第5の照明部55が設けられ、第2の側面25bを光で照らすために、第6の照明部56が設けられている。第5の照明部55および第6の照明部56の構成は、図11に示す第1の照明部51の構成と同じである。
【0111】
図13に示すように、第5のCCDカメラ45の撮像面は、鉛直下方を向いている。第5のCCDカメラ45の撮像面の鉛直下方には、光路を変更するための第3の反射体63が設けられている。第3の反射体63は、例えばプリズムまたはミラーである。第5のCCDカメラ45は、第3の反射体63で光路が変更された光を受光することによって、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の側面25aを撮像する。
【0112】
また、図13に示すように、第6のCCDカメラ46の撮像面は、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の側面25bを向いている。すなわち、第6のCCDカメラ46は、撮像光を直接受光して、第2の側面25bを撮像する。
【0113】
ここで、図14に示すように、第1のCCDカメラ41は、撮像面が鉛直下方ではなく、斜め下を向いて配設されていてもよい。また、図14に示すように、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを照明するために、第1の照明部51とは別に、同軸補助照明部57を設けるようにしてもよい。
【0114】
同軸補助照明部57は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aと対向する位置に設けられている。より具体的には、同軸補助照明部57と積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aとを結ぶ直線が第1の照明部51の孔511を通るように、第1の照明部51および同軸補助照明部57の位置が調整されている。
【0115】
同軸補助照明部57は、必要に応じて、青色光、緑色光、および、赤色光白色光などの光を出力する。ただし、同軸補助照明部57から出力される光が青色光、緑色光、および、赤色光白色光に限定されることはない。また、同軸補助照明部57は、第1の照明部51の複数のLED510のうち、静電誘導吸着式搬送体1に近い位置のLED510から発せられる光と同じ色の光を出力することが好ましい。例えば、静電誘導吸着式搬送体1に近い位置のLED510から青色光が発せられる場合、同軸補助照明部57も青色光を出力することが好ましい。
【0116】
静電誘導吸着式搬送体1の主面、すなわち、検査対象物20の載置面に対する第1のCCDカメラ41の光軸の角度は、例えば15°である。ただし、静電誘導吸着式搬送体1の主面と第1のCCDカメラ41の光軸との成す角が15°に限定されることはない。
【0117】
検査対象物20の外観検査は、撮像部4によって撮像された画像に基づいて、検査部6によって行われる。検査部6は、例えば、パソコンや専用の画像処理コントローラである。撮像画像に基づいた外観検査では、例えば、検査対象物20の外形寸法、特定部位の寸法、表面の凹凸の有無、異物の付着の有無、破損の有無、変色の有無などを調べる。
【0118】
外観検査のための撮像が行われた検査対象物20は、排出部7により、静電誘導吸着式搬送体1から排出される。検査対象物20が静電誘導吸着式搬送体1の上に供給されてから排出されるまでの搬送経路の長さは、例えば300mm以上2500mm以下である。
【0119】
検査対象物20の排出方法に特に制約はなく、例えば、エア噴出部71から検査対象物20にエアを噴射することによって排出してもよいし、図示しない吸引機構によって吸引することにより、排出するようにしてもよい。また、検査対象物20を1つずつピックアップして排出するようにしてもよい。また、外観検査の結果に応じて、良品と不良品とが別の容器に回収されるように排出してもよい。
【0120】
本実施形態では、排出前に吸着力を弱めるため、検査対象物20を除電する除電部8を備えている。除電部8は1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。除電部8による除電方法に特に制約はなく、例えば、所定の電位を与えた金属ロールなどの導体を検査対象物20に接触させることによって、除電することができる。また、電子やイオンなどを含む気体を検査対象物20に向けて噴出することによって除電してもよいし、公知の除電ブラシを用いて除電してもよい。また、除電部8の配置位置も、検査対象物20の搬送、撮像、および、排出の邪魔にならない位置であれば、任意の位置とすることができる。なお、除電部8を省略した構成としてもよい。
【0121】
(静電誘導吸着式搬送体がフィルムの場合)
上述した各実施形態の静電誘導吸着式搬送体は、柔軟性の低い構造であるが、フィルムのように、折り曲げ可能で柔軟性の高い構造であってもよい。静電誘導吸着式搬送体がフィルム状である場合も、上述した各実施形態のように、検査対象物20が載置される層であり、絶縁性材料からなる第1透明部を有する第1層と、第1層の下側に位置し、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層と、第2層下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層とを備える。
【0122】
ここでも、第1層の全てが第1透明部により構成され、第2層の全てが透明電極部により構成され、第3層の全てが第2透明部により構成されているものとして説明する。
【0123】
この場合、第1透明部からなる第1層は、第2層上に形成される絶縁被膜からなる絶縁被膜層として構成することができる。絶縁被膜は、例えばフロートガラスなどの透明ガラス材料や、PET樹脂などの透明樹脂材料からなる。第1層の積層方向における厚みは、例えば0.001mm以上0.05mm以下である。例えば、第1層がガラス材料からなる場合の厚みは、0.004mmであり、PETフィルムからなる場合の厚みは、0.05mmである。
【0124】
透明電極部からなる第2層は、例えば、ITO、ATO、酸化チタン、グラフェンなどにより構成することができる。第2層の積層方向における厚みは、例えば1nm以上100μm以下である。一例として、透明電極部は、ITOにより構成され、その厚みは5nm以上1μm以下である。
【0125】
第2透明部からなる第3層は、例えば、フロートガラスなどの透明ガラス材料や、PET樹脂などの透明樹脂材料からなる。第3層の積層方向における厚みは、例えば0.01mm以上1mm以下である。例えば、第1層がガラス材料からなる場合の厚みは、0.004mmであり、PETフィルムからなる場合の厚みは、0.05mmである。
【0126】
第1層、第2層および第3層を含む静電誘導吸着式搬送体1の全体の積層方向における厚みは、例えば0.01mm以上1mm以下である。
【0127】
静電誘導吸着式搬送体がフィルム状の場合、静電誘導吸着式搬送体を自由に曲げることができるので、検査対象物20の搬送路を自由に設計することができる。
【0128】
図15は、フィルム状の静電誘導吸着式搬送体1Eを用いた外観検査装置10の全体構成を示す模式図である。図15に示す静電誘導吸着式搬送体1Eは、連続無端形状を有する。静電誘導吸着式搬送体1Eの周長は、例えば500mm以上2400mm以下である。また、検査対象物供給部2によって検査対象物20が供給されてから排出されるまでの距離は、例えば150mm以上1100mm以下である。
【0129】
なお、ここでも、検査対象物20が略直方体の形状を有する積層セラミックコンデンサ20Xであるものとして説明するが、検査対象物20が積層セラミックコンデンサ20Xに限定されることはない。
【0130】
静電誘導吸着式搬送体1Eは、循環するように駆動される。検査対象物20である積層セラミックコンデンサ20Xは、検査対象物供給部2によって静電誘導吸着式搬送体1Eの第1層の上に供給され、吸着された状態で、静電誘導吸着式搬送体1Eの駆動方向に搬送される。
【0131】
図15に示す例では、6つの回転ローラ70が設けられており、回転ローラ70が設けられている6箇所で、静電誘導吸着式搬送体1Eが曲げられている。ただし、静電誘導吸着式搬送体1Eを曲げる箇所は、任意の位置とすることができる。
【0132】
静電誘導吸着式搬送体1Eが曲げられている屈曲位置における曲率半径は、例えば10mm以上500mm以下である。
【0133】
また、積層セラミックコンデンサ20Xの搬送経路において、静電誘導吸着式搬送体1Eが水平ではなく傾斜している部分の傾斜角度は、例えば15°以上90°以下である。
【0134】
ここでも、検査対象物20である積層セラミックコンデンサ20Xの各面を撮像するための撮像部4として、6つのCCDカメラが配置されているものとして説明する。
【0135】
第1の照明部51は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを照明し、第2の照明部52は、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の端面23bを照明する。第1のCCDカメラ41は、積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aを撮像し、第2のCCDカメラ42は、積層セラミックコンデンサ20Xの第2の端面23bを撮像する。
【0136】
図15に示すように、静電誘導吸着式搬送体1Eが折り曲げられていることにより、撮像面が積層セラミックコンデンサ20Xの第1の端面23aと対向する位置に第1のCCDカメラ41を配置し、撮像面が積層セラミックコンデンサ20Xの第2の端面23bと対向する位置に第2のCCDカメラ42を配置することができる。これにより、図10に示すような第1の反射体61および第2の反射体62を用いることなく、検査対象物20の第1の端面23aおよび第2の端面23bを撮像することができる。
【0137】
第3の照明部53は、検査対象物20の第1の主面24aを照明し、第4の照明部54は、検査対象物20の第2の主面24bを照明する。第3のCCDカメラ43は、上方から積層セラミックコンデンサ20Xの第1の主面24aを撮像し、第4のCCDカメラ44は、下方から積層セラミックコンデンサ20Xの第2の主面24bを撮像する。
【0138】
静電誘導吸着式搬送体1Eがフィルム状の形状を有する場合も、第1層の第1透明部、第2層の透明電極部、および、第3層の第2透明部は、所定の一方向に並んでいる。そのような配置の一態様として、検査対象物20の載置位置の鉛直下方に、第1層の第1透明部、第2層の透明電極部、および、第3層の第2透明部が位置する。したがって、第4のCCDカメラ44は、第1層の第1透明部、第2層の透明電極部、および、第3層の第2透明部を介して、第3層側から、第1層の上に載置されている積層セラミックコンデンサ20Xの第2の主面24bを撮像する。
【0139】
図15では省略しているが、第5のCCDカメラは、検査対象物20の第1の側面を撮像し、第6のCCDカメラは、検査対象物の第2の側面を撮像する。
【0140】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。例えば、上述した第1~第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体は、円板状の形状を有し、周方向に回転する構成であったが、静電誘導吸着式搬送体の構成が上述した構成に限定されることはない。
【0141】
図16は、ドラム状の形状を有し、回転方向に沿った表面が検査対象物20の載置面である静電誘導吸着式搬送体1Fの外観形状を示す図である。静電誘導吸着式搬送体1Fは、上述したような第1層、第2層および第3層が径方向に積層された構成を有し、第1層の上側に検査対象物20が載置される。この場合、静電誘導吸着式搬送体1Fの直径は、例えば100mm以上1000mm以下、検査対象物20の搬送面の幅は、例えば5mm以上150mm以下、第1層、第2層および第3層を含む全体の厚みは、例えば1mm以上20mm以下とすることができる。
【0142】
図17は、直動テーブルやパレットのような有端状の形状を有する静電誘導吸着式搬送体1Gの外観形状を示す図である。この場合も、静電誘導吸着式搬送体1Gは、上述したような第1層、第2層および第3層を備え、第1層の上側に検査対象物20が載置される。この場合、静電誘導吸着式搬送体1Gの搬送面の長さおよび幅はそれぞれ、例えば5mm以上150mm以下とすることができる。
【0143】
第1層の第1透明部、第2層の透明電極部、および、第3層の第2透明部が所定の一方向に並んでいる態様として、積層方向に並んでいる例を挙げて説明したが、積層方向以外の方向、例えば積層方向に対して傾きを有する斜め方向に並んだ構成としてもよい。
【0144】
また、上述した実施形態では、検査対象物20が略直方体の形状であり、外観検査のために6面の全てを撮像するものとして説明したが、外観検査に必要な任意の面を撮像するように構成されていてもよい。
【0145】
上述した各実施形態の特徴的な構成は、適宜組み合わせることができる。例えば、第5の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Dでは、第1層11Dが上層111と下層112の2層により構成されているが、第2~第4の実施形態における静電誘導吸着式搬送体において、第1層が2層以上の複数層により構成されていてよい。また、第2層および第3層についても、2層以上の複数層により構成されていてもよい。
【0146】
図5に示す第3の実施形態における静電誘導吸着式搬送体1Bは、第3層13の少なくとも一部は、その上に第1層11Aおよび第2層12Bが形成されておらず、表面が露出している。この変形構成例として、図18に示す静電誘導吸着式搬送体1Hのように、第1層11は、第3層13と同じく全体に形成されていてもよい。
【0147】
静電誘導吸着式搬送体の上に、撮像部4による撮像の写り方を調整するための透明絶縁層や、表面保護用の透明絶縁層を設置するようにしてもよい。その場合、透明絶縁層は単層により形成してもよいし、複数層により形成してもよい。
【0148】
静電誘導吸着式搬送体の検査対象物20の載置面に、検査対象物20の外形に対応する枠状の突起を設けるようにしてもよい。検査対象物20の外形に対応する枠状の突起を設けることにより、検査対象物20の搬送時における位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0149】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H 静電誘導吸着式搬送体
2 検査対象物供給部
3 電圧供給部
4 撮像部
5 整列部
6 検査部
7 排出部
8 除電部
9 駆動部
10 外観検査装置
11、11A、11D 第1層
12、12B、12C 第2層
13 第3層
20 検査対象物
20X 積層セラミックコンデンサ
21 セラミック素体
22a 第1の外部電極
22b 第2の外部電極
23a 第1の端面
23b 第2の端面
24a 第1の主面
24b 第2の主面
25a 第1の側面
25b 第2の側面
41 第1のCCDカメラ
42 第2のCCDカメラ
43 第3のCCDカメラ
44 第4のCCDカメラ
45 第5のCCDカメラ
46 第6のCCDカメラ
51 第1の照明部
52 第2の照明部
53 第3の照明部
54 第4の照明部
55 第5の照明部
56 第6の照明部
57 同軸補助照明部
61 第1の反射体
62 第2の反射体
63 第3の反射体
71 エア噴出部
110 第1透明部
111 第1層の上層
112 第1層の下層
120 透明電極部
121 第1の透明電極部
122 第2の透明電極部
130 第2透明部
510 LED
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体は、
検査対象物の外観検査装置に用いられる静電誘導吸着式搬送体であって、
絶縁性材料からなる第1透明部を有し、前記検査対象物が上側に載置される第1層と、
前記第1層の下側に位置し、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層と、
前記第2層の下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層と、
を備え、
前記第1透明部、前記透明電極部、および、前記第2透明部は、所定の一方向に並んでおり、
前記透明電極部には、第1の透明電極部と第2の透明電極部とが含まれ、
前記第1層の上に一定の間隔で列状に供給される複数の前記検査対象物の載置位置に対応して、前記第1の透明電極部と前記第2の透明電極部とが設けられていることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
前記透明電極部は、前記第3層の上面のうちの一部に設けられていてもよい
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
前記第1の透明電極部は、通電時に正極として機能し、前記第2の透明電極部は、通電時に負極として機能するものであってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の外観検査装置に用いられる静電誘導吸着式搬送体であって、
絶縁性材料からなる第1透明部を有し、前記検査対象物が上側に載置される第1層と、
前記第1層の下側に位置し、導電性材料からなる透明電極部を有する第2層と、
前記第2層の下側に位置し、絶縁性材料からなる第2透明部を有する第3層と、
を備え、
前記第1透明部、前記透明電極部、および、前記第2透明部は、所定の一方向に並んでおり、
前記透明電極部には、第1の透明電極部と第2の透明電極部とが含まれ、
前記第1層の上に一定の間隔で列状に供給される複数の前記検査対象物の載置位置に対応して、前記第1の透明電極部と前記第2の透明電極部とが設けられていることを特徴とする外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項2】
前記第1層は、絶縁被膜からなる絶縁被膜層であることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項3】
前記透明電極部の少なくとも一部は、その上に前記第1層が形成されておらず、表面が露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項4】
前記透明電極部は、前記第3層の上面のうちの一部に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項5】
前記第1の透明電極部は、通電時に正極として機能し、前記第2の透明電極部は、通電時に負極として機能することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項6】
前記第1層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項7】
前記第2層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項8】
前記第2層の前記積層方向における厚みは、前記第1層の前記積層方向における厚みよりも薄く、かつ、前記第1層の前記積層方向における厚みは、前記第3層の前記積層方向における厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項9】
前記第1層、前記第2層、および、前記3層の前記積層方向における厚みの合計は、1mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項10】
折り曲げ可能なフィルム状の形状を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の外観検査装置の静電誘導吸着式搬送体と、
前記透明電極部に電圧を印加する電圧供給部と、
前記電圧供給部により電圧を供給された前記静電誘導吸着式搬送体の上に前記検査対象物を供給する検査対象物供給部と、
前記静電誘導吸着式搬送体を駆動する駆動部と、
前記駆動部によって駆動される前記静電誘導吸着式搬送体の上の前記検査対象物を撮像する撮像部と、
を備える外観検査装置。
【請求項12】
前記検査対象物を光で照らす照明部をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の外観検査装置。
【請求項13】
前記照明部には、前記静電誘導吸着式搬送体の前記第3層側から前記第1層の上に載置されている前記検査対象物を照明するものが含まれることを特徴とする請求項12に記載の外観検査装置。
【請求項14】
前記撮像部には、前記静電誘導吸着式搬送体の前記第3層側から前記第1層の上に載置されている前記検査対象物を撮像するものが含まれることを特徴とする請求項1113のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項15】
光路を変更するための反射体をさらに備え、
前記撮像部には、前記反射体で光路が変更された光を受光することによって前記検査対象物を撮像するものが含まれることを特徴とする請求項1114のいずれかに記載の外観検査装置。